JP4474497B2 - 建設機械の油圧回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、建設機械の油圧回路に関し、更に具体的には燃料噴射量を低減するために過負荷を防止する油圧回路の技術に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来の油圧ショベル等の建設機械における油圧回路では、掘削開始時に操作レバーを急操作した場合や、或いは掘削操作中に掘削対象の硬さが急変して硬くなった場合において、油圧ポンプのトルクが急増するためにエンジンの燃料噴射量が余計に消費されるという不都合があった。しかし、この問題は、これまで理由があまり解析されておらず、解決もされていなかった。そこで、この問題を解析し、解決の方法を提供する。
【0003】
以下に、従来回路における解析結果について説明する。図5は従来の油圧ショベルの油圧回路図である。図5において、油圧ポンプ51は吐出量可変の油圧ポンプで、レギュレータ52によって制御されている。また、油圧ポンプ51はエンジン53によって駆動されていると共に高圧の作業圧油をセンタ油路54に供給する。センタ油路54の下流にはアクチュエータ(図示省略)を制御する一群の方向切換弁55等が接続されている。方向切換弁55はリモコン弁56の2次側のパイロット油圧により遠隔操作される。
【0004】
一方、レギュレータ52には2つの油室52a、52bが設けられており、油室52aはセンタ油路54に接続された分岐油路59から吐出圧がネガティブ・フィードバックされて油圧ポンプの入力トルクが一定になるように負帰還系が構成されている。これによって、吐出圧が変化しても入力トルクがエンジントルクを越えないように馬力一定制御が行われる。また油室52bには電磁弁60の2次側圧Pfが作用し、入力トルクを増減できるように制御されている。電磁弁60のソレノイドはコントローラ57の出力側に接続され、コントローラ57の入力側には入力トルクの選択スイッチ58が接続されている。位置「H」を選択すると高入力トルクになり、電磁弁60の2次側圧力は低圧力Pf1となり、レギュレータ52により油圧ポンプ51の吐出量が大きくなる。逆に、位置「L」を選択すると低入力トルクになり、油圧ポンプ51の吐出量が小さくなるように構成されている。
【0005】
油圧ショベルは様様な作業に使用される。例えば、重掘削作業、軽作業、仕上げ作業等があり、これらの作業を効率よく行うために油圧ポンプ51の入力トルクを、選択スイッチ58を切換えて行っている。以下の説明では、選択スイッチ58で位置「H」を選択し、高入力トルクを選択した場合の応答について説明する。なお、図7で、高入力トルクを選択した場合の馬力一定曲線をHモード、低入力トルクを選択した場合の馬力一定曲線をLモードとし、その場合のトルクを夫々Tmax,Tminとする。
【0006】
図6は種種の応答変化を示したグラフで、横軸には時間tをとり、縦軸には油圧ポンプ51の吐出量Q、吐出圧P、油圧ポンプ51への入力トルクT、エンジン53の回転数N、燃料噴射量q、電磁弁60の2次側圧Pfをとっている。図7は油圧ポンプ51の吐出量と吐出圧の関係を示す特性曲線と実際の挙動を示している。以下、これらの図6、図7を利用して掘削作業を開始する場合と途中で掘削対象の硬さが急変した場合とを説明する。
【0007】
掘削開始時刻t1よりリモコン弁56の操作レバーを急操作した場合は、油圧ポンプ51の吐出圧がP0からP1まで一気に上昇する。一方、油圧ポンプ51の吐出量は時間(t1〜t2)をかけて図7の点C0(Qmax)から2点鎖線の曲線Cに沿って点C1(Q1)になるまで減少する。即ち、吐出圧がP0〜P5の間は吐出流量がQmaxで、P5〜P1の間は馬力一定のHモード曲線に乗らずに曲線Cに沿って移動する。これはレギュレータ52の吐出量制御が機械的に構成されているために遅れを生じるためである。この結果曲線Dに示すように入力トルクがTmaxを越えてしまう。
【0008】
この結果、図6に示すように、エンジン回転数はこれと釣合うようにN0からN1まで低下する。さらに、この結果、エンジン53は出力を確保するために、回転数をN0まで戻そうとして燃料消費量qを図示のようにq1を越えてq2まで増加させ、その後にq1の状態に落ち着く。即ち、図6の斜線で示した(イ)の部分は燃料が無駄に費やされた量を示す。
【0009】
次に時間(t3〜t4)は掘削開始後にゆっくりと操作した場合を示す。この場合は、油圧ポンプ51の吐出圧もP1からP2までゆっくり上昇する。従って、この場合は吐出量も追従が可能であるために、吐出量Qは点C1(Q1)から点C2(Q2)へゆっくりと減少し、Hモード曲線(実線)上を移動する。さらに、時間t5でリモコン弁56の操作レバーの操作量が一定でも掘削対象の硬さが急変すると(油圧ショベルが地中の大きな岩にぶつかった場合等)油圧ポンプ51の吐出圧も図示(図6)のように、P2からP3に急上昇する。この場合も急操作の場合と同様にレギュレータ55の制御の応答が遅れてしまうために、吐出量は図7の2点鎖線の曲線E上を移動し、入力トルクは曲線F上を移動し、入力トルクは一時的にTmaxを越えてしまう。その結果、図6に示すように、エンジン回転数はN0から急減し、燃料消費量は急増する。従って、図6の斜線部(ロ)に示す量だけ燃料が余計に消費される結果になる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上に説明したように、従来の油圧回路では、吐出圧が急上昇すると吐出量が追従できなくなり、燃料消費量が無駄に消費される。本発明は過負荷状態を回避して作業時の燃料消費を低減させた油圧回路を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する手段として本発明は以下の構成を採用している。即ち、請求項1に記載の発明は、可変容量吐出ポンプと、該ポンプを駆動するエンジンと、該ポンプの吐出圧に応じて吐出量を変化させて該ポンプへの入力トルクを一定に調整し、かつ、該ポンプの入力トルクを増減するレギュレータと、を具備した建設機械の油圧回路において、
前記ポンプの吐出圧を検出する圧力センサーと、該圧力センサーの出力を入力側に接続し、出力側から前記レギュレータの入力トルクを増減する制御信号を出力するコントローラを設け、前記コントローラからの制御信号により切り換わる電磁弁を前記レギュレータとパイロットポンプの間に挿入し、
前記コントローラは、前記ポンプの吐出圧の上昇速度が所定速度以上であることを検出したときは、前記ポンプへの入力トルクを急速に低下させる制御信号を前記電磁弁に出力して該電磁弁を切り換え、続けて該電磁弁を徐々に元の状態に切り換える制御信号を出力するように構成したことを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記電磁弁を電磁逆比例弁としたことを特徴としている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施形態を図に基づいて説明する。図1は本発明を実施した油圧回路の構成を示す。図1において、従来回路(図5)と同じ構成要素については同じ参照番号を付して詳細な説明を省略する。図1で従来回路と異なる点は以下の点である。即ち、吐出圧を検出する圧力センサー11を設けて、コントローラ12の入力側に接続し、コントローラ12によりポンプ吐出圧の上昇速度が所定速度「a」以上であることが検出された場合は、油圧ポンプ51の入力トルクが所定の高トルク(例えばTmax)を超えないようにすると共に、その後のトルク低下を防止するために前記油圧ポンプ51の入力トルクを増大させるようにプログラム制御した構成となっている。なお、ここでは、電磁弁は電磁逆比例弁16を採用している。
【0015】
この実施形態の応答特性を図2ないし図4に基づいて説明する。図3の時刻t1において油圧ポンプ51の吐出圧が急上昇し、その上昇速度が「a」よりも大きいときは、コントローラ12はポンプ入力トルクが高トルク(Tmax)を超えないように制御信号を電磁弁16に出力する。これにより、電磁弁16の2次圧をPf1からPf2に急増させる(図3右側下図参照)、次に時刻t2にかけて徐々にPf2からPf1に減少させる。このとき、油圧ポンプ51の吐出量は図2の曲線A(2点鎖線)に示すようにP4からP1に変化し、ポンプ入力トルクは曲線B(1点鎖線)のように変化する。このときの吐出量と入力トルクの時間変化を図3に示す。また、この場合エンジン回転数はN0でほぼ一定となり、燃料噴射量はq1のレベルを超えることはない。従って、燃料が無駄に消費されることがなくなる。一方、図4はポンプ入力トルクTと電磁弁16の2次圧Pfとの関係を示し、電磁弁16の2次圧がPf1からPf2に増加した場合は、レギュレータの移動速度をアシストしてポンプ吐出量低下速度が増速し、ポンプ入力トルクTはTmaxを超えないですむ。
【0016】
次に、時刻t4以後の掘削作業中に、時刻t5で掘削対象の硬さが急変した場合(油圧ショベルが地中の大きな岩にぶつかった場合等)について説明する。この場合にも吐出圧が急上昇し、その上昇速度が「a」よりも大きいので、コントローラ12は制御信号を出力して電磁弁16の2次圧を図3に示すようにPf2まで急上昇させ、その後徐々にPf1まで減少させる。このとき、油圧ポンプ51の吐出量は図2の曲線A1(2点鎖線)に示すようにP2からP3に変化し、油圧ポンプ51への入力トルクは曲線B1(1点鎖線)のように変化する。この場合の入力トルクの時間変化(時刻t5から時刻t6)は図3に示すように小さな変化が起こる。同様に、エンジン回転数もN0の回りに小さな変化を生じ、燃料噴射量もq1の回りに小さな変化を生じる。
【0017】
図3と図6のグラフの比較から、本実施形態の場合の応答と従来回路による応答の差異が明らかになる。従来回路では油圧ポンプ51への入力トルクが上下に大きく変動するためにエンジン回転数も反対方向に大きく変動する。この変動を打ち消すために燃料噴射量が大きく変動し、無駄な燃料消費が行われる。これに対して、本実施形態の場合は入力トルクの変動が滑らかに変化するために、エンジン回転数はほぼ一定値を維持し、従って燃料噴射量も徐々に変化するために無駄な燃料消費が行われない。
この結果、本実施形態によれば、無駄な燃料が消費されず、燃料噴射量を低減できるという効果が得られる。これは上に説明した2つの場合だけでなく、吐出圧が急上昇する他の場合でも同様な効果が得られる。
【0018】
以上本発明の実施形態を図面に基づいて詳述してきたが、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではなく、実質上同一と考えられる場合も本発明の技術的範囲に属する。例えば、電磁弁の2次圧を減少させる場合、上記実施形態のように直線的に減少させる代わりに適当な曲線で減少させてもよい。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、無駄な燃料が消費されず、燃料噴射量を低減できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明を実施した実施形態の油圧回路図を示す。
【図2】 本実施形態のポンプ特性曲線を示す。
【図3】 本実施形態の各種の応答曲線を示す。
【図4】 ポンプ入力トルクと電磁弁2次圧との関係を示す。
【図5】 従来装置の油圧回路図を示す。
【図6】 従来装置の各種の応答曲線を示す。
【図7】 従来装置のポンプ特性曲線を示す。
【符号の説明】
11 圧力センサ
12 コントローラ
16 電磁弁
51 油圧ポンプ
52 レギュレータ
53 エンジン
55 方向切換え弁
56 リモコン弁
Claims (2)
- 可変容量吐出ポンプと、該ポンプを駆動するエンジンと、該ポンプの吐出圧に応じて吐出量を変化させて該ポンプへの入力トルクを一定に調整し、かつ、該ポンプの入力トルクを増減するレギュレータと、を具備した建設機械の油圧回路において、
前記ポンプの吐出圧を検出する圧力センサーと、該圧力センサーの出力を入力側に接続し、出力側から前記レギュレータの入力トルクを増減する制御信号を出力するコントローラを設け、前記コントローラからの制御信号により切り換わる電磁弁を前記レギュレータとパイロットポンプの間に挿入し、
前記コントローラは、前記ポンプの吐出圧の上昇速度が所定速度以上であることを検出したときは、前記ポンプへの入力トルクを急速に低下させる制御信号を前記電磁弁に出力して該電磁弁を切り換え、続けて該電磁弁を徐々に元の状態に切り換える制御信号を出力するように構成したことを特徴とする建設機械の油圧回路。 - 前記電磁弁を電磁逆比例弁としたことを特徴とする請求項1に記載の建設機械の油圧回路。
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