JP4479090B2 - アクリル系熱可塑性エラストマー組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リビングラジカル重合を利用してアクリル系熱可塑性エラストマー組成物を製造する方法に関する。より詳しくは、本発明は、特定のリビングラジカル重合開始剤系を用いて、分子量及び分子量分布の制御されたブロック共重合体を合成し、次いで炭素−炭素二重結合を二つ以上有する特定のラジカル重合性化合物を更に共重合させることにより50重量%以上のブロック共重合体を星型共重合体として形成させたアクリル系熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、熱可塑性エラストマーは擬似架橋点となるハードセグメントを両端に持ち、ゴム成分となるソフトセグメントを真中に持つトリブロック共重合体でありそれぞれのセグメントの分子量が非常に揃っていることで性能が発現される。それを満たすトリブロック共重合体を合成させる方法としてはリビングアニオン重合法により、逐次的に重合させることが有効である。
【0003】
しかし、アクリル系熱可塑性エラストマーの製造においては特開平11-335432号公報で見られるように、(メタ)アクリル酸エステルのリビングアニオン重合は副反応を抑えることが非常に困難で極低温で行うことが必要不可欠であり、工業化が非常に困難であった。
【0004】
一方、最近(メタ)アクリレートのリビング重合が有機ハロゲン化物と遷移金属錯体とを組み合わせた開始剤系によるリビングラジカル重合法により可能であることが見出された。この方法によれば、広範囲の単量体に適用できる点、既存の設備に適用可能な重合温度を採用できる点等で有用である。具体的には、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等の遷移金属錯体と、四塩化炭素、1−フェニルエチルクロリドあるいはエチル−2−ブロモイソブチレート等の有機ハロゲン化物(重合開始剤)と、アルミニウムアルコキシ化合物等のルイス酸から成る重合開始剤系を用いたもの等が提案されている(Macromolecules, vol. 28, 1721(1995); J. Am. Chem. Soc., 117, 5614(1995); 特開平8-41117号公報;特開平9-208616号公報等参照)。
【0005】
遷移金属錯体を用いたリビングラジカル重合によるアクリル系熱可塑性エラストマーの合成例としては、例えばニッケルを中心金属としたジブロモビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルと反応性の炭素−ハロゲン結合を分子内に二つ持つ有機ハロゲン化物を用いて両末端に反応性の炭素−ハロゲン結合を持つポリ(ブチルアクリレート)(マクロイニシエーター)を調製し、さらにそれとジブロモビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルを組み合わせた開始剤系でメチルメタクリレートを重合し、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレートのトリブロック共重合体を合成している(Macromolecules, vol. 33, 470(2000))。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記方法で得られたメチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレートのトリブロック共重合体ではポリ(メチルメタクリレート)セグメントの分子量が揃っておらず、リビングアニオン重合法で得たものと比して熱可塑性エラストマーとしての性能が劣っていた。
【0007】
本発明は、以上の従来の技術の課題を解決しようとするものであり、既存の設備に適用可能なリビングラジカル重合法により十分なエラストマー性能を発現する新規なアクリル系熱可塑性エラストマーを製造できるようにすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、遷移金属錯体、有機ハロゲン化物及びルイス酸(又はアミン)からなるリビングラジカル重合開始剤系を用いて行うリビングラジカル重合反応を、炭素数1〜3のアルカノールのメタクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合率90%以上まで重合する第一段階、次いで炭素数4〜18のアルカノールの(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体を逐次添加し、重合率60〜100%の範囲に達するまでブロック共重合させる第二段階、及び該ブロック共重体に対し更に炭素−炭素二重結合を二つ以上有するラジカル重合性化合物を共重合させる第三段階に分けて行うことにより、該ラジカル重合性化合物の共重合により、形成される3次元重合体の周囲に該ブロック共重合体の50重量%以上が結合した星型共重合体を、優れた熱可塑性エラストマー特性を有するアクリル系熱可塑性エラストマー組成物の主成分として得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下の成分(A)、(B)及び(C):
(A)遷移金属錯体;
(B)有機ハロゲン化物;及び
(C)ルイス酸又はアミン
からなるリビングラジカル重合開始剤系を用いてアクリル系熱可塑性エラストマー組成物を製造する方法において、次の第一段階、第二段階及び第三段階:
(第一段階)
炭素数1〜3のアルカノールのメタクリル酸エステル(D)を50重量%以上含有する第1の単量体組成物を重合率90%以上まで重合させる段階;
(第二段階)
第一段階で得られた重合反応混合物に、炭素数4〜18のアルカノールの(メタ)アクリル酸エステル(E)を50重量%以上含有する第2の単量体組成物を逐次添加し、(メタ)アクリル酸エステル(E)を含有する第2の単量体組成物の重合率が60〜100%の範囲に達するまで重合させてブロック共重合体を形成する段階;及び
(第三段階)
第二段階で得られた、ブロック共重合体を含有する重合反応混合物に、炭素−炭素二重結合を二つ以上有するラジカル重合性化合物(F)を加えて共重合させることにより、形成される3次元重合体の周囲に該ブロック共重合体の50重量%以上が結合した星型共重合体をアクリル系熱可塑性エラストマー組成物の主成分として形成する段階
を有することを特徴とする製造方法を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明のアクリル系熱可塑性エラストマーの製造方法においては、遷移金属錯体(成分(A))、重合開始剤として有機ハロゲン化物(成分(B))、及び活性化剤としてルイス酸又はアミン(成分(C))からなるリビングラジカル重合開始剤系を使用するリビングラジカル重合を、第一段階、第二段階及び第三段階に分けて行う。
【0012】
本発明において使用するリビングラジカル重合開始剤系を構成する成分(A)の遷移金属錯体を構成する中心金属としては、鉄、ルテニウム、ロジウム、ニッケル、銅等の周期律表第8〜11族元素(日本化学会編「化学便覧基礎編I改訂第4版」(1993年)記載の周期律表による)が好ましく挙げられる。中でもルテニウムが好ましい。ルテニウムを中心金属とする遷移金属錯体の具体例としては、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリブチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)ルテニウム、ジクロロベンゼンルテニウム、ジクロロp−シメンルテニウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)ルテニウム、シス−ジクロロビス(2,2’−ビピリジン)ルテニウム、ジクロロトリス(1,10−フェナントロリン)ルテニウム、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等が挙げられ、特にジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム又はクロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムが好ましく挙げられる。
【0013】
また、本発明において使用するリビングラジカル重合開始剤系を構成する(成分(B))の有機ハロゲン化合物は、重合開始剤として機能する。このような有機ハロゲン化合物としては、α−ハロゲノカルボニル化合物又はα−ハロゲノカルボン酸エステルを使用でき、中でもα−ハロゲノカルボン酸エステルが好ましく、その具体例として2−ブロモ−2−メチルプロパン酸エチル、2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチル等を挙げることができる。
【0014】
本発明において使用するリビングラジカル重合開始剤系を構成する成分(C)のルイス酸又はアミンは、活性化剤として機能する。このようなルイス酸としては、例えばアルミニウムトリイソプロポキシドやアルミニウムトリ(t−ブトキシド)等のアルミニウムトリアルコキシド;ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)メチルアルミニウム、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェノキシ)メチルアルミニウム等のビス(置換アリールオキシ)アルキルアルミニウム;トリス(2,6−ジフェニルフェノキシ)アルミニウムなどのトリス(置換アリールオキシ)アルミニウム;チタンテトライソプロポキシド等のチタンテトラアルコキシド等を挙げることができ、好ましくはアルミニウムトリアルコキシドであり、特に好ましくはアルミニウムトリイソプロポキシドである。アミンとしては、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン等の脂肪族第一級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族第二級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族第三級アミン等の脂肪族アミン;N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'',N''−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン等の脂肪族ポリアミン;アニリン、トルイジンなどの芳香族第一級アミン、ジフェニルアミンなどの芳香族第二級アミン、トリフェニルアミンなどの芳香族第三級アミン等の芳香族アミンなどを挙げることができる。中でも、脂肪族アミンが好ましく、特にブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミンなどが好ましい。
【0015】
本発明において使用するリビングラジカル重合開始剤系における各成分の含有割合については、必ずしも限定されるものではないが、成分(B)に対する成分(A)の割合が低すぎると重合が遅くなる傾向があり、逆に、高すぎると得られる重合体の分子量分布が広くなる傾向があるので、成分(A):成分(B)のモル比は0.05:1〜1:1の範囲であることが好ましい。また、成分(B)に対する成分(C)の割合が低すぎると重合が遅くなり、逆に、高すぎると得られる重合体の分子量分布が広くなる傾向があるので、成分(B):成分(C)のモル比は1:1〜1:10の範囲内であることが好ましい。
【0016】
本発明において使用するリビングラジカル重合開始剤系は、通常、使用直前に成分(A)の遷移金属錯体、成分(B)の重合開始剤、及び成分(C)の活性化剤を常法により混合することにより調製することができる。また、成分(A)の遷移金属錯体、成分(B)の重合開始剤及び成分(C)の活性化剤をそれぞれ別々に保管しておき、重合反応系中にそれぞれ別々に添加し、重合反応系中で混合してリビングラジカル重合開始剤系として機能するようにしてもよい。
【0017】
本発明のアクリル系熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、基本的には前述のリビングラジカル重合開始剤系の存在下、ラジカル重合性単量体をトルエンなどの溶剤中で、リビングラジカル重合させるものである。これにより、重合率の増大にほぼ比例して、得られる重合体の数平均分子量(Mn)を増大させ、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)で表される分子量分布を1に近い値とすることができ、重合の進行時に、連鎖停止や移動反応による重合体の生成を抑制して、リビング重合を進行させることができる(第一段階)。更に、新たに別の単量体を添加すれば、分子量分布を1に近い値を保持したまま数平均分子量を増大させることができ、ブロック共重合体を製造できる(第二段階)。更に、2以上の炭素−炭素二重結合を有するラジカル重合性化合物を共重合させれば、いわゆる星型共重合体を得ることができる(第三段階)。
【0018】
以下に、リビングラジカル重合の第一段階、第二段階、及び第三段階についてより詳細に説明する。
【0019】
(第一段階)
炭素数1〜3のアルカノールのメタクリル酸エステル(D)を50重量%以上含有する第1の単量体組成物を重合率90%以上まで重合させる。重合率90%未満で次の段階の単量体を添加すると得られるエラストマーのゴム状セグメントのガラス転移温度が高くなりエラストマーとしての性能が低下して好ましくない。
【0020】
炭素数1〜3のアルカノールのメタクリル酸エステル(D)としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル等を単独で又は2種以上を混合して使用できる。これらの中でも、メタクリル酸メチルを好ましく使用できる。
【0021】
第1の単量体組成物には、メタクリル酸エステル(D)が含有量が50重量%以上であることを前提として、必要に応じてメタクリル酸エステル(D)とリビングラジカル重合可能な他の単量体を配合してもよい。このような他の単量体としては、ラジカル重合性単量体であって、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸−n−ペンチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−n−ヘプチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸トルイル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸−2−メトキシエチル、メタクリル酸−3−メトキシブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、メタクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、メタクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタクリル酸2−パーフルオロエチル、メタクリル酸パーフルオロメチル、メタクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、メタクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、メタクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等のメタクリル酸エステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−アミノエチル、γ−(アクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(アクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等のアクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のハロゲン含有不飽和化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有不飽和化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル等の不飽和ジカルボン酸化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル化合物;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系化合物等の各種ビニル系単量体が挙げられる。
【0022】
この第一段階における炭素数1〜3のアルカノールのメタクリル酸エステル(D)の初期濃度は、必ずしも限られるものではないが、低すぎると反応速度が遅すぎ、高すぎると生成ラジカルの単量体への連鎖移動反応が増大し、得られる重合体の分子量分布が広くなる傾向があるので、好ましくは0.5〜8mol(モル)/L(リットル)、特に好ましいのは1〜4mol/Lの範囲である。その際における各成分の重合系内の濃度についても必ずしも限られるものではないが、メタクリル酸エステル(D)を主成分とする単量体の濃度に応じて差はあるものの、成分(B)の重合開始剤濃度は、好ましくは0.1〜100mmol(ミリモル)/L(リットル)、特に好ましくは0.5〜50mmol/Lである。成分(A)の遷移金属錯体の濃度は、好ましくは0.1〜50mmol/L、特に好ましくは0.1〜10mmol/Lである。また、成分(C)のルイス酸又はアミンの濃度は、好ましくは1〜200mmol/L、特に好ましくは1〜50mmol/Lである。
【0023】
(第二段階)
第一段階で得られた重合反応混合物に、炭素数4〜18のアルカノールの(メタ)アクリル酸エステル(E)を50重量%以上含有する第2の単量体組成物を逐次添加し、(メタ)アクリル酸エステル(E)を含有する第2の単量体組成物の重合率が60〜100%の範囲に達するまで重合させてブロック共重合体を形成する。重合率60%未満で、次の段階の炭素−炭素二重結合を二つ以上有するラジカル重合性化合物(F)を添加すると、星型ポリマーを形成せず、重合系全体がゲル化を起こすので好ましくない。
【0024】
炭素数4〜18のアルカノールの(メタ)アクリル酸エステル(E)としては、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル等のアクリル酸エステルを、単独で又は2種以上を混合して使用できる。これらの中でも、メタクリル酸2−エチルヘキシル又はメタクリル酸ドデシルを好ましく使用できる。
【0025】
第2の単量体組成物には、(メタ)アクリル酸エステル(E)の含有量が50重量%以上であることを前提として、必要に応じて(メタ)アクリル酸エステル(E)とリビングラジカル重合可能な他の単量体を配合してもよい。このような他の単量体としては、第一段階で必要に応じて配合される、メタクリル酸エステル(D)とリビングラジカル重合可能な他の単量体と同じものを適宜選択して使用することができる。
【0026】
また、炭素数1〜3のアルカノールのメタクリル酸エステル(D)を主成分とする前述の第1の単量体組成物と、炭素数4〜18のアルカノールの(メタ)アクリル酸エステル(E)を主成分とする第2の単量体組成物との使用割合は、両者の合計量に対しメタクリル酸エステル(D)を主成分とする第1の単量体組成物が10〜40重量%、(メタ)アクリル酸エステル(E)を主成分とする単量体が90〜60重量%の範囲が好ましい。
【0027】
第一段階で得られた重合反応混合物に、炭素数4〜18のアルカノールの(メタ)アクリル酸エステル(E)を50重量%以上含有する第2の単量体組成物を逐次添加する方法としては、それのみを重合系中に添加してもよいが、好ましくは新たに成分(A)及び(C)、更にトルエン等の溶媒と混合して添加することができる。その場合の混合物の濃度は、第2の単量体組成物が1〜4mol/L、成分(A)が0.1〜10mmol/L、成分(C)が1〜50mmol/Lである。
【0028】
(第三段階)
第二段階で得られた、ブロック共重合体を含有する重合反応混合物に、炭素−炭素二重結合を二つ以上有するラジカル重合性化合物(F)を加えて共重合させることにより、形成される3次元重合体の周囲に該ブロック共重合体の50重量%以上が結合した星型共重合体をアクリル系熱可塑性エラストマー組成物の主成分として形成する。
【0029】
なお、特に限定されるものではないが、前述のブロック共重合体におけるメタクリル酸エステル(D)を主成分とする第1の単量体組成物から形成されるポリマーセグメントの分子量は、好ましくは5000〜200000、より好ましくは10000〜50000であり、(メタ)アクリル酸エステル(E)を主成分とする第2の単量体組成物から形成されるポリマーセグメントの分子量は、好ましくは20000〜1000000、より好ましくは30000〜100000である。
【0030】
本発明において使用する炭素−炭素二重結合を二つ以上有するラジカル重合性化合物(F)としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロプロパントリ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン等のポリビニル芳香族化合物などを、単独で又は2種以上を混合して使用できる。これらの中でも、メタクロイル基を2個以上有する化合物を好ましく使用できる。
【0031】
本発明において、炭素−炭素二重結合を二つ以上有するラジカル重合性化合物(F)の添加量は、該ブロック共重合体に対し(もしくは成分(B)に対し)好ましくは2〜100モル等量、より好ましくは5〜50モル等量である。
【0032】
本発明の第三段階において、炭素−炭素二重結合を二つ以上有するラジカル重合性化合物(F)の添加方法は、それのみを重合系中に直接添加しても差し支えないが、好ましくは、溶媒などに希釈して添加することができ、又は新たに成分(A)及び(C)とトルエン等の溶媒と混合して添加することができる。その場合の混合物の濃度は、化合物(F)が0.1〜4mol/L、成分(A)が0.1〜10mmol/L、成分(C)が1〜50mmol/Lである。
【0033】
本発明の製造方法において、リビングラジカル重合反応開始に際しては、窒素のような不活性気体の雰囲気下、反応容器に、単量体、溶媒、ルイス酸又はアミン(成分(C))及び遷移金属錯体(成分(A))からなる混合物を調製し、これに重合開始剤(成分(B))を加えることが好ましい。このようにして得られた混合物を、例えば、60〜120℃の範囲内の温度に加温することにより重合を開始させることができる。
【0034】
重合反応終了後、例えば、重合反応系を0℃以下、好ましくは−78℃程度に冷却して反応を停止させ、ついでトルエン等の有機溶媒で反応混合液を希釈し、希塩酸にて重合開始剤系の金属成分などを除去した後、揮発分を蒸発させることによって重合体を得ることができる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0036】
なお、以下の実施例ならびに比較例において、特に断りのない限り、操作は全て乾燥窒素ガス雰囲気下で行い、試薬類は容器から注射器により採取し、反応系に添加した。また、溶媒及び単量体は、蒸留によって精製し、更に乾燥窒素ガスを吹き込んだ後に用いた。
【0037】
重合体の重合率は、反応混合液中の単量体の濃度をガスクロマトグラフィー(内部標準物質:n−オクタン又は1,2,3,4−テトラハイドロナフタレン)にて分析し、その分析値に基づき算出した。
【0038】
得られた重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の値は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて、次の条件にて測定し、ポリメタクリル酸メチル換算にて算出した。
【0039】
カラム:ショーデックスK−805L(3本直列)
溶媒:クロロホルム
温度:40℃
検出器:RI及びUV
流速:1ml/分
【0040】
実施例1
第一段階として、シュレンク反応管にクロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム12.4mg(0.0160mmol)を採取し、メタクリル酸メチル0.856ml(8.00mmol)、トルエン2.79ml及びn−オクタン0.0860mlを加え、均一に混合した。この混合溶液にジブチルアミンの500mmol/Lトルエン溶液0.160ml(0.0800mmol)を加え、最後に2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチルの751mmol/Lトルエン溶液0.107ml(0.0800mmol)を加えた。得られた混合物を80℃に加温することにより重合反応を開始させた。
【0041】
重合反応を開始後28時間経過した時点で、反応溶液の一部(2.00ml)を抜き取り、それを−78℃に冷却することにより重合反応を停止させ、分析に供した。メタクリル酸メチルの重合率は92%であり、また、反応混合液中に存在するポリメタクリル酸メチルの数平均分子量(Mn)は9400、重量平均分子量(Mw)は10300で、従ってMw/Mnは1.10であった。さらに、そのGPC曲線は単峰性であった。
【0042】
第二段階として、抜き取り後の反応管中の残りの反応溶液2.00ml中に、メタクリル酸ドデシル3.52ml(12.0mmol)、トルエン3.81ml、1,2,3,4−テトラハイドロナフタレン0.352ml、ジブチルアミンの500mmol/Lトルエン溶液0.320ml(0.160mmol)及びクロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム24.8mg(0.0320mmol)を加えて十分に撹拌し、得られた混合物を80℃に加温することにより引き続き重合反応させた。
【0043】
第二段階の重合反応を開始して47時間経過した時点で、反応溶液の一部(2.00ml)を抜き取り、それを−78℃に冷却することにより重合反応を停止させ、分析に供した。メタクリル酸メチルの重合率は99%、メタクリル酸ドデシルの重合率は70%であり、また、反応混合液中に存在するメタクリル酸メチル−メタクリル酸ドデシルブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は76800、重量平均分子量(Mw)は86300で、従ってMw/Mnは1.12であった。さらに、そのGPC曲線は単峰性であった。
【0044】
第三段階として、抜き取り後の反応管中の残りの反応溶液8.00ml中に、エチレングリコールジメタクリレート0.300ml(1.60mmol)及びトルエン3.70ml加え十分に撹拌し、得られた混合物を80℃に加温することにより引き続き重合反応させた。
【0045】
第三段階の重合反応を開始して48時間経過した時点で、反応溶液を−78℃に冷却することにより重合反応を停止させ、分析に供した。メタクリル酸メチルの重合率は100%、メタクリル酸ドデシルの重合率は94%、エチレングリコールジメタクリレートの重合率は86%であった。また、GPC測定を行った所、メタクリル酸メチル−メタクリル酸ドデシルブロック共重合体のピーク以外の星型共重合体のピークが新たに現れた。ブロック共重合体は、数平均分子量(Mn)は77600、重量平均分子量(Mw)は93900で、従ってMw/Mnは1.21、星型共重合体は数平均分子量(Mn)は453000、重量平均分子量(Mw)は666000で、従ってMw/Mnは1.47であった。二つのピークの面積比より、星型共重合体はブロック共重合体から65重量%の収率で得られていることが分かった。
【0046】
得られたポリマーを熱プレス成形によってシートを作成したところ、透明でありかつゴム的感触であることが分かった。
【0047】
実施例2
第一段階として、シュレンク反応管にクロロインデニルビス(トリフェニルホスフイン)ルテニウム12.4mg(0.0160mmol)を採取し、メタクリル酸メチル0.856ml(8.00mmol)、トルエン2.79ml及びn−オクタン0.0860mlを加え、均一に混合した。この混合溶液にジブチルアミンの500mmol/Lトルエン溶液0.160ml(0.0800mmol)を加え、最後に2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチルの751mmol/Lトルエン溶液0.107m1(0.0800mmol)を加えた。得られた混合物を80℃に加温することにより重合反応を開始させた。
【0048】
重合反応を開始後27時間経過した時点で、反応溶液の一部(2.00ml)を抜き取り、それを−78℃に冷却することにより重合反応を停止させ、分析に供した。メタクリル酸メチルの重合率は93%であり、また、反応混合液中に存在するポリメタクリル酸メチルの数平均分子量(Mn)は10800、重量平均分子量(Mw)は11800で、従ってMw/Mnは1.09であった。さらに、そのGPC曲線は単峰性であった。
【0049】
第二段階として、抜き取り後の反応管中の残りの反応溶液2.00ml中に、メタクリル酸ドデシル3.17ml(10.8mmol)、メタクリル酸ベンジル(1.20mmol)、トルエン3.81mol、1,2,3,4−テトラハイドロナフタレン0.352mol、ジブチルアミンの500mmol/Lトルエン溶液0.320ml(0.160mmol)及びクロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム24.8mg(0.0320mmol)を加えて十分に撹拌し、得られた混合物を80℃に加温することにより引き続き重合反応させた。
【0050】
第二段階の重合反応を開始して29時間経過した時点で、反応溶液の一部(2.00ml)を抜き取り、それを−78℃に冷却することにより重合反応を停止させ、分析に供した。メタクリル酸メチルの重合率は98%、メタクリル酸ドデシルの重合率は65%、メタクリル酸ベンジルの重合率は72%であり、また、反応混合液中に存在するメタクリル酸メチルとメタクリル酸ドデシル−メタクリル酸ベンジルランダム共重合体とのブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は67700、重量平均分子量(Mw)は77900で、従ってMw/Mnは1.15であった。さらに、そのGPC曲線は単峰性であった。
【0051】
第三段階として、抜き取り後の反応管中の残りの反応溶液8.00ml中に、エチレングリコールジメタクリレート0.180ml(0.960mmo1)及びトルエン2.22ml加え十分に撹拌し、得られた混合物を80℃に加温することにより引き続き重合反応させた。
【0052】
第三段階の重合反応を開始して60時間経過した時点で、反応溶液を−78℃に冷却することにより重合反応を停止させ、分析に供した。メタクリル酸メチルの重合率は100%、メタクリル酸ドデシルの重合率は92%、メタクリル酸ベンジル94%、エチレングリコールジメタクリレートの重合率は98%であった。また、GPC測定を行った所、該ブロック共重合体のピーク以外の星型共重合体のピークが新たに現れた。ブロック共重合体は、数平均分子量(Mn)は63800、重量平均分子量(Mw)は75300で、従ってMw/Mnは1.18、星型共重合体は、数平均分子量(Mn)は441300、重量平均分子量(Mw)は569200で、従ってMw/Mnは1.29であった。二つのピークの面積比より、星型共重合体はブロック共重合体から64重量%の収率で得られていることが分かった。
【0053】
得られたポリマーを熱プレス成形によってシートを作成したところ、透明でありかつゴム的感触であることが分かった。
【0054】
実施例3
第一段階として、シュレンク反応管にクロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム12.4mg(0.0160mmol)を採取し、メタクリル酸メチル0.856ml(8.00mmol)、トルエン2.79ml及びn−オクタン0.0860mlを加え、均一に混合した。この混合溶液にジブチルアミンの500mmol/Lトルエン溶液0.160ml(0.0800mmol)を加え、最後に2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチルの751mmol/Lトルエン溶液0.107ml(0.0800mmol)を加えた。得られた混合物を80℃に加温することにより重合反応を開始させた。
【0055】
重合反応を開始後28時間経過した時点で、反応溶液の一部(2.00ml)を抜き取り、それを−78℃に冷却することにより重合反応を停止させ、分析に供した。メタクリル酸メチルの重合率は94%であり、また、反応混合液中に存在するポリメタクリル酸メチルの数平均分子量(Mn)は10800、重量平均分子量(Mw)は12000で、従ってMw/Mnは、1.11であった。さらに、そのGPC曲線は単峰性であった。
【0056】
第二段階として、抜き取り後の反応管中の残りの反応溶液2.00ml中に、メタクリル酸ドデシル3.52ml(12.0mmol)、トルエン3.81ml、1,2,3,4−テトラハイドロナフタレン0.352ml、ジブチルアミンの500mmol/Lトルエン溶液0.320ml(0.160mmol)及びクロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム24.8mg(0.0320mmol)を加えて十分に撹拌し、得られた混合物を80℃に加温することにより引き続き重合反応させた。
【0057】
第二段階の重合反応を開始して58時間経過した時点で、反応溶液の一部(2.00ml)を抜き取り、それを−78℃に冷却することにより重合反応を停止させ、分析に供した。メタクリル酸メチルの重合率は99%、メタクリル酸ドデシルの重合率は78%であり、また、反応混合液中に存在するメタクリル酸メチル−メタクリル酸ドデシルブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は75000、重量平均分子量(Mw)は87000で、従ってMw/Mnは1.16であった。さらに、そのGPC曲線は単峰性であった。
【0058】
第三段階として、抜き取り後の反応管中の残りの反応溶液8.00ml中に、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.204ml(0.640mmol)及びトルエン1.40mlを加え十分に撹拌し、得られた混合物を80℃に加温することにより引き続き重合反応させた。
【0059】
第三段階の重合反応を開始して20時間経過した時点で、反応溶液を−78℃に冷却することにより重合反応を停止させ、分析に供した。メタクリル酸メチルの重合率は100%、メタクリル酸ドデシルの重合率は89%、トリメタクリル酸トリメチロールプロパンの重合率は80%であった。また、GPC測定を行ったところ、メタクリル酸メチル−メタクリル酸ドデシルブロック共重合体のピーク以外の星型共重合体のピークが新たに現れた。ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は66600、重量平均分子量(Mw)は81300で、従ってMw/Mnは1.22、星型共重合体の数平均分子量(Mn)は1071700、重量平均分子量(Mw)は2182900で、従ってMw/Mnは2.04であった。二つのピークの面積比より、星型共重合体はブロック共重合体から73重量%の収率で得られていることが分かった。
【0060】
得られたポリマーを熱プレス成形によってシートを作成したところ、透明でありかつゴム的感触であることが分かった。
【0061】
比較例1
第一段階として、シュレンク反応管にクロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム12.4mg(0.0160mmol)を採取し、メタクリル酸メチル0.856ml(8.00mmol)、トルエン2.79ml及びn−オクタン0.0860mlを加え、均一に混合した。この混合溶液にジブチルアミンの500mmol/Lトルエン溶液0.160ml(0.0800mmol)を加え、最後に2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチルの751mmol/Lトルエン溶液0.107mmol(0.0800mmol)を加えた。得られた混合物を80℃に加温することにより重合反応を開始させた。
【0062】
重合反応を開始後28時間経過した時点で、反応溶液の一部(2.00ml)を抜き取り、それを−78℃に冷却することにより重合反応を停止させ、分析に供した。メタクリル酸メチルの重合率は91%であり、また、反応混合液中に存在するポリメタクリル酸メチルの数平均分子量(Mn)は9900、重量平均分子量(Mw)は10900で、従ってMw/Mnは1.10であった。さらに、そのGPC曲線は単峰性であった。
【0063】
第二段階として、抜き取り後の反応管中の残りの反応溶液2.00ml中に、メタクリル酸ドデシル3.52ml(12.0mmol)、トルエン3.81ml、1,2,3,4−テトラハイドロナフタレン0.852ml、ジブチルアミンの500mmol/Lトルエン溶液0.320ml(0.160mmol)及びクロロインデニルビス(トリフフェニルホスフィン)ルテニウム24.8mg(0.0320mmol)を加えて十分に撹拌し、得られた混合物を80℃に加温することにより引き続き重合反応させた。
【0064】
第二段階の重合反応を開始して20時間経過した時点で、反応溶液の一部(2.00ml)を抜き取り、それを−78℃に冷却することにより重合反応を停止させ、分析に供した。メタクリル酸メチルの重合率は97%、メタクリル酸ドデシルの重合率は32%であり、また、反応混合液中に存在するメタクリル酸メチル−メタクリル酸ドデシルブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は41300、重量平均分子量(Mw)は46700で、従ってMw/Mnは1.13であった。さらに、そのGPC曲線は単峰性であった。
【0065】
第三段階として、抜き取り後の反応管中の残りの反応溶液8.00ml中に、エチレングリコールジメタクリレート0.300ml(1.60mmol)及びトルエン3.70ml加え十分に撹拌し、得られた混合物を80℃に加温することにより引き続き重合反応させた。
【0066】
第三段階の重合反応を開始して30時間経過した時点で、トルエンに不溶なポリマーとなった。熱プレスによる成形を試みたが、熱可塑性ではなかった。
【0067】
比較例2
第一段階として、シュレンク反応管にクロロインデニビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム58.2mg(0.0750mmol)を採取し、メタクリル酸ドデシル6.60ml(22.5mmol)、トルエン7.09ml及び1,2,3,4−テトラハイドロナフタレン0.659mlを加え、均一に混合した。この混合溶液にジブチルアミンの500mmol/Lトルエン溶液0.600ml(0.300mmol)を加え、最後に1,2−ビス(ブロモプロピオニルオキシ)エタンの740mmol/Lトルエン液0.0610ml(0.0450mmol)を加えた。得られた混合物を80℃に加温することにより重合反応を開始させた。
【0068】
重合反応を開始後30時間経過した時点で、反応溶液の一部(5.00ml)を抜き取り、それを−78℃に冷却することにより重合反応を停止させ、分析に供した。メタクリル酸ドデシルの重合率は90%であり、また、反応混合液中に存在するポリメタクリル酸ドデシルの数平均分子量(Mn)は76800、重量平均分子量(Mw)は95200で、従ってMw/Mnは1.24であった。さらに、そのGPC曲線は単峰性であった。
【0069】
第二段階として、抜き取り後の反応管中の残りの反応溶液10.0ml中に、メタクリル酸メチル1.60ml(15.0mmol)、トルエン3.40ml、n−オクタン0.160mlを加えて十分に撹拌し、得られた混合物を80℃に加温することにより引き続き重合反応させた。
【0070】
第二段階の重合反応を開始して47時間経過した時点で、反応溶液を−78℃に冷却することにより重合反応を停止させ、分析に供した。メタクリル酸ドデシルの重合率は96%、メタクリル酸メチルの重合率は84%であり、また、反応混合液中に存在するメタクリル酸メチル−メタクリル酸ドデシル−メタクリル酸メチルトリブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は101000、重量平均分子量(Mw)は139400で、従ってMw/Mnは1.38であった。また、そのGPC曲線は二峰性であった。
【0071】
得られたポリマーを熱プレス成形によってシートを作成したところ、不透明であり、ゴム的弾性は無かった。
【0072】
実施例1、2及び3において、本発明の製造方法により得られた熱可塑性エラストマー組成物は、ゴム的弾性のよいものであったが、比較例1では、第二段階のメタクリル酸ドデシルの重合率が32%と非常に低いために、熱可塑性のエラストマー組成物を得ることができなかった。また、比較例2では、実施例1において使用したようなリビングラジカル重合開始剤系を用いずに二官能性開始剤(1,2−ビス(ブロモプロピオニルオキシ)エタン)を用い、本発明の製造方法とは異なり、第一段階と第二段階とを入れ替え、メタクリル酸ドデシルからメタクリル酸メチルに逐次に重合を行うことにより(即ち、第一段階と第二段階とを入れ替えて重合を行うことにより)トリブロック共重合体を得たが、ゴム弾性を示す熱可塑性エラストマーではなかった。
【0073】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、既存の設備に適用可能なリビングラジカル重合法により十分なエラストマー性能を発現する新規なアクリル系熱可塑性エラストマーを製造できる。
Claims (8)
- 以下の成分(A)、(B)及び(C):
(A)遷移金属錯体;
(B)有機ハロゲン化物;及び
(C)ルイス酸又はアミン
からなるリビングラジカル重合開始剤系を用いてアクリル系熱可塑性エラストマー組成物を製造する方法において、次の第一段階、第二段階及び第三段階:
(第一段階)
炭素数1〜3のアルカノールのメタクリル酸エステル(D)を50重量%以上含有する第1の単量体組成物を重合率90%以上まで重合させる段階;
(第二段階)
第一段階で得られた重合反応混合物に、炭素数4〜18のアルカノールの(メタ)アクリル酸エステル(E)を50重量%以上含有する第2の単量体組成物を逐次添加し、(メタ)アクリル酸エステル(E)を含有する第2の単量体組成物の重合率が60〜100%の範囲に達するまで重合させてブロック共重合体を形成する段階;及び
(第三段階)
第二段階で得られた、ブロック共重合体を含有する重合反応混合物に、炭素−炭素二重結合を二つ以上有するラジカル重合性化合物(F)を加えて共重合させることにより、形成される3次元重合体の周囲に該ブロック共重合体の50重量%以上が結合した星型共重合体をアクリル系熱可塑性エラストマー組成物の主成分として形成する段階
を有することを特徴とする製造方法。 - 成分(A)がルテニウムを中心金属とする遷移金属錯体である請求項1記載の製造方法。
- 成分(A)がジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム又はクロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムである請求項1又は2記載の製造方法。
- 成分(B)がα−ハロゲノカルボン酸エステルである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 成分(C)のルイス酸がアルミニウムトリアルコキシドである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 成分(C)のアミンが脂肪族アミンである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 炭素数1〜3のアルカノールのメタクリル酸エステル(D)がメタクリル酸メチルであり、炭素数4〜18のアルカノールの(メタ)アクリル酸エステル(E)がメタクリル酸ドデシルである請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
- 炭素−炭素二重結合を二つ以上有するラジカル重合性化合物(F)がメタクリロイル基を二つ以上有する化合物である請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
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