JP4016566B2 - Iii族窒化物系化合物半導体の製造方法及びiii族窒化物系化合物半導体素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、III族窒化物系化合物半導体の製造方法に関する。特に、横方向エピタキシャル成長(ELO)成長を用いる、III族窒化物系化合物半導体の製造方法に関する。尚、III族窒化物系化合物半導体とは、例えばAlN、GaN、InNのような2元系、AlxGa1-xN、AlxIn1-xN、GaxIn1-xN(いずれも0<x<1)のような3元系、AlxGayIn1-x-yN(0<x<1, 0<y<1, 0<x+y<1)の4元系を包括した一般式AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1, 0≦y≦1, 0≦x+y≦1)で表されるものがある。なお、本明細書においては、特に断らない限り、単にIII族窒化物系化合物半導体と言う場合は、伝導型をp型あるいはn型にするための不純物がドープされたIII族窒化物系化合物半導体をも含んだ表現とする。
【従来の技術】
【0002】
III族窒化物系化合物半導体は、例えば発光素子とした場合、発光スペクトルが紫外から赤色の広範囲に渡る直接遷移型の半導体であり、発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)等の発光素子に応用されている。また、そのバンドギャップが広いため、他の半導体を用いた素子よりも高温において安定した動作を期待できることから、FET等トランジスタへの応用も盛んに開発されている。また、ヒ素(As)を主成分としていないことで、環境面からも様々な半導体素子一般への開発が期待されている。このIII族窒化物系化合物半導体では、通常、サファイアを基板として用い、その上に形成している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、サファイア基板上にIII族窒化物系化合物半導体を形成すると、サファイアとIII族窒化物系化合物半導体との格子定数のミスフィットにより転位が発生し、このため素子特性が良くないという問題がある。このミスフィットによる転位は半導体層を縦方向(基板面に垂直方向)に貫通する貫通転位であり、III族窒化物系化合物半導体中に109cm-2程度の転位が伝搬してしまうという問題がある。これは組成の異なるIII族窒化物系化合物半導体各層を最上層まで伝搬する。これにより例えば発光素子の場合、LDの閾値電流、LD及びLEDの素子寿命などの素子特性が良くならないという問題があった。また、他の半導体素子としても、欠陥により電子が散乱することから、移動度(モビリティ)の低い半導体素子となるにとどまっていた。これらは、他の基板を用いる場合も同様であった。
【0004】
これについて、図12の模式図で説明する。図12は、基板91と、その上に形成されたバッファ層92と、更にその上に形成されたIII族窒化物系化合物半導体層93を示したものである。基板91としてはサファイアなど、バッファ層92としては窒化アルミニウム(AlN)などが従来用いられている。窒化アルミニウム(AlN)のバッファ層92は、サファイア基板91とIII族窒化物系化合物半導体層93とのミスフィットを緩和させる目的で設けられているものであるが、それでも転位の発生を0とすることはできない。この転位発生点900から、縦方向(基板面に垂直方向)に貫通転位901が伝播し、それはバッファ層92、III族窒化物系化合物半導体層93をも貫いていく。こうして、III族窒化物系化合物半導体層93の上層に、所望の様々なIII族窒化物系化合物半導体を積層して半導体素子を形成しようとすると、III族窒化物系化合物半導体層93の表面に達した転位902から、半導体素子を貫通転位が更に縦方向に伝搬していくこととなる。このように、従来の技術では、III族窒化物系化合物半導体層を形成する際、転位の伝搬を阻止できないという問題があった。
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、貫通転位の発生を抑制したIII族窒化物系化合物半導体を製造することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、基板上にIII族窒化物系化合物半導体をエピタキシャル成長により得るIII族窒化物系化合物半導体の製造方法において、少なくとも2層のIII族窒化物系化合物半導体から成り、最上層を第1のIII族窒化物系化合物半導体とする基底層をエッチングにより、点状、ストライプ状又は格子状の島状態とし、第1のIII族窒化物系化合物半導体とは組成の異なる第3のIII族窒化物系化合物半導体から成る層の面を底部に露出させるよう段差を設ける工程と、前記エッチングにより形成された点状、ストライプ状又は格子状の島状態の前記第1のIII族窒化物系化合物半導体の段差の上段の上面及び側面を核として、第2のIII族窒化物系化合物半導体を縦及び横方向エピタキシャル成長させる工程とを有し、前記エッチングにより面を底部に露出させる前記第3のIII族窒化物系化合物半導体は、AlN、AlxGa1-xN又はAlxGayIn1-x-yN(x≠0)からなり、前記基底層は、前記基板上に、単結晶が成長しない温度で形成された III 族窒化物系化合物半導体から成る緩衝層と、単結晶が成長する温度で形成された III 族窒化物系化合物半導体層とを1周期として複数周期繰り返し積層し、最上層を前記第1の III 族窒化物系化合物半導体とする多重層であり、前記第3の III 族窒化物系化合物半導体は、前記緩衝層であることを特徴とする。尚、本明細書で基底層とは、単層のIII族窒化物系化合物半導体層の場合と、III族窒化物系化合物半導体層を少なくとも1層含む多重層を一括して表現するために用いる。また、ここで島状態とは、エッチングにより形成された段差の上段の様子を概念的に言うものであって、必ずしも各々が分離した領域を言うものでなく、ウエハ上全体をストライプ状又は格子状に形成するなどのように極めて広い範囲において段差の上段が連続していても良いものとする。また、段差の側面とは必ずしも基板面及びIII族窒化物系化合物半導体表面に対して垂直となるものを言うものでなく、斜めの面でも良い。この際、段差の底部に底面の無い、断面がV字状のものでも良い。これらは特に言及されない限り以下の請求項でも同様とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のIII族窒化物系化合物半導体の製造方法において、前記段差の底部の幅は、底部の露出した前記異なる層の面に縦方向成長が始まるよりも、側面からの横方向成長により段差が塞がれる方が早いよう形成されることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、段差の側面は、略全部が{11−20}面であることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、第1のIII族窒化物系化合物半導体と第2のIII族窒化物系化合物半導体とが同組成であることを特徴とする。尚、ここで同組成とは、ドープ程度の差(モル比1パーセント未満の差)は無視するものとする。
【0010】
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の製造方法により製造したIII族窒化物系化合物半導体層の、横方向エピタキシャル成長した部分の上層に形成されたことを特徴とするIII族窒化物系化合物半導体素子である。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の製造方法により製造したIII族窒化物系化合物半導体層の、横方向エピタキシャル成長した部分の上層に、異なるIII族窒化物系化合物半導体層を積層することにより得られることを特徴とするIII族窒化物系化合物半導体発光素子である。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のIII族窒化物系化合物半導体の製造方法に加えて、横方向エピタキシャル成長した部分の上層以外を略全部除去することにより、III族窒化物系化合物半導体層を得ることを特徴とするIII族窒化物系化合物半導体の製造方法である。
【0014】
【作用及び発明の効果】
本発明のIII族窒化物系化合物半導体の製造方法の概略を図1を参照しながら説明する。尚、図1では、従属請求項の説明及び理解を助けるため基板1及びバッファ層2を有する図を示しているが、本発明は、縦方向に貫通転位を有するIII族窒化物系化合物半導体から、縦方向の貫通転位の軽減された領域を有するIII族窒化物系化合物半導体層を得るものであり、基板1及びバッファ層2は本発明に必須の要素ではない。以下、基板1面上に、バッファ層2を介して形成された、縦方向(基板面に垂直方向)に貫通転位を有する第1のIII族窒化物系化合物半導体層31を用いて本発明を適用する例で、本発明の作用効果の要部を説明する。この場合、バッファ層2が異なる層である。
【0015】
図1の(a)のように、第1のIII族窒化物系化合物半導体層31を点状、ストライプ状又は格子状の島状態にエッチングし、段差を設けて底部にバッファ層2(異なる層)が露出するよう形成する。こうして、段差の上段の上面及び側面を核として、第2のIII族窒化物系化合物半導体32を縦及び横方向エピタキシャル成長させることで段差部分を埋めつつ、上方にも成長させることができる。このとき第2のIII族窒化物系化合物半導体32が横方向エピタキシャル成長した部分の上部は、III族窒化物系化合物半導体層31が有する貫通転位の伝搬が抑制され、埋められた段差部分に貫通転位の軽減された領域を作ることができる(請求項1)。これにより段差の側面を核として横方向成長する部分は、貫通転位が縦方向に伝搬しない。III族窒化物系化合物半導体層31及びバッファ層2(異なる層)と第2のIII族窒化物系化合物半導体32とはエピタキシャル成長により不連続面がほとんど無いならば、絶縁体等によるマスクを有するものと比較して縦方向(基板1面の法線方向)へ電流を流す際、不連続部分により抵抗が生じることが無い。また、構造的にも安定したものとすることができる。また、異なる層を第1のIII族窒化物系化合物半導体とは組成の異なる第3のIII族窒化物系化合物半導体で形成すれば、少なくとも初期段階においては異なる層からの縦方向成長を小さいものとすることも可能である。
【0016】
このとき、段差部分を埋める第2のIII族窒化物系化合物半導体32が、段差の下段の底部であるバッファ層2(異なる層)から縦方向にエピタキシャル成長しないか、又は極めて遅いならば、段差の側面から横方向にエピタキシャル成長して向かい合う段差の側面からの横方向エピタキシャル成長面と合体する方が圧倒的に早い。この時、段差を埋めた部分のIII族窒化物系化合物半導体32上部にはバッファ層2(異なる層)からは貫通転位が全く伝搬しないか、或いは著しく抑制され、極めて良質な結晶領域とすることができる(請求項2)。この場合、図1の(c)のように異なる層上方に空洞が残ることとなる。その上部は両側の段差の側面を核として成長してきた第2のIII族窒化物系化合物半導体32の成長面の合体が生じている。
【0017】
上記の様な速い横方向エピタキシャル成長は、III族窒化物系化合物半導体層31の段差の側面が{11−20}面であるとき容易に実現可能である(請求項3)。このとき例えば横方向エピタキシャル成長中の成長面の少なくとも上部を{11−20}面のまま保つことができる。また、第1のIII族窒化物系化合物半導体と第2のIII族窒化物系化合物半導体とが同組成であるならば、速い横方向エピタキシャル成長は容易に実現可能である(請求項4)。
【0018】
以上のような方法により、第1のIII族窒化物系化合物半導体層31から伝搬する貫通転位を抑制し構造的に安定なものとする一方、不連続面による抵抗増加を伴わないで第2のIII族窒化物系化合物半導体32を形成することができる。尚、図1では基板面に垂直な側面を持つ段差を形成するものを示したが、本発明はこれに限られず、段差の側面は斜めの面でも良い。この際、段差の底部に底面の無い、断面がV字状のものでも良い。これらは以下の説明でも同様である。
【0019】
上記の工程で得られたIII族窒化物系化合物半導体層の、横方向エピタキシャル成長した部分の上層に素子を形成することで、欠陥の少ない、移動度の大きい層を有する半導体素子とすることができる(請求項5)。
【0020】
上記の工程で得られたIII族窒化物系化合物半導体層の、横方向エピタキシャル成長した部分の上層に発光素子を形成することで、素子寿命、或いはLDの閾値の改善された発光素子とすることができる(請求項6)。
【0021】
また、上記の工程で得られたIII族窒化物系化合物半導体層の、横方向エピタキシャル成長した部分の上層のみをその他の層から分離することで、転位等結晶欠陥の著しく抑制された結晶性の良いIII族窒化物系化合物半導体を得ることができる(請求項7)。尚「略全部除去」とは、製造上の簡便さから、一部貫通転位の残った部分を含んでいたとしても本発明に包含されることを示すものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1に本発明のIII族窒化物系化合物半導体の製造方法の実施の形態の一例の概略を示す。図1では、異なる層がバッファ層2である例を示している。基板1と、バッファ層2(異なる層)と、第1のIII族窒化物系化合物半導体層31とを形成し、トレンチ状にエッチングをする(図1の(a))。この際、エッチングにより段差が生じ、エッチングされなかった面を上段として、側面及び段差の底部(下段面)が形成される。側面は例えば{11−20}面である。次に横方向エピタキシャル成長する条件で、段差の側面及び上面を核として第2のIII族窒化物系化合物半導体32のエピタキシャル成長を行う。有機金属成長法を用いれば、成長面を{11−20}面に保ったまま横方向エピタキシャル成長が容易に可能である。こうして、段差の側面の横方向成長が生じるならば、第2のIII族窒化物系化合物半導体32のその部分については、異なる層(バッファ層)2からの貫通転位が伝搬しない(図1の(b))。こうして、段差の両側面の横方向成長がエッチングされた部分の上方で合体するよう、エッチング形状と横方向エピタキシャル成長条件とを設定することで、エッチングされた上部の第2のIII族窒化物系化合物半導体32には貫通転位が抑制された領域を形成することができる(図1の(c))。
【0023】
また、図2のように、基底層として基板上に形成されたバッファ層、及びこのバッファ層上にエピタキシャル成長したIII族窒化物系化合物半導体層を1周期として、複数周期形成された層を使用するものでも良い。図2では、バッファ層21、III族窒化物系化合物半導体層22、バッファ層23、III族窒化物系化合物半導体層31をこの順に形成し、III族窒化物系化合物半導体層31をエッチングして段差の底部にバッファ層23が露出する例を示している。更には、図2の(a)のような工程の段階で、III族窒化物系化合物半導体層31の厚さより深いエッチングをして段差の底部がバッファ層21とする製造方法(図3)でも良い。いずれも段差の下段上方に形成されるIII族窒化物系化合物半導体層32は、主に段差の上段の最上層のIII族窒化物系化合物半導体層31を核とした横方向エピタキシャル成長により形成され、縦方向に伝搬する貫通転位の抑制された領域とすることができる。その他、効果はすでに述べた図1の場合と同様である。
【0024】
上記の発明の実施の形態としては、次の中からそれぞれ選択することができる。
【0025】
基板上にIII族窒化物系化合物半導体を順次積層を形成する場合は、基板としてはサファイア、シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、スピネル(MgAl2O4)、ZnO、MgOその他の無機結晶基板、リン化ガリウム又は砒化ガリウムのようなIII-V族化合物半導体あるいは窒化ガリウム(GaN)その他のIII族窒化物系化合物半導体等を用いることができる。
【0026】
III族窒化物系化合物半導体層を形成する方法としては有機金属気相成長法(MOCVD又はMOVPE)が好ましいが、分子線気相成長法(MBE)、ハライド気相成長法(Halide VPE)、液相成長法(LPE)等を用いても良く、各層を各々異なる成長方法で形成しても良い。
【0027】
例えばサファイア基板上にIII族窒化物系化合物半導体積層する際、結晶性良く形成させるため、サファイア基板との格子不整合を是正すべくバッファ層を形成することが好ましい。他の基板を使用する場合もバッファ層を設けることが望ましい。バッファ層としては、低温で形成させたIII族窒化物系化合物半導体AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1, 0≦y≦1, 0≦x+y≦1)、より好ましくはAlxGa1-xN(0≦x≦1)が用いられる。このバッファ層は単層でも良く、組成等の異なる多重層としても良い。バッファ層の形成方法は、380〜420℃の低温で形成するものでも良く、逆に1000〜1180℃の範囲で、MOCVD法で形成しても良い。また、DCマグネトロンスパッタ装置を用いて、高純度金属アルミニウムと窒素ガスを原材料として、リアクティブスパッタ法によりAlNから成るバッファ層を形成することもできる。同様に一般式AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1, 0≦y≦1, 0≦x+y≦1、組成比は任意)のバッファ層を形成することができる。更には蒸着法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法、ECR法を用いることができる。物理蒸着法によるバッファ層は、200〜600℃で行うのが望ましい。さらに望ましくは300〜500℃であり、さらに望ましくは350〜450℃である。これらのスパッタリング法等の物理蒸着法を用いた場合には、バッファ層の厚さは、100〜3000Åが望ましい。さらに望ましくは、100〜400Åが望ましく、最も望ましくは、100〜300Åである。多重層としては、例えばAlxGa1-xN(0≦x≦1)から成る層とGaN層とを交互に形成する、組成の同じ層を形成温度を例えば600℃以下と1000℃以上として交互に形成するなどの方法がある。勿論、これらを組み合わせても良く、多重層は3種以上のIII族窒化物系化合物半導体AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1, 0≦y≦1, 0≦x+y≦1)を積層しても良い。一般的には緩衝層は非晶質であり、中間層は単結晶である。緩衝層と中間層を1周期として複数周期形成しても良く、繰り返しは任意周期で良い。繰り返しは多いほど結晶性が良くなる。
【0028】
バッファ層及び上層のIII族窒化物系化合物半導体は、III族元素の組成の一部は、ボロン(B)、タリウム(Tl)で置き換えても、また、窒素(N)の組成一部をリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)で置き換えても本発明を実質的に適用できる。また、これら元素を組成に表示できない程度のドープをしたものでも良い。例えば組成にインジウム(In)、ヒ素(As)を有しないIII族窒化物系化合物半導体であるAlxGa1-xN(0≦x≦1)に、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)よりも原子半径の大きなインジウム(In)、又は窒素(N)よりも原子半径の大きなヒ素(As)をドープすることで、窒素原子の抜けによる結晶の拡張歪みを圧縮歪みで補償し結晶性を良くしても良い。この場合はアクセプタ不純物がIII族原子の位置に容易に入るため、p型結晶をアズグローンで得ることもできる。このようにして結晶性を良くすることで本願発明と合わせて更に貫通転位を100乃至1000分の1程度にまで下げることもできる。バッファ層とIII族窒化物系化合物半導体層とが2周期以上で形成されている基底層の場合、各III族窒化物系化合物半導体層に主たる構成元素よりも原子半径の大きな元素をドープすると更に良い。なお、発光素子として構成する場合は、本来III族窒化物系化合物半導体の2元系、若しくは3元系を用いることが望ましい。
【0029】
n型のIII族窒化物系化合物半導体層を形成する場合には、n型不純物として、Si、Ge、Se、Te、C等IV族元素又はVI族元素を添加することができる。また、p型不純物としては、Zn、Mg、Be、Ca、Sr、Ba等II族元素又はIV族元素を添加することができる。これらを複数或いはn型不純物とp型不純物を同一層にドープしても良い。
【0030】
横方向エピタキシャル成長としては成長面が基板に垂直となるものが望ましいが、基板に対して斜めのファセット面のまま成長するものでも良い。この際、段差の底部に底面の無い、断面がV字状のものでも良い。
【0031】
横方向エピタキシャル成長としては、横方向エピタキシャル成長面の少なくとも上部と基板面とは垂直であることがより望ましく、更にはいずれもIII族窒化物系化合物半導体の{11−20}面であることがより望ましい。
【0032】
エッチングする際は、深さと幅の関係から、横方向エピタキシャル成長により塞がれるように段差を設ける。この時、異なる層からの縦方向成長が少なくとも初期段階において無い、又は極めて遅いことも利用する。
【0033】
異なる層を、AlN、AlxGa1-xN又はAlxGayIn1-x-yN(x≠0)からなる層とし、第1のIII族窒化物系化合物半導体をGaNとするならば、AlN、AlxGa1-xN又はAlxGayIn1-x-yN(x≠0)からなる異なる層は、Cl2、BCl3などの塩素を含むプラズマエッチングの際ストッパ層として働くので好都合である。異なる層を、バッファ層とIII族窒化物系化合物半導体層を任意周期繰り返した基底層の最も上のバッファ層とするときも同様である。これにより、異なる層からの縦方向成長を抑えて第1のIII族窒化物系化合物半導体層側面からの横方向成長を促進させる条件を容易に設定することができる。これは、段差の設計をも容易とし、段差の深さを浅いものとすることができる。
【0034】
基板上に積層するIII族窒化物系化合物半導体層の結晶軸方向が予想できる場合は、III族窒化物系化合物半導体層のa面({11−20}面)又はm面({1−100}面)に垂直となるようストライプ状にマスク或いはエッチングを施すことが有用である。なお、島状、格子状等に、上記ストライプ及びマスクを任意に設計して良い。横方向エピタキシャル成長面は、基板面に垂直なものの他、基板面に対し斜めの角度の成長面でも良い。III族窒化物系化合物半導体層のa面として(11−20)面を横方向エピタキシャル成長面とするには例えばストライプの長手方向はIII族窒化物系化合物半導体層のm面である(1−100)面に垂直とする。例えば基板をサファイアのa面又はc面とする場合は、どちらもサファイアのm面がその上に形成されるIII族窒化物系化合物半導体層のa面と通常一致するので、これに合わせてエッチングを施す。点状、格子状その他の島状とする場合も、輪郭(側壁)を形成する各面が{11−20}面とすることが望ましい。
【0035】
エッチングマスクは、多結晶シリコン、多結晶窒化物半導体等の多結晶半導体、酸化珪素(SiOx)、窒化珪素(SiNx)、酸化チタン(TiOX)、酸化ジルコニウム(ZrOX)等の酸化物、窒化物、チタン(Ti)、タングステン(W)のような高融点金属、これらの多層膜をもちいることができる。これらの成膜方法は蒸着、スパッタ、CVD等の気相成長法の他、任意である。
【0036】
エッチングをする場合は反応性イオンビームエッチング(RIBE)が望ましいが、任意のエッチング方法を用いることができる。基板面に垂直な側面を有する段差を形成するのでないものとして、異方性エッチングにより例えば段差の底部に底面の無い、断面がV字状のものを形成しても良い。
【0037】
上記の貫通転位の抑制された領域を有するIII族窒化物系化合物半導体の、全体或いは貫通転位の抑制された領域を中心としてその上部にFET、発光素子等の半導体素子を形成することができる。発光素子の場合は、発光層は多重量子井戸構造(MQW)、単一量子井戸構造(SQW)の他、ホモ構造、ヘテロ構造、ダブルヘテロ構造のものが考えられるが、pin接合或いはpn接合等により形成しても良い。
【0038】
上述の、貫通転位の抑制された領域を有するIII族窒化物系化合物半導体を、例えば基板1、バッファ層2及びエッチングにより段差を設けた貫通転位の抑制されていない部分を除去して、III族窒化物系化合物半導体基板とすることができる。この上にIII族窒化物系化合物半導体素子を形成することが可能であり、或いはより大きなIII族窒化物系化合物半導体結晶を形成するための基板として用いることができる。除去方法としては、メカノケミカルポリッシングの他、任意である。
【0039】
以下、発明の具体的な実施例に基づいて説明する。実施例として発光素子をあげるが、本発明は下記実施例に限定されるものではなく、任意の素子に適用できるIII族窒化物系化合物半導体の製造方法を開示している。
【0040】
本発明のIII族窒化物系化合物半導体は、有機金属化合物気相成長法(以下「MOVPE」と示す)による気相成長により製造された。用いられたガスは、アンモニア(NH3)とキャリアガス(H2又はN2)とトリメチルガリウム(Ga(CH3)3,以下「TMG」と記す)とトリメチルアルミニウム(Al(CH3)3,以下「TMA」と記す)、トリメチルインジウム(In(CH3)3,以下「TMI」と記す)、シクロペンタジエニルマグネシウム(Mg(C5H5)2、以下「Cp2Mg」と記す)である。
【0041】
〔第1実施例〕
本実施例の工程を図1に示す。有機洗浄及び熱処理により洗浄したa面を主面とし、単結晶のサファイア基板1上に、温度を400℃まで低下させて、H2を10L/min、NH3を5L/min、TMAを20μmol/minで約3分間供給してAlNのバッファ層2を約40nmの厚さに形成した。次に、サファイア基板1の温度を1000℃に保持し、H2を20L/min、NH3を10L/min、TMGを300μmol/minで導入し、膜厚約0.5μmのGaN層31を形成した。
【0042】
ハードベークレジストマスクを使用して、反応性イオンビームエッチング(RIBE)を用いた選択ドライエッチングにより、幅1μm、間隔1μm、深さ0.5μmのストライプ状にエッチングした。これにより、GaN層31の幅1μm、段差0.5μmの上段と、幅1μmの露出したバッファ層2(下段の底部)とが交互に形成された(図1の(a))。この時、深さ0.5μmの段差を形成する側面は、GaN層31の{11−20}面とした。
【0043】
次に、サファイア基板1の温度を1150℃に保持し、H2を20L/min、NH3を10L/min、TMGを2μmol/minで導入し、GaN層31の深さ0.5μmの段差を形成する側面である{11−20}面を核としてGaN層32を横方向エピタキシャル成長により形成した。この時、段差の上面と、底部である露出したバッファ層2面からの縦方向エピタキシャル成長はほとんど生じなかった(図1の(b))。こうして主に{11−20}面を成長面とする横方向エピタキシャル成長により段差が埋められ、表面が平坦となった(図1の(c))。こののち、H2を20L/min、NH3を10L/min、TMGを300μmol/minで導入し、GaN層32を成長させ、GaN層31とGaN層32とを合計3μmの厚さとした。GaN層32の、GaN層31の深さ0.5μmの段差の底部上方に形成された部分は、段差の上面上方に形成された部分に比して貫通転位が著しく抑えられた。
【0044】
〔第2実施例〕
本実施例では、図2のような多重層から成る基底層を用いた。有機洗浄及び熱処理により洗浄したa面を主面とし、単結晶のサファイア基板1上に、温度を400℃まで低下させて、H2を10L/min、NH3を5L/min、TMAを20μmol/minで約3分間供給して第1のAlN層(第1の緩衝層)21を約40nmの厚さに形成した。次に、サファイア基板1の温度を1000℃に保持し、H2を20L/min、NH3を10L/min、TMGを300μmol/minで導入し、膜厚約0.3μmのGaN層(中間層)22を形成した。次に温度を400℃まで低下させて、H2を10L/min、NH3を5L/min、TMAを20μmol/minで約3分間供給して第2のAlN層(第2の緩衝層)23を約40nmの厚さに形成した。次に、サファイア基板1の温度を1000℃に保持し、H2を20L/min、NH3を10L/min、TMGを300μmol/minで導入し、膜厚約0.5μmのGaN層31を形成した。こうして、膜厚約40nmの第1のAlN層(第1の緩衝層)21、膜厚約0.3μmのGaN層(中間層)22、膜厚約40nmの第2のAlN層(第2の緩衝層)23、膜厚約0.5μmのGaN層31から成る基底層20を形成した。一般的には緩衝層は非晶質であり、中間層は単結晶である。緩衝層と中間層を1周期として複数周期形成しても良く、繰り返しは任意周期で良い。繰り返しは多いほど結晶性が良くなる。
【0045】
次にハードベークレジストマスクを使用して、反応性イオンビームエッチング(RIBE)を用いた選択ドライエッチングにより、幅1μm、間隔1μm、深さ0.5μmのストライプ状にエッチングした。これにより、GaN層31の幅1μm、段差0.5μmの上段と、幅1μmの露出した第2のAlN層23(下段の底部)とが交互に形成された(図2)。この時、深さ0.5μmの段差を形成する側面は、GaN層31の{11−20}面とした。
【0046】
次に、サファイア基板1の温度を1150℃に保持し、H2を20L/min、NH3を10L/min、TMGを2μmol/minで導入し、GaN層31の深さ0.5μmの段差を形成する側面である{11−20}面を核としてGaN層32を横方向エピタキシャル成長により形成した。この時、段差の上面と、底部である露出した第2のAlN層23(異なる層)面からの縦方向エピタキシャル成長はほとんど生じなかった。こうして主に{11−20}面を成長面とする横方向エピタキシャル成長により段差が埋められ、表面が平坦となった。こののち、H2を20L/min、NH3を10L/min、TMGを300μmol/minで導入し、GaN層32を成長させ、GaN層31とGaN層32とを合計3μmの厚さとした。GaN層32の、GaN層31の深さ0.5μmの段差の底部上方に形成された部分は、段差の上面上方に形成された部分に比して貫通転位が著しく抑えられた。
【0047】
〔第3実施例〕
本実施例では、第2実施例と同様にサファイア基板1上に膜厚約40nmの第1のAlN層(第1の緩衝層)21、膜厚約0.3μmのGaN層(中間層)22、膜厚約40nmの第2のAlN層(第2の緩衝層)23、膜厚約0.5μmのGaN層31から成る基底層20を形成したのち、約0.8μmのエッチングをして、GaN層31を最上層とするの幅1μm、段差0.8μmの上段と、幅1μmの露出した第1のAlN層21(下段の底部)とを交互に形成した(図3)。この時、深さ0.8μmの段差を形成する側面は、GaN層31、第2のAlN層(第2の緩衝層)23、GaN層(中間層)22の{11−20}面とした。こうして主に{11−20}面を成長面とする横方向エピタキシャル成長を第2実施例と同様に行い、表面が平坦となったのち、GaN層32を成長させ、GaN層31とGaN層32とを合計3μmの厚さとした。GaN層32の、GaN層31、第2のAlN層(第2の緩衝層)23及びGaN層(中間層)22の深さ約0.8μmの段差の底部上方に形成された部分は、段差の上面上方に形成された部分に比して貫通転位が著しく抑えられた。
【0048】
〔第4実施例〕
本実施例では、第1実施例において、GaN層31を形成する際、TMIをドープしてGaN:In層31とした。インジウム(In)のドープ量は約1×1016/cm3とした。こののち、第1実施例とほぼ同様にエッチング及びGaNの横方向エピタキシャル成長を行った(図4)。GaN:In層31を核として横方向成長したGaN層32は第1実施例のそれよりも貫通転位がやや小さくなった。また、GaN:In層31上部に縦方向成長したGaN層32は、第1実施例のそれよりも貫通転位が約1/100に低減された。
【0049】
〔第5実施例〕
第1実施例と同様に形成したウエハ上に、次のようにして図5に示すレーザダイオード(LD)100を形成した。但し、GaN層32の形成の際、シラン(SiH4)を導入して、GaN層32をシリコン(Si)ドープのn型GaNから成る層とした。尚、図を簡略とするため、GaN層31とGaN層32を合わせて単にGaN層103と記載する。
【0050】
サファイア基板101、AlNから成るバッファ層102、GaN層とn型GaN層の2段のGaN層103から成るウエハ上に、シリコン(Si)ドープのAl0.08Ga0.92Nから成るnクラッド層104、シリコン(Si)ドープのGaNから成るnガイド層105、MQW構造の発光層106、マグネシウム(Mg)ドープのGaNから成るpガイド層107、マグネシウム(Mg)ドープのAl0.08Ga0.92Nから成るpクラッド層108、マグネシウム(Mg)ドープのGaNから成るpコンタクト層109を形成した。次にpコンタクト層109上に金(Au)から成る電極110Aを、GaN層とn型GaN層の2段のGaN層103が露出するまで一部エッチングしてアルミニウム(Al)から成る電極110Bを形成した。レーザダイオード(LD)100の素子部の要部は、GaN層103の横方向エピタキシャル成長領域の上部である、貫通転位の抑制された領域に形成した。このようにして形成したレーザダイオード(LD)100は素子寿命及び発光効率が著しく向上した。
【0051】
〔第6実施例〕
第1実施例と同様に形成したウエハ上に、次のようにして図6に示す発光ダイオード(LED)200を形成した。但し、GaN層32の形成の際、シラン(SiH4)を導入して、GaN層32をシリコン(Si)ドープのn型GaNから成る層とした。尚、図を簡略とするため、GaN層31とGaN層32を合わせて単にGaN層203と記載する。
【0052】
サファイア基板201、AlNから成るバッファ層202、GaN層とn型GaN層の2段のGaN層203から成るウエハ上に、シリコン(Si)ドープのAl0.08Ga0.92Nから成るnクラッド層204、発光層205、マグネシウム(Mg)ドープのAl0.08Ga0.92Nから成るpクラッド層206、マグネシウム(Mg)ドープのGaNから成るpコンタクト層207を形成した。次にpコンタクト層207上に金(Au)から成る電極208Aを、GaN層とn型GaN層の2段のGaN層203が露出するまで一部エッチングしてアルミニウム(Al)から成る電極208Bを形成した。このようにして形成した発光ダイオード(LED)200は素子寿命及び発光効率が著しく向上した。
【0053】
〔第7実施例〕
本実施例では基板としてn型シリコン(Si)基板を用いた。n型シリコン(Si)基板301上に温度1150℃で、H2を10L/min、NH3を10L/min、TMGを100μmol/min、TMAを10μmol/min、H2ガスにより0.86ppmに希釈されたたシラン(SiH4)を0.2μmol/minで供給し、膜厚0.5μmのシリコン(Si)ドープのAl0.15Ga0.85Nから成る層3021を形成した。次に、ハードベークレジストマスクを使用して、反応性イオンビームエッチング(RIBE)を用いた選択ドライエッチングにより、幅1μm、間隔1μm、深さ0.5μmのストライプ状にエッチングした。これにより、n-Al0.15Ga0.85N層3021の幅1μm、段差0.5μmの上段と、n型シリコン基板301の露出した幅1μmの下段(底部)とが交互に形成された(図7の(a))。この時、深さ0.5μmの段差を形成する側面は、n-Al0.15Ga0.85N層3021の{11−20}面とした。
【0054】
次に、n型シリコン基板301の温度を1150℃に保持し、H2を20L/min、NH3を10L/min、TMGを2μmol/min、TMAを0.2μmol/min、H2ガスにより希釈されたたシラン(SiH4)を4nmol/minで供給し、n-Al0.15Ga0.85N層3021の深さ0.5μmの段差を形成する側面である{11−20}面を核としてn-Al0.15Ga0.85N層3022を横方向エピタキシャル成長により形成した。この時、段差の上面と底部からの縦方向エピタキシャル成長はほとんど生じなかった(図7の(b))。こうして主に{11−20}面を成長面とする横方向エピタキシャル成長により段差が埋められ、表面が平坦となったのち、H2を10L/min、NH3を10L/min、TMGを100μmol/min、TMAを10μmol/min、H2ガスにより希釈されたたシラン(SiH4)を0.2μmol/minで供給し、n-Al0.15Ga0.85N層3022を成長させ、n-Al0.15Ga0.85N層3021とn-Al0.15Ga0.85N層3022を合計2μmの厚さとした(図7の(c))。以下、2μmの厚さの、n-Al0.15Ga0.85N層3021とn-Al0.15Ga0.85N層3022とを合わせてn-Al0.15Ga0.85N層302と記載する。
【0055】
上記のようにn型シリコン基板301に形成されたn-Al0.15Ga0.85N層302上にシリコン(Si)ドープのGaNから成るnガイド層303、MQW構造の発光層304、マグネシウム(Mg)ドープのGaNから成るpガイド層305、マグネシウム(Mg)ドープのAl0.08Ga0.92Nから成るpクラッド層306、マグネシウム(Mg)ドープのGaNから成るpコンタクト層307を形成した。次にpコンタクト層307上に金(Au)から成る電極308Aを、シリコン基板301裏面にアルミニウム(Al)から成る電極308Bを形成した(図8)。レーザダイオード(LD)300の素子部の要部は、n-Al0.15Ga0.85N層302の横方向エピタキシャル成長領域の上部である、貫通転位の抑制された領域に形成した。このようにして形成したレーザダイオード(LD)300は素子寿命及び発光効率が著しく向上した。
【0056】
〔第8実施例〕
本実施例でも基板としてn型シリコン(Si)基板を用いた。第7実施例のn型シリコン基板301に形成されたn-Al0.15Ga0.85N層302と同様に、n型シリコン基板401に形成されたn-Al0.15Ga0.85N層402のウエハを用意し、発光層403、マグネシウム(Mg)ドープのAl0.15Ga0.85Nから成るpクラッド層404を形成した。次にpクラッド層404上に金(Au)から成る電極405Aを、シリコン基板401裏面にアルミニウム(Al)から成る電極405Bを形成した(図9)。このようにして形成した発光ダイオード(LED)400は素子寿命及び発光効率が著しく向上した。
【0057】
〔応用〕
本発明の応用例として、第2のGaN層32の貫通転位の低減されていない領域をさらにエッチングし、更にGaN層を横方向エピタキシャル成長させることも有用である。図10は、第1のGaN層31、第2のGaN層32のエッチングをする位置の模式図である。図10の(a)のように、ストライプ状にエッチングをして、段差の上段のGaN層31(図で斜線)の部分と、Bで示した段差の底部とを形成する。図10の(b)のように、図10の(a)でBで示した段差を埋めたGaN層32を残し、ストライプ状にエッチングをして、Aで示した段差の底部とを形成する。こうしてGaN層33を段差の上段となった第2のGaN層32を核として横方向エピタキシャル成長すると、図10の(c)のように、GaN層31から貫通転位を伝搬している部分である31と示した領域、横方向エピタキシャル成長したGaN層32の上部で貫通転位が抑制された32と示した領域、横方向エピタキシャル成長したGaN層33の上部で貫通転位が抑制された33と示した領域とが形成される。これにより、ウエハのほぼ全面にわたって、貫通転位の低減された領域を形成することが可能である。尚、GaN層32のエッチング深さは任意として良い。これにより全面にわたって貫通転位の抑制されたIII族窒化物系化合物半導体基板を得ることもできる。尚、GaN層32をエッチングして段差を形成し、それを核としてGaN層33を横方向成長させる場合は、本発明の横方向成長に限られない。例えば底部にマスクを形成し、底部からの縦方向成長を遮断し、横方向成長を確実なものとしても良い。
【0058】
〔エッチングの変形〕
また、図11は、3組の{11−20}面により、島状に段差の上段を形成する例である。図11の(a)は、3組の{11−20}面で形成される外周をも示しているが、これは理解のため簡略化した模式図であり、実際には島状の段差の上段はウエハ当たり数千万個形成して良い。図11の(a)では、島状の段差の上段に対し、段差の底部Bは3倍の面積を有する。図11の(b)では、島状の段差の上段に対し、段差の底部Bは8倍の面積を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体の製造工程を示す断面図。
【図2】 本発明の第2の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体の製造工程を示す断面図。
【図3】 本発明の第3の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体の製造工程を示す断面図。
【図4】 本発明の第4の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体の製造工程を示す断面図。
【図5】 本発明の第5の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体発光素子の構造を示す断面図。
【図6】 本発明の第6の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体発光素子の構造を示す断面図。
【図7】 本発明の第7の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体発光素子の製造工程の一部を示す断面図。
【図8】 本発明の第7の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体発光素子の構造を示す断面図。
【図9】 本発明の第8の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体発光素子の構造を示す断面図。
【図10】 第1のIII族窒化物系化合物半導体のエッチングの他の例を示す模式図。
【図11】 第1のIII族窒化物系化合物半導体のエッチングの更に別の例を示す模式図。
【図12】 III族窒化物系化合物半導体を伝搬する貫通転位を示す断面図。
【符号の説明】
1、101、201、301、401 基板
2、102、202 バッファ層(異なる層)
20 基底層
21 基底層を形成する第1緩衝層
22 基底層を形成する中間層
23 基底層を形成する第2緩衝層(異なる層)
31 第1のIII族窒化物系化合物半導体(層)
32 第2のIII族窒化物系化合物半導体(層)
103、203 n-GaN層
104、204、302、402 n-AlGaNクラッド層
105、303 n-GaNガイド層
106、205、304、403 発光層
107、305 p-GaNガイド層
108、206、306、404 p-AlGaNクラッド層
109、207、307 p-GaN層
110A、208A、308A、405A p電極
110B、208B、308B、405B n電極
Claims (7)
- 基板上にIII族窒化物系化合物半導体をエピタキシャル成長により得るIII族窒化物系化合物半導体の製造方法において、
少なくとも2層のIII族窒化物系化合物半導体から成り、最上層を第1のIII族窒化物系化合物半導体とする基底層をエッチングにより、点状、ストライプ状又は格子状の島状態とし、第1のIII族窒化物系化合物半導体とは組成の異なる第3のIII族窒化物系化合物半導体から成る層の面を底部に露出させるよう段差を設ける工程と、
前記エッチングにより形成された点状、ストライプ状又は格子状の島状態の前記第1のIII族窒化物系化合物半導体の段差の上段の上面及び側面を核として、第2のIII族窒化物系化合物半導体を縦及び横方向エピタキシャル成長させる工程とを有し、
前記エッチングにより面を底部に露出させる前記第3のIII族窒化物系化合物半導体は、AlN、AlxGa1-xN又はAlxGayIn1-x-yN(x≠0)からなり、
前記基底層は、前記基板上に、単結晶が成長しない温度で形成された III 族窒化物系化合物半導体から成る緩衝層と、単結晶が成長する温度で形成された III 族窒化物系化合物半導体層とを1周期として複数周期繰り返し積層し、最上層を前記第1の III 族窒化物系化合物半導体とする多重層であり、前記第3の III 族窒化物系化合物半導体は、前記緩衝層であることを特徴とするIII族窒化物系化合物半導体の製造方法。 - 前記段差の底部の幅は、底部の露出した前記異なる層の面に縦方向成長が始まるよりも、側面からの横方向成長により段差が塞がれる方が早いよう形成されることを特徴とする請求項1に記載のIII族窒化物系化合物半導体の製造方法。
- 前記段差の側面は、略全部が{11−20}面であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のIII族窒化物系化合物半導体の製造方法。
- 前記第1のIII族窒化物系化合物半導体と前記第2のIII族窒化物系化合物半導体とが同組成であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のIII族窒化物系化合物半導体の製造方法。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のIII族窒化物系化合物半導体の製造方法により製造した前記III族窒化物系化合物半導体層の、横方向エピタキシャル成長した部分の上層に形成されたことを特徴とするIII族窒化物系化合物半導体素子。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のIII族窒化物系化合物半導体の製造方法により製造した前記III族窒化物系化合物半導体層の、横方向エピタキシャル成長した部分の上層に、異なるIII族窒化物系化合物半導体層を積層することにより得られることを特徴とするIII族窒化物系化合物半導体発光素子。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のIII族窒化物系化合物半導体の製造方法に加えて、横方向エピタキシャル成長した部分の上層以外を略全部除去することにより、前記III族窒化物系化合物半導体基板を得ることを特徴とするIII族窒化物系化合物半導体基板の製造方法。
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