JP4489409B2 - Icカード用icモジュールの形成方法とicカード用icモジュール - Google Patents

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Description

本発明は、ICカード用ICモジュールの形成方法とICカード用ICモジュールに関する。詳しくは、ICカード用ICモジュールの端子板金属面の耐蝕性を向上させる技術に関する。したがって、本発明の利用分野は、ICカード用ICモジュールの製造やICカードの製造、利用の分野に関する。
ICカードに実装するICモジュールの接続端子金属面は、通常、プリント基板の素地である銅箔にニッケルめっきを施し、ニッケルめっきの上に金めっきを施している。
しかし、ICカード化して使用する過程において、金めっき面に錆が生じることが認められている。これは、薄層の金めっき面に生じている微小なピンホールに人体から生じる汗や、高温、高湿度の環境により水分が浸透し、銅箔上のニッケルめっきが錆びることに起因している。
この錆は、外観を損ねるだけではなく、錆の進行により電気的接続不良を引き起こす原因ともなる。
この錆を防止する対策として、金めっき層を厚くしてピンホールを防ぐ方法があるが、コスト高になる問題がある。
ここで、従来構成によるICカードとモジュールについて説明する。
図3は、上記従来のICモジュールを実装したICカードを示す平面図である。ICカード14は、ICカード用基体15に従来のICモジュール16の接続端子部11が表面に露出しており、該接続端子部11と外部接続装置であるICカードリーダーライターの接続ピンとが電気的に接続してデータ交信を行う。なお、接続端子部11は、JIS X 6303にて、各端子の機能が規格化されている。
さらに、ICカード用カード基体について説明する。すなわち、図4は、ICカード用カード基体を説明する図であって、図3におけるA−A線の断面図である。ICカード用基体15は、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、共重合ポリエステル、ABSまたはこれらの樹脂のアロイ等が使用される。これらを射出成形したり、複数のシート状とした材料を、必要に応じて印刷し、熱プレスなどの公知の方法で積層して、打ち抜いてカード形状とする。ICカード用基体15の一部をザグリ加工したザグリ凹部17へ接着シート18を貼付した従来のICモジュール16を落とし込み、熱圧着で接着することで、従来のICモジュール16が装着された構成となっている。
なお、接着シート18の外形は、ザグリ凹部17よりのはみ出しを防止するため、従来のICモジュール16の外形より一回り小さな形状となっている。さらに、接着シート18には封止樹脂部19より一回り大きな穴を開けた形状となっている。
接着シート18に封止樹脂部19より一回り大きな穴を開けるのは、接着シート18を従来のICモジュール16の裏面に貼付するときの作業性を考慮したものである。
このため、ICモジュール16の回路面には、外形周縁近くと樹脂封止部19の近くに接着シート18で被覆されていない部分が存在する。
次に、従来のICカードに搭載するICモジュールについて説明する。すなわち、図5はICチップを搭載前である接続端子基板の断面図であり、図6はICチップを搭載後であるICモジュールの断面図である。
図5のように、接続端子基板20は、ガラスエポキシ材料等による絶縁基板材料10の両面に銅箔21を接着剤でラミネートした基板に通常フォトエッチング法により、接続端子部5が形成される接続端子金属面2とこの裏面にICチップを実装するための回路等の回路面22を形成するパターニングにより形成されている。さらに、接続端子金属面2とこの裏面の回路面22との貫通孔(穴)23にも、ニッケル下地めっき9が厚さ3μmほど施された後に金めっき8が厚さ0.1μmほど施された構成となっている。
なお、貫通孔(穴)23にもニッケル下地めっき9及び金めっき8が施されることにより、接続端子部5とこの裏面の回路面22とが導通され、特にこの貫通孔(穴)23のめっきをスルーホールめっき24と称している。
また、この金めっき8は、厚さ0.1μmであり、非常に薄いため、直径数Å程度のピンホール3が不回避的に生じている。本発明は、このような微小なピンホール3に起因する錆の発生を防止する技術に関する。
図6では、裏面の回路面22にICチップ25をダイボンデング後にワイヤーボンデングにより、接続端子部5につながる接続部26とICチップ25の接続パット27を金ワイヤー28により接続している。さらに、ICチップ25と金ワイヤー28を覆って樹脂封止部19が設けられ、この樹脂封止部19は、液状の封止樹脂材料をポッテング方式やステンシルスクリーン印刷にて形成したものである。この樹脂封止部19の断面は、周縁から中央に向って徐々に高さが大きくなっており、全体として半だ円形断面となっている。
ところで、ICモジュールの腐蝕を抑制する技術にも、先行技術が存在する。その1つとして、ICモジュールの接続端子金属面の耐蝕性を向上させるのではないが、ICモジュール裏面の配線部の耐蝕及び耐水性を向上させる技術として、特許文献1がある。
すなわち、特許文献1では、ICモジュールとカード基材の間に接着シート等の接着層が介在している裏面側のモジュール基材上に形成されている配線部の一部は上記の接着層で被覆されているものの、被覆されていない部分の配線部も存在しており、ICモジュールとカード基材の間の隙間に水分が侵入したり、水が溜まったりした場合に、配線部に短絡が発生したり、またICカードの曲げや捻じれなどの負荷によって配線部表面のめっきに微細な亀裂が発生した場合に、水分との接触によって亀裂部分から腐食が進行して導通不良を生じることがあるという不都合を指摘している。
特開平11−259620号公報
しかし、特許文献1の技術では、接続端子金属面の金めっきのピンホールに起因する腐蝕を防止できない。
そこで、本発明は、ICカードの接続端子金属面の腐蝕問題を解消するべく、接続端子金属面に封孔剤を塗布することで、金めっき面に生じているピンホールを封止できることに着目し、ICカードのICモジュール接続端子金属面の耐蝕性を向上させる技術を鋭意研究して本発明の完成に至ったものである
上記課題を解決するために本発明の請求項1の要旨は、以下のa.〜c.の工程を有することを特徴とするICカード用ICモジュールの形成方法、である。
a.絶縁基材の両面に銅箔貼りしたプリント基板の銅箔をエッチングして、表面側に所定数の接続端子を各接続端子が露出した絶縁基材により区画されるように形成すると共に、プリント基板の裏面側に必要な回路を形成する工程、
b.表面側の接続端子と裏面側の回路の銅箔にニッケル下地めっきを施してから金めっきを施す工程、
c.少なくとも表面側接続端子の金めっき面を含む全面に、メルカト化合物と界面活性剤を含む封孔剤を塗布して、メルカト化合物の硫黄(S)原子が有する非共有電子対により、金めっき層に生じたピンホールを介して該メルカト化合物を下地金属のニッケルに結合させて金めっき層のピンホールを封止する一方、前記露出した絶縁基材にはメルカト化合物を付着させない工程、
上記課題を解決するために本発明の請求項2の要旨は、ICモジュールの接続端子表面の金めっき面に、メルカプト化合物と界面活性剤を含む封孔剤が塗布され、メルカト化合物の硫黄(S)原子が有する非共有電子対により、金めっき層に生じたピンホールを介して該メルカト化合物が下地金属のニッケルに結合して、金めっき層に生じたピンホールを封止していることを特徴とするICカード用ICモジュールである。

本発明のICカードICモジュールは、ICモジュールの接続端子金属面に封孔剤が塗布されており、当該封孔剤に含まれるメルカプト化合物が、金めっき層に空いたピンホールを介して、下面のニッケルめっき層に結合してピンホールを封止することで、ピンホールに起因する錆の拡大を防止することができる。
図1は、本発明のICカード用ICモジュールを説明する断面図である。図1のように本発明のICカード用ICモジュール1では、ICモジュール1の接続端子金属面2に封孔剤が塗布されていて、ピンホール3が封止されている。これにより、人体の汗や湿気がピンホール3を通してニッケル下地めっき9に達するのを防止する。
封孔剤には、メルカプト化合物4を主成分とし、界面活性剤6を含む封孔剤が好ましく使用できる。その理由は、封孔剤に含有されるメルカプト化合物4の親水基(SH)5と界面活性剤6の親水基7が、金めっき8の金属イオン及びピンホール3により露出しているニッケル下地めっき9の金属イオンと強固に結合することによる。
なお、メルカプト化合物4の薄膜自体は導電性であって端子端子部5の導通を阻害することはない。
また、メルカプト化合物4の親水基(SH)5及び界面活性剤6の親水基7は、金属ではないガラスエポキシ材料等による絶縁基板材料10には自由電子がないため金属イオン結合できないため、ガラスエポキシ材料等による絶縁基板材料10にはメルカプト化合物4及び界面活性剤6が付着せず、接続端子金属面2の接続端子部11の間での短絡が生じることはない。
図2は、メルカプト化合物4が、親水基(SH)5と疎水基(R)12より形成され、界面活性剤6にも親水基7と疎水基13があること示す模式図である。
封孔処理は、ICチップ実装前の従来構成のICカード用ICモジュール接続端子金属面2にのみ封孔剤をスプレー、ハケ塗り等の方法で塗布して処理することができる。
封孔剤に含有されるメルカプト化合物の下記化学式(1)として示す。なお、メルカプト化合物は、親水基(SH)と疎水基(R)部分からなり、親水基(SH)のSには一対の非共有電子対を有している。この非共有電子対が接続端子金属面2及びニッケル下地めっき9との結合に作用する。
[化1] R

S−H
・・
この防錆被膜は、メルカプト化合物4の親水基(SH)5及び界面活性剤6の親水基7が、接続端子金属面2及びニッケル下地めっき9と強固に結合する。さらに、界面活性剤6がメルカプト化合物4の疎水基(R)12を一定の方向に向かせ、より緻密な被膜を形成し、メルカプト化合物4の疎水基(R)12及び界面活性剤6の疎水基13が、水分等の侵入を防止するものである。
[実施例1]
以下、本発明のICカード用ICモジュールの形成方法とICカードICモジュールの実施例を説明する。
<接続基板の製造工程>
両面銅箔貼りガラスエポキシ材料プリント基板(ガラエポエポキシ材料110μm、銅箔層各35μm厚)の表面側に、6端子からなる接続端子をフォトエッチング法で形成した。また、裏面側には回路面をフォトエッチング法により同時に形成した。その後、接続端子金属面とこの裏面の回路面との貫通孔(穴)を形成した後にニッケル下地めっきを厚さ3μm施してから、金めっきを厚さ0.1μm施した。
<封孔処理工程>
封孔処理は、メルカプト化合物である株式会社ジャパンエナジー製Colllintacs−W 25g/Lに界面活性剤 80g/Lを含有させたイオン交換水溶液である封孔剤を用いて、接続端子金属面8のみに乾燥後の厚みが3μm程度になるようにスプレーで塗布する。この後、常温にて1分間放置し、自然乾燥する。
<ICモジュール製造工程>
ICチップは、0.38mmになるまでバックラップし、ダイボンデングにより総厚0.19mmの接続端子基板に搭載する。その後、ワイヤボンデングにて、接続端子部につながる接続部とICチップの接続パットとは、金ワイヤーにより接続される。この後、樹脂封止は、ポッテング方式によりモールド樹脂を滴下後に硬化で樹脂封止部が得られる。なお、樹脂封止の硬化条件は、150℃、15分である。以上により、ICモジュール3の総厚は、0.6mm程度となる。
さらに、ICカード用カード基体との熱圧着用にICモジュールの回路面には、ポリエステル系接着シートを貼付する。
<ICカード用カード基体の製造工程>
コアシートは、2層とし、それぞれの厚みが、0.36mmの白色硬質塩化ビニールシートを重ねたのちに、上下に0.05mmの透明塩化ビニールシートを重ねて、熱圧融着(150°C、20kgf/cm、15分)後に個々のカード
サイズに打ち抜きを行い、ICカード用カード基体が得られる。
次に、このICカード用カード基体にICモジュールを装着するザグリ凹部をNC切削加工機により、加工する。ICモジュールの接続端子基板の厚さに相当する深さに第1凹部を切削した。この段階で第1凹部の大きさは13mm×11.8mm(角部の曲率半径2.5mm)、深さは0.23mmであった。続いて、さらに第1凹部の中央部を大きさほぼ8mm×8mm、合計深さが、0.65mmとなるように切削し、第2凹部をICモジュールの樹脂封止部が埋設できる大きさと深さにした。
<ICモジュール実装工程>
上記ICカード用カード基体2のザグリ凹部にポリエステル系接着シートが貼付されたICモジュールをはめ込み、ホットスタンパーなどにより熱圧着(170℃、15kgf/cm、5秒)で固定することで、ICカードを完成した。
上記、実施例1で完成したICカード及びICモジュールの耐蝕性の効果を塩水噴霧試験によって確認した結果を以下に示す。
表1に示す試験条件による塩水噴霧試験後に、接続端子金属面4に生じた腐蝕箇所を倍率5倍の光学顕微鏡にて目視で計数した。
Figure 0004489409
Figure 0004489409
表2に示す封孔剤を塗布したICモジュールを実装したICカードでは未処理のICモジュールを実装したICカードに比べて、腐蝕箇所は平均で1/4との効果が得られた。
ICカードのICモジュールは、COB(Chip On Board)の形態で説明したが、リール形状のフレキシブル基板を用いたCOT(Chip On Tape)の形態でも良い。
本発明の実施形態として、ICカードについて説明したが、同一カード基体上にICモジュールとアンテナコイルに接続した非接触型ICモジュールを実装しているハイブリットICカードもあるが、当該ハイブリットカードに本発明を適用できることは自明のことである。
本発明のICモジュールを示す断面図 メルカプト化合物と界面活性剤の模式図 従来のICカードのICモジュールを実装したICカードを示す平面図 従来のICカード用カード基体の断面図 従来のICチップを搭載前である接続端子基板の断面図 従来のICチップを搭載後であるICモジュールの断面図
符号の説明
1……ICモジュール
2……接続端子金属面
3……ピンホール
4……メルカプト化合物
5……親水基(SH)
6……界面活性剤
7……界面活性剤の親水基
8……金めっき
9……ニッケル下地めっき
10…絶縁基板材料
11…接続端子部
12…疎水基(R)
13…界面活性剤の疎水基
14…ICカード
15…ICカード用基体
16…従来のICモジュール
17…ザグリ凹部
18…接着シート
19…樹脂封止部
20…接続端子基板
21…銅箔
22…回路面
23…貫通孔
24…スルーホールめっき
25…ICチップ
26…接続端子部につながる接続部
27…ICチップの接続パット
28…金ワイヤー

Claims (2)

  1. 以下のa.〜c.の工程を有することを特徴とするICカード用ICモジュールの形成方法、
    a.絶縁基材の両面に銅箔貼りしたプリント基板の銅箔をエッチングして、表面側に所定数の接続端子を各接続端子が露出した絶縁基材により区画されるように形成すると共に、プリント基板の裏面側に必要な回路を形成する工程、
    b.表面側の接続端子と裏面側の回路の銅箔にニッケル下地めっきを施してから金めっきを施す工程、
    c.少なくとも表面側接続端子の金めっき面を含む全面に、メルカト化合物と界面活性剤を含む封孔剤を塗布して、メルカト化合物の硫黄(S)原子が有する非共有電子対により、金めっき層に生じたピンホールを介して該メルカト化合物を下地金属のニッケルに結合させて金めっき層のピンホールを封止する一方、前記露出した絶縁基材にはメルカト化合物を付着させない工程、
  2. ICモジュールの接続端子表面の金めっき面に、メルカプト化合物と界面活性剤を含む封孔剤が塗布され、メルカト化合物の硫黄(S)原子が有する非共有電子対により、金めっき層に生じたピンホールを介して該メルカト化合物が下地金属のニッケルに結合して、金めっき層に生じたピンホールを封止していることを特徴とするICカード用ICモジュール。
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