JP4464614B2 - バルジ塩基認識分子およびバルジ塩基検出方法 - Google Patents

バルジ塩基認識分子およびバルジ塩基検出方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、4種類のバルジ塩基を1種類の分子で認識することが可能なバルジ塩基認識分子、その分子を含んでいるバルジ塩基認識用組成物、およびその分子を用いたバルジ塩基検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、DNA(デオキシリボ核酸)中に存在するバルジ構造に特異的に結合する分子は、例えば医薬の分野などにおいて注目されている。バルジ塩基認識分子とは、不対塩基(バルジ塩基)をもつ遺伝子に、特異的に結合する分子である。また、上記バルジ塩基認識分子は、さまざまな利用、例えば遺伝子の診断薬、遺伝子損傷の安定化剤、DNA修復酵素の阻害剤といった利用が期待されている分子である。
【0003】
上記バルジ塩基認識分子としては、例えば、特許文献1に記載の分子(1,8−ナフチリジン誘導体)が挙げられる。上記文献には、バルジ塩基がグアニンである場合、シトシンである場合、アデニンである場合、チミンである場合のそれぞれについて、認識可能な1,8−ナフチリジン誘導体が記載されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−89478号公報(公開日:2001年4月3日)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記文献の記載によれば、4種類のバルジ塩基を認識するためには、それぞれのバルジ塩基に応じた1,8−ナフチリジン誘導体を準備する必要があるという問題点がある。例えば、バルジ塩基がグアニンである場合は2−(4−アミノブチロイルアミノ)−7−メチル−1,8−ナフチリジンを、バルジ塩基がシトシンの場合は2−アミノナフチリジン−4−オンなどを、バルジ塩基がアデニンの場合は2−キノロン誘導体などを、バルジ塩基がチミンの場合は2−アミノナフチリジン−7−オンなどを用いることが、上記文献の記載に示されている。このように、4種類(グアニン、シトシン、アデニン、チミン)のバルジ塩基を認識するには、複数のリガンド分子が必要となる。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、4種類のバルジ塩基を1種類の分子で認識することができるバルジ塩基認識分子と、その分子を用いたバルジ塩基検出方法とを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願発明者は、バルジ塩基認識分子のコンセプトでは、リガンドと核酸の塩基との水素結合パターンが完全にマッチする場合だけでなく、部分的に相補的な水素結合を形成する分子でも、バルジ塩基への結合が可能である点に着目した。そして、この考えをさらに飛躍させ、すべてのバルジ塩基を認識することができるバルジ塩基認識分子を合成して、本願発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明のバルジ塩基認識分子は、遺伝子中に存在するバルジ塩基と水素結合を形成することによって、バルジ塩基を有する遺伝子を安定化させるバルジ塩基認識分子であって、上記バルジ塩基が、アデニン、グアニン、シトシン、およびチミンのいずれの場合であっても上記安定化を行うことを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、アデニン、グアニン、シトシン、およびチミンのいずれのバルジ塩基であっても、その塩基を有する遺伝子(例えば2本鎖のDNA)を、本発明のバルジ塩基認識分子は安定化させる。このようなバルジ塩基認識分子としては、例えば、DNAにインターカレーションできる芳香環に水素結合供与部位(Donor、以下、適宜「D」と記す)2箇所および受容部位(Acceptor、以下、適宜「A」と記す)2箇所を有する分子であって、その部位を「D、A、A、D」の順となるように有しており、一定条件下において水素付加を受けることによって、上記水素結合部位の並びが「D、D、A、D」に変化するような分子が挙げられる。また、バルジ塩基認識分子としては、例えば、2,7−ジアミノナフチリジン誘導体、式(I)に示す化合物、式(II)に示す化合物、式(III)に示す化合物、式(IV)に示す化合物などが挙げられる。
【0010】
【化2】
Figure 0004464614
【0011】
【化3】
Figure 0004464614
【0012】
【化4】
Figure 0004464614
【0013】
【化5】
Figure 0004464614
【0014】
なお、上記式(II)〜式(IV)に示すR1、R2、R3、R4、R5およびR6は、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示している。また、それらR1〜R6は、酸素、窒素、および/または硫黄で置換されていてもよく、アミノ基、メルカプト基(−SH)、および/またはカルボキシル基を含んでいてもよいものとする。また、上記式(IV)のR7、R8、R9およびR10は、水素または炭素数1〜5のアルキル基を示しており、酸素、窒素、および/または硫黄で置換されていてもよいものとする。なお、上記のように、硫黄を含むバルジ塩基認識分子(特にメルカプト基を含むバルジ塩基認識分子)は、その分子を固定化(例えばチップなどに固定化)するときに、その固定化が容易である。
【0015】
その結果、4種類のバルジ塩基を1種類の分子で認識可能なバルジ塩基認識分子を提供することができる。
【0016】
また、本発明のバルジ塩基認識分子は、2,7−ジアミノナフチリジン誘導体からなることを特徴としている。
【0017】
上記構成によれば、2,7−ジアミノナフチリジン誘導体、例えば2,7−ビス(3−アミノプロピルアミノ)ナフチリジン、N,N’−ビスアシル−2,7−ジアミノナフチリジン、上記式(I)〜式(IV)に示す化合物などは、上記に記載したように、DNAにインターカレーションできる芳香環に水素結合供与部位「D」2箇所と受容部位「A」2箇所とを「D、A、A、D」の順となるように有している。そして、一定条件下(例えば中性pHの領域)において水素付加を受けることによって、上記水素結合部位の並びが「D、D、A、D」に変化して、4種類の塩基の水素結合パターン、つまり、グアニン(D,D,A)、シトシン(A,D,D)、チミン(A,D,A)、アデニン(A,D)の水素結合パターンのすべてに合致することができる。具体的に言えば、上記式(I)の化合物の存在下においては、4種類のバルジ塩基と、バルジ塩基前後の配列におけるすべての塩基との組み合わせからなるDNAで融点上昇が認められた。
【0018】
その結果、4種類のバルジ塩基を1種類の分子で認識可能なバルジ塩基認識分子を提供することができる。
【0019】
また、本発明のバルジ塩基認識分子は、上記構成に加えて、2,7−ジアミノナフチリジン誘導体は、式(I)で表される化合物であることを特徴としている。
【0020】
上記構成によれば、2,7−ジアミノナフチリジン誘導体は、式(I)で表される化合物である。この式(I)で表される化合物(2,7−ビス(3−アミノプロピルアミノ)ナフチリジン)は、下記に説明する方法により容易に合成することができる。
【0021】
その結果、上記効果に加えて、4種類のバルジ塩基を1種類の分子で認識可能なバルジ塩基認識分子を、容易に入手することができる。
【0022】
また、本発明のバルジ塩基認識分子は、上記構成に加えて、標識化されていることを特徴としている。
【0023】
上記構成によれば、バルジ塩基認識分子は標識化されている。よって、バルジ塩基認識分子の探索、例えば、バルジ塩基と水素結合を形成したバルジ塩基認識分子の探索が容易となる。
【0024】
なお、上記標識の方法としては、例えば、上記バルジ塩基認識分子に放射性同位体を導入する方法、何らかの発光をする物(化学発光または蛍光を発する分子など)をバルジ塩基認識分子に導入する方法などが挙げられる。しかし、上記標識の方法は、特に限定されるものではない。
【0025】
また、本発明のバルジ塩基認識用組成物は、上記に記載のバルジ塩基認識分子を含んでいることを特徴としている。
【0026】
上記構成によれば、例えば、適当な担体、薬剤、化合物等と、上記バルジ塩基認識分子とを組み合わせて、バルジ塩基認識用組成物とすることができる。
【0027】
その結果、1種類のバルジ塩基認識分子を用いて4種類のバルジ塩基の認識が可能なバルジ塩基認識用組成物を提供することができるとともに、バルジ塩基を認識するのに最適なバルジ塩基認識用組成物を提供することができる。
【0028】
また、本発明の遺伝子検出器具は、上記に記載のバルジ塩基認識分子を含んでいることを特徴としている。
【0029】
本発明の遺伝子検出器具は、上記バルジ塩基認識分子を含んでいる。よって、1種類の上記バルジ塩基認識分子を用いて、4種類すべてのバルジ塩基の認識が可能な遺伝子検出器具を提供することができる。
【0030】
なお、上記遺伝子検出器具としては、例えば、何らかの化学結合によって、上記バルジ塩基認識分子を基盤(担体)上に固定化したチップなどが挙げられる。そして、何らかの化学結合によって上記バルジ塩基認識分子を基盤(担体)上に固定化するとき、硫黄を含むバルジ塩基認識分子(特にメルカプト基を含むバルジ塩基認識分子)を用いれば、その固定化が容易となる。
【0031】
また、本発明のバルジ塩基検出方法は、上記に記載のバルジ塩基認識分子を用いて、遺伝子中に存在するバルジ塩基を検出することを特徴としている。
【0032】
上記方法によれば、上記バルジ塩基認識分子を用いる。上記バルジ塩基認識分子は、アデニン、グアニン、シトシン、およびチミンのいずれのバルジ塩基であっても、遺伝子の安定化とバルジ塩基の認識とが可能である。
【0033】
その結果、4種類すべてのバルジ塩基を1種類の分子で認識することができるバルジ塩基検出方法を提供することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0035】
(バルジ塩基認識分子)
本実施の形態のバルジ塩基認識分子は、遺伝子中に存在するバルジ塩基と水素結合を形成することによって、バルジ塩基を有する遺伝子を安定化させるバルジ塩基認識分子であって、バルジ塩基が、アデニン、グアニン、シトシン、およびチミンのいずれの場合であっても上記安定化を行うことができる分子である。
【0036】
上記バルジ塩基認識分子としては、例えば、2,7−ジアミノナフチリジン誘導体、下記の式(I)〜(IV)に示す化合物などが挙げられる。なお、上記式(II)〜式(IV)に示すR1、R2、R3、R4、R5およびR6は、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示している。また、それらR1〜R6は、酸素、窒素、および/または硫黄で置換されていてもよく、アミノ基、メルカプト基(−SH)、および/またはカルボキシル基を含んでいてもよい。また、上記式(IV)のR7、R8、R9およびR10は、水素または炭素数1〜5のアルキル基を示しており、酸素、窒素、および/または硫黄で置換されていてもよい。
【0037】
【化6】
Figure 0004464614
【0038】
【化7】
Figure 0004464614
【0039】
【化8】
Figure 0004464614
【0040】
【化9】
Figure 0004464614
【0041】
本実施の形態のバルジ塩基認識分子(例えば2,7−ジアミノナフチリジン誘導体)は、上記のように、遺伝子中に存在する4種類のバルジ塩基と水素結合を形成することによって、バルジ塩基を有する遺伝子を安定化させる。このような安定化の発生は、例えば、バルジ塩基を有するDNA(バルジDNA)の検出に本実施の形態のバルジ塩基認識分子を利用できることを示している。つまり、1種類のバルジ塩基認識分子を用いることによって、すべてのバルジ塩基の認識と、4種すべてのバルジ塩基を有するDNAの検出とを行うことができる。
【0042】
上記のようなバルジ塩基の認識およびバルジDNAの安定化は、次に示すバルジ塩基認識分子の構造による。バルジ塩基認識分子(例えば2,7−ジアミノナフチリジン誘導体)は、DNAにインターカレーションできる芳香環に水素結合供与部位(Donor:「D」と略)2箇所および受容部位(Acceptor:「A」と略)2箇所の計4箇所が「D、A、A、D」の順で並んでいる。さらに、このバルジ塩基認識分子は、一定条件下(中性pH領域)で水素付加を受けやすい性質を持つ。その結果、「D、A、A、D」の水素結合部位の並びが水素付加を受けると、「D、D、A、D」に変化し、4種類の塩基の水素結合パターン(グアニン「D,D,A」、シトシン「A,D,D」、チミン「A,D,A」、アデニン「A,D」)すべてに合致することができる。このバルジ塩基認識分子の存在下では、4種類のバルジ塩基とバルジ塩基前後の配列のすべての組み合わせのDNAで融点上昇が観測され、この分子ひとつですべてのバルジを認識できることが示されている。なお、ここで言う融点上昇の観測は、実施例で詳しく述べることにする。
【0043】
もちろん、本実施の形態のバルジ塩基認識分子は、上記のようなバルジDNAの検出、遺伝子変異により生じた特異的なバルジ構造の検出といった利用だけでなく、さまざまな利用が考えられる。例えば、遺伝子の個人的な違いを(遺伝子の1塩基多型:SNP)を迅速かつ安価に検出する手法に、本実施の形態のバルジ塩基認識分子を用いることができる。さらに、遺伝子の欠損の有無を調べるための薬剤、DNAの損傷を検出するための薬剤、損傷を受けた遺伝子を安定化させるための薬剤、DNA修復酵素の阻害剤などに、本実施の形態のバルジ塩基認識分子を利用することも可能である。
【0044】
本実施の形態のバルジ塩基認識分子を利用するときは、この分子を単独で使用してもよいし、標識化されているバルジ塩基認識分子を利用してもよいし、バルジ塩基認識分子を含んでいるバルジ塩基認識用組成物として利用してもよい。
【0045】
標識化されているバルジ塩基認識分子としては、例えば、この分子中の適当な位置に放射性元素を導入したバルジ塩基認識分子、発光(化学発光、蛍光など)する分子によって標識されたバルジ塩基認識分子などが挙げられる。バルジ塩基認識分子を含んでいるバルジ塩基認識用組成物としては、例えば、別の物質(例えば高分子材料、ゲル材料)にバルジ塩基認識分子を固定化した組成物、適当な担体と組み合わせることによる組成物などが挙げられる。もちろん、標識化されたバルジ塩基認識分子、または固定化されたバルジ塩基認識分子を、バルジ塩基認識剤として使用することも可能であり、DNA中のバルジ塩基の検出、同定、または定量にそれら分子を使用することもできる。
【0046】
さらに、本実施の形態のバルジ塩基認識分子をバルジDNA認識分子として用いれば、バルジDNA認識分子を感度よく検出することが可能となる。そして、4種すべてのバルジ塩基に対して安定なDNAを形成することから、本実施の形態のバルジ塩基認識分子を、DNA損傷に伴う各種疾患の治療、予防、診断などに利用することが可能である。本実施の形態のバルジ塩基認識分子と水素結合により結合しているDNAは、バルジ塩基を有しているにもかかわらず安定に存在することができる。よって、本実施の形態のバルジ塩基認識分子は、バルジ塩基を含有するDNAの安定化剤、バルジ塩基の発生原因やバルジ塩基の修復機構の解明などを研究するための薬剤としても利用可能である。
【0047】
本実施の形態のバルジ塩基認識分子は、4種類すべてのバルジ塩基と水素結合を形成して、バルジ塩基を有するDNAを安定化させる。つまり、本実施の形態のバルジ塩基認識分子を用いれば、バルジ塩基を有しているが、安定化が施されたDNAを得ることができる。しかも、4種類すべてのバルジ塩基と水素結合を形成して安定化しているDNAを、1種類の上記バルジ塩基認識分子のみを用いて提供することができる。
【0048】
上記特許文献1には、バルジ塩基の種類に特異的なバルジ塩基認識分子が記載されていた。よって、本実施の形態のバルジ塩基認識分子と、上記特許文献1に記載のバルジ塩基認識分子とを組み合わせて、次のように認識分子を利用することができる。まず、本実施の形態のバルジ塩基認識分子を用いて、バルジ塩基の存在を確認する。次に、バルジ塩基の存在が確認できたものについては、上記特許文献1に記載のバルジ塩基認識分子を用いて、バルジ塩基の種類を特定する、といったバルジ塩基認識分子の利用が可能である。
【0049】
本実施の形態のバルジ塩基認識分子は、通常の有機合成法により合成することができ、例えば次のような方法により合成可能である。まず、ナフチリジンのジハロゲン化物(例えば2,7−ジハロゲン化ナフチリジン)をアミン類(例えばプロパンジアミンなどのジアミン)に溶解させる。次に、その溶解物を、適温(例えば60℃)条件下で反応させる。次に、反応させた溶解物から生成物を単離せずに、生成物とカーボネート(例えばブチルカーボネート)とを適温(例えば40℃)下で反応させる。そして、その反応により得られる化合物を、通常の精製法(例えばカラムクロマトグラフィー)により精製する。その精製後、適当な溶媒(例えばクロロホルム)に溶解させた精製後の化合物と酸(例えば塩酸の酢酸エチル溶液)とを反応させる。その反応後、反応生成物の精製・濃縮などを行えば、バルジ塩基認識分子を手に入れることができる。なお、バルジ塩基認識分子の合成例は、下記の実施例で詳しく説明する。
【0050】
(遺伝子検出器具)
次に、本実施の形態の遺伝子検出器具について説明する。本実施の形態の遺伝子検出器具は、上記バルジ塩基認識分子を含んでいる。よって、1種類の上記バルジ塩基認識分子を用いた、4種類すべてのバルジ塩基の認識が可能な遺伝子検出器具である。本実施の形態の遺伝子検出器具としては、例えば、上記バルジ塩基認識分子を基盤(担体)上に固定化したチップなどが挙げられる。具体的には、本実施の形態のバルジ塩基認識分子が、何らかの化学結合によって固定化されているチップなどが挙げられる。さらに、硫黄を含むバルジ塩基認識分子(特にメルカプト基を含むバルジ塩基認識分子)は、そのようなチップに用いるのに適している。
【0051】
(バルジ塩基検出方法)
次に、バルジ塩基検出方法について説明する。本実施の形態のバルジ塩基検出方法は、上記バルジ塩基認識分子を用いる方法である。このバルジ塩基認識分子は、上記に記載した特性を有している。それゆえ、上記バルジ塩基認識分子を用いるバルジ塩基検出方法としては、例えば、下記の方法が挙げられる。
(A)上記バルジ塩基認識分子の存在により、DNAの融解温度が上昇するか否かを測定することによって、バルジ塩基を検出する方法。
(B)上記バルジ塩基認識分子が示す蛍光強度の変化を観測することにより、バルジ塩基を検出する方法。
(C)上記バルジ塩基認識分子をゲルなどに固定化したアフィニティーカラムを調製し、そのゲル中におけるDNAの移動度の違いを測定することによって、バルジ塩基を検出する方法。
【0052】
【実施例】
(実施例1:バルジ塩基認識分子の合成)
バルジ塩基認識分子である2,7−ジアミノナフチリジン誘導体(上記式(I)の化合物)の合成方法を、下記の式(化10)を参照しながら説明する。
【0053】
【化10】
Figure 0004464614
【0054】
まず、2,7−ジクロロナフチリジン(50mg、0.25mmol)を、1,3−プロパンジアミン(2mL)に溶かし、60℃で一晩反応させた。次に、上記反応で得られた生成物を単離することなく、生成物にt-ブチルカーボネート(Boc2O)(300mg)を加えて40℃で一晩反応させた。次に、生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、[化10]中の化合物2(63mg)を得た。なお、化合物2の1H−NMRの結果を、次に示す。1H NMR(CDCl3)「1.43ppm(s,18H)、1.59ppm(br,4H)、3.17ppm(m,8H)、4.86ppm(br,2H)、7.52ppm(d,4H)、8.15ppm(d,4H)」。
【0055】
次に、上記化合物2(22.6mg)をクロロホルム(1mL)に溶かし、塩酸の酢酸エチル溶液(1M,1mL)を加えて、室温で1時間反応させた。反応後、得られた溶液を濃縮して、[化10]中の化合物3(式(I)の化合物)の塩酸塩を得た。なお、化合物3の1H−NMRの結果を、次に示す。1H NMR(D2O)「1.85ppm(br,4H)、2.90ppm(br,4H)、3.40ppm(br,4H)、6.50ppm(d,4H)、7.71ppm(d,4H)」。
【0056】
(実施例2:2本鎖DNAとバルジ塩基認識分子との結合の安定性)
2本鎖のDNAと式(I)の化合物との結合の安定性を示す実験を行った。具体的には、式(I)の化合物が存在する場合における2本鎖のDNAの融解温度(drug(+))と、式(I)の化合物が存在しない場合における2本鎖のDNAの融解温度(drug(-))とを求めて、さらに、それら融解温度の差(ΔTm=drug(+)−drug(-))を計算することによって、上記安定性を算出した。
【0057】
なお、上記2本鎖のDNAには、バルジ塩基がグアニンであるDNA(G buldge)と、バルジ塩基がシトシンであるDNA(C buldge)と、バルジ塩基がアデニンであるDNA(A buldge)と、バルジ塩基がチミンであるDNA(T buldge)と、バルジ塩基を持たない完全に相補的な2本鎖DNA(Full Match)とを用いた。なお、この安定性の算出に用いた2本鎖のDNAの詳細を、下記に示す。
(2本鎖DNA)
5’−TCCAX_YCAAC−3’
5’−GTTGWNZTGGA−3’
(X,Y,W,Z,N=アデニン、シトシン、グアニン、またはチミン)
具体的な実験の方法は、上記2本鎖のDNA(100μM、base濃度)の食塩(100mM)を含むカコジル酸バッファー(pH7.0)溶液に、[化10]中の化合物3(100μM)を加え、温度変化に対する260nmの吸収変化を測定することによって、変曲点から融解温度(Tm)(drug(+))を算出した。また、化合物3を加えない場合の融解温度(drug(-))も測定することによって、融解温度の差(ΔTm=drug(+)−drug(-))を求めた。
【0058】
これら融解温度は、上記2本鎖のDNAにおけるすべての塩基(すべてのX,Y,W,Z,N)の組み合わせについての測定結果と、バルジ塩基を持たない完全に相補的な2本鎖DNA(Full Match)についての測定結果とを、表1に示す。
【0059】
【表1】
Figure 0004464614
【0060】
表1に示す結果によれば、[化10]の化合物3(つまり式(I)の化合物)は、すべてのバルジ塩基を含む配列を安定化することが分かる。また、Full MatchのDNAは安定化しないことも分かる。よって、1種類の分子(式(I)の化合物)によって、すべてのバルジ塩基の存在を確認できることが示された。
【0061】
【発明の効果】
本発明のバルジ塩基認識分子は、以上のように、遺伝子中に存在するバルジ塩基と水素結合を形成することによって、バルジ塩基を有する遺伝子を安定化させるバルジ塩基認識分子であって、バルジ塩基が、アデニン、グアニン、シトシン、およびチミンのいずれの場合であっても上記安定化を行う分子である。
【0062】
それゆえ、4種類のバルジ塩基を1種類の分子で認識可能なバルジ塩基認識分子を提供することができるという効果を奏する。
【0063】
また、本発明のバルジ塩基認識分子は、2,7−ジアミノナフチリジン誘導体からなる分子である。
【0064】
それゆえ、4種類のバルジ塩基を1種類の分子で認識可能なバルジ塩基認識分子を提供することができるという効果を奏する。
【0065】
また、本発明のバルジ塩基認識分子は、上記構成に加えて、2,7−ジアミノナフチリジン誘導体は、式(I)で表される化合物である。
【0066】
それゆえ、上記効果に加えて、4種類のバルジ塩基を1種類の分子で認識可能なバルジ塩基認識分子を、容易に入手することができる。
【0067】
また、本発明のバルジ塩基認識分子は、標識化されている分子である。
【0068】
それゆえ、バルジ塩基認識分子の探索、例えば、バルジ塩基と水素結合を形成したバルジ塩基認識分子の探索が容易となるという効果を奏する。
【0069】
また、本発明のバルジ塩基認識用組成物は、上記に記載のバルジ塩基認識分子を含んでいるという構成である。
【0070】
それゆえ、1種類のバルジ塩基認識分子を用いて4種類のバルジ塩基の認識が可能なバルジ塩基認識用組成物を提供することができるとともに、バルジ塩基を認識するのに最適なバルジ塩基認識用組成物を提供することができるという効果を奏する。
【0071】
また、本発明の遺伝子検出器具は、上記に記載のバルジ塩基認識分子を含んでいるという構成である。
【0072】
それゆえ、1種類の上記バルジ塩基認識分子を用いて、4種類すべてのバルジ塩基の認識が可能な遺伝子検出器具を提供することができるという効果を奏する。
【0073】
また、本発明のバルジ塩基検出方法は、上記に記載のバルジ塩基認識分子を用いて、遺伝子中に存在するバルジ塩基を検出するという方法である。
【0074】
それゆえ、4種類すべてのバルジ塩基を1種類の分子で認識することができるバルジ塩基検出方法を提供することができるという効果を奏する。

Claims (6)

  1. 遺伝子中に存在するバルジ塩基と水素結合を形成することによって、バルジ塩基を有する遺伝子を安定化させるバルジ塩基認識分子であって、
    上記バルジ塩基が、アデニン、グアニン、シトシン、およびチミンのいずれの場合であっても上記安定化を行い、
    式(I)で表される化合物である2,7−ジアミノナフチリジン誘導体からなることを特徴とするバルジ塩基認識分子。
    Figure 0004464614
  2. 式(I)で表される化合物である2,7−ジアミノナフチリジン誘導体からなることを特徴とするバルジ塩基認識分子。
    Figure 0004464614
  3. 標識化されていることを特徴とする請求項1または2に記載のバルジ塩基認識分子。
  4. 請求項1からのいずれか1項に記載のバルジ塩基認識分子を含んでいることを特徴とするバルジ塩基認識用組成物。
  5. 請求項1からのいずれか1項に記載のバルジ塩基認識分子を含んでいることを特徴とする遺伝子検出器具。
  6. 請求項1からのいずれか1項に記載のバルジ塩基認識分子を用いて、遺伝子中に存在するバルジ塩基を検出することを特徴とするバルジ塩基検出方法。
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