JP4484985B2 - ピペットシステム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピペット装置とピペット装置へ脱着可能に固定する少なくとも一つのピペットチップとを備えたピペットシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ピペットシステムは、主として、実験室で液体(流体)の量を測定するために用いるものである。液体はピペットチップから吸引され、また、ピペットチップから排出される。そのために大抵の場合、ピストンがシリンダー内に変位可能に設けられている。エアクッションシステムの場合、ピストンとシリンダーがピペット装置内へ一体的に組み込まれ、ピペットチップと連通し、エアクッションを介して液体の測定値が定まる。また、直接変位システムの場合は、ピストンとシリンダーがピペットチップへ一体的に組み込まれ、チップへ吸引されている液体へ直接作用する。このようなピペットシステムはシリンジとも呼ばれている。また、ピストンを備えないピペットシステムの場合、ピペットチップの端部を、液体吸引のために膨れ、吸引液体排出のために押圧されるバルーン状に構成しているものもある。
【0003】
ピペットチップはピペット装置へ脱着可能に接続され、使用後、新しいピペットチップと交換でき、これにより、連続的な測定の場合も汚染が回避できる。一度だけ使用するタイプのピペットチップも、プラスチック製で安価に入手可能である。
【0004】
また、ピペット装置には、ピペットチップを固定するための固定手段が設けられている。大抵の場合この固定手段は円錐状の突起であって、この突起へピペットチップを円錐状の受入部により固定する。この操作は、ホルダー内で保持されているピペットチップに前記固定手段を差し込むことにより、ピペットチップを触らずに行える。
【0005】
操作者の汚染を防止するためには、固定手段からピペットチップを触れずに取り外せるようにすることが望ましい。このため大抵のピペット装置には、排出スリーブを持ってピペットチップ上端縁部位に配置され、排出ノブと連動作用するチップ除去手段を備えている。ところが、ピペットチップを、格別強力に差し込む、もしくは、「打ち込む」ようにした構成の場合、ピペットチップの除去のためには、強い力が必要であり、従来例えばワン・チャンネルシステムにおいてはそのような強い力のものは力を弱めるか、利用できないものである。一方、平行な複数のピペットチップを備えこれを除去する必要のあるマルチチャンネル式ピペットシステムの場合は、相乗されるチップ排出力により、特に強い力を生み出している。
【0006】
また、欧州特許公報EP0566039B1記載のピペットに設けられたチップ除去装置は、排出力を減少させて使用方法を単純化するために、レバー機構を備えている。このレバー機構はピペットハウジングから側方に突出していて、手動で押圧できる。また、ピペットチップのための作動アームに回転可能に垂直平面方向に歯付きホイールを形成している。更に、この歯付きホイールの内側面は、細長状の前記ピペットハウジング側のラックに係合する。また、前記ハウジング側のピペットチップ作動アーム外側部には、中空のプッシュロッドを設けており、プッシュロッド内側のねじ部が、前記ギヤホイールの外側部に係合している。プッシュロッドを押し下げると、前記歯付きホイールが下降し、これと同時に前記作動アームと、排出スリーブも下降し、ピペットチップが固定用円錐体から押し戻される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この場合、プッシュロッドは作動アームの移動距離の丁度二倍の長さ移動し、プッシュロッドに掛る力は、ピペットチップを押し戻すために使われる力の半分になる。然しながらこのシステムは構造上高価であり、また、単一の伝達比1:2しか得られず、利用範囲が限定されてしまうという問題が有る。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以上の現状に鑑み本発明の目的は、ピペットチップ除去手段を備えたピペットシステムであって、前述した伝達比以外の伝達比も可能であり、設計や構造が単純なものを提供する点にある。
【0009】
前記した本発明の目的は特許請求の範囲の請求項1に記載した態様を備えたピペットシステムにより達成される。また、このピペットシステムの利点を備えた具体的な形態は従属の各請求項に記載している。
【0010】
本発明ピペットシステムは、
− ピペット装置と、前記ピペット装置に脱着可能に固定し得る少なくともひとつのピペットチップ、
− ピペットチップが固定される、前記ピペット装置に設ける少なくともひとつの固定要素、
− 前記ピペット装置に設ける排出手段であって、軸方向に移動して前記固定要素からピペットチップを解放するための軸方向移動可能な排出要素と、前記排出要素の軸方向移動を駆動するための駆動手段とを備えたもの、および
− プル手段ギヤ(プル手段式伝動装置)、プッシュ手段式伝動装置、もしくは、リンク式伝動装置であって、前記駆動手段の基本的に軸方向の駆動移動を、前記排出要素の軸方向移動へ伝達し、且つ、少なくとも前記固定要素からのピペットチップの解放時に前記排出要素を、前記した基本的に軸方向の駆動移動が為される距離より短めの距離において軸方向移動可能ならしめ、更に、前記した基本的に軸方向の駆動移動のための力以上の力がピペットチップに掛けられ得るようにさせるものを備えている。
【0011】
本発明ピペットシステムは、ピペットチップ除去手段を備えた既知のピペットから出発したものであるが、前記したプル手段式伝動装置、プッシュ手段式伝動装置、リンク式伝動装置により、公知の伝達比のみならず、それ以外の伝達比も可能であることから、設計の自由度が増大し応用の可能性も拡大する。また、本発明ピペットシステムによれば、ピペットチップ排出時の可変の伝達比が達成可能である。また更に、本発明ピペットシステムによれば構造の多様性も得ることができる。
【0012】
プル手段式伝動装置の実施例の場合、駆動手段の端部と排出要素の端部を互いに係合させる。また、排出要素端部に回転可能に取り付ける偏向ローラーと、一端を前記固定要素に対し固定し他端を駆動手段の端部へ固定するケーブルとを設ける。この場合、駆動ロッドと、排出要素を互いに平行にすることが好ましい。基本的に軸方向の所定距離の駆動移動に対し、排出要素はその半分の距離(限定はしない)だけ移動する。但し、排出要素へは、前記駆動移動のために掛る操作力のほぼ二倍の力が、ピペットチップを解放するために掛る。尚、排出要素に取り付ける偏向ローラーを複数にすれば上記以外の伝達比も達成できる。このプル手段式伝動装置に基づく問題解決方法の場合設計が極めて単純にできる。
【0013】
また、プッシュ手段式伝動装置による実施例の場合は、第一ピストンを駆動手段に連結し、第一シリンダー内で変位可能にするとともに、第二ピストンを排出要素に連結し、第二シリンダー内で変位可能にする。そして、これら二つのシリンダーを互いに連通させる。この連通シリンダーシステムを周囲に対しシールするとともに、作動流体を充填する。また、第一ピストンの横断面は第二ピストンより小さくする。
【0014】
この作動流体式伝動システムにより、第一ピストンの所定距離の変位と、第二ピストンの短めの距離の変位が為され、これらの変位距離の比は、両ピストンの横断面の比に逆比例する。但しこの場合、第二ピストンが排出要素、つまりは、ピペットチップへ掛ける力は、駆動ロッドが第一ピストンに掛ける力より大きく、これらの力の比は、両ピストンの横断面の比に比例する。
【0015】
また別のプッシュ手段式伝動装置の実施例においては、第一蛇腹体を駆動手段に接続し、第二蛇腹体を排出要素へつなぎ、これら蛇腹体を互いに連結して連通させる。この連通蛇腹体システムに作動流体を充填し、小さめの蛇腹体の横断面を他方の蛇腹体横断面より小さくする。
【0016】
このシステムの場合、各蛇腹体の直径を異ならせることにより、異なる直径の複数のピストンの場合と同様の効果が得られる。但しこの場合は、ピストンやピストンロッドの場合に必要なシールは不要である。
前記したプッシュ手段式伝動装置はいづれも、設計に際し、伝達比の選択における自由度が大きいし、また、極めてシンプルな設計が可能である。
【0017】
更に、リンク式伝動装置による実施例の場合は、第一リンクロッドを駆動手段に接続し、第二リンクロッドを排出要素に連結する。また、これら二つのリンクロッドを他端部で互いに連結するとともに、連結領域をガイド部に沿って案内する。ガイド部は固定要素に対し一定位置で静止状に維持されるものであって、第一ガイド部を備えており、前記第一ガイド部は、前記駆動移動と排出要素の共通の軸線に対する間隔距離が、駆動手段から排出要素へ向かう方向において増加するとともに、連結領域がピペットチップ放出に伴い第一ガイド部に沿って移動可能であるように設定されている。
【0018】
ピペットチップ排出のため駆動ロッドが軸方向に移動されると、二本のリンクロッドの連結領域が第一ガイド部の領域に到り、前記駆動移動と排出要素の共通軸線から側方に分岐する。これにより、前記駆動移動の距離が排出要素の移動距離より長くなるとともに、排出要素において、駆動ロッドに掛る力より大きな力が得られる。この実施例の場合も前述の各実施例同様、力の伝達比率を自由に設定でき、更にその伝達比率も可変にすることができる。また、比較的単純な設計で行なうことができる。
【0019】
上記したいづれの実施例の場合も、排出要素は排出ロッドを用いて良く、これを、排出手段における少なくとも一つの別の要素へ接続する。また、前記固定要素は、固定用取付具、固定用受容体などで良い。
【0020】
本発明は、あらゆるタイプのピペットシステム、特に、シングルストローク・ディスペンサーシステムを備えたピストンストローク・直接変位システムや、携帯式もしくは据え付け式システム、手動または電動機式駆動システム、ワンハンド・マルチチャンネルシステム等に適用できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下図面に示す本発明の実施の態様に従って本発明をより詳細に説明するが、これら実施の態様に限定するものではない。
尚、以下の各種実施態様の説明において、構造上対応している各要素については同一の参照符号を用いており、同一の参照符号を付した要素については説明内容は全実施態様に共通するものとする。
【0022】
図1に示した本発明手動式ピペットシステムは、手動式ピペット装置(1)に、ハウジング(2)と、ハウジング脚部(3)とを備え、前記ハウジング脚部(3)下端には、嵌め込み固定用円錐体(4)であるピペットチップ固定手段を設ける。前記嵌め込み固定用円錐体(4)にピペットチップ(5)を嵌める。これにより、ピペットチップ(5)は円錐体(4)に固定されるが、押圧により円錐体(4)から離脱させることができる。
【0023】
ハウジング(2)の上方部位から作動ノブ(6)が突出している。作動ノブ(6)をハウジング(2)内へ2つの接当体の間で軸方向に押し込むことにより、ピストンをシリンダー内で変位させる。シリンダーはチャンネルを介して前記嵌め込み固定用円錐体(4)下端の開口と接続されている。ピストンがチャンネル内を変位することにより、空気柱が動かされる。押し込まれた後、ピストン(6)は、バネの弾発力により元の位置へ復帰し、空気柱は液体をピペットチップ(5)へ吸い込ませる。作動ノブ(6)を再度押し込むことにより、ピペットチップ(5)からの液体排出が行われる。
【0024】
上記の操作に引き続きピペットチップ(5)を、嵌込み固定用円錐体(4)から外すために、前記ピペット装置(1)にチップ除去手段(7)を設けている。前記チップ除去手段(7)は、ハウジング脚部(3)に変位可能に嵌めた排出用スリーブ(8)を持ち、前記スリーブ(8)の前記ハウジング(2)内の上端部には側方に延びる突出部(9)を形成している。チップ排出スリーブ(8)の作動用として、ハウジング(2)の縦方向一側に、ハウジング脚部(3)と平行に延びる駆動ロッド(10)が配置されている。駆動ロッド(10)は、ハウジング(2)から上方へ突出したチップ排出ノブ(11)によって作動する。駆動ロッド(10)下端は伝動装置(12)を介して、同じくハウジング脚部(3)と平行なチップ排出ロッド(13)上端に接続されている。また、前記排出ロッド(13)の下端は、前記排出スリーブ(8)の側方突出部(9)に接続されている。
【0025】
前記伝動装置(12)は、プル手段式、プッシュ手段式、リンク式のいづれかであって、操作力伝達装置を備えている。その結果、排出装置(7)の作動時、排出ヘッド(11)の変位距離は排出スリーブ(8)の変位距離より長くなるが、排出スリーブ(8)によりピペットチップ(5)上端に掛る力は、排出ノブ(11)に掛る力より大きくなる。従って、円錐体(4)に保持されているピペットチップ(5)をより簡単にピペット装置(1)から外すことができる。
【0026】
図2及び図3はプル手段式伝動装置(12’)(滑車式)による実施態様を示している。この実施態様において、駆動ロッド(10)下端部には、側方に開口(16)を持つ軸方向のガイド溝(15)を備えたガイドブロック(14)を形成している。また、駆動ロッド(10)には、ガイドブロック(14)との境界に、軸方向のガイド穴(17)を有している。
【0027】
更に、排出ロッド(13)を、横方向のハウジング壁(18)に挿通して案内している。排出ロッド(13)は、ハウジング壁(18)下方にリング(19)を持ち、このリング(19)により排出ロッド(13)の上方への引き抜きが防止される。また、ハウジング壁(18)上方には圧縮バネ(20)が排出ロッド(13)へ案内されており、圧縮バネ(20)の一端はハウジング壁(18)に支持され、他端は、排出ロッド(13)に形成する別のリング(21)に支持される。
【0028】
また、排出ロッド(13)は上端部に軸受ブロック(22)を支持している。軸受ブロック(22)は排出ロッド(13)へ押し嵌められ、リング(23)(24)により排出ロッド(13)へ固定されている。更に、排出ロッド(13)は上端が前記ガイド穴(17)へ突入し、また、軸受けブロック(22)は前記ガイドブロック(14)のガイド溝(15)に案内されている。排出ロッド(13)における軸受ブロック(22)上方には、圧縮バネ(25)が案内されていて、一端を前記リング(24)に、他端をガイド溝(15)とガイド穴(17)との間の段部(26)に支持されている。
【0029】
軸受ブロック(22)の軸受ジャーナル(27)は前記開口(16)から突出していて、ここへ偏向ローラー(28)を取り付けている。偏向ローラー(28)の周部には溝(29)が形成され、ケーブル(30)を嵌めて巻回している。ケーブル(30)は、スチールケーブルか、ワイヤーケーブルで良い。ケーブル(30)は偏向ローラー(28)外周部のほぼ半周に渡って架けられており、一端をハウジング(2)における軸受ブロック(22)より下方位置(31)に固定、つまりは、ピペットチップ(5)固定用円錐体(4)に対して固定し、また、ケーブル(30)他端はガイドブロック(14)における偏向ローラー(28)下方の部位(32)に固定している。
【0030】
ケーブル(30)のハウジング(2)への固定は、例えば、軸受ジャーナルに係止するループにより行い、また、ガイドブロック(14)への固定は、ケーブルの動作に抵抗する球体や、肉厚部を形成してこれを、ガイドブロックの一側からケーブル(30)用通路を持った受入部へ押し入れることにより行う。
【0031】
軸受ブロック(22)には、軸受ジャーナル(27)と同心のリング部(33)を設け、前記リング部(33)が内周部の胴部(34)に偏向ローラー(28)を保持するとともに、ケーブル(30)の溝(29)からの滑落を阻止する。尚、リング部(33)には、ケーブル(30)端部を外部へ案内する通路穴を形成している。
【0032】
排出ノブ(11)の非作動時には、伝動装置(12’)は図2、3の状態であり、この状態で排出ノブ(11)を作動すると、駆動ロッド(10)とガイドブロック(14)とがガイドブロック(14)に係止されているケーブル(30)を下方向に引く。同時にケーブル(30)は偏向ローラー(28)に跨がった状態で下へ引っ張られ、それと同時に、偏向ローラー(28)、即ちは、軸受ブロック(22)と排出ロッド(13)が引き下げられる。このプル手段式伝動装置(12’)の効果は、この伝動装置(12’)により、排出ロッド(13)が駆動ロッド(10)の変位距離の半分の距離を移動させられることである。一方、排出ロッド(13)によりピペットチップへ作用する排出力は、排出ノブ(11)に掛る操作力の二倍となる。従って、排出ロッド(13)の下端は、直接にもしくは排出スリーブ(8)を介してピペットチップ(5)に、増大した力を掛けられることになる。
【0033】
排出ノブ(11)から操作力を抜くと、バネ(20)がプル手段式伝動装置(12’)を元の引っ込み位置へ押し戻し、バネ(25)が、排出ロッド(13)に対して駆動ロッド(10)を元位置へ押し戻し、これにより、駆動ロッド(10)と排出ロッド(13)の変位距離の差が補償され、ケーブル(30)は引張力が作用したままに保持される。
【0034】
前記の操作力は、四分の一にすることも可能である。即ち、排出ロッドに、並びに、ハウジングへ取り付け固定した偏向ローラーに、2個の撓みローラーを取り付けること、そして、ケーブルガイドを駆動ロッドから、排出ロッドの第一の偏向ローラーを介して、ハウジングに固定した偏向ローラーまで延ばし更に排出ロッドの第二の偏向ローラーまで延ばすことにより、必要な操作力の変更可能である。また、ローラーの配置とケーブルガイドにより、滑車装置の原理に基づき、操作力、排出力の更なる変更も可能である。
【0035】
図4のプッシュ手段ピストン式伝動装置(12”)も、前記実施例同様に図1のピペットシステムに適用可能である。この場合、駆動ロッド(10)を第一ピストン(33)につなぐ。第一ピストン(33)はシリンダー(34)内に軸方向に変位可能に配置している。また、駆動ロッド(10)は、ピストン(33)の駆動ロッドとしても作用するもので、シリンダー(34)の上部開口から気密状に案内されている。そのため、シリンダー(34)の内側肩部にOリング(35)を支持し、Oリング(35)をスクリューリング(36)により、グランドシールと同様にシリンダー(34)と排出ロッド(10)とに押圧している。
【0036】
ピストン(33)の最大直径(D1 )は明らかに、シリンダー(34)の内径より短い。
また、排出ロッド(13)上端には、シリンダー(34)の下端に案内される第二ピストン(37)を配置する。シリンダー(34)下端面には別のOリング(38)を取り付け、このOリング(38)をユニオンナット(39)によりシール状に、ピストン(37)外周面に押圧する。尚、ピストン(37)の外径(D2 )は、シリンダー(34)内でピストン(37)が変位する部位の内径にほぼ等しい。
【0037】
更に、排出ロッド(13)に案内したバネ(20)の一端を横方向に延びるハウジング壁(18)に支持し、他端をピストン(37)下部側の肩部(40)に支持する。
尚、ピストン(33)(37)によって限定されるシリンダー(34)の内部空間には充分に油圧油などの作動流体(41)を充填する。
【0038】
図4において伝動装置(12”)は非作動状態にあり、ピペットチップを除去するためには、排出ボタン(11)を押し、シリンダー(34)内のピストン(33)を押し下げる。これにより、作動流体が押され、ピストン(37)がバネ(20)の作用に抗して下方に移動されて、排出ロッド(13)が排出スリーブ(8)とともに移動し、最終的に、チップ固定用円錐体(4)からピペットチップ(5)を押し放す。この場合、ピストン(37)の直径(D2 )がピストン(33)の直径(D1 )より短いので、駆動ロッド(10)の移動距離は、排出ロッド(13)の移動距離より短く、また、排出ロッド(13)が排出スリーブ(8)に掛ける排出力(F2 )は排出ノブ(11)に掛る操作力(F1 )より大きくなる。この作動流体式力伝達システムにおける力伝達比(r)(=F2 /F1 )には下記の公式が適用できる。
r = D2 2 /D1 2
この実施例において、力伝達比(r)の選択は自由に行える。
【0039】
更に、図1のピペットシステムには、図4の実施例の代わりに、図5(a)及び(b)に示すプッシュ手段蛇腹体式伝動装置(12IV)を設けても良い。この実施例では、第一蛇腹体(42)の端面側を駆動ロッド(10)につなぎ駆動ロッド(10)により共に押圧可能とする。更に、第二蛇腹体(43)の端面側を排出ロッド(13)につなぎ、第二蛇腹体の拡張時、排出ロッド(13)を軸方向に変位可能とする。互いに対向する端面部分において前記二つの蛇腹体(42)(43)を短い管部分(44)を挟んで互いに接続する。これにより、各蛇腹体の内部空間が連通する。蛇腹体(42)(43)の間の領域には、半径方向に拡がる溝(45)を形成し、ここへ、横方向のハウジング壁(18)を係合させる。ハウジング壁(18)側方には前記管部(44)を挿入するための開放口(46)を形成する。
【0040】
蛇腹体(42)(43)と管部(44)には作動流体(41)もしくは別の適当な流体を充填する。蛇腹体(42)(43)は円形の横断面を有する。蛇腹体(42)の直径(D1 )は蛇腹体(43)の直径(D2 )のほぼ半分の長さで良い。
【0041】
また、蛇腹体(42)(43)は弾性材料で形成し、圧縮されない状態では図5(a)の原形を保つようすることが望ましいが、別途のバネ手段を用いてこの原形と成るようにすることもできる。
原形の状態から、蛇腹体(42)は駆動ロッド(10)の変位により図中矢印方向に圧縮され、作動流体(41)が蛇腹体(43)へ流入してこの蛇腹体を膨張させる。最終的に、図5(b)の状態になり、蛇腹体(42)は最大限圧縮され、蛇腹体(43)も最大に膨らむ。この場合、蛇腹体(42)の圧縮軌道(Y)は蛇腹体(43)の膨張軌道(Z)よりかなり長いが、蛇腹体(43)は、駆動ロッド(10)を介して蛇腹体(42)に導入される操作力(F1 )より相当強い排出力(F2 )で排出ロッド(13)を押圧する。この作動流体式力伝達システムの場合も、力伝達比(r)(=F2 /F1 )は下記の公式により得られる。r = D2 2 /D1 2
【0042】
更にまた、図1のピペットシステムには図6のリンク式伝動装置(12IV)を備えても良い。この場合、駆動ロッド(10)と排出ロッド(13)は、ハウジングにおける軸方向ガイド部(47)(48)へ同軸状に案内する。駆動ロッド(10)の下端(49)に二本の第一リンクロッド(50)(50’)を接続する。また排出ロッド(13)の上端(51)には、二本の第二リンクロッド(52)(52’)を接続する。尚、第一リンクロッド(50)(50’)と、第二リンクロッド(52)(52’)は、他端部(53)(53’)で互いに接続する。そして前記接続部(53)(53’)にローラー(54)(54’)を回転可能に取り付ける。
【0043】
また、軸方向ガイド部(47)(48)の間には、駆動ロッド(10)及び排出ロッド(13)の軸線の両側における前記ローラー(54)(54’)の移動領域において、ガイド部(55)(55’)を或る程度の傾斜を持たせて形成する。この傾斜は、前記ロッド(10、13)の軸線に近い側から第一ガイド部(56)(56’)に沿って延び、第二ガイド部(57)(57’)で前記軸線と平行になる。
【0044】
図中矢印方向に駆動ロッド(10)を変位させて排出手段(12IV)を作動させる場合、まず、ローラー(54)(54’)はガイド部(47)に位置していて、これらローラー(54)(54’)はガイド部(55)(55’)の領域に到るとすぐに、互いに間隔を保ちながら、第一ガイド部(56)(56’)の傾斜に沿って進む。この状態を示したのが図6である。ローラー(54)(54’)の第一ガイド部(56)(56’)に沿っての移動の間、この移動の結果として、排出ロッド(13)が駆動ロッド(10)の変位距離より短い距離変位させられる。一方、排出ロッド(13)は、駆動ロッド(10)に作用する力より大きな力を排出スリーブ(8)に掛けることができる。従って、ローラー(54)(54’)がガイド部(56)(56’)に沿って移動させられる間に、ピペットチップ(5)が効果的に固定用円錐体(4)から押し外される。また、第一ガイド部に続く第二ガイド部(57)(57’)では、排出ロッド(13)の移動は駆動ロッド(10)の移動と一致し、、ピペットチップ(5)の取り外しが促進される。
【0045】
第一ガイド部(56)(56’)により、例えば3.5:1などの力増強伝達比が達成される。尚、引き続く第二ガイド部(57)(57’)における伝達比は1:1である。
また、第一ガイド部(56)(56’)でのピペットチップ解放に引き続く操作として、もしくは、「最終のプッシュ操作」のために、(例えば、1:2などの)「軌道増長型」伝達を行っても良く、そのための別のガイド部(58、58’)(59、59’)を図6に破線で示している。
尚、当然ながら、ガイド部(55)(55’)の領域に上記したもの以外の傾斜を設けることも出来る。
【0046】
また、チップ排出時の排出ロッド(13)の短縮されたストロークが排出手順の最後で補償され得るので、ピペットチップ排除時の力増強に関わらず、トータルストローク短縮の必要性が生じないという効果もある。
図7及び図8は前記実施例同様の機能を備えたリンク式伝動装置の実施例であって、駆動ロッド(10)と排出ロッド(13)を二本のリンクロッド(50)(52)により互いに接続し、また、駆動ロッド(10)と排出ロッド(13)の共通の移動軸線の一方側にだけガイド部(55)及び個々のガイドセクション(56、57)(58、59)を形成している。ガイド部(55)に対向する側の壁部(60)は、ガイド部(47)(48)の境界部分と面一で良く、この構成により、構造上、スペースの節約が可能である。
【0047】
また、図6から図8のリンク式伝動装置にバネ手段を設けて排出ロッド(13)へこのロッドの作動方向とは逆方向に作用させ、排出ロッド(13)を元位置へ復帰させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明手動式ピペットシステムの概略図である。
【図2】 ピペット装置に設けるプル手段式伝動装置を備えたピペットチップ除去手段の縦断面図である。
【図3】 約90゜回転させた図2のピペットチップ除去手段の縦断面図である。
【図4】 プッシュ手段式伝動装置を備えたチップ除去手段の縦断面図である。
【図5】 プッシュ手段蛇腹体式伝動装置を備えたピペットチップ除去手段の非作動状態における縦断面図及び、作動状態の除去手段の縦断面図である。
【図6】 2つのリンクチェーンを持つリンク式伝動装置を備えたピペットチップ除去手段の縦断面図である。
【図7】 1つのリンクチェーンを持つリング式伝動装置を備えたピペットチップ除去手段の縦断面図である。
【図8】 図7のIX−IX線における前記除去手段の断面図である。
【符号の説明】
1 手動式ピペット装置
2 ハウジング
3 ハウジング脚部
4 固定用円錐体
5 ピペットチップ
6 作動ノブ(ボタン)
7 ピペットチップ除去手段
8 排出スリーブ
9 側方突起
10 駆動ロッド
11 排出ノブ
12 伝動装置
13 排出ロッド
14 ガイドブロック
15 ガイド溝
16 側方開口
17 軸方向のガイド穴
18 ハウジング壁
19 リング体
21 リング体
22 軸受ブロック
23、24 リング体
25 圧縮バネ
26 段部
27 軸受ジャーナル
28 偏向ローラー
29 溝部
30 ケーブル
33 リング体
34 膨出部

Claims (14)

  1. 下記のa、b、c及びd、
    a ピペット装置(1)と、前記ピペット装置(1)に脱着可能に固定し得る少なくともひとつのピペットチップ(5)、
    b 前記ピペットチップ(5)が固定される、前記ピペット装置(1)に設ける少なくともとつの固定要素(4)、
    c 前記ピペット装置(1)に設ける排出手段であって、軸方向に移動して前記固定要素(4)からピペットチップを解放するための軸方向移動可能な排出要素(13)と、前記排出要素(13)の軸方向移動を駆動するための駆動手段(10)とを備えたもの、および
    プル手段式伝動装置(12)であって、前記駆動手段(10)の基本的に軸方向の駆動移動を、前記排出要素(13)の軸方向移動へ伝達し、且つ、少なくとも前記固定要素(4)からのピペットチップ(5)の解放時に前記排出要素(13)を、前記した基本的に軸方向の駆動移動が為される距離より短めの距離において軸方向移動可能ならしめ、更に、前記した基本的に軸方向の駆動移動のための力以上の排出力がピペットチップに掛けられ得るようにさせるもの、
    を有するものであって、前記駆動手段(10)と排出要素(13)とが互いに係合する端部をそれぞれ有しており、前記伝動装置(12)が、排出要素(13)における前記端部に回転可能に取り付ける偏向ローラー(28)と、一端が前記固定要素(4)に対し静止していて他端が前記駆動手段(10)における前記端部に固定されるケーブル(30)とを有していることを特徴とするピペットシステム。
  2. 前記排出要素を、ピペットチップの解放時の軸方向移動に対抗して作用するバネ手段と衝突させる如くした請求項1記載のピペットシステム。
  3. 前記バネ手段が、固定要素に対して静止している支持部と、排出要素の支持部との間で有効な圧縮バネである請求項2記載のピペットシステム。
  4. 前記駆動手段が、軸方向に移動する駆動ロッドおよび/または手動操作で作動可能な排出ノブから成る請求項1乃至3のいずれか1項に記載のピペットシステム。
  5. 前記駆動手段の前記端部と排出要素の前記端部が互いに入れ子式に案内されているものである請求項1乃至4のいずれか1項に記載のピペットシステム。
  6. 排出要素における前記端部に、前記偏向ローラーを回転可能に取り付ける軸受ブロックを固定し、駆動手段における前記端部には、前記軸受ブロックを収容するガイド溝と、前記偏向ローラーが突出する側部開口とを備えたガイドブロックを有しているものである請求項5記載のピペットシステム。
  7. 前記軸受ブロックから突出する排出要素の一端が、駆動手段における前記端部に設けるガイド穴に案内され、前記ガイド穴が前記ガイド溝に隣接するものである請求項6記載のピペットシステム。
  8. 前記駆動手段と排出要素との間に、前記端部どおしの係合に対抗して作用する別のバネ手段を配置したものである請求項6又は7記載のピペットシステム。
  9. 前記した別のバネ手段が軸受ブロックと、前記ガイド溝とガイド穴との間の段部とに配置される圧縮バネである請求項8に記載のピペットシステム。
  10. 携帯式ピペット装置もしくは据え付け式ピペット装置を備えるものである請求項1乃至9のいずれか1項に記載のピペットシステム。
  11. ワン・チャンネルシステムもしくはマルチ・チャンネルシステムである請求項1乃至10のいずれか1項に記載のピペットシステム。
  12. 手動操作式もしくは電気式により駆動される排出装置を備えているものである請求項1乃至11のいずれか1項に記載のピペットシステム。
  13. 前記駆動手段が手動で作動可能な排出ノブ、もしくは、リニアモーター式駆動部を備えた駆動ロッドを有している請求項12に記載のピペットシステム。
  14. 前記固定要素に取り付けるピペットチップが、排出手段に負ける少なくとも0.5N、好ましくは、0.5〜80Nの締付力で固定されるものである請求項1乃至13のいずれか1項に記載のピペットシステム。
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