JP2004051934A - 共重合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】極性オレフィンに由来する単量体単位の含有量が高い共重合体は、ルテニウムを中心金属に有する金属錯体及び/又は鉄を中心金属に有する金属錯体成分(成分(A))、有機ハロゲン化合物からなる重合開始剤系(成分(B))の存在下に、非極性オレフィン(成分(D))と極性オレフィン(成分(E))を共重合させることにより製造する。重合速度をいっそう速めるために、重合開始剤系にルイス酸又はアミン化合物(成分(C))を併用することが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、制御ラジカル重合開始剤系の存在下で、非極性オレフィン及び極性オレフィンを共重合させることからなる共重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、極性オレフィン重合体として知られているメタクリル系重合体は、透明性、耐候性、機械特性などに優れているため、各種成形体、加硫ゴムなど様々な分野において用いられている。近年では、メタクリル系重合体が有すべき物性に対する要求が多様化し、耐熱性、耐寒性、耐水性等の特性をいっそう改善することが求められている。このような要求を満たすメタクリル系重合体としては、非極性オレフィンと極性オレフィンである(メタ)アクリル酸エステルとをラジカル重合させた共重合体(例えば、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等)が知られている。
【0003】
しかしながら、ラジカル重合法で、非極性オレフィンと極性オレフィンとを含有する単量体組成物から共重合体を製造する際には、高温高圧などの過酷な反応条件を必要とする場合が多いため、より温和な重合条件で該共重合体を得る方法の提供が市場より求められていた。
【0004】
この要求に応えるための方法として、例えば、遷移金属錯体を触媒に用いた以下の重合方法(a)及び重合方法(b):
重合方法(a) パラジウムのジイミン錯体を用いて温和な条件でエチレンなどの非極性オレフィンとアクリル酸メチルとの共重合体を得る方法(非特許文献1参照);
重合方法(b) パラジウムのピロール−イミン中性錯体を用いて温和な条件でエチレンなどの非極性オレフィンとアクリル酸メチルとの共重合体を得る方法(非特許文献2参照);
が提案されている。
【0005】
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc., 118, 267−268(1996)
【非特許文献2】Macromolecules, 34, 7656−7663 (2001)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、 上述の重合方法(a)の場合には、分子量分布は制御できるものの、アクリル酸メチルなどの極性オレフィンに由来する単量体単位を30mol%以上含有する共重合体が得られていないという問題点があった。また、重合方法(b)の場合には、アクリル酸メチルなどの極性オレフィンに由来する単量体単位の含有量を高めた共重合体を得ることはできるものの、分子量の制御及び分子量分布の制御が共に困難であるという問題点があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、上記従来の技術の問題点を解決することであり、分子量、分子量分布を制御しつつ、温和な重合条件で、非極性オレフィンと極性オレフィンとを重合させ、極性オレフィンに由来する単量体単位の含有量が高い共重合体を製造する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、制御ラジカル重合の際に使用する重合開始剤系として、ルテニウムを中心金属に有する金属錯体と鉄を中心金属に有する金属錯体との少なくともいずれか一つの金属錯体と有機ハロゲン化合物とからなる重合開始剤系を用いることにより、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、成分(A)及び(B):
(A)ルテニウムを中心金属に有する金属錯体及び/又は鉄を中心金属に有する金属錯体;
(B)有機ハロゲン化合物;
からなる重合開始剤系の存在下に、成分(D)として非極性オレフィン及び成分(E)として極性オレフィンを共重合させることを特徴とする共重合体の製造方法を提供する。ここで、重合速度をいっそう速めるために、重合開始剤系に成分(C)としてルイス酸またはアミン化合物を併用することが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の共重合体の製造方法について詳細に説明する。
【0011】
本発明の方法は、ルテニウムを中心金属に有する金属錯体と鉄を中心金属に有する金属錯体との少なくともいずれか一つの金属錯体(成分(A))、重合開始剤として有機ハロゲン化合物(成分(B))、および所望により活性化剤としてルイス酸またはアミン化合物(成分(C))を含む制御ラジカル重合開始剤系を用いて、非極性オレフィン(成分(D))と極性オレフィン(成分(E))を共重合する方法である。
【0012】
なお、成分(A)の金属錯体として、ルテニウムを中心金属とするものと、鉄を中心金属とするものとを単独で用いてもよいが、双方を同時に併用してもよい。その場合にも、それぞれ単独で使用した場合と同様の効果が期待できる。
【0013】
本発明の方法において重合開始剤系の必須成分の一つとして使用する成分(A)のルテニウムを中心金属に有する金属錯体の好ましい具体例としては、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリブチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)ルテニウム、ジクロロベンゼンルテニウム、ジクロロ−p−シメンルテニウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)ルテニウム、シス−ジクロロビス(2,2′−ビピリジン)ルテニウム、ジクロロトリス(1,10−フェナントロリン)ルテニウム、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロ(2−N,N−ジメチルアミノインデニル)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、エチレンインデニルビストリフェニルホスフィンルテニウム(ペンタフルオロフェニル)ボレート、エチレンインデニルビストリフェニルホスフィンルテニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート等が挙げられ、これらルテニウムを中心金属に有する金属錯体は1種で又は2種以上を併用して使用することができる。これらの中でもジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロ(2−N,N−ジメチルアミノインデニル)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、エチレンインデニルビストリフェニルホスフィンルテニウム(ペンタフルオロフェニル)ボレート、エチレンインデニルビストリフェニルホスフィンルテニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートなどが好ましく用いられ、クロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、エチレンインデニルビストリフェニルホスフィンルテニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートなどがより好ましく用いられる。
【0014】
また、本発明の方法において重合開始剤系の必須成分の一つとして使用する成分(A)の鉄を中心金属とする金属錯体の具体例としては、フェロセン、アセチルフェロセン、1,1′−ビス(ジフェニルフォスフィノ)フェロセン、1,1′−ビス(ジ−イソプロピルフォスフィノ)フェロセン、ビス(エチルシクロペンタジエニル)アイロン、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)アイロン、ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)アイロン、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)アイロン、n−ブチルフェロセン、tert−ブチルフェロセン、シクロヘキサジエンアイロントリカルボニル、シクロオクタテトラエンアイロントリカルボニル、α−(N,N−ジメチルアミノ)エチルフェロセン、N,N−ジメチルアミノメチルフェロセン、1,1′−ジメチルフェロセン、エチルフェロセン、α−ヒドロキシエチルフェロセン、ヒドロキシメチルフェロセン、アイロン(II)アセテート、アイロン(III)アセチルアセトナート、アイロン(II)ブロマイド、アイロン(II)クロライド、アイロン(II)ヨード、アイロン(III)ブロマイド、アイロン(III)クロライド、アイロン(II)フタロシアニン、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)アイロン、ブロモジカルボニルシクロペンタジエニルアイロン、ブロモジカルボニル(ペンタメチルシクロペンタジエニル)アイロン、ジカルボニルシクロペンタジエニルヨードアイロン、ジカルボニル(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ヨードアイロン、1,1′−ジアセチルフェロセン、ジカルボニルシクロペンタジエニルアイロンダイマー、ジカルボニル(ペンタメチルシクロペンタジエニル)アイロンダイマー等が挙げられ、これらは1種で又は2種以上を併用して使用することができる。これらの中でもジカルボニルシクロペンタジエニルアイロンダイマーが好ましく用いられる。
【0015】
また、本発明の方法において重合開始剤系の他の必須成分として使用する成分(B)の有機ハロゲン化合物は、重合開始剤として機能する。このような有機ハロゲン化合物としては、例えば、テトラクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロメタン、モノクロロエタン、トリクロロフェニルメタン、ジクロロジフェニルメタン、モノブロモメタン、モノヨードメタン等のハロゲン化炭化水素化合物;2,2,2−トリクロロアセトン、2,2−ジクロロアセトフェノン等のα−ハロゲノカルボニル化合物;2,2,2−トリクロロ酢酸メチル、2,2−ジクロロ酢酸メチル、2−クロロプロパン酸メチル、2−ブロモ−2−メチルプロパン酸エチル、2−ヨード−2−メチルプロパン酸エチル、2−ブロモ−プロパン酸エチル、2−ヨード−プロパン酸エチル、2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチル、2−ブロモ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチル、2−ヨード−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチル、1,2−ビス(2′−ブロモ−2′−メチルプロピオニルオキシ)エタン、1,2−ビス(2′−ヨード−2′−メチルプロピオニルオキシ)エタン、1,2−ビス(2′−ブロモプロピオニルオキシ)エタン、1,2−ビス(2′−ヨードプロピオニルオキシ)エタン、2−(2’−ブロモ−2′−メチルプロピオニルオキシ)エチルアルコール、2−(2’−ヨード−2’−メチルプロピオニルオキシ)エチルアルコール等のα−ハロゲノカルボン酸エステルを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上併用して使用できるが、これらのなかでも、α−ハロゲノカルボニル化合物、α−ハロゲノカルボン酸エステルが好ましく用いられ、2−ブロモ−2−メチルプロパン酸エチル、2−ヨード−プロパン酸エチルがより好ましく用いられる。
【0016】
さらに、本発明の方法においては、重合開始剤系に、活性化剤として機能する成分(C)としてルイス酸またはアミン化合物を併用することが好ましい。これにより、重合速度をいっそう速めることができる。
【0017】
成分(C)のルイス酸としては、アルミニウムアルコキシド(例えば、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ(t−ブトキシド)等のアルミニウムトリアルコキシド;ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)メチルアルミニウム、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェノキシ)メチルアルミニウム等のビス(置換アリールオキシ)アルキルアルミニウム;トリス(2,6−ジフェニルフェノキシ)アルミニウムなどのトリス(置換アリールオキシ)アルミニウム);チタンアルコキシド(例えば、チタンテトライソプロポキシド等のチタンテトラアルコキシド);イットリビウムアルコキシド(例えば、イットリビウムテトライソプロポキシド等のイットリビウムテトラアルコキシド)等を挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上併用して使用できるが、これらの中でも、アルミニウムアルコキシド、特にアルミニウムトリアルコキシドが好ましく用いられ、具体的にはアルミニウムトリイソプロポキシドがより好ましく用いられる。
【0018】
また、成分(C)のアミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン等の脂肪族第一級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、tert−アミル−tertブチルアミン等の脂肪族第二級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族第三級アミン;N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン等の脂肪族ポリアミン;アニリン、トルイジンなどの芳香族第一級アミン;ジフェニルアミンなどの芳香族第二級アミン;トリフェニルアミンなどの芳香族第三級アミンなどを挙げることができる。これらは、1種単独でまたは2種以上併用して使用できるが、これらのなかでも、脂肪族アミンが好ましく用いられ、ジブチルアミンがより好ましく用いられる。
【0019】
本発明の方法において、重合開始剤系を構成する成分(A)の金属錯体及び成分(B)の有機ハロゲン化合物の重合反応系内における濃度は、本発明の効果が奏されるかぎりは特に限定されないが、成分(A)の金属錯体の濃度が好ましくは0.01〜100mmol/L、より好ましくは0.1〜40mmol/Lであり、また成分(B)の有機ハロゲン化合物の濃度が好ましくは0.1〜100mmol/L、より好ましくは0.5〜60mmol/Lである。また、活性化剤として成分(C)のルイス酸またはアミン化合物を使用する場合、その濃度は適宜調整して使用できるが、好ましくは0.5〜80mmol/L、より好ましくは1〜60mmol/Lである。
【0020】
本発明の方法における制御ラジカル重合開始剤系を構成する成分(A)の金属錯体及び成分(B)の有機ハロゲン化合物の含有割合については、必ずしも限定されるものではないが、成分(A)の金属錯体及び成分(B)の有機ハロゲン化合物の配合モル比率[(A)/(B)]は、成分(A)の金属錯体が少なすぎると重合速度が遅くなる傾向にあり、多すぎると副反応が生じやすくなり得られる重合体の分子量分布が広くなる傾向にあるので、0.01〜3の範囲にあることが好ましい。
【0021】
また、成分(C)のルイス酸またはアミン化合物を用いる場合には、成分(C)のルイス酸またはアミン化合物と成分(A)の金属錯体の配合モル比率[(C)/(A)]は、成分(C)のルイス酸またはアミン化合物が少なすぎると重合速度が遅くなる傾向にあり、多すぎると活性が高くなりすぎ副反応が生じやすくなり、重合を制御しにくくなる傾向にあるので、0.3〜50の範囲にあることが好ましい。
【0022】
次に、本発明の方法において単量体の一つとして使用する成分(D)の非極性オレフィンとしては、特に限定されないが、α−オレフィンであることが好ましく、炭素数2〜20のα−オレフィンであることがより好ましい。かかる炭素数2〜20のα−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上併用して使用できるが、これらのなかでも、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、3−メチル−1−ブテン等が好ましく用いられ、エチレン、1−ヘキセンがより好ましく用いられる。
【0023】
また、本発明の方法において単量体の一つとして使用する成分(E)の極性オレフィンとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどのビニルエステル化合物、シアン化ビニル化合物、メタクリル酸置換アミド、アクリル酸置換アミド等の置換アミドなどの各種ビニル系単量体等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上で使用できるが、これらの中でも、ビニルエステル化合物、シアン化ビニル化合物などが好ましく用いられ、中でもビニルエステル化合物のアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが好ましく用いられ、特にアクリル酸エステルがより好ましく用いられる。
【0024】
アクリル酸エステルの具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル等のアクリル酸アルキルエステル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−アミノエチル、γ−(アクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(アクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上併用して使用できるが、これらの中でもアクリル酸アルキルエステルが好ましく用いられ、アクリル酸メチルがより好ましく用いられる。
【0025】
メタクリル酸エステルの具体例としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸−n−ペンチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−n−ヘプチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸トルイル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸−2−メトキシエチル、メタクリル酸−3−メトキシブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、メタクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、メタクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタクリル酸2−パーフルオロエチル、メタクリル酸パーフルオロメチル、メタクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、メタクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、メタクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等が挙げられる。
【0026】
また、上記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。また、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル以外のビニルエステル化合物としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等が挙げられる。メタクリル酸置換アミドとしては、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド等が挙げられ、アクリル酸置換アミドとしては、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
【0027】
本発明の方法において、重合反応系内の成分(D)の非極性オレフィンの初期濃度は、必ずしも限られるものではないが、低すぎると重合反応速度が遅くなりやすく、共重合体含有量が低くなりやすい傾向にあるため、例えば、常温で液体である単量体を用いる場合には、0.3mol(モル)/L(リットル)以上であることが好ましく、0.3〜10mol/Lの範囲であることがより好ましく、0.5〜6mol/Lの範囲であることがさらに好ましい。また、例えば、常温で気体である単量体を用いる場合、重合系内圧力が15MPa以下であることが好ましく、10MPa以下であることがより好ましい。
【0028】
同様に、重合反応系内の成分(E)の極性オレフィンの初期濃度は、必ずしも限られるものではないが、低すぎると重合反応速度が遅くなりやすく、高すぎると相対的に成分(D)の非極性オレフィンの含有量が低くなり過ぎるため、0.3〜10mol/Lの範囲であることが好ましく、0.5〜6mol/Lの範囲であることがより好ましい。
【0029】
本発明の方法で製造される共重合体を構成する全単量体単位中の成分(E)の極性オレフィン単位の含有量は、極性オレフィン共重合体本来の性能を十分発揮させるために、50mol%以上とすることが好ましい。
【0030】
本発明の方法で製造される共重合体を構成する全単量体単位に占める成分(D)の非極性オレフィンから構成される単量体単位及び成分(E)の極性オレフィンから構成される単量体単位の含有割合[D:E]は、成分(D)の非極性オレフィンから構成される単量体単位が少なすぎると共重合体に十分な耐熱性、耐寒性、耐水性等の性能を付与できにくくなる傾向があり、多すぎると極性オレフィン共重合体本来の性能が十分発揮しにくくなる傾向があるため、2:98〜50:50であることが好ましく、4:96〜45:55であることがより好ましい。
【0031】
また、本発明の方法においては、所望の物性を損ねない程度であれば、成分(D)の非極性オレフィン及び成分(E)の極性オレフィン以外に、これらと共重合しうる他の単量体を用いることができる。このような他の単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン等の芳香族ビニル化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のハロゲン含有不飽和化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有不飽和化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル等の不飽和ジカルボン酸化合物;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系化合物等を挙げることができる。
【0032】
本発明の方法において、重合反応系を調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、窒素のような不活性ガスの雰囲気下、トルエン等の有機溶媒、成分(A)の金属錯体、成分(B)の有機ハロゲン化合物、成分(C)のルイス酸またはアミン化合物、成分(D)の非極性オレフィン及び成分(E)の極性オレフィンを、重合反応系中にそれぞれ別々に添加し、混合することにより調整することができる。また、重合反応に際しては、上記のようにして得られた混合物を、例えば、20〜120℃の範囲内の温度に加温することにより重合させることができる。
【0033】
次いで、重合反応終了後、例えば、共重合反応系を0℃以下、好ましくは−78℃程度に冷却して反応を停止させ、次にトルエン等の有機溶媒で生成した共重合体を抽出し、希塩酸にて重合開始剤系の金属成分などを除去した後、揮発分を蒸発させることによって共重合体を得ることができる。
【0034】
以上説明した本発明の方法は、基本的には上述の重合反応系を制御ラジカル重合させるものである。これにより、重合率の増大にほぼ比例して、得られる重合体の数平均分子量(Mn)を増大させることができ、重合の進行時に、連鎖停止や移動反応による共重合成分が生成することなく制御ラジカル重合を進行させることができる。また、重合がほぼ完了した重合反応系に新たに同じ成分(D)の非極性オレフィン及び成分(E)の極性オレフィンを添加すれば、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比[Mw/Mn]で表される分子量分布の値を保持したまま、重合率の増大にほぼ比例して、数平均分子量(Mn)を増大させた共重合体を得ることができる。更に、重合がほぼ完了した重合反応系に新たに種類の異なる成分(D)の非極性オレフィン及び成分(E)の極性オレフィンを添加した場合には、分子量分布の値を保持したまま、重合率の増大にほぼ比例して、数平均分子量(Mn)を増大させたランダムブロック共重合体を製造することも可能となる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、以下の実施例ならびに比較例において、特に断りのない限り、操作は全て乾燥窒素ガス雰囲気下で行い、試薬類は容器から注射器により採取し、反応系に添加した。また、溶媒及び単量体は、蒸留によって精製し、更に乾燥窒素ガスを吹き込んだ後に用いた。
【0036】
また、共重合体の平均分子量の測定、共重合体の組成決定等は以下の方法により行った。
【0037】
(平均分子量の測定)
得られた重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布[Mw/Mn]の値は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて、下記条件にて測定し、ポリメタクリル酸メチル換算にて算出した。
カラム:ショーデックスK−805L(3本直列)
溶媒:クロロホルム
温度:40℃
検出器:RI(RI−1530、日本分光社製)及びUV(UV−1570、日本分光社製)
流速:1ml/分
【0038】
(共重合体組成)
共重合体中の成分(D)の非極性オレフィン単位及び成分(E)の極性オレフィン単位の組成は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて下記条件にて共重合体のみを分離回収し、次いで得られた共重合体について、核磁気共鳴装置(NMR:JNM−LA500、JEOL社製)を用いて、1H−NMR測定を行い、得られた分析値に基づき算出した。
カラム:ショーデックスK−5002F
溶媒:クロロホルム
検出器:RI(RI−1531、日本分光社製)
流速:10ml/分
【0039】
製造例1(エチレンインデニルビストリフェニルホスフィンルテニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレ−トの合成)
アルゴン置換した100ml二口フラスコに、クロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(STREM社製)0.776gと、テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸ナトリウム塩2水和物(同人化学研究所社製)0.922gを採取し、塩化メチレン(和光純薬工業社製特級品を水素化カルシウム上で蒸留したもの)25mlを加え、室温下で攪拌溶解した。
【0040】
次いで、エチレン(住友精化社製)をバルーンに満たし、100ml二口フラスコの一方の口につないで、常温で5時間攪拌して反応させたところ、黒茶色の溶液と一部沈殿物が生成した。沈殿物を取り除くために、ろ紙つきキャヌラーを通して、別のアルゴン置換した100ml二口フラスコに黒茶色の反応溶液を移送した後、減圧濃縮して塩化メチレンを一部除去した。次に、n−ヘキサン(和光純薬工業社製高速液体クロマトグラフィー用を水素化カルシウム上で蒸留したものを凍結脱気処理したもの)30mlをゆっくり添加し、一晩放置したところ、黄色の濁った上澄みと黒茶色の下層に分かれた。
【0041】
さらに、ろ紙つきキャヌラーを使って上澄みを取り除いた後、下層に塩化メチレン5mlを加え希釈した。次いで、n−ヘキサン80mlを添加した別のアルゴン置換した100ml二口フラスコに、得られた下層の塩化メチレン溶液を滴下、攪拌、静置させたところ、黄色の濁った上澄みと、黒茶色の下層に分かれた。上澄みを除去した後、下層を再度、n−ヘキサン80mlを添加した別のアルゴン置換した100ml二口フラスコに加え、攪拌、静置させたところ、黄色の濁った上澄みと黒茶色の下層に分かれた。上澄みを除去した後、得られた黒茶色の下層を減圧乾燥して、目的のエチレンインデニルビストリフェニルホスフィンルテニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレ−ト1.06g(収率62%)を得た。
【0042】
なお、本製造例1における最終生成物の同定は、1H−NMR分析及び元素分析により行った。
【0043】
実施例1(1−ヘキセンとメチルアクリレートとの共重合)
エチレンインデニルビストリフェニルホスフィンルテニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート45.7mg(0.0280mmol)をシュレンク管に採取し、トルエン0.666ml、n−オクタン0.252ml、アルミニウムトリイソプロポキシドの100mmol/Lトルエン溶液2.80ml(0.280mmol)を室温で加え、80℃に加温して十分攪拌して溶解させた。室温に冷やした後、アクリル酸メチル1.26ml(14.0mmol)、1−ヘキセン1.75ml(14.0mmol)、2−ヨード−プロパン酸エチルの1030mmol/Lトルエン溶液0.272ml(0.280mmol)を加え、十分攪拌した。得られた混合物を80℃に加温することにより重合反応を開始させた。重合反応を開始後26時間経過した時点で、反応溶液を−78℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。
【0044】
重合反応溶液中に存在するアクリル酸メチル−1−ヘキセン共重合体の数平均分子量(Mn)は3400、重量平均分子量(Mw)は7170であり、従って重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布[Mw/Mn]は2.11であった。さらに、そのGPC曲線は単峰性であった。また得られた共重合体中の1−ヘキセン単位の含有量は9.0mol%であった。
【0045】
実施例2(1−ヘキセンとメチルアクリレートとの共重合)
クロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(STREM社製)10.9mg(0.0140mmol)をシュレンク管に採取し、トルエン0.343ml、n−オクタン0.126ml、アルミニウムトリイソプロポキシドの100mmol/Lトルエン溶液1.40ml(0.140mmol)を室温で加え、80℃に加温して十分攪拌して溶解させた。室温に冷やした後、アクリル酸メチル0.630ml(7.00mmol)、1−ヘキセン0.875ml(7.00mmol)、2−ブロモ−2−メチルプロパン酸エチルの1112mmol/Lトルエン溶液0.126ml(0.140mmol)を加え、十分攪拌した。得られた混合物を80℃に加温することにより重合反応を開始させた。重合反応を開始後48時間経過した時点で、反応溶液を−78℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。
【0046】
重合反応溶液中に存在するアクリル酸メチル−1−ヘキセン共重合体の数平均分子量(Mn)は3500、重量平均分子量(Mw)は6760であり、従って重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は1.93であった。さらに、そのGPC曲線は単峰性であった。また得られた共重合体中の1−ヘキセン単位の含有量は14mol%であった。
【0047】
実施例3(1−ヘキセンとメチルアクリレートとの共重合)
クロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(STREM社製)10.9mg(0.0140mmol)をシュレンク管に採取し、トルエン1.440ml、n−オクタン0.126ml、ジブチルアミンの500mmol/Lトルエン溶液0.28ml(0.140mmol)を室温で加え、80℃に加温して十分攪拌して溶解させた。室温に冷やした後、アクリル酸メチル0.630ml(7.00mmol)、1−ヘキセン0.875ml(7.00mmol)、2−ブロモ−2−メチルプロパン酸エチルの957mmol/Lトルエン溶液0.146ml(0.140mmol)を加え、十分攪拌した。得られた混合物を80℃に加温することにより重合反応を開始させた。重合反応を開始後33時間経過した時点で、反応溶液を−78℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。
【0048】
重合反応溶液中に存在するアクリル酸メチル−1−ヘキセン共重合体の数平均分子量(Mn)は3600、重量平均分子量(Mw)は8310であり、従って重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は2.31であった。さらに、そのGPC曲線は単峰性であった。また得られた共重合体中の1−ヘキセン単位の含有量は14mol%であった。
【0049】
実施例4(1−ヘキセンとメチルアクリレートとの共重合)
ジカルボニルシクロペンタジエニルアイロンダイマー(アルドリッチ社製)140mg(0.400mmol)をシュレンク管に採取し、トルエン4.44ml、n−オクタン0.900mlを氷浴下で加え、十分攪拌して溶解させた。その後、アクリル酸メチル1.79ml(20.1mmol)、1−ヘキセン2.50ml(20.0mmol)、2−ヨード−プロパン酸エチルの1102mmol/Lトルエン溶液0.363ml(0.400mmol)を加え、十分攪拌した。得られた混合物を60℃に加温することにより重合反応を開始させた。重合反応を開始後23.5時間経過した時点で、反応溶液を−78℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。
【0050】
重合反応溶液中に存在するアクリル酸メチル−1−ヘキセン共重合体の数平均分子量(Mn)は5200、重量平均分子量(Mw)は9050であり、従って重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は1.74であった。さらに、そのGPC曲線は単峰性であった。また得られた共重合体中の1−ヘキセン単位の含有量は14mol%であった。
【0051】
実施例5(1−ヘキセンとメチルアクリレートとの共重合)
ジカルボニルシクロペンタジエニルアイロンダイマー(アルドリッチ社製)99.1mg(0.280mmol)をシュレンク管に採取し、トルエン0.307ml、n−オクタン0.630ml、アルミニウムトリイソプロポキシドの100mmol/Lトルエン溶液2.80ml(0.280mmol)を氷浴下で加え、十分攪拌して溶解させた。その後、アクリル酸メチル1.26ml(14.1mmol)、1−ヘキセン1.75ml(14.0mmol)、2−ヨード−プロパン酸エチルの1102mmol/Lトルエン溶液0.254ml(0.280mmol)を加え、十分攪拌した。得られた混合物を60℃に加温することにより重合反応を開始させた。重合反応を開始後6時間経過した時点で、反応溶液を−78℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。
【0052】
重合反応溶液中に存在するアクリル酸メチル−1−ヘキセン共重合体の数平均分子量(Mn)は5600、重量平均分子量(Mw)は9180であり、従って重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は1.64であった。さらに、そのGPC曲線は単峰性であった。また得られた共重合体中の1−ヘキセン単位の含有量は13mol%であった。
【0053】
実施例6(エチレンとメチルアクリレートとの共重合)
クロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(STREM社製)65.2mg(0.0840mmol)を50mlナス型フラスコに採取し、トルエン8.06ml、アルミニウムトリイソプロポキシドの100mmol/Lトルエン溶液8.40ml(0.840mmol)、アクリル酸メチル3.77ml(42.0mmol)、2−ヨード−プロパン酸エチルの1102mmol/Lトルエン溶液0.762ml(0.840mmol)を加え、十分攪拌して溶解させた後、全量を100mlオートクレーブに仕込んだ。その後、系内にエチレンガス(住友精化製をそのまま使用)を注入し、系内圧力を2MPaにした後、系内温度を100℃に加温することにより重合反応を開始させた。重合反応を開始後3時間経過した時点で、反応溶液を取り出し、−78℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。
【0054】
重合反応溶液中に存在するアクリル酸メチル−エチレン共重合体の数平均分子量(Mn)は1400、重量平均分子量(Mw)は3000であり、従って重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分子量分布(Mw/Mn)は2.14であった。さらに、そのGPC曲線は単峰性であった。また得られた共重合体中のエチレン単位の含有量は10mol%であった。
【0055】
比較例1(1−ヘキセンとメチルアクリレートとの共重合)
金属錯体のエチレンインデニルビストリフェニルホスフィンルテニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートを添加しない以外は、実施例1と同様に重合反応を行い、同様に分析した。その結果、共重合体の生成は確認できなかった。
【0056】
比較例2(1−ヘキセンとメチルアクリレートとの共重合)
有機ハロゲン化合物である2−ヨード−プロパン酸エチルを添加しない以外は、実施例1と同様に重合反応を行い、同様に分析した。その結果、共重合体の生成は確認できなかった。
【0057】
以上のように実施例1〜実施例6の結果から、温和な重合条件により、極性オレフィンであるアクリル酸メチルの単量体単位の含有量が50mol%を超える非極性オレフィンと極性オレフィンとからなる分子量分布の狭い共重合体が得られたことが分かる。
【0058】
これに対して、比較例1の結果から、重合開始剤系を構成する成分(A)の金属錯体を欠いた場合には、所望の共重合体を得ることができないことが分かる。
【0059】
また、比較例2の結果から、重合開始剤系を構成する成分(B)の有機ハロゲン化合物を欠いた場合にも、比較例1と同様所望の共重合体を得ることはできないことが分かる。
【0060】
【発明の効果】
以上のように本発明の製造方法によれば、既存の設備に適用可能な制御ラジカル重合法により、分子量、分子量分布を制御しつつ、温和な重合条件で、非極性オレフィンと極性オレフィンとを重合させ、極性オレフィンに由来する単量体単位の含有量が高い共重合体を製造することができる。
Claims (7)
- 成分(A)及び(B):
(A)ルテニウムを中心金属に有する金属錯体及び/又は鉄を中心金属に有する金属錯体;
(B)有機ハロゲン化合物;
からなる重合開始剤系の存在下に、成分(D)として非極性オレフィン及び成分(E)として極性オレフィンを共重合させることを特徴とする共重合体の製造方法。 - 成分(B)の有機ハロゲン化合物が、α−ハロゲノカルボニル化合物及び/又はα−ハロゲノカルボン酸エステルである請求項1記載の製造方法。
- 該共重合体を構成する全単量体単位中の成分(E)の極性オレフィン単位の含有量が、50モル%以上である請求項1記載の製造方法。
- 成分(D)の非極性オレフィンが、α−オレフィンである請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
- 成分(E)の極性オレフィンが、アクリル酸エステルである請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
- 該重合開始剤系が、更に成分(C)としてルイス酸またはアミン化合物を含有する請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法。
- 成分(C)のルイス酸が、アルミニウムアルコキシドである請求項6記載の製造方法。
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