JP4467779B2 - 熱転写シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、サーマルヘッドの加熱により転写を行なう熱転写プリンタ等に用いられる熱転写シートに関し、特に、印画物のオーバーコートを行ない写真のような質感を与える熱転写シートに関するものである。印画物を得る際に、インラインでのオーバーコート処理を必要としない場合は、ヒートロール等の加熱手段を用いることもできる。
【0002】
【従来の技術】
近年、フルカラー画像を印画するプリンター技術の発展により、デジタルカメラやムービーカメラ等の撮像装置や、コンピューターにインストールされた画像処理ソフトウェア等から得られるデジタルあるいはアナログの画像データから、熱溶融転写型プリンターや熱昇華転写型プリンター、インクジェットプリンター、サーモオートクローム(TA)方式プリンター、電子写真方式プリンター等を利用して、直接写真画像を出力プリント出来るようになってきている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の写真画像の印画物は、画像的には写真品質に近づいているものの、その表面光沢の違いにより、従来の銀塩写真方式の印画物に比べると、まだ同等に匹敵するレベルまでには至っていないという問題がある。
また、近年の300dpiを超えるような高解像度化、高速化においては印字エネルギー的には同等であるが、印加電圧を上げ、通電時間を短くする等のサーマルヘッド通電制御になってきているため、印画物の表面光沢を発現させる層はより昇温する傾向にある。これまで、印画物の保存性を高めるために、紫外線吸収剤等を含有させたオーバーコートインクを印画物上に形成するといったものはあったが、充分な銀塩写真調の光沢画像を得られるまでには至らなかった。
【0004】
したがって、上記の問題を解決するため、本発明は、画像再現性、表面光沢性等において、銀塩写真方式の印画物と同等レベルに匹敵する印画物が得られる熱転写シートを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の熱転写シートは、
フィルム基材の一方の面に、少なくとも光沢発現層、感熱接着層を順次設けた構成で、該光沢発現層のJIS K−7196による軟化温度が150℃以上であり、かつ前記の光沢発現層は、Tgが150℃以上の樹脂である塩素化ポリオレフィン樹脂を主体として構成され、かつ該塩素化ポリオレフィン樹脂は、塩素化度が50%以上、質量平均分子量が5,000〜250,000であるようにした。
【0006】
また、前記の光沢発現層は、平均粒子径が300nm以下の粒子及び樹脂バインダーを主体として構成されることが望ましい。前記のフィルム基材と光沢発現層の間に光沢調整層を設けることが好ましい。前記の光沢調整層は、粒子及び樹脂バインダーを主体として構成される非転写層であることが望ましい。また、前記のフィルム基材と光沢発現層の間、もしくは光沢調整層と光沢発現層の間に離型層を設けることが好ましい。
【0007】
前記の光沢発現層と感熱接着層のヘイズが10以下であることが望ましい。但し、ヘイズは曇価であり、拡散透過率/全光線透過率で算出され、JIS K7105で規定する測定方法による。このように光沢発現層と感熱接着層のヘイズを10以下にすることにより、転写画像上に転写した時に下に位置する画像を全く隠蔽することなく、鮮明な画像が得られる。
さらに、前記のフィルム基材の光沢発現層を設ける側の3次元粗さ測定による中心面平均値SPaが、0.5μm以下であることが望ましい。このようにフィルム基材の光沢発現層を設ける側の3次元粗さ測定による中心面平均値SPaを0.5μm以下にすることにより、光沢発現層が被転写体に転写された印画物表面の鏡面光沢性を高めることができる。
また前記の光沢発現層、または感熱接着層のいずれか1層あるいは2層ともに紫外線吸収剤を含むことが好ましく、これにより得られる印画物の耐光性を向上させることができる。
前記の光沢発現層と感熱接着層の間に紫外線吸収剤含有層を設けることができ、これにより得られる印画物の耐光性を向上させることができる。
【0008】
本発明の熱転写シートは、上記のように、フィルム基材の一方の面に、少なくとも光沢発現層、感熱接着層を順次設けた構成で、該光沢発現層のJIS K−7196による軟化温度が150℃以上としたことにより、光沢発現層が変形しない温度範囲で感熱接着層が溶融して、被転写体に転写できるので、サーマルヘッド等による熱転写で優れた光沢感を有する印画物が得られる。
すなわち、光沢発現層の軟化温度を150℃以上とすることにより、感熱接着層が転写開始温度以上になり軟化して溶融した状態でも、光沢発現層が感熱接着層の変形に追従することなく、平坦性を保持することができ、光沢感に優れた印画物を得ることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。
図1は本発明の熱転写シートである一つの実施形態を示す縦断面図である。同図の熱転写シート1は、フィルム基材2の背面側に耐熱層7が設けられており、フィルム基材2のおもて面側に、順に光沢発現層3、感熱接着層4が設けられた構成である。なお、耐熱層7は場合により適宜省略することもできる。また、本発明の熱転写シートの使用形状は、通常は連続帯状の熱転写シートとして使用されるが、一枚単位のシート状としても使用可能である。
また、図2は本発明の熱転写シートである他の実施形態を示す縦断面図であり、フィルム基材2の背面側に耐熱層7が設けられており、フィルム基材2のおもて面側に、順に光沢調整層5、光沢発現層3、感熱接着層4が設けられた熱転写シート1である。
【0010】
図3は本発明の熱転写シートである他の実施形態を示す縦断面図であり、フィルム基材2の背面側に耐熱層7が設けられており、フィルム基材2のおもて面側に、順に離型層6、光沢発現層3、感熱接着層4が設けられた熱転写シート1である。
さらに、図4は本発明の熱転写シートである他の実施形態を示す縦断面図であり、フィルム基材2の背面側に耐熱層7が設けられており、フィルム基材2のおもて面側に、順に光沢調整層5、離型層6、光沢発現層3、感熱接着層4が設けられた熱転写シート1である。
【0011】
以下、本発明の熱転写シートの層毎に順次説明する。
(フィルム基材)
熱転写シートのフィルム基材2は、従来公知のある程度の耐熱性と強度を有するものであれば、いずれのものでもよく、例えば、0.5〜50μm、好ましくは3〜10μm程度の厚さのポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロファン等であり、特に好ましいものは、ポリエステルフィルムである。
本発明の熱転写シートで使用するフィルム基材は、光沢発現層を設ける側の3次元粗さ測定による中心面平均値SPaが、0.5μm以下であることが、得られる印画物の光沢性を一定のレベルに保持するために、必要である。
また、特に絹目調といった、光沢感を落とした写真調の印画物を得るためには、表面がマット調のフィルム基材を用いるか、マット調の離型層を設ければ良い。この場合のフィルム基材または、離型層の3次元粗さ測定による中心面平均値SPaは、受像紙の種類にもよるが、求める絹目調印画物の表面粗さと同程度にすれば良く、0.5〜30μmの範囲である。
【0012】
(耐熱層)
本発明の熱転写シートは、フィルム基材の他方の面に、サーマルヘッドの熱によるスティッキングや印字しわなどの悪影響を防止するため、耐熱層7を設けることができる。
上記の耐熱層を形成する樹脂としては、従来公知のものであればよく、例えばポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレン/ブタジエン共重合体樹脂、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンまたはエポキシのプレポリマー、ニトロセルロース樹脂、セルロースナイトレート樹脂、セルロースアセトプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートヒドロジエンフタレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
また、より耐熱性向上のために、各種イソシアネート硬化剤や不飽和結合を有するモノマー、オリゴマーとの反応生成物でもよく、硬化方法は加熱、電離放射線の照射等、硬化手段は限定されない。
【0013】
これらの樹脂からなる耐熱層に添加、あるいは上塗りする滑り性付与剤としては、燐酸エステル、シリコーンオイル、グラファイトパウダー、シリコーン系グラフトポリマー、フッ素系グラフトポリマー、アクリルシリコーングラフトポリマー、アクリルシロキサン、アリールシロキサン等のシリコーン重合体が挙げられるが、好ましくは、ポリオール、例えば、ポリアルコール高分子化合物とポリイソシアネート化合物及び燐酸エステル系化合物からなる層であり、更に充填剤を添加することがより好ましい。
耐熱層は、上記に記載した樹脂、滑り性付与剤、更に充填剤を、適当な溶剤により、溶解又は分散させて、耐熱層形成用インキを調製し、これを、上記のフィルム基材の他方に面に、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースコーティング法等の形成手段により塗布し、乾燥して形成することができる。
【0014】
(光沢発現層)
光沢発現層3は感熱接着層が溶融又は軟化して転写が可能になる印字エネルギー領域において、サーマルヘッドの加熱により熱変形しない構成であることが好ましい。また光沢発現層のJIS K−7196による軟化温度は150℃以上であれば、より広いエネルギーレンジで光沢感を損なわない転写が可能となる。
転写様式としては、フィルム基材/光沢発現層界面での界面剥離となるような膜転写型の構成であることが好ましい。光沢発現層が層内での凝集破壊を含むような転写様式では、印字表面の平滑性が安定せず、充分な光沢が得られない、光沢ムラが発生するといった不具合が起こってくる。
【0015】
光沢発現層のJIS K−7196による軟化温度を150℃以上とするには、Tgが150℃以上の樹脂を主体として形成するか、又は300nm以下の平均粒径の有機又は無機微粒子と樹脂バインダーで構成するのが好ましい。
また、光沢発現層の軟化温度を150℃以上とするのは、感熱接着層の溶融、軟化により転写が可能となる印字領域においても光沢発現層が溶融、変形せず、平滑性を保っていられるようにするためで、通常の溶融型熱転写における印字エネルギー領域である0.2〜0.6mJ/dotのエネルギー領域で安定的な印字を得るには、光沢発現層の軟化温度は150℃以上必要となってくる。
【0016】
前記のTgが150℃以上の樹脂としては、例えばポリアミドイミド樹脂、塩素化ポリオレフィン、ポリアリレート樹脂、ノルボルネン系水添樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール、アセチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート等が挙げられる。
これらの中でも、耐熱性、透明性、汎用溶剤への溶解性等の点から、ポリアミドイミド樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂が好適である。
また、300nm以下の平均粒径の有機又は無機微粒子と樹脂バインダーで光沢発現層を形成する場合、微粒子としては例えば、PMMA、スチレン等の架橋有機粒子や、コロイダルシリカ、アルミナゾル、酸化チタン等の無機微粒子が挙げられる。この有機又は無機微粒子は、平均粒径が300nm以下、特に好ましくは100nm以下とすることが、光沢発現層の透明性を確保する点で重要である。これ以上の大きさの平均粒径の粒子では、光沢発現層の透明性が低くなり、下地の画像の透過性が低くなる。
【0017】
光沢発現層の上記の有機又は無機微粒子とともに使用する樹脂バインダーは、各種樹脂が使用でき、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン−アクリル酸共重合樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等や、これらの変性物、共重合物、混合物が挙げられる。
これらの光沢発現層を構成する微粒子/バインダー樹脂比は、1/3〜20/1の範囲が好適で、用いるバインダー樹脂の軟化温度と粒子の含有比率を調整して、光沢発現層のJIS K−7196による軟化温度を150℃以上に保つことが可能となる。微粒子の含有比率が小さすぎると、光沢発現層の軟化温度が低下してしまい、印画物で充分な光沢が得られなくなってくる。一方、微粒子の含有比率が大きすぎると、光沢発現層の皮膜強度が下がるため、印画物の保護層としての耐擦過性が悪くなってくる。
【0018】
光沢発現層は、上記の通り、Tgが150℃以上の樹脂を主体として形成するか、又は有機又は無機微粒子と樹脂バインダーで構成するが、必要な材料を溶剤や水の溶媒に溶解ないし分散させた塗工液により、従来から公知の塗工方式により、塗工量は転写する受像シート、感熱接着層の各材料条件により最適値が変わるが、乾燥状態で0.2〜5g/m2が良好である。
また、光沢発現層は実質的に高い透明性が必要であり、転写されるオーバーコート層(少なくとも光沢発現層と感熱接着層)のヘイズが10以下となることが必要である。
光沢発現層は、この他に層自体の性能を阻害しない範囲で、箔持ちを調整する熱可塑性樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粒子等を添加できる。
【0019】
(感熱接着層)
本発明の熱転写シートを構成する感熱接着層4は熱可塑性樹脂や、ワックスを主体に形成される。用いられる熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン−アクリル酸共重合樹脂、NBR樹脂、SBR樹脂等やこれらの変性物、共重合物、混合物が挙げられる。
これらの樹脂のTgは、50〜120℃の範囲のものが好適に用いられ、感熱接着層の融点、または軟化温度が50〜120℃とすることで、光沢発現層が変形しない温度範囲で感熱接着層が溶融して、被転写体に転写できるので、サーマルヘッド等による熱転写で優れた光沢感を有する印画物が得られる。
つまり、光沢発現層のJIS K−7196による軟化温度が150℃以上であり、感熱接着層が転写開始温度以上になり軟化して溶融した状態でも、光沢発現層が感熱接着層の変形に追従することなく、平坦性を保持することができ、光沢感に優れた印画物を得ることができる。
【0020】
感熱接着層は、従来から公知の塗工方式により、塗工量は転写する受像シートや、光沢発現層等の各材料条件により最適値が変わるが、乾燥状態で0.2〜5g/m2が良好である。
また、感熱接着層は実質的に高い透明性が必要であり、転写されるオーバーコート層(少なくとも光沢発現層と感熱接着層)のヘイズが10以下となることが必要である。
感熱接着層は、この他に層自体の性能を阻害しない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を添加できる。
【0021】
(光沢調整層)
本発明の熱転写シートでは、特に印画物の光沢性を意図的に特定範囲に収めたい時は、フィルム基材と光沢発現層の間に光沢調整層5を設けることが出来る。上記のフィルム基材上に直接光沢発現層を設けた場合、印画物の光沢性は主としてフィルム基材の平滑性の影響を受けることになるなるため、微妙な光沢感の調整は困難である。
光沢調整層は粒子及び樹脂バインダーを主体として構成される非転写性層である。かかる粒子としてはシリカ、炭カル、クレー、アルミナ粒子、酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。このような粒子としては、0.1〜30μmの範囲である平均粒径のものが好ましく使用される。
【0022】
光沢調整層で用いる樹脂バインダーとしては、上記に説明した感熱接着層の熱可塑性樹脂やシリコーン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、またそれらの樹脂の変性物、共重合物、混合物が挙げられる。
これらの粒子/バインダー樹脂比(質量比)は、0.1/100〜20/100の範囲が好適である。光沢調整層は、この他に離型性を向上させるために、シリコーンオイル等の離型剤を添加できる。
光沢調整層は、従来から公知の塗工方式により、求める光沢度により最適値が変わるが、塗工量は乾燥状態で0.3〜5g/m2が良好である。
【0023】
(離型層)
本発明の熱転写シートは、フィルム基材と光沢発現層、または光沢調整層と光沢発現層の離型性を高めるために、離型層6を設けることも可能である。かかる離型層はWAXを主体として構成することが好ましい。かかるWAXとしては、例えば、カルナバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、エステルワックス、フィシャートロプシュワックス、各種低分子量ポリエチレン、木ロウ、みつロウ、鯨ロウ、イボタロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等の種々のワックス類が使用できる。
【0024】
離型層は、上記に挙げたワックスを主体に含有し、離型性を調整する目的で、上記に説明した感熱接着層で挙げた熱可塑樹脂を加えることも可能である。
離型層は、従来から公知の塗工方式により形成でき、塗工量は乾燥状態で0.01〜0.5g/m2が好ましい。これ以上厚すぎると、離型層の軟化により、転写表面の平滑性が保てなくなってくるため、特に0.10〜0.30g/m2の範囲が転写時の透明性を損なわない点で良好である。
【0025】
(紫外線吸収剤含有層)
本発明の熱転写シートは、フィルム基材上に、光沢発現層、紫外線吸収剤含有層、感熱接着層をこの順に設けることができ、これにより得られる写真のような質感のある印画物の耐光性を付与することができる。
紫外線吸収剤含有層は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、ハロゲン化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、セルロース系樹脂、ポリエチレン等の炭化水素系樹脂、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、及びこれらの共重合体等のバインダーに、従来から使用されている紫外線吸収剤を添加する。
【0026】
その紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物、サリシレート系化合物等の有機系の紫外線吸収剤が使用可能であり、また亜鉛、チタン、セリウム、スズ、鉄等の酸化物の如き無機系の紫外線吸収能を有する微粒子を添加することもできる。また反応性紫外線吸収剤を樹脂に反応結合させた樹脂を、紫外線吸収剤含有層に単独または混合して用いてもよい。
このような紫外線吸収剤は、印画物の画像が太陽光等に含まれる紫外線によって褪色や変色するのを抑制する効果を発揮する。
上記の紫外線吸収剤は、バインダー樹脂に対し、1〜40質量%の割合で含有させることができ、従来から公知の塗工方式により、塗工量は乾燥状態で0.3〜5g/m2程度である。
尚、説明が後になったが、光沢発現層、または感熱接着層に含有できる紫外線吸収剤も、上記の紫外線吸収剤含有層で用いられる材料と同様のものが使用できる。
【0027】
なお、上記の如く構成された本発明の熱転写シートは、サーマルヘッドを用いるサーマルプリンターに最適であるが、ラミネーターを用いた保護層付与手段としても使用できる。また、基材フィルム上に、イエロー、マゼンタ、シアン、必要に応じて、ブラック等の着色転写層を設けた熱転写シートの同一フィルム基材上の余白に、本発明の構成である光沢発現層、感熱接着層を順次設けたり、またイエロー、マゼンタ、シアン、必要に応じて、ブラック等の着色転写層を設けた熱転写シートとは、別個のフィルム基材に本発明の構成である光沢発現層、感熱接着層を順次設けることができる。
【0028】
本発明の熱転写シートは、イエロー、マゼンタ、シアン、必要に応じて、ブラック等の着色転写層から、転写して形成した写真画像等の印画物の画像上に、銀塩写真方式の印画物と同等レベルに匹敵する画像再現性、表面光沢性等を提供する保護層(オーバーコート)を転写するものである。したがって、本発明の熱転写シートの同一フィルム基材上に着色転写層を設けている場合は、転写画像を形成した後に、インラインで保護層を転写することが可能である。また、画像形成用の熱転写シートと、光沢発現層、感熱接着層を順次設ける本発明の熱転写シートが別体であれば、転写画像を形成して、その後にオフラインで、画像形成した加熱転写手段やその他の加熱転写手段により保護層を転写することができる。
【0029】
【実施例】
次に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。尚、文中、部または%とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
(実施例1)
厚さ6.0μmのポリエチレンテレフタレートフィルムをフィルム基材とし、その一方の面に下記組成の耐熱層塗工液をグラビアコーターにより、固形分塗布量が0.3g/m2になるように塗布、乾燥して、耐熱層を形成した。次いで、フィルム基材の他方の面に、下記組成の光沢発現層塗工液をグラビアコーターにより、固形分塗布量が1.0g/m2になるように塗布、乾燥して、光沢発現層を形成し、さらにその上に感熱接着層塗工液をグラビアコーターにより、固形分塗布量が1.0g/m2になるように塗布、乾燥して、感熱接着層を形成して、本発明の実施例1の熱転写シートを得た。
【0030】
(耐熱層塗工液)
スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂 11部
線状飽和ポリエステル樹脂 0.3部
ジンクステアリルホスフェート 6部
メラミン樹脂粉末 3部
メチルエチルケトン 80部
【0031】
(光沢発現層塗工液)
塩素化ポリプロピレン樹脂 20部
(Tg:260℃、塩素化度:63%、質量平均分子量:50000)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 80部
尚、この光沢発現層の軟化温度は166℃である。
【0032】
(感熱接着層)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(融点:75℃) 20部
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 80部
【0033】
参考実施例2)実施例1において、光沢発現層塗工液を下記組成に変更し、固形分塗布量が0.5g/m2になるように塗布、乾燥して、光沢発現層を形成し、さらにその上に下記組成の感熱接着層塗工液にして、固形分塗布量が0.5g/m2になるように塗布、乾燥して、感熱接着層を形成し、その他は実施例1と同様にして、本発明の参考実施例2の熱転写シートを得た。
(光沢発現層塗工液)
ポリアミドイミド(Tg:260℃) 20部
エタノール/トルエン(質量比1/1) 80部
尚、この光沢発現層の軟化温度は185℃である。
【0034】
(感熱接着層)
カルナバワックス(融点:83℃) 20部
水/イソプロピルアルコール(質量比1/1) 80部
【0035】
(実施例3)
実施例1において、フィルム基材と光沢発現層の間に、下記組成の光沢調整層塗工液をグラビアコーターにより、固形分塗布量が0.5g/m2になるように塗布、乾燥して、光沢調整層を形成した以外は、実施例1と同様にして、本発明の実施例3の熱転写シートを得た。
(光沢調整層塗工液)
ポリエステル樹脂 15部
シリコーン樹脂 2部
シリカ粒子(平均粒径:3.0μm) 3部
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 80部
【0036】
(実施例4)
実施例1において、フィルム基材と光沢発現層の間に、下記組成の離型層塗工液をグラビアコーターにより、固形分塗布量が0.3g/m2になるように塗布、乾燥して、離型層を形成した以外は、実施例1と同様にして、本発明の実施例4の熱転写シートを得た。
(離型層塗工液)
カルナバワックス(融点:83℃) 20部
水/イソプロピルアルコール(質量比1/1) 80部
【0037】
(比較例1)
実施例1で使用した耐熱層付きのフィルム基材の上に、下記組成の光沢発現層塗工液をグラビアコーターにより、固形分塗布量が1.0g/m2になるように塗布、乾燥して、光沢発現層を形成し、比較例1の熱転写シートを作製した。
(光沢発現層塗工液)
アクリル樹脂(Tg:105℃) 20部
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 80部
尚、この光沢発現層の軟化温度は68℃である。
【0038】
(比較例2)
比較例1の光沢発現層塗工液を下記組成に変更した以外は、比較例1と同様にして、比較例2の熱転写シートを作製した。
ポリビニルブチラール樹脂(Tg:85℃) 10部
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 90部
尚、この光沢発現層の軟化温度は57℃である。
【0039】
上記の実施例1で使用した光沢発現層と感熱接着層の各塗工液を実施例1の時の塗工量において、各々を単独で上記のフィルム基材(耐熱層無しの状態で)に塗布、乾燥した試料に対し、ヘイズを測定したところ、光沢発現層、感熱接着層のいずれもヘイズ値は5.0以下であり、転写画像を被覆する保護層として、透明性に優れるものである。尚、ヘイズの測定は、JIS K7105で規定する測定方法により、拡散透過率/全光線透過率で算出される。
【0040】
プリンタとして、JVC(日本ビクター(株))製のJP−3500を用いて、被転写体として、専用受像紙を用い、また画像形成用の熱転写シートとしてそのプリンター専用の4色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)熱転写シートを使用して、テストパターンの写真画像を形成した。そして、上記に用意した実施例及び比較例の熱転写シートを用いて、上記の写真画像上に全面で保護層を転写した。尚、保護層転写条件は、0.3〜0.5mJ/dotとした。
上記の得られた保護層付きの印画物に対して、下記のような評価を行った。
【0041】
(印画物の光沢感)
上記の条件で得られた各印画物について、保護層転写された表面の光沢の程度を目視にて調べた。その評価の基準は以下の通りである。
◎:印画物表面の光沢感に優れており、光沢調の写真画像に近い。
○:印画物表面の光沢感に優れており、絹目調の写真画像に近い。
×:印画物表面のマット感が高く、下地の画像が見えづらい。
【0042】
評価結果は下記表1の通りである。
【表1】
Figure 0004467779
【0043】
【発明の効果】
以上の通り、本発明の熱転写シートは、上記のように、フィルム基材の一方の面に、少なくとも光沢発現層、感熱接着層を順次設けた構成で、該光沢発現層のJIS K−7196による軟化温度が150℃以上としたことにより、光沢発現層が変形しない温度範囲で感熱接着層が溶融して、被転写体に転写できるので、サーマルヘッド等による熱転写で優れた光沢感を有する印画物が得られる。
すなわち、光沢発現層の軟化温度を150℃以上とすることにより、感熱接着層が転写開始温度以上になり軟化して溶融した状態でも、光沢発現層が感熱接着層の変形に追従することなく、平坦性を保持することができ、光沢感に優れた印画物を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱転写シートである一つの実施形態を示す縦断面図である。
【図2】本発明の熱転写シートである他の実施形態を示す縦断面図である
【図3】本発明の熱転写シートである他の実施形態を示す縦断面図である
【図4】本発明の熱転写シートである他の実施形態を示す縦断面図である
【符号の説明】
1 熱転写シート
2 フィルム基材
3 光沢発現層
4 感熱接着層
5 光沢調整層
6 離型層
7 耐熱層

Claims (9)

  1. フィルム基材の一方の面に、少なくとも光沢発現層、感熱接着層を順次設けた熱転写シートにおいて、該光沢発現層のJIS K−7196による軟化温度が150℃以上であり、かつ前記の光沢発現層は、Tgが150℃以上の樹脂である塩素化ポリオレフィン樹脂を主体として構成され、かつ該塩素化ポリオレフィン樹脂は、塩素化度が50%以上、質量平均分子量が5,000〜250,000であることを特徴とする熱転写シート。
  2. 前記の光沢発現層は、平均粒子径が300nm以下の粒子及び樹脂バインダーを主体として構成されることを特徴とする請求項1に記載する熱転写シート。
  3. 前記のフィルム基材と光沢発現層の間に光沢調整層を設けたことを特徴とする請求項1に記載する熱転写シート。
  4. 前記の光沢調整層は、粒子及び樹脂バインダーを主体として構成される非転写層であることを特徴とする請求項3に記載する熱転写シート。
  5. 前記のフィルム基材と光沢発現層の間、もしくは光沢調整層と光沢発現層の間に離型層を設けたことを特徴とする請求項1または3に記載する熱転写シート。
  6. 前記の光沢発現層と感熱接着層のヘイズが10以下であることを特徴とする請求項1に記載する熱転写シート。
  7. 前記のフィルム基材の光沢発現層を設ける側の3次元粗さ測定による中心面平均値SPaが、0.5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載する熱転写シート。
  8. 前記の光沢発現層、または感熱接着層のいずれかに紫外線吸収剤を含むことを特徴とする請求項1に記載する熱転写シート。
  9. 前記の光沢発現層と感熱接着層の間に紫外線吸収剤含有層を設けたことを特徴とする請求項1に記載する熱転写シート。
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