JP4489857B2 - 医療機器の滅菌方法およびその装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高密度で円筒形の組み合わせからなるような複雑な形状をした医療用具等の医療機器である被照射物に対して、電子線を照射して滅菌処理する医療機器の滅菌方法およびその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の医療機器の滅菌方法としては、高圧蒸気滅菌法、エチレンオキシドガス滅菌法、γ線滅菌法などが用いられてきている。
【0003】
この高圧蒸気滅菌法では、被照射物の湿潤状態における耐熱性が問題になり、被照射物の材質によっては、その性能を著しく低下させてしまうので、適用できない場合がある。特に、ケース素材などの汎用ポリマーには、耐熱性の高いものは少なく、この滅菌法の使用に際しては、高価格のエンジニアリングプラスチックを材料として使用することが必須条件になる場合が多いという問題がある。
【0004】
また、エチレンオキシドガス滅菌法に関しては、エチレンオキシドガスの残留が問題になる。このガスを十分に除去するために処理時間が長くかかり、生産性が極めて悪くなるという問題がある。また、被照射物の材質によっては性能に変化を生じることがあるという問題がある。
【0005】
そして、γ線滅菌法は、滅菌効果に優れている上に、エチレンオキシドガス滅菌法のように残留ガスの影響もない優れた方法であるが、γ線線源等の放射性物質の管理を慎重に行なう必要がある上に、γ線線源の寿命が来た際にその処理に莫大な経費がかかるという問題がある。
【0006】
また、例え、外部施設に委託して滅菌処理する場合でも、γ線の線量密度はそれほど高くないので、通常の吸収線量25(KGy) で滅菌する際でも数時間を要する上に、ポリマーの酸化等による無視できない劣化を生じる場合が多く、被照射物の性能や強度などを維持するのが難しいという問題があり、このための特別な研究が必要とされている。
【0007】
これに対し、電子線照射装置を使用した滅菌法は、万一、災害が生じた時等でも、送電を停止しさえすれば自動的に電子線は止まるので、安全性に優れているという長所を有している。
【0008】
【発明が解決しようとする問題】
しかしながら、高密度で複雑な形状を有する比較的大きな被照射物に対して電子線を照射する場合に、被照射物内の線量分布が著しく不均等になり、最大線量と最小線量との比が非常に大きくなるという問題が生じる。
【0009】
つまり、電子線の透過力が電子線のエネルギーに概ね比例し、かつ、被照射物の密度に反比例するので、高密度で比較的大きな被照射物に対して、図11に示すように、片面照射方式を実施して片側からのみ電子線Eを照射するすると、被照射物3内において、電子線照射窓2aから遠い部位3cには電子線Eが到達できなくなるのである。
【0010】
図12は、一般的に産業用で利用されている電子線照射の最大エネルギーである10(MeV) の電子線の透過力を示した図である。横軸は、被照射物の深さ方向を示し、縦軸は、被照射物に照射される表面線量に対する被照射物内部まで到達する線量の比を示している。この図から、最大エネルギーである10(MeV) の電子線Eを照射した場合でも、密度1(g/cm3) の被照射物3では、深さ5(cm)厚さまで、密度が0.2(g/cm3) の被照射物3に対しては、最大で約25(cm)の厚さまでしか透過しないことがわかる。
【0011】
この電子線の透過力の弱さを補うために、従来技術においては、両面照射方式を一般的に採用して、被照射物に対して表裏の両面から電子線を照射している。しかし、この両面照射方式の採用は、カートン・ケースを代表とするような、直方体の単純な形状をした被照射物への適用が主であり、形状が複雑なものに対しては使用されていない。
【0012】
この両面照射方式を適用して、図13に示すように、高密度で円筒形の組合わせからなるような複雑な形状をした被照射物3に対して、電子線Eを照射をする場合においては、そのまま実施すると、最大線量と最小線量との比が大きくなりやすく、例えば、図13に示す被照射物3の表面の両側のP1とP3における線量は、表面の上下位置、即ち照射方向と対面するP2とP4における線量の2倍から3倍になる。そして、この線量分布は、γ線照射の場合に比べて、更に2倍程度のバラツキを生じてしまう。
【0013】
この線量分布の不均等性に対する対策としては、特開平8−275991号公報に提案されている、高い線量が照射される部位に電子線を吸収するための部材を用いる方法や、特開平8−169442号公報に提案されている、被照射物がプラスチック容器のように低密度の対称形を有したものに低エネルギー電子線を照射し滅菌する方法があるに過ぎなかった。
【0014】
以上の理由により、電子線を利用した滅菌法を使用することは、従来技術においては、比較的低密度で単純な形状の被照射物に限定されている。
つまり、図14(b)に例示するように、高密度で円筒形の組合わせからなるような複雑な形状の被照射物3に対して、従来技術の両面照射方式を採用して、両面の照射方向D1、D2から電子線Eを照射した場合には、図14(a)に示すように、照射方向に対面する表面位置0(=2)や1の部分が小さく、側面部分となる表面位置0.5や1.5の部分が非常に大きくなり、電子線の表面線量の分布が不均一になってしまう。
このため、従来技術の両面照射方式は、高密度で円筒形の組合わせからなるような複雑な形状の被照射物に対しては、実用性を欠いており採用できなかった。
【0015】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、高密度で円筒形の組合わせからなるような複雑な形状をした被照射物である医療機器に対して、片面照射では電子線が透過できない部位に対しても、十分な滅菌線量を照射でき、かつ線量分布の不均等性が少なく概ね均一に電子線を照射することができる医療機器の滅菌方法およびその装置を提供することにある。
【0016】
【問題を解決するための手段】
本発明に係る医療機器の滅菌方法は、医療機器に対する電子線照射による滅菌方法において、密度と厚みの積が3.6(g/cm )以上7.2(g/cm )以下である円筒形の医療機器に対して、3方向以上の方向から前記医療機器の側面に向けてエネルギーが5〜10MeVの電子線を照射することを特徴とする。
【0017】
つまり、被照射物たる円筒形の医療機器(以下、本発明の説明においてこの「被照射物たる円筒形の医療機器」を単に「被照射物」と呼ぶ)に対し、3方向以上の方向から前記医療機器の側面に向けて電子線を照射する。この場合、被照射物を回転するか、又は、電子線照射窓を移動することにより、3方向以上の方向から前記医療機器の側面に向けて電子線を照射することができる。
【0018】
好ましい態様を図1に示すが、前記照射物を回転を刻みながら回転し、回転を停止した状態で電子線を照射する。つまり、予め決めた刻み角度α毎に、回転を刻みながら被照射物3を回転してはその状態で保持し、図示しないコンベア等でこの被照射物3を移動しながら電子線Eを照射し、また、所定の角度αだけ被照射物3を回転し、被照射面を変更した状態で電子線Eを照射することを繰り返して、被照射物3に対して3方向以上の方向から前記医療機器の側面に向けて電子線Eを照射する。この場合、被照射物の大きさにより、電子線Eを照射するに際し、被照射物をコンベア等で移動することが好ましい。
【0019】
なお、図1では刻み角度αを45度とし、一定にしているが、必ずしも一定にする必要はなく、前の回転と次の回転とで異なった角度であってもよい。または、医療機器に対する電子線照射による滅菌方法において、密度と厚みの積が3.6(g/cm )以上7.2(g/cm )以下である円筒形の医療機器を電子線照射装置の有効電子線照射領域内で連続回転しながら、エネルギーが5〜10MeVの電子線を前記医療機器の側面に向けて照射することを特徴とする。
【0020】
好ましい一態様を、図2に示す。回転方向Rに連続して被照射物3たる円筒形の医療機器を回転させながら、前記医療機器の側面に向けて電子線を照射する滅菌方法である。この場合、被照射物3の大きさによって、被照射物3を搬送方向Dに搬送しながら照射することが好ましい。
【0021】
これらの上記2種類の医療機器の滅菌方法によれば、医療機器の滅菌において、高密度で大きさの異なる円筒形の組合わせからなるような複雑な形状をした被照射物に対しても、この被照射物全体にわたって十分な滅菌線量が照射され、しかも、この照射された線量はバラツキが小さく概ね均一となる。
【0022】
更に、刻み回転又は連続回転等における電子線照射において、被照射物の周囲1周を越えて電子照射することにより、より均等に電子線が被照射物に照射される。
あるいは、上記の医療機器の滅菌方法において、被照射物を筒体に収容し、該筒体の外部から電子線を照射する。
【0023】
この筒体は、円形や多角形などの種々の形状の筒体を使用することができるが、被照射物の形状や、回転の刻み角度での保持性や連続回転の容易性、および、電子線の反射・吸収の度合い等を考慮して採用する。
【0024】
そして、この筒体の軸に垂直な断面を「偏平曲面形状」となるように形成すると、被照射物の収容や回転時の一時的姿勢保持や連続回転等の取り扱いがより便利となる。
【0025】
この「偏平曲面形状」とは、楕円形を始め、西洋梨様形状、卵様形状、陸上競技のトラック形状、蚕のまゆ玉形状等を含む概ね楕円形となるように、つまり、曲線部を含む細長い形状を意味している。
【0026】
この筒体に被照射物を入れた医療機器の滅菌方法によれば、被照射物が、複数種類ある場合においても、これら複数種類の被照射物を、この筒体に挿入して電子線を照射することにより、回転照射装置の形態変更を伴うことなく、被照射物全体にわたって十分な滅菌線量を照射することができ、かつ、線量分布のバラツキが小さく概ね均一な線量で電子線を照射することができる。
【0027】
つまり、被照射物の形状が複雑で、回転しにくい場合でも、この筒体に入れることにより、所定の刻み角度の回転角度でセットでき、また、連続回転も容易となり、しかも、複数の被照射物を同時に処理することができる。
【0028】
また、上記の医療機器の滅菌方法を実現する血液処理モジュールを代表とする医療機器に対する電子線照射による滅菌装置は、被照射物を収容する筒体と、該筒体を回転可能に保持する回転装置と、該回転装置を載置するコンベアと、前記筒体の被照射面を間欠的又は連続的に変更しながら、前記回転装置に保持された前記筒体に対して、電子線を照射する電子線照射装置とを有して構成される。
【0029】
【発明の実施の形態】
図面を参照しながら、本発明の医療機器の滅菌方法およびその装置の実施の形態について説明する。
【0030】
本発明が最も有効に活用できる医療機器として、血漿交換治療や人工透析治療、人工肝臓、エンドトキシンフィルタ、バイオリアクター等である血液処理モジュールを主なものとして上げることができる。この人工透析治療には、血液透析(HD:Hemo Dialysis )、血液濾過透析(HDF:Hemo DiaFiltration)、血液濾過(HF:Hemo Filtration )等が含まれる。
【0031】
また、この血液処理モジュールの医療機器以外にも、本発明の医療機器の滅菌方法およびその装置は、その他の医療用途および産業用途等の各種用途に用いることができる。
【0032】
このメディカル用の血液処理モジュールにおいては、照射滅菌線量としては、水浸漬状態で15〜35(KGy) 程度が好ましく、この値の照射滅菌線量が用いられている。
【0033】
一方、電子線の透過能力は、被照射物の密度に反比例するため、電子線の透過方向の厚みが大きい被照射物の場合には、その密度が小さい方が望ましいことになる。なお、ここで用いている「密度」は、被照射物の重量を全容量で除して求めた平均値を意味している。
【0034】
そして、本発明は、密度と厚みの積が3.6(g/cm )以上7.2(g/cm )以下のもの、つまり電子線が全体に透過しにくく、かつ全体的な形状は円筒形の医療機器被照射の対象としている。
【0035】
また、電子線照射エネルギーに関しては、エネルギーの大きい電子線を用いれば大型の被照射物まで滅菌が可能であるが、産業応用として許される電子線エネルギーの最大値は10(MeV)となっており、本発明では、5〜10(MeV)の電子線照射装置が市販されており該市販の装置を利用して行うことができる
【0036】
本発明の1つの実施の形態である医療機器の滅菌方法は、被照射物を3方向以上から回転を刻みながら複数回(パス)累積照射する滅菌方法である。つまり、図1に示すように、被照射物3を刻み角度α毎に回転を刻みながら回転し、各回転した状態で電子線Eを複数回繰り返し照射することにより、被照射物3に対して3方向以上の方向から電子線Eを照射する滅菌方法である。
【0037】
この滅菌方法では、図4に示すように、一時的に固定した被照射物3をベルトコンベア4等で、移動させながら、電子線Eを照射した後、被照射物3を回転方向Rに予め決められた角度α(図1では、45度)だけ回転させ、再び被照射物3を一時的に固定して、ベルトコンベア4等で移動しながら電子線Eを照射する。
【0038】
この被照射物3の所定の角度αの回転と一時固定と移動しながらの電子照射とを繰り返し実施することにより、概ね均一な線量を被照射物の側面に照射することができ、線量分布のバラツキを抑えることができる。また、本発明の好ましい実施の形態の1つである医療機器の滅菌方法は、被照射物を有効電子線照射領域内で連続回転させながら電子線を照射する方法である。
【0039】
この滅菌方法では、図2に示すように、被照射物3を連続的に回転方向Rに回転させながら、かつ、被照射物3をベルトコンベア4等で搬送方向Cに移動させながら被照射物の側面に向けて電子線を照射する。この被照射物3を移動させながら回転照射する場合に、図2(b)に示すように、有効電子線照射領域内における電子線の線量分布が中心部で高く、周辺部で低くなるため、本領域内でちょうど1回転だけ回転させた場合には、線量のバラツキが生じることになるので、線量をバラツキが少なく概ね均一に照射するためには、有効電子線照射領域内で被照射物を1回転以上回転させることが必要になる。
【0040】
また、生産性を上げるためには、電子線を常時照射することが好ましく、また、被照射物を並べる際に、被照射物の間隔を回転に支障が出ない程度に出来る限り近づけて、被照射物の間を詰めることが効率アップにつながる。
【0041】
また、本発明の一実施形態である医療機器の滅菌方法は、図3に示すように、被照射物3を筒体6に入れ電子線Eを照射する滅菌方法である。この筒体6は、円形や多角形などの種々の形状の筒体6を使用することができるが、被照射物3の形状や、回転の刻み角度αや連続回転のし易さ、および、電子線Eの吸収の度合い等を考慮して採用する。
【0042】
図3に、この筒体6に入れた被照射物3を示す。図3の(a)は、電子線照射装置2との関係や回転方向R、搬送方向Cとの関係を示し、(b)は、大型の血液処理モジュールの挿入状態を示し、(c)は、小型の血液処理モジュールの挿入状態を示す。
【0043】
そして、この筒体6の軸に垂直な断面を「偏平曲面形状」となるように形成すると、被照射物3の固定や照射時の回転や取り扱いにより便利である。この「偏平曲面形状」とは、楕円形を始め、西洋梨様形状、卵様形状、陸上競技のトラック形状、蚕のまゆ玉形状等を含む概ね楕円形となるように、つまり、曲線部を含む細長い形状を意味している。
【0044】
また、この筒体6の材料は密度が小さく、また電子線による劣化が小さい材料で作られるのが好ましい。例えば、SUSは、密度が高い欠点はあるが、電子線照射による材質劣化が少なく、また、大気中に電子線を照射することによって発生するオゾンによる錆も生じにくい。その上、薄く加工できる等の利点があるため、このSUSを筒体6に効果的に利用することができる。
この他にも、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリスチレンに代表される有機物やセラミック等も筒体6に使用することができる。
【0045】
そして、以上の医療機器の滅菌方法によれば、片面照射では電子線が届きにくい部位にも十分かつ概ね均等な線量で電子線を照射でき、各部の電子線滅菌を行なうことができる。
【0046】
また、上記の医療機器の滅菌方法を実現する血液処理モジュールを代表とする医療機器に対する電子線照射による滅菌装置1は、被照射物3を挿入固定する筒体6を備え、この筒体6を回転可能に保持する回転装置5をコンベア4に載置して形成する。実際に被照射物を回転させるのは照射ホーン下の領域を含めばよい。
【0047】
そして、電子線Eを照射する電子線照射装置(照射ホーン)2を筒体6に対向する位置に設けて、この筒体6を、刻み角度α毎に間欠的に変更しては、コンベア4を稼働させて電子線Eを照射するか、回転方向Rに連続的回転し、かつコンベア進行方向Cに移動させて、電子線Eを照射できるように構成する。
つまり、筒体6の被照射面を間欠的又は連続的に変更しながら、回転装置5に保持された筒体6に対して、電子線Eを照射する電子線照射装置2を設ける。
【0048】
【実施例】
以下に、より具体的な本発明のシミュレーション例と実施例について説明する。なお、以下の実施例における線量は、全てCTAフィルム線量計で計測した線量である。
1)シミュレーション例
このシミュレーション例は、図4に示す滅菌方法及びその装置に対するものであり、被照射物3を搬送方向であるコンベア進行方向Cに移動するコンベア4に搭載した回転装置5の上に載置し、この被照射物3を回転移動しながら電子線照射装置(照射ホーン)2の下を通過させる。この電子線照射装置2では、電子線Eをコンベア4の幅方向に直線状になるように照射する。
【0049】
このシミュレーション例は、φ80(mm)、密度1(g/cm3) の円筒形の被照射物3を45度刻みの1/8回転ずつ回転させながら、エネルギー10(MeV) の電子線を8回(パス)累積照射した場合の、図5に示す位置における線量分布をシミュレーション計算した結果を図6に示す。
【0050】
この図6においては、図5に示すx=−4、y=0の点における線量(基準線量)を基準値(1.00)にとり、y=0の断面G1やy=2の断面G2やy=4の点の線量を、この基準線量で割算してノーマライズしたx軸方向の線量分布を表したものである。図6の白丸はy=0の断面G1の値を、黒三角はy=2の断面G2の値を、さらに白菱形はy=4の点の値を示す。
2)実施例1〜5
被照射物であるポリスルホン系の中空糸膜を充填したモジュールに、γ線滅菌の指標菌であるBacillus pumilusを6.5×107 (cell/ml) 充填し、さらに線量計をモジュール内部の中央部に埋め込み、45度刻みに1/8回転ずつ回転させながらエネルギー10(MeV) の電子線を8回(パス)累積照射した。
【0051】
この実施例1〜5では、表1に示すように、外径とその密度の積が、7.2、6.6、5.3、4.0、3.6(g/cm2) のモジュールをそれぞれで使用している。
これらのモジュールに累積照射後の表面線量が30(KGy) となるように電子線を照射した後、モジュール内部から採取した充填液を培養して生菌数を調べたところ、表1に示すように、すべてのモジュール内部の充填液中において、生存した上記指標菌Bacillus pumilusを検出できなかった。
【0052】
また、モジュール内部に埋め込んだ線量計により、モジュールの中心部における線量を測定したところ、38.5、35.2、40.1、35.5、35.2(KGy) の値が得られ、モジュールの中心部まで電子線が透過したことが判った。
【0053】
【表1】
Figure 0004489857
【0054】
3)実施例6
次に、被照射物としての、ポリスルホン系の中空糸膜が充填された最大外径とその密度の積が7.2(g/cm)のモジュールに、図7に示した位置に線量計を取付け、45度刻みに1/8回転ずつ回転させながら、エネルギー10(MeV)の電子線を8回(パス)累積照射し、表面線量が40(KGy)となるように照射した。この結果を表2に示すが、この表2から、バラツキはあるものの、全ての測定点において表面線量40(KGy)以上の線量照射ができたことが判った。
【0055】
【表2】
Figure 0004489857
【0056】
4)実施例7
次に、被照射物としての、ポリスルホン系の中空糸膜が充填された最大外径とその密度との積が7.2(g/cm2) のモジュールに、図8に示す位置に線量計を取付け、概ね楕円形の断面を持つ厚さ1.5(mm)のポリスチレンの筒体(モジュールケース)に入れて、図9に示すように、43rpm で回転させながら、電子線のエネルギー10(MeV) 、コンベア速度1.0(m/min) の条件下で、電子線を筒体表面における線量が32(KGy) となるように照射した。
【0057】
この結果を表3に示す。この結果によれば、すべての部分で表面線量32(KGy)以上の線量が照射されていることが確認できた。また、最大線量と最小線量との比についても約1.5とγ線滅菌の場合と比べてわずかに大きい程度であった。そして、このモジュールから中空糸膜を取出し、機械的強度の測定を行ったところ、従来のγ線照射でγ線を同じ線量吸収したものに比べ、約7(%) 伸度が大きく、破断強度も約5(%) 大きい結果を得た。
【0058】
【表3】
Figure 0004489857
【0059】
5)実施例8
次に、照射された線量によって色が変わる色素であるインジコカルミン16(ppm) 、ナフトールイエローS16(ppm) 、テトラゾリウムレッド47(ppm) をアガロース1.5(%) 水溶液に加熱溶解したものを用意した。
【0060】
これを直径約3(cm ) のシャーレに深さ約5(mm)で充填し、この充填した6個のシャーレに、それぞれ、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5(KGy) の電子線を一方向から照射し、色素の色変化を目視で確認した。
【0061】
一方、実施例7で用いたモジュールケース(筒体)に、上記シャーレと同じものを充填し、実施例7と同様の条件で2.0(KGy) の照射を行った。そして、照射後に、モジュールケースを切断し、上記シャーレの色変化を基準にして、充填ゲルの色変化を観察したところ、中心部分では約0.5(KGy) 程過照射となったが、同心円上に対しては概ね均一に照射されていることが確認できた。
6)実施例9
更に、実施例1〜8で用いたポリスルホン系の中空糸膜が充填されたモジュール、もしくは、照射された線量によって色が変わる色素をアガロース水溶液で加熱溶解した後にこれを充填したモジュールケースに対して、図4と図9に示す回転方向(正転方向)に対して逆方向に回転させて、実施例1〜8と同様の試験をした結果、実施例1〜8と同等の結果が得られた。
7)実施例10
また、図10に示すように、モジュール円筒体6の中心軸6cとコンベア進行方向Dとのなす傾斜角度βを変化させて、実施例1〜8と同様な計測を行なった。
【0062】
その結果、図4および図9のようにモジュール円筒体6の中心軸6cが、コンベアに対してほぼ水平に設置され、かつモジュール円筒体6が、図2(b)に示すように有効電子線照射領域内を通過する場合は、モジュール円筒体6の中心軸6cがコンベア進行方向Dと任意の角度を持っていても、実施例1〜8と同様の結果を得ることができることも確認できた。
【0063】
【発明の効果】
上記した本発明の医療機器の滅菌方法によれば、医療機器の滅菌において、高密度で円筒形の組合わせからなるような複雑な形状をした被照射物に対しても、この被照射物全体にわたって十分な滅菌線量を照射でき、しかも、電子線を線量分布のバラツキが小さく概ね均一な線量となるように照射することができる。
【0064】
更に、連続回転における電子線照射において、被照射物を電子線照射窓に対して1回転を越えて回転させることにより、より均等に電子線を被照射物に照射することができる。
【0065】
また、被照射物を筒体に入れて電子線を照射する医療機器の滅菌方法によれば、被照射物が、被照射物の形状が複雑で、回転しにくい場合でも、この筒体に入れることにより、所定の刻み角度の回転角度でセットでき、また、連続回転も容易とすることができる。
また、被照射物が複数種類ある場合においても、これら複数種類の被照射物に対して回転照射装置の形態変更を伴うことなく、しかも、複数の被照射物を同時に処理することができる。
【0066】
従って、本発明に示した滅菌方法および滅菌装置の適用により、被照射物全体にわたって十分な滅菌線量を照射することができ、かつ、バラツキが小さく概ね均一な線量分布で電子線を照射することができる。
そのため、線量分布の不均一性などの理由から電子線滅菌の利用は、困難または不可能と考えられていた物品を電子線により滅菌することが可能となる。
特に、従来のコバルト60から発生するγ線に頼らざるをえなかった物品の滅菌を電子線による滅菌へ転換する際に有効な方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の医療機器の滅菌方法における電子線の照射方向と被照射物との位置関係を示す図であり、(a)〜(h)は、各照射回数に対応した位置関係を示す。
【図2】本発明に係る第2の実施の形態の医療機器の滅菌方法に関する図であり、(a)は被照射物の回転方向と搬送方向を示す図で、(b)は、有効電子線照射領域の線量の分布を示す図である。
【図3】本発明に係る第3の実施の形態の医療機器の滅菌方法に関する図であり、(a)は被照射物と筒体の回転方向と搬送方向を示す図で、(b)は、筒体内に大型の血液処理モジュールを挿入した場合の筒体割断図で、(c)は、筒体内に小型の血液処理モジュールを挿入した場合の筒体割断図である。
【図4】本発明に係るシミュレーション例で使用した滅菌方法とその装置を示す図である。
【図5】本発明に係るシミュレーション例の位置を示す図である。
【図6】本発明に係るシミュレーション例の結果を示す図である。
【図7】本発明に係る実施例6の線量の測定位置を示す図で、(a)は側面の位置を示す図で、(b)は周方向の位置を示す図である。
【図8】本発明に係る実施例7の線量の測定位置を示す図で、(a)は側面の位置を示す図で、(b)は周方向の位置を示す図である。
【図9】本発明に係る実施例7の医療機器の滅菌方法に関する図である。
【図10】本発明に係る実施例10の医療機器の滅菌方法に関する図である。
【図11】従来技術における片面照射方式の電子照射方法を示す図である。
【図12】エネルギー10(MeV) の電子線Eを用いて照射した場合の線量比のグラフを示す図である。
【図13】従来技術における両面照射方式の電子照射方法を示す図である。
【図14】従来技術における両面照射方式の電子照射方法を示す図で、(a)は、表面線量を示し、(b)は、電子線の照射方向と表面位置の関係を示す。
【符号の説明】
1 滅菌装置
2 電子線照射装置(照射ホーン) 2a 電子線照射窓
3 被照射物 3c 電子線未到達の部分
4 コンベア 5 回転装置
6 筒体 6c 筒体の中心軸
C 搬送方向(コンベアの進行方向) D 照射方向(片面)
D1 両面照射方向No.1 D2 両面照射方向No.2
R 回転方向 R’ 逆転方向
α 刻み角度 β 傾斜角度

Claims (10)

  1. 医療機器に対する電子線照射による滅菌方法において、密度と厚みの積が3.6(g/cm )以上7.2(g/cm )以下である円筒形の医療機器に対して、3方向以上の方向から前記医療機器の側面に向けてエネルギーが5〜10MeVの電子線を照射することを特徴とする医療機器の滅菌方法。
  2. 前記円筒形の医療機器を回転を刻みながら回転し、回転を停止した状態で前記電子線を照射することを特徴とする請求項1記載の医療機器の滅菌方法。
  3. 前記円筒形の医療機器の周囲1周を越えて前記電子線照射することを特徴とする請求項2記載の医療機器の滅菌方法。
  4. 前記円筒形の医療機器を筒体に収容し、前記筒体の外部から前記電子線を照射することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の医療機器の滅菌方法。
  5. 前記筒体は、軸に垂直な断面が偏平曲面形状をしていることを特徴とする請求項4記載の医療機器の滅菌方法。
  6. 医療機器に対する電子線照射による滅菌方法において、密度と厚みの積が3.6(g/cm )以上7.2(g/cm )以下である円筒形の医療機器を電子線照射装置の有効電子線照射領域内で連続回転しながら、前記医療機器の側面に向けてエネルギーが5〜10MeVの電子線を照射することを特徴とする医療機器の滅菌方法。
  7. 前記円筒形の医療機器の周囲1周を越えて前記電子線照射することを特徴とする請求項6記載の医療機器の滅菌方法。
  8. 前記円筒形の医療機器を筒体に収容し、前記筒体の外部から前記電子線を照射することを特徴とする請求項6又は7記載の医療機器の滅菌方法。
  9. 前記筒体は、軸に垂直な断面が偏平曲面形状をしていることを特徴とする請求項8記載の医療機器の滅菌方法。
  10. 医療機器に対する電子線照射による滅菌装置において、密度と厚みの積が3.6(g/cm )以上7.2(g/cm )以下である円筒形の医療機器を収容する筒体と、前記筒体を回転可能に保持する回転装置と、前記回転装置を載置するコンベアと、前記筒体の被照射面を間欠的又は連続的に変更しながら、前記回転装置に保持された前記筒体内の前記医療機器の側面に対して、照射エネルギーが5〜10MeVの電子線を照射する電子線照射装置とを有することを特徴とする医療機器の滅菌装置。
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