JP4629210B2 - 熱転写シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱転写記録方式によって、被転写材に金属光沢等の金属感を有する文字や図柄等をプリントするための熱転写シートに関する。特に、サーマルプリンタでのプリント時の高熱に影響されずに金属光沢に優れた熱転写シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
旧来より、金属光沢を有する印字物等を得る方法として、転写箔を用いて、印字物と同一形状の凸部を有する金属等のスタンプで熱圧接するホットスタンピング法が知られている。この転写箔として、例えば、9〜25μm程度の基材フィルム上に剥離層、蒸着アンカー層、金属蒸着層、接着層を順次積層したものを用いる。そして、転写箔の接着層側を紙等の被転写体と対向させ、基材フィルム側から100〜130℃程度に加熱したスタンプを数秒間押し当てることにより、所望の画像を被転写体に転写させる画像記録方法である。しかしながら、ホットスタンピング法では、金属等でできたスタンプをその都度作製する必要があるために、少部数の印字にはコスト的に適しておらず、更にハーフトーン調の記録を行なうためにはスタンプに網点等の精密加工が要求される上、細かいハーフトーン画像の記録は困難である。
【0003】
これに対して、近年、サーマルヘッドと熱転写リボンを用いた熱転写記録方式が普及するに至り、この方法は少部数の印字に適しており、また面積階調によるハーフトーン調の画像も容易に記録できるため、上記スタンプの代わりにサーマルヘッドを用いた、転写記録方法が望まれている。例えば特開昭63−30288号公報では、従来のホットスタンピング法に用いる転写箔についてその基材フィルムを薄膜化したものを用いて、サーマルヘッドで熱転写することを試みている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のホットスタンピング法に用いられている転写箔の蒸着アンカー層には、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、或いはセルロース系樹脂等の樹脂が用いられている。このため、これら樹脂をそのまま用いた転写箔をサーマルヘッドでの転写に用いると、印字の際に金属蒸着層がマット化(曇化)し、鏡面光沢の金属光沢感を有する記録物を得ることは出来ない。
【0005】
これはサーマルヘッドを用いた熱転写方式と、ホットスタンピング方法による熱転写方式とでは、熱エネルギー印加のプロセスの違いに起因して起こるものである。すなわち、ホットスタンピング法では、9〜25μm厚の基材フィルム背面より100〜130℃程度に加温したスタンプを数秒間押し当てることにより、記録物を得ている。これに対して、サーマルヘッドでの熱転写方式では、通常3〜6μm厚の基材フィルムの背面にサーマルヘッドを押し当てて、サーマルヘッド表面を数ミリ〜十数ミリ秒の間300℃程度まで上昇させることにより記録物を得ている。したがって、熱エネルギーのロスを考慮しても基材フィルムに塗工形成された蒸着アンカー層は少なくとも100〜200℃程度には加熱される。この際、蒸着アンカー層として上述のような樹脂を使用していると、蒸着アンカー層はガラス転移温度以上まで昇温し更に圧力を印加されているために、弾性変形あるいは塑性変形してしまう。このため、蒸着アンカー層上に鏡面を形成していた金属蒸着層は蒸着アンカー層の変形に追従できず、微細な亀裂を生じ、結果として被転写体に転写形成された記録物において、金属蒸着層が曇化してしまう。
【0006】
ところで、転写箔の中には2液あるいは1液硬化型の樹脂を蒸着アンカー層に用い、基材フィルム表面に塗工後これを熱硬化させ、ガラス転移温度を上昇させたものがある。しかし、これらによる転写箔では上述のような曇化の問題は生じないが、塗工時のポットライフが短い、硬化条件が高温、長時間であるため、熱転写に使用するような薄膜の基材フィルム上への塗工には適さない等の問題がある。
【0007】
したがって、上記の問題を解決するため、本発明は、サーマルヘッドによる高熱を受けても、印画物とした時に、金属蒸着層に微細亀裂が入りマット化して、金属光沢感が損なわれることがなく、優れた金属光沢を有する印画物を形成することができる熱転写シートを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の熱転写シートは、フィルム基材の一方の面に、少なくとも、蒸着アンカー層、金属蒸着層および接着層を順次設け、該蒸着アンカー層がノルボルネン構造からなり、かつ極性基を有する非晶性ポリオレフィンからなる耐熱透明樹脂を該層全量に対し40質量%以上含有し、かつ該蒸着アンカー層の塗工量が、乾燥時で0.1〜20g/m 2 である構成にした。したがって、フィルム基材等に対する密着性が高く、適度な剛度を有するため、熱転写シートに加工した後も充分な保存性を有する。
【0009】
上記のような構成をとることにより、その結果、上記耐熱透明樹脂はその溶液を塗工して、特別の加熱硬化をせずに、乾燥するのみで、耐熱性の高い蒸着アンカー層が得られ、印字後の金属蒸着層の曇化を防止でき、光沢感に優れた印画物を得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。
図1は本発明の金属光沢を有する熱転写シートの一実施例を示す縦断面図である。同図の熱転写シート1は、フィルム基材2の背面側に耐熱層7が設けられており、フィルム基材2のおもて面側に、順に剥離層3、蒸着アンカー層4、金属蒸着層5、接着層6が設けられた構成である。なお、耐熱層7及び剥離層3は場合により適宜省略することもできる。また、本発明の熱転写シートの使用形状は、通常は連続帯状の熱転写シートとして使用されるが、一枚単位のシート状としても使用され得るものである。
【0011】
以下、本発明の熱転写シートの層毎に順次説明する。
(フィルム基材)
熱転写シートのフィルム基材2としては、熱転写記録時のサーマルヘッドの加熱に耐え、かつ所望の伝熱性、機械的強度等を有する材料であれば、特に限定されず、従来の一般的な熱転写シート等に使用される公知の材料等を使用できる。例えば、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、セロハン、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド等のプラスチックのフィルム、コンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類、不織布等があり、またこれらを複合したものであっても良い。
また、フィルム基材の厚さは、その機械的強度及び熱伝導性等の点から適宜調整するが、通常、好ましくは2〜25μm程度である。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムの場合は、通常2〜8μm、より好ましくは3〜6μmである。
【0012】
(耐熱層)
図1に例示した断面図の如く、フィルム基材2の背面にサーマルヘッドとの熱融着を防止する耐熱性を有する耐熱層7を設けても良い。また、耐熱層には、耐熱性の他に滑り性を良くするための滑性機能を具備させても良い。
尚、上記の耐熱層としては、耐熱性を目的とする際は、公知の、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂やシリコーン樹脂、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂等の耐熱性のある樹脂を使用し、また滑性を得るには充填剤、滑剤、帯電防止剤等の添加剤を加える。耐熱層の塗工量は、融着防止や滑性等が果たせられる程度であれば充分で、通常0.1〜3g/m2程度である。
【0013】
(剥離層)
剥離層3は、転写記録時に熱転写記録素子から被転写体側に、その厚さ方向の全部又は凝集破壊によって、一部が転写移行し、記録部の最表面を形成する層である。一部移行又は全部移行の場合は、印字時の箔切れが良いように、記録時の凝集力が低いものが良い。或いは、全く転写移行しない層であっても良い。必要な点としては、剥離層は該層或いは該層隣接面において、熱転写記録素子が剥離し、フィルム基材と金属蒸着層との分離を可能にする層である。
剥離層としては、例えば、カルナバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、エステルワックス、フッシャートロプシュワックス、各種低分子量ポリエチレン、木ロウ、みつロウ、鯨ロウ、イボタロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等の種々のワックス類が使用できる。
【0014】
また、剥離層としてはフィルム基材との剥離性等が適切であれば、上記ワックス以外の樹脂も使用でき、樹脂のみ、或いは上記ワックス類と樹脂との混合物等であってもよい。このような樹脂としては、例えば、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム等のゴム系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体型樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ塩素化オレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール系樹脂等が挙げられる。
剥離層の厚みは、乾燥時の塗工量で一般に0.1〜10g/m2の範囲である。0.1g/m2未満であると、剥離層としての機能をなさず、10g/m2を超えると、印字時の箔切れが低下し、特にハーフトーン記録が良好に出来ず、また箔持ちの低下をもたらし使用できなくなることもある。
【0015】
(蒸着アンカー層)
蒸着アンカー層4は、基本的には金属蒸着の際に下地を提供し、且つフィルム基材等を蒸着時の熱から保護すると共に、光沢を実現するためのものである。また、蒸着アンカー層は、転写印字後は金属蒸着層と共に被転写体に転写移行し、金属蒸着層の上層に位置して金属蒸着層に密着して記録物の一構成要素となるのものであり、金属蒸着層を擦り傷や腐食等の機械的及び化学的強度を向上させる保護層として機能する層でもあり、金属蒸着層の金属光沢を透視可能な程度に透明性を有する層でもある。
【0016】
さらに、本発明の蒸着アンカー層は、従来のホットスタンピング法では受けることのなかった、サーマルヘッドによる高熱に耐えて金属蒸着層の曇化を起こさない耐熱性を有する。また、本発明の蒸着アンカー層は、架橋ポリマーではなく、線状ポリマーから構成されているので、加熱硬化等の硬化処理が不要で、単に溶液を塗工し乾燥すれば容易に設けることができる層でもある。このような耐熱性を有する蒸着アンカー層に用いる材料としては、蒸着アンカー層がサーマルヘッドの加熱によって受ける温度よりもガラス転移温度の高いものでなくてはならない。一般的なサーマルヘッドを使用した印字の場合、蒸着アンカー層が受ける温度は100〜200℃付近であり、したがってサーマルヘッドを用いた熱転写方式に適した蒸着アンカー層の材料はガラス転移温度が少なくとも100℃以上である必要がある。
【0017】
更に、画像濃度が濃い部分等で印字に、より高エネルギーを要する場合があることを考慮すると、使用する材料のガラス転移温度は160℃以上であればより好ましい。ガラス転移温度は、ポリマーにおいては、ポリマー鎖セグメントの固体状態におけるミクロブラウン運動が、凍結又は解放する温度である。サーマルヘッドによる高熱で蒸着アンカー層の温度が融点まで達しなくても、もしもガラス転移温度を越えれば、ポリマー鎖セグメントのミクロブラウン運動が解放されるため、サーマルヘッドとプラテンローラ間で押圧されている蒸着アンカー層は、押圧力により変形され易くなる。その結果、蒸着アンカー層に密接し、且つ形状追従性のない金属蒸着層は対応できずに、微細に亀裂が生じ、これが目視的には曇化となって現れる。
したがって、蒸着アンカー層を構成するポリマーのガラス転移温度を、上記温度以上とすることが重要となってくるのである。
【0018】
上記の蒸着アンカー層は熱転写シート加工後、フィルム基材もしくは剥離層と蒸着アンカー層間で意図しない剥離が生じることを防ぐために、フィルム基材もしくは剥離層に対し、密着性の高いものが望ましい。また、蒸着アンカー層に剛性が必要以上に高い材料を用いると、加工後にフィルム基材もしくは剥離層から意図しない剥離が生じる。例えば、従来、蒸着アンカー層に用いられてきたポリアミドイミド樹脂はフィルム基材や剥離層に対する密着性が低く、かつ膜の剛性が必要以上に高いため、加工後にフィルム基材や剥離層から意図しない剥離をする不具合が生じていた。
【0019】
上記要件を満たす材料として、非晶性ポリオレフィン、特にノルボルネン構造を有する樹脂が挙げられる。この樹脂は、単独、或いは混合物として用いても良い。また、本発明で使用し得る上記非晶性ポリオレフィンとしては、溶液化して従来公知の塗工法により容易に蒸着アンカー層を設けることができるように、溶剤溶解性を有することが好ましい。尚、ポリマーのガラス転移温度は基本的には分子量の大小には無関係の物性であり、また溶剤溶解性は分子量にも大きく依存する物性のため、基本的なポリマー構造の他に、分子量を適度とすれば溶剤溶解性は調整できる。
【0020】
溶解させる溶剤は、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール等の公知の溶剤が使用可能となる。これら溶剤は、単独又は混合して用いることが可能である。更に上記蒸着アンカー層に染料、顔料を加え、その色相を変化させるためにも、非晶性ポリオレフィンには水酸基やカルボキシル基等の極性基を有する、染料、顔料の混合性が高い樹脂が望ましい。
本発明に述べるノルボルネン構造を有し、極性基を有する樹脂はフィルム基材や剥離層に対する密着性も高く、適度な剛性を有するため、熱転写シートに加工した後も充分な保存性を有する。
上記の耐熱透明性非晶性ポリオレフィンとして、例えば日本合成ゴム製アートンや、日本ゼオン製ゼオネックス等が挙げられる。
【0021】
また、蒸着アンカー層は、上記非晶性ポリオレフィン単独で構成しても良いが、上記線状ポリマー以外に、例えば蒸着アンカー層として、従来公知の、他の熱可塑性樹脂を併用しても良い。但し、該層全量に対して上記非晶性ポリオレフィンが40質量%以上含まれていることが望ましい。40質量%未満であると、蒸着アンカー層の耐熱性が低下し、サーマルヘッドによる加熱に耐えられなくなり、印字物において、金属蒸着層に微細亀裂が入り、曇化が起こる。尚、併用できる他の熱可塑性樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸アミド等のアクリル系樹脂、ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等のビニル系樹脂、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンオキシド等のポリエーテル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース等である。
【0022】
蒸着アンカー層の厚みは、金属蒸着下地層及び保護層としての機能を果たす意味で、通常は塗工量で、乾燥時で0.1〜20g/m2の範囲で設ける。厚みが0.1g/m2未満では蒸着アンカー層として機能せず、20g/m2を超えると、印字時の箔切れが悪くなり、ハーフトーン調の記録には適さなくなる。また、蒸着アンカー層には、例えば、アルミニウム等による金属蒸着層の着色を目的として、公知の染料や顔料等によるシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック及びその他の色の着色剤を適宜混合することができる。
また、蒸着アンカー層に前記した剥離層の機能も持たせて兼用すれば、剥離層は省略できる。この場合、蒸着アンカー層として挙げた上記ポリマーに、更にシリコーン系樹脂等の離型剤を添加しても良い。
【0023】
(金属蒸着層)
金属蒸着層5は、アルミニウム、亜鉛、スズ、クロム、金、銀等の金属、或いは真ちゅう等の合金等を真空蒸着、スパッタリング等の真空下によるメタライジング法で形成した金属薄膜層である。金属蒸着層の厚みは、通常、100〜1000Å、好ましくは200〜600Åの範囲とすれば、金属光沢を得るには充分である。薄すぎると光沢感が得られる程に可視光線を反射せず、厚すぎると印字時の箔切れが悪くなりハーフトーン調の記録に向かず、また不経済である。
【0024】
(接着層)
接着層6としては、ワックスや熱可塑性樹脂等の単独、又はこれらの混合物が用いられる。ワックスとしては、カルナバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、エステルワックス、フッシャートロプシュワックス、各種の低分子量ポリエチレン、木ロウ、みつロウ、鯨ロウ、イボタロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどの従来公知の各種ワックス類が使用できる。また熱可塑性樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等の、エチレンと他の重合性モノマーとの共重合物であるエチレン系共重合体が好ましく使用できる。
【0025】
エチレン系共重合体は、ワックスと併用する場合は、ワックスと相溶性が良く、画像のプリント後に、接着層全体が適度に凝集力の高いものとなり、高定着性が実現される。エチレンとの共重合モノマーは、上記の酢酸ビニル、アクリル酸やメタクリル酸の他に、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル等もある。例えば、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体等である。尚、エチレンとの共重合モノマーは一種とせずに、複数種を共重合させた多元共重合体でも良い。
また、これら共重合体を複数種混合使用しても良い。また、同一の共重合モノマーからなる共重合体でも、共重合比及び分子量の両方又は片方が異なる複数の共重合体を混合使用しても良い。例えば、上記エチレン系共重合体の共重合比は、共重合体の総質量を100として、エチレン成分が50〜95の範囲が、定着性、耐ブロッキッグ性等のバランスの点で好ましい。
【0026】
また、上記エチレン系共重合体は質量平均分子量(Mw)で1000〜100000の範囲が好ましい。複数の共重合体を使用時の各共重合体の分子量も上記範囲内が好ましい。質量平均分子量が1000未満では、常温においても樹脂が流動化しやすくなり、接着層にタック感が生じてしまうために保存性が低下し、また、100000を超えると凝集力が強くなりすぎてプリント時の箔切れが悪くなり、解像性が低下しハーフトーン調の記録等で不具合が生じる。
【0027】
また、接着層に用いる熱可塑性樹脂としては、上記エチレン系共重合体以外に、他の熱転写材料の接着層として用いられる従来公知の他の樹脂を併用しても良い。例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、石油樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂等、或いはポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム等の合成ゴムや天然ゴム等のエラストマー類である。これらの樹脂の併用は、被転写体の表面材料の種類によって適宜必要があれば任意に選択使用する。
【0028】
また、前記の特にエチレン系共重合体の熱可塑性樹脂及び前記ワックスは、それぞれ微粒子状態で接着層に含有させる事で、熱転写時の凝集力を低く抑えることができ、プリント時の箔切れ性を一般に向上させ、高解像度、高感度の記録ができる。接着層に微粒子状態で含有させるためには、これら微粒子の分散液またはエマルジョン液を接着層として塗工し、微粒子の融点もしくは軟化点以下で乾燥させれば良い。なお、微粒子状とは球形だけを意味するのではなく、エマルジョンにおける略球形の独立した微粒子同士が適度な熱により形状を変形しながら、外力により元の微粒子単位に分離できる程度に緩く結合した状態での微粒子をどちらかというと意味する。また、ワックス及び熱可塑性樹脂を微粒子として含有させる場合は、ワックス微粒子及び熱可塑性樹脂微粒子の粒径を両者ともに、各々平均粒径で10μm以下とすることが好ましい。平均粒径が10μmを越えるものを使用すると、印字感度の低下をもたらすのみでなく、接着層の箔持ちを著しく低下させる。
【0029】
接着層の厚みは、被転写材の表面形状によって必要厚みが異なるが、金属蒸着層の光沢感、箔切れ性が損なわれない限り、薄く形成する方が、印字感度、プリントされた画像の定着性、解像性の点で好ましい。
例えば、乾燥時の塗工量で0.5〜5g/m2、好ましくは1〜3g/m2の範囲が良い。0.5g/m2未満では、充分な接着力を得ることができず、感度不良となる。5g/m2を超えると接着層を溶融させるに過大なエネルギーが必要となり、又、箔切れも低下して好ましくない。
【0030】
尚、上記の剥離層、蒸着アンカー層、接着層、或いは耐熱層を形成するには、層の構成材料を有機溶剤等の溶剤に溶解又は分散した塗工液として、従来公知のグラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、ナイフコート、その他多くの公知の塗工手段にて形成できる。また、ワックスが主体となる層の場合は、ホットメルトコート、ホットラッカーコート等の塗工手段も使用できる。
尚、上記の如く構成された本発明の金属光沢を有する熱転写シートは、サーマルヘッドを用いるサーマルプリンターに最適であるが、従来のホットスタンピング法の転写箔としても使用できる。また、解像性にも優れるために、文字や図柄等の画像を微小なパターンの集合体としてプリントする用途にも適し、これら画像に金属光沢を付与できる。したがって、濃度階調表現方法として、網点の大小等による転写部分の面積の大小で濃度階調を表現する、すなわち面積階調を利用すれば、中間的な濃度も再現できる。なお、面積階調の方法としては網点以外にも、砂目、レンガ模様等による印刷分野で公知のスクリーンパターン等も利用できる。特に、接着層に用いるワックスや熱可塑性樹脂成分を微粒子として含有させると、高解像度が要求される面積階調の記録にも最適である。
【0031】
【実施例】
次に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。尚、文中、部または%とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
(実施例1)
厚さ6.0μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とし、その一方の面にシリコーン変性ポリエステルからなる厚さ(乾燥時の塗工量、以下同様)0.15g/m2の耐熱層を塗工形成した。次いで、他方の面に非晶性ポリオレフィンとして日本合成ゴム製アートンGを0.3g/m2塗布し、蒸着アンカー層を形成した。次いで、蒸着アンカー層上にさらに厚さ300Åのアルミニウムの金属蒸着層を真空蒸着法により形成し、更に金属蒸着層の上に、厚さ2g/m2の接着層を下記塗工液で塗工形成して、本発明の実施例1の熱転写シートを得た。
【0032】
(蒸着アンカー層塗工液)
ノルボルネン構造で、極性基を有する非晶性ポリオレフィン 10部
(日本合成ゴム製、アートンG)
トルエン 90部
【0033】
(接着層塗工液)
エチレン−酢酸ビニル共重合体(下記溶媒の固形分25wt%のエマルジョン)
溶媒:水/イソプロピルアルコール(質量比1/1)
【0034】
(実施例2)
実施例1において、蒸着アンカー層(0.3g/m2)の形成を下記塗工液に代えた他は、実施例1と同様にして、実施例2の熱転写シートを作製した。
(蒸着アンカー層塗工液)
ノルボルネン構造で、極性基を有する非晶性ポリオレフィン 10部
(日本合成ゴム製、アートンG)
アクリル樹脂(三菱レイヨン製、BR−87) 2部
トルエン 88部
【0035】
(比較例1)
実施例1において、蒸着アンカー層(0.3g/m2)の形成を下記塗工液に代えた他は、実施例1と同様にして、比較例1の熱転写シートを作製した。
(蒸着アンカー層塗工液)
酢酸セルロース 20部
(イーストマン コダック社製、CA 398−0.3)
トルエン/メチルエチルケトン(質量比1/1) 80部
【0036】
(比較例2)
実施例1において、蒸着アンカー層(0.3g/m2)の形成を下記塗工液に代えた他は、実施例1と同様にして、比較例2の熱転写シートを作製した。
(蒸着アンカー層塗工液)
飽和ポリエステル樹脂 20部
(東洋紡績製、バイロン200)
トルエン/メチルエチルケトン(質量比1/1) 80部
【0037】
(印画物の鏡面光沢感)
上記実施例及び比較例の熱転写シートを使用し、被転写体としてキャストコート紙を用い、また、サーマルヘッドとしては京セラ(株)製の200dpiのラインタイプヘッドを用いて、下記の条件にて印字及び印画物の鏡面光沢感の性能評価を行なった。
印加エネルギーとして、高エネルギー印字の場合は0.5mJ/dot、低エネルギー印字の場合は0.2mJ/dotの条件で、ベタ印字を行なった際に、印字物表面の鏡面光沢感を目視にて観察し、印字物表面が全く曇化しないものは「○」、印字物表面の一部に曇化が見られるものは「△」、印字物表面の大部分もしくは全面が曇化しているものは「×」とした。
【0038】
(保存性)
上記実施例及び比較例の熱転写シートを加工後、熱転写シートをロール巻取り状態に巻上げて、温度50℃、湿度(相対湿度)85%RHの環境下に2日間保存し、蒸着アンカー層とフィルム基材の間で剥離現象の有無を目視にて観察し、両者の間で剥離が認められないものを「○」、両者の間で剥離が認められるものを「×」とした。
【0039】
評価結果は下記表1の通りである。
【表1】
【0040】
表1の性能比較に示す如く、蒸着アンカー層の構成樹脂として、耐熱透明性を有する非晶性ポリオレフィンを用いた実施例の熱転写シートは、印加エネルギーの大小に関わらず、印字物表面が鏡面光沢感に優れ、また熱転写シートを巻取りで保存中に蒸着アンカー層とフィルム基材の間で剥離現象が無い。
それに対して、比較例1ではを巻取りで保存中に、蒸着アンカー層とフィルム基材の間で剥離現象が生じ、また比較例2では印字物表面の鏡面光沢感において、曇化が生じている。
【0041】
【発明の効果】
以上の通り、本発明の熱転写シートは、フィルム基材の一方の面に、少なくとも、蒸着アンカー層、金属蒸着層および接着層を順次設け、該蒸着アンカー層がノルボルネン構造からなり、かつ極性基を有する非晶性ポリオレフィンからなる耐熱透明樹脂を該層全量に対し40質量%以上含有する構成にした。このような構成をとることにより、その結果、上記耐熱透明樹脂はその溶液を塗工して、特別の加熱硬化をせずに、乾燥するのみで、耐熱性の高い蒸着アンカー層が得られ、印字後の金属蒸着層の曇化を防止でき、光沢感に優れた印画物を得ることができた。
また、本発明に述べるノルボルネン構造を有し、極性基を有する樹脂はフィルム基材や剥離層に対する密着性も高く、適度な剛性を有するため、熱転写シートに加工した後も充分な保存性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金属光沢を有する熱転写シートの一実施例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 熱転写シート
2 フィルム基材
3 剥離層
4 蒸着アンカー層
5 金属蒸着層
6 接着層
7 耐熱層
Claims (1)
- フィルム基材の一方の面に、少なくとも、蒸着アンカー層、金属蒸着層および接着層を順次設けた熱転写シートにおいて、該蒸着アンカー層がノルボルネン構造からなり、かつ極性基を有する非晶性ポリオレフィンからなる耐熱透明樹脂を該層全量に対し40質量%以上含有し、かつ該蒸着アンカー層の塗工量が、乾燥時で0.1〜20g/m 2 であることを特徴とする熱転写シート。
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