JP4462603B2 - 樹脂フィルム - Google Patents

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本発明は、作業性・硬化性に優れた樹脂フィルムに関し、更に詳しくは、繊維強化プラスチック(以下、FRPという)の繊維結合用樹脂フィルムに関するものである。
従来から、FRP用樹脂としてはポリエステル樹脂が幅広く用いられている。近年、車輌・建築などの分野において使用される樹脂材料に対する難燃性、耐食性などが強く要求されるようになり、この特性に優れるフェノール樹脂を用いて作製したFRPが脚光を浴びている。しかしながら、基材にフェノール樹脂を含浸し、予備乾燥をさせてプリプレグを作製し、その後、そのプリプレグを積層して加熱硬化させる方法では、作製されたプリプレグが粘着性であるために取り扱い性が悪いこと、また、加熱硬化時に溶剤などの揮発成分が発生し、この多くのガス成分が硬化物中にボイドと呼ばれる泡状欠損を生ずることによる品質低下などの問題がある。更には、最終硬化させるためには150℃以上の高温処理工程が必要であることから、安定した製品を得るための工程が極めて複雑になることやエネルギー消費が大きいことなどの問題があるため、硬化温度の低温化について各種樹脂の改善が試みられている。
例えば、レゾール型フェノール樹脂をベースとしたシート状成形材料に関する技術があるが、樹脂中の含有水分が16〜22%と極めて多く、かつ、酸化マグネシウムなどの無機フィラーが多量に配合されていることで樹脂本来が持つ強度を発現しにくい欠点を有しており、更に、レゾール型フェノール樹脂をベースに配合されているため、シートの安定性はせいぜい30日程度と極めて短い(例えば、特許文献1参照)。また、レゾール型フェノール樹脂を酸硬化させて成形するFRPでは、硬化温度は下げられるものの樹脂状態での安定性が極めて悪く、ごく短時間で作業を終わらせる必要があり、部材が大きくなると製造が困難になる等の欠点を有する(例えば、特許文献2および3参照)。
特開平4−332752号公報 特開2002−12736号公報 特開平10−7882号公報
したがって、本発明の目的は、基材結合剤として容易な取り扱い性、優れた作業性を有し、加熱硬化時における揮発成分の発生が少なく、かつ、改善された低温硬化性能を有し、並びに、機械特性に優れたFRPの作製に使用できる樹脂フィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討をした結果、上記の課題を解決できた。
すなわち、本発明は、エーテル化率が10〜30%であるベンジルエーテル型フェノール樹脂(A)100質量部に対して、エポキシ当量が150〜200g/eqであるエポキシ樹脂(B)5〜20質量部を含む樹脂組成物をフィルム状に成形して得られる樹脂フィルムを提供するものである。
また、本発明は、前記樹脂組成物が、さらに、硬化促進剤(C)として酸性スルホン酸エステルのうちの少なくとも1を、前記ベンジルエーテル型フェノール樹脂(A)100質量部に対して5〜20質量部の割合で含む、前記樹脂フィルムを提供するものである。
また、本発明は、前記硬化促進剤(C)が、パラトルエンスルホン酸メチルエステルおよび/またはパラトルエンスルホン酸エチルエステルである、前記の樹脂フィルムを提供するものである。
本発明によれば、基材結合剤として容易な取り扱い性、優れた作業性を有し、加熱硬化時における揮発成分の発生が少なく、かつ、改善された低温硬化性能を有し、並びに、機械特性に優れたFRPの作製に使用できる樹脂フィルムが提供される。
本発明の樹脂フィルムは、エーテル化率が10〜30%であるベンジルエーテル型フェノール樹脂(A)100質量部に対して、エポキシ当量が150〜200g/eqであるエポキシ樹脂(B)5〜20質量部を含む樹脂組成物をフィルム状に成形して得ることができる。この樹脂フィルムは、FRPの繊維基材結合剤として、容易な取り扱い性、優れた作業性をもたらし、かつ、加熱硬化時における揮発成分の発生が少ないため硬化物中の構造欠陥が最小限に抑えられ、それにより優れた機械特性を有するFRPを提供することができる。
(A)ベンジルエーテル型フェノール樹脂
本発明において樹脂組成物に使用される(A)成分は、エーテル化率が10〜30%であるベンジルエーテル型フェノール樹脂であり、これは、揮発分が少なく、柔軟性があり、樹脂としての優れた安定性を有する。前記ベンジルエーテル型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを酢酸亜鉛などのような弱酸性塩で反応させることにより得られるものでよい。
フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノールなどのアルキルフェノール類、あるいはビスフェノール類などが挙げられる。なかでも、硬化性などの点からフェノールが好ましい。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどが挙げられる。なかでも、ホルムアルデヒドの水溶液(ホルマリン)が好ましい。
前記(A)成分のエーテル化率が10%より低い場合では、通常のレゾール型フェノール樹脂と同様に脆くてフィルム化できない。一方、エーテル化率が30%を超えると、柔軟性は向上するが、フィルム化時に流れすぎてしまう欠点を有する。
前記エーテル化率は、1H−NMR(日本電子データム社製 型式 JNM−LA300)を用いてフェノール性水酸基、ベンゼン環、ジメチレンエーテル基、メチロール基、メチレン基に由来するプロトン数を測定し、ここで測定された各基団のプロトン数を前記フェノール性水酸基のプロトン数で除し、さらに、各基団に含まれるプロトン数で除することにより、1ユニット中の各基団のモル数を求め、そこからジメチレンエーテル量の重量比率を計算した値である。
(B)エポキシ樹脂
本発明において樹脂組成物に使用される(B)成分は、エポキシ当量が150〜200g/eqであるエポキシ樹脂であり、通常、液状タイプのエポキシ樹脂と呼ばれているもの、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ当量が200g/eqより大きい場合には、通常、固体であり、溶融粘度も高いことから扱いづらく作業性が困難である。一方、エポキシ当量が150g/eqより小さい場合には、粘度が低すぎるため、樹脂組成物として所定の粘度が得られず、べたつきが大きい。
前記(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して5〜20質量部であることが好ましい。5質量部より少ない場合には、樹脂組成物の粘度が高く、柔軟性に欠け、20質量部より多い場合には、樹脂組成物の粘度が低く、べたつきが多くなる。
(C)硬化促進剤
本発明における樹脂組成物には、さらに、硬化促進剤(C)として酸性スルホン酸エステルのうちの少なくとも1を、前記ベンジルエーテル型フェノール樹脂(A)100質量部に対して5〜20質量部の割合で含むことができる。
前記(C)成分を含む樹脂組成物を成形して得られる樹脂フィルムは、130℃という従来のフェノール樹脂を含むフィルムの硬化にとっては不充分である極めて低い温度で完全に硬化することができることが特徴である。また、その硬化性能は、従来のフェノール樹脂を含むフィルムを160℃以上の高温で硬化したときと同様の硬化性能を有することができる。
酸性スルホン酸エステスとしては、トルエンスルホン酸エステル類、例えば、パラトルエンスルホン酸メチルエステル、パラトルエンスルホン酸エチルエステル、パラトルエンスルホン酸プロピルエステル、パラトルエンスルホン酸ブチルエステル等が挙げられる。通常、これらは常温では固体のため、容易に溶解できること、更に硬化性に優れることからパラトルエンスルホン酸メチルエステル、パラトルエンスルホン酸エチルエステルが好ましい。
また、(C)成分の含有量が5質量部より少ない場合には、樹脂組成物の硬化が遅く、20質量部より多い場合には、樹脂組成物としてのポットライフが短くなる。
前記(A)ベンジルエーテル型フェノール樹脂、(B)エポキシ樹脂、所望により(C)硬化促進剤の各種成分を撹拌混合して樹脂組成物を得ることができる。樹脂組成物の粘度は、0.5〜10Pa・s、好ましくは1〜5Pa・sである。
本発明の樹脂フィルムの作製方法においては、前記樹脂組成物をフィルム状に成形することが可能である如何なる成形方法を使用してもよい。例えば、レジンフィルムインヒュージョン成形などが挙げられる。また、成形時の樹脂フィルムの厚みは、100〜1000g/m、好ましくは300〜700g/mである。
本発明の樹脂フィルムは、例えば、FRPの作製において、繊維基材結合剤として使用することができる。その場合には、この樹脂フィルムを、繊維基材上に積層し、あるいは二枚の繊維基材の間に挟み、加熱または加圧工程を含む通常の成形方法により成形することで、優れた機械特性を有するFRPを作製することができる。
以下、本発明を実施例でさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例−1)
反応容器にフェノール1000g、40%ホルマリン水溶液1500gを入れ、均一に溶解した後、酢酸亜鉛10gを入れ100℃まで昇温させた。そのまま100℃で5時間、常圧で還流させた。その後、容器内を減圧にして脱水を行い、ベンジルエーテル型フェノール樹脂1200gを得た。この時得られたベンジルエーテル型フェノール樹脂のエーテル化率は20.2%であった。ここにエポキシ当量190g/eq・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成社製YD−128)120gを加えて均一に混合した。この組成物を70℃で離型シート上に500g/mの厚みになるように押し出し、その後冷却し、目的の樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムの物性としては、150℃−3時間加熱時の揮発分(*1)は3%であり、70℃における溶融粘度(*2)は3Pa・sであり、表面の粘着性はなく、フィルムの巻き取りも容易にできる状態であった。
この樹脂フィルムを炭素繊維(500g/m)上に積層し、150℃−3時間プレス成形を行い作製した成形板(CFRP)の性能を表−1に示す。
*1 揮発分量:150℃−3時間(試料はアルミカップに5g)
*2 溶融粘度:70℃コーンプレートにより測定
(実施例−2)
反応容器にフェノール1000g、40%ホルマリン水溶液1500gを入れ、均一に溶解した後、酢酸亜鉛10gを入れ100℃まで昇温させた。そのまま100℃で5時間、常圧で還流させた。その後、容器内を減圧にして脱水を行い、ベンジルエーテル型フェノール樹脂1200gを得た。この時得られたベンジルエーテル型フェノール樹脂のエーテル化率は20.2%であった。ここにエポキシ当量190g/eq・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成社製YD−128)120g、パラトルエンスルホン酸エチルエステル120gを加えて均一に混合した。この組成物を70℃で離型シート上に500g/mの厚みになるように押し出し、その後冷却し、目的の樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムの物性としては、130℃−3時間加熱時の揮発分(*3)は3%であり、70℃における溶融粘度(*2)は2Pa・sであり、表面の粘着性はなく、フィルムの巻き取りも容易にできる状態であった。
この樹脂フィルムを炭素繊維(500g/m)上に積層し、130℃−3時間プレス成形を行い作製した成形板(CFRP)の性能を表−1に示す。
*3 揮発分量:130℃−3時間(試料はアルミカップに5g)
*2 溶融粘度:70℃コーンプレートにより測定
(実施例−3)
実施例−2のパラトルエンスルホン酸エチルエステル120gを、パラトルエンスルホン酸メチルエステル120gに変える以外は、実施例−2と同様の操作を行うことで組成物を得た。この組成物を70℃で離型シート上に500g/mの厚みになるように押し出し、目的の樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムの物性としては、130℃−3時間加熱時の揮発分(*3)は4%であり、70℃における溶融粘度(*2)は1Pa・sであり、表面の粘着性はなく、フィルムの巻き取りも容易にできる状態であった。
この樹脂フィルムを実施例−2と同様の製法で作製した成形板(CFRP)の性能ついては表−1に示す。
(比較例−1)
反応容器にフェノールを仕込み、以下、実施例−2と同様にベンジルエーテル型フェノール樹脂1200gを得て、それにパラトルエンスルホン酸エチルエステル120gを加えて均一に混合した。この組成物を70℃で離型シート上に500g/mの厚みになるように押し出し、樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムの物性としては、130℃−3時間加熱時の揮発分(*3)は5%であり、70℃における溶融粘度(*2)は5Pa・sであったが、フィルムの表面には粘着性が無く、フィルムとして割れやすく巻き取ることができなかった。
この樹脂フィルムを実施例−2と同様の製法で作製した成形板(CFRP)の性能を表−1に示す。
(比較例−2)
反応容器にフェノール1000g、40%ホルマリン水溶液1200gを加えて均一に溶解した後、50%水酸化カリウム50gを加えて80℃まで昇温させた。そのまま80℃−3時間真空化で還流させた。その後、冷却し、50%PTSでpH7まで中和し、その後、容器内を減圧して脱水を行い、(内温100℃まで)フェノール樹脂1200gを得た。このフェノール樹脂のエーテル化率は8%であった。ここにエポキシ当量190g/eq・ビスフェノール型エポキシ樹脂(東都化成社製YD−128)120g、パラトルエンスルホン酸エチルエステル120gを加えて均一に混合した後、この組成物を70℃で離型シート上に500g/mの厚みになるように押し出し、その後、冷却した後、樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムの物性としては、130℃−3時間加熱時の揮発分(*3)は10%であり、70℃の溶融粘度(*2)は8Pa・sであったが、フィルムとしての保形性が悪く、割れてしまい、フィルムとして巻き取ることができなかった。
この樹脂フィルムを実施例−2と同様の製法で作製した成形板(CFRP)の性能については表−1に示す。
(比較例−3)
反応容器にフェノール1000g、40%ホルマリン水溶液2250gを加えて均一に溶解した後、水酸化カルシウム20gを加えて90℃まで昇温させた。そのまま90℃−3時間真空化で還流させたのち、pHを5まで下げて再度90℃で反応させた後、容器内を減圧して脱水を行い、(内温100℃まで)フェノール樹脂1800gを得た。このフェノール樹脂のエーテル化率は40%であった。ここにエポキシ当量190g/eq・ビスフェノール型エポキシ樹脂(東都化成社製YD−128)180g、パラトルエンスルホン酸エチルエステル180gを加えて均一に混合した後、この組成物を70℃で離型シート上に500g/mの厚みになるように押し出し、その後、冷却し、樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムの物性としては、130℃−3時間加熱時の揮発分(*3)は10%であり、70℃の溶融粘度(*2)は0.5Pa・sであった。フィルムとしては、柔らかすぎて保形性が無く、樹脂組成物が流れすぎてフィルムを成形できなかった。
(比較例−4)
反応容器にフェノールを仕込み、以下、実施例−2と同様にベンジルエーテル型フェノール樹脂1200gを得て、それにエポキシ当量480g/eq・ビスフェノール型エポキシ樹脂(東都化成社製YD−011)120g、パラトルエンスルホン酸エチルエステル120gを加えて均一に混合した。この組成物を70℃で離型シート上に500g/mになるように押し出そうとしたが、粘度が20Pa・sと高く、樹脂組成物が流れずフィルムを成形できなかった。
Figure 0004462603
表−1に示された結果より、本発明における樹脂組成物を用いて成形された樹脂フィルムは、130℃で実用上十分な程度に硬化することができる。
また、本発明の樹脂フィルムは、実用上十分な安定性並びに適度なタックを有しており、炭素繊維と組み合わせて得られたCFRPの機械特性も、現行160℃硬化のCFRPと同等の性能を有している。
更に、本発明の樹脂フィルムは、生産上、経済上、あるいは近年問題となっている作業環境において、従来の溶剤型フェノール樹脂フィルムに比べ、揮発成分の発生が少ないといった大きな特徴を有している。このため、これまで硬化条件、作業環境上使用されていなかった分野への展開が期待される。

Claims (3)

  1. エーテル化率が10〜30%であるベンジルエーテル型フェノール樹脂(A)100質量部に対して、エポキシ当量が150〜200g/eqであるエポキシ樹脂(B)5〜20質量部を含む樹脂組成物をフィルム状に成形して得られる樹脂フィルム。
  2. 前記樹脂組成物が、さらに、硬化促進剤(C)として酸性スルホン酸エステルのうちの少なくとも1を、前記ベンジルエーテル型フェノール樹脂(A)100質量部に対して5〜20質量部の割合で含む、請求項1に記載の樹脂フィルム。
  3. 前記硬化促進剤(C)が、パラトルエンスルホン酸メチルエステルおよび/またはパラトルエンスルホン酸エチルエステルである、請求項に記載の樹脂フィルム。
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