JP4462493B2 - 導電性ペースト - Google Patents
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Description
しかしながら、これらの溶剤は、ポリビニルブチラール樹脂に対する溶解性が高く、完全にシートアタック現象を抑制することができていないのが現状である。今後、さらに欠品の削減や多層セラミック電子部品の薄膜化、高密度化に対応するためには、有機ビヒクルのエチルセルロース樹脂に対する溶解性を維持したままで、ポリビニルブチラール樹脂に代表される有機バインダーに対する溶解性をさらに下げる必要がある。
また、このような耐電圧性の低下や静電容量不足は、積層セラミックコンデンサーのヒビやカケ破断の原因にもなっている。
すなわち、本発明は、セラミック誘電体粉末およびポリビニルブチラール樹脂を含むセラミックスラリーを成形してなるセラミックグリーンシート上に印刷される金属電極層となるものであり、セルロース系樹脂あるいはアクリル系樹脂を含む有機バインダーおよび有機溶剤を含有する有機ビヒクル中に金属粉末が分散されてなる、多層セラミック部品を製造する際に用いる導電性ペーストにおいて、当該有機溶剤成分として下記式(I)で示されるボルナン骨格含有カルボン酸付加物を含有することを特徴とした導電性ペーストである。
本発明の導電性ペーストは、溶剤成分として、式(I)で表されるRの炭素数が2〜4のボルナン骨格含有カルボン酸付加物を含有するものである。上記式(I)のRの炭素数が1のボルナン骨格含有カルボン酸付加物、つまりイソボルニルアセテートではポリビニルブチラール樹脂に対する溶解性が高くシートアタック現象を完全に回避することが難しく、また炭素数が5以上のボルナン骨格含有カルボン酸付加物になるとエチルセルロース樹脂に対する溶解性が低下しペースト溶剤として好ましくない。エチルセルロースを溶解し、ポリビニルブチラール樹脂を溶解しない溶剤について、鋭意検討した結果、ボルナン骨格を含有するエステル化合物で、上記式(I)のRの炭素数が2〜4であることが非常に重要であることが判明した。
カンフェンは、モノテルペン化合物の1つであり、ショウノウの合成工程中に得られるものである。天然には、スギの針葉油やヒノキ科の枝葉油に含まれる精油であり、特有のにおいのある昇華性の油である。カンフェンの構造式を下記式に示す。
なお、カンフェンとカルボン酸化合物との反応は、カンフェン1モルに対し、通常、カルボン酸化合物が0.2〜3.0モル、好ましくは0.5〜1.5モルである。1.0モル未満ではカンフェンが過剰になり製造コスト的に好ましくなく、一方、1.2モルを超えるとカルボン酸が過剰になり製造コスト的に好ましくない。
式(III)の化合物は、カンフェンとプロピオン酸またはイソ酪酸を、触媒として硫酸を使用して、付加反応して得られた化合物である。
式(IV)の化合物は、カンフェンと酪酸を、触媒として硫酸を使用して、付加反応して得られた化合物である。
また、本発明の導電性ペーストの溶剤中には、必要に応じて、各種添加剤、溶剤を含有させてもよい。
本発明の導電性ペーストは、貴金属電極層に相当するもので、有機バインダーとなる樹脂を有機溶剤(炭素数3〜5のカルボン酸化合物から得られるボルナン骨格含有カルボン酸付加物)に溶解して得られる有機ビヒクル中に、Pdなどの金属粉末を分散させたものである。
有機ビヒクル中のボルナン骨格含有カルボン酸付加物は、60〜95重量%であることが好ましい。より好ましくは、65〜85重量%である。
60重量%未満では、エチルセルロースなどの溶解性が悪くなり、95重量%を超えると、有機ビヒクルの粘度が低くなり過ぎて好ましくない。
有機バインダーとしては、エチルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂や、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレートなどを重合して得られるアクリル系樹脂が使用される。
導電体ペースト中には、粘度調整用の希釈溶剤を使用してもよい。
導電体ペースト中における、該有機ビヒクルは、5〜40重量%であることが好ましい。より好ましくは、10〜30重量%である。
有機ビヒクルは、5重量%未満であると、乾燥膜の強度が弱くなり、40重量%を超えると、焼成後の電極厚さが薄くなりすぎて好ましくない。
具体的には、塗布膜厚などの粘度調製として、一般に回転粘度計において100回転での粘度が40,000cps以下になるようにエチルアルコール、トルエン、トリメチルベンゼンなどに希釈溶剤を加えていることが多い。
本発明の溶剤成分は、上記にも記載しているように、有機バインダーとなる樹脂と混合して、有機ビヒクルを形成するものであり、その成分は炭素数3〜5のカルボン酸化合物から得られるボルナン骨格含有カルボン酸付加物である。
このボルナン骨格含有カルボン酸付加物は、セラミックグリーンシートに使用されるポリビニルブチラールなどの有機バインダー樹脂に対する溶解性が低く、一方、導電性ペーストに使用されるエチルセルロース、ニトロセルロース、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレートなどの有機バインダーに対しては良好な溶解性を示すものである。
したがって、セラミック誘電層とPd(パラジウム)などの貴金属電極が交互に、規則性をもって積み重ねた積層体を製造することが可能となり、デラミネーションが生じない、電気的特性の劣化の発生しない、積層セラミックコンデンサーを提供する事を可能にするものである。
合成例1
(式(II)で表される化合物の合成)
カンフェン573g(ヤスハラケミカル(株)製YSカンフェン、純度95%、4モル)にアクリル酸300g(4.16モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル300mgを加え、攪拌しながら反応温度が35℃を超えないように硫酸54gを徐々に滴下し、終了後、35℃で、3時間攪拌した。
反応終了後、理論量の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、水洗を行い、フェノチアジン4gを添加し、蒸留によって、式(II)で表される化合物イソボルニルアクリレート(純度97%)622gを得た。
(式(II)で表される化合物の合成)
カンフェン573g(ヤスハラケミカル(株)製YSカンフェン、純度95%、4モル)に(メタ)アクリル酸362g(4.2モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル362mgを加え、攪拌しながら反応温度が35℃を越えないように硫酸60gを徐々に滴下し、終了後、35℃で、3時間攪拌した。
反応終了後、理論量の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、水洗を行い、フェノチアジン4gを添加し、蒸留によって、式(II)で表される化合物イソボルニルメタクリレート(純度97%)636gを得た。
(式(III)で表される化合物の合成)
カンフェン573g(ヤスハラケミカル(株)製YSカンフェン、純度95%、4モル)にプロピオン酸308g(4.16モル)を加え、攪拌しながら反応温度が50℃を越えないように硫酸54gを徐々に滴下し、終了後、35℃で、3時間攪拌した。
反応終了後、理論量の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、水洗を行い、蒸留によって、式(III)で表される化合物イソボルニルプロピオネート(純度97%)633gを得た。
(式(III)で表される化合物の合成)
カンフェン573g(ヤスハラケミカル(株)製YSカンフェン、純度95%、4モル)にイソ酪酸365g(4.15モル)を加え、攪拌しながら反応温度が50℃を越えないように硫酸61gを徐々に滴下し、終了後、35℃で、3時間攪拌した。
反応終了後、理論量の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、水洗を行い、蒸留によって、式(III)で表される化合物イソボルニルイソブチレート(純度97%)651gを得た。
(式(IV)で表される化合物の合成)
カンフェン573g(ヤスハラケミカル(株)製YSカンフェン、純度95%、4モル)に酪酸366g(4.16モル)を加え、攪拌しながら反応温度が50℃を越えないように硫酸61gを徐々に滴下し、終了後、35℃で、3時間攪拌した。
反応終了後、理論量の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、水洗を行い、蒸留によって、式(IV)で表される化合物イソボルニルブチレート(純度97%)681gを得た。
50mL共栓付試験管にブチラール樹脂(和光純薬社製:MW2400、住友化学社製:S−LEC BH−3)500mgと本発明の各溶剤(イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルプロピオネート、イソボルニルブチレート、イソボルニルイソブチレート)25gを入れ、スターラーで撹拌しながら60℃で2時間加温した。加温終了後、上清を分取し、さらに2,000rpmで5分間遠沈操作を行った。このものの上澄みを1g取り、標品(旭電化工業社製、アデカスタブAO−20)を50mg加えてGPCを測定した。測定後、ブチラール樹脂の分子量に相当するピークエリアと標品のピークエリア比より、各溶剤25gに溶解したブチラール樹脂量(mg)を算出した。その結果を表1に示す。
50mL共栓付試験管にエチルセルロースSTD45(和光純薬製)1,250mgと本発明の各溶剤(イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルプロピオネート、イソボルニルブチレート、イソボルニルイソブチレート)25gを入れ、スターラーで撹拌しながら60℃で2時間加温した。加温終了後室温まで放冷し、エチルセルロースの溶け残りが無いか目視で確認した。完全に溶解したものについては○、溶け残りが確認されたものについては×とした。その結果を表1に示す。
50mL共栓付試験管にブチラール樹脂(和光純薬社製:MW2400、住友化学社製:S−LEC BH−3)500mgと各比較溶剤(ターピネオール、ジヒドロターピネオール、イソボルニルアセテート、イソボルニルヘキサネート、ノピルアセテート、ターピニルアセテート、ジヒドロターピニルアセテート)25gを入れ、スターラーで撹拌しながら60℃で2時間加温した。加温終了後上清を分取し、さらに2,000rpmで5分間遠沈操作を行った。このものの上澄みを1g取り、標品(旭電化工業製アデカスタブAO−20)を50mg加えてGPCを測定した。測定後、ブチラール樹脂の分子量に相当するピークエリアと標品のピークエリア比より、各溶剤25gに溶解したブチラール樹脂量(mg)を算出した。その結果を表1に示す。
50mL共栓付試験管にエチルセルロースSTD45(和光純薬社製)1,250mgと各比較溶剤(ターピネオール、ジヒドロターピネオール、イソボルニルアセテート、イソボルニルヘキサネート、ノピルアセテート、ターピニルアセテート、ジヒドロターピニルアセテート)25gを入れ、スターラーで撹拌しながら60℃で2時間加温した。加温終了後、室温まで放冷し、エチルセルロースの溶け残りが無いか目視で確認した。完全に溶解したものについては○、溶け残りが確認されたものについては×とした。その結果を表1に示す。
積層セラミックコンデンサーを製造する場合について、以下の方法で、本発明の導電性ペーストを評価した。
微細化したチタン酸バリウム粉末90重量%とポリビニルブチラール(積水化学工業(株)製ポリビニルブチラールS−LEC SB3)4重量%、エチルアルコール6重量%からなる有機ビヒクルを混練して、セラミックスラリーを作製し、ドクターブレード法により、誘電体グリーンシートを作製した。
次に、合成例1〜5および上記比較例で使用したそれぞれの溶剤30重量部に、エチルセルロース樹脂(和光純薬工業(株)製エチルセルロース)5重量部を溶解させ、有機ビヒクルを調合した。次に、この有機ビヒクル10重量部と、Pd(パラジウム)粉末10重量部を混練して、導電性ペーストを作製した。上記誘電体グリーンシート上に、この導電性ペーストをスクリーン印刷し、そのシートを120℃で10分間乾燥させた。その後、そのシートを積層し、80℃、100kg/cを3mm×5mm角に切断し、大気炉にて1,350℃で2時間焼成した。その後焼成体を研磨し、断面を光学顕微鏡で観察し、デラミネーションの発生の有無を観察した。結果を表1に記載した。
Claims (6)
- セラミック誘電体粉末およびポリビニルブチラール樹脂を含むセラミックスラリーを成形してなるセラミックグリーンシート上に印刷される金属電極層となるものであり、セルロース系樹脂あるいはアクリル系樹脂を含む有機バインダーおよび有機溶剤を含有する有機ビヒクル中に金属粉末が分散されてなる、多層セラミック部品を製造する際に用いる導電性ペーストにおいて、当該有機溶剤成分として下記式(I)で示されるボルナン骨格含有カルボン酸付加物を含有することを特徴とした導電性ペースト。
- セラミック誘電体粉末およびポリビニルブチラール樹脂を含むセラミックスラリーを成形してなるセラミックグリーンシート上に印刷される金属電極層となるものであり、セルロース系樹脂あるいはアクリル系樹脂を含む有機バインダーおよび有機溶剤を含有する有機ビヒクル中に金属粉末が分散されてなる、多層セラミック部品を製造する際に用いる導電性ペーストにおいて、当該有機溶剤成分として下記式(II)で示されるボルナン骨格含有カルボン酸付加物を含有することを特徴とした導電性ペースト。
- セラミック誘電体粉末およびポリビニルブチラール樹脂を含むセラミックスラリーを成形してなるセラミックグリーンシート上に印刷される金属電極層となるものであり、セルロース系樹脂あるいはアクリル系樹脂を含む有機バインダーおよび有機溶剤を含有する有機ビヒクル中に金属粉末が分散されてなる、多層セラミック部品を製造する際に用いる導電性ペーストにおいて、当該有機溶剤成分として下記式(III)で示されるボルナン骨格含有カルボン酸付加物を含有することを特徴とした導電性ペースト。
- セラミック誘電体粉末およびポリビニルブチラール樹脂を含むセラミックスラリーを成形してなるセラミックグリーンシート上に印刷される金属電極層となるものであり、セルロース系樹脂あるいはアクリル系樹脂を含む有機バインダーおよび有機溶剤を含有する有機ビヒクル中に金属粉末が分散されてなる、多層セラミック部品を製造する際に用いる導電性ペーストにおいて、当該有機溶剤成分として下記式(IV)で示されるボルナン骨格含有カルボン酸付加物を含有することを特徴とした導電性ペースト。
- 有機ビヒクルを構成する有機バインダーが、エチルセルロースおよびニトロセルロースから選ばれたセルロース系樹脂、あるいは、ブチルメタクリレートおよび/またはメチルメタクリレートを重合してなるアクリル系樹脂であり、導電性ペーストを構成する金属粉末が、Ni、Cu、AgおよびPdから選ばれたものである、請求項1〜4いずれかに記載の導電性ペースト。
- 有機溶剤成分として用いられる前記ボルナン骨格含有カルボン酸付加物の割合が有機ビヒクル中に60〜95重量%であり、かつ導電性ペースト中における有機ビヒクルの割合が5〜40重量%である、請求項1〜5いずれかに記載の導電性ペースト。
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