本発明は、III族窒化物系化合物半導体発光素子に関する。特に、横方向エピタキシャル成長(ELO)成長を用いる、III族窒化物系化合物半導体発光素子に関し、加えてIII族窒化物系化合物半導体の製造方法及びIII族窒化物系化合物半導体基板に関する。尚、III族窒化物系化合物半導体とは、例えばAlN、GaN、InNのような2元系、AlxGa1-xN、AlxIn1-xN、GaxIn1-xN(いずれも0<x<1)のような3元系、AlxGayIn1-x-yN(0<x<1, 0<y<1, 0<x+y<1)の4元系を包括した一般式AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1, 0≦y≦1, 0≦x+y≦1)で表されるものがある。なお、本明細書においては、特に断らない限り、単にIII族窒化物系化合物半導体と言う場合は、伝導型をp型あるいはn型にするための不純物がドープされたIII族窒化物系化合物半導体をも含んだ表現とする。
III族窒化物系化合物半導体は、例えば発光素子とした場合、発光スペクトルが紫外から赤色の広範囲に渡る直接遷移型の半導体であり、発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)等の発光素子に応用されている。また、そのバンドギャップが広いため、他の半導体を用いた素子よりも高温において安定した動作を期待できることから、FET等トランジスタへの応用も盛んに開発されている。また、ヒ素(As)を主成分としていないことで、環境面からも様々な半導体素子一般への開発が期待されている。このIII族窒化物系化合物半導体では、通常、サファイアを基板として用い、その上に形成している。
しかしながら、サファイア基板上にIII族窒化物系化合物半導体を形成すると、サファイアとIII族窒化物系化合物半導体との格子定数のミスフィットにより転位が発生し、このため素子特性が良くないという問題がある。このミスフィットによる転位は半導体層を縦方向(基板面に垂直方向)に貫通する貫通転位であり、III族窒化物系化合物半導体中に109cm-2程度の転位が伝搬してしまうという問題がある。これは組成の異なるIII族窒化物系化合物半導体各層を最上層まで伝搬する。これにより例えば発光素子の場合、LDの閾値電流、LD及びLEDの素子寿命などの素子特性が良くならないという問題があった。また、他の半導体素子としても、欠陥により電子が散乱することから、移動度(モビリティ)の低い半導体素子となるにとどまっていた。これらは、他の基板を用いる場合も同様であった。
これについて、図18の模式図で説明する。図18は、基板91と、その上に形成されたバッファ層92と、更にその上に形成されたIII族窒化物系化合物半導体層93を示したものである。基板91としてはサファイアなど、バッファ層92としては窒化アルミニウム(AlN)などが従来用いられている。窒化アルミニウム(AlN)のバッファ層92は、サファイア基板91とIII族窒化物系化合物半導体層93とのミスフィットを緩和させる目的で設けられているものであるが、それでも転位の発生を0とすることはできない。この転位発生点900から、縦方向(基板面に垂直方向)に貫通転位901が伝播し、それはバッファ層92、III族窒化物系化合物半導体層93をも貫いていく。こうして、III族窒化物系化合物半導体層93の上層に、所望の様々なIII族窒化物系化合物半導体を積層して半導体素子を形成しようとすると、III族窒化物系化合物半導体層93の表面に達した転位902から、半導体素子を貫通転位が更に縦方向に伝搬していくこととなる。このように、従来の技術では、III族窒化物系化合物半導体層を形成する際、転位の伝搬を阻止できないという問題があった。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、貫通転位の発生を抑制したIII族窒化物系化合物半導体を製造し、その上に発光素子を形成することである。
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、基板上にIII族窒化物系化合物半導体を積層して形成されたIII族窒化物系化合物半導体発光素子において、基板には、その表面の少なくとも一部に、点状、ストライプ状、又は格子状の島状態の、平滑度の悪化した部分が設けられており、基板の平滑度の悪化していない部分に形成された第1バッファ層と、基板の平滑度の悪化した部分に形成された第2バッファ層と、基板の平滑度の悪化した部分の第2バッファ層の上部に形成された、第1バッファ層を核として、基板の平滑度の悪化した部分の第2バッファ層を覆うよう、両側から横方向エピタキシャル成長させたIII族窒化物系化合物半導体層を有することを特徴とするIII族窒化物系化合物半導体発光素子である。
また、請求項2の発明は、基板上にIII族窒化物系化合物半導体を積層して形成されたIII族窒化物系化合物半導体発光素子において、基板には、その表面の少なくとも一部に、点状、ストライプ状、又は格子状の島状態の、平滑度の悪化した部分が設けられており、基板の平滑度の悪化していない部分に形成された第1バッファ層と、基板の平滑度の悪化した部分に形成された第2バッファ層と、第1バッファ層上に形成されたIII族窒化物系化合物半導体から成る単結晶層と、基板の平滑度の悪化した部分の第2バッファ層の上部に形成された、単結晶層を核として、基板の平滑度の悪化した部分の第2バッファ層を覆うよう、両側から横方向エピタキシャル成長させたIII族窒化物系化合物半導体層を有することを特徴とするIII族窒化物系化合物半導体発光素子である。
本発明のIII族窒化物系化合物半導体発光素子の、縦及び横方向エピタキシャル成長させたIII族窒化物系化合物半導体層の製造方法の概略を、図1乃至図11を参照しながら説明する。
図1の(a)のように、基板1を、ストライプ状又は格子状等の島状態に削り、段差を設ける。次にバッファ層2を形成する。以下、図1の(b)のように、バッファ層2が、主に基板1の段差の上段面に形成される部分21と段差の下段面に形成される部分22とから成る場合を説明する。
図1の(b)のような、ストライプ状又は格子状等の島状態の段差を有する基板1の、段差の上段面に形成される部分21と段差の下段面に形成される部分22とからなるバッファ層2を核としてIII族窒化物系化合物半導体3を縦及び横方向エピタキシャル成長させる。すると、図1(c)のように、段差の下段面に形成されたバッファ層22から成長するIII族窒化物系化合物半導体32が段差を埋める前に、段差の上段面に形成されたバッファ層21を核として成長するIII族窒化物系化合物半導体31が段差上方を覆う様にすることができる。さらにIII族窒化物系化合物半導体3を縦及び横方向成長させれば、図1の(d)のように、基板の段差の上方は、横方向エピタキシャル成長により覆われるので、縦方向に伝搬する貫通転位の密度が極めて少なくなる。
このとき、段差の下段の底面に形成されたバッファ層22から縦方向にエピタキシャル成長するIII族窒化物系化合物半導体32が段差の上段まで成長するよりも、段差の上段面に形成されたバッファ層21から横方向にエピタキシャル成長するIII族窒化物系化合物半導体31が向かい合う段差の上段面からの横方向エピタキシャル成長面と合体する方が早いならば、段差を埋めた部分のIII族窒化物系化合物半導体31上部には段差の底面に形成されたバッファ層22から伝搬する貫通転位は著しく抑制され、極めて良質な結晶領域とすることができる。この場合、図1の(d)のように段差の底面に形成されたバッファ層22を核として成長したIII族窒化物系化合物半導体32の成長面が表面に出ることなく空洞として残ることとなる。その上部は両側の段差の上段面に形成されたバッファ層21を核として成長したIII族窒化物系化合物半導体31の成長面の合体が生じており、バッファ層22から伝搬する貫通転位はこの空洞で止められることとなる。
次に、図1の(b)のような基板1の段差の側面にバッファ層がほとんど形成されない場合ではなく、基板1の段差の側面にもバッファ層が形成される場合を図2で説明する。図1(a)同様、基板1を削って段差を形成する(図2の(a))。図2の(b)のように、ストライプ状又は格子状等の島状態の段差を有する基板1の、段差の上段面、段差の下段面、及び段差の側面に形成されるバッファ層2を核としてIII族窒化物系化合物半導体3を縦及び横方向エピタキシャル成長させる。すると、図2(c)のように、段差の下段面、及び側面のバッファ層2から縦方向成長するIII族窒化物系化合物半導体3が段差を埋めるとともに、段差の上段面のバッファ層2から横方向成長するIII族窒化物系化合物半導体3も段差を覆う様に成長する。尚、ここで段差の側面から「縦」方向に成長するとは段差の側面の法線方向の成長を言う。すると、図1の(d)のように、基板の段差の上方は、段差の側面のバッファ層2から縦方向成長するIII族窒化物系化合物半導体3が段差を埋める部分と、段差の上段面のバッファ層2から横方向成長するIII族窒化物系化合物半導体3とでしめられる。段差の側面のバッファ層2から縦方向成長するIII族窒化物系化合物半導体3の縦方向の貫通転位は段差の側面の法線方向であり、基板面(上段面及び底面)から縦方向に伝搬する貫通転位の密度が極めて少なくなる。
このとき、段差の下段の底面に形成されたバッファ層2から縦方向にエピタキシャル成長するIII族窒化物系化合物半導体3が段差の上段まで成長するよりも、段差の上段面に形成されたバッファ層2から横方向にエピタキシャル成長するIII族窒化物系化合物半導体3が向かい合う段差の上段面からの横方向エピタキシャル成長面と合体する方が早いならば、段差を埋めた部分のIII族窒化物系化合物半導体3上部には段差の底面に形成されたバッファ層2から伝搬する貫通転位は著しく抑制され、極めて良質な結晶領域とすることができる。この場合、図2の(d)のように段差の底面に形成されたバッファ層2を核として成長したIII族窒化物系化合物半導体3の成長面が表面に出ることなく空洞として残ることとなる。その上部は両側の段差の上段面に形成されたバッファ層2を核として成長したIII族窒化物系化合物半導体3の成長面の合体が生じており、バッファ層2から伝搬する貫通転位はこの空洞で止められることとなる。
上記の様な速い横方向エピタキシャル成長は、III族窒化物系化合物半導体層31が{11−20}面を段差側面方向の成長面とするとき容易に実現可能である。このとき例えば横方向エピタキシャル成長中の成長面の少なくとも上部を{11−20}面のまま保てば良い。勿論、横方向エピタキシャル成長面はIII族窒化物系化合物半導体層の{11−20}面に限定されない。
以上のようなことは、バッファ層を要せずに基板に直接エピタキシャル成長するIII族窒化物系化合物半導体にも応用できる。これを図3に示す。基板1を削って段差を形成したのち(図3の(a))、III族窒化物系化合物半導体3を縦及び横方向成長させ(図3の(b))、段差の上段面に形成される部分のIII族窒化物系化合物半導体3を核とした横方向成長により段差を覆う(図3の(c))。また、図4に示すように、バッファ層2(段差の上段のバッファ層21と段差の下段のバッファ層22)にIII族窒化物系化合物半導体の単結晶層3(段差の上段の単結晶層31と段差の下段の単結晶層32)を形成して(図4の(b))、段差の上段の単結晶層31を核とした横方向成長により段差を覆うこともできる(図4の(c)、(d))。
図5の(a)のように、基板1上にバッファ層2を形成する。次に図5の(b)のように、バッファ層2と基板1を削り、段差を設ける。ここで図5の(c)のように、III族窒化物系化合物半導体31を主にバッファ層2を核として縦及び横方向エピタキシャル成長させる。図5の(c)では段差の底面及び側面からも一部III族窒化物系化合物半導体32のエピタキシャル成長が起こった場合を示している。このとき、段差の下段の底面及び側面からエピタキシャル成長するIII族窒化物系化合物半導体32が段差の上段まで成長するよりも、段差の上段面に形成されたバッファ層2から横方向にエピタキシャル成長するIII族窒化物系化合物半導体31が向かい合う段差の上段面からの横方向エピタキシャル成長面と合体する方が早いならば、段差を埋めた部分のIII族窒化物系化合物半導体31上部には段差の底面から伝搬する貫通転位は著しく抑制され、極めて良質な結晶領域とすることができる。この場合、図5の(d)のように段差の底面から成長したIII族窒化物系化合物半導体32の成長面が表面に出ることなく空洞として残ることとなる。その上部は両側の段差の上段面に形成されたバッファ層2を核として成長したIII族窒化物系化合物半導体31の成長面の合体が生じており、バッファ層2から伝搬する貫通転位はこの空洞で止められることとなる。
上記の様な速い横方向エピタキシャル成長は、III族窒化物系化合物半導体層31が{11−20}面を段差側面方向の成長面とするとき容易に実現可能である。このとき例えば横方向エピタキシャル成長中の成長面の少なくとも上部を{11−20}面のまま保てば良い。勿論、横方向エピタキシャル成長面はIII族窒化物系化合物半導体層の{11−20}面に限定されない。
また、図6に示すように、バッファ層2とIII族窒化物系化合物半導体の単結晶層31を形成して(図6の(a))、段差を形成し(図6の(b))、段差の上段の単結晶層31を核とした横方向成長により段差を覆うこともできる(図6の(c)、(d))。
〔請求項1及び2に係る発明〕
図7の(a)のように、基板1表面に例えばエッチング、罫描きなどにより荒れた部分Aを形成し、荒れていない部分がストライプ状又は格子状等の島状態となるようにする。ここにバッファ層2を形成すると、表面の荒れていない部分に形成されたバッファ層21と比較し、表面の荒れた部分Aに形成されるバッファ層22は表層に均一な結晶層ができず、且つ成長速度が遅い(図7の(b))。ここにIII族窒化物系化合物半導体3を縦及び横方向エピタキシャル成長させると、主に表面の荒れていない部分に形成されたバッファ層21を核として単結晶層が速い速度で形成され、表面の荒れた部分Aに形成されるバッファ層22をも横方向に成長することで覆っていく(図7の(c))。更にIII族窒化物系化合物半導体3の縦及び横方向エピタキシャル成長を続けると、表面の荒れた部分Aに形成されるバッファ層22は、主に表面の荒れていない部分に形成されたバッファ層21を核として横方向エピタキシャル成長したIII族窒化物系化合物半導体3が完全に覆うこととなる。このとき、表面の荒れた部分Aに形成されるバッファ層22からの縦方向の貫通転位は、その上方に横方向エピタキシャル成長により形成されたIII族窒化物系化合物半導体3には伝搬しないこととなる。
図8の(a)のように、基板1表面に例えばエッチング、罫描きなどにより荒れた部分Aを形成し、荒れていない部分がストライプ状又は格子状等の島状態となるようにする。基板1上にエピタキシャル成長するIII族窒化物系化合物半導体3をここに形成すると、表面の荒れていない部分に形成されたIII族窒化物系化合物半導体層31と比較し、表面の荒れた部分Aに形成されるIII族窒化物系化合物半導体層32は表層に均一な単結晶層ができず、且つ成長速度が遅い(図8の(b))。III族窒化物系化合物半導体3を縦及び横方向エピタキシャル成長させる条件でエピタキシャル成長を続ければ、表面の荒れた部分Aに形成されるIII族窒化物系化合物半導体層32上部は、主に表面の荒れていない部分に形成されたIII族窒化物系化合物半導体31が横方向エピタキシャル成長して完全に覆うこととなる。このとき、表面の荒れた部分Aに形成されるIII族窒化物系化合物半導体32からの縦方向の貫通転位は、その上方に横方向エピタキシャル成長により形成されたIII族窒化物系化合物半導体31には伝搬しないこととなる。
更には、図9のように、図7のようなIII族窒化物系化合物半導体3の1段の縦及び横方向エピタキシャル成長ではなく、まず表面の荒れていない部分に形成されたバッファ層21上にIII族窒化物系化合物半導体31を縦方向成長させて単結晶層とし、次にこのIII族窒化物系化合物半導体31の単結晶層を核としてIII族窒化物系化合物半導体32を縦及び横方向成長させることもできる。
図10のように、基板1にバッファ層2を形成したのち(図10の(a))、その表面をエッチング、罫描きにより表面を悪化させ(図10の(b))、III族窒化物系化合物半導体3を縦及び横方向成長させても良い(図10の(c)、(d))。また、図11のように、基板1にバッファ層2とIII族窒化物系化合物半導体層31を形成したのち(図11の(a))、その表面をエッチング、罫描きにより表面を悪化させ(図11の(b))、III族窒化物系化合物半導体33を縦及び横方向成長させても良い(図11の(c)、(d))。いずれも、表面が悪化していない部分により早くIII族窒化物系化合物半導体層が形成されるのでそれを核として横方向成長させることにより、表面が悪化した部分をも覆うよう成長させることができる。
以上のような方法により、縦方向に伝搬する貫通転位を抑制した領域を有するIII族窒化物系化合物半導体を形成することができる。
上記の工程で得られたIII族窒化物系化合物半導体層の、縦及び横方向エピタキシャル成長した層の上に素子を形成することで、欠陥の少ない、移動度の大きい層を有する半導体素子とすることができる。
上記の工程で得られたIII族窒化物系化合物半導体層の、縦及び横方向エピタキシャル成長した層の上に発光素子を形成することで、素子寿命、或いはLDの閾値の改善された発光素子とすることができる(全請求項)。
尚、上記の工程で得られたIII族窒化物系化合物半導体層の、横方向エピタキシャル成長した部分の上層のみをその他の層から分離することで、転位等結晶欠陥の著しく抑制された結晶性の良いIII族窒化物系化合物半導体を得ることができる。「略全部除去」とは、製造上の簡便さから、一部貫通転位の残った部分を含んでいたとしても本発明に包含されることを示すものである。
図1、2、5、7及び8に本発明のIII族窒化物系化合物半導体の製造方法の実施の形態のそれぞれの一例の概略を示す。図1においては、バッファ層2が基板1のダイシングにより形成された側面に形成されない例を示している。基板1をダイシングして段差を形成し(図1の(a))、バッファ層2を形成して(図1の(b))、III族窒化物系化合物半導体層3を横方向エピタキシャル成長させる(図1の(c))。図1の(a)のダイシングの幅と深さは、上述のように段差の底面に形成されたバッファ層22を核として縦方向成長するIII族窒化物系化合物半導体層32が段差を埋める前に、段差の上段面に形成されたバッファ層21を核として縦及び横方向成長するIII族窒化物系化合物半導体層31が段差の上部を覆うよう決定される。図1の(c)では横方向エピタキシャル成長面が例えば{11−20}面である場合を想定しているが、本発明は成長面に限定されない。こうして、段差の底面の縦方向の成長によりダイシングされた部分が埋まる前に、段差の上段面に形成されたバッファ層21を核として横方向成長がダイシングされた部分の上方で合体するよう、ダイシング形状と横方向エピタキシャル成長条件とを設定することで、ダイシングされた上部のIII族窒化物系化合物半導体31には貫通転位が抑制された領域を形成する(図1の(d))。
図2は基板1の段差の側面にもバッファ層2が形成される場合を示す。これも図1の場合とほぼ同様である。
図5は基板1にバッファ層2を形成したのちダイシングする実施の形態である。バッファ層2が形成されていない基板1の段差の底面及び側面での縦方向成長は無いか極めて遅く、段差の上段面に形成されたバッファ層2を核とした横方向成長によりダイシングされた段差を覆う(図5の(c)及び(d))。図5の(a)のダイシングの幅と深さは、上述のように段差の底面から縦方向成長するIII族窒化物系化合物半導体層32が段差を埋める前に、段差の上段面に形成されたバッファ層21を核として縦及び横方向成長するIII族窒化物系化合物半導体層31が段差の上部を覆うよう決定される。図5の(c)では横方向エピタキシャル成長面が例えば{11−20}面である場合を想定しているが、本発明は成長面に限定されない。
図7は、基板1の表面を荒らしたのちバッファ層2を形成する実施の形態である。表面の荒れた部分Aの面積等は、荒れた部分A上に形成された、表層に均一な単結晶層ができず且つ成長速度が遅いバッファ層22上を、面の荒れていない部分に形成されたバッファ層21を核としたIII族窒化物系化合物半導体3が縦及び横方向エピタキシャル成長して覆うよう決定される。
図8は、基板1の表面を荒らしたのちIII族窒化物系化合物半導体を直接形成する実施の形態である。表面の荒れた部分Aの面積等は、荒れた部分A上に形成された、表層に均一な単結晶層ができず且つ成長速度が遅いIII族窒化物系化合物半導体32上を、面の荒れていない部分に形成されたIII族窒化物系化合物半導体層31が縦及び横方向エピタキシャル成長して覆うよう決定される。
上記の発明の実施の形態としては、次の中からそれぞれ選択することができる。
基板上にIII族窒化物系化合物半導体を順次積層を形成する場合は、基板としてはサファイア、シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、スピネル(MgAl2O4)、ZnO、MgOその他の無機結晶基板、リン化ガリウム又は砒化ガリウムのようなIII-V族化合物半導体あるいは窒化ガリウム(GaN)その他のIII族窒化物系化合物半導体等を用いることができる。
III族窒化物系化合物半導体層を形成する方法としては有機金属気相成長法(MOCVD又はMOVPE)が好ましいが、分子線気相成長法(MBE)、ハライド気相成長法(Halide VPE)、液相成長法(LPE)等を用いても良く、各層を各々異なる成長方法で形成しても良い。
例えばサファイア基板上にIII族窒化物系化合物半導体積層する際、結晶性良く形成させるため、サファイア基板との格子不整合を是正すべくバッファ層を形成することが好ましい。他の基板を使用する場合もバッファ層を設けることが望ましい。バッファ層としては、低温で形成させたIII族窒化物系化合物半導体AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1, 0≦y≦1, 0≦x+y≦1)、より好ましくはAlxGa1-xN(0≦x≦1)が用いられる。このバッファ層は単層でも良く、組成等の異なる多重層としても良い。バッファ層の形成方法は、380〜420℃の低温で形成するものでも良く、逆に1000〜1180℃の範囲で、MOCVD法で形成しても良い。また、DCマグネトロンスパッタ装置を用いて、高純度金属アルミニウムと窒素ガスを原材料として、リアクティブスパッタ法によりAlNから成るバッファ層を形成することもできる。同様に一般式AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1, 0≦y≦1, 0≦x+y≦1、組成比は任意)のバッファ層を形成することができる。更には蒸着法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法、ECR法を用いることができる。物理蒸着法によるバッファ層は、200〜600℃で行うのが望ましい。さらに望ましくは300〜500℃であり、さらに望ましくは350〜450℃である。これらのスパッタリング法等の物理蒸着法を用いた場合には、バッファ層の厚さは、100〜3000Åが望ましい。さらに望ましくは、100〜500Åが望ましく、最も望ましくは、100〜300Åである。また、横方向エピタキシャル成長の成長の核となるIII族窒化物系化合物半導体層及び/又は上層のIII族窒化物系化合物半導体は、バッファ層と単結晶III族窒化物系化合物半導体層とを1周期として、多重周期形成した層(基底層)としても良い。また、基底層を用いる場合は、横方向エピタキシャル成長の核となる層として、最上層は単結晶層がより望ましい。
バッファ層、横方向エピタキシャル成長の成長の核となるIII族窒化物系化合物半導体層、横方向エピタキシャル成長させる層、及び/又は上層のIII族窒化物系化合物半導体は、III族元素の組成の一部は、ボロン(B)、タリウム(Tl)で置き換えても、また、窒素(N)の組成一部をリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)で置き換えても本発明を実質的に適用できる。また、これら元素を組成に表示できない程度のドープをしたものでも良い。例えば組成にインジウム(In)、ヒ素(As)を有しないIII族窒化物系化合物半導体であるAlxGa1-xN(0≦x≦1)に、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)よりも原子半径の大きなインジウム(In)、又は窒素(N)よりも原子半径の大きな(As)をドープすることで、窒素原子の抜けによる結晶の拡張歪みを圧縮歪みで補償し結晶性を良くしても良い。この場合はアクセプタ不純物がIII族原子の位置に容易に入るため、p型結晶をアズグローンで得ることもできる。このようにして結晶性を良くすることで本願発明と合わせて更に貫通転位を100乃至1000分の1程度にまで下げることもできる。なお、発光素子として構成する場合は、本来III族窒化物系化合物半導体の2元系、若しくは3元系を用いることが望ましい。
n型のIII族窒化物系化合物半導体層を形成する場合には、n型不純物として、Si、Ge、Se、Te、C等IV族元素又はVI族元素を添加することができる。また、p型不純物としては、Zn、Mg、Be、Ca、Sr、Ba等II族元素又はIV族元素を添加することができる。これらを複数或いはn型不純物とp型不純物を同一層にドープしても良い。
横方向エピタキシャル成長としては成長面が基板に垂直となるものが望ましいが、基板に対して斜めのファセット面のまま成長するものでも良い。
横方向エピタキシャル成長としては、横方向エピタキシャル成長面の少なくとも上部と基板面とは垂直であることがより望ましく、更にはいずれもIII族窒化物系化合物半導体の{11−20}面であることがより望ましい。
エッチングする際は、深さと幅の関係から、横方向エピタキシャル成長により塞がれるように段差を設ける。この時、異なる層からの縦方向成長が少なくとも初期段階において遅いことも利用する。
基板上に積層するIII族窒化物系化合物半導体層の結晶軸方向が予想できる場合は、基板の段差側面がIII族窒化物系化合物半導体層のa面({11−20}面)又はm面({1−100}面)と平行となるようストライプ状にマスク或いはダイシングを施すことが有用である。なお、島状、格子状等に、上記ストライプ及びマスクを任意に設計して良い。横方向エピタキシャル成長面は、基板面に垂直なものの他、基板面に対し斜めの角度の成長面でも良い。III族窒化物系化合物半導体層のa面として(11−20)面を横方向エピタキシャル成長面とするには例えばストライプの長手方向はIII族窒化物系化合物半導体層のm面である(1−100)面に垂直とする。例えば基板をサファイアのa面又はc面とする場合は、どちらもサファイアのm面がその上に形成されるIII族窒化物系化合物半導体層のa面と通常一致するので、これに合わせてダイシングを施す。点状、格子状その他の島状とする場合も、輪郭(側壁)を形成する各面が上方に形成されるIII族窒化物系化合物半導体層の{11−20}面と一致することが望ましい。
エッチングマスクは、酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(Si3N4)、酸化チタン(TiOX)、酸化ジルコニウム(ZrOX)等の酸化物、窒化物、これらの多層膜をもちいることができる。これらの成膜方法は蒸着、スパッタ、CVD等の気相成長法の他、任意である。
エッチングをする場合は反応性イオンビームエッチング(RIBE)が望ましいが、任意のエッチング方法を用いることができる。また、エッチングに代えて、スクライビング等、機械的方法により段差を形成しても良い。表面を荒らす場合も、スクライビング、ダイヤモンドカッターによる罫描き等、任意である。
上記の貫通転位の抑制された領域を有するIII族窒化物系化合物半導体の、全体或いは貫通転位の抑制された領域を中心としてその上部にFET、発光素子等の半導体素子を形成することができる。発光素子の場合は、発光層は多重量子井戸構造(MQW)、単一量子井戸構造(SQW)の他、ホモ構造、ヘテロ構造、ダブルヘテロ構造のものが考えられるが、pin接合或いはpn接合等により形成しても良い。
上述の、貫通転位の抑制された領域を有するIII族窒化物系化合物半導体を、例えば基板1、バッファ層2及びダイシングにより段差を設けた貫通転位の抑制されていない部分を除去して、III族窒化物系化合物半導体基板とすることができる。この上にIII族窒化物系化合物半導体素子を形成することが可能であり、或いはより大きなIII族窒化物系化合物半導体結晶を形成するための基板として用いることができる。除去方法としては、メカノケミカルポリッシングの他、任意である。
本発明の適用として、基板処理により貫通転位の少ない領域を形成したのち、更に横方向エピタキシャル成長を利用して、貫通転位の多い領域上部に貫通転位の少ない領域を形成することも本発明に包含される。例えば上記手段により貫通転位の少ない領域と多い領域を有するIII族窒化物系化合物半導体層の、貫通転位の多い領域にマスクを形成し、マスクを形成していない貫通転位の少ない領域表面を核としてマスク上部を横方向エピタキシャル成長により覆うことで、全体として貫通転位の少ないIII族窒化物系化合物半導体層を得ることができる。その他、貫通転位の多い領域上部での第2の横方向エピタキシャル成長は任意である。
以下、発明の具体的な実施例に基づいて説明する。実施例として発光素子をあげるが、本発明は下記実施例に限定されるものではなく、任意の素子に適用できるの製造方法を開示している。
本発明のIII族窒化物系化合物半導体は、有機金属化合物気相成長法(以下「MOVPE」と示す)による気相成長により製造された。用いられたガスは、アンモニア(NH3)とキャリアガス(H2又はN2)とトリメチルガリウム(Ga(CH3)3,以下「TMG」と記す)とトリメチルアルミニウム(Al(CH3)3,以下「TMA」と記す)、トリメチルインジウム(In(CH3)3,以下「TMI」と記す)、シクロペンタジエニルマグネシウム(Mg(C5H5)2、以下「Cp2Mg」と記す)である。
有機洗浄及び熱処理により洗浄したa面を主面とし、単結晶のサファイア基板1をダイシングにより、幅10μm、間隔10μm、深さ10μmのストライプ状の段差を形成した。次に、温度を400℃とし、H2を10L/min、NH3を5L/min、TMAを20μmol/minで約3分間供給してAlNのバッファ層2を約40nmの厚さに形成した。バッファ層2は基板1の段差の主に上段面と底面に形成された。
次に、サファイア基板1の温度を1150℃に保持し、H2を20L/min、NH3を10L/min、TMGを5μmol/minで導入して、縦及び横方向エピタキシャル成長によりGaN層3を形成した。この時、主に段差の上段面に形成されたバッファ層21からの横方向エピタキシャル成長により段差が覆われ、表面が平坦となった(図1の(c))。こののち、H2を20L/min、NH3を10L/min、TMGを300μmol/minで導入し、GaN層3を成長させ、10μmの厚さとした。GaN層3の、基板1の深さ10μmの段差の底面上方に形成された部分は、段差の上段面上方に形成された部分に比して貫通転位が著しく抑えられた。
有機洗浄及び熱処理により洗浄したa面を主面とし、単結晶のサファイア基板1の温度を400℃とし、H2を10L/min、NH3を5L/min、TMAを20μmol/minで約3分間供給してAlNのバッファ層2を約40nmの厚さに形成した。次にダイシングにより、幅10μm、間隔10μm、深さ10μmのストライプ状に段差を形成した。バッファ層2は基板1の段差の上段面のみに残った(図5の(b))。
次に、サファイア基板1の温度を1150℃に保持し、H2を20L/min、NH3を10L/min、TMGを5μmol/minで導入して、縦及び横方向エピタキシャル成長によりGaN層31を形成した。この時、主に段差の上段面に形成されたバッファ層2からの横方向エピタキシャル成長により段差が覆われ、表面が平坦となった(図5の(c)及び(d))。こののち、H2を20L/min、NH3を10L/min、TMGを300μmol/minで導入し、GaN層31を成長させ、10μmの厚さとした。GaN層31の、基板1の深さ10μmの段差の底面上方に形成された部分は、段差の上段面上方に形成された部分に比して貫通転位が著しく抑えられた。
有機洗浄及び熱処理により洗浄したa面を主面とし、単結晶のサファイア基板1を反応性イオンビームエッチング(RIBE)を用いた選択ドライエッチングにより、幅10μm、間隔10μm、ストライプ状に短時間エッチングし、面荒れを起こした。次に、温度を400℃とし、H2を10L/min、NH3を5L/min、TMAを20μmol/minで約3分間供給してAlNのバッファ層2を約40nmの厚さに形成した。バッファ層2は面荒れの部分22と面荒れでない部分21で表面のモホロジーが異なった(図7の(b))。
次に、サファイア基板1の温度を1150℃に保持し、H2を20L/min、NH3を10L/min、TMGを5μmol/minで導入して、縦及び横方向エピタキシャル成長によりGaN層3を形成した。この時、主に面荒れでない部分21からの横方向エピタキシャル成長により面荒れの部分が覆われ、表面が平坦となった(図7の(c)及び(d))。このち、H2を20L/min、NH3を10L/min、TMGを300μmol/minで導入し、GaN層3を成長させ、3μmの厚さとした。GaN層3の、基板1のの表面の荒れた部分Aに形成されるバッファ層22上方に形成された部分は、表面の荒れていない部分に形成されたバッファ層21上方に形成された部分に比して貫通転位が著しく抑えられた。
本実施例では、図12のようなバッファ層と単結晶III族窒化物系化合物半導体層とを1周期として、多重周期形成した層(基底層)を用いた。有機洗浄及び熱処理により洗浄したa面を主面とし、単結晶のサファイア基板1上に、温度を400℃まで低下させて、H2を10L/min、NH3を5L/min、TMAを20μmol/minで約3分間供給して第1のAlN層211を約40nmの厚さに形成した。次に、サファイア基板1の温度を1000℃に保持し、H2を20L/min、NH3を10L/min、TMGを300μmol/minで導入し、膜厚約0.3μmのGaN層212を形成した。次に温度を400℃まで低下させて、H2を10L/min、NH3を5L/min、TMAを20μmol/minで約3分間供給して第2のAlN層213を約40nmの厚さに形成した。こうして、膜厚約40nmの第1のAlN層211、膜厚約0.3μmのGaN層212、膜厚約40nmの第2のAlN層213から成る基底層20を形成した。
次に、第2実施例と同様に、ダイシングにより段差を形成した。サファイア基板1のダイシング深さを10μmとした。次に、サファイア基板1の温度を1150℃に保持し、H2を20L/min、NH3を10L/min、TMGを5μmol/minで導入し、GaN層3を横方向エピタキシャル成長により形成した。こうして主に段差の上段面に形成された基底層20を核として横方向エピタキシャル成長により段差が覆われ、表面が平坦となった。こののち、H2を20L/min、NH3を10L/min、TMGを300μmol/minで導入し、GaN層3を成長させ、GaN層3を10μmの厚さとした。GaN層3の、サフ ァイア基板1の深さ10μmの段差の底面上方に形成された部分は、段差の上段面上方に形成された部分に比して貫通転位が著しく抑えられた。
第1実施例と同様に形成したウエハ上に、図13のようなレーザダイオード(LD)100を次のようにして形成した。但し、GaN層3の形成の際、シラン(SiH4)を導入して、GaN層3をシリコン(Si)ドープのn型GaNから成る層とした。尚、図を簡略とするため、段差を有するサファイア基板1と段差の上段面及び底面に形成されたバッファ層2及び段差を埋めている部分のGaN層3を併せて、ウエハ1000と記載し、それ以外のGaN層3をGaN層103と記載する。
段差を有するサファイア基板、AlNから成るバッファ層、その段差を覆うn型GaN層から成るウエハ層1000とn型GaN層103に、シリコン(Si)ドープのAl0.08Ga0.92Nから成るnクラッド層104、シリコン(Si)ドープのGaNから成るnガイド層105、MQW構造の発光層106、マグネシウム(Mg)ドープのGaNから成るpガイド層107、マグネシウム(Mg)ドープのAl0.08Ga0.92Nから成るpクラッド層108、マグネシウム(Mg)ドープのGaNから成るpコンタクト層109を形成した。次にpコンタクト層109上に金(Au)から成る電極110Aを、2段のGaN層とn型GaN層の合計3段のGaN層103が露出するまで一部エッチングしてアルミニウム(Al)から成る電極110Bを形成した。このようにして形成したレーザダイオード(LD)は素子寿命及び発光効率が著しく向上した。
第1実施例と同様に形成したウエハ上に、図14のような発光ダイオード(LED)200を次のようにして形成した。但し、GaN層3の形成の際、シラン(SiH4)を導入して、GaN層3をシリコン(Si)ドープのn型GaNから成る層とした。尚、図を簡略とするため、段差を有するサファイア基板1と段差の上段面及び底面に形成されたバッファ層2及び段差を埋めている部分のGaN層3を併せて、ウエハ2000と記載し、それ以外のGaN層3をGaN層203と記載する。
サファイア基板、AlNから成るバッファ層、段差を埋めるGaN層から成るウエハ2000とn型GaN層203上に、シリコン(Si)ドープのAl0.08Ga0.92Nから成るnクラッド層204、発光層205、マグネシウム(Mg)ドープのAl0.08Ga0.92Nから成るpクラッド層206、マグネシウム(Mg)ドープのGaNから成るpコンタクト層207を形成した。次にpコンタクト層207上に金(Au)から成る電極208Aを、GaN層とn型GaN層の2段のGaN層203が露出するまで一部エッチングしてアルミニウム(Al)から成る電極208Bを形成した。このようにして形成した発光ダイオード(LED)は素子寿命及び発光効率が著しく向上した。
本実施例では基板としてシリコン(Si)基板を用いた。シリコン(Si)基板301をエッチングにより幅10μm、間隔10μm、深さ10μmのストライプ状にエッチングした。次にシリコン基板301の温度を1150℃に保持し、H2を20L/min、NH3を10L/min、TMGを5μmol/min、TMAを0.5μmol/min、H2ガスにより希釈されたたシラン(SiH4)を0.01μmol/minで供給し、シリコン基板の段差の上段面、側面、底面からn-Al0.15Ga0.85N層を縦及び横方向成長させた。こうして主に上段面を核とする横方向エピタキシャル成長により段差が覆われ、表面が平坦となったのち、H2を10L/min、NH3を10L/min、TMGを100μmol/min、TMAを10μmol/min、H2ガスにより希釈されたたシラン(SiH4)を0.2μmol/minで供給し、n-Al0.15Ga0.85N層を成長させ、3μmの厚さとした。以下、シリコン基板301とn-Al0.15Ga0.85N層302を併せてウエハ3000と記載する。
上記のようにウエハ3000(段差を有するシリコン基板301とその上に形成されたn-Al0.15Ga0.85N層302)上にシリコン(Si)ドープのGaNから成るnガイド層303、MQW構造の発光層304、マグネシウム(Mg)ドープのGaNから成るpガイド層305、マグネシウム(Mg)ドープのAl0.08Ga0.92Nから成るpクラッド層306、マグネシウム(Mg)ドープのGaNから成るpコンタクト層307を形成した。次にpコンタクト層307上に金(Au)から成る電極308Aを、シリコン基板301裏面にアルミニウム(Al)から成る電極308Bを形成した。このようにして形成した図15のレーザダイオード(LD)300は素子寿命及び発光効率が著しく向上した。
本実施例でも基板としてシリコン(Si)基板を用いた。第7実施例の段差を有するシリコン基板301に形成されたn-Al0.15Ga0.85N層302と同様に、段差を有するシリコン基板401とその上に形成されたn-Al0.15Ga0.85N層402のウエハ4000を用意し、発光層403、マグネシウム(Mg)ドープのAl0.15Ga0.85Nから成るpクラッド層404を形成した。次にpクラッド層404上に金(Au)から成る電極405Aを、シリコン基板401裏面にアルミニウム(Al)から成る電極405Bを形成した。このようにして形成した図16の発光ダイオード(LED)400は素子寿命及び発光効率が著しく向上した。
〔エッチングの変形〕
また、図17は、島状に段差の上段、或いは面荒れ部分Bと面荒れを起こさない部分を形成する例である。図17の(a)は、外周をも示しているが、これは理解のため簡略化した模式図であり、実際には島状の段差の上段はウエハ当たり数千万個形成して良い。図17の(a)では、島状の段差の上段に対し、段差の底面B(或いは面荒れを起こさない部分に対し面荒れ部分B)は3倍の面積を有する。図17の(b)では、島状の段差の上段に対し、段差の底面B(或いは面荒れを起こさない部分に対し面荒れ部分B)は8倍の面積を有する。
本発明の第1の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体の製造工程を示す断面図。
本発明の別のIII族窒化物系化合物半導体の製造工程を示す断面図。
本発明の第7の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体の製造工程を示す断面図。
本発明の別のIII族窒化物系化合物半導体の製造工程を示す断面図。
本発明の第2の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体の製造工程を示す断面図。
本発明の別のIII族窒化物系化合物半導体の製造工程を示す断面図。
本発明の第3の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体の製造工程を示す断面図。
本発明の別のIII族窒化物系化合物半導体の製造工程を示す断面図。
本発明の更に別のIII族窒化物系化合物半導体の製造工程を示す断面図。
本発明の更に別のIII族窒化物系化合物半導体の製造工程を示す断面図。
本発明の更に別のIII族窒化物系化合物半導体の製造工程を示す断面図。
本発明の第4の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体の製造工程を示す断面図。
本発明の第5の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体発光素子の構造を示す断面図。
本発明の第6の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体発光素子の構造を示す断面図。
本発明の第7の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体発光素子の構造を示す断面図。
本発明の第8の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体発光素子の構造を示す断面図。
第1のIII族窒化物系化合物半導体のエッチングの他の例を示す模式図。
III族窒化物系化合物半導体を伝搬する貫通転位を示す断面図。
1、101、201、301、401:基板
1000、2000、3000、4000:段差を有する基板とバッファ層と段差を覆うIII族窒化物系化合物半導体層とから成るウエハ
2:バッファ層
20:基底層
31、32、33:III族窒化物系化合物半導体
103、203:n-GaN層
104、204、302、402:n-AlGaNクラッド層
105、303:n-GaNガイド層
106、205、304、403:発光層
107、305:p-GaNガイド層
108、206、306、404:p-AlGaNクラッド層
109、207、307:p-GaN層
110A、208A、308A、405A:p電極
110B、208B、308B、405B:n電極