JP4215697B2 - 光電変換装置およびその製造方法 - Google Patents

光電変換装置およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4215697B2
JP4215697B2 JP2004257181A JP2004257181A JP4215697B2 JP 4215697 B2 JP4215697 B2 JP 4215697B2 JP 2004257181 A JP2004257181 A JP 2004257181A JP 2004257181 A JP2004257181 A JP 2004257181A JP 4215697 B2 JP4215697 B2 JP 4215697B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
type semiconductor
semiconductor layer
photoelectric conversion
atoms
layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004257181A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006073878A (ja
Inventor
善之 奈須野
和仁 西村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sharp Corp
Original Assignee
Sharp Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sharp Corp filed Critical Sharp Corp
Priority to JP2004257181A priority Critical patent/JP4215697B2/ja
Priority to DE102005013537A priority patent/DE102005013537A1/de
Priority to KR1020050024615A priority patent/KR100642196B1/ko
Priority to US11/087,819 priority patent/US7915520B2/en
Publication of JP2006073878A publication Critical patent/JP2006073878A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4215697B2 publication Critical patent/JP4215697B2/ja
Priority to US13/031,969 priority patent/US20110146773A1/en
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E10/00Energy generation through renewable energy sources
    • Y02E10/50Photovoltaic [PV] energy

Description

本発明は、光電変換装置およびその製造方法に関し、さらに詳しくは光電変換装置の高効率化技術に関する。
太陽電池市場の拡大に伴い、低コスト化を図る次世代太陽電池技術として、薄膜シリコン太陽電池が注目されている。薄膜シリコン太陽電池は、ガラス基板やステンレス基板などの上に、プラズマCVD法などを用いて、膜厚数μm程度のシリコン薄膜を堆積させることにより形成される。したがって、シリコン使用量が低減できるだけでなく、一回の製膜で大面積の太陽電池を形成できるので、低コスト化が可能になるのである。また、薄膜シリコン半導体層は500℃以下の低温プロセスで形成できるため、1500℃以上の温度を必要とするバルク結晶系太陽電池と比較した場合、製造時の投入エネルギーを大幅に低減することができる。
一般的な薄膜シリコン太陽電池の構造として、スーパーストレート型とサブストレート型の二つが挙げられる。スーパーストレート型構造とは、透光性基板上に透明導電層、光電変換層、電極層の順に積層して形成され、上記透光性基板側が光入射面となる構造である。一方、サブストレート型構造とは、基板上に電極層、光電変換層、透明導電層、グリッド電極の順に積層して形成し、上記グリッド電極側が光入射面となる構造である。いずれの構造においても、光電変換層は、p導電型を示すp型半導体層(以下、p層とも称する)、真性(i型)半導体層(以下、i層とも称する)、およびn導電型を示すn型半導体層(以下、n層とも称する)から構成されるpin接合を備える場合が多い。
以上述べてきたように、上記薄膜シリコン太陽電池は、大面積同時形成や投入エネルギー低減効果により、低コスト化が可能であるという利点を持ちながらも、現実的には市場拡大するには到っていない。その主要因としては、現在主流であるバルクシリコン結晶系太陽電池と比較して光電変換効率が低いことが挙げられる。したがって、薄膜シリコン太陽電池の本格普及のためには高効率化が重要な課題である。
上記課題を解決する有力な手段の1つとして、太陽電池の光入射面側の半導体層(以下、窓層とよぶ)のワイドバンドギャップ化が挙げられる。これは、上記薄膜シリコン太陽電池において、窓層のバンドギャップを広げることにより、窓層における光吸収損失の低減による短絡電流密度の増加と、拡散電位の増加による開放電圧の増加の効果を得るための技術であり、これにより光電変換効率を向上させることができる。
上記のような窓層のワイドバンドギャップ化に関する従来技術として、特開2002−16271号公報(特許文献1)に記載の薄膜光電変換装置が挙げられる。当該技術は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層を積層してなる少なくとも一つのpin接合構造を含む光電変換層と、その光電変換層の光入射側に備えられた導電性かつ光透過性の第1電極と、その第1電極と対向する面に備えられた第2電極とを有する薄膜光電変換装置において、pin接合を構成するi型半導体層が、微結晶シリコン又は微結晶シリコンゲルマニウムからなり、これと接するp型半導体層、n型半導体層の少なくとも一方が、微結晶シリコンカーバイドと微結晶シリコンとの混晶からなる。この薄膜光電変換装置によれば、p型半導体層、n型半導体層の光吸収が低減されるとともに、界面のバンドギャップが大きくなるため界面再結合が低減されて、高い光電変換効率が得られるとしている。さらに、上記特許文献1では、上記微結晶シリコンカーバイトと微結晶シリコンとの混晶の炭素量が、原子比で10〜30% の範囲にすることが望ましいとされており、上記原子比が10%未満であると、光吸収率の低下が不十分で微結晶シリコンカーバイトを混ぜた効果がなく、逆に30%を越える炭素量では抵抗が大きくなり、十分な飽和電流密度が得られず実用的でないと記載されている。
特開2002−16271号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、ワイドバンドギャップ化のための添加元素として炭素を使用する場合、10原子%以上の多量の炭素がシリコン膜中に含有されることが要求されるため、不純物元素である炭素の膜中濃度が増加するにつれて、p型半導体層にドープされる導電型決定元素が膜中でアクセプターとして活性化する際の活性化効率が低下することが知られており、高濃度に不純物元素(炭素)が添加されることによりキャリア濃度が低下するという課題が生じる。さらに、膜中の不純物元素濃度は小さいほど結晶化しやすく、上記高濃度条件ではp型半導体層中の結晶相の比率が低下してしまうという課題もある。したがって、ワイドバンドギャップ化のための添加元素を高濃度に加えた場合において、十分なキャリア濃度および結晶相の比率を維持することができれば、光電変換装置の更なる高効率化が期待できる。
本発明は、従来技術に係る事情に鑑みてなされてものであり、光入射側の窓層(半導体層)に高濃度に不純物元素を含有させた場合も含めて、適正なキャリア濃度および結晶相の比率を実現することで、広い不純物元素濃度範囲で開放電圧および短絡電流を増加させ、それによって光電変換効率を向上させた光電変換装置を提供するものである。
かくして、本発明によれば、シリコン原子を少なくとも含有するp型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層を積層して構成される1つ以上のpin型光電変換層を有し、少なくとも1つの光電変換層のp型半導体層は、窒素原子およびホウ素原子をさらに含有し、かつ、シリコン原子濃度に対する窒素原子濃度A(原子%)およびホウ素原子濃度B(原子%)が0.11−0.009A+0.042A2≦B≦0.2+0.2A+0.05A2で表される光電変換装置が提供される。すなわち、本発明者らは、上記pin型光電変換層におけるp型半導体層が窒素原子およびホウ素原子を含有し、その中に含まれる窒素原子濃度Aおよびホウ素原子濃度Bが上式で表される相関関係を有することにより、前記相関関係を有しない場合に比して高い光電変換効率が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
また、本発明は別の観点によれば、基板上に導電膜を介してp型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層を備えた光電変換層を1つ以上形成する工程を有し、少なくとも1つの光電変換層を形成する工程において、シリコン原子、ホウ素原子および窒素原子を含む原料ガスを用いて、シリコン原子濃度に対する窒素原子濃度A(原子%)およびホウ素原子濃度B(原子%)が、0.11−0.009A+0.042A2≦B≦0.2+0.2A+0.05A2で表される比率で窒素原子とホウ素原子が含まれるようにp型半導体層を形成する光電変換装置の製造方法が提供される。
本発明の光電変換装置によれば、少なくとも1つのp型半導体層がワイドバンドギャップ化のための窒素原子を含有し、この窒素原子濃度A(原子%)と、p型導電性決定元素であるホウ素原子のホウ素原子濃度B(原子%)を、0.11−0.009A+0.042A2≦B≦0.2+0.2A+0.05A2で表される原子濃度にそれぞれ設定することにより、窒素原子を高濃度に加えた場合においても、十分なキャリア濃度および結晶相の比率を維持することができ、その結果、開放電圧および短絡電流を増加し、光電変換効率を向上させることができ、高効率化を図ることができる。
また、本発明の光電変換装置の製造方法によれば、上記高効率の光電変換装置を製造することができる。
[実施の形態1]
本発明の光電変換装置は、光が基板側から入射するスーパーストレート型構造であってもよいし、光が基板と反対側から入射するサブストレート型構造であってもよい。また、pin型光電変換層を2つ以上備えたスーパーストレート型積層型光電変換装置であってもよいし、サブストレート型積層型光電変換装置であってもよい。
スーパーストレート型積層型光電変換装置およびサブストレート型積層型光電変換装置の場合、少なくとも1つのp型半導体層が、窒素原子およびホウ素原子をさらに含有し、かつ、窒素原子濃度A(原子%)およびホウ素原子濃度B(原子%)が、0.11−0.009A+0.042A2≦B≦0.2+0.2A+0.05A2(関係式1)で表される原子濃度にそれぞれ設定された構成とすることができ、その他のp型半導体層は窒素原子およびホウ素原子を含有しない層であってもあるいは同様の原子濃度で含有する層であってもよい。なお、ホウ素原子を含有しないp型半導体層はホウ素以外の例えばアルミニウム、ガリウム、インジウム等のp型導電性決定元素が含まれる。
さらにこの場合、窒素原子およびホウ素原子を含有するp型半導体層において、窒素原子濃度がシリコン原子濃度に対して0.01〜15原子%であることが好ましく、より好ましくは4〜15原子%である。
また、窒素原子およびホウ素原子を含有するp型半導体層において、シリコン原子が結晶シリコン相として含有していてもよく、高い導電性を得られ光電変換層の直列抵抗を小さくできる点で好ましい。この場合、結晶シリコン相の結晶化率が3以上であることが好ましい。p型半導体層12の結晶化率が3以上であることにより、i型半導体層の下地層として充分結晶化率が高いため、i型半導体層堆積初期に下地層の影響を受けて結晶成分が成長しやすく結晶化率の高い高品質のi型半導体層が得られるので、短絡電流密度が増加し、高い光電変換効率を得ることができる。さらにこの場合、p型半導体層は、結晶シリコン相を有する単層からなるもの、あるいは結晶シリコン相を有さず窒素原子を有する第1p型半導体層と、第1p型半導体層とi型半導体層の間の結晶シリコン相を有し窒素原子を積極的に添加しない第2p型半導体層からなる2層構造とすることができる。ここで、第1p型半導体層も結晶シリコン相を含んでいることが望ましい。さらに2層構造では窒素原子を第1p型半導体層および/または第2p型半導体層に添加することができる。
また、窒素原子およびホウ素原子を含有するp型半導体層は、格子振動分光測定スペクトルにおいて1800〜1950cm-1の波長範囲に吸収ピークを有さないものとすることで、キャリア濃度が高く光電変換効率を向上させることができ、キャリア濃度が高く光電変換効率を向上させることができるため好ましい。
また、i型半導体層がシリコン原子を結晶シリコン相として含有するものであってもよい。
本発明の光電変換装置の製造方法は、窒素原子およびホウ素原子を含有するp型半導体層を形成するための原料ガスがSiH4、N2及びB26を含み、 [B26]/[SiH4]ガス流量比を0.033〜4.2の範囲に、かつ、[N2]/[SiH4]ガス流量比を0.002〜3.0の範囲に制御するようにしてもよい。このようなガス流量比に設定することにより、p型半導体層の形成において、窒素原子濃度Aおよびホウ素原子濃度Bの上記関係式1(0.11−0.009A+0.042A2≦B≦0.2+0.2A+0.05A2)を成立させるよう容易に制御することができる。
また、窒素原子およびホウ素原子を含有するp型半導体層を形成する工程において、シリコン原子が上記結晶シリコン相として含有するように形成してもよく、この場合、原料ガスがH2をさらに含み、[H2]/ [SiH4]のガス流量比を120〜900の範囲に制御することが、適切な結晶化率(あるいは結晶体積分率)が実現でき、光電変換装置の特性を向上させることができる点で好ましい。
また、i型半導体層を形成する前に、窒素原子およびホウ素原子を含むp型半導体層を180℃〜350℃で加熱する、および/または、光電変換層を形成した後に、窒素原子およびホウ素原子を含むp型半導体層を180℃〜350℃で加熱するようにしてもよい。この加熱工程によって、水素により不活性化されていたp型導電性決定元素を再度活性化させることができ、p型半導体層のキャリア濃度増加により光電変換効率を向上させることができる
以下、上記光電変換装置の構成および製造方法について、実施の一形態を示す図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は実施の一形態によって限定されるものではない。
図1は本発明の実施の形態の光電変換装置を示す概略断面図である。
本発明の光電変換装置100は、スーパーストレート型であり、基板11上に、光電変換層10と透明導電層15と電極16がこの順番で積層されて構成される。
<基板の説明>
基板11は、透光性基板11aの上に透明導電層11bを堆積させて作製される。透光性基板11aとしては、ガラス板あるいはポリイミド、ポリビニル等の耐熱性を有する透光性樹脂板、さらにそれらが積層されたものなどが好適に用いられるが、光透過性が高く光電変換装置全体を構造的に支持し得るものであれば特に限定されない。また、それらの表面に金属膜、透明導電膜、絶縁膜等を被覆したものであってもよい。ただし、光電変換装置をサブストレート型構造に適用する場合には、上記透光性基板11aの代わりにステンレスなどの不透光性基板を用いてもよい。
透明導電層11bは透明導電性の材料からなり、例えば、ITO、酸化錫および酸化亜鉛等の透明導電性膜の単層または複数積層させたものを用いることができる。透明導電層11bは電極としての役割を担っているので、電気伝導性が高い方が好ましく、微量の不純物を添加することで電気伝導性を向上させたものを用いることもできる。透明導電層11bの形成方法としては、スパッタリング法、CVD法、電子ビーム蒸着法、ゾルゲル法、スプレー法および電析法などの公知の方法が挙げられる。また、透明導電層11bの表面に凹凸形状が形成されていることが望ましい。この凹凸によって、透光性基板11a側から入射した入射光を散乱・屈折させて光路長を伸ばすことができるので、光電変換層10内での光閉じ込め効果が高まり短絡電流の向上が期待できる。透明導電層11bの表面に凹凸を形成する方法としては、透光性基板11aの上に一旦透明導電層11bを堆積させた後、エッチング法やサンドブラストのような機械加工により凹凸を形成する方法、透明導電層成膜時に膜材料の結晶成長により形成される表面凹凸を利用する方法、結晶成長面が配向しているために規則的な表面凹凸が形成されることを利用する方法等を用いてもよい。本実施の形態においては、膜材料の結晶成長時に形成される凹凸を利用した基板として、白板ガラス上にCVD法により酸化錫層を堆積させたもの(旭硝子社製、商品名Asahi−U)を基板11として用いた。さらに、基板11上に、スパッタリング法で酸化亜鉛層を堆積させることにより、後に光電変換層を形成する際に上記酸化錫層がプラズマによる損傷を受けるのを防止することができるので、より好ましい。
<光電変換層の説明>
光電変換層10は、構成材料のうち主材料はシリコンであり、特にアモルファスシリコン、微結晶シリコン等が好適に用いられる。ここで、本発明において、用語「アモルファスシリコン」および「微結晶シリコン」は、それぞれ、当該分野で一般的に使われる、「水素化アモルファスシリコン」および「水素化微結晶シリコン」を含むものとする。本実施の形態の光電変換層10は、基板11側からp型半導体層12、i型半導体層13、n型半導体層14をこの順に堆積させてpin接合構造が形成されている。各導電型の半導体層の膜厚は、特に限定されるものではないが、p型半導体層12が5〜50nm、i型半導体層13が100〜5000nm、n型半導体層14が5〜100nmの範囲とすることがよく、好ましくはp型半導体層12が10〜30nm、i型半導体層13が200〜4000nm、n型半導体層14が10〜30nmである。
(p型半導体層)
p型半導体層12は、p型導電性決定元素として少なくともホウ素がドープされた微結晶シリコン層中に窒素原子が添加された層である。ここで、微結晶シリコン層とは、プラズマCVD法などの非平衡プロセスを用いて低温で形成される場合の微細な結晶相とアモルファス相の混合相からなる半導体層を意味する。上記p型導電性決定元素としては、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム等の不純物原子を用いることができるが、シリコンに対して大きな固溶度を持ち、高濃度ドーピングが可能であること、最も多く用いられているプラズマCVD法で作製する場合に取り扱い易いことなどの観点からホウ素が好ましい。
p型半導体層12は、シリコン原子濃度に対する窒素原子濃度A(原子%)およびホウ素原子濃度B(原子%)が、0.11−0.009A+0.042A2≦B≦0.2+0.2A+0.05A2(関係式1)で表される相関関係を有するように形成されており、この相関関係を有していないp型半導体層に較べて開放電圧が増加し高い光電変換効率が得られる。ここで上記シリコン原子に対する窒素濃度およびホウ素濃度とは、高感度の二次イオン質量分析(SIMS)またはオージェ電子分光法により求めた値である。
窒素原子を含有することにより開放電圧が増加する理由としては、(a)p型半導体層のバンドギャップが広がって拡散電位が増加すること、(b)窒素添加による結晶粒界の界面パッシベーションおよびp/i層界面パッシベーションの効果により界面再結合が低減すること等が考えられる。上記(b)の効果は、一般的に結晶シリコン太陽電池などで利用されるシリコン窒化膜による表面パッシベーション効果、すなわちシリコン基板表面での光生成キャリアの表面再結合を抑制する効果と同様のものであると考えられる。
しかしながら、窒素原子添加量を増加させると、(1)窒素原子添加によるp型導電性決定元素の活性化効率が低下すること、(2)窒素原子添加によるp型半導体層中のアモルファス相の比率が増加する、すなわち結晶化率(結晶体積分率)が低下することなどの問題が生じ、かえって光電変換効率を低下させてしまう場合がある。
そこで本発明では、(1)の場合には、窒素原子濃度Aおよびホウ素原子濃度Bが、0.11−0.009A+0.042A2≦B≦0.2+0.2A+0.05A2(関係式1)で表される相関関係を有するように形成することにより、p型導電性決定元素の活性化効率が低い場合においても十分なキャリア濃度を実現することができ、光電変換装置の特性を向上させることができる。(2)の場合には、原料ガス中の[H2]/ [SiH4]ガス流量比を120〜900の範囲で高めることや作製温度を低温(200℃以下)にすることで、適切な結晶体積分率が実現でき、光電変換装置の特性を向上させることができる。その理由は、低温で結晶相が形成するためには原子状水素(水素ラジカル)が重要な役割を果たしていることが実験的に知られているが、[H2]/ [SiH4]ガス流量比を増加させると半導体層成長表面における水素ラジカル量を増やすことができるためである。ここで、[H2]/ [SiH4]ガス流量比が120以下の場合は十分高い結晶体積分率が実現できず、900以上の場合には、原料ガス使用量が増えると共に安全確保の為の希釈ガス(N2、Ar)の量(水素に対して約100倍)も増加するためコストが高くなり望ましくない。
p型半導体層12としては、上記微結晶シリコン層の代わりにアモルファスシリコン層を母層として用いることもできるが、結晶シリコン相を含むことが高い導電性を得られ光電変換層の直列抵抗を小さくできる観点からが望ましい。すなわち、微結晶シリコン層中に窒素原子が添加された層を用いた方が、形状因子が増加しより高い光電変換効率が得られるので望ましい。さらに、p型半導体層12は、その結晶化率が3以上であることが好ましい。ここで、結晶化率とは、p型半導体層単層のラマン散乱スペクトルにおいて、480cm-1のアモルファスシリコンのピーク高さIaに対するシリコン‐シリコン結合に帰属される520cm-1のピーク高さIcの比、すなわちIc/Iaとする。これは、結晶体積分率の絶対値を表す値ではないが、上記Ic/Iaの値は結晶体積分率をよく反映するため、当該分野では膜中の結晶化成分の割合を示す指標として一般的に使用される。上記p型半導体層12の結晶化率が3以上であれば、後述のi型半導体層13の下地層として充分結晶化率が高いため、i型半導体層堆積初期に下地層の影響を受けて結晶成分が成長しやすく結晶化率の高い高品質のi型半導体層13が得られるので、短絡電流密度が増加し、高い光電変換効率を得ることができるので好ましい。逆に、上記p型半導体層12の結晶化率が3未満であると、結晶化率が低いため、結晶化率の高い高品質のi型半導体層13を得にくく、短絡電流密度が低下し、光電変換効率が低下する傾向にある。また、作製温度を低温(200℃以下)にすることは、水素ラジカルによるエッチング効果を向上させるためエッチングされやすいアモルファス相が選択的に除去され、結果として結晶相の多い半導体層が形成され、光電変換特性を向上させることができるので好ましい。
ここで、p型半導体層12の結晶化率が高い状態を実現するためには、上述のとおり、高い水素希釈率や低温形成が有効であるが、この場合には水素によるp型導電性決定元素(B、Ga、Al等)の不活性化が付随して生じるため、p型導電性決定元素の活性化効率が低下する。その理由としては、p型導電性決定元素は結晶シリコン中で、シリコンと4配位で結合することによりアクセプターとして働くが、1つのシリコン−p型導電性決定元素結合の間に水素が挿入されると、p型導電性決定元素が3配位化し電気的に不活性化されてしまうことが知られている。したがって、p型半導体層12の結晶化率を高めるために用いた作製条件により、不活性化されたp型導電性決定元素を再活性化させることで、より光電変換特性を向上させることができる。以下に、その方法を詳しく説明する。
p型導電性決定元素が水素により不活性化されている場合には、格子振動分光測定(ラマン散乱測定または赤外吸収測定)スペクトルにおいて1800〜1950cm-1の波長範囲に、上記結晶シリコン−p型導電性決定元素結合に起因する鋭いピークが観測されることが知られている。特にp型導電性決定元素がホウ素であった場合には、約1875cm-1付近にピークが観測される。このような場合に、p型半導体層形成後に180〜350℃の加熱処理を行うとp型導電性決定元素を不活性化していた水素が脱離することにより、上記結晶シリコン−p型導電性決定元素結合に起因するピークが消失すると共にキャリア濃度が約1桁増加することを見出した。したがって、p型半導体層12は、格子振動分光測定スペクトルにおいて1800〜1950cm-1の波長範囲にピークを有さない(水素によりp型導電性決定元素が不活性化されていない)ことが、キャリア濃度が高く光電変換効率を向上させることができるため望ましく、そのためにはp型半導体層形成後の180〜350℃の加熱処理が有効である。ここで、180℃以上の温度とすることで充分な水素の脱離が生じ、350℃以下の温度とすることで接合界面における不純物元素の拡散などが抑制され光電変換装置の特性低下を防ぐことができるので、上記温度範囲が望ましい。
(i型半導体層)
i型半導体層13は、特に不純物を添加していない微結晶シリコン層である。ただし、実質的に真性な半導体であれば、少量の不純物元素が含まれていてもよい。この場合、i型半導体層13としては、微結晶シリコンの代わりにアモルファスシリコンを用いてもよいが、光劣化が生じず高い光電変換効率を得ることができる点で微結晶シリコンの方が好ましい。また、特に、上述のような微結晶シリコンからなるp型半導体層を有する光電変換装置においては、p型半導体層12とi型半導体層13の界面のバンドギャップ不連続性緩和の観点から、i型半導体層13が微結晶シリコンであることが好ましい。より詳細には、微結晶シリコンからなるp型半導体層とアモルファスシリコンからなるi型半導体層がヘテロ接合を形成するのに対し、微結晶シリコンからなるp型半導体層と微結晶シリコンからなるi型半導体層はホモ接合を形成するため、後者の方が、p型半導体層が有するp/i層界面再結合抑制効果をより高めることができる。したがって、i型半導体層13が微結晶シリコンであれば、特に界面のバンドギャップ不連続性に起因するフォトキャリアの再結合が低減されるので形状因子が増加し、高い光電変換効率が得られるので好ましい。
(n型半導体層)
n型半導体層14は、n型導電性決定元素がドープされたアモルファスシリコン層である。n型導電性決定元素としては、リン、アンチモン、ヒ素、窒素、酸素等の不純物原子を用いることができる。なお、n型半導体層14は微結晶シリコン層であってもよい。
(光電変換層の製造方法)
光電変換層10を形成する方法としては、代表的にはCVD法が挙げられる。CVD法としては、常圧CVD、減圧CVD、プラズマCVD、熱CVD、ホットワイヤーCVD、MOCVD法等が挙げられるが、本実施の形態ではプラズマCVD法を用いた。プラズマCVD法により光電変換層10を形成する際に使用するシリコン含有ガスとしては、SiH4、Si26等のシリコン原子を含むものであれば特に限定されないが、一般的にSiH4を用いる場合が多い。上記シリコン含有ガスとともに使用される希釈ガスとしては、H2、Ar、He等を用いることができるが、アモルファスシリコンおよび微結晶シリコンの形成時にはH2が特に好適に用いられる。また、p型半導体層およびn型半導体層の形成時には、上記シリコン含有ガスおよび希釈ガスとともにドーピングガスを使用し、該ドーピングガスは目的とする型の導電性決定元素を含むガスであれば特に限定されないが、一般的にp型導電性決定元素がボロンである場合はB26を、n型導電性決定元素がリンである場合はPH3を用いる場合が多い。上記プラズマCVD法により光電変換層10を形成する際に、基板温度、圧力、ガス流量、プラズマへの投入電力等の成膜パラメータを適切に制御することで、アモルファス相と結晶相の存在比率を制御することが可能である。
本発明において、p型半導体層12の形成時に使用する窒素含有ガスとしては、N2、NH3等の窒素原子を含むものであれば特に限定されないが、本実施の形態ではN2を用いた。特にN2は、深冷式ガス分離法等、空気からの分離により安価に製造できること、および安定な物質であり除害処理の必要がないことなどの利点があるので望ましい。
p型半導体層12の形成においては、上記N2、SiH4、B26およびSiH4が使用されるが、この際、[N2]/[SiH4]ガス流量比を0.002〜3.0に設定し、かつ、[B26]/[SiH4]ガス流量比を0.033〜4.2に設定することが、膜中の窒素原子濃度Aおよびホウ素原子濃度Bを上記関係式1(0.11−0.009A+0.042A2≦B≦0.2+0.2A+0.05A2)が成立するよう制御することが容易となる観点から好ましい。
また、上述したように、p型半導体層12の形成工程後に180℃〜350℃の加熱工程を行うことにより、水素により不活性化されていたp型導電性決定元素を再度活性化させることができ、p型半導体層12のキャリア濃度増加により光電変換効率を向上させることができるため、上記加熱工程を行うことが望ましい。上記加熱工程は、p型半導体層12形成工程後に行えば効果が得られるが、その後にi型半導体層やn型半導体層を形成する際に再び水素ラジカルに曝される可能性がある場合には、上記加熱工程を光電変換層形成工程後に行うあるいはp型半導体層形成後とn型半導体層形成後に2回行ってもよい。
<電極および透明導電層の説明>
電極16は、導電層が少なくとも1層以上あればよく、光反射率が大きく導電率が高い程好ましい。これらを満たす材料として、可視光反射率の高い銀、アルミニウム、チタン、パラジウム等の金属材料やその合金が用いられ、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スプレー法、スクリーン印刷法等により上記光電変換層10の上に形成される。電極16は、光電変換層10で吸収されなかった光を反射して再度光電変換層10に戻すため、光電変換効率の向上に寄与する。さらに、光電変換層10と電極16との間に透明導電層15を形成すると、入射光に対する光閉じ込め向上効果や光反射率向上効果が得られることに加えて、電極16に含まれる元素の光電変換層10への拡散を抑制することができる。透明導電層15は透明導電層11bと同様の材料や製法にて形成することができる。ただし、本発明をサブストレート型構造に適用する場合には、上記電極16として、櫛形など表面を一様に覆わないグリッド形状であることが望ましい。
以上の構成により、開放電圧、短絡電流密度および形状因子が大きく光電変換効率の高いスーパーストレート型(あるいはサブストレート型)の光電変換装置100を得ることができる。
[実施の形態2]
次に、上記とは異なる実施の形態2として、光電変換層を2つ有するスーパーストレート型積層型光電変換装置200について、図3を用いて説明する。なお、図3において、図1に示した実施の形態1と同一の要素には同一の符号を付している。
このスーパーストレート型積層型光電変換装置200は、基板11上に、第1の光電変換層10、第2の光電変換層20、透明導電層15および電極16がこの順番で積層されて構成されている。これらの構成要素の中で、基板11、透明導電層15および電極16は、上述のスーパーストレート型光電変換装置100と同じものが使用でき、各層の機能もスーパーストレート型光電変換装置100と同様であるので、説明を省略する。
第1の光電変換層10は光入射側に位置するため、第2の光電変換層20には第1の光電変換層10を透過した光のみが入射する。そのため、積層型構造にしたときの利点としては、入射光スペクトル領域を分割して受光させることができるので光の有効活用ができることと、高い開放電圧が得られることが挙げられる。上記効果を高めるために、光入射側である第1の光電変換層10のバンドギャップが第2の光電変換層20のバンドギャップより大きくなるように積層すれば、入射光のうち短波長光は第1の光電変換層10で、長波長光は第2の光電変換層20で吸収されるので、各波長域を有効に利用することができる。
第1および第2の光電変換層10、20は、pinの接合方向が同一になるように積層され、かつ光入射側がp型半導体層となるように形成されていればよく、これは光電変換層が3層以上の場合も同様である。なお、図3において、22はp型半導体層、23はi型半導体層、24はn型半導体層である。第1および第2の光電変換層10、20の各層の膜厚は特に限定されるものではないが、第1の光電変換層10ではp型半導体層12が5〜50nm、i型半導体層13が100〜500nm、n型半導体層14が5〜50nmの範囲とすることがよく、好ましくはp型半導体層12が10〜30nm、i型半導体層13が200〜400nm、n型半導体層14が10〜30nmであり、第2の光電変換層20ではp型半導体層22が5〜50nm、i型半導体層23が1000〜5000nm、n型半導体層24が5〜100nmであり、より好ましくはp型半導体層22が10〜30nm、i型半導体層23が2000〜4000nm、n型半導体層24が10〜30nmである。
また、第1および第2の光電変換層10、20の間(3層以上では各光電変換層の間)に中間層が形成されていてもよい。この場合、該中間層は透明導電膜であることが望ましい。中間層を設けることにより、第1の光電変換層10から中間層に入射した光は、中間層にてその一部が反射され、残りの光は中間層を透過して第2の光電変換層20に入射するので、各光電変換層への入射光量を制御できる。これにより、各光電変換層10、20の光電流の値が均等化され、各光電変換層10、20にて発生した光生成キャリアが積層型光電変換装置の短絡電流にほぼ無駄なく寄与できるため、結果として積層型光電変換装置の短絡電流を増加し光電変換効率を向上することができる。
この光電変換装置200において、第1および第2の光電変換層10、20(3層以上では各光電変換層)のうち、少なくとも1つの光電変換層におけるp型半導体層中に窒素原子およびp型導電性決定元素(例えばボロン原子)が上記関係式1を満たす原子濃度で添加されている。これにより、上述のスーパーストレート型光電変換装置100にて得られたのと同様の効果によって、スーパーストレート型積層型光電変換装置200の開放電圧が増加する。この場合も、窒素原子が添加されたp型半導体層の窒素原子濃度は、上記関係式3を満たした上で0.01〜15原子%が好ましく、4〜15原子%がより好ましい。
また、p型半導体層が微結晶シリコン層に窒素が添加された層であれば、導電性が高く光電変換層の直列抵抗が低減されて形状因子が向上するので望ましい。さらに、p型半導体層が第1のp型半導体層および第1のp型半導体層とi型半導体層の間の第2のp型半導体層からなる場合には、第1のp型半導体層の窒素濃度は、上記関係式1を満たした上で0.01〜15原子%(より好ましくは4〜15原子%)とし、第2のp型半導体層には窒素原子を積極的に添加しないことで、開放電圧、短絡電流密度、および形状因子が増加し、光電変換効率がさらに向上するので望ましい。また、より好ましくは第2のp型半導体層と隣接するi層が微結晶シリコン層であれば、i層の光劣化が生じないだけでなく、第2のp型半導体層が有するp/i層界面再結合抑制効果がより高められて形状因子が増加するので、高い光電変換効率を得ることができる。
なお、上記実施の形態2をサブストレート型構造に適用する場合には、上記スーパーストレート型積層型光電変換装置200と異なり電極16が光入射側となるので、上述の説明において第1の光電変換層10と第2の光電変換層20の位置が相互に入れ替わる点、各光電変換層10、20は電極16側(光入射側)からpinの接合順となる点、電極16として表面を一様に覆わないグリッド形状であることに注意が必要であるが、得られる効果は全てスーパーストレート型構造と同様である。
以下、本発明の実施例および比較例を説明する。
[実施例1〜18および比較例1〜11]
本実施例1〜18および比較例1〜11では、図1に示すスーパーストレート型光電変換装置100を以下のように作製した。
基板11としては、透光性基板11aの表面に透明導電膜11bが形成された縦127mm×横127mm×厚み1.8mmの白板ガラス(旭硝子(株)、商品名:Asahi−U)を使用した。この基板11上に、膜厚50nmの酸化亜鉛層をマグネトロンスパッタリング法により形成した後、プラズマCVD法により後述の条件で光電変換層10をp型半導体層12、i型半導体層13、n型半導体層14の順に堆積した。なお、光電変換層10の製膜に用いたプラズマCVD装置は、不純物元素の混入が少ない高品質の光電変換層を作製できる超高真空装置を用いた。
光電変換層10の各層は下記の成膜条件によりそれぞれ形成した。
p型半導体層12の形成には、原料ガスとしてSiH4、H2、B26およびN2を用いた。H2/SiH4ガス流量比、B26/SiH4ガス流量比およびN2/SiH4ガス流量比については、実施例1〜18および比較例1〜11において表1に記載のように変化させ、そのときの膜中窒素濃度およびホウ素濃度を表1に併記した。なお、形成されたp型半導体層12中のシリコン原子に対する窒素濃度およびホウ素濃度は、高感度の二次イオン質量分析およびオージェ電子分光法を行った結果得られた値(原子%)を示した。また、p型半導体層12は、光活性層であるi型半導体層に入射する光量を多くするためにp型層としての機能を損なわない範囲で薄い方が望ましく、各実施例および各比較例ともに20nmの膜厚とし、かつ、結晶化率は上述のIc/Ia≧3となるようにH2/SiH4ガス流量比を調節した。なお、各実施例および各比較例において、CVD成膜時の基板温度は170℃とした。
i型半導体層13の形成には、原料ガスとしてSiH4およびH2を用い、H2/SiH4ガス流量比は80倍とし、膜厚2500nmの微結晶シリコンとなるように成膜時間を調節した。なお、各実施例および各比較例において、CVD成膜時の基板温度は180℃とした。
n型半導体層14の形成には、原料ガスとしてSiH4、H2およびPH3を用い、H2/SiH4ガス流量比は20倍とし、PH3/SiH4ガス流量比は、膜中リン濃度が0.01原子%で、かつ、膜厚20nmとなるように調節した。なお、各実施例および各比較例において、CVD成膜時の基板温度は160℃とした。
次に、光電変換層10の形成後、窒素雰囲気中で200℃、1時間の加熱処理を行った。
続いて、光電変換層10の上に、マグネトロンスパッタリング法により透明導電層15として膜厚50nmの酸化亜鉛層を、電極16として膜厚500nmの銀層を順次堆積させて、スーパーストレート型光電変換装置100を得た。
このようにして得られた本実施例1〜18および比較例1〜11の光電変換装置について、AM1.5(100mW/cm2)照射条件下におけるセル面積1cm2の電流−電圧特性を測定した。その結果得られた変換効率を表1にまとめて記し、特に、適正ホウ素濃度の窒素濃度依存性を図2に示した。ただし、ホウ素濃度は有効数字二桁で表示してある。したがって、(関係式1)により算出されたホウ素濃度も有効数字二桁で取り扱う。
Figure 0004215697
(実施例1〜18および比較例1〜11に関する考察)
以下、実施例1〜18の結果および比較例1〜11の結果に関して、表1および図2に基づいて考察する。なお、図2において、実施例1〜18の結果を●印で、比較例1〜11の結果を△印で示した。
実施例1〜18は、p型半導体層中の窒素濃度およびホウ素濃度を徐々に増加させたときに50nmの膜厚でシート抵抗を300kΩ/□以下とするようにホウ素濃度が調節されて作製されている。ただし、シート抵抗値は、窒素雰囲気中200℃、1時間の加熱処理後の値である。図2では、p型半導体層中の窒素濃度およびホウ素濃度の相関関係が示されている。
本願発明者らは、図2に対してフィッティングをおこなった結果(有効数字二桁)、窒素原子濃度A(原子%)、ホウ素原子濃度B(原子%)とすると、
B≧0.11−0.009A+0.042A2(関係式2)
で表される相関関係を持っているときにシート抵抗300kΩ/□以下が実現できることを見出した。このような相関関係を有するp型半導体層を光電変換装置に適用した結果、窒素濃度を次第に増加させると窒素濃度4原子%まで光電変換効率は向上し、その後窒素濃度15原子%まで比較的高い光電変換効率を維持することが明らかになった。この理由は、以下のように考えられる。
p型半導体層が窒素原子を含有することによって、(a)p型半導体層のが広がって拡散電位が増加するとともに、(b)窒素添加による結晶粒界の界面パッシベーションおよびp/i層界面パッシベーションにより界面再結合が低減する等の効果により開放電圧が向上する。ここで、窒素原子濃度が増加するにつれてホウ素の活性化効率の低下を補償するようにホウ素濃度を増加させるので、高窒素濃度においてもp型半導体層のキャリア濃度の低下を伴わない。したがって、高窒素濃度の場合であっても開放電圧および光電変換効率が向上すると考えられる。次に、ホウ素濃度Bが上記関係式1を下回った場合の比較例について考えると、シート抵抗300kΩ/□を越えているためキャリア濃度不足による拡散電位の低下が生じ変換効率も低下していると考えられる。したがって、ホウ素濃度B(原子%)が関係式2を満たしていることが高い変換効率が得られる条件の一つになっているといえる。
一方、図2に対してフィッティングをおこなった結果(有効数字二桁)、
B≦0.2+0.2A+0.05A2(関係式3)
という相関関係を持っているときに高い変換効率が得られることも明らかになっている。
すなわち、ホウ素濃度が上記関係式3を越えて高い側にズレた場合には、シート抵抗は十分低いにもかかわらず、変換効率が低下しているのである。この理由は、ホウ素濃度の増加に伴いp層またはp/i界面で欠陥が増加していることによるものと思われる。すなわち、成長表面の水素被覆率が高いほど欠陥の少ない膜が形成できることが知られているが、ホウ素は化学的に成長表面の水素を引き抜くため欠陥を増加させるのである。本実施例および比較例においては、結晶相の比率を維持するために、ホウ素濃度を増加させたときには[H2]/ [SiH4]ガス流量比も同時に増加させているが、結晶相の比率を維持するために必要な[H2]/ [SiH4]ガス流量比に対し、ホウ素濃度の増加による欠陥の増加を抑制するために必要な[H2]/ [SiH4]ガス流量比の方が大きいため、両者を同時に満たすことは困難であると考えられる。
上記関係式2および3より、p型半導体層中の窒素原子濃度A(原子%)およびホウ素原子濃度B(原子%)は、上述の関係式1:0.11−0.009A+0.042A2≦B≦0.2+0.2A+0.05A2という相関関係を有する場合に、高い光電変換効率を得ることができることが明らかになった。
さらに、上記関係式1を満たす実施例1〜18では、シリコン原子に対する窒素原子濃度が0.01〜15原子%での変換効率は8.6〜10.1%であり、上記関係式1を満たさない比較例1〜11では、シリコン原子に対する窒素原子濃度が0.0002〜15原子%での変換効率は7.9〜8.5%であることから、上記関係式1を満たした上でシリコン原子に対する窒素原子濃度が0.01〜15原子%とすることが窒素濃度の最適値として好ましいといえる。さらに好ましくは、上記関係式1を満たした上で窒素原子濃度を4〜15原子%とする。
本発明の光電変換装置は、スーパーストレート型あるいはサブストレート型の薄膜太陽電池に好適であり、スーパーストレート型積層型あるいはサブストレート型積層型の薄膜太陽電池にも適用可能である。
本発明の実施の形態1のスーパーストレート型光電変換装置の概略断面図である。 実施例および比較例における適正ホウ素濃度の窒素濃度依存性を示すグラフである。 本発明の実施の形態2のスーパーストレート型積層型光電変換装置の概略断面図である。
符号の説明
10、20 光電変換層
11 基板
11a 透光性基板
11b 透明導電層
12、22 p型半導体層
13、23 i型半導体層
14、24 n型半導体層
15 透明導電層
16 電極
100 スーパーストレート型光電変換装置
200 スーパーストレート型積層型光電変換装置

Claims (12)

  1. シリコン原子を少なくとも含有するp型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層を積層して構成される1つ以上のpin型光電変換層を有し、少なくとも1つの光電変換層のp型半導体層は、窒素原子およびホウ素原子をさらに含有し、かつ、シリコン原子濃度に対する窒素原子濃度A(原子%)およびホウ素原子濃度B(原子%)が0.11−0.009A+0.042A2≦B≦0.2+0.2A+0.05A2で表されることを特徴とする光電変換装置。
  2. 窒素原子およびホウ素原子を含むp型半導体層において、窒素原子濃度がシリコン原子濃度に対して0.01〜15原子%である請求項1に記載の光電変換装置。
  3. 窒素原子およびホウ素原子を含むp型半導体層において、シリコン原子が結晶シリコン相として含有する請求項1または2に記載の光電変換装置。
  4. 窒素原子およびホウ素原子を含むp型半導体層において、結晶化率が3以上である請求項3に記載の光電変換装置。
  5. 窒素原子およびホウ素原子を含むp型半導体層は、格子振動分光測定スペクトルにおいて1800〜1950cm-1の波長範囲に吸収ピークを有さない請求項1〜4の何れか1つに記載の光電変換装置。
  6. i型半導体層がシリコン原子を結晶シリコン相として含有する請求項1〜5の何れか1つに記載の光電変換装置。
  7. 基板上に導電膜を介してp型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層を備えた光電変換層を1つ以上形成する工程を有し、
    少なくとも1つの光電変換層を形成する工程において、シリコン原子、ホウ素原子および窒素原子を含む原料ガスを用いて、シリコン原子濃度に対する窒素原子濃度A(原子%)およびホウ素原子濃度B(原子%)が、0.11−0.009A+0.042A2≦B≦0.2+0.2A+0.05A2で表される比率で窒素原子とホウ素原子が含まれるようにp型半導体層を形成することを特徴とする光電変換装置の製造方法。
  8. 窒素原子およびホウ素原子を含むp型半導体層を形成するための原料ガスがSiH4、N2及びB26を含み、 [B26]/[SiH4]ガス流量比を0.033〜4.2の範囲に、かつ、[N2]/[SiH4]ガス流量比を0.002〜3.0の範囲に制御する請求項7に記載の光電変換装置の製造方法。
  9. 窒素原子およびホウ素原子を含むp型半導体層を形成する工程において、シリコン原子が結晶シリコン相として含有するように形成する請求項7または8に記載の光電変換装置の製造方法。
  10. 窒素原子およびホウ素原子を含むp型半導体層を形成するための原料ガスがH2をさらに含み、[H2]/ [SiH4]のガス流量比を120〜900の範囲に制御する請求項9に記載の光電変換装置の製造方法。
  11. i型半導体層を形成する前に、窒素原子およびホウ素原子を含むp型半導体層を180℃〜350℃で加熱する請求項7〜10の何れか1つに記載の光電変換装置の製造方法。
  12. 光電変換層を形成した後に、窒素原子およびホウ素原子を含むp型半導体層を180℃〜350℃で加熱する請求項7〜11の何れか1つに記載の光電変換装置の製造方法。
JP2004257181A 2004-03-24 2004-09-03 光電変換装置およびその製造方法 Expired - Fee Related JP4215697B2 (ja)

Priority Applications (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004257181A JP4215697B2 (ja) 2004-09-03 2004-09-03 光電変換装置およびその製造方法
DE102005013537A DE102005013537A1 (de) 2004-03-24 2005-03-23 Fotoelektrischer Wandler und Herstellverfahren für einen solchen
KR1020050024615A KR100642196B1 (ko) 2004-03-24 2005-03-24 광전변환장치 및 그 제조방법
US11/087,819 US7915520B2 (en) 2004-03-24 2005-03-24 Photoelectric conversion device and manufacturing method thereof
US13/031,969 US20110146773A1 (en) 2004-03-24 2011-02-22 Photoelectric conversion device and manufacturing method thereof

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004257181A JP4215697B2 (ja) 2004-09-03 2004-09-03 光電変換装置およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006073878A JP2006073878A (ja) 2006-03-16
JP4215697B2 true JP4215697B2 (ja) 2009-01-28

Family

ID=36154146

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004257181A Expired - Fee Related JP4215697B2 (ja) 2004-03-24 2004-09-03 光電変換装置およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4215697B2 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20080179762A1 (en) * 2007-01-25 2008-07-31 Au Optronics Corporation Layered structure with laser-induced aggregation silicon nano-dots in a silicon-rich dielectric layer, and applications of the same
JP2009158667A (ja) * 2007-12-26 2009-07-16 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 光電変換装置及びその製造方法
JP4764469B2 (ja) 2008-10-31 2011-09-07 三菱重工業株式会社 光電変換装置及び光電変換装置の製造方法
JP2010135415A (ja) * 2008-12-02 2010-06-17 Mitsubishi Electric Corp 薄膜太陽電池の製造方法
WO2011125251A1 (ja) * 2010-04-09 2011-10-13 三菱電機株式会社 薄膜シリコン太陽電池の製造方法および製造装置
JP5666974B2 (ja) * 2011-04-21 2015-02-12 株式会社東芝 半導体材料を用いた太陽電池

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006073878A (ja) 2006-03-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7915520B2 (en) Photoelectric conversion device and manufacturing method thereof
US6459034B2 (en) Multi-junction solar cell
US7755157B2 (en) Photovoltaic device and manufacturing method of photovoltaic device
US20110259395A1 (en) Single Junction CIGS/CIS Solar Module
JP2001267611A (ja) 薄膜太陽電池及びその製造方法
WO2013061637A1 (ja) 光電変換装置とその製造方法、および光電変換モジュール
JP2004014958A (ja) 薄膜多結晶太陽電池とその製造方法
JP5232362B2 (ja) 集積化薄膜光電変換装置の製造方法および、その製造方法で得られうる集積化薄膜光電変換装置。
JPH05110125A (ja) 光起電力素子
WO2008059857A1 (fr) Dispositif de conversion photoélectrique en film mince
JP4864077B2 (ja) 光電変換装置およびその製造方法
JP2009290115A (ja) シリコン系薄膜太陽電池
JP4215697B2 (ja) 光電変換装置およびその製造方法
JP2001028452A (ja) 光電変換装置
JP4441377B2 (ja) 光電変換装置およびその製造方法
JP4443274B2 (ja) 光電変換装置
JP4441298B2 (ja) 光電変換装置およびその製造方法
JP4215694B2 (ja) 光電変換装置およびその製造方法
JPWO2006049003A1 (ja) 薄膜光電変換装置の製造方法
WO2013031906A1 (ja) 光電変換装置およびその製造方法
EP2402994A1 (en) Method and system for forming photovoltaic cell and a photovoltaic cell
US20100307573A1 (en) Solar cell and manufacturing method thereof
JP4864078B2 (ja) 光電変換装置およびその製造方法
JP2014063848A (ja) 集積型光電変換装置の製造方法
JP5307280B2 (ja) 薄膜光電変換素子

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060912

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20081001

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20081028

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20081104

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111114

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111114

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121114

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121114

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131114

Year of fee payment: 5

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees