以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
(実施例1)
図1は、本発明に従って作製した実施例1による光起電力装置の構造を示した断面図である。図1を参照して、まず、本発明に従って作製した実施例1による光起電力装置の構造について説明する。
実施例1による光起電力装置では、図1に示すように、0.15mmの厚みを有する平坦なステンレス板(SUS430)1a上に、20μmの厚みを有するポリイミド樹脂1bが形成されている。このステンレス板1aとポリイミド樹脂1bとによって、基板1が構成されている。基板1(ポリイミド樹脂1b)上には、200nmの厚みを有するAg(銀)からなる平坦な裏面電極2が形成されている。
裏面電極2上には、50nmの厚みを有するn型微結晶シリコン層からなるn型層3が形成されている。n型層3上には、2μmの厚みを有するノンドープ微結晶シリコン層からなる光電変換層4が形成されている。光電変換層4上には、20nmの厚みを有するp型微結晶シリコン層からなるp型層5が形成されている。そして、n型層3、光電変換層4およびp型層5によって、発電ユニットが構成されている。なお、n型層3、光電変換層4およびp型層5は、それぞれ、本発明の「第1非単結晶半導体層」、「第2非単結晶半導体層」および「第3非単結晶半導体層」の一例である。
ここで、実施例1では、n型層3およびp型層5と、光電変換層4とは、互いに異なる優先結晶配向面を有している。具体的には、n型層3およびp型層5は、(111)面の優先結晶配向を有するとともに、光電変換層4は、(220)面の優先結晶配向を有している。また、n型層3およびp型層5は、ピラミッド状(四角錐状)の凹凸形状の表面を有する一方、光電変換層4は、実質的に平坦な形状に近い緩やかな凹凸形状の表面を有している。
また、p型層5上には、80nmの厚みを有するITO(酸化インジウム錫)からなる表面透明電極6が形成されている。表面透明電極6上の所定領域には、2μmの厚みを有するAgからなる集電極7が形成されている。
次に、上記した実施例1による光起電力装置を実際に作製した際の作製プロセスについて説明する。
[光起電力装置の作製]
まず、図1に示すように、0.15mmの厚みを有する平坦なステンレス板1a上に、20μmの厚みを有するポリイミド樹脂1bを蒸着重合することによって、ステンレス板1aとポリイミド樹脂1bとによって構成される基板1を作製した。この後、RFマグネトロンスパッタリング法を用いて、基板1(ポリイミド樹脂1b)上に、200nmの厚みを有するAgからなる平坦な裏面電極2を形成した。
次に、プラズマCVD法を用いて、裏面電極2上に、発電ユニットを構成する微結晶半導体各層を順次形成した。具体的には、n型微結晶シリコン層からなるn型層3、ノンドープ微結晶シリコン層からなる光電変換層4およびp型微結晶シリコン層からなるp型層5を順次形成した。なお、n型層3、光電変換層4およびp型層5は、それぞれ、50nm、2μmおよび20nmの厚みを有するように形成した。
ここで、実施例1では、n型層3およびp型層5が(111)面の優先結晶配向を有するように、かつ、光電変換層4が(220)面の優先結晶配向を有するように、以下の表1に示す条件下で作製した。
上記表1を参照して、実施例1では、n型層3を形成する際に、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、160℃、133Paおよび300Wに設定した。また、n型層3を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:15sccm、H2ガス:2000sccmおよびPH3ガス:3sccmに設定した。
また、光電変換層4を形成する際には、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、200℃、133Paおよび30Wに設定した。また、光電変換層4を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:20sccmおよびH2ガス:400sccmに設定した。
また、p型層5を形成する際には、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、160℃、133Paおよび240Wに設定した。また、p型層5を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:10sccm、H2ガス:2000sccmおよびB2H6ガス:0.2sccmに設定した。
次に、上記表1に示した条件下で作製したn型層3、光電変換層4およびp型層5のそれぞれのX線回折ピークの強度を測定した。図2は、図1に示した実施例1による光起電力装置のn型層、光電変換層およびp型層のそれぞれのX線回折ピークの強度を示したグラフである。
図2を参照して、実施例1では、n型層3およびp型層5は、ほぼ同様のX線回折スペクトルを有し、n型層3およびp型層5の(111)回折ピークの強度は、(220)回折ピークの強度よりも高いことが判明した。また、光電変換層4の(220)回折ピークの強度は、(111)回折ピークの強度よりも高いことが判明した。すなわち、実施例1では、n型層3およびp型層5は、(111)面の優先結晶配向を有するとともに、光電変換層4は、(220)面の優先結晶配向を有することを確認することができた。
ここで、(111)面の優先結晶配向を有するように微結晶シリコン層を形成した場合、微結晶シリコン層の表面は、ピラミッド状の凹凸形状になりやすいことが知られている。その一方、(220)面の優先結晶配向を有するように微結晶シリコン層を形成した場合、微結晶シリコン層の表面は、平坦な形状になりやすいことが知られている。
これにより、実施例1では、図1に示したように、n型層3およびp型層5の表面が、ピラミッド状の凹凸形状になったと考えられる一方、光電変換層4の表面が、実質的に平坦な形状に近づいたと考えられる。
次に、RFマグネトロンスパッタリング法を用いて、p型層5上に、80nmの厚みを有するITOからなる表面透明電極6を形成した。この後、真空蒸着法を用いて、表面透明電極6上の所定領域に、2μmの厚みを有するAgからなる集電極7を形成することによって、図1に示した実施例1による光起電力装置を作製した。
(参考例1)
図3は、本発明に従って作製した参考例1による光起電力装置の構造を示した断面図である。図3を参照して、まず、本発明に従って作製した参考例1による光起電力装置の構造について説明する。
この参考例1による光起電力装置では、図3に示すように、上記実施例1と同様、ステンレス板1aとポリイミド樹脂1bとによって構成される基板1上に、裏面電極2が形成されている。裏面電極2上には、50nmの厚みを有するn型微結晶シリコン層からなるn型層13が形成されている。n型層13上には、2μmの厚みを有するノンドープ微結晶シリコン層からなる光電変換層14が形成されている。光電変換層14上には、20nmの厚みを有するp型微結晶シリコン層からなるp型層15が形成されている。そして、n型層13、光電変換層14およびp型層15によって、発電ユニットが構成されている。なお、n型層13、光電変換層14およびp型層15は、それぞれ、本発明の「第1非単結晶半導体層」、「第2非単結晶半導体層」および「第3非単結晶半導体層」の一例である。
ここで、参考例1では、上記実施例1と同様、n型層13およびp型層15と、光電変換層14とは、互いに異なる優先結晶配向面を有している。ただし、この参考例1では、n型層13およびp型層15は、(220)面の優先結晶配向を有するとともに、光電変換層14は、(111)面の優先結晶配向を有している。また、n型層13およびp型層15は、実質的に平坦な形状に近い緩やかな凹凸形状の表面を有する一方、光電変換層14は、ピラミッド状の凹凸形状の表面を有している。
また、p型層15上には、80nmの厚みを有するITOからなる表面透明電極16が形成されている。表面透明電極16上の所定領域には、2μmの厚みを有するAgからなる集電極17が形成されている。
次に、上記した参考例1による光起電力装置を実際に作製した際の作製プロセスについて説明する。
[光起電力装置の作製]
まず、図3に示すように、上記実施例1と同様、ステンレス板1aとポリイミド樹脂1bとによって構成される基板1上に、裏面電極2を形成した。
次に、上記実施例1と同様、CVD法を用いて、裏面電極2上に、発電ユニットを構成する微結晶半導体各層を順次形成した。具体的には、n型微結晶シリコン層からなるn型層13、ノンドープ微結晶シリコン層からなる光電変換層14およびp型微結晶シリコン層からなるp型層15を順次形成した。なお、n型層13、光電変換層14およびp型層15は、それぞれ、50nm、2μmおよび20nmの厚みを有するように形成した。
ここで、参考例1では、n型層13およびp型層15が(220)面の優先結晶配向を有するように、かつ、光電変換層14が(111)面の優先結晶配向を有するように、以下の表2に示す条件下で作製した。
上記表2を参照して、
参考例1では、n型層13を形成する際に、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、160℃、133Paおよび100Wに設定した。また、n型層13を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:2sccm、H2ガス:200sccmおよびPH3ガス:0.2sccmに設定した。
また、光電変換層14を形成する際には、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、200℃、80Paおよび400Wに設定した。また、光電変換層14を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:50sccmおよびH2ガス:2000sccmに設定した。
また、p型層15を形成する際には、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、160℃、133Paおよび60Wに設定した。また、p型層15を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:2sccm、H2ガス:300sccmおよびB2H6ガス:0.2sccmに設定した。
次に、上記表2に示した条件下で作製したn型層13、光電変換層14およびp型層15のそれぞれのX線回折ピークの強度を測定した。図4は、図3に示した参考例1による光起電力装置のn型層、光電変換層およびp型層のそれぞれのX線回折ピークの強度を示したグラフである。
図4を参照して、参考例1では、n型層13およびp型層15は、ほぼ同様のX線回折スペクトルを有し、n型層13およびp型層15の(220)回折ピークの強度は、(111)回折ピークの強度よりも高いことが判明した。また、光電変換層14の(111)回折ピークの強度は、(220)回折ピークの強度よりも高いことが判明した。すなわち、参考例1では、n型層13およびp型層15は、(220)面の優先結晶配向を有するとともに、光電変換層14は、(111)面の優先結晶配向を有することを確認することができた。これにより、参考例1では、図3に示したように、n型層13およびp型層15の表面が、緩やかな凹凸形状になり、実質的に平坦な形状に近づいたと考えられる一方、光電変換層14の表面が、ピラミッド状の凹凸形状になったと考えられる。
次に、上記実施例1と同様、RFマグネトロンスパッタリング法を用いて、p型層15上に、80nmの厚みを有するITOからなる表面透明電極16を形成した。また、真空蒸着法を用いて、表面透明電極16上の所定領域に、2μmの厚みを有するAgからなる集電極17を形成した。このようにして、図3に示した参考例1による光起電力装置を作製した。
(実施例2)
図5は、本発明に従って作製した実施例2による光起電力装置の構造を示した断面図である。図5を参照して、この実施例2では、上記実施例1および参考例1と異なり、n型層を(111)面の優先結晶配向を有するように形成するとともに、光電変換層およびp型層を(220)面の優先結晶配向を有するように形成した例について説明する。
この実施例2による光起電力装置では、図5に示すように、上記実施例1と同様、ステンレス板1aとポリイミド樹脂1bとによって構成される基板1上に、裏面電極2が形成されている。裏面電極2上には、50nmの厚みを有するn型微結晶シリコン層からなるn型層43が形成されている。n型層43上には、2μmの厚みを有するノンドープ微結晶シリコン層からなる光電変換層44が形成されている。光電変換層44上には、20nmの厚みを有するp型微結晶シリコン層からなるp型層45が形成されている。そして、n型層43、光電変換層44およびp型層45によって、発電ユニットが構成されている。なお、n型層43、光電変換層44およびp型層45は、それぞれ、本発明の「第1非単結晶半導体層」、「第2非単結晶半導体層」および「第3非単結晶半導体層」の一例である。
ここで、実施例2では、n型層43は、光電変換層44と異なる優先結晶配向面を有するとともに、p型層45は、光電変換層44と同じ優先結晶配向面を有している。具体的には、n型層43は、(111)面の優先結晶配向を有するとともに、光電変換層44およびp型層45は、(220)面の優先結晶配向を有している。また、n型層43は、ピラミッド状の凹凸形状の表面を有する一方、光電変換層44およびp型層45は、実質的に平坦な形状に近い緩やかな凹凸形状の表面を有している。
また、p型層45上には,80nmの厚みを有するITOからなる表面透明電極46が形成されている。表面透明電極46上の所定領域には、2μmの厚みを有するAgからなる集電極47が形成されている。
次に、上記した実施例2による光起電力装置を実際に作製した際の作製プロセスについて説明する。
[光起電力装置の作製]
まず、図5に示すように、上記実施例1と同様、ステンレス板1aとポリイミド樹脂1bとによって構成される基板1上に、裏面電極2を形成した。
次に、上記実施例1と同様、CVD法を用いて、裏面電極2上に、発電ユニットを構成する微結晶半導体各層を順次形成した。具体的には、n型微結晶シリコン層からなるn型層43、ノンドープ微結晶シリコン層からなる光電変換層44およびp型微結晶シリコン層からなるp型層45を順次形成した。なお、n型層43、光電変換層44およびp型層45は、それぞれ、50nm、2μmおよび20nmの厚みを有するように形成した。
ここで、実施例2では、n型層43が(111)面の優先結晶配向を有するように、かつ、光電変換層44およびp型層45が(220)面の優先結晶配向を有するように、以下の表3に示す条件下で作製した。
上記表3を参照して、
実施例2では、n型層43を形成する際に、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、160℃、133Paおよび100Wに設定した。また、n型層43を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:3sccm、H2ガス:200sccmおよびPH3ガス:0.6sccmに設定した。
また、光電変換層44を形成する際には、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、200℃、133Paおよび30Wに設定した。また、光電変換層44を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:20sccmおよびH2ガス:400sccmに設定した。
また、p型層45を形成する際には、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、160℃、133Paおよび60Wに設定した。また、p型層45を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:2sccm、H2ガス:150sccmおよびB2H6ガス:0.2sccmに設定した。
次に、上記表3に示した条件下で作製したn型層43、光電変換層44およびp型層45のそれぞれのX線回折ピークの強度を測定した。図6は、図5に示した実施例2による光起電力装置のn型層、光電変換層およびp型層のそれぞれのX線回折ピークの強度を示したグラフである。
図6を参照して、実施例2では、n型層43の(111)回折ピークの強度は、(220)回折ピークの強度よりも高いことが判明した。また、光電変換層44およびp型層45の(220)回折ピークの強度は、(111)回折ピークの強度よりも高いことが判明した。すなわち、実施例2では、n型層43は、(111)面の優先結晶配向を有するとともに、光電変換層44およびp型層45は、(220)面の優先結晶配向を有することを確認することができた。これにより、実施例2では、図5に示したように、n型層43の表面が、ピラミッド状の凹凸形状になったと考えられる一方、光電変換層44およびp型層45の表面が、緩やかな凹凸形状になり、実質的に平坦な形状に近づいたと考えられる。
次に、上記実施例1と同様、RFマグネトロンスパッタリング法を用いて、p型層45上に、80nmの厚みを有するITOからなる表面透明電極46を形成した。また、真空蒸着法を用いて、表面透明電極46上の所定領域に、2μmの厚みを有するAgからなる集電極47を形成した。このようにして、図5に示した実施例2による光起電力装置を作製した。
(参考例2)
図7は、本発明に従って作製した参考例2による光起電力装置の構造を示した断面図である。図7を参照して、この参考例2では、上記実施例2と異なり、n型層および光電変換層を(111)面の優先結晶配向を有するように形成するとともに、p型層を(220)面の優先結晶配向を有するように形成した例について説明する。
この参考例2による光起電力装置では、図7に示すように、上記実施例1と同様、ステンレス板1aとポリイミド樹脂1bとによって構成される基板1上に、裏面電極2が形成されている。裏面電極2上には、50nmの厚みを有するn型微結晶シリコン層からなるn型層53が形成されている。n型層53上には、2μmの厚みを有するノンドープ微結晶シリコン層からなる光電変換層54が形成されている。光電変換層54上には、20nmの厚みを有するp型微結晶シリコン層からなるp型層55が形成されている。そして、n型層53、光電変換層54およびp型層55によって、発電ユニットが構成されている。なお、n型層53、光電変換層54およびp型層55は、それぞれ、本発明の「第1非単結晶半導体層」、「第2非単結晶半導体層」および「第3非単結晶半導体層」の一例である。
ここで、参考例2では、n型層53は、光電変換層54と同じ優先結晶配向面を有するとともに、p型層55は、光電変換層54と異なる優先結晶配向面を有している。具体的には、n型層53および光電変換層54は、(111)面の優先結晶配向を有するとともに、p型層55は、(220)面の優先結晶配向を有している。また、n型層53および光電変換層54は、ピラミッド状の凹凸形状の表面を有する一方、p型層55は、実質的に平坦な形状に近い緩やかな凹凸形状の表面を有している。
また、p型層55上には、80nmの厚みを有するITOからなる表面透明電極56が形成されている。表面透明電極56上の所定領域には、2μmの厚みを有するAgからなる集電極57が形成されている。
次に、上記した参考例2による光起電力装置を実際に作製した際の作製プロセスについて説明する。
[光起電力装置の作製]
まず、図7に示すように、上記実施例1と同様、ステンレス板1aとポリイミド樹脂1bとによって構成される基板1上に、裏面電極2を形成した。
次に、上記実施例1と同様、CVD法を用いて、裏面電極2上に、発電ユニットを構成する微結晶半導体各層を順次形成した。具体的には、n型微結晶シリコン層からなるn型層53、ノンドープ微結晶シリコン層からなる光電変換層54およびp型微結晶シリコン層からなるp型層55を順次形成した。なお、n型層53、光電変換層54およびp型層55は、それぞれ、50nm、2μmおよび20nmの厚みを有するように形成した。
ここで、参考例2では、n型層53および光電変換層54が(111)面の優先結晶配向を有するように、かつ、p型層55が(220)面の優先結晶配向を有するように、以下の表4に示す条件下で作製した。
上記表4を参照して、
参考例2では、n型層53を形成する際に、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、160℃、133Paおよび100Wに設定した。また、n型層53を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:3sccm、H2ガス:200sccmおよびPH3ガス:0.6sccmに設定した。
また、光電変換層54を形成する際には、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、200℃、80Paおよび400Wに設定した。また、光電変換層54を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:50sccmおよびH2ガス:2000sccmに設定した。
また、p型層55を形成する際には、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、160℃、133Paおよび60Wに設定した。また、p型層55を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:2sccm、H2ガス:150sccmおよびB2H6ガス:0.2sccmに設定した。
次に、上記表4に示した条件下で作製したn型層53、光電変換層54およびp型層55のそれぞれのX線回折ピークの強度を測定した。図8は、図7に示した参考例2による光起電力装置のn型層、光電変換層およびp型層のそれぞれのX線回折ピークの強度を示したグラフである。
図8を参照して、参考例2では、n型層53および光電変換層54の(111)回折ピークの強度は、(220)回折ピークの強度よりも高いことが判明した。また、p型層55の(220)回折ピークの強度は、(111)回折ピークの強度よりも高いことが判明した。すなわち、参考例2では、n型層53および光電変換層54は、(111)面の優先結晶配向を有するとともに、p型層55は、(220)面の優先結晶配向を有することを確認することができた。これにより、参考例2では、図7に示したように、n型層53および光電変換層54の表面が、ピラミッド状の凹凸形状になったと考えられる一方、p型層55の表面が、緩やかな凹凸形状になり、実質的に平坦な形状に近づいたと考えられる。
次に、上記実施例1と同様、RFマグネトロンスパッタリング法を用いて、p型層55上に、80nmの厚みを有するITOからなる表面透明電極56を形成した。また、真空蒸着法を用いて、表面透明電極56上の所定領域に、2μmの厚みを有するAgからなる集電極57を形成した。このようにして、図7に示した参考例2による光起電力装置を作製した。
(参考例3)
図9は、本発明に従って作製した参考例3による光起電力装置の構造を示した断面図である。図9を参照して、この参考例3では、上記実施例2および参考例2と異なり、n型層を(220)面の優先結晶配向を有するように形成するとともに、光電変換層およびp型層を(111)面の優先結晶配向を有するように形成した例について説明する。
この参考例3による光起電力装置では、図9に示すように、上記実施例1と同様、ステンレス板1aとポリイミド樹脂1bとによって構成される基板1上に、裏面電極2が形成されている。裏面電極2上には、50nmの厚みを有するn型微結晶シリコン層からなるn型層63が形成されている。n型層63上には、2μmの厚みを有するノンドープ微結晶シリコン層からなる光電変換層64が形成されている。光電変換層64上には、20nmの厚みを有するp型微結晶シリコン層からなるp型層65が形成されている。そして、n型層63、光電変換層64およびp型層65によって、発電ユニットが構成されている。なお、n型層63、光電変換層64およびp型層65は、それぞれ、本発明の「第1非単結晶半導体層」、「第2非単結晶半導体層」および「第3非単結晶半導体層」の一例である。
ここで、参考例3では、n型層63は、光電変換層64と異なる優先結晶配向面を有するとともに、p型層65は、光電変換層64と同じ優先結晶配向面を有している。具体的には、n型層63は、(220)面の優先結晶配向を有するとともに、光電変換層64およびp型層65は、(111)面の優先結晶配向を有している。また、n型層63は、実質的に平坦な形状に近い緩やかな凹凸形状の表面を有する一方、光電変換層64およびp型層65は、ピラミッド状の凹凸形状の表面を有している。
また、p型層65上には、80nmの厚みを有するITOからなる表面透明電極66が形成されている。表面透明電極66上の所定領域には、2μmの厚みを有するAgからなる集電極67が形成されている。
次に、上記した参考例3による光起電力装置を実際に作製した際の作製プロセスについて説明する。
[光起電力装置の作製]
まず、図9に示すように、上記実施例1と同様、ステンレス板1aとポリイミド樹脂1bとによって構成される基板1上に、裏面電極2を形成した。
次に、上記実施例1と同様、CVD法を用いて、裏面電極2上に、発電ユニットを構成する微結晶半導体各層を順次形成した。具体的には、n型微結晶シリコン層からなるn型層63、ノンドープ微結晶シリコン層からなる光電変換層64およびp型微結晶シリコン層からなるp型層65を順次形成した。なお、n型層63、光電変換層64およびp型層65は、それぞれ、50nm、2μmおよび20nmの厚みを有するように形成した。
ここで、参考例3では、n型層63が(220)面の優先結晶配向を有するように、かつ、光電変換層64およびp型層65が(111)面の優先結晶配向を有するように、以下の表5に示す条件下で作製した。
上記表5を参照して、
参考例3では、n型層63を形成する際に、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、160℃、133Paおよび100Wに設定した。また、n型層63を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:2sccm、H2ガス:200sccmおよびPH3ガス:0.2sccmに設定した。
また、光電変換層64を形成する際には、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、200℃、80Paおよび400Wに設定した。また、光電変換層64を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:50sccmおよびH2ガス:2000sccmに設定した。
また、p型層65を形成する際には、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、160℃、133Paおよび240Wに設定した。また、p型層65を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:10sccm、H2ガス:2000sccmおよびB2H6ガス:0.2sccmに設定した。
次に、上記表5に示した条件下で作製したn型層63、光電変換層64およびp型層65のそれぞれのX線回折ピークの強度を測定した。図10は、図9に示した参考例3による光起電力装置のn型層、光電変換層およびp型層のそれぞれのX線回折ピークの強度を示したグラフである。
図10を参照して、参考例3では、n型層63の(220)回折ピークの強度は、(111)回折ピークの強度よりも高いことが判明した。また、光電変換層64およびp型層65の(111)回折ピークの強度は、(220)回折ピークの強度よりも高いことが判明した。すなわち、参考例3では、n型層63は、(220)面の優先結晶配向を有するとともに、光電変換層64およびp型層65は、(111)面の優先結晶配向を有することを確認することができた。これにより、参考例3では、図9に示したように、n型層63の表面が、緩やかな凹凸形状になり、実質的に平坦な形状に近づいたと考えられる一方、光電変換層64およびp型層65の表面が、ピラミッド状の凹凸形状になったと考えられる。
次に、上記実施例1と同様、RFマグネトロンスパッタリング法を用いて、p型層65上に、80nmの厚みを有するITOからなる表面透明電極66を形成した。また、真空蒸着法を用いて、表面透明電極66上の所定領域に、2μmの厚みを有するAgからなる集電極67を形成した。このようにして、図9に示した参考例3による光起電力装置を作製した。
(実施例3)
図11は、本発明に従って作製した実施例3による光起電力装置の構造を示した断面図である。図11を参照して、この実施例3では、上記実施例2、参考例1〜3と異なり、n型層および光電変換層を(220)面の優先結晶配向を有するように形成するとともに、p型層を(111)面の優先結晶配向を有するように形成した例について説明する。
この実施例3による光起電力装置では、図11に示すように、上記実施例1と同様、ステンレス板1aとポリイミド樹脂1bとによって構成される基板1上に、裏面電極2が形成されている。裏面電極2上には、50nmの厚みを有するn型微結晶シリコン層からなるn型層73が形成されている。n型層73上には、2μmの厚みを有するノンドープ微結晶シリコン層からなる光電変換層74が形成されている。光電変換層74上には、20nmの厚みを有するp型微結晶シリコン層からなるp型層75が形成されている。そして、n型層73、光電変換層74およびp型層75によって、発電ユニットが構成されている。なお、n型層73、光電変換層74およびp型層75は、それぞれ、本発明の「第1非単結晶半導体層」、「第2非単結晶半導体層」および「第3非単結晶半導体層」の一例である。
ここで、実施例3では、n型層73は、光電変換層74と同じ優先結晶配向面を有するとともに、p型層75は、光電変換層74と異なる優先結晶配向面を有している。具体的には、n型層73および光電変換層74は、(220)面の優先結晶配向を有するとともに、p型層75は、(111)面の優先結晶配向を有している。また、n型層73および光電変換層74は、実質的に平坦な形状に近い緩やかな凹凸形状の表面を有する一方、p型層75は、ピラミッド状の凹凸形状の表面を有している。
また、p型層75上には、80nmの厚みを有するITOからなる表面透明電極76が形成されている。表面透明電極76上の所定領域には、2μmの厚みを有するAgからなる集電極77が形成されている。
次に、上記した実施例3による光起電力装置を実際に作製した際の作製プロセスについて説明する。
[光起電力装置の作製]
まず、図11に示すように、上記実施例1と同様、ステンレス板1aとポリイミド樹脂1bとによって構成される基板1上に、裏面電極2を形成した。
次に、上記実施例1と同様、CVD法を用いて、裏面電極2上に、発電ユニットを構成する微結晶半導体各層を順次形成した。具体的には、n型微結晶シリコン層からなるn型層73、ノンドープ微結晶シリコン層からなる光電変換層74およびp型微結晶シリコン層からなるp型層75を順次形成した。なお、n型層73、光電変換層74およびp型層75は、それぞれ、50nm、2μmおよび20nmの厚みを有するように形成した。
ここで、実施例3では、n型層73および光電変換層74が(220)面の優先結晶配向を有するように、かつ、p型層75が(111)面の優先結晶配向を有するように、以下の表6に示す条件下で作製した。
上記表6を参照して、
実施例3では、n型層73を形成する際に、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、160℃、133Paおよび100Wに設定した。また、n型層73を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:2sccm、H2ガス:200sccmおよびPH3ガス:0.2sccmに設定した。
また、光電変換層74を形成する際には、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、200℃、133Paおよび30Wに設定した。また、光電変換層74を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:20sccmおよびH2ガス:400sccmに設定した。
また、p型層75を形成する際には、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、160℃、133Paおよび240Wに設定した。また、p型層75を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:10sccm、H2ガス:2000sccmおよびB2H6ガス:0.2sccmに設定した。
次に、上記表6に示した条件下で作製したn型層73、光電変換層74およびp型層75のそれぞれのX線回折ピークの強度を測定した。図12は、図11に示した実施例3による光起電力装置のn型層、光電変換層およびp型層のそれぞれのX線回折ピークの強度を示したグラフである。
図12を参照して、実施例3では、n型層73および光電変換層74の(220)回折ピークの強度は、(111)回折ピークの強度よりも高いことが判明した。また、p型層75の(111)回折ピークの強度は、(220)回折ピークの強度よりも高いことが判明した。すなわち、実施例3では、n型層73および光電変換層74は、(220)面の優先結晶配向を有するとともに、p型層75は、(111)面の優先結晶配向を有することを確認することができた。これにより、実施例3では、図11に示したように、n型層73および光電変換層74の表面が、緩やかな凹凸形状になり、実質的に平坦な形状に近づいたと考えられる一方、p型層75の表面が、ピラミッド状の凹凸形状になったと考えられる。
次に、上記実施例1と同様、RFマグネトロンスパッタリング法を用いて、p型層75上に、80nmの厚みを有するITOからなる表面透明電極76を形成した。また、真空蒸着法を用いて、表面透明電極76上の所定領域に、2μmの厚みを有するAgからなる集電極77を形成した。このようにして、図11に示した実施例3による光起電力装置を作製した。
次に、上記実施例1〜3、参考例1〜3に対する比較例として、以下の比較例1および2による光起電力装置を作製した。
(比較例1)
図13は、比較例1による光起電力装置の構造を示した断面図であり、図14は、図13に示した比較例1による光起電力装置のn型層、光電変換層およびp型層のそれぞれのX線回折ピークの強度を示したグラフである。図13および図14を参照して、比較例1による光起電力装置の作製プロセスについて説明する。
[光起電力装置の作製]
まず、図13に示すように、上記実施例1と同様、ステンレス板1aとポリイミド樹脂1bとによって構成される基板1上に、裏面電極2を形成した。
次に、上記実施例1と同様、CVD法を用いて、裏面電極2上に、発電ユニットを構成する微結晶半導体各層を順次形成した。具体的には、n型微結晶シリコン層からなるn型層23、ノンドープ微結晶シリコン層からなる光電変換層24およびp型微結晶シリコン層からなるp型層25を順次形成した。なお、n型層23、光電変換層24およびp型層25は、それぞれ、50nm、2μmおよび20nmの厚みを有するように形成した。
ここで、比較例1では、n型層23、光電変換層24およびp型層25のすべてが(220)面の優先結晶配向を有するように、以下の表7に示す条件下で作製した。
上記表7を参照して、比較例1では、n型層23を形成する際に、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、160℃、133Paおよび100Wに設定した。また、n型層23を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:2sccm、H2ガス:200sccmおよびPH3ガス:0.2sccmに設定した。
また、光電変換層24を形成する際には、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、200℃、133Paおよび30Wに設定した。また、光電変換層24を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:20sccmおよびH2ガス:400sccmに設定した。
また、p型層25を形成する際には、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、160℃、133Paおよび60Wに設定した。また、p型層25を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:2sccm、H2ガス:300sccmおよびB2H6ガス:0.2sccmに設定した。
次に、上記表7に示した条件下で作製したn型層23、光電変換層24およびp型層25のそれぞれのX線回折ピークの強度を測定した。
比較例1では、図14に示すように、n型層23およびp型層25は、ほぼ同様のX線回折スペクトルを有し、n型層23およびp型層25の(220)回折ピークの強度は、(111)回折ピークの強度よりも高いことが判明した。また、光電変換層24の(220)回折ピークの強度は、(111)回折ピークの強度よりも高いことが判明した。すなわち、比較例1では、n型層23、光電変換層24およびp型層25のすべてが、(220)面の優先結晶配向を有することを確認することができた。これにより、比較例1では、図13に示したように、n型層23、光電変換層24およびp型層25のすべての表面が、緩やかな凹凸形状になり、実質的に平坦な形状に近づいたと考えられる。
次に、上記実施例1と同様、RFマグネトロンスパッタリング法を用いて、p型層25上に、80nmの厚みを有するITOからなる表面透明電極26を形成した。また、真空蒸着法を用いて、表面透明電極26上の所定領域に、2μmの厚みを有するAgからなる集電極27を形成した。このようにして、図13に示した比較例1による光起電力装置を作製した。
(比較例2)
図15は、比較例2による光起電力装置の構造を示した断面図であり、図16は、図15に示した比較例2による光起電力装置のn型層、光電変換層およびp型層のそれぞれのX線回折ピークの強度を示したグラフである。図15および図16を参照して、比較例2による光起電力装置の作製プロセスについて説明する。
[光起電力装置の作製]
まず、図15に示すように、上記実施例1と同様、ステンレス板1aとポリイミド樹脂1bとによって構成される基板1上に、裏面電極2を形成した。
次に、上記実施例1と同様、CVD法を用いて、裏面電極2上に、発電ユニットを構成する微結晶半導体各層を順次形成した。具体的には、n型微結晶シリコン層からなるn型層33、ノンドープ微結晶シリコン層からなる光電変換層34およびp型微結晶シリコン層からなるp型層35を順次形成した。なお、n型層33、光電変換層34およびp型層35は、それぞれ、50nm、2μmおよび20nmの厚みを有するように形成した。
ここで、比較例2では、n型層33、光電変換層34およびp型層35のすべてが(111)面の優先結晶配向を有するように、以下の表8に示す条件下で形成した。
上記表8を参照して、比較例2では、n型層33を形成する際に、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、160℃、133Paおよび300Wに設定した。また、n型層33を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:15sccm、H2ガス:2000sccmおよびPH3ガス:3sccmに設定した。
また、光電変換層34を形成する際には、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、200℃、80Paおよび400Wに設定した。また、光電変換層34を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:50sccmおよびH2ガス:2000sccmに設定した。
また、p型層35を形成する際には、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、160℃、133Paおよび240Wに設定した。また、p型層35を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:10sccm、H2ガス:2000sccmおよびB2H6ガス:0.2sccmに設定した。
次に、上記表8に示した条件下で作製したn型層33、光電変換層34およびp型層35のそれぞれのX線回折ピークの強度を測定した。
比較例2では、図16に示すように、n型層33およびp型層35は、ほぼ同様のX線回折スペクトルを有し、n型層33およびp型層35の(111)回折ピークの強度は、(220)回折ピークの強度よりも高いことが判明した。また、光電変換層34の(111)回折ピークの強度は、(220)回折ピークの強度よりも高いことが判明した。すなわち、比較例2では、n型層33、光電変換層34およびp型層35のすべてが、(111)面の優先結晶配向を有することを確認することができた。
これにより、比較例2では、図15に示したように、n型層33、光電変換層34およびp型層35のすべての表面が、ピラミッド状の凹凸形状になったと考えられる。なお、比較例2では、(111)面の優先結晶配向を有するn型層33上に、(111)面の優先結晶配向を有する光電変換層34が形成されるので、光電変換層34の表面の凹凸形状は、同じ条件で形成された参考例1の光電変換層14の表面の凹凸形状よりも急峻になったと考えられる。また、急峻な凹凸形状の表面を有する光電変換層34上に、(111)面の優先結晶配向を有するp型層35が形成されるので、p型層35の表面の凹凸形状も、同じ条件で形成された実施例1のp型層5の表面の凹凸形状よりも急峻になったと考えられる。
次に、上記実施例1と同様、RFマグネトロンスパッタリング法を用いて、p型層35上に、80nmの厚みを有するITOからなる表面透明電極36を形成した。また、真空蒸着法を用いて、表面透明電極36上の所定領域に、2μmの厚みを有するAgからなる集電極37を形成した。このようにして、図15に示した比較例2による光起電力装置を作製した。
(実施例1〜3、参考例1〜3、比較例1および比較例2共通)
[出力特性実験]
次に、上記のようにして作製した実施例1〜3、参考例1〜3、比較例1および比較例2による光起電力装置について、光スペクトル:AM1.5、光強度:100mW/cm2、および、測定温度:25℃の擬似太陽光照射条件下で出力特性を測定した。ここで、AM(Air Mass)とは、地球大気に入射する直達太陽光が通過する路程の標準状態の大気(標準気圧1013hPa)に垂直に入射した場合の路程に対する比である。この測定結果を以下の表9に示す。なお、表9中の規格化変換効率および規格化短絡電流は、それぞれ、比較例1の変換効率および短絡電流との比率である。
上記表9を参照して、n型層3およびp型層5が(111)面の優先結晶配向を有し、かつ、光電変換層4が(220)面の優先結晶配向を有する実施例1、および、n型層13およびp型層15が(220)面の優先結晶配向を有し、かつ、光電変換層14が(111)面の優先結晶配向を有する
参考例1は、n型層23、光電変換層24およびp型層25のすべてが(220)面の優先結晶配向を有する比較例1よりも、変換効率および短絡電流が高くなることが判明した。具体的には、比較例1の変換効率および短絡電流の値を1.00とした場合、実施例1の変換効率および短絡電流は、それぞれ、1.03および1.04であった。また、
参考例1の変換効率および短絡電流は、それぞれ、1.02および1.02であった。
この結果から、実施例1では、表面側(p型層5の表面)および裏面側(n型層3の表面)の両方において、入射した光が散乱することにより良好な光閉じ込め効果を得ることができたので、入射した光を効率的に光電変換層4に吸収させることができたと考えられる。また、参考例1では、表面側(光電変換層14の表面)において、入射した光が散乱することにより良好な光閉じ込め効果を得ることができたので、入射した光を効率的に光電変換層14に吸収させることができたと考えられる。その一方、比較例1では、表面側および裏面側の両方において、良好な光閉じ込め効果を得ることが困難であったと考えられる。
また、実施例1と参考例1とを比較した場合、実施例1の変換効率(1.03)および短絡電流(1.04)の方が、参考例1の変換効率(1.02)および短絡電流(1.02)よりも高くなることが判明した。この結果から、n型層およびp型層の凹凸形状により表面側および裏面側の両方において、良好な光閉じ込め効果を得ることができるように構成した方が、光電変換層のみの凹凸形状により表面側のみで良好な光閉じ込め効果を得ることができるように構成した場合よりも、変換効率および短絡電流が高くなると考えられる。また、(220)面の優先結晶配向を有するように形成された光電変換層4(実施例1)は、(111)面の優先結晶配向を有するように形成された光電変換層14(参考例1)よりも良好な特性を有するので、これによっても、実施例1の変換効率および短絡電流の方が、参考例1の変換効率および短絡電流よりも高くなったと考えられる。
また、上記表9を参照して、互いに異なる優先結晶配向面を有するn型層(43〜73)およびp型層(45〜75)と、n型層(43〜73)およびp型層(45〜75)のいずれか一方と同じ優先結晶配向面を有する光電変換層(44〜74)とを含む実施例2〜3と参考例2〜3は、n型層23、光電変換層24およびp型層25のすべてが(220)面の優先結晶配向を有する比較例1よりも、変換効率および短絡電流が高くなることが判明した。具体的には、n型層43、光電変換層44およびp型層45の優先結晶配向面がそれぞれ(111)面、(220)面および(220)面である実施例2の変換効率および短絡電流は、それぞれ、1.04および1.02であった。また、n型層53、光電変換層54およびp型層55の優先結晶配向面がそれぞれ(111)面、(111)面および(220)面である参考例2の変換効率および短絡電流は、それぞれ、1.02および1.03であった。また、n型層63、光電変換層64およびp型層65の優先結晶配向面がそれぞれ(220)面、(111)面および(111)面である参考例3の変換効率および短絡電流は、それぞれ、1.01および1.04であった。また、n型層73、光電変換層74およびp型層75の優先結晶配向面がそれぞれ(220)面、(220)面および(111)面である実施例3の変換効率および短絡電流は、それぞれ、1.03および1.01であった。
この結果から、実施例2では、裏面側(n型層43の表面)において、入射した光が散乱することにより良好な光閉じ込め効果を得ることができたので、入射した光を効率的に光電変換層44に吸収させることができたと考えられる。また、参考例2では、表面側(光電変換層54の表面)および裏面側(n型層53の表面)の両方において、入射した光が散乱することにより良好な光閉じ込め効果を得ることができたので、入射した光を効率的に光電変換層54に吸収させることができたと考えられる。また、参考例3では、表面側(光電変換層64およびp型層65の表面)において、入射した光が散乱することにより良好な光閉じ込め効果を得ることができたので、入射した光を効率的に光電変換層64に吸収させることができたと考えられる。また、実施例3では、表面側(p型層75の表面)において、入射した光が散乱することにより良好な光閉じ込め効果を得ることができたので、入射した光を効率的に光電変換層74に吸収させることができたと考えられる。その一方、比較例1では、上記したように、表面側および裏面側において、良好な光閉じ込め効果を得ることが困難であったと考えられる。
また、実施例2〜3と参考例2〜3を比較した場合、光閉じ込めによる影響が大きいと考えられる短絡電流は、参考例3(短絡電流:1.04)が、他の実施例2(短絡電流:1.02)、参考例2(短絡電流:1.03)および実施例3(短絡電流:1.01)よりも高くなることが判明した。これにより、光電変換層64およびp型層65の表面において入射した光を散乱させる参考例3では、他の実施例2、参考例2および実施例3に比べて効率的に光閉じ込めを行うことができたと考えられる。
また、実施例2〜3と参考例2〜3を比較した場合、変換効率は、実施例2(変換効率:1.04)が、他の参考例2(変換効率:1.02)、参考例3(変換効率:1.01)および実施例3(変換効率:1.03)よりも高くなることが判明した。
また、n型層33、光電変換層34およびp型層35のすべてが(111)面の優先結晶配向を有する比較例2は、実施例1〜3、参考例1〜3および比較例1よりも、変換効率および短絡電流が低くなることが判明した。具体的には、比較例1の変換効率および短絡電流の値を1.00とした場合、比較例2の変換効率および短絡電流は、それぞれ、0.89および0.92であった。この結果から、比較例2では、表面の凹凸形状が急峻になりすぎるようにn型層33上にシリコンが堆積されて光電変換層34が形成されたことにより、光電変換層34中の欠陥が多くなったと考えられる。
実施例1では、上記のように、光電変換層4を、実質的に平坦な形状の表面になりやすい(220)面の優先結晶配向を有するように形成するとともに、n型層3およびp型層5を、凹凸形状の表面になりやすい(111)面の優先結晶配向を有するように形成することによって、光電変換層4の表面が実質的に平坦な形状に近づいたとしても、光電変換層4上に形成されるp型層5の表面に凹凸形状を設けることができ、かつ、光電変換層4下に形成されるn型層3の表面にも凹凸形状を設けることができる。これにより、n型層3およびp型層5の凹凸形状の表面により入射した光を散乱させることができるので、表面側(p型層5の表面)および裏面側(n型層3の表面)の両方における光散乱により、良好な光閉じ込め効果を得ることができる。その結果、入射した光をより効率的に光電変換層4に吸収させることができるので、出力特性を向上させることができる。
また、実施例1では、光電変換層4を、(220)面の優先結晶配向を有するように形成することによって、(220)面の優先結晶配向を有するように形成された光電変換層4は、特に良好な特性を有するので、出力特性をより向上させることができる。
また、参考例1では、上記のように、n型層13およびp型層15を、実質的に平坦な形状の表面になりやすい(220)面の優先結晶配向を有するように形成するとともに、光電変換層14を、凹凸形状の表面になりやすい(111)面の優先結晶配向を有するように形成することによって、n型層13の表面が実質的に平坦な形状に近づいたとしても、n型層13上に形成される光電変換層14の表面に凹凸形状を設けることができる。これにより、光電変換層14の凹凸形状の表面により入射した光を散乱させることができる。この場合には、表面側(光電変換層14の表面)での光散乱により、良好な光閉じ込め効果を得ることができるので、出力特性を向上させることができる。ただし、参考例1の出力特性は、表面側および裏面側の両方における光散乱により、良好な光閉じ込め効果を得ることが可能な上記実施例1よりも劣る。
また、実施例2では、上記のように、光電変換層44およびp型層45を、実質的に平坦な形状の表面になりやすい(220)面の優先結晶配向を有するように形成するとともに、n型層43を、凹凸形状の表面になりやすい(111)面の優先結晶配向を有するように形成することによって、光電変換層44およびp型層45の表面が実質的に平坦な形状に近づいたとしても、n型層43の表面に凹凸形状を設けることができる。これにより、n型層43の凹凸形状の表面により入射した光を散乱させることができるので、裏面側(n型層43の表面)における光散乱により、良好な光閉じ込め効果を得ることができる。その結果、入射した光を効率的に光電変換層44に吸収させることができるので、出力特性を向上させることができる。
また、参考例2では、上記のように、p型層55を、実質的に平坦な形状の表面になりやすい(220)面の優先結晶配向を有するように形成するとともに、n型層53および光電変換層54を、凹凸形状の表面になりやすい(111)面の優先結晶配向を有するように形成することによって、p型層55の表面が実質的に平坦な形状に近づいたとしても、n型層53および光電変換層54の表面に凹凸形状を設けることができる。これにより、n型層53および光電変換層54の凹凸形状の表面により入射した光を散乱させることができるので、表面側(光電変換層54の表面)および裏面側(n型層53の表面)の両方における光散乱により、良好な光閉じ込め効果を得ることができる。その結果、入射した光を効率的に光電変換層54に吸収させることができるので、出力特性を向上させることができる。
また、参考例3では、上記のように、n型層63を、実質的に平坦な形状の表面になりやすい(220)面の優先結晶配向を有するように形成するとともに、光電変換層64およびp型層65を、凹凸形状の表面になりやすい(111)面の優先結晶配向を有するように形成することによって、n型層63の表面が実質的に平坦な形状に近づいたとしても、光電変換層64およびp型層65の表面に凹凸形状を設けることができる。これにより、光電変換層64およびp型層65の凹凸形状の表面により入射した光を散乱させることができるので、表面側(光電変換層64およびp型層65の表面)における光散乱により、良好な光閉じ込め効果を得ることができる。その結果、入射した光を効率的に光電変換層64に吸収させることができるので、出力特性を向上させることができる。
また、実施例3では、上記のように、n型層73および光電変換層74を、実質的に平坦な形状の表面になりやすい(220)面の優先結晶配向を有するように形成するとともに、p型層75を、凹凸形状の表面になりやすい(111)面の優先結晶配向を有するように形成することによって、n型層73および光電変換層74の表面が実質的に平坦な形状に近づいたとしても、p型層75の表面に凹凸形状を設けることができる。これにより、p型層75の凹凸形状の表面により入射した光を散乱させることができるので、表面側(p型層75の表面)における光散乱により、良好な光閉じ込め効果を得ることができる。その結果、入射した光を効率的に光電変換層74に吸収させることができるので、出力特性を向上させることができる。
また、実施例2〜3および参考例2〜3では、光電変換層44および74を、(220)面の優先結晶配向を有するように形成することによって、(220)面の優先結晶配向を有するように形成された光電変換層44および74は、特に良好な特性を有するので、これによっても、出力特性を向上させることができる。
(実施例4)
図17は、本発明に従って作製した実施例4による光起電力装置の構造を示した断面図である。図17を参照して、この実施例4では、上記実施例1〜3および参考例1〜3と異なり、光電変換層を2層構造にした例について説明する。
この実施例4による光起電力装置では、図17に示すように、上記実施例1と同様、ステンレス板1aとポリイミド樹脂1bとによって構成される基板1上に、裏面電極2が形成されている。裏面電極2上には、50nmの厚みを有するn型微結晶シリコン層からなるn型層83が形成されている。n型層83上には、2μmの厚みを有するノンドープ微結晶シリコン層からなる光電変換層84が形成されている。光電変換層84上には、20nmの厚みを有するp型微結晶シリコン層からなるp型層85が形成されている。そして、n型層83、光電変換層84およびp型層85によって、発電ユニットが構成されている。なお、n型層83、光電変換層84およびp型層85は、それぞれ、本発明の「第1非単結晶半導体層」、「第2非単結晶半導体層」および「第3非単結晶半導体層」の一例である。
ここで、実施例4では、光電変換層84は、n型層83上に形成された100nm(0.1μm)の厚みを有する第1光電変換層84aと、第1光電変換層84a上に形成された1.9μmの厚みを有する第2光電変換層84bとによって構成されている。また、第1光電変換層84aと第2光電変換層84bとは、互いに異なる優先結晶配向面を有している。また、n型層83は、第2光電変換層84bと同じ優先結晶配向面を有するとともに、p型層85は、第1光電変換層84aと同じ優先結晶配向面を有している。
また、p型層85上には,80nmの厚みを有するITOからなる表面透明電極86が形成されている。表面透明電極86上の所定領域には、2μmの厚みを有するAgからなる集電極87が形成されている。
次に、上記した実施例4による光起電力装置を実際に作製した際の作製プロセスについて説明する。
[光起電力装置の作製]
まず、図17に示すように、上記実施例1と同様、ステンレス板1aとポリイミド樹脂1bとによって構成される基板1上に、裏面電極2を形成した。
次に、上記実施例1と同様、CVD法を用いて、裏面電極2上に、発電ユニットを構成する微結晶半導体各層を順次形成した。具体的には、n型微結晶シリコン層からなるn型層83、ノンドープ微結晶シリコン層からなる光電変換層84およびp型微結晶シリコン層からなるp型層85を順次形成した。なお、光電変換層84を形成する際には、第1光電変換層84aおよび第2光電変換層84bを順次形成した。また、n型層83、第1光電変換層84a、第2光電変換層84bおよびp型層85は、それぞれ、50nm、100nm、1.9μmおよび20nmの厚みを有するように形成した。
ここで、実施例4では、n型層83および第2光電変換層84bが(220)面の優先結晶配向を有するように、かつ、第1光電変換層84aおよびp型層85が(111)面の優先結晶配向を有するように、以下の表10に示す条件下で作製した。
上記表10を参照して、
実施例4では、n型層83を形成する際に、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、160℃、133Paおよび100Wに設定した。また、n型層83を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:2sccm、H2ガス:200sccmおよびPH3ガス:0.2sccmに設定した。
また、第1光電変換層84aを形成する際には、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、200℃、133Paおよび30Wに設定した。また、第1光電変換層84aを形成する際のガス流量を、SiH4ガス:10sccmおよびH2ガス:400sccmに設定した。
また、第2光電変換層84bを形成する際には、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、200℃、133Paおよび30Wに設定した。また、第2光電変換層84bを形成する際のガス流量を、SiH4ガス:20sccmおよびH2ガス:400sccmに設定した。
また、p型層85を形成する際には、基板温度、反応圧力および高周波電力を、それぞれ、160℃、133Paおよび240Wに設定した。また、p型層85を形成する際のガス流量を、SiH4ガス:10sccm、H2ガス:2000sccmおよびB2H6ガス:0.2sccmに設定した。
次に、上記表10に示した条件下で作製したn型層83、第1光電変換層84a、第2光電変換層84bおよびp型層85のそれぞれのX線回折ピークの強度を測定した。図18は、図17に示した実施例4による光起電力装置のn型層、光電変換層およびp型層のそれぞれのX線回折ピークの強度を示したグラフである。
図18を参照して、実施例4では、n型層83および第2光電変換層84bの(220)回折ピークの強度は、(111)回折ピークの強度よりも高いことが判明した。また、光電変換層84aおよびp型層85の(111)回折ピークの強度は、(220)回折ピークの強度よりも高いことが判明した。すなわち、実施例4では、n型層83および第2光電変換層84bは、(220)面の優先結晶配向を有するとともに、第1光電変換層84aおよびp型層85は、(111)面の優先結晶配向を有することを確認することができた。これにより、実施例4では、図17に示したように、n型層83および第2光電変換層84bの表面が、緩やかな凹凸形状になり、実質的に平坦な形状に近づいたと考えられる一方、第1光電変換層84aおよびp型層85の表面が、ピラミッド状の凹凸形状になったと考えられる。
次に、上記実施例1と同様、RFマグネトロンスパッタリング法を用いて、p型層85上に、80nmの厚みを有するITOからなる表面透明電極86を形成した。また、真空蒸着法を用いて、表面透明電極86上の所定領域に、2μmの厚みを有するAgからなる集電極87を形成した。このようにして、図17に示した実施例4による光起電力装置を作製した。
[出力特性実験]
次に、上記のようにして作製した実施例4による光起電力装置について、上記実施例1〜3、参考例1〜3、比較例1および比較例2と同様の出力特性実験を行った。すなわち、光スペクトル:AM1.5、光強度:100mW/cm2、および、測定温度:25℃の擬似太陽光照射条件下で出力特性を測定した。この測定結果を以下の表11に示す。なお、表11中の規格化変換効率および規格化短絡電流は、それぞれ、比較例1の変換効率および短絡電流との比率である。
上記表9および表11を参照して、(111)面および(220)面の優先結晶配向をそれぞれ有する第1光電変換層84aおよび第2光電変換層84bからなる2層構造の光電変換層84と、(220)面の優先結晶配向を有するn型層83と、(111)面の優先結晶配向を有するp型層85とを含む
実施例4は、単層構造の光電変換層24を含むとともに、n型層23、光電変換層24およびp型層25のすべてが(220)面の優先結晶配向を有する比較例1よりも、変換効率および短絡電流が高くなることが判明した。具体的には、比較例1の変換効率および短絡電流の値を1.00とした場合、
実施例4の変換効率および短絡電流は、それぞれ、1.04および1.03であった。
この結果から、実施例4では、表面側(p型層85の表面)および光電変換層84の内部(第1光電変換層84aの表面)において、入射した光が散乱することにより良好な光閉じ込め効果を得ることができたので、入射した光を効率的に光電変換層84に吸収させることができたと考えられる。その一方、比較例1では、表面側、裏面側および光電変換層24の内部において、良好な光閉じ込め効果を得ることが困難であったと考えられる。
また、n型層33、光電変換層34およびp型層35のすべてが(111)面の優先結晶配向を有する比較例2(変換効率:0.89、短絡電流:0.92)は、実施例4よりも、変換効率および短絡電流が低くなることが判明した。この結果から、実施例4では、比較例2と異なり、光電変換層84中に多くの欠陥が発生するのを抑制できたと考えられる。
実施例4では、上記のように、n型層83を、実質的に平坦な形状の表面になりやすい(220)面の優先結晶配向を有するように形成するとともに、p型層85を、凹凸形状の表面になりやすい(111)面の優先結晶配向を有するように形成することによって、n型層83の表面が実質的に平坦な形状に近づいたとしても、p型層85の表面に凹凸形状を設けることができる。さらに、実施例4では、光電変換層84を、第1光電変換層84aおよび第2光電変換層84bからなる2層構造にするとともに、第1光電変換層84aおよび第2光電変換層84bを、それぞれ、凹凸形状の表面になりやすい(111)面および実質的に平坦な形状の表面になりやすい(220)面の優先結晶配向を有するように形成することによって、第2光電変換層84bの表面が実質的に平坦な形状に近づいたとしても、第1光電変換層84aの表面に凹凸形状を設けることができる。これにより、p型層85の凹凸形状の表面に加えて、第1光電変換層84aの凹凸形状の表面においても入射した光を散乱させることができるので、表面側(p型層85の表面)および光電変換層84の内部(第1光電変換層84aの表面)における光散乱により、良好な光閉じ込め効果を得ることができる。その結果、入射した光を効率的に光電変換層84に吸収させることができるので、出力特性を向上させることができる。
また、実施例4では、(220)面の優先結晶配向を有するノンドープ微結晶シリコン層からなる第2光電変換層84bを、(111)面の優先結晶配向を有するノンドープ微結晶シリコン層からなる第1光電変換層84a上に形成することによって、第2光電変換層84bを結晶成長させる際に、第1光電変換層84a内の適度な密度で形成された非常に微細な微結晶粒を起点(核)として結晶成長させることができる。ここで、非単結晶半導体層の成長においては、結晶成長のきっかけとなる何らかの成長の起点が必要であることが知られている。この実施例4では、第1光電変換層84a内の適度な密度で形成された非常に微細な微結晶粒が起点となって第2光電変換層84bが結晶成長するので、第2光電変換層84bの膜質を改善することができる。この場合、優先結晶配向面が(220)面であることにより良好な光電変換特性を有するとともに、2.0μmの厚みを有する光電変換層84の大部分(1.9μm)を占める第2光電変換層84bの膜質が改善されることにより、第2光電変換層84bの光電変換特性をより向上させることができると考えられる。その結果、第2光電変換層84bを含む光電変換層84により生成されたキャリアの取り出し効率を向上させることができる。
なお、今回開示された実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記実施例1〜4および参考例1〜3では、発電ユニットが1つである場合について説明したが、本発明はこれに限らず、複数の発電ユニットが積層された、いわゆる積層型の光起電力装置において、少なくとも1つの発電ユニットが上記各実施例の発電ユニットであればよい。これにより、少なくとも1つの発電ユニットにおいて、良好な光閉じ込め効果を得ることができるので、出力特性を向上させることができる。
また、上記実施例1〜4および参考例1〜3では、ステンレス板1a上にポリイミド樹脂1bが形成された基板1を用いたが、本発明はこれに限らず、ステンレス板1aに代えて、鉄、モリブデンおよびアルミニウムなどの金属およびそれらの合金材料を用いてもよい。また、ポリイミド樹脂1bに代えて、ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂やSiO2などの絶縁性材料を用いてもよい。なお、上記した金属および絶縁性材料の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
また、上記実施例1では、平坦な裏面電極2上に、凹凸形状の表面になりやすい(111)面の優先結晶配向を有するようにn型層3を形成したが、本発明はこれに限らず、図19に示すように、大きな凹凸形状の表面を有する裏面電極92上に、凹凸形状の表面になりやすい(111)面の優先結晶配向を有するようにn型層93を形成してもよい。この場合には、裏面側において、裏面電極92の大きな凹凸形状の表面とn型層93の小さな凹凸形状の表面との両方により入射した光を散乱させることができるので、n型層3の凹凸形状の表面のみにより入射した光を散乱させる実施例1(図1参照)よりも、良好な光閉じ込め効果を得ることができる。また、n型層93上には、(220)面の優先結晶配向を有すように光電変換層94が形成されている。なお、裏面電極92、n型層93および光電変換層94は、それぞれ、本発明の「下地層」、「第1非単結晶半導体層」および「第2非単結晶半導体層」の一例である。
なお、裏面電極を凹凸形状にする場合には、基板を構成するポリイミド樹脂の表面を凹凸形状にすることによって、基板上に形成される裏面電極の表面を凹凸形状にする方法が考えられる。たとえば、ポリイミド樹脂中に、数100μmの直径を有するSiO2やTiO2などの粒子を混入することによって、基板を構成するポリイミド樹脂の表面を凹凸形状にしてもよい。
また、上記実施例2〜3および参考例2〜3では、n型層、光電変換層およびp型層を、1層からなる単層構造にしたが、本発明はこれに限らず、n型層、光電変換層およびp型層の少なくとも1つを、2層以上の多層構造にしてもよい。この場合、n型層、光電変換層およびp型層をそれぞれ構成する層のうち少なくとも1つの層が、他の層と異なる優先結晶配向面を有していればよい。