本発明に係るベルト式無段変速機の実施例1を図1から図9に基づいて説明する。
最初に、本発明に係るベルト式無段変速機を備えた動力伝達装置の全体構成について図1を用いて説明する。
この動力伝達装置は、内燃機関10と、この内燃機関10の出力側に配置されたトランスアクスル20とで構成される。
上記トランスアクスル20は、図1に示す如く、内燃機関10の出力側から順に、内燃機関10に取り付けられたトランスアクスルハウジング21と、このトランスアクスルハウジング21に取り付けられたトランスアクスルケース22と、このトランスアクスルケース22に取り付けられたトランスアクスルリヤカバー23とを備えており、これらにより筐体が構成される。
先ず、上記トランスアクスルハウジング21の内部には、トルクコンバータ(発進装置)30が収納されている。このトルクコンバータ30は、内燃機関10のトルクを増加させて後述するベルト式無段変速機1に伝達するものであり、ポンプインペラ31,タービンライナ32,ステータ33,ロックアップクラッチ34及びダンパ装置35等を備えている。
また、このトランスアクスルハウジング21の内部には、内燃機関10のクランクシャフト11と同一の軸線を中心に回転可能なインプットシャフト38が設けられている。ここで、このインプットシャフト38における内燃機関10側の端部には、上記タービンライナ32が取り付けられており、更に上記ダンパ装置35を介して上記ロックアップクラッチ34が設けられている。
一方、上記クランクシャフト11におけるトランスアクスル20側の端部には、ドライブプレート12を介してトルクコンバータ30のフロントカバー37が連結されており、このフロントカバー37に上記ポンプインペラ31が接続されている。
このポンプインペラ31は上記タービンライナ32と対向配置され、これらの内側に上記ステータ33が配置されている。また、このステータ33には、ワンウェイクラッチ39を介して中空軸36が接続されており、この中空軸36の内部に上記インプットシャフト38が配置されている。
ここで、上記の如きフロントカバー37やポンプインペラ31等により形成されたケーシング(図示略)内には、作動油が供給されている。
以下に、上記トルクコンバータ30の動作説明を行う。
先ず、内燃機関10のトルクがクランクシャフト11からドライブプレート12を介してフロントカバー37に伝達される。ここで、ロックアップクラッチ34がダンパ装置35により解放されている場合には、フロントカバー37に伝達されたトルクがポンプインペラ31に伝達され、このポンプインペラ31とタービンライナ32との間を循環する作動油を介して、タービンライナ32にトルクが伝達される。そして、このタービンライナ32に伝達されたトルクは、インプットシャフト38に伝達される。
ここで、このトルクコンバータ30と後述する前後進切換え機構40との間には、図1に示すオイルポンプ(油圧ポンプ)26が設けられている。このオイルポンプ26は、そのロータ27により円筒形状のハブ28を介して上記ポンプインペラ31に接続されており、また、そのボデー(筐体)29がトランスアクスルケース22側に固定されている。更に、上記ハブ28は、上記中空軸36にスプライン嵌合されている。以上の如き構成により内燃機関10の動力がポンプインペラ31を介してロータ27に伝達されるので、オイルポンプ26を駆動することが可能になる。
次に、上記トランスアクスルケース22及びトランスアクスルリヤカバー23の内部には、前後進切換え機構40とベルト式無段変速機1と差動装置たる最終減速機70とが収納されている。
先ず、上記前後進切換え機構40は、トルクコンバータ30内のインプットシャフト38に伝達された内燃機関10のトルクを後述するベルト式無段変速機1のプライマリプーリ50に伝達するものであり、遊星歯車機構41と、フォワードクラッチ42と、リバースブレーキ43とから構成されている。
上記遊星歯車機構41は、サンギヤ44と、ピニオン(プラネタリピニオン)45と、リングギヤ46とから構成されている。
ここで、そのサンギヤ44は連結部材(図示略)にスプライン嵌合されており、その連結部材はプライマリプーリ50の回転軸たるプライマリシャフト51にスプライン嵌合されている。かかる構成により、サンギヤ44に伝達されたトルクは、プライマリシャフト51に伝達される。
また、上記ピニオン42は、サンギヤ44の周囲に複数個(例えば3個)配置され、そのサンギヤ44に噛み合わされている。ここで、夫々のピニオン42は、ピニオン42自身を自転可能に支持すると共にサンギヤ44の周囲で一体に公転可能に支持するキャリヤ48に保持されている。このキャリヤ48は、その外周端部でリバースブレーキ43に接続されている。
また、上記リングギヤ46は、キャリヤ48に保持されている各ピニオン42に噛み合わされ、フォワードクラッチ42を介してトルクコンバータ30内のインプットシャフト38に接続されている。
続いて、上記フォワードクラッチ42は、インプットシャフト38の中空部に供給された作動油によりON/OFF制御されるものである。ここで、このON/OFF制御には、ブレーキピストン(図示略)が用いられる。尚、前進走行時には、フォワードクラッチ42がON、リバースブレーキ43がOFFにされ、後進走行時には、フォワードクラッチ42がOFF、リバースブレーキ43がONにされる。
次に、上記ベルト式無段変速機1の概略構成について説明する。
このベルト式無段変速機1は、上記インプットシャフト38と同心上に配置されたプライマリシャフト(プーリ軸)51と、このプライマリシャフト51に対して所定の間隔を設けて平行に配置されたセカンダリシャフト(プーリ軸)61とを備えている。ここで、このプライマリシャフト51は図1に示す軸受81,82により回転可能に支持されており、セカンダリシャフト61は図1に示す軸受83,84により回転可能に支持されている。
先ず、上記プライマリシャフト51側の構成について説明する。
このプライマリシャフト51には、図1に示すプライマリプーリ50が設けられている。このプライマリプーリ50は、プライマリシャフト51の外周に一体的に配設された固定シーブ52と、そのプライマリシャフト51の軸線方向に摺動可能な可動シーブ53とを備えており、これら固定シーブ52と可動シーブ53との対向面間によりV字形状の溝80aが形成されたものである。
ここで、上記可動シーブ53とプライマリシャフト51とは図2に示すスプライン軸受54Aによって軸線方向にスプライン嵌合されており、これが為、その可動シーブ53は、プライマリシャフト51に対して軸線方向に摺動し得ると共に、プライマリシャフト51と一体になって回転し得る。
本実施例1にあっては、その可動シーブ53をプライマリシャフト51の軸線方向に摺動させて固定シーブ52に接近又は離隔させる可動シーブ摺動手段が設けられている。以下、本実施例1の可動シーブ摺動手段について詳述する。
本実施例1の可動シーブ摺動手段には、可動シーブ53を固定シーブ52に向けて押圧する押圧機構が設けられている。本実施例1の押圧機構としては、油圧により押圧力を発生させるものを例示する。
この押圧機構は、可動シーブ53の背面(上記V字形状の溝80aの反対側)に設けられたプライマリ油圧室55と、このプライマリ油圧室55に油圧を供給する図3に示す油路51aと、この油路51aの油圧を調圧する図3に示す第1調圧バルブ551と、そのプライマリ油圧室55内の作動油をドレーンしてオイルタンクOTに戻す図3に示す油路51bと、この油路51bの開閉を行う図3に示す第1開閉バルブ552とを備えている。
ここで、本実施例1の可動シーブ53の背面にはその周縁部から筒状の延設部53aが延設されており、その背面に内部空間が形成される。そこで、本実施例1のプライマリ油圧室55は、その内部空間と、後述する運動方向変換機構56の第2運動方向変換機構構成部材562における円盤部562aの壁面とによって構成する。
その円盤部562aとプライマリシャフト51の外周面との間及びその第2運動方向変換機構構成部材562の第1筒部562bと延設部53aの内周面との間には夫々図2に示す環状のオイルシール564,566が設けられ、これにより、このプライマリ油圧室55のシール性が保たれている。
このように、本実施例1にあっては可動シーブ53の背面のプライマリ油圧室55で可動シーブ53を摺動させることができるので、ベルト式無段変速機1の小型化が可能になり、更に、運動方向変換機構56の第2運動方向変換機構構成部材562がプライマリ油圧室55の壁面の一部を兼ねているので、ベルト式無段変速機1の軸線方向を更に小型化することができる。
また、本実施例1の油路51a,51bは、例えばプライマリシャフト51に形成され、このプライマリシャフト51の外周面を介してプライマリ油圧室55に連通している。
また、本実施例1の第1調圧バルブ551と第1開閉バルブ552は、後述する電子制御装置(ECU)Cによって動作が制御される。ここで、その第1調圧バルブ551には、図3に示すオイルタンクOT,オイルポンプ(O/P)OP,油路553a,レギュレータバルブ553,油路553bを介して作動油が供給される。
更に、本実施例1の可動シーブ摺動手段には、摺動方向の力と回転方向の力とを相互に変換する例えば多条ネジや滑りネジ等の所謂運動ネジからなる運動方向変換機構56が設けられている。
この種の運動方向変換機構56は、可動シーブ53における延設部53aの内周面に嵌合又は圧入された円筒状の第1運動方向変換機構構成部材561と、可動シーブ53の背面の内部空間に配置され、その第1運動方向変換機構構成部材561の内周面に係合する第2運動方向変換機構構成部材562とにより構成される。
先ず、本実施例1の第1運動方向変換機構構成部材561は、その内周面にネジ部561aが形成された内ネジ部材である。また、本実施例1の第2運動方向変換機構構成部材562は、プライマリシャフト51への挿通孔562a1を有する円盤状の円盤部562aと、この円盤部562aの周縁部から可動シーブ53の背面に向けて延設された筒状の第1筒部562bと、その周縁部から第1筒部562bとは逆方向に向けて延設された筒状の第2筒部562cとを備えており、その第2筒部562cの外周面に第1運動方向変換機構構成部材561のネジ部561aと螺合するネジ部562c1が形成された外ネジ部材である。
その円盤部562aはスラスト軸受563を介してプライマリシャフト51に保持されており、これが為、本実施例1の第2運動方向変換機構構成部材562は、プライマリシャフト51に対して相対的な回転を行うことができる。具体的に、その円盤部562aは、プライマリシャフト51と一体になって回転する後述する筒体58にスラスト軸受563を介して固定されている。尚、その筒体58は後述する軸受59によって軸線方向の位置が固定されているので、この第2運動方向変換機構構成部材562は、軸線方向へは摺動しない。
また、この第2運動方向変換機構構成部材562においては、プライマリシャフト51との間に環状の第1及び第2のオイルシール564,565が配備され、延設部53aの内周面との間に環状の第3オイルシール566が配備されている。
ここで、本実施例1の可動シーブ摺動手段は、例えば可動シーブ53を固定シーブ52に接近させる場合(アップシフトの場合)、プライマリ油圧室55の油圧を上昇させて可動シーブ53を固定シーブ52に向けて押圧させる。これにより、その軸線方向の押圧力が延設部53aを介して第1運動方向変換機構構成部材561のネジ部561aに掛かるが、本実施例1の可動シーブ摺動手段は、そのネジ部561aによる第2運動方向変換機構構成部材562のネジ部562c1への軸線方向の押圧力を利用して、第2運動方向変換機構構成部材562を第1運動方向変換機構構成部材561に対して相対的に回転させる。
また、逆の場合(ダウンシフトの場合)には、プライマリ油圧室55の油圧を低下させる。これにより、軸線方向のベルト挟圧力の反力が可動シーブ53に掛かり、その反力が延設部53aを介して第1運動方向変換機構構成部材561のネジ部561aに掛かる。本実施例1の可動シーブ摺動手段は、上記のアップシフトの場合と同様に、その反力を利用して、第2運動方向変換機構構成部材562を第1運動方向変換機構構成部材561に対して相対的に回転させる。
そこで、本実施例1にあっては、夫々のネジ部561a,562c1に軸線方向の力が掛かったときに第1運動方向変換機構構成部材561と第2運動方向変換機構構成部材562とが相対回転し得るよう、そのネジ部561a,562c1のリード角等のネジ諸元を設定する。
尚、第1運動方向変換機構構成部材561のネジ部561aは、可動シーブ53の延設部53aの内周面に直接形成してもよい。
更に、本実施例1の可動シーブ摺動手段には、可動シーブ53の軸線方向における位置を保持する可動シーブ位置保持機構が設けられている。
本実施例1にあっては、その可動シーブ位置保持機構としてクラッチ機構57を設けている。
ここで、クラッチ機構57としては種々の態様のものが考えられ、可動シーブ53を軸線方向へと移動し得る解放状態と、可動シーブ53の軸線方向における位置を保持する係合状態とを適宜作り出せるものであれば、何れの態様のものであってもよい。
例えば、本実施例1の可動シーブ53には上述した運動方向変換機構56が設けられているので、その可動シーブ53と第2運動方向変換機構構成部材562との間の相対回転を停止させることによって、可動シーブ53の軸線方向における位置を保持することができる。
これが為、本実施例1のクラッチ機構57としては、プライマリシャフト51と一体になって回転する第1クラッチ係合部と、第2運動方向変換機構構成部材562と一体になって回転する第2クラッチ係合部と、その第1クラッチ係合部と第2クラッチ係合部との間における係合状態と解放状態と切り替えるクラッチ切替部とで構成することができる。
そのクラッチ切替部は、例えば、油圧を制御して第1クラッチ係合部と第2クラッチ係合部との係合状態(係合状態、解放状態)を切り替える機構のものもあれば、所謂電磁クラッチにおける切替機構もある。
ここで、そのクラッチ切替部の態様如何では複雑な機構が必要になり、大型化や故障等の弊害を招来する虞がある。
そこで、本実施例1のクラッチ機構57には、小型化や信頼性の向上が図れる以下の如き態様のものを適用する。
本実施例1のクラッチ機構57は、図2及び図4−1に示す如く、円錐台状の内輪(第1クラッチ係合部)571と、この内輪571の傾斜面に対して所定の間隔を設けて形成された傾斜面を内周面とした外輪(第2クラッチ係合部)572と、これら内輪571及び外輪572の夫々の傾斜面の間に配設された複数のローラ573と、これら各ローラ573を保持する保持器574とを備えている。ここで、その各ローラ573は、図4−2に示す如く、所定のねじれ角θを設けて配置されている。
かかる構成を具備する本実施例1のクラッチ機構57は、内輪571が外輪572に対して図4−2に示す矢印Aの方向に相対回転すると、その内輪571が図4−2に示す矢印Rの方向に移動して係合状態になる一方、その図4−2に示す矢印Bの方向に相対回転すると、内輪571が図4−2に示す矢印Fの方向に移動して係合解除状態(解放状態)になるワンウェイクラッチであって、その内輪571と外輪572が相対回転している状態と、その相対回転が停止している状態とを使い分けることによってクラッチとしての機能を為す。
本実施例1にあっては、先ず、内輪571をプライマリシャフト51と一体になって回転するように配置する。ここでは、可動シーブ53の背面の内部空間におけるプライマリシャフト51に、図2に示す筒体58が軸線方向のスプライン軸受54Bを介してスプライン嵌合されており、内輪571は、その筒体58の外周面に軸線方向のスプライン軸受54Cを介してスプライン嵌合される。その筒体58は、プライマリシャフト51と共に回転可能な図2に示す軸受59により軸線方向の位置が固定されている。
一方、外輪572は、その外周面において、図2に示す軸線方向のスプライン軸受54Dを介して第2運動方向変換機構構成部材562の第2筒部562cの内周面にスプライン嵌合される。
このように、本実施例1のクラッチ機構57は運動方向変換機構構56とプライマリシャフト51との間に配置されるので、クラッチ機構57を設ける為に軸線方向や周方向へと大型化させずともすむ。
また、スプライン軸受54Dにより、このクラッチ機構57が係合状態であれば、このクラッチ機構57と運動方向変換機構56と可動シーブ53とがプライマリシャフト51と一体になって回転し、その運動方向変換機構56が作動しないので、可動シーブ53におけるプライマリシャフト51の軸線方向の位置が保持される。
また、このクラッチ機構57は、プライマリシャフト51や運動方向変換機構56との間に別体構造で設けられており、更に、その間には軸線方向のスプライン軸受54B,54C,54Dが介在している。これが為、プライマリシャフト51等に撓みが発生した場合や、運動方向変換機構56のネジ部に掛かる軸線方向の力が周方向において不均一になった場合でも、その撓み等による力がクラッチ機構57に作用しないので、クラッチ機構57の性能を最適な状態に保つことができる。また、その撓み等による力がクラッチ機構57に作用しないことによって、その力に抗する力を下記のクラッチ制御油圧室576で発生させる必要もないので、その油圧の低減と共にオイルポンプOPにおける動力や駆動損失の低減をも図ることができる。
ここで、本実施例1のクラッチ機構57には、内輪571を軸線方向に押圧する押圧部材(図2に示す皿バネ575)が設けられている。この皿バネ575は、筒体58の軸受59側に形成された環状の鍔部58aに一端が係止され、他端がスラスト軸受577Aを介して内輪571の一方の壁面に可動シーブ53へ向けた軸線方向の押圧力を掛ける。
その一方、このクラッチ機構57には、内輪571の他方の壁面を皿バネ575とは逆方向に押圧するクラッチ制御油圧室576が設けられている。このクラッチ制御油圧室576は、内輪571を挟んで皿バネ575とは反対の位置に設けられ、第2運動方向変換機構構成部材562の円盤部562aの壁面(プライマリ油圧室55を構成する壁面とは反対側の面)と、その第2運動方向変換機構構成部材562にオイルシール576B,576Cを介して配置された環状部材576Aとで構成される。
本実施例1にあっては、その内輪571の他方の壁面に向けて環状の突設部576A1を環状部材576Aから突設させ、その突設部576A1を内輪571の他方の壁面にスラスト軸受577Bを介して当接させている。
更に、その環状部材576Aは、第2運動方向変換機構構成部材562に対して軸線方向に相対移動するよう構成されており、クラッチ制御油圧室576の油圧を制御することによって何れか一方への相対移動を行う。
これが為、そのクラッチ制御油圧室576の油圧を低下させると、皿バネ575が内輪571を図4−2に示す矢印Rの方向に押動し、クラッチ機構57を係合状態にする。その一方で、クラッチ制御油圧室576の油圧を上昇させると、突設部576A1が皿バネ575の押圧力に抗して内輪571を図4−2に示す矢印Fの方向に押動し、クラッチ機構57を解放状態にする。
本実施例1にあっては、そのクラッチ機構57が解放(係合解除)状態になると、その内輪571と可動シーブ53とがプライマリシャフト51と一体になって回転すると共に、その外輪572と第2運動方向変換機構構成部材562とがプライマリシャフト51に対して相対回転する。これが為、かかる状態でプライマリ油圧室55の油圧を上昇又は低下させることにより、運動方向変換機構56が作動して、可動シーブ53が固定シーブ52に接近又は固定シーブ52から離隔する。
このように、本実施例1においては、皿バネ575とクラッチ制御油圧室576の油圧によってクラッチ切替部を構成し、クラッチ機構57の係合状態と解放状態とを任意に作り出すことができる。即ち、簡易構造によるクラッチ切替部によりクラッチ機構57を作動させることができるので、信頼性の向上や小型化が可能になる。
また、本実施例1のクラッチ機構57は、解放状態を作り出す為にクラッチ制御油圧室576を設けているが、その一方で係合状態を作り出す為には皿バネ575のバネ力を利用するので(即ち、係合状態を作り出す為の油圧室が不要なので)、クラッチ機構57を作動させる油圧の低減が図れ、オイルポンプOPにおける駆動損失の低減をも図ることができる。また、係合状態を維持するクラッチ係合圧を皿バネ575により発生させているので、変速比を保持する為に油圧を発生させる必要が無く、これによっても、オイルポンプOPにおける駆動損失を低減することができる。
更に、クラッチ制御油圧室576の壁面の一部を第2運動方向変換機構構成部材562に兼用させることによって、部品点数の低減が図れるだけでなく、軸線方向における小型化をも図ることができる。
ここで、そのクラッチ制御油圧室576には、第2運動方向変換機構構成部材562に形成された油路562a2から油圧が供給される。この油路562a2は、例えばプライマリシャフト51に形成された図3に示す油路51c,この油路51cの油圧を調圧する図3に示す第2調圧バルブ578と連通している。この第2調圧バルブ578には、プライマリ油圧室55と同様に、オイルタンクOT,オイルポンプ(O/P)OP,油路553a,レギュレータバルブ553,油路553cを介して作動油が供給される。
また、その第2運動方向変換機構構成部材562にはクラッチ制御油圧室576と連通する図示しないドレーン油路が形成されており、このドレーン油路が、そのクラッチ制御油圧室576内の作動油をドレーンしてオイルタンクOTに戻す図3に示す油路51dと、この油路51dの開閉を行う図3に示す第2開閉バルブ579に連通している。
これら第2調圧バルブ578と第2開閉バルブ579は、プライマリ油圧室55と同様に、電子制御装置(ECU)Cによって動作が制御される。
次に、上記セカンダリシャフト61側の構成について説明する。
このセカンダリシャフト61には、図1に示すセカンダリプーリ60が設けられている。このセカンダリプーリ60は、セカンダリシャフト61の外周に一体的に配設された固定シーブ62と、セカンダリシャフト61の軸線方向に摺動可能な可動シーブ63とを備えている。ここで、この可動シーブ63は、図5に示す軸線方向のスプライン軸受64によってセカンダリシャフト61にスプライン嵌合されている。また、上記固定シーブ62及び可動シーブ63の対向面間には、V字形状の溝80bが形成されている。
更に、このセカンダリシャフト61には、可動シーブ63を固定シーブ62側に押し付けて、固定シーブ62と可動シーブ63との間の軸線方向の挟圧力を発生させる押圧機構が設けられている。ここで、本実施例1の押圧機構としては、トルクカム65とセカンダリ油圧室66の2種類が用意されている。
先ず、本実施例1のトルクカム65は、例えば図5,図6−1及び図6−2に示す如く、可動シーブ63に環状に設けられた山谷状の第1係合部65aと、この第1係合部65aに対向する山谷状の第2係合部65bを有するトルクカム主体65cと、その第1及び第2の係合部65a,65bの間に配置された複数の球状部材65dとから構成される。
ここで、上記トルクカム主体65cは、セカンダリシャフト61に固定された図5に示す軸受61aと、セカンダリシャフト61との間に配置された軸受61bとにより、このセカンダリシャフト61や可動シーブ63に対してその回転軸を中心とした相対回転が可能になっている。
これにより、例えば可動シーブ63が固定シーブ62に接近したとしても(換言すれば、第1係合部65aが第2係合部65bから離隔したとしても)、トルクカム主体65cとセカンダリシャフト61と共に回転する可動シーブ63との間に相対回転が起こるので、トルクカム65を図6−1に示す状態から図6−2に示す状態に変化させることができ、第1係合部65aと第2係合部65bと球状部材65dとの間に面圧を発生させることができる。これが為、第2係合部65bと球状部材65dが第1係合部65aを押圧して、固定シーブ62と可動シーブ63との間に挟圧力を発生させるので、ベルト80の滑りを防ぐことが可能になる。
また、トルクカム主体65cと可動シーブ63とが相対回転するので、このトルクカム主体65cが可動シーブ63に対する推力を発生させても、可動シーブ63と固定シーブ62は互いに捩れることがない。これが為、ベルト80の耐久性を向上させたり、変速比の幅を拡大させたりすることができる。また、それにより、プライマリプーリ50とセカンダリプーリ60との相対位置を初期設定値のまま維持することができるので、耐久性の向上にも寄与する。
ここで、上記面圧によるトルクカム65の推力に対する反力は軸受61aを介してセカンダリシャフト61で受けることができる。このように、その反力をプライマリプーリ50の場合と同様に静止系で受けず、軸受61aの転動は殆ど起こらないので、この軸受61aの損失を低減することができる。
また、トルクカム65の作動箇所(第1及び第2の係合部65a,65b、球状部材65d)を可動シーブ63の外径側に配置しているので、上記第1係合部65aと第2係合部65bと球状部材65dとの間の面圧を低減することができる。
続いて、本実施例1のセカンダリ油圧室66は、可動シーブ63における上記溝80bの反対側の空間部分と、セカンダリシャフト61に設けられた当該セカンダリシャフト61と同心円の円形部材67とから形成される。
ここで、このセカンダリ油圧室66は、可動シーブ63の内径側に配置しているので、その容積を小さくすることができ、これが為、急変速時等におけるセカンダリ油圧室66の流量の低減が図れる。
このセカンダリ油圧室66は、例えばセカンダリシャフト61に形成された図3に示す油路61cと連通しており、更にこの油路61cは、挟圧力調圧バルブ661、油路661a、レギュレータバルブ553に連通している。
このようにセカンダリ油圧室66,油路61c及び挟圧力調圧バルブ661等により構成されたセカンダリプーリ60の押圧機構は、電子制御装置Cによって作動油の供給圧が調節された挟圧力調圧バルブ661からの油圧をセカンダリ油圧室66に供給することで、固定シーブ62と可動シーブ63との間に挟圧力を発生させ、ベルト80の滑りを防ぐ。
また、変速比変更時(セカンダリプーリ60における可動シーブ63の駆動/非駆動時)等にトルクの乱れが生じてトルクカム65による推力を得られなくても、このトルクカム65とは別個独立に油圧で作動するセカンダリ油圧室66等からなる押圧機構で所望の挟圧力を発生させることができる。これにより、より確実にベルト80の滑りを防ぐことができるので、信頼性の向上やドライバビリティの向上が可能となる。
ここで、本実施例1のセカンダリ油圧室66には、一端が可動シーブ63における上記空間部分の壁面に固定され、他端が円形部材67に固定された例えばコイルスプリング等の弾性部材68が設けられている。
尚、本実施例1にあっては、トルクカム65による推力が必要推力に対して低くなるようなカム角(例えば非線形カム)でトルクカム65を設定し、その不足分をセカンダリ油圧室66等からなる押圧機構又は/及び弾性部材68で補うように設定する。これにより、ベルト80を必要以上の力で挟まずともすむので、そのベルト80の耐久性を向上させることができ、更にベルト80における損失の低減が可能となり、動力伝達効率を向上させることができる。
また、内燃機関10の非駆動時のトルクに対応する推力をセカンダリ油圧室66等からなる押圧機構又は/及び弾性部材68で受け持つように設定してもよく、これにより、トルクカム65の作動により起こり得る可動シーブ63の移動(換言すれば変速)を抑制し、変速比を一定に保つことが可能になる。また、ベルト挟圧力も必要値に保つことが可能になる。
更に、このセカンダリプーリ60側の押圧機構は、必ずしも本実施例1の如く2種類に限定するものではなく、1種類又は3種類以上であってもよい。尚、固定シーブ62と可動シーブ63との間における挟圧力の制御性を高める為には、少なくとも2種類以上の押圧機構が設けられることが好ましい。即ち、夫々の押圧機構に挟圧力を分担させ、その内の少なくとも一つを油圧により作動する押圧機構(本実施例1のセカンダリ油圧室66)にすることで、挟圧力の制御性を向上させることができる。
以上示したベルト式無段変速機1においては、上記プライマリプーリ50及びセカンダリプーリ60の夫々のV字形状の溝80a,80bにベルト80が巻き掛けられている。このベルト80は多数の金属製の駒と複数本のスチールリングで構成された無端ベルトであって、このベルト80を介して、プライマリプーリ50に伝達された内燃機関10のトルクがセカンダリプーリ60に伝達される。
ここで、本実施例1にあってはトルクカム主体65cによりトルクの伝達が行われる。このトルクカム主体65cと共に一体回転するセカンダリシャフト61の内燃機関10側にはカウンタドライブピニオン92が固定されており、このカウンタドライブピニオン92の両側にはセカンダリシャフト61の軸受87,88が配置されている。
これが為、セカンダリプーリ60に伝達されたトルクは、トルクカム主体65c,セカンダリシャフト61,カウンタドライブピニオン92を経て後述する動力伝達経路90や最終減速機70に伝達され、これら動力伝達経路90や最終減速機70のギヤ群を介してドライブシャフト101に伝達される。
本実施例1にあっては、そのトルクカム主体65cにパーキングギヤ89を一体的に設けている。例えば、このパーキングギヤ89は、トルクカム主体65cの外周面に嵌合固定される。これが為、セカンダリプーリ60側におけるベルト式無段変速機1の軸方向長さを短縮できる。即ち、従来のパーキングギヤはセカンダリプーリ60とトランスアクスルリヤカバー23との間のセカンダリシャフト61上に配置されていたが、本実施例1にあっては、その配置場所をパーキングギヤ用として別途確保する必要が無いので、セカンダリプーリ60側の軸方向長さの短縮化が図れる。
次に、上記カウンタドライブピニオン92と後述する最終減速機70との間には、セカンダリシャフト61と平行なインターミディエイトシャフト91を有する動力伝達経路90が設けられている。そのインターミディエイトシャフト91は、軸受85,86により回転可能に支持され、上記カウンタドライブピニオン92に噛み合わされたカウンタドリブンギヤ93とファイナルドライブピニオン94とを軸上に備えている。
続いて、上記最終減速機70について説明する。この最終減速機70は、内部が中空のデフケース71と、ピニオンシャフト72と、ピニオン73,74と、サイドギヤ75,76とから構成されている。
先ず、上記デフケース71は、軸受77,78により回転可能に支持されており、その外周に上記ファイナルドライブピニオン94と噛み合わされたリングギヤ79が設けられている。
また、上記ピニオンシャフト72はデフケース71の中空部に取り付けられており、このピニオンシャフト72に上記ピニオン73,74が固定されている。
また、上記サイドギヤ75,76は、車輪100が取り付けられたドライブシャフト(ここではフロントドライブシャフト)101に夫々固定されている。
以上の如く構成されたトランスアクスルケース22の内部においては、その底部(オイルパン)に貯留された潤滑油が、回転するリングギヤ79によって掻き上げられて各ギヤ94,93,92の噛み合い面を伝達し飛散しながら、最終減速機70等の各構成部材(例えば各シャフト101,91,61や各軸受83〜88等)を潤滑すると共に、トランスアクスルケース22の内壁面に当たって落下することでプライマリシャフト51等の潤滑を行っている。
ここで、上記ベルト式無段変速機1をはじめとする各構成要素は、各種センサの情報に基づいて制御手段たる図3に示す電子制御装置(ECU)Cの様々な制御機能により制御される。この電子制御装置Cには、ベルト式無段変速機1の変速制御を行う為のデータ,例えばアクセル開度や車速等の情報に基づいた走行状態に応じてベルト式無段変速機1の変速比を制御する為のデータが予め記憶されている。
以下、変速比を制御する際の上記可動シーブ摺動手段(プライマリ油圧室55、運動方向変換機構56、クラッチ機構57)及び押圧機構(トルクカム65、セカンダリ油圧室66)の動作について図7のフローチャートに基づき詳述する。尚、ここでは、最初にクラッチ機構57が係合状態になっているものとする。
変速制御プログラムや運転者の変速操作による変速指令が為されると、先ず、電子制御装置Cは、現状における実際の変速比(以下「実変速比」という。)と目標変速比とを比較し、実変速比と目標変速比とが一致している(実変速比=目標変速比)か否かを判定する(ステップST1)。
尚、ここでは実変速比と目標変速比とが完全に一致しているか否かを判定するが、車輌の動力性能やドライバビリティ等に影響を与えない範囲内で例えば±0.1%等の幅を目標変速比に持たせ、実変速比がその幅の範囲内にあれば「実変速比=目標変速比」と判定するように設定してもよい。
上記ステップST1にて実変速比と目標変速比とが一致していなければ、次に、電子制御装置Cは、目標変速比が実変速比よりも小さいか否かを判定する(ステップST2)。
このステップST2にて目標変速比が実変速比よりも小さいとの判定結果であれば(即ちアップシフト要求が為されていれば)、この電子制御装置Cは、第1調圧バルブ551やレギュレータバルブ553を制御して、目標変速比となるようプライマリ油圧室55の油圧を上昇させる(ステップST3)。尚、その油圧の上昇代は、予め用意してあるプライマリ油圧室55の油圧と変速比との対応関係を示すマップデータから現在のプライマリ油圧室55の油圧を考慮して電子制御装置Cが算出する。
これにより、その油圧による固定シーブ52側へ向けた軸線方向の力が可動シーブ53を介して運動方向変換機構56のネジ部に掛かる。この状態においては、クラッチ機構57が未だ係合状態になっているので、そのネジ部に掛かる軸線方向の力により第2運動方向変換機構構成部材562が円盤部562aを支点にして図2に示す矢印Cの方向に僅かに傾倒する。
ここで、本実施例1にあっては第2運動方向変換機構構成部材562とクラッチ機構57の外輪572との間にスプライン軸受54Dが設けられているので、第2運動方向変換機構構成部材562の傾倒に伴って外輪572が可動シーブ53の方向へ僅かに移動し、これにより各ローラ573の食い込みが弱まってクラッチ機構57の係合状態を解除し易くなる。
即ち、クラッチ機構57が係合状態の場合、皿バネ575は、可動シーブ53の方向に内輪571を押圧し、外輪572も含めたクラッチ機構57全体を第2運動方向変換機構構成部材562に押し付けている。かかる状態では、内輪571及び外輪572における傾斜面への各ローラ573の食い込みが強く、クラッチ制御油圧室576の油圧を上昇させてもクラッチ機構57の係合が解除され難い。これが為、その係合を解除する為に、クラッチ制御油圧室576の油圧を更に上昇させたり、プライマリ油圧室55の油圧を上げて運動方向変換機構56によりクラッチ機構57がフリー状態となる方向へと内輪571と外輪572を相対回転させなければならない。ところが、これにより急激にクラッチ機構57の係合が解除されるので、可動シーブ53が固定シーブ52から急激に離隔してベルト滑りが発生し、固定シーブ52や可動シーブ53やベルト80の耐久性が悪化してしまう。また、急激な変速比の変化によりドライバビリティの悪化をも招来してしまう。
しかしながら、本実施例1のように第2運動方向変換機構構成部材562とクラッチ機構57の外輪572との間にスプライン軸受54Dを設け、クラッチ制御油圧室576の油圧を上昇させる前にプライマリ油圧室55の油圧を上昇させることによって、外輪572を可動シーブ53の方向へ僅かに逃がすことができ、各ローラ573の傾斜面への食い込みを弱めることができる。これが為、クラッチ制御油圧室576の油圧を上昇させた際にクラッチ機構57の係合状態が解除し易くなると共に、その油圧の上昇代を小さくすることができるので、急激な係合解除を防ぐことができ、固定シーブ52等の耐久性の向上やドライバビリティの向上が可能になる。
尚、アップシフトを行う場合には何れにせよプライマリ油圧室55の油圧を上昇させるので、本実施例1にあっては、上述したが如く、最初に目標変速比となるようプライマリ油圧室55の油圧を上昇させておく。
電子制御装置Cは、そのクラッチ機構57の係合状態が解除し易くなっている状態で第2調圧バルブ578を制御し、クラッチ制御油圧室576の油圧を上昇させる(ステップST4)。
これにより、内輪571が皿バネ575の方向に押動されてクラッチ機構57が解放状態となり、運動方向変換機構56のネジ部に掛かっている固定シーブ52側へ向けた軸線方向の力によって第1運動方向変換機構構成部材561と第2運動方向変換機構構成部材562との間に相対回転が生じ、可動シーブ53が固定シーブ52側へと摺動し始める。そして、所望の目標変速比に相当するプライマリプーリ50におけるベルト80の巻き掛け半径となるまで可動シーブ53が固定シーブ52に接近すると共に、セカンダリプーリ60の可動シーブ63が固定シーブ62から離隔して、変速比が小さくなる。
その際、セカンダリプーリ60の可動シーブ63は、固定シーブ62,セカンダリシャフト61及び軸受61aと共に回転するので、この可動シーブ63とトルクカム主体65cとの間に相対回転が起こり、トルクカム65が例えば図6−2に示す離隔状態から図6−1に示す接近状態へと変化する。これが為、固定シーブ62と可動シーブ63との間にベルト挟圧力が発生してベルト80の滑りを防ぐことができる。
また、その際、電子制御装置Cは、挟圧力調圧バルブ661を制御してセカンダリプーリ60のセカンダリ油圧室66に油圧を供給し、固定シーブ62と可動シーブ63との間にベルト挟圧力を発生させてもよい。
続いて、上記ステップST2において目標変速比が実変速比よりも大きい(即ちダウンシフト要求が為されている)との判定結果である場合について説明する。
かかる場合、クラッチ機構57の係合状態を解除すると共にプライマリ油圧室55の油圧を低下させる必要があるが、前述したが如く係合状態の解除を容易にする為に、この電子制御装置Cは、先ず、第1調圧バルブ551やレギュレータバルブ553を制御してプライマリ油圧室55の油圧を上昇させる(ステップST5)。
ここでの油圧の上昇代は、上記ステップST3とは異なり、クラッチ機構57の係合状態を解除し易くする程度,即ち第2運動方向変換機構構成部材562を傾倒させ得る程度の値である。
これにより、前述したアップシフトの場合と同様に、第2運動方向変換機構構成部材562が円盤部562aを支点にして図2に示す矢印Cの方向に僅かに傾倒して外輪572が可動シーブ53の方向へ僅かに移動し、各ローラ573の食い込みが弱まってクラッチ機構57の係合状態を解除し易くなる。
かかる状態において、この電子制御装置Cは、第2調圧バルブ578を制御してクラッチ制御油圧室576の油圧を上昇させ(ステップST6)、クラッチ機構57を解放状態にする。
しかる後、この電子制御装置Cは、第1調圧バルブ551を制御して目標変速比となるようプライマリ油圧室55の油圧を低下させる(ステップST7)。本実施例1にあっては、その第1調圧バルブ551の制御と共に、第1開閉バルブ552を制御してドレーン油路51bを開放する。
これにより、可動シーブ53にはベルト挟圧力の反力が固定シーブ52から離隔する方向に掛かり、その反力が運動方向変換機構56のネジ部に伝達される。これが為、第1運動方向変換機構構成部材561と第2運動方向変換機構構成部材562との間に相対回転が生じ、可動シーブ53が固定シーブ52から離隔する方向へと摺動し始める。そして、所望の目標変速比に相当するプライマリプーリ50におけるベルト80の巻き掛け半径となるまで可動シーブ53が固定シーブ52から離隔すると共に、セカンダリプーリ60の可動シーブ63が固定シーブ62に接近して、変速比が大きくなる。
この電子制御装置Cは、上記の如きアップシフト又はダウンシフトの変速制御を終えた後、上記ステップST1に戻って再び実変速比と目標変速比とを比較する。
ここで、この電子制御装置Cは、実変速比と目標変速比とが不一致であれば上述した制御を繰り返し、実変速比と目標変速比とが一致していれば、第2調圧バルブ578を制御してクラッチ制御油圧室576の油圧を低下させると共に、第2開閉バルブ579を制御してドレーン油路51dを開放する(ステップST8)。
これにより、内輪571がクラッチ制御油圧室576の方向に押動されてクラッチ機構57が係合状態となり、プライマリプーリ50における可動シーブ53の軸線方向の位置が固定される。
しかる後、この電子制御装置Cは、第1調圧バルブ551を制御してプライマリ油圧室55の油圧を既定値まで低下させて(ステップST9)、次の変速指令が為されるまで本処理を終了する。尚、その既定値とは、例えば、オイルポンプOPの駆動力低減の為に、可動シーブ53に必要以上の押圧力を掛けない値であることが好ましく、少なくともプライマリプーリ50におけるベルト挟圧力を発生させる程度の値であることが望ましい。
以上示した如く、本実施例1によれば、可動シーブ53の背面に設けたプライマリ油圧室55とクラッチ機構57により変速制御を行うことができるので、多くの歯車群を要した従来と比して可動シーブ摺動手段の小型化が図れ、これに伴ってベルト式無段変速機1の小型化が可能になる。
また、本実施例1のクラッチ機構57は、解放状態にするときのみクラッチ制御油圧室576の油圧を上昇させ、変速比を保持する係合状態においては油圧の上昇を要しないので、オイルポンプOPにおける動力や駆動損失の低減が可能になり、燃料消費量の低減をも図ることができる。
更に、本実施例1の電子制御装置Cは、クラッチ機構57を解放状態にする際に、先ずプライマリ油圧室55の油圧を上昇させてクラッチ機構57に掛かるクラッチ係合力(各ローラ573の傾斜面への食い込み)を解放し、その後、クラッチ制御油圧室576の油圧を上昇させるので、クラッチ機構57の係合状態が解除し易くなる。これが為、急激な係合解除を防ぐことができ、耐久性の向上をも図ることができる。
また、上記の如きプライマリ油圧室55や運動方向変換機構56を用いて可動シーブ53を摺動させるので、従来の如き歯車群により発生していた駆動損失が無くなり、可動シーブ摺動手段における駆動損失が低減される。
尚、本実施例1においてはクラッチ制御油圧室576の油圧を上昇させる前にプライマリ油圧室55の油圧を上昇させているが、これらクラッチ制御油圧室576及びプライマリ油圧室55の油圧は、同時に上昇させてもよい。
ここで、上述したセカンダリプーリ60には、図8及び図9に示す緩衝機構69を設けてもよい。
この緩衝機構69は、円形部材67に配置されたドーナッツ状のアウターケース691と、トルクカム主体65cに立設された板状部材692とから構成される。そのアウターケース691は、内部に粘性流体(例えば作動油)が充填された二つの中空部691aを有しており、円形部材67と一体になって回転する。また、その板状部材692は、面上に貫通孔(オリフィス)692aが形成されており、トルクカム主体65cと一体になって回転する。
ここで、上記各中空部691aには板状部材692が夫々配置されており、アウターケース691と板状部材692とが相対回転することによって、その板状部材692は、中空部691a内を移動する。この板状部材692の端部と中空部691aの内壁面との間には隙間が設けられている。
これにより、変速比の変更時にトルクカム65が作動することで、板状部材692が中空部691a内を移動する。その際、オリフィス692a及び上記隙間を粘性流体が流れることによって抵抗が生じ、トルクカム主体65cと可動シーブ63との間の相対移動を緩やかに行わせることができる。これが為、変速比変更時(トルクカム65の駆動/非駆動切替時)においてトルクカム65のガタが詰まる際のショック低減を図れる。
尚、上記抵抗の大きさは、板状部材692の端部と中空部691aの内壁面との間の隙間、オリフィス692aの径により調整する。
また、この緩衝機構69は、図9に示す中空部691aの中間部分を、その両端部分よりも幅広のものにして、変速比に応じて緩衝の程度(緩衝力)が変化可能なものにしてもよい。即ち、上述した板状部材692の端部と中空部691aの内壁面との隙間が、板状部材692が中空部691aの中間部分に位置する場合には大きく、板状部材692が中空部691aの両端部分に近づくにつれて小さくなるように、円周方向で幅を変化させた中空部691aを形成する。
これにより、板状部材692の移動速度が、板状部材692が中空部691aの中間部分に位置する場合に速く、板状部材692が中空部691aの両端部分に近づくにつれて遅くなるので、変速比に応じて緩衝の程度(緩衝力)を変化させ、トルクカム65のガタが詰まる際のショックを低減することができる。例えば、ダウンシフトのときに緩衝力が大きくなるように隙間を設定することによって、ドライバビリティの向上が図れる。
ここで、可動シーブ63はスプライン64を介してセカンダリシャフト61に取り付けられているので、この可動シーブ63と固定シーブ62は、その回転方向、回転速度が同じである。そこで、上記緩衝機構69は、本実施例2の如く可動シーブ63とトルクカム65との間に限らず、固定シーブ62側に設けてもよい。かかる場合の緩衝機構69は、例えば、トルクカム主体65cと同一の回転を行う回転部材(図示略)を固定シーブ62における溝80bと反対側に設け、その回転部材に上記板状部材692を取り付けると共に、固定シーブ62に上記アウターケース691を取り付けて構成すればよい。尚、その回転部材は、トルクカム65と別個独立のものであってもよく、例えばトルクカム主体65cから延設されたものであってもよい。
次に、本発明に係るベルト式無段変速機の実施例2を図10のフローチャートに基づいて説明する。
本実施例2のベルト式無段変速機1は、実施例1における電子制御装置Cの制御を変更したものであって、他の構成については実施例1と同一である。
前述した実施例1の電子制御装置Cは、目標変速比へと変速させる際、その目標変速比に相当する目標変速比油圧をプライマリ油圧室55に印加させ、実変速比が目標変速比になったときにクラッチ機構57を係合させる。
ここで、そのクラッチ機構57は、内輪571と外輪572の夫々の傾斜面で各ローラ573の回転を止めて係合状態にするが、その係合状態となる際、その傾斜面や各ローラ573の弾性により、各ローラ573が夫々の傾斜面に若干食い込む。これが為、その食い込んだ分だけ外輪572が内輪571に対して図4−2の矢印Aの方向に回転し、これに伴って運動方向変換機構構56が作動するので、一旦設定された目標変速比に対して変速比がずれてしまう。
そこで、本実施例2の電子制御装置Cは、その食い込みによる変速比のずれを予め考慮した上での油圧(以下「仮想目標変速比油圧」という。)をプライマリ油圧室55に印加させ、クラッチ機構57を係合させた際に最終的な目標変速比となるよう変速制御を行う。その仮想目標変速比油圧は、次のようにして設定される。
先ず、クラッチ機構57の食い込みによる変速比のずれをΔγとする。また、本実施例2の運動方向変換機構構56は、第2運動方向変換機構構成部材562が第1運動方向変換機構構成部材561に対して図4−2の矢印Aと同一の方向へと相対回転した際に、可動シーブ53を固定シーブ52へと接近させるものとする。
かかる運動方向変換機構構56の場合、アップシフト(可動シーブ53を固定シーブ52へと接近させる)要求の際には、下記の式1の如く目標変速比γtから食い込みによる変速比ずれΔγを除算した変速比(以下「アップシフト時の仮想目標変速比」という。)γitupまでプライマリ油圧室55の油圧で可動シーブ53を固定シーブ52へと接近させる。
γitup=γt−Δγ … 式1
その一方、ダウンシフト(可動シーブ53を固定シーブ52から離隔させる)要求の際には、下記の式2の如く目標変速比に食い込みによる変速比ずれΔγを加算した変速比(以下「ダウンシフト時の仮想目標変速比」という。)γitdownにまでプライマリ油圧室55の油圧で可動シーブ53を固定シーブ52へと接近させる。
γitdown=γt+Δγ … 式2
これにより、クラッチ機構57が係合されると、各ローラ573の食い込みにより可動シーブ53が固定シーブ52に向けて摺動し、所望の目標変速比へと変更することができる。
尚、第2運動方向変換機構構成部材562が第1運動方向変換機構構成部材561に対して図4−2の矢印Aと同一の方向へ相対回転した際に、可動シーブ53を固定シーブ52から離隔させるよう構成された運動方向変換機構56の場合、アップシフト時の仮想目標変速比γitup及びダウンシフト時の仮想目標変速比γitdownは、夫々下記の式3,4によって定められる。
γitup=γt+Δγ … 式3
γitdown=γt−Δγ … 式4
ここで、ある目標変速比γ1へと変速させるときを想定する。その際、食い込みによる変速比ずれΔγは一定であるので、アップシフトにより目標変速比γ1へと変速させる場合も、ダウンシフトにより目標変速比γ1へと変速させる場合も、プライマリ油圧室55の油圧により制御される仮想目標変速比γitup,γitdownは同一である(γitup=γitdown)。
そこで、本実施例2にあっては、目標変速比γtと、この目標変速比γtへと変速させる為の仮想目標変速比γitと、この仮想目標変速比γitにさせるプライマリ油圧室55の油圧(仮想目標変速比油圧)との対応関係を示すマップデータを予め用意し、このマップデータから現在のプライマリ油圧室55の油圧を考慮して、仮想目標変速比油圧への上昇代又は低下代を電子制御装置Cが算出する。
以下に、本実施例2における可動シーブ摺動手段(プライマリ油圧室55、運動方向変換機構56、クラッチ機構57)及び押圧機構(トルクカム65、セカンダリ油圧室66)の動作について図10のフローチャートに基づき詳述する。尚、ここでは、最初にクラッチ機構57が係合状態になっているものとする。
本実施例2にあっては、先ず、実施例1と同様に、変速指令が為された際に電子制御装置Cが実変速比と目標変速比とが一致しているか否かを判定し(ステップST11)、一致していなければ、次に、目標変速比が実変速比よりも小さいか否かを判定する(ステップST12)。
ここで、目標変速比が実変速比よりも小さいとの判定結果であれば(即ちアップシフト要求が為されていれば)、本実施例2の電子制御装置Cは、第1調圧バルブ551やレギュレータバルブ553を制御して、その目標変速比に対応する仮想目標変速比となるようプライマリ油圧室55の油圧を上昇させる(ステップST13)。尚、その油圧の上昇代は、目標変速比に基づいて前述したマップデータから仮想目標変速比油圧を読み込み、現在のプライマリ油圧室55の油圧を考慮して電子制御装置Cが算出する。
これにより、実施例1と同様に、その油圧による固定シーブ52側へ向けた軸線方向の力が可動シーブ53を介して運動方向変換機構56のネジ部に掛かり、第2運動方向変換機構構成部材562が円盤部562aを支点にして図2に示す矢印Cの方向に僅かに傾倒する。
これが為、各ローラ573の食い込みが弱まってクラッチ機構57の係合状態を解除し易くなり、かかる状態において、電子制御装置Cは、第2調圧バルブ578を制御してクラッチ制御油圧室576の油圧を上昇させる(ステップST14)。
これにより、内輪571が皿バネ575の方向に押動されてクラッチ機構57が解放状態となり、運動方向変換機構56のネジ部に掛かっている固定シーブ52側へ向けた軸線方向の力によって第1運動方向変換機構構成部材561と第2運動方向変換機構構成部材562との間に相対回転が生じ、可動シーブ53が固定シーブ52側へと摺動し始める。そして、仮想目標変速比に相当するプライマリプーリ50におけるベルト80の巻き掛け半径となるまで可動シーブ53が固定シーブ52に接近すると共に、セカンダリプーリ60の可動シーブ63が固定シーブ62から離隔する。
ここで、この電子制御装置Cは、現状でのベルト式無段変速機1の実変速比が仮想目標変速比になっているか否かを判定し(ステップST15)、仮想目標変速比になっていなければ、再度第1調圧バルブ551等を制御して、仮想目標変速比となるようプライマリ油圧室55に補正油圧を掛ける(ステップST16)。
上記ステップST15にて実変速比が仮想目標変速比になっているときは、電子制御装置Cが第2調圧バルブ578と第2開閉バルブ579を制御して、クラッチ制御油圧室576の油圧を低下させると共にドレーン油路51dを開放する(ステップST17)。
これにより、内輪571がクラッチ制御油圧室576の方向に押動されて内輪571と外輪572の夫々の傾斜面に各ローラ573が食い込み、これに伴って、外輪572が内輪571に対して図4−2の矢印Aの方向に回転し、運動方向変換機構56が作動して可動シーブ53が前述した食い込みによる変速比ずれΔγ分(換言すれば可動シーブ53の軸線方向への移動分)だけ固定シーブ52に接近する。その際、セカンダリプーリ60においては、その食い込みによる変速比ずれΔγ分だけ可動シーブ63が固定シーブ62から離隔する。
このようなクラッチ機構57の係合と食い込みによる変速比ずれΔγ分の変速比調節を終えた後、この電子制御装置Cは、実施例1と同様に、第1調圧バルブ551を制御してプライマリ油圧室55の油圧を既定値まで低下させ(ステップST18)、上記ステップST11戻る。そして、実変速比と目標変速比とが一致していれば、次の変速指令が為されるまで本処理を終了し、実変速比と目標変速比とが一致していなければ、同様の動作を繰り返す。
尚、電子制御装置Cは、上記ステップST18の油圧制御と共に、挟圧力調圧バルブ661を制御してセカンダリプーリ60のセカンダリ油圧室66に油圧を供給し、固定シーブ62と可動シーブ63との間にベルト挟圧力を発生させてもよい。
続いて、上記ステップST12において目標変速比が実変速比よりも大きい(即ちダウンシフト要求が為されている)との判定結果である場合について説明する。
かかる場合においても、実施例1と同様に、先ず、第1調圧バルブ551やレギュレータバルブ553を制御してプライマリ油圧室55の油圧を上昇させ(ステップST19)、クラッチ機構57の係合状態を解除し易くしてから第2調圧バルブ578を制御してクラッチ制御油圧室576の油圧を上昇させる(ステップST20)。
クラッチ機構57が解放状態になった後、この電子制御装置Cは、第1調圧バルブ551を制御して、目標変速比に対応する仮想目標変速比となるようプライマリ油圧室55の油圧を低下させる(ステップST21)。ここでは、本実施例1にあっても、その第1調圧バルブ551の制御と共に、第1開閉バルブ552を制御してドレーン油路51bを開放する。
これにより、運動方向変換機構56のネジ部にベルト挟圧力の反力が掛かり、その第1運動方向変換機構構成部材561と第2運動方向変換機構構成部材562との間の相対回転によって、可動シーブ53が固定シーブ52から離隔する方向へと摺動し始める。そして、仮想目標変速比に相当するプライマリプーリ50におけるベルト80の巻き掛け半径となるまで可動シーブ53が固定シーブ52から離隔すると共に、セカンダリプーリ60の可動シーブ63が固定シーブ62に接近する。
ここで、この電子制御装置Cは、上記ステップST15にて現状でのベルト式無段変速機1の実変速比が仮想目標変速比になっているか否かを判定し、仮想目標変速比になっていなければ、上記ステップST16にて再度第1調圧バルブ551等を制御して、仮想目標変速比となるようプライマリ油圧室55に補正油圧を掛ける。
上記ステップST16にて実変速比が仮想目標変速比になっているときは、上記ステップST17にて電子制御装置Cが第2調圧バルブ578と第2開閉バルブ579を制御し、クラッチ制御油圧室576の油圧を低下させると共にドレーン油路51dを開放する。
これにより、アップシフトの場合と同様に、内輪571がクラッチ制御油圧室576の方向に押動されて内輪571と外輪572の夫々の傾斜面に各ローラ573が食い込み、これに伴って、外輪572が内輪571に対して図4−2の矢印Aの方向に回転する。これが為、運動方向変換機構56が作動し、可動シーブ53が前述した食い込みによる変速比ずれΔγ分だけ固定シーブ52の方向に戻される。その際、セカンダリプーリ60においては、その食い込みによる変速比ずれΔγ分だけ可動シーブ63が固定シーブ62から離隔する。
以降、アップシフトの場合と同様に、この電子制御装置Cは、上記ステップST18にて第1調圧バルブ551を制御し、プライマリ油圧室55の油圧を既定値まで低下させた後、上記ステップST11戻る。そして、実変速比と目標変速比とが一致していれば、次の変速指令が為されるまで本処理を終了し、実変速比と目標変速比とが一致していなければ、同様の動作を繰り返す。
以上示した本実施例2によれば、予めクラッチ機構57の係合動作時における食い込みによる変速比ずれΔγ分を考慮してプライマリ油圧室55の油圧を制御し、クラッチ機構57を係合させた際に最終的な目標変速比になるよう制御動作を定めているので、前述した実施例1の効果に加え、より素早く且つ容易に目標変速比へと変速させることができる。
そして、その変速制御性の向上により、ドライバビリティの向上が図れるだけでなく、プライマリ油圧室55に高圧の油圧を印加している時間の短縮をも図れるので、オイルポンプOPにおける動力や駆動損失を更に低減させることができ、燃料消費量を更に低減させることができる。
尚、本実施例2においてもクラッチ制御油圧室576の油圧を上昇させる前にプライマリ油圧室55の油圧を上昇させているが、これらクラッチ制御油圧室576及びプライマリ油圧室55の油圧は、同時に上昇させてもよい。