JP4475730B2 - 感光性樹脂組成物およびそれを用いてなる感光性フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線板、リードフレーム、半導体パッケージ等のパターン形成に用いられる感光性樹脂組成物およびそれを用いてなる感光性フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、プリント配線板やリードフレーム等の製造において、微細な回路パターンや形状パターンを形成する際には、感光性樹脂組成物を層形成してなる感光性フィルムが用いられている。
【0003】
上記感光性フィルムとしては、通常、感光性樹脂組成物層の片面に光透過性の支持体フィルムが、また感光性樹脂組成物層の他面に保護フィルムが積層された多層構造のフィルムが用いられている。そして、上記感光性フィルムを用いた回路パターンの形成は、例えば、つぎのようにして行われる。すなわち、基板上に銅箔を積層した回路基板用基材を準備し、保護フィルム(カバーフィルム)層を剥がしながら、上記基板面に感光性樹脂組成物層を貼着させる。その上にパターンマスクを載置し、露光工程、現像工程、エッチング工程を経由させることにより回路パターンを形成する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記エッチング工程後のレジスト剥離時に、レジスト剥離片が膜状であると、自動剥離機の搬送ロールに絡まる等の問題が生じ、作業性が悪くなる。したがって、上記感光性フィルムとしては、レジスト剥離速度が早く、レジスト剥離片が微細なものを使用することが望ましい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、高解像度で、密着性およびレジスト剥離性に優れた感光性樹脂組成物およびそれを用いてなる感光性フィルムの提供をその目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、バインダー成分(A)、モノマー成分(B)および光重合開始剤(C)を含有する感光性樹脂組成物であって、上記バインダー成分(A)が、下記の(A1)および(A2)の双方を少なくとも含有し、上記モノマー成分(B)が、上記一般式(1)で表される化合物(B1)を少なくとも含有し、かつ上記光重合開始剤(C)がロフィン二量体(C1)を少なくとも含有している感光性樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A1)重量平均分子量が5万〜10万で、かつ酸価が110〜170mgKOH/gであるビニル系重合体。
(A2)重量平均分子量が0.5万〜4.5万で、酸価が180〜300mgKOH/gで、かつ、ガラス転移温度が100〜160℃であるビニル系重合体。
【0007】
また、本発明は、感光性樹脂組成物層の片面に支持体フィルムが積層され、上記感光性樹脂組成物層の他面に保護フィルムが積層されてなる感光性フィルムであって、上記感光性樹脂組成物層が、上記感光性樹脂組成物を用いて形成されたものである感光性フィルムを第2の要旨とする。
【0008】
すなわち、本発明者らは、高解像度で、密着性およびレジスト剥離性に優れた感光性フィルムを得るべく、感光性樹脂組成物を中心に鋭意研究を重ねた。そして、ロフィン二量体(C1)を少なくとも含有する光重合開始剤(C)を用いると、高解像力、密着力が向上するが、レジスト剥離片が膜状になりやすくレジスト剥離性に劣ることを突き止めた。そこで、さらに研究開発を重ねた結果、バインダー成分として、高分子・低酸価のポリマーと、低分子・高酸価のポリマーのブレンド物を使用することにより、好結果が得られるのではないかと想起し、両者の好ましい分子量、酸価およびガラス転移温度について実験を重ねた。その結果、上記特定のビニル系重合体(A1)および特定のビニル系重合体(A2)の双方を少なくとも含有するバインダー成分(A)と、上記ロフィン二量体(C1)を少なくとも含有する光重合開始剤(C)と、モノマー成分(B)を含有してなる感光性樹脂組成物が、所期の目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
そして、上記ビニル系重合体(A1)とビニル系重合体(A2)の配合比が、特定の範囲であると、レジスト剥離分散性が良好となり、かつテント膜強度が良好となる。
【0010】
また、上記モノマー成分(B)が、前記一般式(1)で表される化合物(B1)を少なくとも含有していると、テント膜強度が向上する。
【0011】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物は、バインダー成分(A)と、モノマー成分(B)と、光重合開始剤(C)とを用いて得ることができる。そして、本発明は、上記バインダー成分(A)が、特定のビニル系重合体(A1)および特定のビニル系重合体(A2)の双方を少なくとも含有するとともに、上記モノマー成分(B)が、上記一般式(1)で表される化合物(B1)を少なくとも含有し、上記光重合開始剤(C)がロフィン二量体(C1)を少なくとも含有していることが最大の特徴である。
【0013】
上記バインダー成分(A)は、特定のビニル系重合体(A1)および特定のビニル系重合体(A2)の双方を少なくとも含有するものであれば特に限定するものではない。
【0014】
上記特定のビニル系重合体(A1)としては、重量平均分子量が5万〜10万で、酸価が110〜170mgKOH/gのものを使用する必要があり、好ましくは重量平均分子量が6.5万〜8万で、酸価が120〜150mgKOH/gである。すなわち、上記重量平均分子量が5万未満であると、テント膜強度が低下し、逆に10万を超えると、解像力が低下するからである。また、上記酸価が110mgKOH/g未満であると、解像力およびレジスト剥離速度が低下し、逆に170mgKOH/gを超えると、密着性が低下するからである。
【0015】
なお、上記特定のビニル系重合体(A1)のガラス転移温度(Tg)は30〜80℃の範囲が好ましく、特に好ましくは40〜65℃である。
【0016】
上記特定のビニル系重合体(A1)の単量体成分としては、特に限定はなく、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルスチレン等があげられる。そして、上記特定のビニル系重合体(A1)としては,具体的には、メタクリル酸メチルとアクリル酸n−ブチルとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとメタクリル酸の重合体、メタクリル酸メチルとアクリル酸n−ブチルとメタクリル酸の重合体が好適に用いられる。
【0017】
また、上記特定のビニル系重合体(A2)としては、重量平均分子量が0.5万〜4.5万で、酸価が180〜300mgKOH/gで、ガラス転移温度(Tg)が100〜160℃のものを使用する必要があり、好ましくは重量平均分子量が1.5万〜4万で、酸価が200〜250mgKOH/gで、ガラス転移温度(Tg)が110〜150℃ある。すなわち、上記重量平均分子量が0.5万未満であると、テント膜強度が低下し、逆に4.5万を超えると、レジスト剥離片が膜化するからである。また、上記酸価が180mgKOH/g未満であると、レジスト剥離片が膜化し、逆に300mgKOH/gを超えると、密着力が低下するとともにレジスト形状が悪化するからである。さらにまた、上記ガラス転移温度が100℃未満であると、感光性フィルムをロール状態で保存する場合に、ロールの端面から感光性樹脂組成物層がはみ出す現象(以下「コールドフロー」という)が生じ、逆に160℃を超えると、レジスト凹凸追従性が低下するとともに皮膜が脆化してテント膜強度が低下するからである。
【0018】
上記特定のビニル系重合体(A2)の単量体成分としては、特に限定はなく、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、アクリル酸n−ブチル等があげられる。そして、上記特定のビニル系重合体(A2)としては、具体的には、メタクリル酸メチルとメタクリル酸の重合体、メタクリル酸メチルとアクリル酸n−ブチルとメタクリル酸の重合体が好適に用いられる。
【0019】
上記特定のビニル系重合体(A1)と特定のビニル系重合体(A2)の配合比(重量比)は、A1/A2=90/10〜30/70の範囲が好ましく、特に好ましくはA1/A2=70/30〜45/55である。すなわち、上記A1の重量比が90を超える(A2の重量比が10未満である)と、レジスト剥離片が膜化し、逆にA1の重量比が30未満である(A2の重量比が70を超える)と、テント膜強度が低下するとともにコールドフローが発生するからである。
【0020】
上記ビニル系重合体(A1)およびビニル系重合体(A2)以外のバインダー成分(A)としては、例えば、(メタ)アクリル酸を主成分とし、これにエチレン性不飽和カルボン酸およびその他の共重合可能なモノマーを共重合させてなるアクリル系重合体を用いることが好ましい。
【0021】
上記(メタ)アクリル酸としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等があげられる。
【0022】
上記エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸が好適に用いられ、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等のジカルボン酸や、それらの無水物やハーフエステルを用いることもできる。これらのなかでも、アクリル酸、メタクリル酸が特に好ましい。
【0023】
上記その他の共重合可能なモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレートアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アルキルビニルエーテル、(メタ)アクリロニトリル等があげられる。
【0024】
上記バインダー成分(A)とともに用いられるモノマー成分(B)は、少なくとも下記の一般式(1)で表される化合物(B1)を含有する。
【0025】
【化2】
【0026】
上記一般式(1)において、Rはメチル基が好ましく、Xは−CH2 CH2 O−が好ましく、Yは−CH2 CH(CH3 )O−が好ましい。
【0027】
上記一般式(1)において、Zで表される炭素数2〜20の2価の炭化水素基としては、例えば、−(CH2 )6 −の他、下記に示すものがあげられる。なかでも、−(CH2 )6 −が好ましい。
【0028】
【化3】
【0029】
上記一般式(1)において、kは10〜20の整数が好ましく、mは3〜6の整数が好ましく、nは3〜6の整数が好ましい。
【0030】
上記一般式(1)で表される化合物(B1)の重量平均分子量(Mw)は、1900〜3500の範囲が好ましく、特に好ましくは2400〜3000である。
【0031】
そして、上記一般式(1)で表される化合物(B1)のなかでも、R=−CH3 、X=−CH2 CH2 O−、Y=−CH2 CH(CH3 )O−、Z=−(CH2 )6 −、k=15、m=6、n=4で表される化合物が特に好ましい。
【0032】
上記一般式(1)で表される化合物(B1)以外のモノマー成分(B)としては、エチレン性不飽和化合物が好ましく、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシヒバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリアクリレート、トリメチロールプロパントリプロポキシトリアクリレート、1,6−ヘキサメチルジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2′−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2′−ビス(4−(メタ)アクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2′−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート等の多官能モノマーがあげられる。また、上記多官能モノマーとともに単官能モノマーを適当量併用することもでき、このような単官能モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アルキルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート等があげられる。
【0033】
上記一般式(1)で表される化合物(B1)の含有量は、モノマー成分(B)全体の3〜70重量%の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは5〜50重量%である。すなわち、上記化合物(B1)の含有量が3重量%未満であると、テント膜信頼性の効果がなくなり、逆に70重量%を超えると、レジスト形状の悪化、解像力が低下するおそれがあるからである。
【0034】
そして、上記バインダー成分(A)とモノマー成分(B)の混合比(重量比)は、A/B=70/30〜40/60の範囲が好ましく、特に好ましくはA/B=60/40〜45/55である。すなわち、モノマー成分(B)の重量比が30未満であると、硬化速度が遅くなり、密着性も低下するおそれがあり、逆にモノマー成分(B)の重量比が60を超えると、剥離速度が遅くなるおそれがあるからである。
【0035】
上記バインダー成分(A)およびモノマー成分(B)とともに用いられる光重合開始剤(C)としては、ロフィン二量体(C1)を含有するものであれば特に限定はない。
【0036】
上記ロフィン二量体(C1)としては、ロフィン(2,4,5−トリフェニルイミダゾール)の二量体であれば特に限定はなく、例えば、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(o−フルオロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メトキシフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(p−メトキシフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,4,2′,4′−ビス〔ビ(p−メトキシフェニル)〕−5,5′−ジフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5,4′,5′−ジフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(p−メチルチオフェニル)−4,5,4′,5′−ジフェニル−1,1′−ビイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)−1,1′−ビイミダゾール等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾールが好ましい。
【0037】
上記ロフィン二量体(C1)の含有量は、上記バインダー成分(A)とモノマー成分(B)の合計量100重量部(以下「部」と略す)に対して、1〜10部の範囲が好ましく、特に好ましくは2〜6部である。すなわち、1部未満であると、感度が低くなり、逆に10部を超えると、現像槽に析出し汚染が生じるおそれがあるからである。
【0038】
上記ロフィン二量体(C1)以外の光重合開始剤(C)としては、ケトン類、チオキサントン類、アクリジン類、トリアジン類、フェニルグリシン、トリフェニルホスフィン等があげられる。
【0039】
上記ケトン類としては、例えば、p−アミノフェニルケトン類があげられ、具体的には、N,N′−テトラアルキル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソフェニルエーテル、ベンジルジフェニルジスルフィド、ベンジルジメチルケタール、ジアセチル、アントラキノン、ナフトキノン、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等があげられる。なかでも、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。
【0040】
上記ケトン類の含有量は、上記バインダー成分(A)とモノマー成分(B)の合計量100部に対して、0.02〜0.5部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.05〜0.3部である。すなわち、0.02部未満であると、感度、解像力が低下し、逆に0.5部を超えると、密着力が低下するおそれがあるからである。
【0041】
なお、本発明の感光性樹脂組成物には、上記バインダー成分(A)、モノマー成分(B)および光重合開始剤(C)に加えて、染料(色素、変色剤)、熱重合禁止剤、可塑剤、密着付与剤、酸化防止剤、溶剤、表面張力改質剤、安定剤、連鎖移動剤、消泡剤、界面活性剤等を配合しても差し支えない。上記色素としては、例えば、ロイコクリスタルバイオレット、マラカイトグリーン等があげられる。
【0042】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記バインダー成分(A)、モノマー成分(B)および光重合開始剤(C)を必須成分とし、これに必要に応じて色素等の他の成分を配合し、混合することにより調製することができる。
【0043】
すなわち、本発明の感光性樹脂組成物を用いてなる感光性樹脂組成物層の片面に支持体フィルム(キャリアフィルム)が積層形成されているとともに、感光性樹脂組成物層の他面には保護フィルム(カバーフィルム)が積層形成された3層構造の感光性フィルムが代表的にあげられる。
【0044】
上記支持体フィルムとしては特に限定はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンフィルム(OPP)等があげられ、好ましくはPETフィルムである。
【0045】
上記保護フィルムは、感光性フィルムをロール状にして用いる場合に、粘着性を有する感光性樹脂組成物層の支持体フィルムへの転着等を防止する目的で使用されるものであり、例えば、ポリエチレン(PE)フィルム、PETフィルム、ポリプロピレンフィルム(OPP,CPP)、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)フィルム、ナイロンフィルム等があげられ、好ましくはPEフィルムである。
【0046】
本発明の感光性フィルムは、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、上記支持体フィルムの片面に、本発明の感光性樹脂組成物を均一に塗布し、90℃のオーブンで5分間乾燥して感光性樹脂組成物層を形成する。ついで、上記感光性樹脂組成物層の他面に保護フィルムを加圧積層することにより、感光性樹脂組成物層の片面に支持体フィルムが、また感光性樹脂組成物層の他面に保護フィルムがそれぞれ積層されてなる3層構造の感光性フィルムを作製することができる。
【0047】
本発明の感光性フィルムにおいて、感光性樹脂組成物層の厚みは、50μm以下が好ましく、特に好ましくは10〜40μmである。すなわち、感光性樹脂組成物層の厚みが50μmを超えると、充分な解像度を得ることが困難となるからである。また、上記支持体フィルムの厚みは、通常、5〜25μmであり、好ましくは12〜20μmである。すなわち、5μm未満では、フィルムが柔軟すぎて取り扱いに不便であり、逆に25μmを超えると、解像度が低下したり、コストアップとなり好ましくないからである。上記保護フィルムの厚みは、通常、10〜50μmであり、好ましくは10〜30μmである。
【0048】
本発明の感光性フィルムは、例えば、プリント配線板,リードフレーム等の製造や、金属の精密加工等に用いられる。本発明の感光性フィルムを用いたプリント配線板の製法について、以下に説明する。
【0049】
〔露光〕
感光性フィルムによって画像を形成させるには、感光性樹脂組成物層の表面から保護フィルムを剥離した後、その感光性樹脂組成物層の表面を、銅張基板や42アロイ、SUS等の金属面に貼り付ける。ついで、上記感光性樹脂組成物層の反対側面の支持体フィルム上にパターンマスクを密着させて露光する。上記露光は、通常、紫外線照射により行い、その際の光源としては、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ等が用いられる。なお、必要に応じて、紫外線照射後に加熱を行い、硬化の完全を図ることも可能である。
【0050】
〔現像〕
露光後は、上記感光性樹脂組成物層上の支持体フィルムを剥離除去してから現像を行う。上記感光性樹脂組成物が稀アルカリ現像型である場合、露光後の現像は、炭酸ソーダ、炭酸カリウム等の0.3〜2重量%程度のアルカリ水溶液を用いて行う。なお、上記アルカリ水溶液中には、界面活性剤,消泡剤や、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。
【0051】
〔エッチング、めっき〕
エッチングは、通常、塩化第二銅−塩酸水溶液や、塩化第二鉄−塩酸水溶液等の酸性エッチング液を用いて、常法に従って行う。希にアンモニア系のアルカリエッチング液も用いられる。めっき法は、脱脂剤、ソフトエッチング剤等のめっき前処理剤を用いて前処理を行った後、めっき液を用いてめっきを行う。
【0052】
〔硬化レジストの剥離除去〕
エッチングまたはめっき工程後、残っている硬化レジスト(感光性樹脂組成物)の剥離を行う。硬化レジストの剥離除去は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の0.5〜5重量%程度の濃度のアルカリ水溶液あるいはアミン類等を含有する水溶液等からなるアルカリ剥離液を用いて行う。
【0053】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0054】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0055】
〔ビニル系重合体(A1)(1)〕
メタクリル酸メチルとアクリル酸n−ブチルとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとメタクリル酸を50/15/15/20(重量比)の割合で重合させて得られたビニル系重合体(重量平均分子量:8万、酸価:130mgKOH/g、Tg=45℃)
【0056】
〔ビニル系重合体(A1)(2)〕
メタクリル酸メチルとアクリル酸n−ブチルとメタクリル酸を24/45/31(重量比)の割合で重合させて得られたビニル系重合体(重量平均分子量:7万、酸価:140mgKOH/g、Tg=55℃)
【0057】
〔ビニル系重合体(A2)(1)〕
メタクリル酸メチルとメタクリル酸を65/35(重量比)の割合で重合させて得られたビニル系重合体(重量平均分子量:3万、酸価:228mgKOH/g、Tg=141℃)
【0058】
〔ビニル系重合体(A2)(2)〕
メタクリル酸メチルとアクリル酸n−ブチルとメタクリル酸を55/15/30(重量比)の割合で重合させて得られたビニル系重合体(重量平均分子量:3万、酸価:230mgKOH/g、Tg=130℃)
【0059】
〔バインダー成分(A)〕
メタクリル酸メチルとアクリル酸n−ブチルとメタクリル酸を45/20/35(重量比)の割合で重合させて得られたビニル系重合体(重量平均分子量:5万、酸価:228mgKOH/g、Tg=84℃)
【0060】
〔化合物(B1)〕
前記一般式(1)において、R=−CH3 、X=−CH2 CH2 O−、Y=−CH2 CH(CH3 )O−、Z=−(CH2 )6 −、k=15、m=6、n=4で表されるモノマー成分
【0061】
〔モノマー成分(B)(1)〕
2,2′−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン
【0062】
〔モノマー成分(B)(2)〕
ポリプロピレングリコールモノメタクリレート
【0063】
〔モノマー成分(B)(3)〕
ノニルフェノールテトラエトキシアクリレート
【0064】
〔モノマー成分(B)(4)〕
β−ヒドロキシエチル−β′−アクリロイルオキシエチル−o−フタレート
【0065】
〔光重合開始剤(C1)〕
ロフィン二量体:2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール
【0066】
〔光重合開始剤(C)(1)〕
ケトン類:4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
【0067】
〔光重合開始剤(C)(2)〕
ケトン類:ベンゾフェノン
【0068】
【実施例1〜3、比較例1〜6、参考例1,2】
下記の表1および表2に示す各成分を同表に示す割合で溶剤(メチルエチルケトン:イソプロパノール=9:1〔重量比〕)に溶解して、感光性樹脂組成物を調製した。ついで、この感光性樹脂組成物を、アプリケーター用いて厚み19μmのPETフィルム(支持体フィルム)上に均一に塗布し、90℃のオーブンで5分間乾燥して、厚み35μmの感光性樹脂組成物層を形成した。さらに、この感光性樹脂組成物層の他面に、厚み25μmのPEフィルム(保護フィルム)を積層し、これを1日放置して、感光性フィルムを得た。一方、厚み35μmの銅箔を貼り合わせてなる銅張基板(厚み1.6mm、大きさ250mm×200mm)を準備し、銅箔表面をスコッチブライトSF(住友スリーM社製)を用いてバフロール研磨し、水洗した後、空気流で乾燥させ整面し、これをオーブンで60℃に予熱した。そして、この銅箔表面に、上記感光性フィルムのPEフィルム(保護フィルム)を剥離しながら、PETフィルム(支持体フィルム)と感光性樹脂組成物層からなるフィルムをハンド式ロールラミネーターを用いてラミネートした(ラミネート条件:ホットロール温度100℃、ロール圧約0.3MPa、ラミネート速度1.5m/min)。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
このようにして得られた実施例品および比較例品を用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表3および表4に併せて示した。
【0072】
〔解像性〕
上記銅張基板上にラミネートした感光性樹脂組成物層の表面に、ライン/スペース=1/1(10μm,15μm,20μm,25μm,30μm,35μm,40μm,45μm,50μm)の各々のパターンマスク(ガラスクロム乾板製)を真空密着させた。ついで、2kW超高圧水銀ショートアーク灯(平行光)でストーファー21段ステップタブレットの7段相当量の露光量で露光し、最小現像時間の2倍相当で現像後にレジスト画像が解像される最小ライン幅を調べた。
【0073】
〔密着性〕
上記銅張基板上にラミネートした感光性樹脂組成物層の表面に、ライン幅(10μm,15μm,20μm,25μm,30μm,35μm,40μm,45μm,50μm)の独立細線の各々のパターンマスク(ガラスクロム乾板製)を密着させ、上記と同様にして現像を行い、密着性良好な独立細線部の最小ライン幅を調べた。
【0074】
〔テント膜強度〕
直径4.5mmのTH(スルーホール)を有する厚み1.6mmの基材を準備し、その表面に、上記感光性フィルムのPEフィルム(保護フィルム)を剥離しながら、PETフィルム(支持体フィルム)と感光性樹脂組成物層からなるフィルムを貼り付けた。そして、上記と同様の条件で露光および現像を行った後、直径2mmのテンションゲージを用いてテント膜強度を測定した。
【0075】
〔レジスト剥離性(速度、分散性)〕
レジスト露光部(180mm×100mm)に、50℃の3重量%水酸化ナトリウム水溶液をスプレーで吹き付け、レジスト剥離速度(剥離終了時間)を測定した。また、その時のレジスト剥離分散性(レジスト剥離片の大きさ)を目視評価した。なお、評価は、剥離片の大きさが30mm未満のものを○、30mmを超えるものを×とした。
【0076】
〔コールドフローテスト〕
上記感光性フィルムを用いて感光性フィルムロール(幅330mm、長さ100m)を作製し、これを40℃で60%RHの雰囲気下で保存した。そして、コールドフローの発生の有無を目視評価した。評価は、5日間以上コールドフローの発生がないものを○、4日以内でコールドフローが発生するものを×とした。
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
上記表3および表4の結果から、実施例は、いずれも高解像度で、密着性に優れ、レジスト剥離性にも優れている。また、特定の化合物(B1)を用いているため、テント膜強度に優れることがわかる。
【0080】
これに対して、比較例1は、ロフィン二量体(C1)を含有していないため、解像性、密着性が劣ることがわかる。比較例2〜6は、高分子・低酸価のビニル系重合体(A1)と低分子・高酸価のビニル系重合体(A2)とを併用していないため、テント膜強度およびレジスト剥離性のいずれかの特性に劣ることがわかる。
【0081】
【発明の効果】
以上のように、本発明の感光性フィルムは、上記特定のビニル系重合体(A1)および特定のビニル系重合体(A2)の双方を少なくとも含有するとともに、モノマー成分(B)およびロフィン二量体(C1)を少なくとも含有してなる特殊な感光性樹脂組成物を用いているため、高解像度で、密着性およびレジスト剥離性に優れている。また、上記モノマー成分(B)が、前記一般式(1)で表される化合物(B1)を少なくとも含有しているため、テント膜強度が向上する。
【0082】
そして、上記ビニル系重合体(A1)とビニル系重合体(A2)の配合比が、特定の範囲であると、解像度や密着性が向上するとともに、レジスト剥離性も向上する。
Claims (3)
- バインダー成分(A)、モノマー成分(B)および光重合開始剤(C)を含有する感光性樹脂組成物であって、上記バインダー成分(A)が、下記の(A1)および(A2)の双方を少なくとも含有し、上記モノマー成分(B)が、下記の一般式(1)で表される化合物(B1)を少なくとも含有し、かつ上記光重合開始剤(C)がロフィン二量体(C1)を少なくとも含有していることを特徴とする感光性樹脂組成物。
(A1)重量平均分子量が5万〜10万で、かつ酸価が110〜170mgKOH/gであるビニル系重合体。
(A2)重量平均分子量が0.5万〜4.5万で、酸価が180〜300mgKOH/gで、かつ、ガラス転移温度が100〜160℃であるビニル系重合体。
- ビニル系重合体(A1)とビニル系重合体(A2)の配合比が、重量比で、A1/A2=90/10〜30/70である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
- 感光性樹脂組成物層の片面に支持体フィルムが積層され、上記感光性樹脂組成物層の他面に保護フィルムが積層されてなる感光性フィルムであって、上記感光性樹脂組成物層が、請求項1または2記載の感光性樹脂組成物を用いて形成されたものであることを特徴とする感光性フィルム。
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