JP4466131B2 - 熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents

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Description

本発明は圧縮永久歪の小さい熱可塑性エラストマー組成物に関する。
熱可塑性エラストマー樹脂は加硫工程が不要であり、通常の熱可塑性樹脂の成形機で加工が可能なため、自動車部品、家電部品を始めとする様々な分野で利用されている。しかしながら、柔軟性、引張り破断強度、破断伸びや圧縮永久歪等が劣るためその用途が限られていた。
そこで、ゴム成分を添加することによる上記特性の改善が試みられており、熱可塑性樹脂を連続相(マトリックス)とし、ゴム成分を分散相(ドメイン)とし、かつ、該ゴム相の少なくとも一部が架橋した構造の熱可塑性エラストマー組成物が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。しかしながら、加硫ゴムに比べると現在の特性は、上述した特性、特に圧縮永久歪の改善が不十分であるという問題があった。これは、連続相をなす熱可塑性樹脂が流動性を有することにより、熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久歪が大きくなるためである。そのため、圧縮永久歪をできる限り小さくし、加硫ゴムの特性により近づけることが市場で要求されてきている。
奥山道夫ら、「ゴムの事典」、株式会社朝倉書店、2000年11月、初版第1刷、p.212
上記問題を解決するためには、熱可塑性樹脂に対するゴム成分の添加量を多くすることが考えられるが、単純にゴム成分の添加量を増加させるだけでは、熱可塑性樹脂の連続相にゴム成分が分散できず、熱可塑性樹脂とゴム成分との混練が不可能になる問題があり、やはり圧縮永久歪の改善はできないことが分かった。
そこで、本発明は、上記問題を解決し、圧縮永久歪が20%以下となる熱可塑性エラストマー組成物の提供を課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく、熱可塑性エラストマー組成物に用いる熱可塑性樹脂およびゴム成分について鋭意研究した結果、所定の関係を有する特定の熱可塑性樹脂およびゴム成分を用い、ゴム成分を混練中に動的加硫させることにより、圧縮永久歪を20%以下に低減できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記(1)に記載の熱可塑性エラストマー組成物および下記(2)に記載の熱可塑性エラストマーの製造方法を提供する。
(1)少なくとも一部が架橋しているゴム成分が熱可塑性樹脂内に分散している熱可塑性エラストマー組成物であって、該熱可塑性樹脂と該ゴム成分との質量比(樹脂/ゴム成分)が、10/90〜30/70であり、該ゴム成分の架橋が、該ゴム成分と該熱可塑性樹脂との混練中に進行する動的加硫により行われ、また、該熱可塑性樹脂の80℃におけるヤング率が、該ゴム成分の80℃におけるヤング率の3倍以上であり、該熱可塑性樹脂の80℃における降伏伸びが、10%以上であり、該熱可塑性樹脂の軟化点が、100℃以上であり、該熱可塑性樹脂のメルトインデックス(MI)が、該熱可塑性樹脂と該ゴム成分との混練温度において5〜40g/10分であり、さらに、該ゴム成分が、架橋可能部位を9質量%以上有するポリマーを含有し、該ゴム成分の圧縮永久歪が、20%以下である熱可塑性エラストマー組成物。
(2)上記(1)に記載の熱可塑性エラストマー組成物を製造する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、
下記(a)〜(d)に示す特性を満たす熱可塑性樹脂およびゴム成分を用い、該熱可塑性樹脂と該ゴム成分とを質量比(樹脂/ゴム成分)が10/90〜30/70となるように混練し、混練中に、該ゴム成分の架橋を進行させて熱可塑性エラストマー組成物を得る熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
(a)熱可塑性樹脂の80℃におけるヤング率がゴム成分の80℃におけるヤング率の3倍以上
(b)熱可塑性樹脂の80℃における降伏伸びが10%以上
(c)熱可塑性樹脂の軟化点が100℃以上
(d)熱可塑性樹脂とゴム成分との混練温度における熱可塑性樹脂のメルトインデックス(MI)が5〜40g/10分
以下に説明するように、本発明によれば、熱可塑性樹脂に対するゴム成分の配合量を多くすることが可能となり、それにより圧縮永久歪を20%以下に低減できる熱可塑性エラストマー組成物を提供することができるため有用である。また。この熱可塑性エラストマー組成物は、自動車用ブッシュ、防振ゴム、ワイパーブレード用等に好適に用いることができることから有用である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物(以下、単に「本発明のエラストマー組成物」という。)は、少なくとも一部が架橋しているゴム成分が熱可塑性樹脂内に分散している熱可塑性エラストマー組成物であって、該熱可塑性樹脂と該ゴム成分との質量比(樹脂/ゴム成分)が、10/90〜30/70であり、該ゴム成分の架橋が、該ゴム成分と該熱可塑性樹脂との混練中に進行する動的加硫により行われ、また、該熱可塑性樹脂の80℃におけるヤング率が、該ゴム成分の80℃におけるヤング率の3倍以上であり、該熱可塑性樹脂の80℃における降伏伸びが、10%以上であり、該熱可塑性樹脂の軟化点が、100℃以上であり、該熱可塑性樹脂のメルトインデックス(MI)が、該熱可塑性樹脂と該ゴム成分との混練温度において5〜40g/10分であり、さらに、該ゴム成分が、架橋可能部位を9質量%以上有するポリマーを含有し、該ゴム成分の圧縮永久歪が、20%以下である熱可塑性エラストマー組成物である。
ここで、「ヤング率」とは、JIS K7113-1995に規定された引張弾性率のことをいい、ダンベル形状(3号)の試験片に、引張荷重を加えた際の引張応力−ひずみ曲線の初めの直線部分を用いて、Em=Δσ/Δεによって計算する。ここに、Emはヤング率(引張弾性率)であり、Δσは直線状の2点間の元の平均断面積による応力の差であり、Δεは同じ2点間のひずみの差である。
「降伏伸び」とは、JIS K7113-1995に規定された引張降伏伸びのことをいい、引張降伏強さ(荷重−伸び曲線上で、荷重の増加なしに伸びの増加が認められる最初の点における引張応力)に対応する伸びのことである。
「軟化点」とは、JIS K7206-1999の「プラスチック−熱可塑性プラスチック−ビカット軟化温度(VST)試験方法」の規定により測定される熱変形温度のことである。
「MI」とは、熱可塑性樹脂とゴム成分との混練温度(150〜300℃)下、2.16kg荷重で、ASTM D1238の規定により測定される10分間に射出される樹脂の質量のことをいう。
また、「圧縮永久歪」とは、JIS K6262-1997の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの永久ひずみ試験方法」の規定により測定される圧縮永久ひずみのことをいい、本発明においては、80℃で22時間処理をした際の25%圧縮時の値である。
次に、本発明のエラストマー組成物に用いる熱可塑性樹脂およびゴム成分について説明する。
<熱可塑性樹脂>
本発明のエラストマー組成物に用いられる熱可塑性樹脂は、上記の特性を有するものであれば特に限定されず、各種の熱可塑性樹脂またはその組成物が利用可能であり、1種単独であっても、2種以上を併用(混合)してもよい。
このような熱可塑性樹脂としては、例えば、上記特性を有するポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、イミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマー樹脂等が挙げられる。
具体的には、ポリアミド系樹脂としては、例えば、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレートフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル等が挙げられる。
ポリニトリル系樹脂としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体等が挙げられる。
ポリメタクリレート系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル等が挙げられる。
ポリビニル系樹脂としては、例えば、酢酸ビニル(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等が挙げられる。
セルロース系樹脂としては、例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース等が挙げられる。
フッ素系樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、オレフィンの単独または共重合体、すなわち、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル1−ペンテン、4−メチル1−ペンテン、1−オクテンなどの単独または共重合体;これらと他の熱可塑性樹脂との共重合体;等が挙げられる。
熱可塑性エラストマー樹脂としては、例えば、PBT/ポリテトラメチレングリコール(PTMG)共重合体、PBT/ポリラクトン共重合体、PBT/ポリオレフィン共重合体などのポリエステル系の熱可塑性エラストマー樹脂;N6/PTMG共重合体、N12/PTMG共重合体などのナイロン系の熱可塑性エラストマー樹脂;トリレンジイソシアネート(TDI)/PTMG共重合体、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)/ポリプロピレングリコール(PPG)共重合体、TDI/PPG共重合体などのポリウレタン系の熱可塑性エラストマー樹脂;シリコーン系の熱可塑性エラストマー樹脂;エチレン含有率を高くしたエチレンプロピレン共重合体(出光TPO、出光石油化学社製)などのオレフィン系の熱可塑性エラストマー樹脂;等が挙げられる。
これらのうち、ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマー樹脂が、降伏伸びが大きいことから、変形に追従しやすく、マトリックス材料として好ましい。
本発明においては、このような熱可塑性樹脂は、後述するゴム成分との質量比(樹脂/ゴム成分)が10/90〜30/70、好ましくは15/85〜25/75となるように含有している。
また、上記熱可塑性樹脂の80℃におけるヤング率は、後述するゴム成分の80℃におけるヤング率の3倍以上であり、該熱可塑性樹脂の80℃における降伏伸びが、10%以上、好ましくは15〜40%であり、該熱可塑性樹脂の軟化点が、100℃以上、好ましくは150〜250℃である。
さらに、上記熱可塑性樹脂のMIが、混練温度(150〜300℃)において5〜40g/10分、好ましくは10〜25g/10分である。MIがこの範囲であれば、分子量が適当となるため上記熱可塑性樹脂を含有する本発明のエラストマー組成物の強度を保持することができ、また該熱可塑性樹脂が後述するゴム成分を多量に分散相として含有することができる理由から好ましい。
<ゴム成分>
本発明のエラストマー組成物に用いられるゴム成分は、その少なくとも一部が架橋されたものであって、上記の特性、すなわち、80℃におけるヤング率が上記熱可塑性樹脂の80℃におけるヤング率の1/3以下であり、架橋可能部位を9質量%以上有するポリマーを含有し、圧縮永久歪が20%以下であれば特に限定されず、各種のゴムまたはその組成物が利用可能であり、1種単独であっても、2種以上を併用(混合)してもよい。
ここで、「架橋可能部位を9質量%以上有するポリマー」とは、架橋することができる架橋可能部位(例えば、2重結合、ハロゲン基、その他反応性の高い官能基を有する付加成分等)を、ポリマーの質量に対して9質量%以上、好ましくは20〜80質量%有するポリマーのことである。
このようなゴム成分を構成するゴムとしては、例えば、上記特性を有するジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、含ハロゲン系ゴム、含イオウゴム、反応性の高い官能基を有する付加成分で変性したゴム等が挙げられる。
具体的には、ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ポリブタジエンゴム(1,2−BR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR、NIR、NBIR)、クロロプレンゴム(CR)、または、一部水素化したNBR、SBR等が挙げられる。
オレフィン系ゴムとしては、例えば、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、イソブチレンと芳香族ビニルもしくはジエン系モノマーとの共重合体、アクリルゴム(ACM)等が挙げられる。
含ハロゲンゴムとしては、例えば、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)、イソブチレン−パラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br−IPMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR、CHC)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)等が挙げられる。
反応性の高い官能基を有する付加成分で変性したゴムとしては、例えば、エポキシ基、マレイン酸基、無水マレイン酸基等の反応性の高い置換基を有する付加成分で変性したゴムが挙げられ、より具体的には、エポキシ化天然ゴム、マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合ゴム(M−EPM)、マレイン酸変性エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(M−EPDM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M−CM)等が挙げられる。
これらのうち、特に、架橋密度を上げることが可能なジエン系ゴム、反応性の高い官能基を有する付加成分で変性したゴムを用いることが、得られる本発明のエラストマー組成物をより強固に架橋することができ、さらに圧縮永久歪を小さくすることができる理由から好ましい。
上記ゴムの架橋剤としては、イオウ系、有機過酸化物系、金属酸化物系、フェノール樹脂、キノンジオキシム等の一般的なゴム架橋剤を用いることができる。
イオウ系加硫剤としては、具体的には、例えば、粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等が挙げられる。
有機過酸化物系の加硫剤としては、具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が挙げられる。
その他として、酸化マグネシウム、リサージ、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、ポリ−p−ジニトロソベンゼン、メチレンジアニリン等が挙げられる。
架橋剤の含有量は、一般的に使用される範囲であれば特に限定されないが、上記ゴム成分を構成するゴム100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.3〜5質量部であることがより好ましい。
上記ゴム成分は、上記各成分以外に、必要に応じて、加硫促進剤、加硫助剤、加硫遅延剤、配合剤を含有させてもよい。
加硫促進剤としては、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チオウレア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系等の加硫促進剤が挙げられる。
アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、ヘキサメチレンテトラミン(H)等;グアニジン系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、ジフェニルグアニジン等;チオウレア系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、エチレンチオウレア等;チアゾール系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、ジベンゾチアジルジサルファイド(DM)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、2−メルカプトベンゾチアゾールおよびそのZn塩等;チウラム系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、テトラメチルチウラムジサルファイド(TMTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラサルファイド等;ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、Na−ジメチルジチオカーバメート、Zn−ジメチルジチオカーバメート、Te−ジエチルジチオカーバメート、Cu−ジメチルジチオカーバメート、Fe−ジメチルジチオカーバメート、ピペコリンピペコリルジチオカーバメート等がそれぞれ挙げられる。
加硫助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができ、例えば、亜鉛華、ステアリン酸やオレイン酸およびこれらのZn塩等が挙げられる。
加硫促進剤および加硫助剤の含有量は、上記ゴム成分を構成するゴム100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。
加硫遅延剤としては、具体的には、例えば、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸等の有機酸;N−ニトロソージフェニルアミン、N−ニトロソーフェニル−β−ナフチルアミン、N−ニトロソ−トリメチル−ジヒドロキノリンの重合体等のニトロソ化合物;トリクロルメラニン等のハロゲン化物;2−メルカプトベンツイミダゾール;サントガードPVI等が挙げられる。
加硫遅延剤の含有量は、上記ゴム成分を構成するゴム100質量部に対し、0.1〜0.3質量部であることが好ましく、0.1〜0.2質量部であることがより好ましい。
また、配合剤としては、一般的な配合剤を用いることができ、例えば、可塑剤、充填剤、チクソトロピー性付与剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着付与剤、分散剤、脱水剤、紫外線吸収剤、溶剤等が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、テトラヒドロフタル酸、アゼライン酸、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クエン酸およびこれらの誘導体;ポリエステル、ポリエーテル、エポキシ系、パラフィン系、ナフテン系および芳香族系のプロセスオイル;等が挙げられる。
これらのうち、フタル酸系可塑剤、アジピン酸系可塑剤等のエステル系可塑剤が好ましい。
具体的には、フタル酸系可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジオクチル錫ラウレート(DOTL)、ジブチルフタレート(DBP)、ジラウリルフタレート(DLP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジメチルフタレート、ジエチルフタレートが挙げられる。これらのうち、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレートが好ましい。
アジピン酸系可塑剤としては、例えば、ジオクチルアジぺート(DOA)、ジイソノニルアジペート(DINA)、ジイソデシルアジぺート、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステルが挙げられる。これらのうち、ジイソノニルアジペートが好ましい。
その他の可塑剤としては、例えば、セバシン酸ジブチル、コハク酸ジイソデシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル、オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル、トリオクチルフォスフェート、トリス(クロロエチル)フォスフェート、トリス(ジクロロプロピル)フォスフェート、リン酸トリクレジル、トリブチルトリメリテート(TBTM)、トリオクチルトリメリテート(TOTM)、エポキシステアリン酸アルキル、エポキシ化大豆油;分子量500〜10,000のブチルアクリレート等のアクリルオリゴマーが挙げられる。
所望により添加する可塑剤の含有量は、上記ゴム成分を構成するゴム100質量部に対して、2〜300質量部であることが好ましく、20〜100質量部であることがより好ましい。可塑剤の含有量がこの範囲であれば、得られるゴム成分の物性、特に、柔軟性が優れる理由から好ましい。
充填剤としては、各種形状の有機または無機のもの、例えば、炭酸カルシウム、カーボンブラック、シリカ(ホワイトカーボン)、クレー・タルク類、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、生石灰、炭酸塩類(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、胡粉)、アルミナ水和物(例えば、含水水酸化アルミニウム)、ケイソウ土、硫酸バリウム(例えば、沈降性硫酸バリウム)、マイカ、硫酸アルミナ、リトポン、アスベスト、グラファイト、二硫化モリブデン、軽石粉、ガラス粉、ケイ砂、ゼオライト;これらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル、高級アルコール付加イソシアネート化合物などによる表面処理物;ガラスバルーン;樹脂バルーン;等が挙げられる。
本発明のエラストマー組成物は、上述したように、上記熱可塑性樹脂および上記ゴム成分を、該熱可塑性樹脂と該ゴム成分との質量比(樹脂/ゴム成分)が10/90〜30/70、好ましくは15/85〜25/75となるように含有している。
上記熱可塑性樹脂および上記ゴム成分の含有量がこの範囲であれば、得られる本発明のエラストマー組成物の圧縮永久歪が20%以下になる理由から好ましい。これは、上述の特性を有する熱可塑性樹脂およびゴム成分を用いることにより、公知の熱可塑性エラストマー組成物と比較してゴム成分を多く含有させることができることに由来する効果である。
本発明のエラストマー組成物は、上記熱可塑性樹脂および上記ゴム成分以外に、必要に応じて、上述した架橋剤(加硫剤)、加硫促進剤、加硫助剤、加硫遅延剤および配合剤、ならびに、相溶化剤を含有させてもよい。
相溶化剤は、一般的に熱可塑性樹脂およびゴム成分の両方または片方の構造を有する共重合体あるいは熱可塑性樹脂成分またはゴム成分と反応可能なエポキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、ハロゲン原子、アミノ基、オキサゾリン基、水酸基等を有した共重合体の構造をとるものとすることができ、混練される熱可塑性樹脂成分およびゴム成分の種類によって選定される。
このような相溶化剤として通常使用されるものには、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン系ブロック共重合体(SEBS)およびそのマレイン酸変性物;EPDM、EPMおよびそれらのマレイン酸変性物;EPDM−スチレンまたはEPDM−アクリロニトリルグラフト共重合体およびそのマレイン酸変性物;スチレン−マレイン酸共重合体;マレイン酸またはエポキシ変性エチレン−酢酸ビニル共重合体;エチレン−エチルアクリレート;反応性フェノキシン;等を挙げることができる。
このような相溶化剤を含有させることにより、上記熱可塑性樹脂中に上記ゴム成分をより小さくより均一に分散させることができる。
また、所望により添加する相溶化剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂および上記ゴム成分の合計100質量部に対して、0.5〜20質量部であることが好ましい。相溶化剤の含有量がこの範囲であれば、熱可塑性樹脂とゴム成分との界面張力が低下し、その結果、分散層を形成しているゴム成分の粒子径が微細になり、得られる本発明のエラストマー組成物の破断強度が向上する理由から好ましい。
本発明のエラストマー組成物の製造方法は、予め熱可塑性樹脂とゴム成分とを2軸混練押出機等で溶融混練し、連続相を形成する熱可塑性樹脂中にゴム成分を分散相として分散させることによる。また、ゴム成分の架橋は、混練下で架橋剤(必要に応じて加硫促進剤、加硫助剤等を含む)を添加することによる動的加硫により行われる。なお、熱可塑性樹脂またはゴム成分への架橋剤、配合剤等の添加は、上記混練中に添加してもよいが、上述したように、混練の前に予め混合しておくことが、熱可塑性樹脂への影響が小さく、効率的にゴム成分の架橋が進行する理由から好ましい。
熱可塑性樹脂とゴム成分の混練に使用する混練機は特に限定されず、その具体例としては、スクリュー押出機、ニーダ、バンバリミキサー、2軸混練押出機等が挙げられる。これらのうち、ゴム成分をより均一に微細に分散、架橋させる観点から、2軸混練押出機を使用することが好ましい。
なお、溶融・混練条件、加硫条件、使用する架橋剤の種類およびその配合量等は、熱可塑性樹脂に添加するゴム成分の種類、その配合量に応じて適宜決定すればよく、特に限定はされない。
このような製造方法を利用することにより、本発明のエラストマー組成物は、上記熱可塑性樹脂を連続相とし、該連続相中に上記ゴム成分が分散相として分散し、かつ、該ゴム成分の少なくとも一部が加硫された構成を有する。このため、本発明のエラストマー組成物は、加硫ゴムと同様の挙動を示しつつ、その成形加工に際しては熱可塑性樹脂に準じた加工が可能となる。
また、分散相を形成するゴム成分の粒子径が、20μm以下であることが好ましく、さらに、0.1〜3μmであることがより好ましい。
溶融・混練条件として、混練温度は、上記熱可塑性樹脂が溶融する温度以上であれば特に限定されず、例えば、150〜300℃であることが好ましく、180〜250℃であることがより好ましい。また、混練時の剪断速度は、500〜8000S-1、特に、500〜5000S-1であることが好ましい。
溶融・混練全体の滞留時間は、30秒〜10分、架橋剤を添加した後の滞留時間(加硫時間)は、15秒〜5分であることが好ましい。
ここで、動的加硫を行う部分での滞留時間とは、動的加硫を行う部分の全容積に充満係数を乗じ、それを容積流量で除して計算する。
以下に実施例を用いて、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1〜6、および比較例1〜6)
下記に示す熱可塑性樹脂および下記表1に示す組成成分(質量部)の未加硫のゴム成分(ゴム配合1〜4)を用い、下記表3に示す配合(質量部)からなる各種の熱可塑性エラストマー組成物を以下に示すように調製した。なお、下記表1には、ゴム配合1〜4の80℃におけるヤング率、架橋可能部位(質量%)、80℃で22時間処理した25%圧縮時における圧縮永久歪(%)を示し、下記表3には、得られた各熱可塑性エラストマー組成物の80℃で22時間処理した25%圧縮時における圧縮永久歪(%)を示した。
熱可塑性エラストマー組成物の調製は、まず、下記表1に示す配合剤を密閉式のバンバリーミキサーに投入し、2分後に架橋剤を投入し、1分間混練した後放出し、これをゴム用ペレタイザーでペレット化し、ゴム配合1〜4を作成した。
次に、ゴム成分と熱可塑性樹脂とを下記表3に示す配合で2軸混練押出機に投入し、下記表3に示す混練温度で、剪断速度1000S-1にて混練し、2軸混練押出機から押し出されたストランドを水冷し、樹脂用ペレタイザーでペレット化した。
なお、作成した各ペレットはプレス成形にて試験片に加工し、圧縮永久歪試験に供した。
熱可塑性樹脂としては、COPE1(ペルブレンP80C、東洋紡績社製)、COPE2(ペルブレンP90BD、東洋紡績社製)、N11(BMN O、アトフィナ社製)、PP(ME150、出光石油化学社製)、LLDPE(エボリューSP0540、三井化学社製)を用いた。なお、これらの各熱可塑性樹脂の軟化点(℃)、80℃におけるヤング率、80℃における降伏伸び(%)の値は、ゴム配合1〜4との混練温度におけるMI(g/10分)値とともに下記表3に示した。
Figure 0004466131
上記表1中の各組成成分としては、以下に示すものを用いた。なお、アクリルゴムであるACM1およびACM2は、下記表2に記載のモノマー成分(質量部)を用いて合成した。
・NBR:NIPOL N28C45(日本ゼオン社製)
・EPDM:ESPRENE 505(住友化学社製)
・カーボンブラック:シーストV(東海カーボン社製)
・ジオクチルフタレート:DOP(三菱化学社製)
・パラフィンオイル:マシン油22(昭和シェル石油社製)
・亜鉛華:酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸(日本油脂社製)
・BTC:ブタンテトラカルボン酸(ダイセル社製)
・硫黄:油処理硫黄(細井化学工業社製)
・CZ:ノクセラーCZ−G(大内新興化学工業社製)
・マレイミド:バルノックPM(大内新興化学社製)
・臭素化フェノール:タッキロール250−I(田岡化学工業社製)
Figure 0004466131
Figure 0004466131
Figure 0004466131
上記表3に示す結果より、実施例1〜6で得られた熱可塑性エラストマー組成物は、圧縮永久歪が20%以下となり、比較例で得られる組成物よりも格段に優れる結果となることが分かった。

Claims (2)

  1. 少なくとも一部が架橋しているゴム成分が熱可塑性樹脂内に分散している熱可塑性エラストマー組成物であって、
    前記熱可塑性樹脂と前記ゴム成分との質量比(樹脂/ゴム成分)が、10/90〜30/70であり、
    前記ゴム成分の架橋が、前記ゴム成分と前記熱可塑性樹脂との混練中に進行する動的加硫により行われ、
    前記熱可塑性樹脂の80℃におけるヤング率が、前記ゴム成分の80℃におけるヤング率の3倍以上であり、該熱可塑性樹脂の80℃における降伏伸びが、10%以上であり、該熱可塑性樹脂の軟化点が、100℃以上であり、該熱可塑性樹脂のメルトインデックス(MI)が、該熱可塑性樹脂と該ゴム成分との混練温度において5〜40g/10分であり、
    前記ゴム成分が、架橋可能部位を9質量%以上有するポリマーを含有し、該ゴム成分の圧縮永久歪が、20%以下である熱可塑性エラストマー組成物。
  2. 請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物を製造する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、
    下記(a)〜(d)に示す特性を満たす熱可塑性樹脂およびゴム成分を用い、
    前記熱可塑性樹脂と前記ゴム成分とを質量比(樹脂/ゴム成分)が10/90〜30/70となるように混練し、
    前記混練中に、前記ゴム成分の架橋を進行させて熱可塑性エラストマー組成物を得る熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
    (a)熱可塑性樹脂の80℃におけるヤング率がゴム成分の80℃におけるヤング率の3倍以上
    (b)熱可塑性樹脂の80℃における降伏伸びが10%以上
    (c)熱可塑性樹脂の軟化点が100℃以上
    (d)熱可塑性樹脂とゴム成分との混練温度における熱可塑性樹脂のメルトインデックス(MI)が5〜40g/10分
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