以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔画像処理の概要〕
まず、本発明の実施形態に係る画像処理方法の概要を説明する。図1(a)は、インクジェットヘッドの模式図、図1(b)はヘッドと記録媒体の相対移動によって作られるノズル座標の例、図1(c)は記録媒体上に実際に記録されるドットの例を示す。
図1(a)では、ヘッド10の長手方向(図において縦方向)に沿って複数のノズル1〜6が配列されたラインヘッドが示されている。このヘッド10におけるノズルの並び方向と直交する方向にヘッド10と記録媒体20を相対的に移動させて画像を形成する場合を例示する。各ノズル1〜6から吐出される液滴の飛翔方向を矢印によって示してある。ヘッド製造上の問題などに起因して、インクジェットヘッドから打滴されるインク滴は理想着弾位置からずれて着弾し得る。例えば、図1(a)におけるノズル5のように、隣接ノズル4の理想着弾位置にまで着弾位置がずれてしまう場合がある。
従来の画像処理方法では、ヘッド10と記録媒体の相対移動によって作られる図1(b)のような座標系(ノズル座標)に基づいてドット配置が決定されていた。
図1(b)に示したノズル座標は、ヘッド10におけるノズルの配列方向の位置を表すノズル位置i、ヘッド10のノズル配列方向に直交する方向の記録媒体送り方向(相対移動方向)の位置jによって、画素の位置(i,j)が特定される座標系である。ここでは、最小記録単位である1画素を1つの枡目(セル)によって表しており、画素のi座標(i=1〜6)は、それぞれヘッド10のノズル番号1〜6の各位置と一対一で対応している。
これに対し、本発明の実施形態では、図1(c)のように、記録媒体20上に実際にドットが着弾する座標(「ドット座標」という。)に基づいてドット配置が決定される。ドット座標とは、記録媒体上を規則的に区切った格子状の座標である。ここでは、最小記録単位である1画素を1つの枡目(セル)によって表している。
図示の例では、ヘッド10の各ノズル1〜6から吐出されるインク滴によって記録媒体20上に形成される理想的なドットの大きさ(設計上の大きさ)は1つの枡目よりも大きく、例えば、各セルにそれぞれドットの中心が位置するようにしてドットを形成すれば、隣接するドット同士が部分的に重なりあって、隙間の無いベタ画像を得ることができる。
ただし、実際のヘッドでは様々な要因によりインク滴の着弾位置ズレ、あるいは液滴量のバラツキなどが生じ、必ずしも理想的なドットの形成は保証されない。
図1(c)は、図1(a)に示したヘッド10の各ノズル1〜6を適宜のタイミングで駆動して、打滴を行ったときの打滴結果の例を示すものである。図1(c)において、ドット1は、ヘッド10のノズル1によって形成されるドットであり、ドット2はノズル2によって形成されるドットである。以下、同様に、図中のドットk(k=1〜6)はヘッド10のノズルkによって形成されるドットを表している。
ドット4とドット5に注目すると、これらのドット4,5は同じドット座標(x=4)上に形成されている。なお、着弾後のドット形状において、ドット中心(またはドット濃度重心)が属する枡目(セル)の座標を、そのドットが属するドット座標(ドット形成位置)というものとする。
図1(b)で説明した従来のノズル座標に基づいて考えると、ドット4とドット5はそれぞれ異なるノズル4,5によって打滴されるため、これらのドット4,5は異なる座標上にある(ドット4はノズル座標i=4、ドット5はノズル座標i=5)。したがって、従来のノズル座標に基づく画像処理のアルゴリズムでドット配置を決定するときは、i=4のドットとi=5のドットは、誤差拡散の処理順序に従って異なる時点でその配置を決定することになる。
これに対し、図1(c)に示す本実施形態のドット座標に基づいて考えると、ドット4とドット5は同じ座標(x=4)上にあるため、これら2つは同じ時点で(x=4の画素位置の処理時)に配置を決定することになり、どちらを使用するかを適切に判断できる。
図2に、ドット座標x=1〜6と、各座標位置に打滴可能なドットの番号、並びに各ドットを形成し得るノズルの番号の対応関係をまとめた図表を示す。図2に示すように、ドット座標x=4に対してはドット4,ドット5を打滴可能であり、ドット座標x=5に対してはドットを形成することができない(図2中の「φ」は空集合を表す)。
このように、本実施形態では、ドット座標系の各位置に対して打滴可能なドットの集合と、各ドットに対応するノズルの情報を把握し、これに基づいてドット配置を決定し、決定したドット配置に対応するノズルの駆動制御を行う。なお、ドット配置の決定方法について詳細は後述する。
図2の例では、説明を簡略化するために、単一ドットサイズの場合においてドット着弾位置がずれる現象を述べたが、上記のドット座標に基づく考え方は、ドットサイズの変化にも適用できる。
例えば、図3に示すように、各ノズル1〜6からそれぞれ3種類のドットサイズ(小,中,大)のドットを選択的に打滴可能なシステムとし、ドットサイズによって異なる着弾特性を備えるものとする。
図3では、ノズル6により形成される小ドット6Sはドット座標x=4の位置に形成され、中ドット6Mはドット座標x=6の位置に、大ドット6Lはドット座標x=5の位置に形成される。
図4は、ドットサイズの変化に対応したドット座標x=1〜6と、各座標位置に打滴可能なドットの番号、並びに各ドットを形成し得るノズルの番号の対応関係をまとめた図表である。なお、図示の便宜上、表の一部を省略して示した。
このようにドットサイズによって異なる着弾特性を備えるノズルの場合、本実施形態では各ドットサイズのドット(6S,6M,6L)がそれぞれ異なる座標に属するように扱うことができるので、より適切なドット配置を決定できる。
ただし、同一ノズルから打滴される複数種類のドットサイズを別々のドットとして取り扱うとき、同時に打滴できない条件が発生する(例えば、走査上同一タイミングでは小ドットと大ドットを打滴できない)ため、このような同時打滴不能な場合を考慮しないと、実際には打滴できないドット配置を決定してしまうことが予想される。
そのような問題に対処するために、図5に示すように、同時打滴できない関係にあるドットの組合せを予め求めておき、打滴できない関係にある場合を排除することが望ましい。また、ドットサイズの選択に限らず、ヘッドの構造上、隣接ノズルを同時駆動できないような、ノズルに基づく禁止組合せがある場合は、かかるノズルの禁止組合せを、ドット座標のドット組合せに変換して、打滴できない関係にある場合の条件(禁止条件)に含めることができる。
また、本実施形態のようにドット座標に基づいてドット配置を決定する方法は、ノズル間隔が均一ではないヘッドについても非常に有効である。
図6(a)にノズル間隔が均一でないヘッドの例を示す。同図によれば、ノズル1とノズル2の間隔P1は、ノズル2〜6の隣接ノズル間の間隔P2よりも大きくなっている(P1>P2)。このヘッド30によるドットの形成例を図6(b)に示す。ドット座標とノズル間隔の関係は、ヘッドにおけるノズル間隔のうち最多頻度の間隔(図6(a)の場合、ノズル2〜6の隣接ノズル間隔P2)とドット座標の間隔が等しいことが好ましい。
図示の例では、ドット座標x=1〜3に対してそれぞれドット1〜3を形成することができ、ドット座標x=4に対してドット4またはドット5を形成することができる。また、ドット座標x=5に対してドット6、ドット座標x=6に対してドット7を形成することができる。
このように、記録媒体上のドット座標と各座標に着弾可能なドット、並びに各ドットを形成するためのノズルという対応関係を決定できればよいため、ノズル間隔が均一であるか否かは、本実施形態における画像処理方法ではあまり問題にならない。
なお、ノズル間隔が不均一となる要因としては、製造上のノズルピッチの精度バラツキ以外に、ヘッドの構造的要因がある。例えば、短尺ヘッドを繋いでラインヘッドを構成する場合、短尺ヘッド間のつなぎ部分のノズル間隔が不均一になりやすい。そのため、従来は、短尺ヘッドを繋いでラインヘッドを構成するとき、短尺ヘッド間のつなぎ部分のノズルをオーバーラップさせるなど、ノズル間隔を密にする技術が知られており、また、このような間隔が均一でない部分について、規則的に(または不規則に)打滴するノズルを切り換えることで、スジ状の濃度ムラの視認性を低減する技術も知られている。
これに対し、本発明の実施形態では、ドット座標に基づいて、ドット座標上で適切なドット配置を決定するため、ノズル間隔の違いを考慮する必要がない。したがって、短尺ヘッド間のつなぎ部分とそれ以外の部分とで製造上の工夫や吐出制御上の区別などを全く考慮することなく、適切なドット配置を決定することができる。
ドット座標に基づくドット配置決定には、後述のドットモデルに基づくドット配置決定方法が適する。ヨレやノズル間隔の不均一は、ドット座標の間隔よりも一般的に小さい。そのため、適切にドット配置を決定するには、上記の小さなズレを適切に利用できるドットモデルに基づくドット配置決定方法が望ましい。
〔ドットモデルの説明〕
次に、ドットモデルについて説明する。図7にドットモデルの例を示す。図中、符号50で示された円形の斜線部が実際に記録媒体上に形成されるドットの位置及びそのドット形状を表している。図7のように、ドットモデルは、ドット座標の格子間隔(画素に相当するセル)でドット50の形状を区切った概念である。図7の例では、ドット形成位置を表す画素(図7の中央のセル)とその周囲の8画素からなる3×3の画素マトリクス(メッシュ)を考える。
この3×3の画素マトリクスの各画素は、図に示すように(通常の行列の表現とは逆に)列番号を先にした列番号xと行番号yの組11〜33で表示するものとする。したがって、番号の組xyは、x列y行の位置を示す。以下、図中この番号の表示は省略するが、この番号の組によって各画素位置を指し示すことにする。
すなわち、図7で例示するドットモデルは、ドット50の中心(または濃度の重心)が属する画素22およびその周囲8画素を含む3×3の画素マトリクスの各画素11〜33にそれぞれ含まれるドット50の面積と濃度を、ドットの形状(ドット広がりのイメージ)に基づいて表現する。
図8にドットモデルのバリエーションを示す。(a)は理想的なドット形状および着弾位置のドットのドットモデルを表している。図のように、理想的なドットの大きさは、ドット形成位置で仕切られるメッシュ(格子)間隔より大きく、また、ドットの中心はドット形成位置の画素セルの中心と一致している。(b)は、着弾位置が理想位置から下方に変位した着弾位置ズレを有するドットのドットモデル例を示す。
また、(c)は、着弾位置が理想位置から上方に変位した着弾位置ズレを有するドットのドットモデル例を示す。(d)は、ドットサイズが異なるドットのドットモデル例を示す。(e)はサテライトを有する場合のドットモデルの例である。符号52で示した小円がサテライトドットを表している。
図8(b)〜(e)に示したように、実際に形成されるドットは、理想着弾位置からズレたり、ドット形状が理想形状と異なったりすることがある。なお、図8(b)〜(e)のいずれのモデルにおいても、ドット中心(濃度の重心)は画素22のセル内にあるため、ドット形成位置は画素22であるとして取り扱われる。
実際にノズルから被記録媒体上にインクを吐出した場合に、ドット位置、ドット形状等は、ノズルの吐出特性の他に記録媒体の特性によって決まる。例えばインクが滲み易いという特性を有している記録媒体の場合、インクが滲んで大きく広がりドット形状がくずれたりすることがある。このように、実際のドットモデルはノズルの吐出特性及び記録媒体の定着特性によって決まる。
すなわち、ドットサイズ、ドット濃度およびドット形状は、インク特性と記録紙特性に依存する。着弾位置はノズル特性に依存する。サテライトはインク特性とノズル特性に依存する。
ドットモデルは、このような実際のドットの状態を考慮して、ドットサイズ、着弾位置、ドット濃度(分布)、ドット形状、サテライトの有無等を各ドット配置可能位置(図示の例では、画素11,21,31,12,22,32,13,23,33)に基づいて2次元的(濃度方向を含めると3次元的)に表現したものである。
本発明の実施形態においては、図8(a)〜(e)で例示したように、様々なドットの状態を表現すべく、ドット広がりのイメージに基づいて、図7のドット配置可能位置11,21,31,12,22,32,13,23,33にそれぞれ含まれるドットの面積と濃度から、ドットモデルを数値表現したものを用いる。
図9にドットモデルを数値化した例を示す。ドットモデルにおける画素(セル)の1つ1つは、その画素(セル)とドットとの重なりの面積及びドット濃度を考慮してその値が決定される。図9の例において、ドット濃度をDとすると、中心のドット形成位置(画素22の位置)における値は1.0×Dとなり(以下、表記の便宜上、乗算の演算記号(×)を省略し、「1.0D」のように記載する。)、各周辺の画素の値は、ドットとの重なりの面積により、図9に表示したようになる。
すなわち、図7で説明したように3×3画素マトリクスにおいてi列j行の画素を「画素ij」と表記するものとすると、図9における画素11は0.05D、画素12は0.9D、画素13は0.5D、画素21は0.1D、画素23は0.7D、画素31は0.0D、画素32は0.3D、画素33は0.2Dとなる。なお、各セルについて、セル内での濃度分布は考慮せずに、各セルに含まれるドット濃度の平均を各セルで達成する濃度とする。
上記のようにドットモデルは数値化(量子化)され、ラスタライズされてドット配置の決定に用いられる。
図7乃至図9では3×3のドット配置可能位置の例を示したが、ドットモデルのサイズはこのように3×3のサイズに限定されるものではなく、任意のサイズを用いることができる。一般的にN×M(N,Mは2以上の整数)のサイズで表現されるべきものである。
また、図7乃至図9で説明した3×3の画素マトリクスサイズの例に対して、図10に示すように、ドット形成位置(画素22)の周囲の画素について、より細かいメッシュを形成する態様も可能である。
図10のように、ドット形成位置(画素22)の周囲の画素について、ドット座標よりもさらに細かく領域を区切ることで、ドットの端部でドット同士が重なるかどうかを判別することが可能になる。そのときにドット重なりによる濃度変化の非線形性を取り入れることができるようになる。すなわち、図10のように細かく区切り、ドットが重なる効果を考慮してドット配置を決定することもできる。
また、画素を表す単位セルの形状は、特に限定されず、長方形、正方形、その他の多角形など多様な態様があり得る。
ドット座標に基づくドット配置の決定方法は、記録媒体の搬送が蛇行(あるいは斜行)したりするときに起きる副走査位置によってドット着弾位置が異なる問題にも適用可能である。搬送速度の変動による副走査方向の位置ずれも同様に扱うことができる。
図11は、副走査位置によってドット座標が異なる例を示した図である。同図では、ノズル1とノズル6によってそれぞれ形成されるドットの着弾位置が副走査位置によって変化する様子が示されている。
このように、副走査位置に応じてドット着弾位置が変化する場合は、図4および図5で説明した表のドット座標を2次元的に作成し、各副走査位置におけるドット着弾位置の変動をドットモデルの変化とドット位置の変化の両方に反映させ、この2次元的なドット座標を用いてドット配置を決定する。
図12はドットモデルの情報を取得する方法の説明図である。同図において、符号60はラインヘッド、符号62は記録媒体を表している。ラインヘッド60に対して図の右から左方向に記録媒体62が搬送されるものとする。
図12のように、記録媒体62の搬送方向(副走査方向)の異なる位置に複数のドット計測領域(ここでは領域1〜5)が設定される。図示の例では、記録媒体62の主走査方向幅(図における縦方向幅)の長さを有する短冊状のドット計測領域1〜5が副走査方向に一定の間隔で設定されているが、ドット計測領域の副走査方向幅や領域間の距離は必ずしも等幅、等間隔で設定されなくてもよい。ドット計測領域の副走査方向幅や領域間の間隔は、副走査方向位置による着弾特性の変動の程度に応じて適宜設定される。
図12において各ドット計測領域1〜5に対応する位置座標(例えば、各領域1〜5のそれぞれの中央位置を示す座標)をX1,X2,X3,X4,X5とする。
これらX1〜X5に対応する各領域1〜5において、ラインヘッド60の各ノズルから打滴されるドットを計測(実測)して、各領域1〜5におけるノズルに対応するドットモデルを決定する。これにより、各領域1〜5ごとに主走査方向の1ライン分の各位置におけるドットモデルの情報が得られる。
その一方、これら領域1〜5以外の領域については、補間演算によりドットモデルを決定する。例えば、X1<X<X2なる位置Xにおけるノズルに対応するドットモデルは、X1のドットモデルとX2のドットモデルを用いて補間演算により決定する。
以下、補間によるドットモデルの決定手順について説明する。
まず、図12の位置X1〜X5において、各ノズルNi(iはノズル番号)と、Niに対するドットサイズsの組合せに関してPDM(x,Ni,s)=(DI, y,xc,yc)を決定する。PDM(x,Ni,s)は、ドット座標のX方向の位置xにおいて、ノズルNiから吐出されるドットサイズsの液滴が記録媒体上に付着したドットの組合せを示す。
ここでの「DI」は、ドットが属する所定サイズ(Nx×Ny) のマトリクス上のドットイメージを表し、「x,y」はドットイメージDIのドット中心(あるいは濃度の重心)が属するドット座標上の位置を表し、「xc,yc」はドットイメージDIのドット中心が属するドットイメージ上の位置、をそれぞれ表す。
ドットイメージは、少なくとも濃度、形状、サテライトの有無を表現できる対象ドット(上記のPDM(x,Ni,s)で指定されるドット)の2次元的な濃度分布を表すもので、対象ドットを丁度含み且つドット座標上で連続且つ、全体として矩形となるようなセルの集合として扱う。濃度分布はドット座標のセルの大きさに対する整数分の1の大きさで表現することが望ましい。
図13(a)はドットイメージの説明図である。同図に示したように、所定サイズの単位セル70によりX方向(図の横方向)及びこれに直交するY方向(図の縦方向)の2次元マトリクス状に区画されたドット座標系において、対象ドットDの2次元濃度分布を考える。
図示の対象ドットDは、ドット座標上でそのドット中心位置CD(XC,YC)が属するセルとその周囲8セルを含む3×3のセルに濃度が分布している。この対象ドットDの被覆領域(ドットの輪郭を表す境界線の内側領域)を内包し、かつ全体として矩形の3×3のセルの集合をドットイメージとして取り扱う。図13(b)は図13(a)におけるドットイメージの部分を拡大した図である。なお、本例では3×3のセルの集合をドットイメージとして取り扱うが、ドットイメージのサイズはこれに限定されない。
対象ドットDの中心位置CDを(XC,YC)とし、このドット中心位置(XC,YC)を含むドット座標上のセルのX座標をX、Y座標をYとすると、PDM(x,Ni,s)={DI,y,xc, yc}は、y=Y,xc=XC−X,yc=YC−Yの関係がある。
このPDM(x,Ni,s)に基づいて、図12におけるX1〜X5以外の位置xにおけるPDM(x,Ni,s)を線形補間によって決定する。
図14および図15は線形補間の計算方法を説明するための説明図である。これらの図面中、ドットイメージDI1は位置X1に打滴されるドットD1のドットイメージの例を表し、ドットイメージDI2は位置X2に打滴されるドットD2のドットイメージの例を表すものとする。図14ではドットイメージDI1のドット中心(XC1,YC1)が属するドット座標上の主走査方向位置(図の縦方向のセルの位置)とドットイメージDI2のドット中心(XC2,YC2)が属するドット座標上の主走査方向位置とが同じ場合の例が示されている。
また、図15ではドットイメージDI1のドット中心が属するドット座標上の主走査方向位置とドットイメージDI2のドット中心が属するドット座標上の主走査方向位置とが異なる場合の例が示されている。
これらの図面に示したように、補間計算は、X1<X<X2なる位置Xについては、ドットイメージDI1のドット中心位置(XC1,YC1)とドットイメージDI2のドット中心位置(XC2,YC2)との2点間の線形補間によって求める。
すなわち、図16に示したように、ドットメージDI1をドット座標上に置いたときのドット中心位置(XC1,YC1)とドット座標上のX方向の位置X1(ただし、XC1= X1 + xc1, YC1= Y1 + yc1 )並びにドットイメージDI2をドット座標上に置いたときのドット中心位置(XC2,YC2)とドット座標上のX方向の位置X2(ただし、XC2 = X2 + xc2, YC2 = Y2 + yc2 )に対して、求めるドット座標上のX方向位置XのドットイメージDIをドット座標上に置いたときのドット中心位置(XC, YC)を前記中心位置(XC1, YC1)と(XC2, YC2)の2点間を通る直線上の点として線形補間計算により求める。
ドット座標上のX方向の位置Xを通るドット座標上のY方向の位置Yが求めるyであり、次式
XC=α×XC1+β×XC2
( ただし、α+β=1,α:β=(X2−X):(X−X1))
YC=α×YC1 +β×YC2
( ただし、α+β=1,α:β=(Y2−Y):(Y−Y1))
を満たす。
次にドットイメージDI1の中心位置(XC1, YC1) がドットイメージDIの中心位置(XC, YC)に合致するように、ドットイメージDIをX方向に(XC−XC1)、Y方向に(YC−YC1)だけずらした(移動させた)ドットイメージDI1’を計算する。
同様に、位置X2のドットイメージDI2をX方向に(XC−XC2)、Y方向に(YC−YC2)だけずらしたドットイメージDI2’を計算する。
上記のようにして求めたドットイメージDI1'とドットイメージDI2'の平均化したドットイメージを位置x=Xのドットイメージとして決定する。
この計算をドットサイズs 並びにノズルNiについてそれぞれ行うことで、位置xにおけるPDM(x,Ni,s)を計算できる。こうして求めたPDM(x,Ni,s)に基づいて、ドットモデルDM(x,y,s,t)を計算する。なお、変数tは、位置(x,y)に対して打滴可能なドットが複数あるとき(ドットサイズはほぼ同じ)に、これら複数のドットを区別するための変数である。
図12に示した他のドット計測領域間の位置(X2<X<X3,X3<X<X4,X4<X<X5)についても上記同様に補間計算によってドットモデルが求められる。
こうして、副走査方向位置によって着弾特性が変動する場合にも適用可能な2次元的なドットモデルの情報を得ることができる。
〔誤差拡散処理の具体例〕
次に、上記のドットモデルを用いて、誤差拡散処理によりドット配置を決定する方法を説明する。
図7〜図9で説明したように、ドットモデルは、記録媒体上に設定されるドット座標の各ドット形成位置(画素)におけるドット形状、ドット位置誤差、ドットサイズ誤差、サテライトの有無及びサテライトを有する場合のその形状等のドット形成状態に関する情報を含んでいる。
本実施形態は、上述したドットモデルを用いて、各ドット形成位置におけるドットの形成を決定することによりハーフトーニングを行い高画質な画像を得ようとするものである。すなわち、本実施形態のドット配置決定方法は、記録媒体上にドットを形成して画像を形成する際、その記録媒体上の位置(x,y)にドットを形成するか否かを決定する順序(画素の処理順)にしたがって、その位置(x,y)におけるドット形成を判断していく。
記録媒体上の画像形成領域は、図17のように、ドット形成可能位置(画素)を表す枡目(セル)に分割され、各セルを表す座標(x,y)が与えられている(ドット座標)。図17の例では、画像形成領域の左上隅を原点として、右方向へx、下方へyの位置にある枡目(画素)の位置を(x,y)で表す。
本実施形態においては、図17のような2次元画素マトリクスの座標系において左上から右横に向かって、また上段の行から順次下段の行へと順に(ラスタ順)に処理対象の画素(注目画素)を移動させながらドット形成を判断していくものとする。
誤差拡散処理は、量子化済み領域の累積誤差を未量子化領域へ拡散しておき、注目画素を量子化するときに累積誤差を含めて量子化し、そこで発生した誤差を注目画素に隣接する未量子化領域へ拡散するという特徴がある。
図18において斜線で示した領域は、量子化済みの画素の領域である。量子化済み領域に属するセル(画素)は、量子化処理が済んでおり、かつそれぞれの画素における累積誤差がゼロとなっている。その一方、図中白抜きで示した領域は未量子化領域であり、この未量子化領域に属するセル(画素)は、量子化処理が完了しておらず、かつそれぞれの画素において累積誤差が保持されている。また、図中の「*」印を付した位置が注目画素を表している。
ドットモデルに基づくハーフトーニングで誤差拡散処理を行うとき、注目画素(図18の*印の位置)においてドットをONする場合を考えると、例えば、図19に示すドットモデルを形成する際、当該ドットモデルは、1画素のセルよりも大きい広がりを持つので、その広がりの影響によって、周辺の量子化済み領域(ドット配置可能位置)および未量子化領域に対しても濃度を加算することになる(図19参照)。
既述のとおり、誤差拡散処理は、量子化済み領域の累積誤差をゼロにするように量子化しているので、量子化済み領域に対するドット広がりは誤差として処理する必要がある。特に、誤差は発生した位置近くで解消されることが望ましい。
図20(a)〜(d)は、注目画素位置にそれぞれ異なるドットモデルを配置する場合の例を示したものである。これらの図に示したように、ドットモデルの広がりによって量子化済み領域への誤差の影響度が異なるが、これらドットモデルに応じた量子化済み領域への誤差を、図21(a),(b)に示すように、誤差発生位置に隣接する位置へ拡散する。なお、このとき、注目画素位置へ拡散する誤差は、後の注目画素位置からの誤差拡散(図21(c))に含めて処理する。その後、さらに、注目画素に関して図21(c)のように未量子化位置に誤差を拡散する。
図21(a)に示す第1の拡散処理(「誤差拡散1」)は、ドットモデルの広がりによって注目画素(x,y)に隣接する量子化済み領域の画素(x-1,y-1),(x,y-1),(x+1,y-1)で発生した誤差を、量子化済み領域の画素(x-1,y)および注目画素(x,y)並びに未量子化領域の画素(x+1,y),(x+2,y)にそれぞれ拡散する処理である。
図21(b)に示す第2の拡散処理(「誤差拡散2」)は、上記の「誤差拡散1」の後に、注目画素(x,y)の右隣の画素(x-1,y)の累積誤差を注目画素(x,y)および未量子化領域の他の画素(x-2,y+1)、(x-1,y+1),(x,y+1)に拡散する処理である。
図21(c)に示す第3の拡散処理(「誤差拡散3」)は、上記の「誤差拡散2」の後に、注目画素(x,y)の量子化処理の結果発生した誤差を隣接する未量子化領域の画素(x+1,y),(x-1,y+1),(x,y+1),(x+1,y+1)に拡散する処理である。
なお、ここでは誤差拡散の処理を3段階(誤差拡散1〜3)に分けて説明したが、実装上演算量を削減するために誤差拡散の一部を省略変更することは本技術の本質からはずれることではない。
本実施形態では、<1>既に量子化した位置に広がるドットモデルの濃度分を誤差として未量子化位置へ拡散すること、<2>既に量子化した位置に広がるドットモデルの各位置における発生誤差(ドットモデルの濃度)の大小に応じて周辺への誤差配分が変ること、という特徴によって、ドットモデルに応じた適切な誤差の拡散を実現している。
以下、誤差拡散処理の具体例を説明する。説明に用いる主な記号の意味は下記のとおりである。注目画素の位置 (x,y)、多値の入力画像データの画像信号をI(x,y)とする。例えば、8ビット(256階調)で表現される入力画像データの場合、画像信号I(x,y)は、0〜255の値をとる。
量子化判定に用いる閾値については、打滴可能なドットサイズが1つの場合、閾値T(x,y)とする。打滴可能なドットサイズが複数の場合は、ドットサイズを区別する変数sを用いて閾値T(x,y,s)とする。また、累積誤差 E(x,y)とは 位置(x,y)に累積した誤差を表す。なお、既量子化位置では累積誤差はゼロとする。累積広がり S(x,y)とは、位置(x,y)に隣接位置や周辺位置のドットモデルの広がり部分が重なるとき、その累積値を表す。この累積広がりは、未量子化位置でのみ意味を持つ。
注目位置(x,y)で打滴可能なドットのドットモデル DM(x,y : ij) とする。ここでいう「ij」はドットモデル上の位置を表し、図7の11,21,31,12,22,32,13,23,33を示すものである。つまり、「ij」は(x,y)に対する相対座標を表している。図22にドット位置とドットモデルの関係を図表にまとめたものを示す。
位置(x,y)に対して打滴可能なドットが複数あるとき(ドットサイズはほぼ同じ)は、ドットモデルDM(x,y, t : ij)とする。変数tによって複数のドットを区別する。
また、打滴可能なドットサイズが複数あるときは、ドットモデル DM(x,y, s,t : ij)
とする。sはドットサイズを区別するための変数、tは複数ドットを区別するための変数である。
なお、注目位置に対して同時に2つ以上のドットを打滴できる場合は、同時打滴の組合せを数え上げて各組合せを別々の「t」として扱う。
例えば、図23(a)、(b)に示す2つのドットをそれぞれ独立に打滴できる場合は、その2つを組合せた図24(d)を加えて、図24(b)、(c)、(d)のような3つが組合せの全部である。
アルゴリズムとして簡潔な記述をするために、図24(a)の打滴しない場合を加えて、t=0,1,2,3の4つを注目位置で打滴可能なドットモデルとしても良い。
〔注目画素における量子化判定1〕
打滴可能なドットサイズが1つの場合、下記の[判定式1-1]によって量子化を判定する。
[判定式1-1] I(x,y)−E(x,y)−S(x,y)>T(x,y)
上記した[判定式1-1]の不等式を満たすならば、ドットON、そうでなければドットOFFと判定される。
また、打滴可能なドットサイズが複数の場合、下記の[判定式1-2]によって量子化を判定する。
[判定式1-2] I(x,y)−E(x,y)−S(x,y)>T(x,y,s)
上記した[判定式1-2]の不等式を満たすならば、ドットサイズsのドットON、そうでなければドットOFFと判定される。各sについて順次判定し、[判定式1-2]を満たしたらそのドットサイズsをドットONに決定して終了、全てのsについて[判定式1-2]を満たさなければドットOFFに決定する。
上記の[判定式1-1]又は[判定式1-2]を用いた判定処理によって、ドットONになったときの具体的なドットモデルの決定方法は、以下のいずれかとする。
[1] 乱数により、t=1,..n のうち一つをドットモデルに決定する。
[2] t=1,..n のうち既量子化領域と注目画素に対する発生誤差の絶対値が最小となるtをドットモデルに決定する。すなわち、下記の関数が最小となるtをドットモデルに決定する。
[式1-3]
F(t) = |[DM(x,y,s,t:11)+DM(x,y,s,t:21)+DM(x,y,s,t:31)
+DM(x,y,s,t: 12)−{I(x,y)−E(x,y)−S(x,y)−DM(x,y,s,t:22)}]|
〔誤差拡散処理の方法〕
次に、誤差拡散処理の方法を説明する。上記の量子化判定1によって、注目画素について決定されたドットモデルを用いて下記のように、誤差の拡散処理が行われる。なお、注目画素がドットOFFのときは、t=0としたときのドットモデルDM(x,y,s,t)を使って計算する。
(A.発生誤差初期値の計算について)
まず、注目位置(x,y)のドットモデルが確定することによって発生する各位置の発生誤差の初期値を以下のように計算する。
E(x-1, y-1)=DM(x,y,s,t:11) …[式A-1]
E(x, y-1)=DM(x,y,s,t:21) …[式A-2]
E(x+1, y-1)=DM(x,y,s,t:31) …[式A-3]
E(x-1, y)=DM(x,y,s,t:12) …[式A-4]
E(x, y)=−{I(x,y)−E(x,y)−S(x,y)−DM(x,y,s,t:22)} …[式A-5]
なお、上記の式は、通常の数学上の等式ではなく、左辺と右辺に同じ文字変数を含む場合は、右辺の演算結果を新たに左辺の文字変数の値として置き換えることを表している。例えば、[式A-5]では、左辺と右辺に同じ文字変数のE(x, y)を含んでおり、右辺の演算結果を新たにE(x, y)の値として置き換える。以後、本明細書中における演算式の表記について同様とする。
続いて、各位置における誤差の拡散処理を行う。誤差の拡散に際しては、下記のとおり、第1の拡散→第2の拡散→第3の拡散の順に行われる。
(B.第1の拡散について)
第1の拡散(誤差拡散1)処理では、ドットモデルの広がりによって(y-1)行で発生した誤差をy行へ拡散させる。すなわち、各位置の誤差は以下の式で演算される。
E(x+2, y)=E(x+2, y)+C31_1×E(x+1, y-1) …[式B-1]
E(x+1, y)=E(x+1, y)+C31_2×E(x+1, y-1)+C21_1×E(x, y-1) …[式B-2]
E(x, y)=E(x, y)+C31_3×E(x+1, y-1) +C21_2×E(x, y-1)
+C11_1×E(x-1, y-1) …[式B-3]
E(x-1, y)=E(x-1, y)+C21_3×E(x, y-1)+C11_2×E(x-1, y-1) …[式B-4]
ただし、C31_1 ,C31_2 ,C31_3は、ドットモデルの3×3画素マトリクス(図7参照)における位置31で発生した誤差を隣接位置へ拡散する際の誤差拡散係数であり、次式[式B-5]を満たす。
C31_1 + C31_2 + C31_3 = 1.0 …[式B-5]
同様に、 C21_1,C21_2 ,C21_3は、位置21で発生した誤差を拡散する際の誤差拡散係数であり、次式[式B-6]を満たす。
C21_1 + C21_2 + C21_3 = 1.0 …[式B-6]
また、C11_1 ,C11_2 は、位置11で発生した誤差を拡散する際の誤差拡散係数であり、次式[式B-7]を満たす。
C11_1 + C11_2 = 1.0 …[式B-7]
上記の第1の拡散処理後に、
E(x+1, y-1) =0, E(x, y-1) = 0, E(x-1, y-1) =0とする。これは、注目画素(x,y)の上段(y-1)行に発生した誤差をy行に移動(拡散)し終えたら、(y-1)行の累積誤差をゼロにすることを意味している。
(C.第2の拡散について)
次に、第2の拡散(誤差拡散2)処理を行う。この第2の拡散は、注目画素(x,y)の左隣の位置(x-1,y)の累積誤差を未量子化位置に拡散するものであり、各位置の累積誤差は以下の演算で計算される。
E(x, y) =E(x, y) +C12_1×E(x-1, y) …[式C-1]
E(x, y+1) =E(x, y+1) +C12_2×E(x-1, y) …[式C-2]
E(x-1, y+1) =E(x-1, y+1) +C12_3×E(x-1, y) …[式C-3]
E(x-2, y+1) =E(x-2, y+1) +C12_4×E(x-1, y) …[式C-4]
ただし、C12_1 ,C12_2,C12_3,C12_4は位置12の累積誤差を拡散する際の誤差拡散係数であり、次式[式C-5]を満たす。
C12_1 +C12_2 +C12_3 +C12_4 =1.0 …[式C-5]
上記の第2の拡散後に、E(x-1, y) = 0とする。これは、誤差を拡散し終えたら、当該量子化済み画素(x-1, y)の累積誤差をゼロとすることを意味している。
(D.第3の拡散について)
次に、第3の拡散(誤差拡散3)を行う。第3の拡散は、注目位置(x,y)の累積誤差を他の隣接未量子化画素へ拡散する処理であり、各位置の累積誤差は下記の演算によって計算される。
E(x+1, y) =E(x+1, y) +C22_1×E(x, y) …[式D-1]
E(x+1, y+1) =E(x+1, y+1) +C22_2×E(x, y) …[式D-2]
E(x, y+1) =E(x, y+1) +C22_3×E(x, y) …[式D-3]
E(x-1, y+1) =E(x-1, y+1) +C22_4×E(x, y) …[式D-4]
ただし、C22_1 ,C22_2 ,C22_3 ,C22_4は、位置22の誤差を拡散する際の誤差拡散係数であり、次式[式D-5]を満たす。
C22_1 +C22_2 +C22_3 +C22_4 =1.0 …[式D-5]
上記の第3の拡散演算後に、E(x, y) = 0とする。これは、誤差を拡散し終えたら、当該量子化済み画素(x-1, y)の累積誤差をゼロとすることを意味している。
〔累積広がり処理について〕
次に、累積広がりを算出する処理を説明する。
注目画素(x,y)のドットモデルが決定されることにより、その周囲の未量子化位置への累積広がりは、以下の式によって計算される。
S(x+1, y) =S(x+1, y) +DM(x,y,s,t:32) …[式E-1]
S(x-1, y+1) =S(x-1, y+1) +DM(x,y,s,t:13) …[式E-2]
S(x, y+1) =S(x, y+1) +DM(x,y,s,t:23) …[式E-3]
S(x+1, y+1) =S(x+1, y+1) +DM(x,y,s,t:33) …[式E-4]
S(x,y)= 0 …[式E-5]
〔ノズル駆動情報への変換について〕
決定したドットモデルからノズル駆動を可能とする情報への変換は、ドットモデル生成時のステップの逆に相当する変換ステップによって行われる。すなわち、ドットモデル生成時には、ノズル番号Npおよび走査タイミングSTqとドット配置可能位置(x,y)とが対応づけられ、各位置に形成可能なドットに該当するノズル駆動信号からドットモデルが決定される。このとき、同じ位置(x,y)に該当するノズル駆動信号(サイズ変調可能な場合を考慮)Sr0,Sr1,..Srmを同時打滴可能な組合せも1つのドットモデルとみなしてDM(x,y,s,t)を決定する。
これとは逆の関係を利用して、決定したドットモデルDM(x,y,s0,t0)をノズル番号Np, 走査タイミングSTq, ノズル駆動信号(サイズ変調) Sr(同時打滴を1モデルと見なしたときは、ノズル駆動信号は複数になり、Sr0,Sr1,..Srm)へと変換する。こうして、求めたノズル駆動信号の情報にしたがってノズル駆動が行われる。
なお、ドットモデルは3×3に限定されるものではなく、各位置における誤差の拡散に使われる誤差拡散係数と拡散範囲は本実施形態の例に限定されるものではない。
また、図21で説明した第1、第2、第3の拡散処理のうち同時に処理できるところをまとめることも可能である。
さらに、決定したドットモデルからノズル駆動を可能とする情報への変換は、ハーフトーニング完了後でも良いし(図25,図26参照)、ハーフトーニングの途中でも良い(図28,図29参照)。
〔注目画素における量子化判定の他の方法(量子化判定2)について〕
上述した「量子化判定1」の処理例では[判定式1-1]又は[判定式1-2]において閾値Tと比較してドットのON/OFFを決めたが、閾値Tを用いない態様も可能である。以下に述べる「量子化判定2」は、閾値を用いずに、発生誤差が最小となる条件で注目画素(x,y)のドットモデルを決定するものである。
すなわち、注目画素における画像信号をI(x,y)とするとき、t=0,..nのうち既量子化領域と注目画素に対する発生誤差が最小となるtをドットモデルに決定する。判定に際しては、以下の関数(発生誤差の絶対値を表す関数)が最小となるtを求める。
[式2-1]
F(t) = |[DM(x,y,t:11) +DM(x,y,t:21) +DM(x,y,t:31)
+DM(x,y,t:12)−{I(x,y)−E(x,y)−S(x,y)−DM(x,y,t:22)}]|
なお、同じ位置に同時打滴なドットの組合せも1つのドットモデルとして取り扱う場合は、下記の関数を用い、s=0,..m,t=0,..nのうち既量子化領域と注目画素に対する発生誤差が最小となるs,tをドットモデルに決定する。
[式2-2]
F(t) =|[DM(x,y,s,t:11) +DM(x,y,s,t:21) +DM(x,y,s,t:31)
+DM(x,y,s,t:12) −{I(x,y)−E(x,y)−S(x,y)−DM(x,y,s,t:22)}]|
〔処理フローの例1〕
次に、本実施形態による画像処理方法の処理フローの例を説明する。図25に全体の処理フローの例を示す。
図25に示すように、処理が開始されると、まず、記録媒体上のドット着弾位置に基づく座標(ドット座標)上でノズル番号、走査タイミング、ノズル駆動信号からドットモデルを決定する(ステップS110)。この工程では、図12で説明したとおり、記録媒体上の複数のドット計測領域についてドット計測を行い、各領域のドットモデルを求めるとともに、この実測に基づくドットモデルを用いて補間計算を行い、他の位置のドットモデルを求める。こうして、副走査方向位置の違いにも対応した2次元的なドットモデルの情報が取得される。この得られたドットモデルの情報は、メモリ等の記憶手段に格納される。なお、ドットモデルの情報は予め取得されていてもよいし、必要に応じて適宜のタイミングでドット計測を行い、ドットモデルの情報を更新してもよく、外部からドットモデルのデータを読み込むことで取得する態様も可能である。
次いで、図25のステップS120に進み、演算に用いる各変数の初期化処理を行う。例えば、図21〜図25で説明した累積誤差E(x,y)、累積広がりS(x,y)等の各変数について初期値を与える。
次に、ドット座標上の位置(x,y)にドットを形成するか否かを決定する処理順序(画素の処理順序)の設定を行う(図25のステップS130)。例えば図17で説明したように、画像形成領域の一番上の行から順に下の行へ、各行中を左から右へ順に処理していくようなラスタ順に設定される。
次いで、図25のステップS140で示したドット形成判定処理工程に進み、上記処理順序に従って画素のドット形成を判断していく。このドット形成判定処理工程のフローを図26に示す。
図26は、注目画素の処理フロー(ドット形成判定処理のサブルーチン)である。同図に示す処理フローがスタートすると、まず、注目画素で量子化判定を行う(ステップS141)。ここでの量子化判定処理は、既に説明した「量子化判定1」または「量子化判定2」の判定方法にしたがってドットモデルの決定を行う。
注目画素のドットモデル(ドットOFFの場合も含む)が決定したら、当該ドットモデルを基に発生誤差の初期値の計算が行われる(ステップS142)。その後、第1の拡散処理(ステップS143)、第2の拡散処理(ステップS144)、第3の拡散処理(ステップS145)を順に行い、ステップS142〜S145の工程からなる誤差拡散処理の後に、累積広がり処理を行う(ステップS146)。各ステップS142〜S146の処理の詳細については既に説明したとおりである。
ステップS146で周辺の未量子化位置の累積広がりを計算し終えたら、図26のサブルーチンを抜けて、図25のステップS150へ進む。
ステップS150では、規定の処理順序(ステップS130で設定されている順序)に従い、注目画素を次の位置へと変更する。
次いで、処理対象となる注目画素が存在するか否かの判定が行われ(ステップS160)、注目画素が存在していれば(YES判定時)、ステップS140に戻り、上述のステップS140〜S160が繰り返される。
全ての画素についてドット形成の判断が完了し、ドット配置が決定すると、ステップS160において注目画素が存在しないと判定される。この場合(ステップS160でNO判定時)はステップS170に進み、各位置で決定したドットモデルをノズル番号、走査タイミング、ノズル駆動信号の情報に変換する。
このとき、ドット配置に使われたドットから逆に、テーブル等を利用して使用ノズルとその副走査位置を求め、走査シーケンス上のヘッド駆動信号(つまり、アクチュエータの制御信号)に変換する。
こうして、求めたノズル番号、走査タイミング、ノズル駆動信号の情報に基づいてノズルからの吐出動作を制御することにより、高品質な画像を形成することができる。図25におけるステップS170の処理後、本処理フローを終了する。
本例の画像処理方法によれば、ドット広がりによる発生誤差を、発生位置からその近傍へ拡散するため、適切な位置と量の誤差が拡散されるので、高品質なドット配置が得られる。
〔処理フローの他の例(例2)について〕
図3でも説明したが、ドットサイズによって異なる着弾特性となる場合、各ドットサイズは異なる位置(x,y)に属するドットモデルとして扱われる。しかしながら、同一ノズルから打適されるドットサイズを別々の位置のドットモデルとして扱うとき、同時に打滴できない条件(例えば、走査上同一タイミングではドット小とドット大は打滴できない)が発生する。
この問題を解決するために図27に示すテーブルのように同時打滴できない関係にあるドットモデルの組合せを予め求めておき、打滴できない関係にある場合を排除することができる。
図27には、同時打滴できないドットモデルの組合せの例が示されている。このような情報を基に禁止関係を考慮してドット配置を決定するフローを図28および図29に示す。
図28は全体の処理フローであり、図29は注目画素におけるドット形成判断処理のサブルーチンのフローである。これらの図面において、図25及び図26に示したフローチャートと同一又は類似の工程には同一のステップ番号を付し、その説明は省略する。
図28のステップS130で設定された処理順序に従い、ステップS140で注目画素のドット形成の判断が行われる。すなわち、図29に示すように、ステップS141〜S146によって注目画素のドットモデルを決定し、誤差の拡散処理を行うとともに、周囲の未量子化位置の累積広がりを求める。
その後、ステップS147に進み、決定したドットモデルからノズル番号、走査タイミング、ノズル駆動信号に変換する。
続いて、当該位置で決定9したドットモデルから禁止組合せ表を参照し、使用できないドットモデルを抽出する(ステップS148)。ステップS148で抽出した使用不能なドットモデルをドットモデルの候補から除外する処理を行い(ステップS149)、図29のサブルーチンを抜けて、図28のフローチャートに戻り、ステップS150へと進む。
ステップS150では、規定の処理順序(ステップS130で設定されている順序)に従い、注目画素を次の位置へと変更する。
次いで、処理対象となる注目画素が存在するか否かの判定が行われ(ステップS160)、注目画素が存在していれば(YES判定時)、ステップS140に戻り、上述のステップS140〜S160が繰り返される。
全ての画素についてドット形成の判断が完了し、ドット配置が決定するとステップS160において注目画素が存在しないと判定される。この場合(ステップS160でNO判定時)は、本処理フローを終了する。
〔インクジェット記録装置への適用例〕
次に、上述した画像処理方法を用いて画像データをドット配置データに変換する画像処理機能を備えた画像形成装置の具体的な適用例としてのイクジェット記録装置について説明する。
図30は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示すインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すように、このインクジェット記録装置110は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェット記録ヘッド(以下、ヘッドという。)112K,112C,112M,112Yを有する印字部112と、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部114と、記録媒体たる記録紙116を供給する給紙部118と、記録紙116のカールを除去するデカール処理部120と、前記印字部112のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙116の平面性を保持しながら記録紙116を搬送するベルト搬送部122と、印字部112による印字結果を読み取る印字検出部124と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部126とを備えている。
インク貯蔵/装填部114は、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路を介してヘッド112K,112C,112M,112Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部114は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
図30では、給紙部118の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録媒体(メディア)を利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部118から送り出される記録紙116はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部120においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム130で記録紙116に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図30のように、裁断用のカッター(第1のカッター)128が設けられており、該カッター128によってロール紙は所望のサイズにカットされる。なお、カット紙を使用する場合には、カッター128は不要である。
デカール処理後、カットされた記録紙116は、ベルト搬送部122へと送られる。ベルト搬送部122は、ローラ131、132間に無端状のベルト133が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト133は、記録紙116の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図30に示したとおり、ローラ131、132間に掛け渡されたベルト133の内側において印字部112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ134が設けられており、この吸着チャンバ134をファン135で吸引して負圧にすることによって記録紙116がベルト133上に吸着保持される。なお、吸引吸着方式に代えて、静電吸着方式を採用してもよい。
ベルト133が巻かれているローラ131、132の少なくとも一方にモータ(図35中符号188)の動力が伝達されることにより、ベルト133は図30上の時計回り方向に駆動され、ベルト133上に保持された記録紙116は図30の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト133上にもインクが付着するので、ベルト133の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部136が設けられている。ベルト清掃部136の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組合せなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、ベルト搬送部122に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
ベルト搬送部122により形成される用紙搬送路上において印字部112の上流側には、加熱ファン140が設けられている。加熱ファン140は、印字前の記録紙116に加熱空気を吹き付け、記録紙116を加熱する。印字直前に記録紙116を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部112の各ヘッド112K,112C,112M,112Yは、当該インクジェット記録装置110が対象とする記録紙116の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図31参照)。
ヘッド112K,112C,112M,112Yは、記録紙116の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド112K,112C,112M,112Yが記録紙116の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
ベルト搬送部122により記録紙116を搬送しつつ各ヘッド112K,112C,112M,112Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙116上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド112K,112C,112M,112Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙116と印字部112を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙116の全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
図30に示した印字検出部124は、印字部112の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ又はエリアセンサ)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりや着弾位置誤差などの吐出特性をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部124には、受光面に複数の受光素子(光電変換素子)が2次元配列されてなるCCDエリアセンサを好適に用いることができる。エリアセンサは、少なくとも各ヘッド112K,112C,112M,112Yによるインク吐出幅(画像記録幅)の全域を撮像できる撮像範囲を有しているものとする。1つのエリアセンサで所要の撮像範囲を実現してもよいし、複数のエリアセンサを組み合わせて(繋ぎ合わせて)所要の撮像範囲を確保してもよい。或いはまた、エリアセンサを移動機構(不図示)によって支持し、エリアセンサを移動(走査)させることによって所要の撮像範囲を撮像する構成も可能である。
また、エリアセンサに代えてラインセンサを用いることも可能である。この場合、ラインセンサは、少なくとも各ヘッド112K,112C,112M,112Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列(光電変換素子列)を有する構成が好ましい。
各色のヘッド112K,112C,112M,112Yにより印字されたテストパターン又は実技画像が印字検出部124により読み取られ、各ヘッドの吐出判定が行われる。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。
印字検出部124の後段には後乾燥部142が設けられている。後乾燥部142は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部142の後段には、加熱・加圧部144が設けられている。加熱・加圧部144は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ145で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして生成されたプリント物は排紙部126から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置110では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部126A、126Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)148によってテスト印字の部分を切り離す。また、図28には示さないが、本画像の排出部126Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
〔ヘッドの構造〕
次に、ヘッドの構造について説明する。色別の各ヘッド112K,112C,112M,112Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号150によってヘッドを示すものとする。
図32(a) はヘッド150の構造例を示す平面透視図であり、図32(b) はその一部の拡大図である。また、図32(c) はヘッド150の他の構造例を示す平面透視図、図33は1つの液滴吐出素子(1つのノズル151に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図32(a) 中の31−31線に沿う断面図)である。
記録紙116上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド150におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド150は、図32(a),(b) に示したように、インク吐出口であるノズル151と、各ノズル151に対応する圧力室152等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)153を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録紙116の送り方向と略直交する方向に記録紙116の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図32(a) の構成に代えて、図32(c) に示すように、複数のノズル151が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール150’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙116の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル151に対応して設けられている圧力室152は、その平面形状が概略正方形となっており(図32(a),(b) 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル151への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)154が設けられている。なお、圧力室152の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図33に示したように、各圧力室152は供給口154を介して共通流路155と連通されている。共通流路155はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路155を介して各圧力室152に分配供給される。
圧力室152の一部の面(図33において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)156には個別電極157を備えたアクチュエータ158が接合されている。個別電極157と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ158が変形して圧力室152の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル151からインクが吐出される。なお、アクチュエータ158には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ158の変位が元に戻る際に、共通流路155から供給口154を通って新しいインクが圧力室152に再充填される。
入力画像から生成さるドット配置データに応じて各ノズル151に対応したアクチュエータ158の駆動を制御することにより、ノズル151からインク滴を吐出させることができる。図30で説明したように、記録媒体たる記録紙116を一定の速度で副走査方向に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル151のインク吐出タイミングを制御することによって、記録紙116上に所望の画像を記録することができる。
上述した構造を有するインク室ユニット153を図34に示す如く主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット153を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル151が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図34に示すようなマトリクス状に配置されたノズル151を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル151-11 、151-12 、151-13 、151-14 、151-15 、151-16 を1つのブロックとし(他にはノズル151-21 、…、151-26 を1つのブロック、ノズル151-31 、…、151-36 を1つのブロック、…として)、記録紙116の搬送速度に応じてノズル151-11 、151-12 、…、151-16 を順次駆動することで記録紙116の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。すなわち、本実施形態では、記録紙116の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ158の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
〔制御系の説明〕
図35は、インクジェット記録装置110のシステム構成を示すブロック図である。同図に示したように、インクジェット記録装置110は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、画像メモリ174、ROM175、モータドライバ176、ヒータドライバ178、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184等を備えている。
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信する画像入力手段として機能するインターフェース部(画像入力部)である。通信インターフェース170にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置110に取り込まれ、一旦画像メモリ174に記憶される。画像メモリ174は、通信インターフェース170を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システムコントローラ172を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ174は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置110の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ172は、通信インターフェース170、画像メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、画像メモリ174及びROM175の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189を制御する制御信号を生成する。
また、システムコントローラ172は、印字検出部124から読み込んだテストパターンの読取データから着弾位置誤差のデータやドット形状のデータ等を生成する演算処理を行うドット測定演算部172Aと、測定されたドット状態の情報からドットモデルのデータを作成するドットモデル作成部172Bとを含んで構成される。また、ドットモデル作成部172Bは、図12〜図16で説明した補間計算を行う補間演算手段として機能する。なお、ドット測定演算部172A及びドットモデル作成部172Bの処理機能はASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。
ROM175には、システムコントローラ172のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データ(ドットモデル作成用のテストパターンのデータを含む)などが格納されている。ROM175は、書換不能な記憶手段であってもよいが、各種のデータを必要に応じて更新する場合は、EEPROMのような書換可能な記憶手段を用いることが好ましい。また、このROM175の記憶領域を活用することで、ROM175をドットモデルの記憶部として兼用する構成も可能である。
画像メモリ174は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示に従って搬送系のモータ188を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示に従って後乾燥部142等のヒータ189を駆動するドライバである。
プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、画像処理部190と協働して画像メモリ174内の画像データ(多値の入力画像のデータ) から吐出制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、生成したインク吐出データをヘッドドライバ184に供給してヘッド150の吐出駆動を制御する駆動制御手段として機能する。
画像処理部190は、入力された画像データからインク色別のドット配置データを生成する信号処理手段であり、入力画像データに対して上述のドットモデルに基づくハーフトーニング処理を行って高品質のドット配置を決定する画像処理装置(画像処理手段)として機能する。
本例の画像処理部190は、濃度変換処理(UCR処理や色変換を含む)及び必要な場合には画素数変換処理、濃度補正処理、並びに、多値の濃度データから2値(又は多値)のドット配置データに変換するハーフトーニング処理(中間階調処理)等を行う信号処理手段である。
なお、図35において、画像処理部190は、システムコントローラ172やプリント制御部180とは別個のものとして図示しているが、例えば画像処理部190はシステムコントローラ172あるいはプリント制御部180に含まれて、その一部を構成するようにしてもよい。
また、プリント制御部180は、画像処理部190で生成されたドット配置データに基づいてインクの吐出データ(ヘッド150のノズルに対応するアクチュエータの制御信号)を生成するインク吐出データ生成部180Aと、駆動波形生成部180Bとを含んで構成される。これら各機能ブロック(180A〜B)は、ASICやソフトウエア又は適宜の組合せによって実現可能である。
インク吐出データ生成部180Aにて生成されたインク吐出データはヘッドドライバ184に与えられ、ヘッド150のインク吐出動作が制御される。
駆動波形生成部180Bは、ヘッド150の各ノズル151に対応したアクチュエータ158(図33参照)を駆動するための駆動信号波形を生成する手段であり、該駆動波形生成部180Bにて生成された信号(駆動波形)は、ヘッドドライバ184に供給される。なお、駆動波形生成部180Bから出力される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。なお、図35において画像バッファメモリ182はプリント制御部180に付随する態様で示されているが、画像メモリ174と兼用することも可能である。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース170を介して外部から入力され、画像メモリ174に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの多値の画像データが画像メモリ174に記憶される。
入力画像のデータ形態は、特に限定されないが、例えば、8bitのRGBデータとする。この入力画像に対して、ルックアップテーブルによる濃度変換処理を行い、プリンタの持つインク色に対応した濃度データ(画像信号I(i,j))に変換する。なお、(i,j)は画素の位置を表し、各画素について濃度データが割り当てられる。
ここでは、入力画像の解像度とプリンタの解像度(ノズル解像度)は一致しているものとする。なお、両者が一致しない場合は、プリンタ解像度に合わせて、入力画像について画素数変換の処理が行われる。
濃度変換処理は一般的な処理であり、下色除去(UCR:Undercolor Removal)処理、或いはライトインク(同色系の淡インク)を使用するシステムの場合におけるライトインクへの分配処理などが含まれる。
本例の場合、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(黒)の4色インクの濃度データに変換される。或いはまた、上記4色に加えてLC(ライトシアン),LM(ライトマゼンタ)などの他のインクを含むシステムの場合は、そのインク色を含む濃度データに変換される。
インクジェット記録装置110では、インク(色材) による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ174に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ172を介してプリント制御部180に送られ、画像処理部190にてインク色ごとのドット配置データに変換される。
すなわち、本例の場合、K,C,M,Yの4色のドット配置データに変換される。こうして、生成されたドット配置データは、画像バッファメモリ182に蓄えられる。この色別ドット配置データは、ヘッド150のノズルからインクを吐出するためのKCMY打滴データに変換され、印字されるインク吐出データが確定する。
ヘッドドライバ184は、プリント制御部180から与えられるインク吐出データ及び駆動波形の信号に基づき、印字内容に応じてヘッド150の各ノズル151に対応するアクチュエータ158を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ184にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
こうして、ヘッドドライバ184から出力された駆動信号がヘッド150に加えられることによって、該当するノズル151からインクが吐出される。記録紙116の搬送速度に同期してヘッド150からのインク吐出を制御することにより、記録紙116上に画像が形成される。
上記のように、プリント制御部180における所要の信号処理を経て生成されたインク吐出データ及び駆動信号波形に基づき、ヘッドドライバ184を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、記録紙116(記録媒体)上に所望のドットサイズやドット配置が実現される。
印字検出部124は、図30で説明したように、イメージセンサを含むブロックであり、記録紙116に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、着弾位置誤差、ドット形状、光学濃度など)を検出し、その検出結果をプリント制御部180及びシステムコントローラ172に提供する。
プリント制御部180は、必要に応じて印字検出部124から得られる情報に基づいてヘッド150に対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
本例の場合、印字検出部124とドット測定演算部172A及びドッモデル作成部172Bの組合せが「ドットモデル情報取得手段」に相当し、印字検出部124とドット測定演算部172Aの組合せが「ドット測定手段」に相当する。また、プリント制御部180或いはプリント制御部180とシステムコントローラ172の組合せが「記録制御手段」に相当している。
図36に、画像処理部190の概略構成例をブロック図で示す。図36に示すように、画像処理部190は、主に量子化判定処理部202、ドットモデル決定処理部204、誤差拡散処理部206、累積広がり処理部208を有して構成されている。図中一点鎖線で囲んだ範囲のこれら各機能ブロック(202〜208)は、ASICやソフトウエア又は適宜の組合せによって実現可能である。
また、画像処理部190は、画像データ入力部210、画像データ記憶部212、画素の処理順序格納部214、閾値可能部216、ドットモデル記憶部218、禁止条件記憶部220、累積誤差記憶部222、累積広がり記憶部224、処理結果格納部226、及び出力部228を含んで構成される。なお、ここで挙げた記憶手段(212〜226)は、図35で説明した画像メモリ174やROM175、画像バッファメモリ182等の記憶手段の記憶領域を活用することによって実現することが可能である。
画像データ入力部210は、入力画像のデータを取り込むインターフェース部である。画像データ入力部210から入力された画像データは画像データ記憶部212に記憶される。画像データ記憶部212は、量子化判定処理部202の判定処理に必要な画像信号I(x,y)を記憶する記憶手段である。
画素の処理順序格納部214は、ハーフトーニング処理に際して、ドット座標上の各ドット形成可能位置にドットを形成するか否かを決定していく際の画素の処理順序(ドット形成位置順)を示す配列を格納する記憶手段である。なお、ラスタ順のように、その順番が明確に決まっている場合には、画素の処理順序可能部214を省略してもよい。
閾値格納部216は、ドット形成の判断に用いる閾値、例えば、[判定式1-1]におけるT(x,y)や[判定式1-2]におけるT(x,y,s)を可能する記憶手段である。なお、「量子化判定2」で説明したように、閾値を用いずに画素のドットモデルを決定する場合には、閾値格納部216を省略することができ、量子化判定処理部202とドットモデル決定処理部204は統合された1つの処理ブロックとして構成される。
ドットモデル記憶部218は、図35で説明したドットモデル作成部172Bで作成されたドットモデルの情報を格納する記憶手段である。図36の禁止条件記憶部220は、同時打滴不能なドットの組合せのデータを格納する記憶手段であり、例えば、図5や図27で説明したようなテーブルが格納される。
累積誤差記憶部222は、誤差拡散処理部206の演算に用いる累積誤差E(x,y)の値を記憶する記憶手段である。累積広がり記憶部224は、累積広がり処理部208の演算に用いる累積広がりS(x,y)の値を記憶する記憶手段である。
量子化判定処理部202は、入力画像データに対して、所定の処理順序で各ドット形成可能位置ごとにドットを形成するか否かを判定する処理部であり、例えば、既述した[判定式1-1]或いは[判定式1-2]を用いて量子化の判定を行う。
ドットモデル決定処理部204は、量子化判定処理部202の判定結果に基づいて、当該位置に形成すべきドットのドットモデルを決定する処理を行う。例えば、既述のように、乱数を利用して決定する態様や、[式1-3]の関数F(t)を利用して決定する態様がある。
誤差拡散処理部206は、注目画素の量子化によって発生する画素を周辺の未量子化画素に拡散する処理を行う処理手段である。図36の例では、図21〜図24で説明した誤差拡散処理アルゴリズムに対応して、発生誤差初期値演算部230、第1の拡散処理部231、第2の拡散処理部232、第3の拡散処理部233を含んで構成される。各処理ブロックの具体的な処理例は図21〜図24で説明したとおりである。
累積広がり処理部208は、量子化判定に用いられる未量子化位置の累積広がりS(x,y)の値を計算する処理部であり、その演算結果は累積広がり記憶部224に格納される。
処理結果格納部226は、ドットモデル決定処理部204の処理を経て各ドット形成可能位置について決定された量子化結果(ドット配置)を格納する記憶手段である。作成されたドット配置データは、処理結果格納部226から出力部228に出力される。
次に、上記の如く構成されたインクジェット記録装置110においてドットモデルの情報を取得する方法について説明する。
図37は、ドットモデルの情報を作成する手順を示したフローチャートである。図示のように、まず、記録媒体上にドット座標を設定し(ステップS210)、図12で説明したように記録媒体上の副走査方向について複数の位置にドットモデル計測領域を設定する(図37のステップS212)。例えば、ドットモデル計測領域は、副走査方向に一定の間隔で並ぶ短冊状の領域として設定される。
次いで、各ドットモデル計測領域に所定のテストパターンを印字する(図37のステップS214)。テストパターンの形態は特に限定されないが、各ノズルによって記録されるドットを区別して、ドットの形状等を計測し得るパターンであることが望ましい。
次いで、各ドットモデル計測領域に記録されたドットを計測して主走査方向の各位置に対応するドットモデルの情報を取得する(ステップS216)。本例の場合、図30で説明した印字検出部124を用いてドット計測が行われる。1つのノズルから所定数(複数)のドットを形成して、それらを計測し、各ドットの計測結果の平均値をとるなどの統計処理を行い、その結果を用いてドットモデルを作成してもよい。
次いで、ドットモデル計測領域以外の未計測領域の位置について補間計算によってドットモデルの情報を得る(ステップS218)。図12〜図16で説明したとおり、実測した位置のドットモデルの情報を利用することで、未計測領域のドットモデルが求められる。
こうして、ドット座標上の各位置のドットモデル情報が取得される。それぞれのドットモデルは、これを打滴するノズル番号、走査タイミング等の情報と関連付けされ、その対応関係を示すデータが記憶される(図37のステップS220)。
さらに、図5及び図27で説明したように、同時打滴できないドットの組合せを特定して、その情報(禁止条件)を記憶する(図37のステップS222)。本例の場合、本例の場合、ドットモデルとその対応関係を示すデータは図36で説明したドットモデル記憶部218に記憶される。また、禁止条件のデータは図36の禁止条件記憶部220に記憶される。
上述した本実施形態に係るインクジェット記録装置110によれば、実際にドットが形成される記録媒体上の座標位置でドット配置を決定できるため、高品質のドット配置を実現できる。また、異なるドットザイズのドットをドット座標上で別々に扱い、同時打滴できない場合の禁止表を利用することで、ドットサイズによって着弾特性が異なる場合においてもドット配置の品質向上を達成できる。
上記の実施形態では、ページワイドのラインヘッドについて説明したが、本発明の適用はラインヘッド方式のプリンタに限定されず、シャトルスキャン方式によるマルチパス走査や短尺ヘッドによるオーバーラップ走査にも適用可能である。このときには、各走査ごとのドット打滴を一元的に扱い、さらに同時打滴できないトットの組合せに適切に反映させる必要がある。
また、ドット座標において同じノズルが多数回出現する場合の規則性や副走査方向の変動の規則性等を利用して、ドットモデルやドット座標、組合せ禁止表のメモリ容量を削減することもできる。
さらに、ドットモデルをより細かい間隔で記憶しておき、副走査方向の変動に対応してドット座標の細かさのデータを生成することで、メモリ容量を削減できる。
上記実施の形態では画像形成装置の一例としてインクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。インクジェット方式以外では、サーマル素子を記録素子とする記録ヘッドを備えた熱転写記録装置、LED素子を記録素子とする記録ヘッドを備えたLED電子写真プリンタ、LEDライン露光ヘッドを有する銀塩写真方式プリンタなど各種方式の画像形成装置についても本発明を適用することが可能である。
10,30…ヘッド、20…記録媒体、50…ドット、60…ラインヘッド、62…記録媒体、110…インクジェット記録装置、112…印字部、112K,112C,112M,112Y…ヘッド、114…インク貯蔵/装填部、116…記録紙、122…ベルト搬送部、124…印字検出部、150…ヘッド、151…ノズル、152…圧力室、153…インク室ユニット、158…アクチュエータ、172…システムコントローラ、172A…ドット測定演算部、172B…ドットモデル作成部、180…プリント制御部、190…画像処理部、202…量子化判定処理部、204…ドットモデル決定処理部、206…誤差拡散処理部、208…累積広がり処理部、218…ドットモデル記憶部、220…禁止条件記憶部