JP4484382B2 - 帯電器および画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電器およびに画像形成装置に関し、特に帯電効率を改善した帯電器とそれを用いた画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明は、電子写真方式の複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像記録装置に用いられる帯電器に関する発明であるが、この技術は、放電現象及び帯電現象を利用した様々な装置に応用が可能である。
例えば、液晶工場等では帯電防止を行うために用いられるイオナイザー等がある。従来のイオナイザーは、空中現象を利用している。そのため、電極からの異物を発生させ、歩留まりを低下させる要因となっている。本発明の帯電器を用いることで異物を発生させない除電を可能にすることができる。通常の基板の帯電を除去する場合、本発明の帯電器の細線部分を帯電している基板等に接触させる。本発明での効果は積極的に帯電させることではあるが、電圧を印加しないで、アースにとって置くことによって、除電効果が期待できる。基本的には帯電器から異物を発生することはない。これと同時に基板上に存在する異物を帯電器に吸着することが期待できる。この場合は、帯電器側に異物を除去する装置を構成することが必要である。
【0003】
ここで、画像記録装置に用いられる接触型帯電器に話を戻して考える。従来の帯電方式はコロナ放電を用いたコロトロン、スコロトロンが主流であった。しかしコロナ放電は、空気中に電界をかけることから、オゾンやNOxなど有害物質を大量に発生することや、帯電効率が低いために消費電力が多く、また4k〜6kVの高圧電源が必要なためコストが高く、かつ人体に対し危険性があるといった欠点があった。近年の環境に対する配慮から、このような帯電方式を改善することは急務であり、ローラー帯電へと移行されつつある。
【0004】
ローラー帯電とは、導電性ゴムローラーを画像記録装置の場合は感光体などの被帯電体と接触させ、被帯電体と帯電ローラーの微小空隙で放電を起こし被帯電体表面を帯電させる方法であり、コロトロンと比較して、オゾンの発生が著しく低減(1/100〜1/500に低減)されている。このような方法は、たとえば、特開平7−92617号公報、特開昭64−73365号公報、特開昭64−54471号公報などに示されている。
しかしながら、帯電ローラーも被帯電体と帯電ローラー間の微小空隙に電圧を加えコロナ放電を起こすことから、原理的にオゾン発生をゼロにはできない。また、オゾンが被帯電体近傍で発生するため、オゾンによる被帯電体の劣化は依然として課題として残る。
【0005】
被帯電体の劣化の原因は諸説あるが、その1つとして、放電による不要生成物(オゾンやNOx)などが、被帯電体表面と化学結合することによっているという説がある。化学結合の原因にはオゾンの強い酸化力やNOxなどが作る窒化物などが考えられている。
このようなことからも、帯電工程で、できるだけ不要物を生成しないことが望まれる。またローラ型はコロナに比べ、はるかにオゾンの発生位置が被帯電体の近傍であるため、オゾンによる被帯電体の劣化は依然として課題として残る。また、近年、感光体を劣化させる要因として、感光体近傍の高電界などが疑われている。このような懸念事項を払拭する上でも、低電圧での帯電方式が望まれている。
また、原理上、放電によるにはある閾値が存在し、それ以上に電圧を印加しなければ帯電を施すことができない。このため、例えば100Vに帯電したい場合などは、電荷注入では150Vであるのに対し、放電では数百Vの印加が必要となる。今後の低電圧現像が実現したとしても、閾値以上の電圧を印加しなければならず、メリットが薄れる。可能であるならば、必要な表面電位と同程度の印加電圧で満足する方法が望まれる。
【0006】
ミノルタからはフィルム状のブレード型帯電器が提案されている。これは、ブレードと感光体との空隙において、やはり放電を起こすものである。これの特徴はフィルムの柔軟性である。これにより、その密着性を向上させることができ、感光体のラフネスによる帯電むらを低減できると考えられる。しかし、フィルムの柔軟性はその耐久性とはトレードオフの関係となり、実用上は課題が残る。
【0007】
よってオゾンが全く発生しない電荷注入が最近注目されるようになっている。電荷注入とは放電を起こさないで、接触型帯電器から直接電荷を感光層に注入する方法である。この方法はこのため、原理的にオゾンは発生しない。電荷注入においては、接触型帯電器と被帯電体との接触抵抗や微小空隙の容量が電荷を注入する際の注入速度に影響を与えるため、接触抵抗は低いほど良いと考えられる。その目的のために、特開平6−75459号公報ではテトラシアノキノジメタン(TCNQ)等の電子受容性化合物とテトラチアフルバレン(TTF)等の電子供与性化合物から構成される電荷移動錯体を高分子ネットワークに置換し、全体に導電性を付与した高分子材料からなる導電性ゴムで帯電ローラーを作っている。
【0008】
しかしながら香川、古川、新川らによるJapan Hardcopy92、pp.287〜290の報告では、80%RHの高湿下では有機感光体(以後OPCと略す)は十分な帯電電圧が得られるが、30〜50%RHの湿度下では印加電圧の半分までしか帯電されず、注入速度が遅いことが判っている。
これは帯電ローラーの接触面積(ニップ幅)が小さいことと、導電性ゴムが十分に低抵抗化していないためと予想される。
【0009】
つまり低抵抗の導電性ゴムを得るには電荷移動錯体を多量にドーピングする必要があるが、ドーピング量が多くなると高分子自体のネットワークの柔軟性が減少し、ゴム硬度が大きくなるのではないかと思われる。例えば、特開平6−75459号公報での導電性ゴムの抵抗は、10Ω・cmとなっており、適度なゴム硬度を維持しながら導電性ゴムを低抵抗化することは、高分子材料の選択の点から容易ではないと予想される。また、全体に導電性を付与した高分子材料からなる導電性ゴムでは帯電電位が湿度に敏感であるため、環境を厳密に制御する必要があり、接触型帯電器構造が複雑になる。
【0010】
一方、特開平7−140729号公報では、吸水性のスポンジローラーを用いて感光体に電荷を注入している。吸水性のスポンジローラーを用いる場合、ローラーの含水率がローラー抵抗や電荷の注入速度に大きな影響を与えるので、ローラーからの水分蒸発によって帯電電位が変動する虞れがある。帯電電位の変動を抑えるためにはローラーからの水分蒸発を長期に渡って厳密に制御する必要があり、接触型帯電器の構造は複雑になり、安価に製造することができない。
また、特開平9−101649号公報においては、帯電ブラシの導電性繊維をエッチング繊維または分割繊維にすることによって、導電性繊維と感光体との接触面積を増加させ、電荷注入の速度を向上させることが提案されている。エッチング繊維とは導電性繊維の成分の一部を薬液で溶解し、1本の導電性繊維を太さ方向で複数本に分割した繊維である。また分割繊維とは加熱時の各部の熱収縮の差を利用し、1本の導電性繊維を太さ方向で分割した繊維である。これらの処理によって、実質的により細い径の導電性繊維を用いたことになり、感光体との接触面積を増加することができる。
【0011】
しかしながら、分割された繊維の引っ張り強度は分割前の導電性繊維と比較し分割された分だけ小さくなる。その結果、感光体と接触した場合、分割された繊維は切断されやすくなり、長期の使用では帯電電位のバラツキを起こし、接触型帯電器の寿命を低下させる原因となってしまう。逆に、長寿命の接触型帯電器を得ようとすると、導電性繊維の分割数を多くできないため、接触面積の著しい増加は期待できず、電荷注入速度が顕著に向上するとは思えない。
このように、電荷注入方式にも幾つかの課題が残されており、実機への応用例も決して多くはない。
【0012】
近年ではこのような背景のもと、非接触でかつ放電を用いない帯電方法が研究されつつある。これは大阪府立大の中山教授などによってもその可能性が報告されている(JapanHardCopy97(予稿集P221)大阪府立大学秋田、中山)。この方法は非接触において、帯電器表面に微小突起物を構成することで、通常のパッシェン則にのらない帯電が可能となる。これによって、パッシェンの閾値以下での帯電が可能になり、コスト的にもオゾンのような副生成物なども少なく、感光体へのダメージも低減できるとされている。
【0013】
以上のような観点から、本発明は、オゾンやNOxの問題が無い電荷注入方式を採用し、かつ従来の帯電ブラシにおける課題を解決することを課題とする。また、帯電ブラシの摩耗をできるだけ少なくし、機械寿命を向上させることを課題とする。さらに、細線の密度を上げるだけでなく、細線と被帯電体との接触面積を広くして効率の良い帯電を可能にする構成を提供し、帯電能力の向上を実現し、さらにピンホールや放電に関する課題を解決できる構成を提供することを課題とするものである。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、従来の帯電器の課題とそれに対する対処の必要性について列挙してみよう。
(1)高電圧の危険性
電子写真プロセスにおいて、感光体を帯電させる方法としてコロナ放電もしくはローラー型での放電を利用してきた。この場合、放電に必要な電圧として、数kVという大きな電圧を加える必要があった。kVというオーダーの大きな電位は、人にとって非常に危険な電圧である。このような大きな電圧を、複写機が利用されているようなオフィスなどに存在させることは、本来できるだけ避けなければならないことである。
また、このような大きな電圧を交流で利用することによって、多少たりとも電磁波が発生していることは否めない。科学的な裏付けは乏しいが、近年、電磁波による健康被害が取りざたされている。このように電磁波に対する警戒感を持つような傾向は、今後さらに広がりを見せると思わる。
このような意味においても、人が身近に作業するような空間においては、可能な限り大きな電圧は利用しないようにする必要がある。
【0015】
(2)コスト、設計上の問題
帯電器に必要な高電圧を得るためには、通常、電源100Vを昇圧装置で所望の電圧にしている。この昇圧装置はコスト面でも、設計上、大きな問題となっている。したがって、できるだけ、小さな電圧でも電子写真プロセスが行えるようにさまぎまな研究がなされ、近年ではこのような成果が実り、低電位現像などが少しずつではあるが実現してきている。
このように、低電位での電子写真プロセスが完成した暁には、帯電プロセスでの帯電電位は低いもので良くなるであろう。しかし、現状の放電を利用した帯電では、少なくともパッシェンの閾値までの電圧を印加しなけれれば、放電は発生せず、帯電は不可能である。このような状況では、今後、低電位現像が実現できたとしても、帯電には大きな電圧が必要となり、低電位現像の効果が薄らぐ。可能であるならば、500Vの表面電位が必要な時にはそれと同等、例えば550V程度の印加電圧で十分なような帯電装置が望まれる。
【0016】
(3)感光体ダメージ
現状の電子写真プロセスにおいては、被帯電体としての感光体を用いている。感光体は光を照射した部分だけ低抵抗化し、帯電に寄与している表面電荷を消滅させ、潜像を形成する役割を担っている。近年ではその感光体に有機物が多く用いられているが、有機物は無機物などに比べて、はるかに劣化が早い。感光体の劣化は他の部品に比べはるかに早く、複写機やプリンターを長く利用するためには、メンテナンスや部品交換が必要である。このような寿命の短い部品は、メンテナンスコストを考えると、重要な改善項目であり、長寿命の感光体の開発が熱望されている。また、このように感光体を劣化させない電子写真プロセスが必要とされている。
この劣化現象は光徐電速度の低下、光生成キャリアの減少や、暗電流の増大などによって評価される。現状のところ、この劣化が何によるものかはっきりしたデーターは取られていないが、その一つの要因として、帯電プロセスが考えられている。帯電プロセスでは、イオン化された分子が、帯電電圧によって加速される。この加速されたイオンが感光体に衝突する。このことは、半導体製造プロセスにおけるプラズマエッチングによる表面劣化に非常に良く類似している。
【0017】
以下、半導体プロセスでの表面の劣化について考えてみる。半導体プロセスなどでの劣化は、プロセス上非常に重要視されており、今までに非常に多くの研究がなされ、そのメカニズムに関しては、概ね明らかにされてきている。良く知られる研究成果のうちに、衝突イオンの運動エネルギーと、それによって形成される原子欠陥の相関などがある。これらは、実験的にも確かめられているし、モンテカルロや第一原理計算のような方法でも検証されている。
このような衝突で形成される原子欠陥は、格子間原子やフレンケル欠陥などを生じ、バンド理論上では、バンド間準位を形成することとなる。このような不純物準位はその物質での電子の移動度を低減したり、再結合中心として働く。このようなことは、実験的にも確かめられ認知されている。このような実験および計算結果は、SiやGaAsなどの化合物半導体などで行われている。しかし、このような物理現象は有機の半導体である感光体においても起きることが容易に想像される。つまり、衝突するイオンの運動量に如何によって、感光体に不純物準位が形成される。これによって電子の移動度の低減、および再結合中心の形成がなされ、ホッピング伝導の増大などが起きる。これは先に述べた感光体の劣化現象である光除電速度の低下、光生成キャリアの低減、または暗電流の増大につながる。
以上から、できるだけ、運動エネルギーの低いイオン(電子)を利用して被帯電体を帯電することが必要なことが分かる。荷電粒子の運動エネルギーは、概ねその近傍での電場によって支配されており、したがって、その電場および電圧を低減することが望まれる。
【0018】
(4)従来の放電での限界
従来のローラー帯電器では低電圧での帯電が困難であった。これは、この帯電プロセスがパッシェン則に従う放電を利用しているからである。つまり、パッシェン則では閾値が存在しており、その閾値を超える電圧を印加しない限り放電は開始しない。そのため、例えば、500V程度の帯電電位が必要な時でも、1kV近い電圧を印加しなければならなかった。これは、図2に示した帯電電位と印加電圧の関係から容易に理解することができる。上記したような課題から印加電圧を低減することが望まれるが、従来の放電現象を利用している場合は、低電圧化は不可能である。
【0019】
(5)非放電の要求
電界放出の帯電方法においては、低電圧とは言え放電が起きる可能性がある。帯電器と被帯電体の間で放電が発生すると、それぞれプラス・マイナスの電荷が発生し、それぞれ電界によって移動することになる。本来、本発明で必要な電荷は、被帯電体を帯電させる一方の極性の電荷だけである。つまり、ダイオードで言うところのモノポーラ性があればよく、バイポーラでなくて良い。
電界放出はモノポーラであるのに対し、放電はバイポーラである。バイポーラであると、帯電に不要な電荷が帯電器表面に衝突することになる。この衝突によって、帯電器表面の劣化、および発熱などが懸念される。これはプラズマ中に暴露したものと同様で、化学反応エッチングやスパッタ効果などが考えられる。
このような課題を無くすためには、電圧を印加しても、気体が電離して放電現象が起きないことが望まれる。
【0020】
(6)オゾンの問題
従来の放電による帯電では空気を電離し電荷を供給していた。そのため、その時に生成される活性酸素およびその副生成物であるオゾンの発生は避けられない。オゾンが人体に影響を与えることは、よく知られている。そこで、その発生メカニズムを検討し、その原因を取り除くことで、オゾンの発生しない帯電プロセスの実現が望まれる。先に述べたようにローラー帯電器などでは、パッシェンの法則で与えられる放電閾値より高電界を印加して帯電を施している。このように高い電界では被帯電体のハザード(劣化)およびオゾンの発生などは避けられない。できれば、低電圧で帯電を施すことが望まれる。
低電圧で帯電を施す方法として電荷注入方式が有力である。この方式では帯電器と被帯電体とが接触する必要がある。この方式での課題としては、帯電速度が接触抵抗に依存しており、従来型の電荷注入型帯電器では十分な帯電速度を得ることができていないという点である。また、接触型の帯電器には、その安定した接触が絶対条件となるため、帯電器表面にゴム弾性のある柔軟な部材を利用するという方法が採られる必要がある。しかし、イオン導電性と、ゴム弾性とを有し、かつその抵抗を制御できる材質を選択することは困難である。またフィラーなどによる低抵抗化などには、その粒径などによる電荷注入不良など不具合が報告されている(香川:Japan Hard Copy(1992)p31)。
【0021】
このため、電荷注入方式では、このような課題を解決しなければ、実機への採用は困難であるように思える。このような背景のもと、接触型の電荷注入でもなく、パッシェン則に乗った疑似平行平板型の放電でもない新たな方式の帯電が望まれている。このような条件の中、電界放出による帯電への可能性が報告されている(Japan Hard Copy 1997(予稿集P221)大阪府立大学 秋田、中山)。
この報告では、大気中での電流電圧特性を測定しており、帯電に対しては十分な電流を得ている。その閾値も200V程度でパッシェン則から考えられる閾値の約400V(ギャップ長は10μm以上とする)よりは小さい値となっている。しかし、彼らの報告の中では、その電界放出での帯電プロセスヘの応用の可能性について述べられているだけで、本発明のような課題を提示しているわけではない。
本発明では、この電界放出現象(もしくは非パッシェン放電)を用いて、オゾンの生成およびNOxの生成を低減し、感光体に対するハザードなどを低減するという、この報告とは異なる課題を提示している。また、それに必要な駆動範囲を定めている。
【0022】
(7)微小突起形状
従来の平行平板ではパッシェンの法則が成り立ち、それ以下の電圧での十分な帯電に困難が伴う。このことから、放電によって帯電を施すには、パッシェン則から逸脱する構造が必要である。また、放電を起こさない電界放出などを想定した場合でも、通常の平行平板では非常に高い閾値を持ち、印加電圧では十分な帯電を行うことができない。従って、微視的には平行平板を崩すような構成の実現を考える。微小突起形状はそのための一つの選択肢である。
【0023】
(8)電荷供給量の不足
従来、帯電器表面に微小突起物を形成し、パッシェンでの放電閾値電圧を低減する方法が試みられている。微小突起物があることによって、そこでの電界集中が起き、平行平板に比べると、高い電界領域を微小突起周辺に形成できる。この領域で放電を起こし、発生した電荷を被帯電体に移動させることで帯電を施すことができる。これによって、通常の放電閾値が若干低減でき、感光体へのダメージ、オゾンの生成などを低減することができる。しかし、現状では、微小突起を形成しても、そこで生成される電荷量が少なく、このような効果が顕著に見えてこない。ここでの課題の1つは、この微小突起周辺で十分な電荷を生成することである。現在考えられる解決策として、以下のような方法がある。
【0024】
▲1▼印加電圧の増大
これによって、高電界領域を増大させることができるが、電荷量を稼いだとしても、閾値以上の電圧になると、本末転倒になる。また、いくら電圧を高くしても、平均自由行程は変わらないので、その高い電界をもってしても、電荷発生効率が向上するとは思えない。
▲2▼微小突起の微細化
微小突起を微細化することで電界集中は強くおきるが、逆にそれによって形成される高電界領域は低減する。つまり、微小突起の形状では、電界強さと領域の広さとでトレードオフの関係となる。そのため、微細化だけでは生成電荷の増大は望めない。
▲3▼微小突起と被帯電体とのギャップを小さくする
これにより、低電圧によって高い電界を得ることが可能になる。印加電圧は低減できるが、それとともに被帯電体に近傍にできる電界は大きくなる。これは、衝突イオンの運動量の増大につながり、感光体へのダメージが多くなる。また、被帯電体は容量として働くため、ギャップと被帯電体の直列容量となる。このため印加した電圧はこの直列容量で電圧分配される。被帯電体の厚みに比べ、ギャップの大きさが小さくなると、印加電圧が被帯電体に多くかかることになる。このため、ギャップを小さくすればするほど、ギャップにかかる電圧は飽和してしまう。
▲4▼微小突起の量を増大させる
単位面積当たりの微小突起数を多くすること、つまりは微小突起の表面積を増大させる方法がある。これによって、形成される高電界領域が増大する。しかし、平行板から突出した微小突起では、限界がある。また、それらの突起間距離が近くなると、あたかも、平行平板と同様に働くようになって、電界集中が起きなくなる。したがって微小突起の密度は大きくしないで、微小突起の量を増大させることが望まれる。
【0025】
(9)異物の混入
非接触型で、微小突起を形成した構造の帯電器では、帯電器表面と被帯電体の間には数μm単位のギャップ制御が必要とされる。これを解決するための方法として、従来から、ブレード型、もしくはローラー型の帯電器が考えられていた。このような形状の帯電器では、トナーなどの微小異物などがその帯電器と被帯電体との間に入った時は、そのギャップ制御が困難になる。このため、ローラー型であれば、常にクリーニングできるような装置を備えたり、被帯電体にもクリーナーを設置するなどの対策が考えられている。しかし、ブレード型の帯電器ではそのような対策も原理上困難である。また、クリーナーだけでは完全なトナーなどの異物除去は不可能である。従来のクリーナーは、大量の残トナーなどを低減するというスタンスの機能でしかない。それに比べ、ここで必要とされる異物除去のレベルははるかに高い。
ブレード型に関して言えば、トナーが1つでも残っている場合、そのトナー部分ではブレード型帯電器と被帯電体とのギャップが少なくともトナー分広くなってしまい、正確なギャップ制御ができなくなる。必要なギャップ制御が数μmのオーダーであるのに対し、トナーの粒径は十μm程度と、非常に大きい。そのため、このような残トナーが存在する部分は十分な帯電ができなくなる。また、ローラー型に関しても、ほぼ同様なことが言える。ブレード型に対しては、被帯電体と同一周期で回さないローラーであれは、若干の改善は期待できるが、根本的な改善とはならない。以上のように、非接触非パッシェン型帯電器のギャップ制御は、従来のような表面ラフネスによるものでは、異物などの観点より問題がある。
【0026】
(10)ブラシ構造
以上のような凹凸構造物では、その表面積の向上には限界がある。より積極的にその凹凸を増大させる方法が望まれる。数千dpiなどで考えられるその構造物の形状はμmオーダーとなる。このようなオーダーの微細な加工には困難が伴う。例えば、樹脂の型成形などの方法では、その型を製造することだけでも非常に難しい。以上のようにこの構造物を成形する方法として、簡便な方法が、また、そのような方法をとりうる構造形状が望まれる。その一つの方法としてブラシ構造が考えられる。
【0027】
(11)ブラシ変形
ブラシ表面に形成されている微小突起と被帯電体との距離は、ある程度の範囲内になければならない。そして、そのオーダーは数μm程度であることが望ましい。ブラシ形状で、非接触にすると、そのブラシと被帯電体との距離を正確に制御しなければならない。また、単なる凹凸形状ではその摩擦摩耗で、凹凸形状が変化してしまう可能性がある。被帯電体が摩耗しないように、帯電器側の摩耗性はある程度必要である。このため、凹凸形状であっても、その表面は摩耗によって、平らになっていく可能性がある。できれば、摩耗を起こしても、その表面積を著しく低減することがないような構造物が望まれる。摩擦に関わる押し圧の力も微妙な調節が必要である。そのような微妙な調節機構を作り込むには、コストなどの問題から、できれば避けたい。できるだけ簡便な方法で押し圧、微小突起と被帯電体との距離を制御することが望まれる。
【0028】
(12)微小突起物質
微小突起を用いる場合、その大きさは非常に小さい構造を持って、電界放出閾値を低減する必要がある。理論的には数nmオーダーだと言われているが、実験的には数十nmオーダーでもこのような現象が確認できている。これは実験的に数十nmオーダーの構造物を作っても、その先端での構造が数nmオーダーになっていることによる。nmオーダー、数十nmオーダーの構造物を形成する方法として、半導体技術等で培われたフォトレジスト/マスクなどを用いる方法がある。しかし、このような方法で形成すると、非常にコストがかかる。本発明ではサイズ・形状の正確さは要求していない。そのことを加味して、コストの低い製造方法が望まれる。本発明では、ナノチューブやウィスカーを用いてこれを実現する方法を考える。
【0029】
(13)微小突起物質に対する要求事項
このような条件を満足する構造体を成形しなればならないが、この構造体には、さらに満たさなければならない条件がある。帯電体表面は被帯電体との接触などの機械的衝撃を受ける。また、帯電器の一部が被帯電体表面を滑るように移動するような構造が考えられることから、摺動性も必要となる。
さまざまな状況を考えると、微小突起に対する要求として、
▲1▼細さ(高アスペクト比)
▲2▼導電性
▲3▼耐摩擦性(機械的強度)
▲4▼可撓性
▲5▼化学的安定性
▲6▼コスト
▲7▼摺動性
が挙げられる。
【0030】
(14)ギャップ成形
以上に述べた非接触型の帯電器では、被帯電体との距離が100μm程度以下に抑えなければ、帯電が起きないことが考えられる。これは先の大阪府立大の実験結果等からも判る。ギャップ距離を大きくしていくことで、その帯電開始閾値が大きくなり、100μm程度のギャップ距離でパッシェン則の閾値とほぼ同様になることが確かられた。つまり、それ以下のギャップ距離に制御しなければ、放電が起き、本発明の目的を果たせなくなる。しかし、被帯電体のラフネスや回転駆動のぶれなどから、帯電器表面と被帯電体との間のギャップの距離を正確に数十μm程度に制御することは困難である。また、ギャップに対し、帯電電位が大きく依存することや、摩擦摩耗などによる制御の経時変化なども予想される。そこで、視点を変えて、できるだけラフな制御で、希望のギャップを生成することができる機構が望まれる。
【0031】
(15)電荷注入併用
以上に述べた非接触型の帯電器では接触領域での帯電が行えない。このため接触領域では帯電不良を起こし、白ぬけなどの画像障害を起こす虞がある。接触点が必要な帯電器では、この接触点での帯電も何らかの方法で施す必要がある。
【0032】
(16)ピンホール対策
帯電器に対する抵抗値の考察も重要である。被帯電体は数十μmと非常に薄い膜であることから、部分的に穴の空いたピンホールが存在する場合がありうる。ピンホールが存在すると、その領域に帯電器が接触した場合、この点への電荷集中が起き、ショートを起こすこととなる。ショートを起こすと、他の領域に電圧がかからなくなる。また、ショートした部分には大電流が流れることから、発熱などによる周辺被帯電体の劣化、ピンホール領域の拡大などの不具合が発生する。このため、ピンホールに対する対策が必要である。この対策の最適な方法として、帯電器の抵抗を制御する方法が考えられる。
【0033】
(17)帯電律速抵抗値
ピンホール対策には帯電器表面の抵抗値Rbを上げることが効果的である。しかし、表面抵抗Rbを上げることで、帯電スピードが落ちる。これは図3のような等価回路から理解することができ、ある一定の抵抗値以下に抑える必要がある。この等価回路から電荷注入に限らず、帯電器の抵抗値Rbと接触抵抗値Rcの和、Rb+Rc=Rdに帯電速度は律速されていることが分かる。帯電速度、帯電能力はその電子写真プロセスから必要とされる能力を保持していなくてはならない。つまり、必要な帯電速度から求められる抵抗値Rdが存在し、帯電器表面の抵抗値はそれより小さい抵抗値である必要がある。
【0034】
(18)摩擦速度大小関係
表面ララネスによって、ギャップを形成する場合、ある領域では被帯電体と帯電体とが接してしまう。接した状態で被帯電体を駆動することで、その界面には摩擦が生じる。摩擦によって、被帯電体および帯電器表面が摩耗することになる。通常、被帯電体は非常に薄く数十μmであるから、その表面が摩耗し、数μmでも削れることは、寿命の面を含め画像形成上、間題がある。数μm程度削れるのであれば、帯電器側の表面が削れた方がその影響は小さい。
【0035】
(19)ブレード
従来のローラー型の帯電器では、帯電器側表面の任意の点は被帯電体のある決まった1点とのみ接することになる。その点が接触領域であれば、接触点の領域となるし、ギャップのある領域であれば、ギャップ領域となる。ギャップ領域でもそのギャップの大きさによっては表面電位が異なる。つまり滑ることなく帯電器と被帯電体と接触する場合は、ギャップの大きさで、電位むらが発生する。電位むらはそのまま画像むらとなり、大きな課題となる。
また、ブレード型にすることで、印加電圧を段階的に印加することができ、各ブロックでの帯電器と被帯電体との電位差を低く抑え、電位差を放電の閾値電圧以下にすることができ、放電による問題を解消することができる。
【0036】
(20)研磨ローラー
ブレード型ではクリーナー装置がないため、トナーやその他の微小なごみなどが帯電器と被帯電体との間に入る可能性がある。このような状態では均一のギャップ形成に支障をきたし、画像形成上大きな問題となる。したがって、できるだけ、そのような汚れに強いプロセス設計が必要である。また、ブレード表面にCNT(カーボンナノチューブ)を設置しているが、その摩耗は避けられない。ブレードの場合も被帯電体との接触によって、CNTを固定してある樹脂が削れ、CNTが絶えず露出する可能性がある。その制御は被帯電体と固定樹脂によってのみ決定される。これについて、より制御しやすい構成が望まれる。
【0037】
(21)転写などへの転用
電子写真プロセスを用いる複写機やプリンターでは、先の感光体を帯電させる帯電器の他に、さまざまな用途に帯電現象を利用している。例えば、感光体からトナーを紙に転写する転写プロセスなどがそれに当たる。本発明の目的の1つは、電子写真プロセスを用いた機器において、オゾンや高電圧などを除去することである。つまり、先の感光体を帯電させる帯電器にのみ、本発明を利用しても、その他の部分で従来の帯電器を利用していては、最終的な装置としては、先の課題を解決できていない。本発明の目的を達成するためには、他の部分での帯電も考慮しなければならない。
以上のような観点から、本発明は、従来型の帯電器の問題を解決して、パッシェン則に従う放電を用いることなく、オゾンやNOxの発生が無い非接触型で低電圧での帯電が可能な帯電器およびこの帯電器を帯電・転写・除電等に応用した効率のよい画像形成装置の実現を課題とする。
【0038】
本発明が解決しようとする課題、すなわち従来技術の問題点を具体的に列挙すると以下のとおりである。
課題1
従来の帯電器では高電圧が必要で、それによる問題はつぎの3点である。
(1)高電圧による人体に対する危険性
(2)高電圧装置のコスト問題
(3)高電圧飛来電荷による被帯電体ダメージ
しかし、従来の放電での帯電では、パッシェン則による限界がある。
【0039】
課題2(非放電)
放電では、帯電に不要な電荷が帯電器表面に衝突することになる。この衝突によって、帯電器表面の劣化、および発熱などが懸念される。
【0040】
課題3(オゾン/NOx)
従来の放電による帯電では空気を電離し電荷を供給していた。そのため、その時に生成される活性酸素およびその副生成物であるオゾンの発生は避けられない。オゾンが人体に影響を与えることは、よく知られている。また、同様にNOxによる被帯電体ダメージが報告されている。
【0041】
課題4(突起形状)
課題1〜3を解決するに当っては、従来の平行平板ではパッシェンの法則が成り立ち、それ以下での十分な帯電は困難を要する。
【0042】
課題5(凹凸、電荷供給量の不足)
現状、微小突起を形成しても、そこで生成される電荷量が少ない。単位面積当たりの微小突起数を多くすること、つまりは微小突起の表面積を増大させる。
【0043】
課題6(Ra>10μm:異物の混入)
トナーなどの微小異物などがその帯電器と被帯電体との間に入った時は、そのギャップ制御は困難になる。
【0044】
課題7(ブラシ)
上記の凹凸構造物では、その表面積向上には限界がある。より積極的にその凹凸を増大させる方法が望まれる。この構造物を成形する方法として、簡便な方法、また、その方法をとりうる構造形状が望まれる。
【0045】
課題8(ブラシ構造)
摩耗を起こしても、その表面積を著しく低減することがないような構造物が望まれる。摩擦に関わる押し圧の力も微妙な調節が必要である。できるだけ簡便な方法で押し圧、微小突起と被帯電体との距離を制御することが望まれる。
【0046】
課題9(突起物質)
突起物形成方法として、低コストの製造方法が望まれる。
【0047】
課題10(CNT)
先に示した機能を満足するためには細さ及び導電性を実現する必要がある。この帯電器表面は被帯電体との接触など、機械的衝撃を受ける。そのため、耐摩擦性、可撓性、化学的安定性、摺動性などが必要となる。
【0048】
課題11(空間成形)
できるだけ低コストで実現するために、ラフな制御で、空間を形成する機構が望まれる。
【0049】
課題12(電荷注入併用)
上記の帯電器では空間形成のために接触点が必要である。この接触点では帯電せず白抜けとなって帯電効率を向上するために、接触点の向上が必要である。この接触点での帯電も施す必要がある。
【0050】
課題13(ピンホール対策)
被帯電体に存在するピンホールへの対策が必要である。
【0051】
課題14(帯電律速抵抗値)
表面抵抗を高めることで、帯電スピードが落ちる。これは図4のような等価回路から理解することができ、ある一定の抵抗値に抑える必要がある。
【0052】
課題15(摩耗速度大小関係)
通常、被帯電体は非常に薄く数十μmであるから、その表面が摩耗し、数μmでも削れることは、寿命など画像形成上、問題がある。
【0053】
課題16(摺動)
従来の摺動ローラー型の帯電器では、電位むらはそのまま画像むらとなり、大きな課題となる。また、電圧を段階的に変化する事ができない。
【0054】
課題17(研磨装置)
摩耗によって突起物が削れてしまい、新しい突起物形成手段が必要。
【0055】
課題18(転写などに転用)
先の感光体を帯電させる帯電器にのみ本発明を利用しても、その他の部分で、従来の帯電器を利用していては、最終的な装置としては、先の課題を解決できていない。本発明の目的を達成するためには、他の部分での帯電も考慮しなければならない。
【0056】
つぎに、本発明の目的を列挙すると以下のとおりである。
(1)低電圧での帯電方式を用いた電器を提供すること、(2)放電によらない帯電方式を用いた帯電器を提供すること、(3)オゾンやNOxを排出しない帯電方法を用いた帯電器を提供することである。
【0060】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本発明は、帯電器表面と被帯電体の間に少なくとも空間を設け、この帯電器表面と被帯電体との間に電圧を印加して、前記被帯電体を帯電し電荷を授受する帯電器において、前記帯電器表面に細線を束ねたブラシを形成して凹凸状とし、該ブラシ表面には微小突起としてCNT(カーボンナノチューブ)が突出しており、帯電が少なくとも電界放出現象により行なわれることを特徴とする。また、画像形成装置において、このような帯電器を電子写真プロセスに用いることを特徴とする。これにより、パッシェン則に則った放電を用いることなく、オゾンやNOxの発生が無い低電圧での帯電が可能な帯電器を実現し、さらに安全で効率のよい画像形成装置を実現することができる。
【0061】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる帯電器を添付図面を参照にして詳細に説明する。
課題としてあげた高電圧の危険性の問題、コスト、設計上の問題、感光体ダメージの問題を解決し、従来の放電方式の限界を打ち破る方策として、帯電器表面と被帯電体との間に電圧を印加して、被帯電体を帯電し、電荷を授受する領域の帯電器表面と被帯電体の間に少なくとも空間ギャップが存在する帯電器において、少なくとも電界放出現象を利用して帯電を施すことを特徴とする。
【0062】
上式の概略図を図14に示す。例えば、突起物などがある場合、電界集中が起き、突起物近傍には高い電界が発生する。この高電界領域は電極から離れる毎に小さくなる。この電界が3.5E7(V/m)の界面を図化したものが、図14に示す点線である。また、破線は電極からの距離が8μmの界面を示している。この2つの界面の位置関係が上式の条件では、通常のパッシェン則に従った放電は発生しない。このことについて以下に説明する。
【0063】
通常、放電現象は、電界によって加速された電子が気体分子に衝突し、そこで新たに電荷が発生する。これを繰り返すことによって、なだれ的に電子が増幅される。この加速されて、気体分子を電離するには12.06eV(酸素分子)以上は必要であるとされている。電子が平均自由行程(0.36μm)の間に、このエネルギー分加速するには、電界として、3.5E7(V/m)以上が必要である。つまり、この電界が存在しなければ、放電は発生しない。
【0064】
放電を形成するために必要な条件として、電極間距離がある。ある程度距離がないと電子なだれが十分に発生せず、放電が持続しないとされている。この距離は8μmとされている。つまり、先の条件で、必要な電界が存在していても、その電界が十分な領域において存在していないと、放電は成立しない。
【0065】
また、放電を起こさない条件として、その空間における電界K1(x)が以下の条件を満たすことを特徴とする。すなわち、x>8μmの範囲で、
【0066】
K1(x)<3.5E7(V/m)
とする。但し、K1(x)は帯電器電極からの距離xに依存した電界であり、xは電極からの距離である。
さらに、オゾンを発生しない電界放出現象の条件として、そのギャップ空間における電界の中で、K2(x)が以下の条件を満たすことを特徴とする。すなわち、x>0.34μmの範囲で、
【0067】
K2(x)<1.5E7(V/m)
とする。但し、K2(x)は帯電器電極からの距離xに依存した電界であり、xは電極からの距離である。感光体の劣化を防ぐためには、オゾンおよびNOxの発生は完全に防止しなければならない。また、その量が微小であっても、その発生箇所が感光体表面近傍であれば、その影響は大きくなる。オゾンやNOxは通常大気中にはほとんど存在しない。そのような物質が帯電を施すことで生成することが、本発明の課題の原理的な部分である。つまり、オゾンなどの生成現象を物理的に捉え、その発生メカニズムから解決するアプローチが必要である。
【0068】
オゾンの発生はいくつつかのプロセスを経て起こるとされている。その主だったものが以下に述べるものである。
【0069】
▲1▼ e+O2 →e+(O2 *)→e+2O
▲2▼ O+O2 +M→O3 +M
このようなプロセスで起きている電子を低減することで、オゾンの発生を低減することができる。ただし、この電子は感光体を帯電するためには、必要なファクターであり、それをただ低減することだけでは本末転倒である。そこで、電子が存在していても、上式が成り立たなければ良い。
ここで、注目したのは活性化酸素(O2 *)を生成するのに必要な電子の運動エネルギーである。そのエネルギーは5.1eVとされている。つまり、電子が存在していても、その運動エネルギーが5.1eV以上にならなければよい。そこで、以下のような計算ができる。
【0070】
W=L*K
ただし、Lは平均自由行程で、L=0.34μm
Wは電界Kにより得るエネルギー
これから、電界KがK=1.5E7(V/m)以下であれば、5.1eVにならないことが判る。このことから電界を1.5E7(V/m)以下にすれば、オゾンが全く発生しない。次に、多少発生しても、従来よりは激減できる方法を検討する。
電子は先の電界の中を0.34μm走行して初めて、運動エネルギーを得る。つまり、この電界が少なくとも0.34μm以上長い領域を占めていなくてはならない。以上より、1.5E7V/m以上の電界領域を電極からの距離0.34μm以下にすることで、オゾンの生成を低減することができる。
【0071】
次に、平行平板を崩す条件を考える。このために、平板の表面に微小突起物を形成するようにする。表面形状が平行平板でないとしても、先にのべた条件内であれば放電は生成しない。また、同時にオゾンなどの大量生成を避けることができる。
しかしそれと同時に、このような形状であれば、その先端部の電界は7E9V/mを超える可能性がある。このような強電界のもとでは電界放出が起きる。また、通常のパッシェン則などで説明できない放電現象も起きる可能性がある。
【0072】
次に、平行平板を崩す条件を採用した場合に起こる電荷供給量の不足に対応する処置について考える。
少なくとも被帯電領域と帯電器の間に空間があり、その領域で帯電を施す非接触型で、その表面に微小突起構造を有している帯電器において、その帯電器表面が少なくとも平面ではなく、凹凸があることを特徴とした。これは図12に示すように、通常、微小突起を支持する部材は平面で形成されているが、その部分に故意に凹凸を付けるようにしている。この凹凸は平面でなければ、その効果を発揮でき、製造上偶然形成されるものを利用してもよい。
また、異物混入などの問題に対処する方法として、帯電器表面の凹凸の半径Raを10μm以上にする。
【0073】
これは異物として混入するトナーの大きさ依存している。トナーは最大でも10μm程度であり、Raをそれ以上にする事で、トナーは凹部に押し込まれる。この事はラフネスを替えて行った実験によって確かめる事ができる。Raが5μm程度では、画像の白ぽち不良像が増加する。Raを10μmにする事でこれが解消された。
【0074】
さらに通常の凹凸形状では、表面積の改善に限界がある。これの解決方法の一つとして、細線を束ねたブラシを帯電器表面に形成する。これによって、図12に示したような凹凸を、ブラシの高アスペクトで実現できる。このことをイメージした図を図13に示す。
微小突起と被帯電体との距離を制御する方法として、ブラシは被帯電体と接触し、屈曲するようなものとする。ブラシの一部が接触するが、その接触領域以外の部分は、ブラシと被帯電体間に所定の空間が形成される。この空間を帯電領域として利用する。ブラシが屈曲することで、図7に示すようなる。この断面図が図8である。微小突起から被帯電体までの距離はブラシ径に依存する。ブラシ径を制御することで微小突起から被帯電体までの距離を簡便に制御することができるようになる。
【0075】
微小突起物を構成する微小突超物質として、nmオーダーであるナノチューブやウィスカーを用いることを特徴とする。最近注目されている方法として、気相成長などでの自己組織化、自己集合化現象を利用する方法がある。この方法ではGaAs、NaClなどでの量子ドット形成などの方法で形成されるものが、有名であるが、その他でも、フラーレン、ゼオライトなどに代表される高分子の延長上にあるような物質もある。このような方法で得られる微小構造物は、概ね、nmオーダーであり、その製造方法から非常に安価に大量に合成することができる。
【0076】
本発明では微小突起から電界放出を行うため、ある程度のアスペクト比がある事が望ましい。先端が鋭利に尖がった構造を持つ事で電界が集中し、電界放出が起きる。このような細長い構造物としては、例えば、ウィスカーやC(カーボン;以下のローマ字は元素記号)ナノチューブ、CBナノチューブ、WSナノチューブ、SiCナノチューブ、CNBナノチューブなどが良く知られている。
これらはすべてナノオーダーの径を持っており、本発明の目的には最適であり、コスト的にも非常に廉価に形成できる。なお、本発明では、細長い構造の大きさとは、その先端径を示すもので、長さを示すものでない。
【0077】
本発明では、その微小突起物として、CNT(カーボンナノチューブ)を利用する。帯電器の表面部材はその加工の優位性から樹脂、ゴムなどを用いるのが一般的である。本発明でもそのような優位性を必要とすることから、そのような部材が望まれる。さらに、以上にのべたような条件を満足するためには、その表面に微小突起を形成することが望まれる。微小突起は感光体に接触するなど、機械的摩擦に耐性があることが必要である。そのような要請からCNTを利用することが最適である。
【0078】
CNTはその名の通り、nmオーダーの径をもち、かつμmオーダーの長さを持つことで知られ、1991年NEC基礎研究所の飯島澄男氏によって発見された。CNTはnmオーダーの先端径をもち電界放出を起こしやすい。その原子レベルでもシームレスな構造から、外部応力に対しても、クラックなどが入り難くい。また、可撓性にも長けていることから、応力を緩和する事ができる。材質はカーボンのグラファイト層をシームレスに筒状にしたもので、その層も単層から数百層の多層まで様々な種類がある。また、先端はカーボンの5員環などを含んで閉管しているものや、そのまま開管しているものと様々である。
その生成方法は、当初、アーク放電法によるものであったが、より高効率の金属触媒を用いたCVD法やレーザーアブレーション法などによって、大量に作られるようになり、身近な材料になりつつある。
【0079】
基礎物性に対する研究も、その特異な形状から発見当初より精力的になされ、特にその電気的特性が金属的であったり、半導体的であったりすることは、第一原理計算から予想された。その他にも、その機械強度が非常に高いことや、鋭利に屈曲しても破断せずに元に戻ることなど、サイズが小さく評価が困難であるにも関わらず、様々なことが研究されて判ってきた。また、表面がグラファイト層で形成されていることから、非常に化学的に安定であることも知られる。
その反面、エポキシ樹脂等には適当に分散し、その界面での密着性はかなり高く、硬く固定できるようになっている。このため、nmサイズではあるが樹脂に埋め込むなどして、ハンドリングなども容易にできるようになってきている。
【0080】
さらにまた、その材料がグラファイトに近いことから、固体潤滑剤としてのポテンシャルをも持ちあわせている。その上、先の報告ではnmオーダーでの摩擦係数は転がり摩擦より滑り摩擦の方が小さいという報告もなされている。CNTの潤滑性については、まださほど多くの報告はなされていないが、潤滑剤としてのポテンシャルは高いことも期待されている。
応用面では、そのアスペクトの大きさと導電性から、高い不平等電界を生成することができ、フィールドエミッション型ディスプレーの電界放出源として注目されている。また、その表面性の高さから、従来、活性炭などが用いられていた電池の電極や、ガス吸着物質としても注目を集めている。
さらに、機械強度を利用した例としては、樹脂強化のために樹脂に分散させた報告(0.Lourie A.P.L.73(1998)3527)や、ミクロ世界でのアクチュエータヘの応用の報告(Ray H.Baughman SCIENCE 284(1999)1340)などがなされている。
【0081】
以上、述べてきたようにCNTは先の細線に対する要件を概ね満たしており、本発明ではこの材料が最適であると考えている。しかし、本発明では上の要件をすべてクリアしなければならないわけではないので、CNTに限らず、その他の炭素繊維、WSナノチューブ、CBナノチューブ、SiCナノチューブ、金属ウィスカーなどの極細い繊維であれば、用いることができる。
CNTを用いた帯電器の製造方法としては、樹脂分散型、電気泳動式植毛型、CVDによる表面成長型などの方法が考えられる。
【0082】
ギャップの形成は、以上に述べたような帯電器の表面ラフネスおよび被帯電体の表面ラフネスによって行う。
また、接触した領域においても帯電を施すことができるように、電荷注入方法を併用して対処する。
【0083】
ピンホール対策としては、表面部材の比抵抗値Rbについて以下の式が成り立つ範囲にあるようにする。
【0084】
Ro*Lo*f/100<Rb*Lb*S1
ここで、ピンホール面積と帯電面積の比=1:S1
f:許容する電圧降下の割合(%)
Ro:被帯電体の比抵抗(Ω・m)
Lo:被帯電体の厚さ(m)
Rb:帯電器表面部材の比抵抗(Ω・m)
Lb:帯電器表面部材の厚さ(m)
これは等価回路図3に見られるように、抵抗の比による電圧分配を計算したものである。
【0085】
ピンホール部はあたかも感光体の抵抗Ropが無いような等価回路となる。この時にRbが小さいと、ピンホール部に電流が集中し、非ピンホール部に電流が流れなり、帯電を起こす事ができなくなる。そこで、上記の様に帯電器側の抵抗値を挙げる事で、ピンホールのみに電流が集中しない様に設計する。つまり、ピンホール部の抵抗値に比べ、非ピンホール部の抵抗が小さければ、そちらに流れる電流が大きくなり、帯電を施す事ができる。これを式に書き下すと、「ピンホール部抵抗<非ピンホール部抵抗」という形になれば良い。また、抵抗=比抵抗*厚さ*面積であるから、上式のような形になる。
【0086】
帯電速度を落とさないで、ピンホール対策の効果を上げるためには、帯電器の抵抗Rbと接触抵抗Rcの和Rdが下式を満足するようにする。
【0087】
Vss<Vs(Rd)
Vs(Rd)=Va{1−exp(−w1/v1C1Rd)}
ここで、Vss:必要な帯電電位
Vs(Rd):帯電器の抵抗で決まる帯電電位
w1:ニップ幅(m)
v1:帯電線速(m/sec)
C1:被帯電体容量(F)
Va:印加電圧(V)
図3の等価回路の左側の分岐のように、帯電能力の等価回路は抵抗と容量との直列回路となる。このように等価的に表すことにより解析的に解くことができる。ただし、被帯電体の抵抗Roは十分大きいとして省略した。この式から、帯電電位は帯電器の抵抗に依存することが明らかであり、これを制御することで、十分な帯電が行える。
【0088】
帯電器を電流が流れ、帯電を施す。その電流量を規定する物性値として帯電器の抵抗Rbがある。抵抗値が制御するのは電流値である。電流とは単位時間に流れる電荷量であるから、電流値が決まると、帯電電位および線速(これは画像形成装置のスペックで決まり、1 分間に何枚の画像を作成するかによって決定される)が規制を受ける。逆に、製品スペックで、線速及び必要な電位が決定されると、それに対応して電流値そして抵抗値Rbが決定される。このことを式に書き下した。流れる電流値は先の等価回路よりCRで決まる。CRでのCとは被帯電体容量C1でありRは帯電器のRbである。直列のCR等価回路は、そこに流れる電流値の時間変化を対数で記述する事ができる。また、その電流によって帯電される帯電電位もその電流値に比例するから同じ形で書く事ができる。よって、ある時間T1における表面電位は
Vs(t)=Va{1−exp(−t/C1Rd)}
とかく事ができる。
ここで時間は帯電時間であるから、帯電時間T1はニップ幅を線速で割ったものと等しいからT1=W1/V1とかける。これを代入する事で上式となる。
【0089】
被帯電体と帯電器の機械強度の大小関係では、帯電器表面の部材が持つ機械的弾性(強度)が被帯電体より小さいようにする。
帯電器の形状は、ブレード型の形状にして、被帯電体表面で滑って接触面積を広くするようにする。
ブレード型の形状は以上のように接触面積が広いという長所があるが.微小なごみの影響を受けやすい。帯電器の形状をローラー型にし、さらに帯電器に、帯電器表面を研磨するクリーナーを備えるようにする。
転写器などに転用する場合は、以上にのべたような帯電器を帯電・転写・除電など、電子写真プロセスの静電気を用いるプロセスの少なくとも一個所に用いるようにする。
【0090】
【実施例】
以下に、具体的な本発明の実施例をあげて説明する。なお、実施例1〜3は参考例である。
実施例1
本実施例では、ローラー型の帯電器について、帯電器およびそれに適応される被帯電体をそれぞれ説明し、その後に、それらの動作方法について説明することにする。
【0091】
(1)帯電器(ローラー型)
図1に本実施例の帯電器を用いた画像形成装置の構成図を示す。図1において、符号1は本実施例の帯電器である帯電ローラー、符号2はクリーナー、符号3は被帯電体である感光体であり、符号4は電圧印加工程、符号5は露光工程、符号6は現像工程、符号7は転写工程、符号8は定着工程、符号9は光照射工程を示す。本実施例では図1のようなローラー型の帯電器(帯電ローラー)1を用いる。帯電ローラー型は、その表面にCNTを備えていることが特徴である。
図1で示したように本実施例の帯電器1はローラー状であり、電圧を印加する機能を有し、また、図4に示したように、円筒状の導電性基体11と、導電性弾性体12と、表面にCNTを含有する中抵抗層13からなる積層構造を構成している。
【0092】
帯電ローラー1の基体11はアルミ、SUS、Feなどの金属導体や、もしくは、プラスチック(アクリル樹脂など)などの絶縁体の表面に導体膜を形成したものが良い。体積抵抗が1E−2Ω・cm以下であれば、各種の導電材を配合した樹脂やゴムも使用することができる。今回は製造工程の製造コスト等からアルミを採用した。アルミを20mmφ、厚み2mmの円筒状に加工した後、表面を密着性が良くなるように、グラインダーで0.1mmオーダーのラフネスをつける。この上に、図4に見られるように厚みが5mmの導電性弾性体12をつける。
【0093】
この導電性弾性体12は弾性を有する母材に導電性の粒子を分散したものである。母材にはポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、軟質塩化ビニル樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体エラストマー、アクリル系エラストマー等の各種熱可塑性エラストマーが好適であるが、他にナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6−ナイロン6,6共重合体、ナイロン6,6−ナイロン6,10共重合体や、メトキシメチル化ナイロン等のアルコキシメチル化ナイロンの如きポリアミド、コポリアミド或いはそれらの変性体、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー等も使用できる。
ゴムとしては、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンゴム、ブタジエン−スチレンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム等が好ましい。今回はシリコーン樹脂を採用した。
【0094】
分散した導電性粒子としては、導電性カーボンブラックや、銀、金、銅、黄銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレススチール等の金属粉や、酸化スズ系導電剤等の粉末導電剤を用いることができ、他に、非イオン系、陰イオン系、陽イオン系、両性系等の有機導電剤や、有機スズ系導電剤をも用いることもできる。
また、導電剤の均一分散を有効に行うためには、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等のエチレン系不飽和カルボン酸等を共重合させた酸変性樹脂やゴムを一部使用することも有効である。今回は、導電性カーボンブラックを採用した。導電性粒子カーボンブラックは、熱で溶融された母材のシリコーン樹脂の中に分散され、これを型にはめ、冷却することで所望の形状の固体を得ることができる。このように得られたものは、その材料比によって、導電性を適当に調節することができる。今回は10Ω・cm程度の抵抗に調節した。
【0095】
このように形成された導電性弾性体12の表面にCNTを含有した中抵抗の層13を1層成膜し、表面に突起状の形状を形成する。上記導電性弾性体12上に設けられる中抵抗の膜としては、導電剤の配合と層厚により適当な抵抗値を有するように調整された樹脂やゴムが使用される。この樹脂、ゴムの種類は、前述したものと同様のものであってよいが、これら以外にも、フッ素系の樹脂またはゴム、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PTFE・HFP)、パーフルオロアルコキシ系フッ素樹脂等が好適に使用される。特にこれらフッ素系の樹脂やゴムを使用すると、不活性でしかも摩擦係数が小さいため、被帯電体である感光体や帯電ローラーの寿命の点で大きなメリットがある。
今回はPVDFを採用した。PVDFの機械強度は被帯電体に比べ、小さくなるように調整する。尚、中抵抗層13の抵抗値は、1E1〜1E10Ω・cm、特に1E6〜1E7Ω・cmのものである。この樹脂の中にCNTを含有させる。このCNTもフィラーとして作用することから、このCNTとカーボンブラックによって抵抗を制御した。CNTの濃度は10wt%、カーボンブラックは5wt%程度で所望の抵抗値を得た。
【0096】
この抵抗制御には、以下のようなピンホール対策としての計算をもとにした値を用いた。
【0097】
ピンホール面積と帯電面積の比=1:1E5
但し、ピンホール面積100μm、帯電面積2*300mmとする。つまり図3の等価回路で
【0098】
Rb´=Rb*1E5
とする。
ショートによる影響を1割減で抑えたいのならば、
【0099】
10*(Rb+Rc+Ro)=Rb´
とすれば良い。Rb´=Rb*1E5を代入すると
【0100】
Rb+Rc+Ro=Rb*1E4
Ro>>Rb+Rcから
【0101】
Ro=Rb*1E4
被帯電体体積抵抗率を1E12Ω・cm(暗抵抗)、厚さ50μmとして
【0102】
Rb=5E6Ω・cm(厚さ1mm程度)
【0103】
CNTの生成方法には、先に述べたように、アーク放電方法、CVD方法、レーザーアブレーション方法などが考案されている。今回はアーク放電方法で作成されたCNTを用いた(多層カーボンナノチューブBU201(Bucky USA製))。入手したCNTはカーボンブラックとほぼ同様の粉末状であるから、これを樹脂に混入し、撹拌する。このあと、先ほどの低抵抗シリコーンローラーの表面に、ディッピング法によって厚さは1mmの膜を形成する。
次に、このように樹脂に分散されたCNTを表面から突出させる。その方法としてアッシング方法や研磨などによる方法などが考案されている。今回は研磨による方法を選択した。研磨にはシリカの研磨粒子を用いた。樹脂の表面粗さがμmオーダーになるように研磨を施す。これによって、CNTは1μm程度の長さで突出する。そのCNTの突出密度は、先に樹脂に分散した量により、1本/μm2 程度となることを確認した。CNT1本につき、破壊電流が1E−12Aという結果が報告されており、本実施例では電流破壊が発生しないように、CNTの本数を制御した。
また、樹脂の表面粗さをμmオーダーにすること、被帯電体とのギャップ領域が形成されることが必要で、このギャップ領域において、非接触の帯電が施される。
【0104】
(2)クリーナー
ローラー帯電器1には、図1に示すように研磨工程を行えるクリーナー2が設置されている。クリーナー2の役割はローラー帯電器1の表面を常に研磨し、表面を適当なラフネスに維持し、かつ表面から新鮮なCNTを突出させるようにすることである。このため、先に述べた研磨工程をこのクリーナー2で施せるようにする。
クリーナー2には、機械強度が高く、常に適当な突起状態を維持できる部材を用いる。その用途には、Al、SUS、Feなどの金属または合金か、もしくはアクリルやエポキシなど機械強度な高い樹脂、シリカやガラスその他の酸化物など無機物が適している。今回はSUSを用いた。このクリーナーもローラー状になっており、SUS表面に帯電器の樹脂が付着した時に取り外せるようにしてある。SUSの表面はμmオーダーのラフネスを設けており、このSUSが帯電器とは異なる回転スピードで接触することで、帯電器ローラー表面を研磨する。押し圧を調節することで、その削れ量を制御でき、ローラーの厚さが1mm程度であるから、500k枚程度の寿命を持たせるために、1mm/回転程度になるように調節する。
【0105】
(3)被帯電体(感光体)
感光体3は、図5に示すように表面から表面保護層31、電荷輸送層32、電荷発生層33、下引き層34及び基体35からなる。以下に順に説明する。
▲1▼表面保護層
透明で機械強度の高いものを利用する。材料としては、市販のポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、アクリル、エポキシ、シリコーン、アルキド、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の樹脂を用いることができる。さらに強度および分散性を向上させるための検討を行なった結果、アクリロイル基を1分子中に3個以上もった光硬化型アクリル系モノマー中に導電性粒子を分散させ、これを感光体3の感光層上に塗布、光硬化させることによって形成した表面層を用いることで、膜強度が飛躍的に向上した。
【0106】
▲2▼電荷輸送層
本実施例の電荷輸送層32には、従来から用いられているホール輸送用の材料を用いた。電荷輸送剤としては、オキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、オキサゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、ジフェニルメタン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン誘導体などが用いられる。バインダーとしてはポリカーボネイト樹脂、ポリエステル樹脂を利用した。移動剤の濃度は50%程度とした。膜厚は20μm程度でディッピングコーティング法によって形成した。
【0107】
▲3▼電荷発生層
この層は従来のデジタル用に用いられてきた長波長(780nm)のものを用いた。CGMとして、スクエアリリウム色素、無金属フタロシアニン系、金属フタロシアニン系、アズレニウム塩色素、チアピリリウム塩や多環キノン系、ペリレン系またはアゾ顔料系およびアゾ顔料等である。これらをポリビニルブチラール樹脂などのバインダー材料に入れた。膜厚は1μmから10μm程度で、スプレー塗工によって形成した。
【0108】
▲4▼下引き層
下引き層34には、感光体3の帯電性を改善し、また、基体35に対する感光層の接着性や塗布性を向上させることを目的としている。用いられる材料としては、例えば、単層構成ではポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステル、メラニン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリイミドなどの樹脂、またはそれらの共重合体などが挙げられる。また、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよびエチルセルロースなども用いられる。また、Ag、Cu、Ni、Au、Biなどの金属やカーボンで実現される導電性粒子を接着剤に分散させた膜も有効である。酸化スズ又はアルミナによって表面処理された酸化チタンを含有する層も有効である。また、アルミナで被覆された酸化チタン微粒子やチタネート系カップリング剤によって表面処理された酸化チタン、シラン化合物、フッ素含有シラン化合物によって表面処理された金属酸化物粒子を接着剤に分散した層などが用いられる。
【0109】
▲5▼基体
基体35は導電性があり、機械強度が高く、製造コストが低く、膜の密着性が良いなどの特性を有するものが良い。そこで、一般的な金属が用いられ、例えば、Al、SUS、Fe、Ni、Cu、Mg、Agなどが挙げられるが、今回はAlを用いた。また、アクリル等の絶縁性材料の上に金属膜を形成することによって代替品として用いることもできる。
【0110】
(4)駆動方法
動作方法は通常のローラー帯電器に準ずる。印加する電圧は直流として、その印加電圧は300Vとした。この値により、請求項2のK1条件は満足している。このため、通常の放電は起きることなく、オゾンの発生も防止できている。このことは、オゾン検知機などで調べることができる。感光体の回転速度は60cpmに対応できるように設計した。本実施例では、このスピードでも満足できる帯電能力を得た。
【0111】
実施例2
本実施例では帯電器にブレード形式を採用した。先に述べたように、ローラーに比べ表面で滑ることで、接触面積を増大させることができる。本実施例のブレード形状の帯電器を用いた画像形成装置の構成図を図6に示す。図6で符号1−1はブレード形式の帯電器であり、他の部分の符号3〜9は実施例1で述べた図1に示すローラー形式のものとほぼ同じ構成になっており、その部材も同様で良い。ニップ幅は2mmになる様に設計し、抵抗値、厚み、表面ラフネスなども実施例1に準ずる。ローラーの時と同様にブレード表面にはCNTが突出しているように加工した。
【0112】
実施例3
本実施例では先の帯電器を感光体の帯電だけではなく、転写プロセスにも採用した。転写プロセスでは感光体上に現像された画像を紙上に移動させる。この時、紙の裏面に、トナーが帯電している電極の逆極性電荷を帯電させる。従来のコロナ帯電器に比べ、その帯電エリアを微小にすることができる。今回はニップ幅2mmとして、それ以外の領域では電圧がかからない様にブレード形状にした。そのため、トナーが散乱すること無く、ボケの少ない画像形成ができた。
【0113】
実施例4
本実施例ではブレード形式を採用した。非接触非パッシェン型帯電器におけるギャップ制御を、表面をブラシ状にすることで簡便に実現する。ブラシ表面にはCNTが突出する。ブラシ先端は被帯電体に押し当てられて折れ曲がる。これによって、ブラシ径の10μm程度のギャップをCNTと被帯電体の間に構成することができる。
本実施例の構成の概要図を図7、図9に示す。また、図8に本実施例の帯電器に支持細線と被帯電体との位置関係を示した。図7〜図9において符号1−2は帯電器の基体、符号3は被帯電体、符号14は支持細線(ブラシ)、符号15はCNTである。これらは、先に示した要素を、それぞれ組み合わせることで構成している。製造方法として、CNT15はアーク放電法およびCVD法などで合成できることは先に述べた。今回はアーク放電法によって形成したものを用いた(Bucky−USA製)。これを乳鉢などで適当に粉砕し、先のブラシ素材であるナイロン溶液に混ぜ込ませる。この時にナイロンはドーピングによって抵抗値を制御しておく。
【0114】
CNT15の濃度は10wt%程度になるように混ぜた。これは突出密度とナイロンブラシ強度とのトレードオフによって調節している。このように混ぜ合わせたナイロン樹脂を噴出法によって繊維化する。この時にナイロン繊維の直径は15μm程度に制御した。この後、パイルによってブラシ化する。一本一本のブラシ14は固定布によって、固定化される。この時の密度は120本/mm2 とした。長さは2mm程度とする。
この状態で、ブラシ14を酸素プラズマに暴露する。酸素プラズマはナイロン樹脂を酸化させる。この時、CNT15も若干酸化するが、その速度が大きく異なることで、選択的にエッチングすることができる。このプラズマ暴露を30分ほど施し、ブラシ径を15μmから10μm程度まで細線化する。この時、CNT15がブラシ表面から微小突起として露出することになる。この密度は1本/μm2 程度となる。突出長さは1μm程度である。この後に、このブラシ布を基体1−2に固定することで完成される。
【0115】
【0116】
結果、十分な帯電ができていることは、表面電位計で確認できた。また画像を形成することで、帯電むらなどが無い事も確認できた。
【0117】
実施例5
本実施例では、印加電圧を3ブロックに分けた例である。横から見た構成の概要図を図10に示す。図10において、符号1−3はこの3ブロック帯電器の基体であり、符号3は被帯電体、符号14はブラシ、符号16は抵抗である。
それぞれのブロックの間にはPETフィルムを挟み、それぞれのブロック間での短絡を防いでいる。それぞれの電位を抵抗16を可変することで調整し、−200V、−400V、−500Vとした。これによって、放電することなく帯電することができる。
【0118】
結果、十分な帯電ができていることは、表面電位計で確認できた。また画像を形成することで、帯電むらなどが無い事も確認できた。
【0119】
実施例6
本実施例では、図11に示すようなローラー型とした。図11において、符号1−4は帯電器の基体であり、符号14はブラシ、符号15はCNTである。
この帯電ローラーには先に述べたブラシ布を巻きつけてある。ローラの回転数は被帯電体の回転数の3倍としてその回転方向は逆向きした。これによって60cpmの帯電能力を得た。
【0120】
結果、十分な帯電ができていることは、表面電位計で確認できた。また画像を形成することで、帯電むらなどが無い事も確認できた。
【0121】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の請求項1の発明は、前記帯電器表面に細線を束ねたブラシを形成して凹凸状とし、該ブラシ表面には微小突起としてCNT(カーボンナノチューブ)が突出しており、帯電を少なくとも電界放出現象により行なう。電界放出現象を利用することで、従来のパッシェン則に則った放電のように高い閾値が存在しなくなる。つまり、低電圧での帯電が可能になる。これによって、高電圧による危険性が低減する。また、現像プロセスなどの低電圧が実現した場合、本発明ではそれに則した低い電圧での帯電が可能となる。従来の放電では、いくら低い電位の帯電を施す場合においても、パッシェン則で決められる閾値以上の電圧が必要であった。これにより、本発明では、昇圧装置などの高額な装置を備える必要がなくなり、コスト的にも大きなメリットがある。感光体のダメージの面からも、より低い電圧での帯電が望まれる。本発明は、従来のローラー帯電器に比べ、はるかに低い電圧での帯電が可能なため、感光体へのダメージも低減することができる。
また、帯電器表面に細線を束ねたブラシを形成することによって帯電器表面を凹凸状とすることによって、ブラシの製造方法などを転用して凹凸を作成できる。ブラシの製造は、単なる凹凸を作成する方法に比べ、製造の歴史が長く、技術的に熟達している。したがって、このような方法を転用することで、製造コストを低減することができる。また、ブラシは帯電器などでの応用例もあり、その材質、形状などさまざまな条件を実績の上で選択することができる。また、帯電器表面を前記のように凹凸状にすることで、通常の平板に比べはるかに表面積が大きくなる。この表面積の増大によって、微小突起が形成できる面積が大きくなる。これにより、微小突起の密度を大きくすることなく、微小突起の数を増大することができる。また、凸部で帯電器を支持することで、帯電器表面と被帯電体との距離を適当に保つこともできる。
また、帯電器表面に鋭利な突起物を成形することで、先端に強電界を形成することが可能になる。これにより、電界放出などの現象が起き、電子を空中に放つことが可能になる。この電子が大きな領域でアバランシェを起こすことなく、被帯電体に届くことで、帯電を施すことができる。したがって、放電が安定に発生することなく、オゾンを発生することもない。同時に、十分な帯電能力を得ることもできる。また、微小突起にCNT(カーボンナノチューブ)を用いる。CNTはその形状から非常に細いことが知られている。また、その構造から機械強度が高いと同時に、そのアスペクト比の大きさから十分に撓ることが知られている。また、鋭利に曲がっても、簡単には破断しない事が知られている。作成方法が近年改良され、非常に簡便に作ることができるようになり、他の細線に比べ、容易に入手できるようになった。また、CNTはカーボン単体でできていることから、貴金属でできているウイスカーのような細線に比べ、環境にやさしい。また、構造上、グラファイトを筒状にしていることから、表面にダングリングボンドが存在しない。これによって、化学的に安定であり、酸化物などを表面に形成しない。このような特徴を持っていることから、電界放出素子部材として多くの実施例が報告されており、安定性にも長けている。また、固体潤滑材として用いられるグラファイトの性質を持ちあわせており、潤滑性にも長けている。
なお、微小突起がその大きさがnmオーダーであり、ナノチューブまたはウィスカーから形成されているものとしてもよい。これにより、nmオーダーの構造を低コストで、大量に入手することができる。また、このように形成されたチューブは注文製作で作られることから、目的にかなったものを入手することができる。
【0122】
また、帯電器表面と被帯電体の間に形成される空間の電界K1(x)をx>8μmの範囲でK1(x)<3.5E7(V/m)とするとよい。これにより、通常のパッシェン則に乗っ取った放電は発生しない。通常、放電現象は、電界によって加速された電子が気体分子に衝突し、そこで新たに電荷が発生する。これを繰り返すことによって、なだれ的に電子が増幅される。この加速された気体分子を電離するには12.06eV(酸素分子)以上は必要であるとされている。電子が平均自由行程(0.36μm)の間に、このエネルギー分加速するには、電界として、3.5E7(V/m)以上必要である。つまり、この電界が存在しなければ、放電は発生しない。放電を形成するために必要な条件として、電極間距離がある。ある程度距離がないと電子なだれが十分に発生せず、放電が持続しないとされている。この距離は8μmとされている。つまり、先の条件で、必要な電界が存在していても、その電界が十分な領域において存在していないと、放電は成立しない。以上のことより、上式が成り立つ場合は、放電が発生しない。
【0123】
また、帯電器表面と被帯電体の間に形成される空間の電界K2(x)をx>0.34μmの範囲でK2(x)<1.5E7(V/m)とするとよい。これにより、オゾンなどの発生を低減することができる。従来のローラー帯電器やブレード型帯電器に比べ、低電圧で帯電することで、被帯電体の劣化や、NOx、オゾンなどの不要生成物の発生を抑えることができる。また、電荷注入のように帯電速度が遅いこともなく、接触の不安定性などの要因も払拭することができる。
【0126】
また、帯電器表面が有する凹凸の平均曲率半径Raを10μm以上にするとよい。これにより、10μm程度の異物は表面ラフネスの凹領域に押し込まれることになり、帯電器表面と被帯電体間の空間ギャップが、トナーの混入などによって大きく変動することを防止することができる。
【0128】
本発明の請求項2の発明では、ブラシが可撓性を有し、被帯電体と接触した時に屈曲する。このように、ブラシが被帯電体に接触して屈曲することで、そのブラシ表面から被帯電体までの距離がある程度決定される。つまり、ブラシ径が決まればその程度の距離しか、両者が離れないこととなる。これによって、ギャップの制御が概ね可能になる。さらに、ブラシが接触し、屈曲することで、押し圧による力を適当に調節することができる。この大きさはブラシの材質や太さなどのパラメータを変えることによって、微妙に調節が可能である。
【0131】
また、帯電器表面と被帯電体の間の空間を帯電器および被帯電体の表面ラフネスによって形成するとよい。これにより、微小な位置制御が不要になる。ラフネスによるギャップ制御では、ギャップの狭い領域や広い領域が形成されてしまう可能性がある。しかし、そのようなギャップの幅の異なる領域を、それぞれμmオーダーの大きさに抑えることで、画像を視覚的に認識するマクロ的なオーダーでは、ほぼ同程度の平均電位を得ることができる。これによって、ギャップの相違による帯電電位むらなどの間題を解決することができる。
【0132】
また、帯電器表面と被帯電体とが接触した領域においても、帯電を行うことを特徴としてもよい。帯電器表面を低抵抗に抑えることで、接触領域では電荷注入が起きる。電荷注入では印加電圧に対し、ほぼ100%の帯電電位を得ることができる。これにより、非接触領域では電界放出(または非パッシェン放電)によって帯電し、接触領域では電荷注入が起き、全体としては過不足なく、均一な帯電が可能になる。
【0133】
また、被帯電体の表面抵抗を帯電器の表面部材の表面抵抗値以上にするとよい。これによって、ピンホール部に対する電荷集中が起きたとしても、最低限、他の領域にも電荷が供給できる。これは電圧分配の簡単な式から計算できる。
【0134】
また、帯電器の表面部材の抵抗と、帯電器と被帯電体との接触抵抗の和との間に所定の関係が成り立つようにするとよい。これらの抵抗値をこのように設定することで、帯電スピードに対し十分な帯電能力を持つことができる。
【0135】
また、帯電器表面部材の摩耗速度が被帯電体表面の摩耗速度よりも速いことを特徴とするとよい。摩擦による摩耗はその機械強度の大小関係によって、そのどちらが支配的に削れるかで決まる。したがって、被帯電体に比べ帯電器表面の機械強度を小さくすることで、帯電器の方が削れることになる。帯電器は表面になる部材を厚く設計することで、多少削れても影響を少なくすることができる。
【0136】
本発明の請求項3の発明では、帯電器の前記ブラシが被帯電体表面を摺動することで、帯電むらを低減した帯電器を提供する事ができる。
【0137】
本発明の請求項4の発明は、帯電器の形状をブレード型にする。ブレード型にすることで、帯電器表面が被帯電体表面を滑ることになる。これによって、被帯電体表面の任意の点は帯電器表面の複数領域と接触することになる。つまり、従来のローラー型では、帯電器側の任意の点は、その点と同等の大きさの領域としか接触しない。それに対し、ブレード型にして、表面を滑らせることで、任意の点が接触する領域は大きく広がる。これによって、その表面ラフネスで接触領域、非接触領域を形成しても、表面を滑ることで、それぞれの領域が交互に入れ替わり均一帯電が可能になる。
【0138】
本発明の請求項5の発明は、前記ブレード型の帯電器を複数のブロックで形成し、印加電圧を複数の電圧段階となるように各ブロックに分けて印加する。このように電圧を複数段階に分けたことで、それぞれの領域での電位差を小さくすることができる。例えば、500V印加する場合でも、100V、200V、300V、400V、500Vとそれぞれ5つのブロックに分ける。このことによって、それぞれのブロックでそれぞれの電位まで被帯電体の電位が上昇する。電位が上昇してから、次のブロックに移ることになるので、そのブロックでの被帯電体と帯電器との電位差は100Vである。放電現象はパッシェンの法則によって理解されており、その放電現象には閾値電圧が存在し、それは350V程度である。つまり、その電位差が閾値を超えないことで放電の発生を防止することができる。
【0139】
また、帯電器の形状をローラー型にし、帯電器表面を研磨するクリーナーを備えるようにするとよい。帯電器をローラー型にすることで被帯電体と接触している部分とそれ以外の部分とが形成でき、その両部分が回転することで相互に入れ替わることになる。これにより、被帯電体と接していない部分ではクリーニングを行うことができる。このクリーンニング工程は簡便なブレード型のクリーナーで十分にその効果を発揮することができる。また、これと同時にクリーナーによって帯電器表面を研磨することもできる。ローラー帯電器の表面はCNTが表面に突出しているが、この製造工程は先に述べたように研磨工程によって行っている。この研磨工程を帯電プロセス内に組み込むことで、常に帯電器表面を研磨し、新鮮な表面を作ることができ、絶えずCNTを突出させることができる。これによって、動作によるCNTの劣化などを防ぐことができる。また、ローラの厚みに余裕を持たせた設計をすることで、長寿命に耐えうる。さらに、従来のローラー型のように被帯電体と同一スピードで回転させるのでなく、回転スピードを違え、相互の表面を滑らせることで、ブレード型と同様の効果を得ることができる。これによって、通常のローラー帯電器での不具合である、接触面積の不足を補うことができ、帯電むらなどの不具合の問題も解消することができる。
【0140】
本発明の請求項6の発明は、画像形成装置において、以上に述べた本発明の帯電器を、帯電・転写・除電などの静電気を用いる電子写真プロセスの少なくとも一個所に用いる。これにより、画像形成装置をトータルで考えた場合においても、帯電で起きる不具合を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の帯電器の一実施例を用いた画像形成装置の構成図。
【図2】パッシェン則に基づく被帯電体の表面帯電電位と印加電圧の関係を示す図。
【図3】被帯電体にピンホールがある場合の等価回路。
【図4】図1の実施例での帯電ローラーの構成図。
【図5】被帯電体である感光体の構成図。
【図6】本発明の帯電器の他の実施例を用いた画像形成装置の構成図。
【図7】本発明の帯電器のさらに他の実施例の構成図。
【図8】図7に示す実施例の支持細線と被帯電体との位置関係を示す図。
【図9】図7に示す実施例の構成図。
【図10】本発明の帯電器のさらに他の実施例の構成図。
【図11】本発明の帯電器のさらに他の実施例の構成図。
【図12】表面凹凸構造のイメージを示す図。
【図13】表面凹凸構造をブラシで実現した場合のイメージを示す図。
【図14】請求項2,3の発明の概要を示す電界強度概念図。
【符号の説明】
1、1−1、1−2、1−3、1−4 帯電器
2 クリーナー
3 被帯電体
4 電圧印加工程
5 露光工程
6 現像工程
7 転写工程
8 定着工程
9 光照射工程
11 導電性基体
12 導電性弾性体
13 CNT含有中抵抗層
14 ブラシ(支持細線)
15 CNT
16 抵抗
31 保護層
32 電荷輸送層
33 電荷発生層
34 下引き層
35 基体
Claims (6)
- 帯電器表面と被帯電体の間に少なくとも空間を設け、この帯電器表面と被帯電体との間に電圧を印加して、前記被帯電体を帯電し電荷を授受する帯電器において、
前記帯電器表面に細線を束ねたブラシを形成して凹凸状とし、該ブラシ表面には微小突起としてCNT(カーボンナノチューブ)が突出しており、
帯電が少なくとも電界放出現象により行なわれることを特徴とする帯電器。 - 前記ブラシは可撓性を有し、前記被帯電体と接触した時、屈曲することを特徴とする請求項1に記載の帯電器。
- 帯電器の前記ブラシが被帯電体表面に対して摺動することを特徴とする請求項1ないし請求項2のいずれかに記載の帯電器。
- 帯電器の形状をブレード型とすることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の帯電器。
- 前記ブレード型の帯電器を複数のブロックで形成し、印加電圧を複数の電圧段階となるように各ブロックに分けて印加することを特徴とする請求項4に記載の帯電器。
- 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の帯電器を、帯電・転写・除電などの静電気を用いる電子写真プロセスの少なくとも一個所に用いたことを特徴とする画像形成装置。
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