JP2004325074A - ミスマッチ検出分子及びそれを用いたミスマッチの検出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、ハイブリダイゼーションにより、特定の塩基に対する塩基対のミスマッチをより簡便でしかも高感度で検出しうる方法、とりわけ、A−Aミスマッチを簡便でしかも高感度で検出しうる方法を提供するものである。
【解決手段】本発明は、次の一般式(II)、
【化1】
(式中、R1は、水素原子又はアルキル基などであって、当該アルキル基中の炭素原子は酸素原子又は窒素原子で置換されてもよい、R2、R3はそれぞれ独立して2価のアルキル基であって、当該アルキル基中の炭素原子は酸素原子、窒素原子又はカルボニル基で置換されてもよい。)で表される化合物からなるミスマッチの塩基対、特にAAミスマッチを検出、同定するための試薬、及びそれを用いたミスマッチ塩基対の検出、同定方法に関する。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明は、次の一般式(II)、
【化1】
(式中、R1は、水素原子又はアルキル基などであって、当該アルキル基中の炭素原子は酸素原子又は窒素原子で置換されてもよい、R2、R3はそれぞれ独立して2価のアルキル基であって、当該アルキル基中の炭素原子は酸素原子、窒素原子又はカルボニル基で置換されてもよい。)で表される化合物からなるミスマッチの塩基対、特にAAミスマッチを検出、同定するための試薬、及びそれを用いたミスマッチ塩基対の検出、同定方法に関する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、正常な塩基対を形成することができない塩基の対において、当該正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させ、当該擬似的な塩基対の状態を測定することからなる正常な塩基対を形成することができない塩基の対を検出、同定する方法、そのための試薬、それを含有するキット、その化合物、及びその方法を用いたDNA又はRNAの塩基配列の異常、好ましくはA−Aミスマッチを検出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
DNAやRNAなどの核酸がハイブリダイズして2本鎖となる場合には、対をなす塩基が決まっている。例えば、グアニン(G)にはシトシン(C)、アデニン(A)にはチミン(T)という具合になっている。そして、通常は全ての塩基がこのような対を形成してハイブリダイズしているのであるが、ときとして塩基配列の中の一部にこのような対を形成することができない場合がある。
例えば、あるDNAと他のDNAをハイブリダイズし得る条件下においた場合に、大部分の塩基はこのような対を形成することができるが、1個又は数個の一部の塩基はこのような対を形成することができない場合がある。このような通常の塩基対を形成することができない塩基対のことを、以下ではミスマッチという。
【0003】
一方、最近1個又は2個以上の塩基が異なることに起因する各種の遺伝病についての研究が行われてきている。例えば、遺伝情報の個人差である遺伝子一塩基多形(SNPs(Single Nucleotide Polymorphism))は、罹病しやすさや、薬理作用の個人差の原因となる。現在、各個人に最適化された医療の実現へ向け、SNPsの研究がポストゲノムの重要な位置を占めており、効率的なSNPsの検出法の開発が期待されている。SNPsを含むDNAは、変異を含まない相補的なDNAと混合しアニールさせるとミスマッチ塩基対を形成するので、ミスマッチ塩基対に選択的に結合する低分子リガンドを開発すれば、SNPsの効率的な検出が可能になると考えられる。
現在、このようなミスマッチを検出する方法は、2本鎖DNAのハイブリダイゼーション効率を比較する手法が一般的である。しかし、この方法を用いるためにはミスマッチを含むDNAの塩基配列をあらかじめ知っておかなければならないために多大な労力が必要となり、多くの検体を処理する方法としては不適当である。また、MutS等のDNAの修復蛋白が遺伝子損傷箇所に選択的に結合することを利用する手法もあるが、タンパクを用いる場合、低分子リガンドを用いる方法に比べて熱安定性や活性な構造(フォールディング)を維持する事が必要となり使用条件の制約が多く、また操作も煩雑となり効率的にミスマッチを検出ことは難しい。
【0004】
このように、ハイブリダイズしたDNAなどにおける一部のミスマッチを検出する方法は大変難しく、またその感度も不十分なものであり、これを簡便に且つ高感度で検出できる方法の確立が求められている。
ところで、本発明者らは、2本鎖DNA中に生成する不対塩基(バルジ塩基)を持つDNA(バルジDNA)に特異的に結合し、安定化する分子であるバルジDNA認識分子を開発してきた(特許文献1参照)。このバルジ認識分子は、不対塩基と水素結合をするだけでなく、バルジ塩基の存在により生じてくる空間に、芳香環とバルジ近傍の塩基とのスタッキング相互作用を利用してインターカーレーションし、安定化されているものである。
そして、本発明者らは、このような周辺の塩基の存在によるスタッキング効果を利用した不対塩基に対する作用についてさらに研究を行ってきたところ、塩基対のミスマッチが生じている箇所においても、塩基と対を形成し得る分子種を2個有する化合物がこのようなスタッキング効果により比較的安定に取り込まれる得ることを見出し、具体的にはビス(2−メチルナフチリジン)アミド誘導体がGGミスマッチやGAミスマッチを検出できることを示してきた(特許文献2参照)。しかし、このものは特定のミスマッチには極めて高感度で安定に取り込まれる得ることができるが、他のミスマッチに対しては取り込みが不十分であり、即ち特定のミスマッチに対する特異性が大きすぎて必ずしも実用的ではなかった。例えば、GGミスマッチに対しては高い特異性を有するが、GAミスマッチやGTミスマッチに対しては必ずしも十分な取り込みがなされなかった。
【0005】
遺伝子の変異を調べる方法として、変異の有無を検査したい遺伝子とその変異の無い野生型遺伝子の50塩基程度のオリゴマーDNAを混合、加熱、冷却により二つの遺伝子をクロスハイブリダイゼーションする方法がある。検査する遺伝子に変異がある場合には遺伝子の融解温度や融解温度差に異常が見出される。この操作は比較的簡便ではあるが、変異があることが分かるだけであり、どの位置にどのような変異が生じているのかということを知ることはできない。
前記してきた本発明者が報告してきた方法によれば(特許文献2参照)、このクロスハイブリダイゼーションする方法により特定のミスマッチの存在を知ることはできるが、このミスマッチ認識分子は特異性が高く、例えば、グアニン塩基に対するミスマッチを調べる場合においても、GGミスマッチ用のもの、GAミスマッチ用のもの、GTミスマッチ用のものと複数のミスマッチ認識分子を用意しなければならなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−89478号
【特許文献2】
特開2001−149096号
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このようなハイブリダイゼーションの方法において、特定の塩基に対する塩基対のミスマッチをより簡便でしかも高感度で検出しうる方法、とりわけ、A−Aミスマッチを簡便でしかも高感度で検出しうる方法を提供するものである。
また、本発明は、2本鎖DNA鎖中に存在するミスマッチを高感度でしかも簡便に検出しうる方法及びそのための検出キットを提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ミスマッチ認識分子について更に検討を進めてきた結果、特定のミスマッチに特異的に取り込まれるミスマッチ認識分子ではなく、ある塩基に対する全てのミスマッチ、例えばグアニン塩基についてGGミスマッチのみではなく、GGミスマッチ、GAミスマッチ、GTミスマッチ及びAAミスマッチのいずれのミスマッチに対しても取り込みがなされ、かつその取り込みの程度を検出できるミスマッチ認識分子を見出した。
本発明は、正常な塩基対を形成することができない塩基の対において、検体となる1本鎖のDNA又はRNAと、それに対応する正常な塩基配列を有するDNA又はRNAとをハイブリダイズさせ、次いで当該ハイブリダイズしたDNA又はRNAにおける正常な塩基対を形成することができない塩基の対を、次の一般式(I)、
A−L−X (I)
(式中、Aは正常な塩基対を形成することができない塩基の対の片方の塩基と対を形成し得る化学構造部分、Xは前記Aの構造部分と対を形成する塩基と正常な塩基対を形成すべき塩基とは異なる塩基と対を形成し得る化学構造部分、Lは化学構造部分A及びXを結合するリンカー構造を示す。)
で表される、その各々の塩基と対を形成し得る化学構造部分A及び化学構造部分X、並びに当該化学構造部分A及びXを結合するリンカー部分Lを有する化合物を用いて、当該正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させ、当該擬似的な塩基対の形成を測定することからなる正常な塩基対を形成することができない塩基の対を検出、同定する方法に関する。
【0009】
また、本発明は、前記の正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させ、当該擬似的な塩基対の形成を測定することからなる正常な塩基対を形成することができない塩基の対を検出、同定する方法において、正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させるための次の一般式(I)、
A−L−X (I)
(式中、Aは正常な塩基対を形成することができない塩基の対の片方の塩基と対を形成し得る化学構造部分、Xは前記Aの構造部分と対を形成する塩基と正常な塩基対を形成すべき塩基とは異なる塩基と対を形成し得る化学構造部分、Lは化学構造部分A及びXを結合するリンカー構造を示す。)
で表される化合物からなる、正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させるための試薬に関する。
本発明は、前記した本発明の試薬、及び検出、同定用の資材からなる正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させ、当該擬似的な塩基対の形成を測定することからなる正常な塩基対を形成することができない塩基の対を検出、同定するためのキットに関する。
【0010】
また、本発明は、次の一般式(II)、
【0011】
【化4】
【0012】
(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜15のアルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基であって当該アルコキシ基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいアルコキシ基、又は、炭素数1〜15のモノ若しくはジアルキルアミノ基であって当該アルキルアミノ基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいモノ若しくはジアルキルアミノ基を示し、
R2は、炭素数1〜20のアルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子、窒素原子又はカルボニル基で置換されてもよいアルキル基を示す。
R3は、炭素数1〜10のアルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子、窒素原子又はカルボニル基で置換されても良いアルキル基を示す。)で表される化合物又は当該化合物がプレートや機器分析用の検出装置などに固定化され得る化学構造に修飾された固定化物に関する。また、本発明は、前記一般式(II)で表される化合物からなるミスマッチの塩基対、好ましくはAAミスマッチを検出、同定するための試薬、ミスマッチの塩基対、好ましくはAAミスマッチの塩基対を安定化させるための試薬、及びAAミスマッチの塩基対に擬似的に塩基対を形成させるための塩基対生成剤としての試薬、並びにこれらの試薬を用いたミスマッチの塩基対、好ましくはAAミスマッチを検出、同定する方法に関する。
【0013】
さらに、本発明は、次の一般式(I)、
A−L−X (I)
(式中、Aは正常な塩基対を形成することができない塩基の対の片方の塩基と対を形成し得る化学構造部分、Xは前記Aの構造部分と対を形成する塩基と正常な塩基対を形成すべき塩基とは異なる塩基と対を形成し得る化学構造部分、Lは化学構造部分A及びXを結合するリンカー構造を示す。)
で表される塩基対のミスマッチ認識分子であって、特定の塩基と対を形成し得る化学構造部分A及び前記Aの構造部分と対を形成する塩基と正常な塩基対を形成すべき塩基とは異なる塩基と対を形成し得る化学構造部分X、並びに当該化学構造部分A及びXを結合するリンカー部分Lを有することを特徴とする化合物を用いて、当該正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させる方法に関する。
なお、以下の説明においては、前記した「正常な塩基対を形成することができない塩基の対の片方の塩基と対を形成し得る化学構造部分(一般式(I)におけるA及びXの部分)」のことを単に「塩基認識部位」ということもある。
【0014】
本発明者らは、2本鎖DNA中に生成する不対塩基(バルジ塩基)を持つDNA(バルジDNA)に特異的に結合し、安定化する分子であるバルジDNA認識分子を開発してきた(特開2001−89478号)。このバルジ認識分子は、バルジ塩基の存在により生じてくる空間に、芳香環とバルジ近傍の塩基とのスタッキング相互作用を利用してインターカーレーションし、安定化されているものであるが、本発明者らはこのようなバルジ認識分子を2分子、リンカーのような結合鎖で結合させることにより各々のバルジ認識分子が、塩基対のミスマッチ部分においてバルジ塩基と同様な塩基対を形成し、しかもこれらのバルジ認識分子の両者が2本鎖を形成しているDNAやRNAの鎖の中に比較的安定に取り込まれることを見出してきた(特開2001−149096号)。このような比較的大きな分子種がDNAやRNAの鎖の中に比較的安定に取り込まれることは驚くべきことであり、かつこのような特性を利用することにより、ハイブリダイズしている核酸の中で塩基対がミスマッチを生じている箇所を簡便に特定し得ることを見出し、これをミスマッチ認識分子として示してきた。
【0015】
しかし、このものは塩基に対する特異性が強く、特定のミスマッチにのみ強く取り込まれるものであった。そこで、本発明者らは塩基に対する結合が、正常な塩基対を形成するよりは弱いが、同定や検出のためには十分な対を形成し得る分子種の開発を行ってきたところ、このような分子種を製造することができることを見出した。例えば、次式(III)で示される、
【0016】
【化5】
【0017】
分子種の右側部分(一般式(I)におけるX部分に相当する部分)のナフチリドンはいずれの塩基とも比較的弱く結合し、いずれのミスマッチ塩基に対しても適度の結合能により取り込まれことを見出した。
前記式(III)の左側部分(一般式(I)におけるA部分に相当する部分)は、以前に報告してきたグアニンと水素結合を形成し、かつ周囲の塩基とスタッキング効果により安定化され得る2−置換−1,8−ナフチリジン構造であり、この構造がグアニン(G)と対を形成することは、既に報告してきたとおりである。
【0018】
核酸の2本鎖中においてグアニンに対するミスマッチが存在している場合において、前記式(III)のミスマッチ認識分子が各々のミスマッチに対する取り込みついて検討した。
この検討のために、次の3種のオリゴマーを用いた。
オリゴマー(1)
*
5’−CTAACGGAATG−3’
3’−GATTGACTTAC−5’
オリゴマー(2)
*
5’−CTAACGGAATG−3’
3’−GATTGGCTTAC−5’
オリゴマー(3)
5’−CTAACGGAATG−3’
3’−GATTGCCTTAC−5’
オリゴマー(3)は正常な塩基対を有するものであり、オリゴマー(1)及び(2)は前記の塩基配列の上の*印を示した部分においてミスマッチが生じているものである。
【0019】
これらのオリゴマー(1)及び(2)、並びにオリゴマー(3)のそれぞれについて、前記式(III)のミスマッチ認識分子の存在下、又は非存在下における二本鎖DNAの融解温度(Tm)を調べた。
その結果を次の表1に示す。
【0020】
表1は左から、試験をしたオリゴマーの塩基配列、式(III)のミスマッチ認識分子の非存在下での融解温度(Tm)(℃)、式(III)のミスマッチ認識分子の存在下での融解温度(Tm)(℃)、各融解温度(Tm)(℃)の差(ΔTm)(℃)を示している。ここに、融解温度(Tm)の差(ΔTm)は、
ΔTm=(式(III)存在下でのTm)−(式(III)非存在下でのTm)
から算出されたものである。
この結果からも明らかなように、ミスマッチが存在していた場合にはΔTmの値が大きく相違することになり、ミスマッチの存在を確認することができる。
そして、ミスマッチの種類によりΔTmの値が相違してくるだけでなく、式(III)のミスマッチ認識分子の非存在下での融解温度(Tm)も相違している。さらに本発明で重要なことは、式(III)のミスマッチ認識分子が存在した場合における融解温度(Tm)の相違である。例えば、オリゴマー(1)の場合にはこのTmの値は40.4℃であり、この値は正常なオリゴマー(3)の値40.5℃とほぼ同じ値になっているのに対して、オリゴマー(2)のこのTmの値は36.1℃極めて低い温度になっている。これは式(III)の分子種における右側部分(一般式(I)におけるX部分に相当する部分)に対する各塩基との結合能が反映された結果である。即ち、式(III)の分子種の場合にはアデニン(A)塩基とはほぼ正常な対に近い結合能を有するが(オリゴマー(1)の場合)、グアニン(G)塩基とは結合はするが比較的弱い結合能しか有さない(オリゴマー(2)の場合)結果が反映されたものであり、このことにより、本発明のミスマッチ認識分子を用いることにより、調べようとする遺伝子にミスマッチ(例えば、SNPなど)が存在していることが判明するだけではなく、当該ミスマッチにおける相手側の塩基を知ることが可能となることがわかった。
【0021】
さらに、次のオリゴマー(4)
オリゴマー(4)
*
5’−CTAACAGAATG−3’
3’−GATTGACTTAC−5’
(*印はミスマッチ部分を示す。)
を用いて、次の化合物1〜化合物7についてΔTm/℃を検討した。
【0022】
化合物1
【化6】
【0023】
化合物2
【化7】
【0024】
化合物3
【化8】
【0025】
化合物4
【化9】
【0026】
化合物5
【化10】
【0027】
化合物6
【化11】
【0028】
化合物7
【化12】
【0029】
結果を次の表2に示す。
【0030】
Tmの測定は、100mMのNaClを含有する10mMのカコジル酸ナトリウム(pH=7.0)緩衝液中で行った。実験番号1は化合物の非存在下で測定した結果である。5μMのDNAオリゴマー(4)を用いて、化合物は各々200μM用いた。ΔTm/℃は、化合物1〜7が存在したときのTmと化合物の非存在下でのTmの差であり、次の式で示される。
ΔTm/℃ = (化合物1〜7が存在したときのTm)− (化合物1〜7の非存在下でのTm)
この結果、化合物1、即ち一般式(III)で表される化合物は極めて強くAAミスマッチを安定化することができることが示された。また、化合物2〜4及び化合物7も安定化作用は弱いが、AAミスマッチを安定化させていることわかる。化合物5及び化合物6には、これ単独ではAAミスマッチを安定化する作用は見られないが、これらを組み合わせて使用することにより安定化作用がみられることがあることがわかる。
【0031】
次に一般式(III)で表される化合物(前記化合物1)を用いて、AAミスマッチの両側の塩基の種類の影響を検討した。DNAとして次の一般式で表されるオリゴマーを用いた。
オリゴマー
*
5’−CTAAXAYAATG−3’
3’−GATTZAWTTAC−5’
(*印はミスマッチ部分を示す。)
【0032】
結果を次の表3に示す。
【0033】
Tmの測定は、100mMのNaClを含有する10mMのカコジル酸ナトリウム(pH=7.0)緩衝液中で行った。5μMのDNAオリゴマーを用いて、化合物は各々200μM用いた。ΔTm/℃は、化合物1が存在したときのTmと化合物の非存在下でのTmの差であり、次の式で示される。
ΔTm/℃ = (化合物1が存在したときのTm)− (化合物1の非存在下でのTm)
この結果、化合物1、即ち一般式(III)で表される化合物のAAミスマッチに対する安定化作用は、隣接する塩基の種類に依存していることがわかる。AAミスマッチの隣接する3’側にGが存在していると安定化効果は強いが、3’側にGが存在しないと安定化効果は小さくなることがわかる。
【0034】
AAミスマッチを安定化している化合物1の状態を検討するために、DNAとして前記したオリゴマー(4)を用いて各種のスペクトル解析を行った。結果を図1〜3に示す。
図1は、CDスペクトルの結果を示す。図1の縦軸は回転角(度・cm2/dmol)を示し、横軸は波長(nm)を示す。(a)は化合物1の存在下のCDスペクトルを示し、(b)は化合物1の非存在下のCDスペクトルを示す。測定は100mMのNaClを含有する10mMのカコジル酸ナトリウム(pH=7.0)緩衝液中で25℃で行った。DNAの濃度は100μMであり、化合物1は20μMである。
図2は、100mMのNaClを含有する10mMのカコジル酸ナトリウム(pH=7.0)緩衝液中での化合物1のジョブプロット(Job plot)の結果を示す。図2の縦軸は角度(度)を示し、横軸は化合物1のモル分率を示す。化合物1とDNAの濃度の合計が常に一定(5μM)になるように保った。この結果、クロスオーバーポイントが0.7となり、化合物1とDNAの比は1:2であることがわかった。
図3は、ESI質量分析のスペクトルを示す。図3の上段は、化合物1の非存在下のものであり、図3の下段は化合物1の存在下の場合である。測定は100mMの酢酸アンモニウムを含有する50%メタノールと水の1:1混合溶液を用いて行った。DNAの濃度は20μM(図3上段)であり、当該溶液に120μMの化合物1を添加した(図3の下段)。
DNAオリゴマー(4)と化合物1の計算値を次に示す。
これらのスペクトルの結果から、AAミスマッチのDNAのオリゴマー(4)1分子に対して化合物1が2分子の1:2に複合体を形成していることがわかった。
【0035】
本発明のミスマッチ認識分子の基本的なことについては前記した特開2001−149096号に記載されているが、本発明のミスマッチ認識分子は、一方の塩基を認識する部分を塩基の種類に対して非特異的にし、かつ正常な塩基対に対しては影響を与えない分子種であることを特徴とするものである。
したがって、本発明のミスマッチ認識分子の塩基認識部位(一般式(I)におけるA及びXの化学構造部分)において、A部分は塩基の種類に対して特異性が強い構造を有する部分であり、X部分は塩基の種類に対して比較的非特異的な結合ができることを特徴とするものである。
特に、本発明では、AAミスマッチ、好ましくは3’側にGを有するAAミスマッチを認識できることを特徴とするものである。
【0036】
このように、本発明は、2個の異なる塩基認識部位を適当な長さでかつ適当な自由度を有するリンカーで結合させた化合物が、2本鎖の核酸における塩基対のミスマッチ部分において、一方は特異的にかつ安定に対を形成し、他方は比較的に非特異的に結合するという特徴により、簡便な方法でミスマッチ、特にAAミスマッチの存在を判定することができるだけでなく、ミスマッチの種類も判定することができるという基本的なミスマッチ判定法を提供するものであり、前記に例示したグアニン(G)に対するミスマッチやAAに対するミスマッチに限定されるものではない。
前記した例では、グアニン(G)に対するミスマッチを例に取り、グアニン塩基と安全な水素結合を形成する1,8−ナフチリジン誘導体を一方の塩基認識部位に用いたミスマッチ認識分子を示したが、ミスマッチの認識はグアニン(G)に対するミスマッチに限定されるものではない。AAミスマッチに対しても本発明の化合物が十分な安定化作用を有していることも本発明により実証されている。本発明のミスマッチ認識分子における塩基認識部位は、ミスマッチの塩基の片方を認識し当該塩基とワトソン−クリック(Watson−Crick)型の塩基対を形成することができ、周囲の塩基によるスタッキング効果を得られる分子種を選択することにより、例示したグアニンに限らず、各種の塩基と塩基対を形成し得ることができる構造を使用することができる。例えば、ミスマッチの塩基がシトシンの場合には、塩基認識部位として2−アミノナフチリジン−4−オン又はその誘導体などが、ミスマッチの塩基がアデニンの場合には、2−キノロン誘導体、例えば3−(2−アミノエチル)−2−キノロン又はその誘導体などが、また、ミスマッチの塩基がチミンの場合には、2−アミノナフチリジン−7−オン又はその誘導体などが用いられる。
【0037】
特定のミスマッチの塩基に特異的に認識される本発明のミスマッチ認識分子における塩基認識部位は、水素結合を形成するための水素結合部位と、近傍の塩基にスタッキングされるための平面構造を有している複素環式芳香族基を有するものが好ましい。
【0038】
また、本発明の一般式(I)で表される化合物におけるリンカー部Lとしては、2個の塩基認識部位を適当な長さで適当な自由度を与えるものであれ特に制限されるものではないが、例えば、炭素数1〜20、好ましくは5〜15、より好ましくは8〜12の直鎖状又は分枝状の飽和又は不飽和のアルキル基であって、当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子、窒素原子又はカルボニル基で置換されてもよいアルキル基が挙げられる。好ましいリンカーとしては、前記した式(III)の化合物のように両端がアミド結合の部分を有し、中央部に窒素原子を有するものが挙げられる。
このリンカー部分は、2個の塩基認識部位を結合させるだけでなく、このリンカー部分から担体に固定化するための枝を結合させることもできる。例えば、リンカー中央部付近の窒素原子の箇所からさらに末端に担体と結合するための官能基などを有するアルキレン基のような枝を延ばして、必要に応じて担体に固定化することもできる。
【0039】
本発明の一般式(I)における塩基認識部位A又はXとリンカー部Lとの結合は、炭素−炭素結合であってもよいが合成の簡便さから官能基による結合が好ましい。官能基による結合としては、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、リン酸による結合など種々のタイプのものを選択することができるが、アミド結合が好ましい。
本発明のミスマッチ塩基認識分子における、グアニン(G)に対するミスマッチやAAミスマッチに好ましい一般式(I)の化合物として、次の一般式(II)、
【0040】
【化13】
【0041】
(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜15のアルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基であって当該アルコキシ基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいアルコキシ基、又は、炭素数1〜15のモノ若しくはジアルキルアミノ基であって当該アルキルアミノ基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいモノ若しくはジアルキルアミノ基を示し、
R2は、炭素数1〜20のアルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子、窒素原子又はカルボニル基で置換されてもよいアルキル基を示す。
R3は、炭素数1〜10のアルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子、窒素原子又はカルボニル基で置換されても良いアルキル基を示す。)で表される化合物又はその固定化物が挙げられる。ここにおける「固定化物」とは、前記した化合物が担体に固定化されている状態のもの又は固定化され得るように前記した「枝」をのばした状態の化合物をいう。
本発明の一般式(II)における置換基R1としては、例えば、炭素数1〜15、好ましくは1〜10より好ましくは1〜7の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数1〜15、好ましくは1〜10より好ましくは1〜7の直鎖状又は分枝状のアルキル基からなるアルコキシ基、炭素数1〜15、好ましくは1〜10より好ましくは1〜7の直鎖状又は分枝状のアルキル基でモノ又はジ置換されているモノ若しくはジアルキルアミノ基などが挙げられる。これらのアルキル基、アルコキシ基又はモノ若しくはジアルキルアミノ基における1個又はそれ以上の炭素原子は、酸素原子又は窒素原子で置換されていてもよい。
また、R2及びR3におけるアルキル基は前記したアルキル基であって、一般式(II)に示されているように2価のアルキル基である。これらのアルキル基は、当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子、窒素原子又はカルボニル基(CO)で置換されてもよく、例えば、エステル基やアミド基を形成していてもよい。
【0042】
また、本発明のミスマッチ塩基認識分子はこれを単独で使用することもできるが、分子中の適当な位置に、例えばリンカー部分やリンカーから固定化のためなどのための延ばされた枝などに、放射性元素を導入したり、化学発光又は蛍光を発する分子種を導入するなどして、標識化して使用することもできる。なお、測定手段としての標識化は、検出対象のDNAやRNAなどの核酸部分の標識化によることもできる。
さらに、本発明のミスマッチ塩基認識分子の適当な位置においてポリスチレンなどの高分子材料と直接又はアルキレン基などを用いて結合させて、これを固定化して使用することもできる。
【0043】
本発明のミスマッチ塩基認識分子は低分子有機化合物であり、通常の有機合成法により適宜製造することができる。例えば、前記した1,8−ナフチリジン誘導体は、2−アミノ−1,8−ナフチリジン又は2−アミノ−7−メチル−1,8−ナフチリジンをN−保護−4−アミノ−酪酸の反応性誘導体、例えば酸塩化物を反応させて、2位のアミノ基をアシル化した後、アミノ基を保護基を脱保護して製造することができる。この際の保護基としては、塩酸塩やアシル基やアルコキシカルボニル基などのペプチド合成において使用されるアミノ保護基を使用することができる。
このようにして得られた塩基認識部位を、両末端にカルボキシル基又はその反応性誘導体基を有するリンカー用の化合物と反応させることにより目的のミスマッチ塩基認識分子を得ることができる。この際に、リンカー用化合物の分子中に窒素原子などの反応性の基が存在している場合には、前記した保護基などで適宜保護して使用することができる。
【0044】
本発明のミスマッチ塩基認識分子は、これをミスマッチの塩基の対の検出するための試薬、ミスマッチの塩基対を安定化させるための試薬、又は検出剤として使用することができ、また、適当な担体、例えば測定用担体と組み合わせることによりミスマッチの塩基の対を検出するための組成物とすることができる。また、正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させるための塩基対生成剤として使用することもできる。ここに、「擬似的な塩基対」というのは、天然に存在する塩基の対とは異なる塩基の対であるという意味であり、塩基対の強度を意味するものではない。なお、本明細書において使用される「正常な塩基対」とは天然に存在する塩基の対であって、G−C、A−T、又はA−Uの塩基対をいう。
本発明は、さらに前記した本発明のミスマッチ塩基認識分子、及び検出、同定用の資材、例えば化学発光や蛍光のための試薬や緩衝液などの資材からなる、正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させ、当該擬似的な塩基対の形成を測定することからなる正常な塩基対を形成することができない塩基の対を検出、同定するためのキットを提供するものである。
さらに、本発明は、本発明のミスマッチ塩基認識分子又は標識化若しくは固定化された本発明のミスマッチ塩基認識分子を使用して、DNA中のミスマッチしている塩基の対を検出、同定又は定量するための方法を提供するものである。
【0045】
本発明のミスマッチ認識分子の塩基認識部位を用いることにより、例えばクロスハイブリダイゼーション法において、調べようとしている遺伝子又はその断片と正常な遺伝子又はその断片における1個又は2個以上のミスマッチの塩基の対(例えば、遺伝子における一塩基変異(SNP)など)を簡便に、その有無及びミスマッチにおけるミスマッチ塩基の種類を判定することができる。例えば、式(III)に示される本発明のミスマッチ認識分子を用いて、調べようとする遺伝子の断片、例えば10〜100塩基、好ましくは10〜50塩基、10〜30塩基程度の断片とし、これに対応する正常な塩基配列を有する遺伝子の断片を用意し、正常な遺伝子の断片と調べようとする遺伝子の断片を、式(III)に示される本発明のミスマッチ認識分子の存在下及び非存在下のそれぞれにおいてハイブリダイズさせて、それらの融解温度(Tm)を測定することによりミスマッチの有無(この例ではSNPなどの有無)や、ミスマッチの塩基の種類を判定することができることになる。この場合に一般式(I)におけるA構造の部分は特定の塩基、例えばグアニン(G)と対を形成することになることから、この例の場合ではミスマッチは正常な塩基配列を有する遺伝子の断片のグアニン(G)塩基の箇所で起きていることも判明することになる。
【0046】
また、本発明のミスマッチ認識分子は、塩基認識部位(一般式(I)におけるA構造の部分)がミスマッチの特定の塩基と安定な対を形成し、当該塩基の近隣に存在する塩基対にスタックされることによりミスマッチの塩基の対が安定化されたミスマッチ塩基対を含有するDNAを提供するものである。
本発明のこのDNAは、ミスマッチの塩基の対が本発明のミスマッチ認識分子の塩基認識部位と水素結合により塩基対と同様な「対」(擬似的な塩基対)を形成し、かつミスマッチの塩基と「対」を形成している本発明のミスマッチ認識分子の塩基認識部位が近傍、好ましくは隣接の塩基対を形成している塩基にサンドイッチ状に挟まれてスタックされている安定なDNAを提供するものである。
【0047】
本発明のミスマッチ認識分子を用いることにより、従来の技術では達成できないミスマッチの塩基の対を高感度でかつ簡便に検出、同定又は定量することが出来、ミスマッチの塩基の対に特異的でかつ安定なDNAを形成することから、DNA損傷に伴う各種疾患の治療、予防又は診断に応用することが可能である。
また、本発明のDNAは、ミスマッチの塩基の対を有した状態で比較的安定に存在することができることから、ミスマッチの塩基の対を含有するDNAの安定化や、ミスマッチの発生原因やミスマッチの修復機構の解明などの研究材料として利用することも可能である。
【0048】
前記した新たな対(本発明のミスマッチ認識分子とミスマッチの塩基との対)を測定するための手段としては、融解温度(Tm)を指標とすることができるが、これに限定されるものではなく、例えば化学発光や蛍光、放射性同位体などの標識化によっても行うことができる。本発明のミスマッチ認識分子は低分子有機化合物であり、新たな対を形成した場合にはこの分子が核酸中に取り込まれるので、未反応の本発明のミスマッチ認識分子と核酸類の両者を比較的簡便に分離することができる。
また、前記したように本発明のミスマッチ認識分子を担体に固定化して使用することもできる。例えば、本発明の各種のミスマッチに特異的なミスマッチ認識分子をタイタープレートなどのプレートに固定化し、これに前記の2本鎖の核酸、好ましくは標識化された核酸を加え、数分間インキュベートした後、核酸類を除去すると本発明のミスマッチ認識分子と特異的に反応した核酸は固定化された本発明のミスマッチ認識分子にトラップされ、標識により検出、同定することができることになる。
【0049】
また、本発明のミスマッチ認識分子を表面プラズモン共鳴(SPR)の検出用チップの金属薄膜上に固定化することも可能である。このSPRによる場合には、前記の2本鎖の核酸を含有する試料液を検出用チップの表面に流すだけで、ミスマッチの有無を特異的に検出することが可能となる。
さらに、他の多くの検出手段に本発明のミスマッチ認識分子を応用することも可能であり、本発明はこれらの特定の検出手段に限定されるものではない。
【0050】
【実施例】
次に、具体的な試験例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
実施例1(式(III)の化合物の合成)
次式に示す化学反応に従って標記の化合物を合成した。
【0051】
【化14】
【0052】
(DMFはジメチルホルムアミドを示し、Etはエチル基を示し、Acはアセチル基を示す。)
(1)N−t−ブトキシカルボニルイミノ−3,3’−ビス(ペンタフルオロフェニルプロピオネート)(N−(tert−Butoxycarbonyl)imino−3,3’−bis(pentafluorophenyl propionate) )(1.5 g, 2.53mmol)のDMF(5 mL)溶液に2−アミノ−7−メチル−1,8−ナフチリジン(180 mg, 1.14 mmol) とジイソプロピルエチルアミン(163 mg, 1.26 mmol)を加え、室温で15時間撹拌した。溶媒を留去した後、残差をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、モノナフチリジン置換体(1.29 g, 90%)を得た:
1H NMR(CDCl3,400MHz) δ:
9.01 (br, 1 H), 8.44 (d, 1 H, J = 8.8 Hz),
8.12 (d, 1 H, J = 8.8 Hz), 7.99 (d, 1 H, J = 8.0 Hz),
7.26 (d, 1 H, J = 8.0 Hz), 3.66 (m, 4 H), 2.90 (m, 2 H),
2.74 (m, 2 H), 2.73 (s, 3 H), 1.42 (s, 9 H);
FABMS(NBA)、m/e : 569[(M+H)+, ],
HRMS :
計算値 C26H26O5N4F5 [(M+H)+] 569.1821,
実測値 569.1827
【0053】
(2)前記(1)で得たノナフチリジン置換体(300 mg, 0.53 mmol) のDMA(2 mL)溶液に7−アミノメチル−(2H)ヒドロ−8−アザキノリン−2−オン(7−(aminomethyl)hydro−8−azaquinolin−2−one)(93 mg, 0.53 mmol)とジイソプロピルエチルアミン(77 mg, 0.6 mmol)を加え、室温で15時間撹拌した。溶媒を留去した後、残差をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、ナフチリジン−ナフチリドン−N−Boc(t−ブトキシカルボニル基)保護体(227 mg,
77%) を得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz) δ:
11.29 (br, 1 H), 9.08 (br, 1H), 8.38 (d, 1 H, J = 8.8 Hz),
8.06 (d, 1 H, J = 8.0 Hz), 7.95 (d, 1 H, J = 8.0 Hz),
7.81 (d, 1 H, J = 8.0 Hz), 7.64 (d, 1 H, J = 9.6 Hz),
7.27 (d, 1 H, J = 8.0 Hz), 7.22 (d, 1 H, J = 8.0 Hz),
6.64 (d, 1 H, J = 9.6 Hz), 4.63 (d, 2 H, J = 6.0 Hz),
3.58 (t, 2 H, J = 6.8 Hz), 3.57 (t, 2 H, J = 6.8 Hz),
2.71 (t, 2H, J = 6.8 Hz), 2.70 (s, 1 H),
2.54 (t, 2 H, J = 6.8 Hz), 1.36 (s, 9 H) ;
FABMS (NBA),m/e: 560 [(M+H)+];
HRMS ;
計算値 C29H34O5N7 [(M+H)+] 560.2621,
実測値 560.2618
【0054】
(3)前記(2)で得たBoc保護体 (62 mg, 0.11 mmol)のCHCl3(3mL)溶液に、4MHCl(2mL)の酢酸エチル溶液を加え、室温で30分撹拌した。溶媒を留去目的物(収率定量的)を得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz) δ:
11.45 (br, 1 H), 8.67 (t, 1 H, J = 5.6 Hz),
8.31 (d, 1 H, J = 8.8 Hz), 7.98 (d, 1 H, J = 8.8 Hz),
7.88 (d, 1 H, J = 8.0 Hz), 7.65 (d, 1 H, J = 7.6 Hz),
7.53 (d, 1 H, J = 9.6 Hz), 7.15 (d, 1 H, J = 7.6 Hz),
7.14 (t, 1 H, J = 8.0 Hz), 6.58 (d, 1 H, J = 9.6 Hz),
4.65 (d, 2 H, J = 5.6 Hz), 3.08 (t, 2 H, J = 6.0 Hz),
3.06 (t, 2 H, J = 6.0 Hz), 2.65 (t, 2 H, J = 6.0 Hz),
2.58 (t, 2 H, J = 6.0 Hz), 2.57 (s, 3 H).
【0055】
実施例2 (ミスマッチDNAの融解温度(Tm)の測定)
次の(1)〜(3)の3種の11塩基からなるヌクレオチドオリゴマーの各々100μMを、100mMのNaCl及び式(III)の化合物200μMを含む10mMカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に添加して、実施例1で製造した一般式(III)のミスマッチ認識分子の存在下及び非存在下における融解温度(Tm)をそれぞれ測定した。
オリゴマー(1)
*
5’−CTAACGGAATG−3’
3’−GATTGACTTAC−5’
オリゴマー(2)
*
5’−CTAACGGAATG−3’
3’−GATTGGCTTAC−5’
オリゴマー(3)
5’−CTAACGGAATG−3’
3’−GATTGCCTTAC−5’
オリゴマー(3)は正常な塩基対を有するものであり、オリゴマー(1)及び(2)は前記の塩基配列の上の*印を示した部分においてミスマッチが生じているものである。
結果を表1に示す。
【0056】
実施例3 (ミスマッチDNAの融解温度(Tm)の測定)
次の(4)の11塩基からなるヌクレオチドオリゴマーの各々100μMを、100mMのNaCl及び式(III)の化合物200μMを含む10mMカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に添加して、実施例1で製造した一般式(III)(化合物1)及び前述した化合物2〜7のミスマッチ認識分子の存在下及び非存在下における融解温度(Tm)をそれぞれ測定した。
オリゴマー(4)
*
5’−CTAACAGAATG−3’
3’−GATTGACTTAC−5’
(*印はAAミスマッチを示す。)
結果を表2に示す。
【0057】
実施例4 (ミスマッチDNAの融解温度(Tm)の測定)
次の一般式で示される11塩基からなるヌクレオチドオリゴマーの各々100μMを、100mMのNaCl及び式(III)の化合物200μMを含む10mMカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に添加して、実施例1で製造した一般式(III)(化合物1)のミスマッチ認識分子の存在下及び非存在下における融解温度(Tm)をそれぞれ測定した。
オリゴマー
*
5’−CTAAXAYAATG−3’
3’−GATTZAWTTAC−5’
(*印はAAミスマッチを示す。)
結果を表3に示す。
【0058】
実施例5 (DNAとミスマッチ認識分子の複合体のスペクトル解析)
一般式(III)で示される本発明のミスマッチ認識分子と、AAミスマッチを有するDNAのオリゴマー(4)を用いて、CDスペクトル、ジョブプロット(Job plot)及びESI質量分析スペクトルによるスペクトル解析を行った。結果をそれぞれ図1〜3に示す。
図1は、CDスペクトルの結果を示す。図1の(a)は化合物1の存在下のCDスペクトルを示し、(b)は化合物1の非存在下のCDスペクトルを示す。測定は100mMのNaClを含有する10mMのカコジル酸ナトリウム(pH=7.0)緩衝液中で25℃で行った。DNAの濃度は100μMであり、化合物1は20μMである。
図2は、100mMのNaClを含有する10mMのカコジル酸ナトリウム(pH=7.0)緩衝液中での化合物1のジョブプロット(Job plot)の結果を示す。化合物1とDNAの濃度の合計が常に一定(5μM)になるように保った。この結果、クロスオーバーポイントが0.7となり、化合物1とDNAの比は1:2であることがわかった。
図3は、ESI質量分析のスペクトルを示す。図3の上段は、化合物1の非存在下のものであり、図3の下段は化合物1の存在下の場合である。測定は100mMの酢酸アンモニウムを含有する50%メタノールと水の1:1混合溶液を用いて行った。DNAの濃度は20μM(図3上段)であり、当該溶液に120μMの化合物1を添加した(図3の下段)。
DNAオリゴマー(4)と化合物1の計算値を次に示す。
これらのスペクトルの結果から、AAミスマッチのDNAのオリゴマー(4)1分子に対して化合物1が2分子の1:2に複合体を形成していることがわかった。
【0059】
【発明の効果】
本発明の一般式(I)で示されるミスマッチ認識分子を用いることにより、当該ミスマッチ認識分子の一方の側(一般式(I)のA構造の部分)において特定のミスマッチ塩基を認識し、他方の側(一般式(I)のX構造の部分)においてミスマッチのいずれの種類の塩基とも塩基の種類に応じて結合することができることから、融解温度(Tm)を測定することによりミスマッチの有無及びミスマッチの塩基種類を簡便な手段により、迅速に、且つ確実に判定することができる。
特に、本発明においては、AAミスマッチに対する高感度のミスマッチ認識分子を提供する。
本発明のミスマッチ認識分子を使用することにより、遺伝子の断片におけるSNPの存在の有無や種類の判定を迅速にかつ大量に処理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一般式(III)のミスマッチ認識分子の存在下(a)及び非存在下(b)におけるDNAのオリゴマー(4)のCDスペクトルの結果を示す。図1の縦軸は回転角(度・cm2/dmol)を示し、横軸は波長(nm)を示す。
【図2】図2は、100mMのNaClを含有する10mMのカコジル酸ナトリウム(pH=7.0)緩衝液中での化合物1とDNAのオリゴマー(4)のジョブプロット(Job plot)の結果を示す。図2の縦軸は角度(度)を示し、横軸は化合物1のモル分率を示す。
【図3】図3は、本発明の一般式(III)のミスマッチ認識分子の存在下(下段)及び非存在下(上段)におけるDNAのオリゴマー(4)のESI質量分析のスペクトルを示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、正常な塩基対を形成することができない塩基の対において、当該正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させ、当該擬似的な塩基対の状態を測定することからなる正常な塩基対を形成することができない塩基の対を検出、同定する方法、そのための試薬、それを含有するキット、その化合物、及びその方法を用いたDNA又はRNAの塩基配列の異常、好ましくはA−Aミスマッチを検出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
DNAやRNAなどの核酸がハイブリダイズして2本鎖となる場合には、対をなす塩基が決まっている。例えば、グアニン(G)にはシトシン(C)、アデニン(A)にはチミン(T)という具合になっている。そして、通常は全ての塩基がこのような対を形成してハイブリダイズしているのであるが、ときとして塩基配列の中の一部にこのような対を形成することができない場合がある。
例えば、あるDNAと他のDNAをハイブリダイズし得る条件下においた場合に、大部分の塩基はこのような対を形成することができるが、1個又は数個の一部の塩基はこのような対を形成することができない場合がある。このような通常の塩基対を形成することができない塩基対のことを、以下ではミスマッチという。
【0003】
一方、最近1個又は2個以上の塩基が異なることに起因する各種の遺伝病についての研究が行われてきている。例えば、遺伝情報の個人差である遺伝子一塩基多形(SNPs(Single Nucleotide Polymorphism))は、罹病しやすさや、薬理作用の個人差の原因となる。現在、各個人に最適化された医療の実現へ向け、SNPsの研究がポストゲノムの重要な位置を占めており、効率的なSNPsの検出法の開発が期待されている。SNPsを含むDNAは、変異を含まない相補的なDNAと混合しアニールさせるとミスマッチ塩基対を形成するので、ミスマッチ塩基対に選択的に結合する低分子リガンドを開発すれば、SNPsの効率的な検出が可能になると考えられる。
現在、このようなミスマッチを検出する方法は、2本鎖DNAのハイブリダイゼーション効率を比較する手法が一般的である。しかし、この方法を用いるためにはミスマッチを含むDNAの塩基配列をあらかじめ知っておかなければならないために多大な労力が必要となり、多くの検体を処理する方法としては不適当である。また、MutS等のDNAの修復蛋白が遺伝子損傷箇所に選択的に結合することを利用する手法もあるが、タンパクを用いる場合、低分子リガンドを用いる方法に比べて熱安定性や活性な構造(フォールディング)を維持する事が必要となり使用条件の制約が多く、また操作も煩雑となり効率的にミスマッチを検出ことは難しい。
【0004】
このように、ハイブリダイズしたDNAなどにおける一部のミスマッチを検出する方法は大変難しく、またその感度も不十分なものであり、これを簡便に且つ高感度で検出できる方法の確立が求められている。
ところで、本発明者らは、2本鎖DNA中に生成する不対塩基(バルジ塩基)を持つDNA(バルジDNA)に特異的に結合し、安定化する分子であるバルジDNA認識分子を開発してきた(特許文献1参照)。このバルジ認識分子は、不対塩基と水素結合をするだけでなく、バルジ塩基の存在により生じてくる空間に、芳香環とバルジ近傍の塩基とのスタッキング相互作用を利用してインターカーレーションし、安定化されているものである。
そして、本発明者らは、このような周辺の塩基の存在によるスタッキング効果を利用した不対塩基に対する作用についてさらに研究を行ってきたところ、塩基対のミスマッチが生じている箇所においても、塩基と対を形成し得る分子種を2個有する化合物がこのようなスタッキング効果により比較的安定に取り込まれる得ることを見出し、具体的にはビス(2−メチルナフチリジン)アミド誘導体がGGミスマッチやGAミスマッチを検出できることを示してきた(特許文献2参照)。しかし、このものは特定のミスマッチには極めて高感度で安定に取り込まれる得ることができるが、他のミスマッチに対しては取り込みが不十分であり、即ち特定のミスマッチに対する特異性が大きすぎて必ずしも実用的ではなかった。例えば、GGミスマッチに対しては高い特異性を有するが、GAミスマッチやGTミスマッチに対しては必ずしも十分な取り込みがなされなかった。
【0005】
遺伝子の変異を調べる方法として、変異の有無を検査したい遺伝子とその変異の無い野生型遺伝子の50塩基程度のオリゴマーDNAを混合、加熱、冷却により二つの遺伝子をクロスハイブリダイゼーションする方法がある。検査する遺伝子に変異がある場合には遺伝子の融解温度や融解温度差に異常が見出される。この操作は比較的簡便ではあるが、変異があることが分かるだけであり、どの位置にどのような変異が生じているのかということを知ることはできない。
前記してきた本発明者が報告してきた方法によれば(特許文献2参照)、このクロスハイブリダイゼーションする方法により特定のミスマッチの存在を知ることはできるが、このミスマッチ認識分子は特異性が高く、例えば、グアニン塩基に対するミスマッチを調べる場合においても、GGミスマッチ用のもの、GAミスマッチ用のもの、GTミスマッチ用のものと複数のミスマッチ認識分子を用意しなければならなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−89478号
【特許文献2】
特開2001−149096号
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このようなハイブリダイゼーションの方法において、特定の塩基に対する塩基対のミスマッチをより簡便でしかも高感度で検出しうる方法、とりわけ、A−Aミスマッチを簡便でしかも高感度で検出しうる方法を提供するものである。
また、本発明は、2本鎖DNA鎖中に存在するミスマッチを高感度でしかも簡便に検出しうる方法及びそのための検出キットを提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ミスマッチ認識分子について更に検討を進めてきた結果、特定のミスマッチに特異的に取り込まれるミスマッチ認識分子ではなく、ある塩基に対する全てのミスマッチ、例えばグアニン塩基についてGGミスマッチのみではなく、GGミスマッチ、GAミスマッチ、GTミスマッチ及びAAミスマッチのいずれのミスマッチに対しても取り込みがなされ、かつその取り込みの程度を検出できるミスマッチ認識分子を見出した。
本発明は、正常な塩基対を形成することができない塩基の対において、検体となる1本鎖のDNA又はRNAと、それに対応する正常な塩基配列を有するDNA又はRNAとをハイブリダイズさせ、次いで当該ハイブリダイズしたDNA又はRNAにおける正常な塩基対を形成することができない塩基の対を、次の一般式(I)、
A−L−X (I)
(式中、Aは正常な塩基対を形成することができない塩基の対の片方の塩基と対を形成し得る化学構造部分、Xは前記Aの構造部分と対を形成する塩基と正常な塩基対を形成すべき塩基とは異なる塩基と対を形成し得る化学構造部分、Lは化学構造部分A及びXを結合するリンカー構造を示す。)
で表される、その各々の塩基と対を形成し得る化学構造部分A及び化学構造部分X、並びに当該化学構造部分A及びXを結合するリンカー部分Lを有する化合物を用いて、当該正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させ、当該擬似的な塩基対の形成を測定することからなる正常な塩基対を形成することができない塩基の対を検出、同定する方法に関する。
【0009】
また、本発明は、前記の正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させ、当該擬似的な塩基対の形成を測定することからなる正常な塩基対を形成することができない塩基の対を検出、同定する方法において、正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させるための次の一般式(I)、
A−L−X (I)
(式中、Aは正常な塩基対を形成することができない塩基の対の片方の塩基と対を形成し得る化学構造部分、Xは前記Aの構造部分と対を形成する塩基と正常な塩基対を形成すべき塩基とは異なる塩基と対を形成し得る化学構造部分、Lは化学構造部分A及びXを結合するリンカー構造を示す。)
で表される化合物からなる、正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させるための試薬に関する。
本発明は、前記した本発明の試薬、及び検出、同定用の資材からなる正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させ、当該擬似的な塩基対の形成を測定することからなる正常な塩基対を形成することができない塩基の対を検出、同定するためのキットに関する。
【0010】
また、本発明は、次の一般式(II)、
【0011】
【化4】
【0012】
(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜15のアルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基であって当該アルコキシ基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいアルコキシ基、又は、炭素数1〜15のモノ若しくはジアルキルアミノ基であって当該アルキルアミノ基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいモノ若しくはジアルキルアミノ基を示し、
R2は、炭素数1〜20のアルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子、窒素原子又はカルボニル基で置換されてもよいアルキル基を示す。
R3は、炭素数1〜10のアルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子、窒素原子又はカルボニル基で置換されても良いアルキル基を示す。)で表される化合物又は当該化合物がプレートや機器分析用の検出装置などに固定化され得る化学構造に修飾された固定化物に関する。また、本発明は、前記一般式(II)で表される化合物からなるミスマッチの塩基対、好ましくはAAミスマッチを検出、同定するための試薬、ミスマッチの塩基対、好ましくはAAミスマッチの塩基対を安定化させるための試薬、及びAAミスマッチの塩基対に擬似的に塩基対を形成させるための塩基対生成剤としての試薬、並びにこれらの試薬を用いたミスマッチの塩基対、好ましくはAAミスマッチを検出、同定する方法に関する。
【0013】
さらに、本発明は、次の一般式(I)、
A−L−X (I)
(式中、Aは正常な塩基対を形成することができない塩基の対の片方の塩基と対を形成し得る化学構造部分、Xは前記Aの構造部分と対を形成する塩基と正常な塩基対を形成すべき塩基とは異なる塩基と対を形成し得る化学構造部分、Lは化学構造部分A及びXを結合するリンカー構造を示す。)
で表される塩基対のミスマッチ認識分子であって、特定の塩基と対を形成し得る化学構造部分A及び前記Aの構造部分と対を形成する塩基と正常な塩基対を形成すべき塩基とは異なる塩基と対を形成し得る化学構造部分X、並びに当該化学構造部分A及びXを結合するリンカー部分Lを有することを特徴とする化合物を用いて、当該正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させる方法に関する。
なお、以下の説明においては、前記した「正常な塩基対を形成することができない塩基の対の片方の塩基と対を形成し得る化学構造部分(一般式(I)におけるA及びXの部分)」のことを単に「塩基認識部位」ということもある。
【0014】
本発明者らは、2本鎖DNA中に生成する不対塩基(バルジ塩基)を持つDNA(バルジDNA)に特異的に結合し、安定化する分子であるバルジDNA認識分子を開発してきた(特開2001−89478号)。このバルジ認識分子は、バルジ塩基の存在により生じてくる空間に、芳香環とバルジ近傍の塩基とのスタッキング相互作用を利用してインターカーレーションし、安定化されているものであるが、本発明者らはこのようなバルジ認識分子を2分子、リンカーのような結合鎖で結合させることにより各々のバルジ認識分子が、塩基対のミスマッチ部分においてバルジ塩基と同様な塩基対を形成し、しかもこれらのバルジ認識分子の両者が2本鎖を形成しているDNAやRNAの鎖の中に比較的安定に取り込まれることを見出してきた(特開2001−149096号)。このような比較的大きな分子種がDNAやRNAの鎖の中に比較的安定に取り込まれることは驚くべきことであり、かつこのような特性を利用することにより、ハイブリダイズしている核酸の中で塩基対がミスマッチを生じている箇所を簡便に特定し得ることを見出し、これをミスマッチ認識分子として示してきた。
【0015】
しかし、このものは塩基に対する特異性が強く、特定のミスマッチにのみ強く取り込まれるものであった。そこで、本発明者らは塩基に対する結合が、正常な塩基対を形成するよりは弱いが、同定や検出のためには十分な対を形成し得る分子種の開発を行ってきたところ、このような分子種を製造することができることを見出した。例えば、次式(III)で示される、
【0016】
【化5】
【0017】
分子種の右側部分(一般式(I)におけるX部分に相当する部分)のナフチリドンはいずれの塩基とも比較的弱く結合し、いずれのミスマッチ塩基に対しても適度の結合能により取り込まれことを見出した。
前記式(III)の左側部分(一般式(I)におけるA部分に相当する部分)は、以前に報告してきたグアニンと水素結合を形成し、かつ周囲の塩基とスタッキング効果により安定化され得る2−置換−1,8−ナフチリジン構造であり、この構造がグアニン(G)と対を形成することは、既に報告してきたとおりである。
【0018】
核酸の2本鎖中においてグアニンに対するミスマッチが存在している場合において、前記式(III)のミスマッチ認識分子が各々のミスマッチに対する取り込みついて検討した。
この検討のために、次の3種のオリゴマーを用いた。
オリゴマー(1)
*
5’−CTAACGGAATG−3’
3’−GATTGACTTAC−5’
オリゴマー(2)
*
5’−CTAACGGAATG−3’
3’−GATTGGCTTAC−5’
オリゴマー(3)
5’−CTAACGGAATG−3’
3’−GATTGCCTTAC−5’
オリゴマー(3)は正常な塩基対を有するものであり、オリゴマー(1)及び(2)は前記の塩基配列の上の*印を示した部分においてミスマッチが生じているものである。
【0019】
これらのオリゴマー(1)及び(2)、並びにオリゴマー(3)のそれぞれについて、前記式(III)のミスマッチ認識分子の存在下、又は非存在下における二本鎖DNAの融解温度(Tm)を調べた。
その結果を次の表1に示す。
【0020】
表1は左から、試験をしたオリゴマーの塩基配列、式(III)のミスマッチ認識分子の非存在下での融解温度(Tm)(℃)、式(III)のミスマッチ認識分子の存在下での融解温度(Tm)(℃)、各融解温度(Tm)(℃)の差(ΔTm)(℃)を示している。ここに、融解温度(Tm)の差(ΔTm)は、
ΔTm=(式(III)存在下でのTm)−(式(III)非存在下でのTm)
から算出されたものである。
この結果からも明らかなように、ミスマッチが存在していた場合にはΔTmの値が大きく相違することになり、ミスマッチの存在を確認することができる。
そして、ミスマッチの種類によりΔTmの値が相違してくるだけでなく、式(III)のミスマッチ認識分子の非存在下での融解温度(Tm)も相違している。さらに本発明で重要なことは、式(III)のミスマッチ認識分子が存在した場合における融解温度(Tm)の相違である。例えば、オリゴマー(1)の場合にはこのTmの値は40.4℃であり、この値は正常なオリゴマー(3)の値40.5℃とほぼ同じ値になっているのに対して、オリゴマー(2)のこのTmの値は36.1℃極めて低い温度になっている。これは式(III)の分子種における右側部分(一般式(I)におけるX部分に相当する部分)に対する各塩基との結合能が反映された結果である。即ち、式(III)の分子種の場合にはアデニン(A)塩基とはほぼ正常な対に近い結合能を有するが(オリゴマー(1)の場合)、グアニン(G)塩基とは結合はするが比較的弱い結合能しか有さない(オリゴマー(2)の場合)結果が反映されたものであり、このことにより、本発明のミスマッチ認識分子を用いることにより、調べようとする遺伝子にミスマッチ(例えば、SNPなど)が存在していることが判明するだけではなく、当該ミスマッチにおける相手側の塩基を知ることが可能となることがわかった。
【0021】
さらに、次のオリゴマー(4)
オリゴマー(4)
*
5’−CTAACAGAATG−3’
3’−GATTGACTTAC−5’
(*印はミスマッチ部分を示す。)
を用いて、次の化合物1〜化合物7についてΔTm/℃を検討した。
【0022】
化合物1
【化6】
【0023】
化合物2
【化7】
【0024】
化合物3
【化8】
【0025】
化合物4
【化9】
【0026】
化合物5
【化10】
【0027】
化合物6
【化11】
【0028】
化合物7
【化12】
【0029】
結果を次の表2に示す。
【0030】
Tmの測定は、100mMのNaClを含有する10mMのカコジル酸ナトリウム(pH=7.0)緩衝液中で行った。実験番号1は化合物の非存在下で測定した結果である。5μMのDNAオリゴマー(4)を用いて、化合物は各々200μM用いた。ΔTm/℃は、化合物1〜7が存在したときのTmと化合物の非存在下でのTmの差であり、次の式で示される。
ΔTm/℃ = (化合物1〜7が存在したときのTm)− (化合物1〜7の非存在下でのTm)
この結果、化合物1、即ち一般式(III)で表される化合物は極めて強くAAミスマッチを安定化することができることが示された。また、化合物2〜4及び化合物7も安定化作用は弱いが、AAミスマッチを安定化させていることわかる。化合物5及び化合物6には、これ単独ではAAミスマッチを安定化する作用は見られないが、これらを組み合わせて使用することにより安定化作用がみられることがあることがわかる。
【0031】
次に一般式(III)で表される化合物(前記化合物1)を用いて、AAミスマッチの両側の塩基の種類の影響を検討した。DNAとして次の一般式で表されるオリゴマーを用いた。
オリゴマー
*
5’−CTAAXAYAATG−3’
3’−GATTZAWTTAC−5’
(*印はミスマッチ部分を示す。)
【0032】
結果を次の表3に示す。
【0033】
Tmの測定は、100mMのNaClを含有する10mMのカコジル酸ナトリウム(pH=7.0)緩衝液中で行った。5μMのDNAオリゴマーを用いて、化合物は各々200μM用いた。ΔTm/℃は、化合物1が存在したときのTmと化合物の非存在下でのTmの差であり、次の式で示される。
ΔTm/℃ = (化合物1が存在したときのTm)− (化合物1の非存在下でのTm)
この結果、化合物1、即ち一般式(III)で表される化合物のAAミスマッチに対する安定化作用は、隣接する塩基の種類に依存していることがわかる。AAミスマッチの隣接する3’側にGが存在していると安定化効果は強いが、3’側にGが存在しないと安定化効果は小さくなることがわかる。
【0034】
AAミスマッチを安定化している化合物1の状態を検討するために、DNAとして前記したオリゴマー(4)を用いて各種のスペクトル解析を行った。結果を図1〜3に示す。
図1は、CDスペクトルの結果を示す。図1の縦軸は回転角(度・cm2/dmol)を示し、横軸は波長(nm)を示す。(a)は化合物1の存在下のCDスペクトルを示し、(b)は化合物1の非存在下のCDスペクトルを示す。測定は100mMのNaClを含有する10mMのカコジル酸ナトリウム(pH=7.0)緩衝液中で25℃で行った。DNAの濃度は100μMであり、化合物1は20μMである。
図2は、100mMのNaClを含有する10mMのカコジル酸ナトリウム(pH=7.0)緩衝液中での化合物1のジョブプロット(Job plot)の結果を示す。図2の縦軸は角度(度)を示し、横軸は化合物1のモル分率を示す。化合物1とDNAの濃度の合計が常に一定(5μM)になるように保った。この結果、クロスオーバーポイントが0.7となり、化合物1とDNAの比は1:2であることがわかった。
図3は、ESI質量分析のスペクトルを示す。図3の上段は、化合物1の非存在下のものであり、図3の下段は化合物1の存在下の場合である。測定は100mMの酢酸アンモニウムを含有する50%メタノールと水の1:1混合溶液を用いて行った。DNAの濃度は20μM(図3上段)であり、当該溶液に120μMの化合物1を添加した(図3の下段)。
DNAオリゴマー(4)と化合物1の計算値を次に示す。
これらのスペクトルの結果から、AAミスマッチのDNAのオリゴマー(4)1分子に対して化合物1が2分子の1:2に複合体を形成していることがわかった。
【0035】
本発明のミスマッチ認識分子の基本的なことについては前記した特開2001−149096号に記載されているが、本発明のミスマッチ認識分子は、一方の塩基を認識する部分を塩基の種類に対して非特異的にし、かつ正常な塩基対に対しては影響を与えない分子種であることを特徴とするものである。
したがって、本発明のミスマッチ認識分子の塩基認識部位(一般式(I)におけるA及びXの化学構造部分)において、A部分は塩基の種類に対して特異性が強い構造を有する部分であり、X部分は塩基の種類に対して比較的非特異的な結合ができることを特徴とするものである。
特に、本発明では、AAミスマッチ、好ましくは3’側にGを有するAAミスマッチを認識できることを特徴とするものである。
【0036】
このように、本発明は、2個の異なる塩基認識部位を適当な長さでかつ適当な自由度を有するリンカーで結合させた化合物が、2本鎖の核酸における塩基対のミスマッチ部分において、一方は特異的にかつ安定に対を形成し、他方は比較的に非特異的に結合するという特徴により、簡便な方法でミスマッチ、特にAAミスマッチの存在を判定することができるだけでなく、ミスマッチの種類も判定することができるという基本的なミスマッチ判定法を提供するものであり、前記に例示したグアニン(G)に対するミスマッチやAAに対するミスマッチに限定されるものではない。
前記した例では、グアニン(G)に対するミスマッチを例に取り、グアニン塩基と安全な水素結合を形成する1,8−ナフチリジン誘導体を一方の塩基認識部位に用いたミスマッチ認識分子を示したが、ミスマッチの認識はグアニン(G)に対するミスマッチに限定されるものではない。AAミスマッチに対しても本発明の化合物が十分な安定化作用を有していることも本発明により実証されている。本発明のミスマッチ認識分子における塩基認識部位は、ミスマッチの塩基の片方を認識し当該塩基とワトソン−クリック(Watson−Crick)型の塩基対を形成することができ、周囲の塩基によるスタッキング効果を得られる分子種を選択することにより、例示したグアニンに限らず、各種の塩基と塩基対を形成し得ることができる構造を使用することができる。例えば、ミスマッチの塩基がシトシンの場合には、塩基認識部位として2−アミノナフチリジン−4−オン又はその誘導体などが、ミスマッチの塩基がアデニンの場合には、2−キノロン誘導体、例えば3−(2−アミノエチル)−2−キノロン又はその誘導体などが、また、ミスマッチの塩基がチミンの場合には、2−アミノナフチリジン−7−オン又はその誘導体などが用いられる。
【0037】
特定のミスマッチの塩基に特異的に認識される本発明のミスマッチ認識分子における塩基認識部位は、水素結合を形成するための水素結合部位と、近傍の塩基にスタッキングされるための平面構造を有している複素環式芳香族基を有するものが好ましい。
【0038】
また、本発明の一般式(I)で表される化合物におけるリンカー部Lとしては、2個の塩基認識部位を適当な長さで適当な自由度を与えるものであれ特に制限されるものではないが、例えば、炭素数1〜20、好ましくは5〜15、より好ましくは8〜12の直鎖状又は分枝状の飽和又は不飽和のアルキル基であって、当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子、窒素原子又はカルボニル基で置換されてもよいアルキル基が挙げられる。好ましいリンカーとしては、前記した式(III)の化合物のように両端がアミド結合の部分を有し、中央部に窒素原子を有するものが挙げられる。
このリンカー部分は、2個の塩基認識部位を結合させるだけでなく、このリンカー部分から担体に固定化するための枝を結合させることもできる。例えば、リンカー中央部付近の窒素原子の箇所からさらに末端に担体と結合するための官能基などを有するアルキレン基のような枝を延ばして、必要に応じて担体に固定化することもできる。
【0039】
本発明の一般式(I)における塩基認識部位A又はXとリンカー部Lとの結合は、炭素−炭素結合であってもよいが合成の簡便さから官能基による結合が好ましい。官能基による結合としては、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、リン酸による結合など種々のタイプのものを選択することができるが、アミド結合が好ましい。
本発明のミスマッチ塩基認識分子における、グアニン(G)に対するミスマッチやAAミスマッチに好ましい一般式(I)の化合物として、次の一般式(II)、
【0040】
【化13】
【0041】
(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜15のアルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基であって当該アルコキシ基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいアルコキシ基、又は、炭素数1〜15のモノ若しくはジアルキルアミノ基であって当該アルキルアミノ基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいモノ若しくはジアルキルアミノ基を示し、
R2は、炭素数1〜20のアルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子、窒素原子又はカルボニル基で置換されてもよいアルキル基を示す。
R3は、炭素数1〜10のアルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子、窒素原子又はカルボニル基で置換されても良いアルキル基を示す。)で表される化合物又はその固定化物が挙げられる。ここにおける「固定化物」とは、前記した化合物が担体に固定化されている状態のもの又は固定化され得るように前記した「枝」をのばした状態の化合物をいう。
本発明の一般式(II)における置換基R1としては、例えば、炭素数1〜15、好ましくは1〜10より好ましくは1〜7の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数1〜15、好ましくは1〜10より好ましくは1〜7の直鎖状又は分枝状のアルキル基からなるアルコキシ基、炭素数1〜15、好ましくは1〜10より好ましくは1〜7の直鎖状又は分枝状のアルキル基でモノ又はジ置換されているモノ若しくはジアルキルアミノ基などが挙げられる。これらのアルキル基、アルコキシ基又はモノ若しくはジアルキルアミノ基における1個又はそれ以上の炭素原子は、酸素原子又は窒素原子で置換されていてもよい。
また、R2及びR3におけるアルキル基は前記したアルキル基であって、一般式(II)に示されているように2価のアルキル基である。これらのアルキル基は、当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子、窒素原子又はカルボニル基(CO)で置換されてもよく、例えば、エステル基やアミド基を形成していてもよい。
【0042】
また、本発明のミスマッチ塩基認識分子はこれを単独で使用することもできるが、分子中の適当な位置に、例えばリンカー部分やリンカーから固定化のためなどのための延ばされた枝などに、放射性元素を導入したり、化学発光又は蛍光を発する分子種を導入するなどして、標識化して使用することもできる。なお、測定手段としての標識化は、検出対象のDNAやRNAなどの核酸部分の標識化によることもできる。
さらに、本発明のミスマッチ塩基認識分子の適当な位置においてポリスチレンなどの高分子材料と直接又はアルキレン基などを用いて結合させて、これを固定化して使用することもできる。
【0043】
本発明のミスマッチ塩基認識分子は低分子有機化合物であり、通常の有機合成法により適宜製造することができる。例えば、前記した1,8−ナフチリジン誘導体は、2−アミノ−1,8−ナフチリジン又は2−アミノ−7−メチル−1,8−ナフチリジンをN−保護−4−アミノ−酪酸の反応性誘導体、例えば酸塩化物を反応させて、2位のアミノ基をアシル化した後、アミノ基を保護基を脱保護して製造することができる。この際の保護基としては、塩酸塩やアシル基やアルコキシカルボニル基などのペプチド合成において使用されるアミノ保護基を使用することができる。
このようにして得られた塩基認識部位を、両末端にカルボキシル基又はその反応性誘導体基を有するリンカー用の化合物と反応させることにより目的のミスマッチ塩基認識分子を得ることができる。この際に、リンカー用化合物の分子中に窒素原子などの反応性の基が存在している場合には、前記した保護基などで適宜保護して使用することができる。
【0044】
本発明のミスマッチ塩基認識分子は、これをミスマッチの塩基の対の検出するための試薬、ミスマッチの塩基対を安定化させるための試薬、又は検出剤として使用することができ、また、適当な担体、例えば測定用担体と組み合わせることによりミスマッチの塩基の対を検出するための組成物とすることができる。また、正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させるための塩基対生成剤として使用することもできる。ここに、「擬似的な塩基対」というのは、天然に存在する塩基の対とは異なる塩基の対であるという意味であり、塩基対の強度を意味するものではない。なお、本明細書において使用される「正常な塩基対」とは天然に存在する塩基の対であって、G−C、A−T、又はA−Uの塩基対をいう。
本発明は、さらに前記した本発明のミスマッチ塩基認識分子、及び検出、同定用の資材、例えば化学発光や蛍光のための試薬や緩衝液などの資材からなる、正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させ、当該擬似的な塩基対の形成を測定することからなる正常な塩基対を形成することができない塩基の対を検出、同定するためのキットを提供するものである。
さらに、本発明は、本発明のミスマッチ塩基認識分子又は標識化若しくは固定化された本発明のミスマッチ塩基認識分子を使用して、DNA中のミスマッチしている塩基の対を検出、同定又は定量するための方法を提供するものである。
【0045】
本発明のミスマッチ認識分子の塩基認識部位を用いることにより、例えばクロスハイブリダイゼーション法において、調べようとしている遺伝子又はその断片と正常な遺伝子又はその断片における1個又は2個以上のミスマッチの塩基の対(例えば、遺伝子における一塩基変異(SNP)など)を簡便に、その有無及びミスマッチにおけるミスマッチ塩基の種類を判定することができる。例えば、式(III)に示される本発明のミスマッチ認識分子を用いて、調べようとする遺伝子の断片、例えば10〜100塩基、好ましくは10〜50塩基、10〜30塩基程度の断片とし、これに対応する正常な塩基配列を有する遺伝子の断片を用意し、正常な遺伝子の断片と調べようとする遺伝子の断片を、式(III)に示される本発明のミスマッチ認識分子の存在下及び非存在下のそれぞれにおいてハイブリダイズさせて、それらの融解温度(Tm)を測定することによりミスマッチの有無(この例ではSNPなどの有無)や、ミスマッチの塩基の種類を判定することができることになる。この場合に一般式(I)におけるA構造の部分は特定の塩基、例えばグアニン(G)と対を形成することになることから、この例の場合ではミスマッチは正常な塩基配列を有する遺伝子の断片のグアニン(G)塩基の箇所で起きていることも判明することになる。
【0046】
また、本発明のミスマッチ認識分子は、塩基認識部位(一般式(I)におけるA構造の部分)がミスマッチの特定の塩基と安定な対を形成し、当該塩基の近隣に存在する塩基対にスタックされることによりミスマッチの塩基の対が安定化されたミスマッチ塩基対を含有するDNAを提供するものである。
本発明のこのDNAは、ミスマッチの塩基の対が本発明のミスマッチ認識分子の塩基認識部位と水素結合により塩基対と同様な「対」(擬似的な塩基対)を形成し、かつミスマッチの塩基と「対」を形成している本発明のミスマッチ認識分子の塩基認識部位が近傍、好ましくは隣接の塩基対を形成している塩基にサンドイッチ状に挟まれてスタックされている安定なDNAを提供するものである。
【0047】
本発明のミスマッチ認識分子を用いることにより、従来の技術では達成できないミスマッチの塩基の対を高感度でかつ簡便に検出、同定又は定量することが出来、ミスマッチの塩基の対に特異的でかつ安定なDNAを形成することから、DNA損傷に伴う各種疾患の治療、予防又は診断に応用することが可能である。
また、本発明のDNAは、ミスマッチの塩基の対を有した状態で比較的安定に存在することができることから、ミスマッチの塩基の対を含有するDNAの安定化や、ミスマッチの発生原因やミスマッチの修復機構の解明などの研究材料として利用することも可能である。
【0048】
前記した新たな対(本発明のミスマッチ認識分子とミスマッチの塩基との対)を測定するための手段としては、融解温度(Tm)を指標とすることができるが、これに限定されるものではなく、例えば化学発光や蛍光、放射性同位体などの標識化によっても行うことができる。本発明のミスマッチ認識分子は低分子有機化合物であり、新たな対を形成した場合にはこの分子が核酸中に取り込まれるので、未反応の本発明のミスマッチ認識分子と核酸類の両者を比較的簡便に分離することができる。
また、前記したように本発明のミスマッチ認識分子を担体に固定化して使用することもできる。例えば、本発明の各種のミスマッチに特異的なミスマッチ認識分子をタイタープレートなどのプレートに固定化し、これに前記の2本鎖の核酸、好ましくは標識化された核酸を加え、数分間インキュベートした後、核酸類を除去すると本発明のミスマッチ認識分子と特異的に反応した核酸は固定化された本発明のミスマッチ認識分子にトラップされ、標識により検出、同定することができることになる。
【0049】
また、本発明のミスマッチ認識分子を表面プラズモン共鳴(SPR)の検出用チップの金属薄膜上に固定化することも可能である。このSPRによる場合には、前記の2本鎖の核酸を含有する試料液を検出用チップの表面に流すだけで、ミスマッチの有無を特異的に検出することが可能となる。
さらに、他の多くの検出手段に本発明のミスマッチ認識分子を応用することも可能であり、本発明はこれらの特定の検出手段に限定されるものではない。
【0050】
【実施例】
次に、具体的な試験例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
実施例1(式(III)の化合物の合成)
次式に示す化学反応に従って標記の化合物を合成した。
【0051】
【化14】
【0052】
(DMFはジメチルホルムアミドを示し、Etはエチル基を示し、Acはアセチル基を示す。)
(1)N−t−ブトキシカルボニルイミノ−3,3’−ビス(ペンタフルオロフェニルプロピオネート)(N−(tert−Butoxycarbonyl)imino−3,3’−bis(pentafluorophenyl propionate) )(1.5 g, 2.53mmol)のDMF(5 mL)溶液に2−アミノ−7−メチル−1,8−ナフチリジン(180 mg, 1.14 mmol) とジイソプロピルエチルアミン(163 mg, 1.26 mmol)を加え、室温で15時間撹拌した。溶媒を留去した後、残差をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、モノナフチリジン置換体(1.29 g, 90%)を得た:
1H NMR(CDCl3,400MHz) δ:
9.01 (br, 1 H), 8.44 (d, 1 H, J = 8.8 Hz),
8.12 (d, 1 H, J = 8.8 Hz), 7.99 (d, 1 H, J = 8.0 Hz),
7.26 (d, 1 H, J = 8.0 Hz), 3.66 (m, 4 H), 2.90 (m, 2 H),
2.74 (m, 2 H), 2.73 (s, 3 H), 1.42 (s, 9 H);
FABMS(NBA)、m/e : 569[(M+H)+, ],
HRMS :
計算値 C26H26O5N4F5 [(M+H)+] 569.1821,
実測値 569.1827
【0053】
(2)前記(1)で得たノナフチリジン置換体(300 mg, 0.53 mmol) のDMA(2 mL)溶液に7−アミノメチル−(2H)ヒドロ−8−アザキノリン−2−オン(7−(aminomethyl)hydro−8−azaquinolin−2−one)(93 mg, 0.53 mmol)とジイソプロピルエチルアミン(77 mg, 0.6 mmol)を加え、室温で15時間撹拌した。溶媒を留去した後、残差をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、ナフチリジン−ナフチリドン−N−Boc(t−ブトキシカルボニル基)保護体(227 mg,
77%) を得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz) δ:
11.29 (br, 1 H), 9.08 (br, 1H), 8.38 (d, 1 H, J = 8.8 Hz),
8.06 (d, 1 H, J = 8.0 Hz), 7.95 (d, 1 H, J = 8.0 Hz),
7.81 (d, 1 H, J = 8.0 Hz), 7.64 (d, 1 H, J = 9.6 Hz),
7.27 (d, 1 H, J = 8.0 Hz), 7.22 (d, 1 H, J = 8.0 Hz),
6.64 (d, 1 H, J = 9.6 Hz), 4.63 (d, 2 H, J = 6.0 Hz),
3.58 (t, 2 H, J = 6.8 Hz), 3.57 (t, 2 H, J = 6.8 Hz),
2.71 (t, 2H, J = 6.8 Hz), 2.70 (s, 1 H),
2.54 (t, 2 H, J = 6.8 Hz), 1.36 (s, 9 H) ;
FABMS (NBA),m/e: 560 [(M+H)+];
HRMS ;
計算値 C29H34O5N7 [(M+H)+] 560.2621,
実測値 560.2618
【0054】
(3)前記(2)で得たBoc保護体 (62 mg, 0.11 mmol)のCHCl3(3mL)溶液に、4MHCl(2mL)の酢酸エチル溶液を加え、室温で30分撹拌した。溶媒を留去目的物(収率定量的)を得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz) δ:
11.45 (br, 1 H), 8.67 (t, 1 H, J = 5.6 Hz),
8.31 (d, 1 H, J = 8.8 Hz), 7.98 (d, 1 H, J = 8.8 Hz),
7.88 (d, 1 H, J = 8.0 Hz), 7.65 (d, 1 H, J = 7.6 Hz),
7.53 (d, 1 H, J = 9.6 Hz), 7.15 (d, 1 H, J = 7.6 Hz),
7.14 (t, 1 H, J = 8.0 Hz), 6.58 (d, 1 H, J = 9.6 Hz),
4.65 (d, 2 H, J = 5.6 Hz), 3.08 (t, 2 H, J = 6.0 Hz),
3.06 (t, 2 H, J = 6.0 Hz), 2.65 (t, 2 H, J = 6.0 Hz),
2.58 (t, 2 H, J = 6.0 Hz), 2.57 (s, 3 H).
【0055】
実施例2 (ミスマッチDNAの融解温度(Tm)の測定)
次の(1)〜(3)の3種の11塩基からなるヌクレオチドオリゴマーの各々100μMを、100mMのNaCl及び式(III)の化合物200μMを含む10mMカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に添加して、実施例1で製造した一般式(III)のミスマッチ認識分子の存在下及び非存在下における融解温度(Tm)をそれぞれ測定した。
オリゴマー(1)
*
5’−CTAACGGAATG−3’
3’−GATTGACTTAC−5’
オリゴマー(2)
*
5’−CTAACGGAATG−3’
3’−GATTGGCTTAC−5’
オリゴマー(3)
5’−CTAACGGAATG−3’
3’−GATTGCCTTAC−5’
オリゴマー(3)は正常な塩基対を有するものであり、オリゴマー(1)及び(2)は前記の塩基配列の上の*印を示した部分においてミスマッチが生じているものである。
結果を表1に示す。
【0056】
実施例3 (ミスマッチDNAの融解温度(Tm)の測定)
次の(4)の11塩基からなるヌクレオチドオリゴマーの各々100μMを、100mMのNaCl及び式(III)の化合物200μMを含む10mMカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に添加して、実施例1で製造した一般式(III)(化合物1)及び前述した化合物2〜7のミスマッチ認識分子の存在下及び非存在下における融解温度(Tm)をそれぞれ測定した。
オリゴマー(4)
*
5’−CTAACAGAATG−3’
3’−GATTGACTTAC−5’
(*印はAAミスマッチを示す。)
結果を表2に示す。
【0057】
実施例4 (ミスマッチDNAの融解温度(Tm)の測定)
次の一般式で示される11塩基からなるヌクレオチドオリゴマーの各々100μMを、100mMのNaCl及び式(III)の化合物200μMを含む10mMカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に添加して、実施例1で製造した一般式(III)(化合物1)のミスマッチ認識分子の存在下及び非存在下における融解温度(Tm)をそれぞれ測定した。
オリゴマー
*
5’−CTAAXAYAATG−3’
3’−GATTZAWTTAC−5’
(*印はAAミスマッチを示す。)
結果を表3に示す。
【0058】
実施例5 (DNAとミスマッチ認識分子の複合体のスペクトル解析)
一般式(III)で示される本発明のミスマッチ認識分子と、AAミスマッチを有するDNAのオリゴマー(4)を用いて、CDスペクトル、ジョブプロット(Job plot)及びESI質量分析スペクトルによるスペクトル解析を行った。結果をそれぞれ図1〜3に示す。
図1は、CDスペクトルの結果を示す。図1の(a)は化合物1の存在下のCDスペクトルを示し、(b)は化合物1の非存在下のCDスペクトルを示す。測定は100mMのNaClを含有する10mMのカコジル酸ナトリウム(pH=7.0)緩衝液中で25℃で行った。DNAの濃度は100μMであり、化合物1は20μMである。
図2は、100mMのNaClを含有する10mMのカコジル酸ナトリウム(pH=7.0)緩衝液中での化合物1のジョブプロット(Job plot)の結果を示す。化合物1とDNAの濃度の合計が常に一定(5μM)になるように保った。この結果、クロスオーバーポイントが0.7となり、化合物1とDNAの比は1:2であることがわかった。
図3は、ESI質量分析のスペクトルを示す。図3の上段は、化合物1の非存在下のものであり、図3の下段は化合物1の存在下の場合である。測定は100mMの酢酸アンモニウムを含有する50%メタノールと水の1:1混合溶液を用いて行った。DNAの濃度は20μM(図3上段)であり、当該溶液に120μMの化合物1を添加した(図3の下段)。
DNAオリゴマー(4)と化合物1の計算値を次に示す。
これらのスペクトルの結果から、AAミスマッチのDNAのオリゴマー(4)1分子に対して化合物1が2分子の1:2に複合体を形成していることがわかった。
【0059】
【発明の効果】
本発明の一般式(I)で示されるミスマッチ認識分子を用いることにより、当該ミスマッチ認識分子の一方の側(一般式(I)のA構造の部分)において特定のミスマッチ塩基を認識し、他方の側(一般式(I)のX構造の部分)においてミスマッチのいずれの種類の塩基とも塩基の種類に応じて結合することができることから、融解温度(Tm)を測定することによりミスマッチの有無及びミスマッチの塩基種類を簡便な手段により、迅速に、且つ確実に判定することができる。
特に、本発明においては、AAミスマッチに対する高感度のミスマッチ認識分子を提供する。
本発明のミスマッチ認識分子を使用することにより、遺伝子の断片におけるSNPの存在の有無や種類の判定を迅速にかつ大量に処理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一般式(III)のミスマッチ認識分子の存在下(a)及び非存在下(b)におけるDNAのオリゴマー(4)のCDスペクトルの結果を示す。図1の縦軸は回転角(度・cm2/dmol)を示し、横軸は波長(nm)を示す。
【図2】図2は、100mMのNaClを含有する10mMのカコジル酸ナトリウム(pH=7.0)緩衝液中での化合物1とDNAのオリゴマー(4)のジョブプロット(Job plot)の結果を示す。図2の縦軸は角度(度)を示し、横軸は化合物1のモル分率を示す。
【図3】図3は、本発明の一般式(III)のミスマッチ認識分子の存在下(下段)及び非存在下(上段)におけるDNAのオリゴマー(4)のESI質量分析のスペクトルを示す。
Claims (15)
- 検体となる1本鎖のDNA又はRNAと、それに対応する正常な塩基配列を有するDNA又はRNAとをハイブリダイズさせ、次いで当該ハイブリダイズしたDNA又はRNAにおける正常な塩基対を形成することができない塩基の対を、次の一般式(I)、
A−L−X (I)
(式中、Aは正常な塩基対を形成することができない塩基の対の片方の塩基と対を形成し得る化学構造部分、Xは前記Aの構造部分と対を形成する塩基と正常な塩基対を形成すべき塩基とは異なる塩基と対を形成し得る化学構造部分、Lは化学構造部分A及びXを結合するリンカー構造を示す。)
で表される塩基対のミスマッチ認識分子であって、特定の塩基と対を形成し得る化学構造部分A及び前記Aの構造部分と対を形成する塩基と正常な塩基対を形成すべき塩基とは異なる塩基と対を形成し得る化学構造部分X、並びに当該化学構造部分A及びXを結合するリンカー部分Lを有することを特徴とする化合物を用いて、当該正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させ、当該擬似的な塩基対の状態を測定することからなる正常な塩基対を形成することができない塩基の対を検出、同定することからなるDNA又はRNAにおける塩基配列の異常を検出する方法。 - 一般式(I)で表される化合物の化学構造部分A及びXが、塩基と水素結合を形成し、かつ周囲の塩基とのスタッキング効果により安定化されることにより塩基と対を形成することを特徴とする化合物である請求項1に記載の方法。
- 一般式(I)で表される化合物の化学構造部分A及びXが、塩基との水素結合が可能な2個以上化学構造部分を含有する複素環式芳香族基を有するものである請求項1又は2に記載の方法。
- 一般式(I)で表される化合物の化学構造部分A及びXの少なくともひとつが、ナフチリジン又はその誘導体である請求項3に記載の方法。
- 一般式(I)で表される化合物における化学構造部分A及びXとリンカー部分Lとの結合が、カルボン酸アミド結合である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 一般式(I)で表される化合物が、次の一般式(II)、
R2は、炭素数1〜20のアルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子、窒素原子又はカルボニル基で置換されてもよいアルキル基を示す。
R3は、炭素数1〜10のアルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子、窒素原子又はカルボニル基で置換されても良いアルキル基を示す。)
で表される化合物である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。 - 一般式(I)で表される化合物が担体に固定化されている請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
- 一般式(I)で表される化合物が標識化されている請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
- 塩基配列の異常が、A−Aミスマッチである請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の正常な塩基対を形成することができない塩基の対に疑似的に塩基対を形成させ、当該擬似的な塩基対の状態を測定することからなる正常な塩基対を形成することができない塩基の対を検出、同定する方法において、正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させるための次の一般式(I)、
A−L−X (I)
(式中、Aは正常な塩基対を形成することができない塩基の対の片方の塩基と対を形成し得る化学構造部分、Xは前記Aの構造部分と対を形成する塩基と正常な塩基対を形成すべき塩基とは異なる塩基と対を形成し得る化学構造部分、Lは化学構造部分A及びXを結合するリンカー構造を示す。)
で表される化合物からなる試薬。 - 試薬が、正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させるための塩基対生成剤である請求項10に記載の試薬。
- 請求項10に記載の試薬、及び検出、同定用の資材からなる正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させ、当該擬似的な塩基対の状態を測定することからなる正常な塩基対を形成することができない塩基の対を検出、同定するためのキット。
- 次の一般式(II)、
R2は、炭素数1〜20のアルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子又は窒素原子で置換されてもよいアルキル基を示す。
R3は、炭素数1〜10のアルキル基であって当該アルキル基中の1個又はそれ以上の炭素原子が酸素原子、窒素原子又はカルボニル基で置換されても良いアルキル基を示す。)で表される化合物又はその固定化物。 - 次の一般式(I)、
A−L−X (I)
(式中、Aは正常な塩基対を形成することができない塩基の対の片方の塩基と対を形成し得る化学構造部分、Xは前記Aの構造部分と対を形成する塩基と正常な塩基対を形成すべき塩基とは異なる塩基と対を形成し得る化学構造部分、Lは化学構造部分A及びXを結合するリンカー構造を示す。)
で表される塩基対のミスマッチ認識分子であって、特定の塩基と対を形成し得る化学構造部分A及び前記Aの構造部分と対を形成する塩基と正常な塩基対を形成すべき塩基とは異なる塩基と対を形成し得る化学構造部分X、並びに当該化学構造部分A及びXを結合するリンカー部分Lを有することを特徴とする化合物を用いて、当該正常な塩基対を形成することができない塩基の対に擬似的に塩基対を形成させる方法。
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