JP6712072B2 - 活性酸素による細胞培養基板の表面改質および滅菌処理 - Google Patents

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Description

本発明は、活性酸素による細胞培養基板の表面改質および滅菌処理方法に関する。
現在、生物研究や医学、薬学の分野では、新薬や新たな治療法の開発、生体機構の把握をするために、生物の最小単位である細胞をポリスチレン(PS)製の細胞培養基板上で培養して試験を行うことが一般的である。接着細胞の培養には、細胞培養基板への細胞の接着が必要であることから、細胞培養基板の接着面に適度な粗さと親水性の付与のための表面改質が必要不可欠である。また、細胞培養に利用するためには、細胞培養基板への雑菌の混入(コンタミネーション)を防ぐための滅菌処理を行わなければならない。
従来、細胞培養基板を有する細胞培養皿等の細胞培養器具の作製には、細胞培養基板の表面をプラズマ処理することで、細胞の培養に必要な適度な粗さと親水性を付与するという方法が採用されている。しかし、プラズマ処理を用いた方法では、プラズマを用いるための大規模な装置が必要であり、プラズマ処理により培養基板の材料であるプラスチックが大きく損傷するという問題が生じていた。また、プラズマ処理された培養基板は、細胞の接着が促進される反面、細胞の増殖を抑制する傾向があることも知られている。
特許文献1には、このような問題を解決するために、ポリマー基材にプラズマ照射した後に、少なくとも1以上の洗浄工程を含む方法により、プラズマ処理したポリマー基材の細胞の接着性を高める方法が示されている。
特表2011−521091号公報
しかしながら、依然としてプラズマ照射による細胞培養基板の作製には、大規模な装置及び高いコストが必要であるという問題点を有する。また、プラズマ照射では、細胞培養基板の表面改質と滅菌処理を同時に行うことができず、表面改質された細胞培養基板の滅菌を、γ線の照射やエチレンオキシドガスへの曝露等の方法で行う必要がある。
一方、本発明者らは、紫外光により酸素を励起させることにより発生した活性酸素をポリエチレンテレフタレート(PET)に曝露することにより、PETの表面特性を変化させることを見出している(Kei Oya,Ryota Watanabe,Shunsuke Sasaki,Hajime Hiraga, Yasutaka Ohnishi, and Satoru Iwamori“Surface Charactertistic of Polyethylene Terephthalate(PET) Film Exposed to Active Oxygen Species Generated via Ultraviolet(UV) Light Irradiation in High and Low Humidity Conditions”J.Photopolym.Sci.Technol.,Vol.27,No.3(2014)409−414)。
本発明者らは、鋭意検討の結果、上記活性酸素によるPET表面特性の変化が、細胞培養基板の表面改質に有効であり、また他の材料から成る細胞培養基板の表面改質にも適用できることを見出した。
さらに、活性酸素により前記細胞培養基板が滅菌されることから、表面改質と滅菌処理とを同時に行うことが可能であることも見出した。
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたものであり、低コストプロセスである紫外光励起活性酸素曝露技術を用いることで、非常に簡便に、細胞培養基板の表面改質と滅菌処理を同時に行う方法を提供するものである。また、本発明によれば、生物研究や医学、薬学の分野で利用される滅菌容器を提供することができる。
本発明の一態様によれば、活性酸素により有機高分子材料から成る細胞培養基板の表面改質と滅菌処理を同時に行う方法が提供される。
UV光を照射することによって活性酸素を生成することができる真空対応活性酸素生成装置を示す図である。 試料の算術平均粗さを示す図である。 試料の表面構造の原子の組成比を示す図である。 培養後のMC3T3−E1の位相差顕微鏡での観察結果を示す図である。 培養後のMC3T3−E1の培養基板への接着面積の平均値を示す図である。 培養後のMC3T3−E1の培養基板への接着面積の分布を示す図である。
以下に、活性酸素による細胞培養基板の表面改質および滅菌処理方法について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
(1)細胞培養基板
本発明の細胞培養基板は、表面改質処理により細胞の接着が可能となる限りいかなる金属材料、無機材料、有機高分子材料等のいかなる材料から成っても良いが、成形性および前記細胞培養基板の表面改質のされやすさに鑑みて、有機高分子材料が好ましい。中でも、ポリスチレン、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、及びポリプロピレン(PP)であることがより好ましく、特にポリスチレンは、化学的安定性及び成形時の寸法安定性に優れており、また透明性が非常に高いことから位相差顕微鏡での細胞観察がしやすいために好ましい。
本発明の有機高分子材料から成る細胞培養基板は、シャーレ、試験管、遠沈管、培養皿、培養ビン、又は培養フラスコ等の培養器具の少なくとも一部又は全部を構成し、対象とする細胞が接着し、増殖可能な構成であれば、いかなる構成で用いられても良い。
(2)活性酸素
本発明における活性酸素とは、原子状酸素(O(P))、励起一重項酸素(、O(D))やオゾン(O)のみならず、ヒドロキシルラジカル(OH)、過酸化水素(H)、及びヒドロペルオキシルラジカル(HO)を含む広義の活性酸素を意味する。これら活性酸素の表面改質処理のための細胞培養基板への曝露方法は、別途生成した活性酸素を気流等により導入することで細胞培養基板に曝露しても良いし、紫外線ランプを有する装置内に細胞培養基板を設置し、酸素雰囲気下で紫外線を酸素に照射することにより生成した活性酸素を細胞培養基板に曝露しても良い。
前記紫外線ランプの照射による酸素からの活性酸素の生成は、下式(1)〜(6)に示すように、185nm及び254nmの波長(hν)の光により進行する。そのため、本発明に用いる紫外線ランプは、いかなる紫外線ランプを用いても良いが、260nm以下の波長の光を照射するランプであることが好ましく、低圧水銀ランプのように少なくとも185nm及び254nmの波長の光、又はキセノンエキシマランプのように200nm以下で直接活性酸素種を生成できる波長(例えば主発光波長172nm)を照射できなければならない。また、活性酸素の生成と該活性酸素の細胞培養基板への曝露を同一装置内で行う場合、前記装置内の酸素濃度(体積比)は、活性酸素が生成する濃度であればいかなる濃度でも構わないが、好ましくは通常の空気と同程度の20%程度から100%までの濃度である。この場合、本発明を大規模で行う場合は安全面の観点から酸素濃度は20%程度が好ましく、実験室レベルで行う場合は効率の観点から100%の濃度が好ましい。
(3)表面改質
本発明における表面改質とは、細胞培養基板表面の活性酸素による化学的結合状態の切断及び/又は親水性官能基の付与を指す。破壊された細胞培養基板表面は、その粗さが増大し、培養細胞の接着性が増す。また、親水性官能基が付与された細胞培養基板表面は、親水性が増大し、培養細胞の伸展性が増す。前記親水性官能基としては、水酸基、ホルミル基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシラン基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸基等の、基板表面を構成する有機高分子材料が酸化されたことにより生じる官能基を含む。
前記細胞培養基板表面の粗さは、活性酸素への曝露前後の細胞培養基板表面の状態を走査型プローブ顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡等で測定し、それらの表面形状を比較することで評価することができる。前記評価方法としては、算術平均粗さ、二乗平均粗さ、最大高さ粗さ、最大深さ粗さ、十点平均粗さ等を用いることができるが、これらに限られない。
前記細胞培養基板表面の親水性の評価は、X線光電子分光分析法及び純水を用いた接触角測定法によるぬれ性評価等により行うことができる。例えば、X線光電子分光分析法では、C1sスペクトルを測定することにより細胞培養基板表面の炭素原子の1s軌道のエネルギーの化学シフトを測定し、炭素原子の化学状態を判断することにより細胞培養基板表面の親水性を評価することができる。同様に、X線光電子分光分析法において、O1sスペクトルを測定することにより細胞培養基板表面の酸素原子の1s軌道のエネルギーの化学シフトを測定し、細胞培養基板表面の親水性を評価することもできる。さらに、各スペクトルの波形分離を行うことで、親水性に起因する官能基を同定、定量化することができる。また、ぬれ性評価では、純水と細胞培養基板表面のなす接触角を測定することで親水性の評価を行うことができ、前記接触角が小さいほど親水性が高い。
本発明の方法により表面処理された細胞培養基板における細胞の接着及び伸展の評価は、本発明の細胞培養基板、対照、及び市販の表面処理された細胞培養基板等を用いて実際に培養された細胞の観察及び比較により評価する。接着細胞が増殖するためには細胞培養基板へ細胞の接着が必要であるため、細胞培養基板と細胞の接着が十分か否かは、接着細胞の数を計測することにより判断することができる。細胞の伸展の評価は、前記接着細胞の形状から判断することができ、増殖した接着細胞が十分に伸展している場合は扁平な形状を示し、細胞が十分に進展していない場合は線形化することから判断できる。
(4)滅菌処理
本発明の有機高分子材料から成る細胞培養基板の滅菌処理は、活性酸素に曝露されることにより、前記表面改質と同時に行われる。したがって滅菌処理の条件は、前記表面改質と同じとなる。滅菌処理後の細胞培養基板は、無菌状態を保ったまま滅菌バッグに封入することができる。また、本発明の細胞培養基板の表面改質と滅菌処理を同時に行う方法では、滅菌バッグに封入した未滅菌の細胞培養基板の表面改質と滅菌処理を、活性酸素を用いて同時に行うことができる。この方法により、表面改質後のコンタミネーションを簡便な方法で防ぐことができる。一方、従来、表面改質に用いられているプラズマは高エネルギーであり、通常の滅菌バッグに用いられる材料が大きくダメージを受けてしまうことから、細胞培養基板を滅菌バッグに封入した状態で表面改質と滅菌処理を同時に行うことができない。したがって、プラズマを用いた従来法では、プラズマによる表面改質後に、細胞培養基板を滅菌バッグに封入し、続いて滅菌処理をするという多段階の処理が必要であった。これに対して、本発明の方法によれば、コンタミネーションを起こすことなく、低コストで表面改質及び滅菌処理がなされた細胞培養基板を、一度の処理で提供することが可能である。
前記滅菌バッグは、活性酸素が透過できる限りいかなる滅菌バッグであっても良い。本発明の方法では、活性酸素の発生を高湿度条件下で行う場合もあるため、前記滅菌バッグは耐水性を有することが好ましい。また、前記滅菌バッグは透明、半透明、不透明のいずれであっても良く、少なくとも一面が紫外線を透過しない滅菌バッグが好ましい。このような滅菌バッグを用いる場合、細胞培養基板の表面改質と滅菌処理を紫外線照射下で行う際に、紫外線を透過しない面を紫外線ランプに向けることにより、紫外線による細胞培養基板の損傷を防ぐことができる。
前記滅菌処理の評価は、生物インジケータ(BI)、プロセス チャレンジ デバイス(PCD)等を用いて評価することもできるし、滅菌処理後の細胞培養基板に適当な培地を注入し、培養することで残存菌の有無の判断を行っても良い。
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。下記の実施例は、本発明の最良な実施形態の一例であるものの、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1] 高酸素濃度化におけるポリスチレン(PS)製細胞培養皿の表面改質及び滅菌処理
UV光を照射することによって活性酸素を生成することができる真空対応活性酸素生成装置(図1)を作製し、本実験で使用した。真空チャンバーに185nmと254nmの波長のUV光を同時に発生できるUVランプ(出力110W)1灯を取り付け、ランプからの赤外放射に起因するチャンバー内の急激な温度上昇を防ぐために装置の周りに冷却水を循環させた。表面処理されていないPS製細胞培養皿(No.351143,コーニング社製)を、一方の面が不織布から成り他方の面がフィルムから成る酸素及び活性酸素を透過し、微生物および紫外線を透過しない滅菌バッグ(タイベック,ジョンソン・エンド・ジョンソン社製)に封入し、チャンバー内に静置した。その後、真空ポンプによりチャンバー内の圧力が10Paとなるまで排気後、酸素を2kPa台まで流入させ、チャンバー内の酸素濃度をほぼ100%とした。その後、湿度0%RH、照射開始温度20℃の条件で紫外線を30分間照射することで、PS製細胞培養皿を活性酸素に曝露し、表面改質および滅菌処理を行い、試料を得た。
表面処理されていないPS製細胞培養皿(以下、「未処理の細胞培養皿」とも言う。)、前記30分間活性酸素に曝露されたPS製細胞培養皿(以下、「活性酸素処理された細胞培養皿」とも言う。)、及び表面処理された市販の細胞培養皿(No.353043,コーニング社製)(以下、「表面処理済みの細胞培養皿」とも言う。)の表面を走査型プローブ顕微鏡(SPM−9600,島津製作所製)により観察した。それぞれ3つの試料について、1試料につきの任意の5μm四方の中から無作為に1.5μm四方を5ヶ所について表面形状を測定し、画像化した。得られた画像を付属のソフトウェアを用いて、算術平均粗さを算出した(図2)。
算出結果より、前記活性酸素処理された細胞培養皿の表面の算術平均粗さは、未処理の細胞培養皿の表面及び表面処理済みの細胞培養皿の表面よりも粗さが増加していた。
続いて、未処理の細胞培養皿、前記活性酸素処理された細胞培養皿、及び表面処理済みの細胞培養皿の表面の構造原子の組成をQuantum 2000(ULVAC−PHI社製)を用いたX線光電子分光分析法により解析した。各試料の表面に超高真空下(<1×10−3〜10−7Pa)でX線を任意の直径50μmの円に照射し、C1sおよびO1sのX線光電子分光分析法スペクトルを得た。得られたスペクトルの積分面積を測定し組成比を求めた。表面構造の原子の組成比を図に示す。
活性酸素に曝露されたPS製細胞培養皿の表面構造の原子の組成比は、酸素原子が占める割合が7%、炭素原子が占める割合が93%であった。一方、未処理の細胞培養皿の表面構造の原子の組成比は、酸素原子が占める割合が1%、炭素原子が占める割合が99%であった。このことから、活性酸素の曝露によりPS製細胞培養皿の表面構造が酸化され、親水性となっていることが分かる。また、表面処理済みの細胞培養皿の表面構造中の原子の組成比は、酸素原子の組成が12%であった。

そこで、未処理の細胞培養皿、前記活性酸素処理された細胞培養皿、及び表面処理済みの細胞培養皿を用いて、マウス頭蓋冠由来骨芽細胞様細胞株のMC3T3−E1を培養し、本発明の方法により表面処理及び滅菌処理が行われた細胞培養基板への細胞の接着性及び増殖性の評価を行った。
基本培地(α−MEM)に10%濃度になるようにウシ胎児血清(FBS)を添加し、さらに抗生物質・抗真菌剤(100IU/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、及び0.25μg/mLのアンフォテリシンB)を添加した培養培地を用いて、未処理の細胞培養皿、前記活性酸素処理された細胞培養皿、又は表面処理済みの細胞培養皿でMC3T3−E1を37°C、5%COの条件で24時間培養した。培養後の細胞を、位相差顕微鏡(IX−71,OLYMPUS社製)を用いて細胞の接着性及び増殖性の様子を100倍および200倍の倍率で観察した(図4)。なお、図4中のスケールバーは200μmを表す。
活性酸素処理された細胞培養皿用いて培養した細胞(図4aおよびその拡大図である図4b)は、表面処理済みの細胞培養皿を用いて培養した細胞(図4cおよびその拡大図である図4d)と同等に接着、伸展している。一方、未処理の細胞培養皿を用いて培養した細胞(図4eおよびその拡大図である図4f)は線形化して細胞が伸展していない。
上記観察結果をもとに、各細胞培養皿を用いて培養した細胞の接着面積を比較した(図5)。ここでは、各細胞培養皿上の細胞の接着面積を任意の培養細胞40個の接着面積の平均値として示している。この結果より、活性酸素処理された細胞培養皿を用いて培養した細胞の接着面積の平均値(3416±1388μm)は、表面処理済みの細胞培養皿を用いて培養した細胞の接着面積の平均値(3597±3105μm)とほぼ同じであることが分かった。したがって、活性酸素による細胞培養基板の表面改質は、表面処理された市販の細胞培養基板の表面改質と、同等の効果を得られると考えられた。
続いて、前記細胞の接着面積の分布を比較した(図6)。活性酸素処理された細胞培養皿を用いて培養した細胞の接着面積の分布(図6a)は、2,501〜4,000μm付近に多くの細胞が分布していた。これに対して、表面処理済みの細胞培養皿を用いて培養した細胞の接着面積の分布(図6b)は、1,001〜4,500μm付近に多くの細胞が分布していた。また、未処理の細胞培養皿を用いて培養した細胞の接着面積の分布(図6c)は、501〜2,000μm付近に多くの細胞が分布していた。
このように、活性酸素処理された細胞培養皿を用いて培養した細胞の接着面積と表面処理済みの細胞培養皿を用いて培養した細胞の接着面積は、ほぼ同じであるのにもかかわらず、接着面積の分布に関しては、活性酸素処理された細胞培養皿を用いて培養した細胞の方が、明らかにばらつきが小さかった。
興味深いことに、任意の培養細胞40個の接着面積の平均値は、表面処理済みの細胞培養皿を用いて培養した細胞の接着面積の平均値の方が、活性酸素処理された細胞培養皿を用いて培養した細胞の接着面積の平均値と比べてわずかに大きかったにもかかわらず、接着面積が2,500μm以上の細胞の割合は、活性酸素処理された細胞培養皿を用いて培養した細胞では77.5%であるのに対して、表面処理済みの細胞培養皿を用いて培養した細胞では50.0%であった。
このことから、活性酸素による細胞培養基板の表面改質は、市販の細胞培養基板の表面改質とくらべて、細胞の接着性及び伸展性を高めることができ、細胞培養基板の表面改質方法としてより好ましいと考えられた。これは、市販の細胞培養基板の表面改質が細胞培養基板表面の酸化により親水性が増加する一方で表面粗さがあまり増加しないことに比べ、活性酸素による細胞培養基板の表面改質では、細胞培養基板表面の酸化による親水性の増加及び表面粗さの増加の両方が行われるためと考えられる。その結果、本発明の細胞培養基板は、表面の親水性の増加及び表面粗さの増加の相乗的な効果として、細胞の高い接着性及び伸展性という効果、並びに活性酸素を含む気体による均一的な処理による細胞接着面積のばらつきが小さいという効果を発揮すると考えられた。
また、培養の結果、コンタミネーションが発生していないことから、滅菌処理も十分に行われていた。したがって、本発明の方法により表面処理及び滅菌処理が行われた細胞培養基板は、表面処理された市販の細胞培養皿と同等の細胞の接着性及び増殖性を有する。
以上、本発明の方法により、活性酸素による有機高分子材料から成る細胞培養基板の表面改質と滅菌処理を同時に行うことを見出した。

Claims (7)

  1. 活性酸素により有機高分子材料から成る細胞培養基板の表面改質と滅菌処理を同時に行う方法であって、
    少なくとも一面が紫外線を透過しない通気性を有する滅菌バッグに前記細胞培養基板を封入し、
    活性酸素生成装置で発生した前記活性酸素を前記滅菌バッグに導入し、
    前記滅菌バッグ内で前記活性酸素を前記細胞培養基板に暴露する、方法であって
    前記活性酸素生成装置が酸素存在下、紫外線の照射により前記活性酸素を発生すること、及び
    前記紫外線が前記細胞培養基板に照射されないことを特徴とする、方法。
  2. 前記有機高分子材料が、ポリスチレンであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記細胞培養基板が封入された前記滅菌バッグが前記酸素存在下に静置されていることにより、前記活性酸素の発生と前記細胞培養基板への前記活性酸素の暴露を同一装置内で行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記活性酸素生成装置が紫外線ランプであることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
  5. 前記紫外線が、少なくとも260nm以下の波長の光を照射することを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載の方法。
  6. 前記紫外線が、少なくとも185nm及び254nmの波長の光を照射することを特徴とする、請求項に記載の方法。
  7. 前記細胞培養基板が、シャーレ、遠沈管、培養ビン、又は培養フラスコの少なくとも一部であることを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載の方法。
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