JP2013018770A - 導電性ペースト用溶剤、ビヒクル、および導電性ペースト - Google Patents

導電性ペースト用溶剤、ビヒクル、および導電性ペースト Download PDF

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Abstract

【課題】多層セラミック電子部品を製造する際に、シートアタック現象による層間剥離現象(デラミネーション)と呼ばれる現象が生じない、電気的特性の劣化の発生しないセラミック積層体を製造するための導電性ペースト用の溶剤の提供。
【解決手段】式(I)で示されるアルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルである導電性ペースト用溶剤。

【選択図】なし

Description

本発明は、積層セラミックコンデンサー、多層セラミック基板などの多層セラミック電子部品を製造する際に使用される導電性ペースト用溶剤、この導電性ペースト用溶剤にバインダー樹脂を配合したビヒクル、さらにこのビヒクルに導電性粉末を配合した導電性ペーストに関するものである。
情報機器の小型化、薄型化、高機能化に伴い、回路や配線基板も更なる小型化、微細化、低価格化が求められている。これら電子部品に使用されるセラミック積層体は、通常、誘電層となるセラミックグリーンシートの上に導電性ペーストをスクリーン印刷し、それを交互に数十層積み重ね同時焼成して得られる。多層セラミック電子部品は、このセラミック積層体に外部電極を塗布、焼き付け加工して得られる。
セラミックグリーンシートは、セラミック誘電体粉末にポリビニルブチラール樹脂などの有機バインダーおよびエタノールなどの有機溶剤を加え混合したセラミックスラリーをドクターブレード法によりシート状に成形したものが使用される。また、導電性ペーストは、銅、銀、金、白金、ニッケル、パラジウムなどの金属粉末などの導電性材料を、エチルセルロース樹脂などの有機バインダーおよび溶剤に溶解した有機ビヒクルに分散させたものが使用される。
導電性ペーストに使用される溶剤としては、通常、テルピネオール、メチルエチルケトン、ブチルカルビトールアセテート、ケロシンなどの溶剤が使用されてきた(特許文献1)。
また、セラミックグリーンシート上に導電性ペーストを印刷した際、溶剤がセラミックグリーンシート層に含まれる有機バインダーを溶解することにより生じるシートアタック現象を解決する方法として、特許文献2に水素添加テルピネオール、特許文献3にはイソボルニルアセテートおよびノピルアセテート、特許文献4には水素添加テルピネオールアセテート等、水素添加したテルペン類やテルペンとカルボン酸を反応させて得られるテルペン類のエステル化合物を使用するペースト用溶剤が提案されている。
しかしながら、これらの溶剤は、ポリビニルブチラール樹脂に対する溶解性が高く、完全にシートアタック現象を抑制することができていないのが現状である。今後、さらに欠品の削減や多層セラミック電子部品の薄膜化、高密度化に対応するためには、有機ビヒクルのエチルセルロース樹脂に対する溶解性を維持したままで、ポリビニルブチラール樹脂に代表される有機バインダーに対する溶解性をさらに下げる必要がある。
すなわち、これらの溶剤を使用した導電性ペーストでは、シートアタック現象が生じ、積層時にシートアタック現象が発生するとセラミック誘電層に穴や皺などが発生したり、膜厚の変動などにより焼成時に層間剥離現象(デラミネーション)と呼ばれる現象が生じ、積層セラミックコンデンサーの場合は、耐電圧性を低下させたり、静電容量不足が発生するなどの不具合が生じる。
また、このような耐電圧性の低下や静電容量不足は、積層セラミックコンデンサーのヒビやカケ破断の原因にもなっている。
さらに、これらの溶剤の多くは天然資源であるテルペンを原料として合成される溶剤であるが、工業的に豊富に存在するテルペン類は限られており、供給量の面で制限を受ける。
特開平2−5591号公報 特開平7−21833号公報 特開2002−270456号公報 特許第2976268号公報
本発明は、多層セラミック電子部品を製造する際に、シートアタック現象による層間剥離が生じない、電気的特性劣化の発生しないセラミック積層体を製造するための導電性ペースト用の溶剤を安定的に提供することを目的とする。
本発明は、多層セラミック部品を製造する際に用いる導電性ペーストに含有される溶剤成分であって、該溶剤成分が下記式(I)で示されるアルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルである導電性ペースト用溶剤である。
〔ただし、式(I)において、R〜Rはそれぞれ飽和炭化水素またはHであり、R〜Rの合計炭素数が4〜10である。〕
ここで、アルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルとしては、上記式(I)において、RおよびRがH、またはRおよびRがHであるものが好ましい。
また、アルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルとしては、下記の式(II)、(III)、(IV)、(V)のような構造を有するものが、さらに好ましい。
〔ただし、式(II)において、Rは炭素数1〜4の飽和炭化水素であり、RはHまたはCH3である。〕
〔ただし、式(III)において、Rは炭素数1〜4の飽和炭化水素であり、RはHまたはCH3である。〕
〔ただし、式(IV)において、Rは炭素数1〜4の飽和炭化水素であり、RはHまたはCH3である。〕
〔ただし、式(V)において、Rは炭素数1〜4の飽和炭化水素であり、RはHまたはCH3である。〕
上記アルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルとしては、さらに好ましくは、酢酸−2−t−ブチルシクロヘキシル、プロピオン酸−2−t−ブチルシクロヘキシル、酪酸−2−t−ブチルシクロヘキシル、イソ酪酸−2−t−ブチルシクロヘキシル、酢酸−4−t−ブチルシクロヘキシル、プロピオン酸−4−t−ブチルシクロヘキシル、酪酸−4−t−ブチルシクロヘキシル、イソ酪酸−4−t−ブチルシクロヘキシル、酢酸−2−t−アミルシクロヘキシル、プロピオン酸−2−t−アミルシクロヘキシル、酢酸−4−t−アミルシクロヘキシル、プロピオン酸−4−t−アミルシクロヘキシル、酢酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル、プロピオン酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル、酪酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル、イソ酪酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル、または酢酸−2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシルである。
次に、本発明は、上記の導電性ペースト用溶剤、およびバインダー樹脂を含有するビヒクルである。バインダー樹脂としては、セルロース系樹脂、またはアクリル系樹脂が好ましい。
次に、本発明は、上記のビヒクル、および導電性粉末を含有する導電性ペーストである。
本発明の式(I)で表されるR〜Rがそれぞれ飽和炭化水素またはHであり、R〜Rの合計炭素数が4〜10である、アルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルを導電性ペースト用溶剤として含有する導電性ペーストを使用することにより、シートアタック現象による層間剥離が生じない、電気的特性の劣化の発生しないセラミック積層体を製造することが可能となる。
<アルキルシクロヘキシル脂肪酸エステル>
本発明のアルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルについて説明する。
本発明の導電性ペースト用溶剤は、式(I)で表されるR〜Rがそれぞれ飽和炭化水素またはHであり、R〜Rの合計炭素数が4〜10である、アルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルである。上記式(I)のR〜Rの合計炭素数が3以下のアルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルでは、ポリビニルブチラール樹脂に対する溶解性が高くシートアタック現象を完全に回避することが難しく、一方炭素数が11以上のアルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルになるとエチルセルロース樹脂に対する溶解性が低下しペースト溶剤として好ましくない。また、エチルセルロースを溶解し、ポリビニルブチラール樹脂を溶解しない溶剤について、鋭意検討した結果、アルキルシクロヘキシル脂肪酸エステル化合物で、上記式(I)のR〜Rの合計炭素数が4〜10であることが非常に重要であることが判明した。
なお、R〜Rを構成する飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、s−アミル基、イソアミル基、t−アミル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
本発明のアルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルは、例えば、アルキルシクロヘキサノールと、脂肪酸、その低級アルコールエステル、そのハロゲン化物、その無水物などの脂肪酸誘導体(以下、これらを総称して「脂肪酸類」ともいう)をエステル化させる、あるいはアルキルフェノールと上記脂肪酸類をエステル化させたものを水素添加することで得ることができるが、出発物質、合成方法、合成ルートは特に限定されない。
アルキルシクロヘキサノールまたはアルキルフェノールと、脂肪酸類とのエステル化方法は、アルキルシクロヘキサノールまたはアルキルフェノールと、脂肪酸を脱水縮合させる直接エステル化法、各種脂肪酸低級アルコールエステルを使用するエステル交換法、脂肪酸クロリドを使用する酸クロ法等、通常、行われているエステル化方法により行うことができ、製造方法としては特に限定しない。
なお、アルキルシクロヘキサノール(またはアルキルフェノール)と、脂肪酸を直接エステル化する場合、例えばアルキルシクロヘキサノール(またはアルキルフェノール)1モルに対する脂肪酸の使用量は、通常、0.5〜10モル程度であり、好ましくは0.7〜5モルである。アルキルシクロヘキサノール(またはアルキルフェノール)1モルに対する脂肪酸の使用量が0.5モル未満であると、アルキルシクロヘキサノール(またはアルキルフェノール)が過剰に存在することになり製造コスト的に好ましくない場合があり、一方10モルを超えると脂肪酸が過剰に存在することになり製造コスト的に好ましくない場合がある。
触媒は使用しなくても良いが、反応時間の短縮のため使用するのが好ましく、例えば、硫酸、リン酸、塩酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ヘテロポリ酸、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素およびそのエーテル錯体、活性白土、陽イオン交換樹脂、シリカアルミナ、ゼオライト、酵素等が挙げられる。
触媒の使用量は、使用する触媒の種類によって適切な範囲が異なるが、例えば硫酸の場合は、アルキルシクロヘキサノール(またはアルキルフェノール)に対して0.1〜10重量%、好ましくは1〜8重量%である。
溶剤は使用しなくても良いが、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族系、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタンなどの炭化水素系、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルなどのエーテル系などの反応に関与しない溶剤を使用しても良い。
本反応では、反応の平衡を生成物側にずらして反応を促進するために、反応で生成した水を溶剤と共沸させて系外に排出しながら反応してもよく、この場合の溶剤として、上記トルエン、ヘキサン、シクロヘキサンなどが好適に使用される。
溶剤の使用量は特に限定はないが、通常、アルキルシクロヘキサノール(またはアルキルフェノール)と脂肪酸の総重量に対して、10倍量以下である。
反応温度は、使用するアルキルシクロヘキサノール(またはアルキルフェノール)や触媒の種類などによって好ましい範囲が異なるが、通常、0〜250℃、好ましくは20〜200℃、さらに好ましくは40〜160℃である。反応温度が0℃未満では反応速度が極端に遅い場合があり、一方250℃を超えると副反応が顕著になり好ましくない場合がある。
反応圧力は、使用するアルキルシクロヘキサノール(またはアルキルフェノール)や触媒の種類、反応温度などによって好ましい範囲が異なるが、通常、1〜150kPa、好ましくは3〜130kPa、さらに好ましくは5〜110kPaである。
反応の方式は特に限定されないが、バッチ方式でも連続反応でもよい。
さらに、アルキルフェノールと脂肪酸類をエステル化させたものを水添する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、パラジウム、ルテニウム、ロジウムなどの貴金属またはそれらを活性炭素、活性アルミナ、珪藻土などの坦体上に担持したものを触媒として使用して行う方法が挙げられる。このとき、粉末状の触媒を懸濁攪拌しながら反応を行うバッチ方式にすることも、成形した触媒を充填した反応塔を用いた連続方式にすることも可能であり、反応形式に特に制限はない。水添の際、反応溶媒は用いなくてもよいが、通常、アルコール類、エーテル類、エステル類、飽和炭化水素類が使用される。
水添の際の反応温度は、特に限定されないが、通常、0〜200℃、好ましくは、10〜150℃である。反応温度が0℃未満であると、水素化速度が遅くなり、一方、200℃を超えると、水添時の分解が多くなる恐れがある。
本発明に用いられるアルキルシクロヘキサノールとしては、特に限定はされないが、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、2,4−ジメチルシクロヘキサノール、2,6−ジメチルシクロヘキサノール、2,4,6−トリメチルシクロヘキサノール、2−エチルシクロヘキサノール、4−エチルシクロヘキサノール、2,4−ジエチルシクロヘキサノール、2,6−ジエチルシクロヘキサノール、2−メチル−4−エチルシクロヘキサノール、2−エチル−4−メチルシクロヘキサノール、2,6−ジエチル−4−メチルシクロヘキサノール、2,4−ジエチル−6−メチルシクロヘキサノール、2,6−ジメチル−4−エチルシクロヘキサノール、2,4−ジメチル−6−エチルシクロヘキサノール、2−n−プロピルシクロヘキサノール、4−n−プロピルシクロヘキサノール、2−イソプロピルシクロヘキサノール、4−イソプロピルシクロヘキサノール、2−メチル−4−プロピルシクロヘキサノール、2−プロピル−4−メチルシクロヘキサノール、2,4−ジプロピルシクロヘキサノール、2,6−ジプロピルシクロヘキサノール、2,6−ジプロピル−4−メチルシクロヘキサノール、2,4−ジプロピル−6−メチルシクロヘキサノール、2,4−ジメチル−6−プロピルシクロヘキサノール、2,6−ジメチル−4−プロピルシクロヘキサノール、2−n−ブチルシクロヘキサノール、2−s−ブチルシクロヘキサノール、2−t−ブチルシクロヘキサノール、3−n−ブチルシクロヘキサノール、3−s−ブチルシクロヘキサノール、3−t−ブチルシクロヘキサノール、4−n−ブチルシクロヘキサノール、4−s−ブチルシクロヘキサノール、4−t−ブチルシクロヘキサノール、2−メチル−4−ブチルシクロヘキサノール、2−ブチル−4−メチルシクロヘキサノール、2,6−ジメチル−4−ブチルシクロヘキサノール、2,4−ジメチル−6−ブチルシクロヘキサノール、2,6−ジブチル−4−メチルシクロヘキサノール、2,4−ジブチル−6−メチルシクロヘキサノール、2−アミルシクロヘキサノール、4−アミルシクロヘキサノール、2−メチル−4−アミルシクロヘキサノール、2−アミル−4−メチルシクロヘキサノール、2,6−ジメチル−4−アミルシクロヘキサノール、2,4−ジメチル−6−アミルシクロヘキサノール、2,4−ジアミルシクロヘキサノール、2,6−ジアミルシクロヘキサノール、などが挙げられ、好ましくは、2−n−ブチルシクロヘキサノール、2−s−ブチルシクロヘキサノール、2−t−ブチルシクロヘキサノール、4−n−ブチルシクロヘキサノール、4−s−ブチルシクロヘキサノール、4−t−ブチルシクロヘキサノール、2−メチル−4−ブチルシクロヘキサノール、2−ブチル−4−メチルシクロヘキサノール、2,6−ジブチル−4−メチルシクロヘキサノール、2−n−アミルシクロヘキサノール、4−n−アミルシクロヘキサノール、2−s−アミルシクロヘキサノール、4−s−アミルシクロヘキサノール、2−イソアミルシクロヘキサノール、4−イソアミルシクロヘキサノール、2−t−アミルシクロヘキサノール、4−t−アミルシクロヘキサノールである。
また、本発明に用いられるアルキルフェノールとしては、特に限定はされないが、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2−エチルフェノール、4−エチルフェノール、2,4−ジエチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2−メチル−4−エチルフェノール、2−エチル−4−メチルフェノール、2,6−ジエチル−4−メチルフェノール、2,4−ジエチル−6−メチルフェノール、2,6−ジメチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−エチルフェノール、2−n−プロピルフェノール、4−n−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−メチル−4−プロピルフェノール、2−プロピル−4−メチルフェノール、2,4−ジプロピルフェノール、2,6−ジプロピルフェノール、2,6−ジプロピル−4−メチルフェノール、2,4−ジプロピル−6−メチルフェノール、2,4−ジメチル−6−プロピルフェノール、2,6−ジメチル−4−プロピルフェノール、2−n−ブチルフェノール、2−s−ブチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−n−ブチルフェノール、3−s−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−n−ブチルフェノール、4−s−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2−メチル−4−ブチルフェノール、2−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジメチル−4−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−ブチルフェノール、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジブチル−6−メチルフェノール、2−アミルフェノール、4−アミルフェノール、2−メチル−4−アミルフェノール、2−アミル−4−メチルフェノール、2,6−ジメチル−4−アミルフェノール、2,4−ジメチル−6−アミルフェノール、2,4−ジアミルフェノール、2,6−ジアミルフェノール、などが挙げられ、好ましくは、2−n−ブチルフェノール、2−s−ブチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、4−n−ブチルフェノール、4−s−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2−メチル−4−ブチルフェノール、2−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、2−n−アミルフェノール、4−n−アミルフェノール、2−s−アミルフェノール、4−s−アミルフェノール、2−イソアミルフェノール、4−イソアミルフェノール、2−t−アミルフェノール、4−t−アミルフェノールである。
本発明に用いられる脂肪酸類としては、特に限定はされないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、オクチル酸並びにこれらの無水物、ハロゲン化物、低級アルコールエステルなどが挙げられる。好ましくは、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、ならびにこれらの無水物である。
本発明のアルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルとしては、上記式(I)において、RおよびRがHであるもの、あるいはRおよびRがHであるものが、テルペン類以外の比較的容易に入手可能な原料から上記の方法で製造できるため好ましい。
このアルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルの具体例としては、酢酸−2−イソプロピルシクロヘキシル、プロピオン酸−2−イソプロピルシクロヘキシル、酪酸−2−イソプロピルシクロヘキシル、イソ酪酸−2−イソプロピルシクロヘキシル、酢酸−4−イソプロピルシクロヘキシル、プロピオン酸−4−イソプロピルシクロヘキシル、酪酸−4−イソプロピルシクロヘキシル、イソ酪酸−4−イソプロピルシクロヘキシル、酢酸−2−イソプロピル−4−メチルシクロヘキシル、プロピオン酸−2−イソプロピル−4−メチルシクロヘキシル、酪酸−2−イソプロピル−4−メチルシクロヘキシル、イソ酪酸−2−イソプロピル−4−メチルシクロヘキシル、酢酸−2,6−ジイソプロピル−4−メチルシクロヘキシルなどが挙げられる。
式(II)、(III)、(IV)、(V)の化合物:
本発明の式(I)で表されるアルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルのうち、特に上記式(II)、(III)、(IV)、(V)で表される化合物が好ましい。
上記式(II)の化合物は、例えば、4−t−ブチルシクロヘキサノールまたは2−メチル−4−t−ブチルシクロヘキサノールと酢酸、プロピオン酸、酪酸またはイソ酪酸を、酸触媒下において脱水縮合反応して得られる。得られる化合物は、各々、酢酸4−t−ブチルシクロヘキシル、プロピオン酸4−t−ブチルシクロヘキシル、酪酸4−t−ブチルシクロヘキシル、イソ酪酸4−t−ブチルシクロヘキシル、酢酸2−メチル−4−t−ブチルシクロヘキシル、プロピオン酸2−メチル−4−t−ブチルシクロヘキシル、酪酸2−メチル−4−t−ブチルシクロヘキシル、イソ酪酸2−メチル−4−t−ブチルシクロヘキシル、に相当する。
また、上記式(III)の化合物は、例えば、2−t−ブチルシクロヘキサノールまたは4−メチル−2−t−ブチルシクロヘキサノールと酢酸、プロピオン酸、酪酸またはイソ酪酸を、酸触媒下において脱水縮合反応して得られる。得られる化合物は、各々、酢酸2−t−ブチルシクロヘキシル、プロピオン酸2−t−ブチルシクロヘキシル、酪酸2−t−ブチルシクロヘキシル、イソ酪酸2−t−ブチルシクロヘキシル、酢酸2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル、プロピオン酸2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル、酪酸2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル、イソ酪酸2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル、に相当する。
上記式(IV)の化合物は、例えば、4−t−アミルシクロヘキサノールまたは2−メチル−4−t−アミルシクロヘキサノールと酢酸、プロピオン酸、酪酸またはイソ酪酸を、酸触媒下において脱水縮合反応して得られる。得られる化合物は、各々、酢酸4−t−アミルシクロヘキシル、プロピオン酸4−t−アミルシクロヘキシル、酪酸4−t−アミルシクロヘキシル、イソ酪酸4−t−アミルシクロヘキシル、酢酸2−メチル−4−t−アミルシクロヘキシル、プロピオン酸2−メチル−4−t−アミルシクロヘキシル、酪酸2−メチル−4−t−アミルシクロヘキシル、イソ酪酸2−メチル−4−t−アミルシクロヘキシル、に相当する。
また、上記式(V)の化合物は、例えば、2−t−アミルシクロヘキサノールまたは4−メチル−2−t−アミルシクロヘキサノールと酢酸、プロピオン酸、酪酸またはイソ酪酸を、酸触媒下において脱水縮合反応して得られる。得られる化合物は、各々、酢酸2−t−アミルシクロヘキシル、プロピオン酸2−t−アミルシクロヘキシル、酪酸2−t−アミルシクロヘキシル、イソ酪酸2−t−アミルシクロヘキシル、酢酸2−t−アミル−4−メチルシクロヘキシル、プロピオン酸2−t−アミル−4−メチルシクロヘキシル、酪酸2−t−アミル−4−メチルシクロヘキシル、イソ酪酸2−t−アミル−4−メチルシクロヘキシル、に相当する。
これらの本発明のアルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルのうち、特に酢酸−2−t−ブチルシクロヘキシル、プロピオン酸−2−t−ブチルシクロヘキシル、酪酸−2−t−ブチルシクロヘキシル、イソ酪酸−2−t−ブチルシクロヘキシル、酢酸−4−t−ブチルシクロヘキシル、プロピオン酸−4−t−ブチルシクロヘキシル、酪酸−4−t−ブチルシクロヘキシル、イソ酪酸−4−t−ブチルシクロヘキシル、酢酸−2−t−アミルシクロヘキシル、プロピオン酸−2−t−アミルシクロヘキシル、酢酸−4−t−アミルシクロヘキシル、プロピオン酸−4−t−アミルシクロヘキシル、酢酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル、プロピオン酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル、酪酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル、イソ酪酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル、酢酸−2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシルが好ましい。
また、本発明の溶剤中には、必要に応じて、酸化防止剤などの添加剤や、通常、導電性ペーストに用いる他の溶剤を含有させてもよい。
<導電性ペースト、ビヒクル>
次に、本発明の導電性ペーストおよびビヒクルについて説明する。
本発明の導電性ペーストは、貴金属電極層に相当するもので、アルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルを含有する溶剤にバインダー樹脂を溶解して得られるビヒクル中に、導電性粉末を分散させたものである。
溶剤としては、本発明の式(I)で示されるアルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルのうち1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。また、本発明の式(I)で示されるアルキルシクロヘキシル脂肪酸エステル以外の溶剤を併用しても良い。
本発明の式(I)で示されるアルキルシクロヘキシル脂肪酸エステル以外の溶剤としては、特に限定はされないが、リモネン、テルピネオール、水素添加テルピネオール、水素添加テルピネオールアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルニルカルボン酸エステル類、ノピルアセテートなどのテルペン系溶剤、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのグリコール系溶剤などが挙げられる。
バインダー樹脂としては、エチルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂や、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレートなどを重合して得られるアクリル系樹脂などが使用される。より好ましくは、エチルセルロースである。
このように、ビヒクルは、以上の溶剤とバインダー樹脂を主成分とするが、ビヒクル中の溶剤の割合は、特に限定はないが、60〜95重量%であることが好ましい。さらに、70〜90重量%が好ましい。60重量%未満では、エチルセルロースなどの溶解性が悪くなる場合があり、一方95重量%を超えると、有機ビヒクルの粘度が低くなり過ぎて好ましくない場合がある。
また、ビヒクルに配合されて導電性ペーストを構成する導電性粉末は、銅、銀、金、白金、ニッケル、パラジウムなどの金属粉末が使用される。より好ましくは、白金粉末、ニッケル粉末、パラジウム粉末である。
導電性ペースト中の導電性粉末の割合は、特に限定はないが、通常、25〜95重量%、好ましくは30〜90重量%である。25重量%未満では、形成された配線の電気抵抗が高くなるため好ましくない場合があり、一方95重量%を超えると、導電性ペーストの粘度が高くなり、生産性が著しく悪化するため好ましくない場合がある。
導電性ペースト中における、上記ビヒクルの割合は、5〜40重量%であることが好ましい。より好ましくは、10〜30重量%である。ビヒクルは、5重量%未満であると、乾燥膜の強度が弱くなり、一方40重量%を超えると、焼成後の電極厚さが薄くなりすぎて好ましくない。
導電性ペースト中には、粘度調整用の希釈溶剤を使用してもよい。具体的には、塗布膜厚などを考慮して粘度調整する場合、一般に、例えばB型粘度計でスピンドルS21、回転数5rpm、温度25℃の測定条件において、粘度が40,000cps以下になるようにエチルアルコール、トルエン、トリメチルベンゼンなどの希釈溶剤を加えていることが多い。
さらに、本発明の導電性ペーストは、溶剤、バインダー樹脂、導電性粉末以外に酸化防止剤、界面活性剤、分散剤、フィラー、可塑剤、反応性モノマーなどを含有していても良い。
本発明の溶剤であるアルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルは、セラミックグリーンシートに使用されるポリビニルブチラールなどのバインダー樹脂に対する溶解性が低く、一方、導電性ペーストに使用されるエチルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレートなどを重合して得られるアクリル系樹脂などのバインダー樹脂に対しては良好な溶解性を示すものである。
したがって、セラミック誘電層とニッケルやパラジウムなどの貴金属電極が交互に、規則性をもって積み重ねた積層体を製造することが可能となり、デラミネーションが生じない、電気的特性の劣化の発生しない、積層セラミックコンデンサーを提供することを可能にするものである。
以下実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
合成例1
<溶剤1:酢酸−4−t−ブチルシクロヘキシル(式(II)の化合物)の合成>
1Lのディーン・シュターク装置に4−t−ブチルシクロヘキサノール156g(和光純薬(株)製、1モル)、酢酸90g(1.5モル)、硫酸4.7g、トルエン300gを仕込み、2時間還流脱水を行った。反応終了後、理論量の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、水洗を行い、蒸留によって、酢酸−4−t−ブチルシクロヘキシル(溶剤1:純度98%)154gを得た。
合成例2
<溶剤2:プロピオン酸−4−t−ブチルシクロヘキシル(式(II)の化合物)の合成>
酢酸90gの代わりにプロピオン酸111g(1.5モル)を用いた以外は合成例1と同様の方法で合成し、プロピオン酸−4−t−ブチルシクロヘキシル(溶剤2、純度98%)を166g得た。
合成例3
<溶剤3:酪酸−4−t−ブチルシクロヘキシル(式(II)の化合物)の合成>
酢酸90gの代わりに酪酸132g(1.5モル)を用いた以外は合成例1と同様の方法で合成し、酪酸−4−t−ブチルシクロヘキシル(溶剤3、純度98%)を175g得た。
合成例4
<溶剤4:イソ酪酸−4−t−ブチルシクロヘキシル(式(II)の化合物)の合成>
酢酸90gの代わりにイソ酪酸132g(1.5モル)を用いた以外は合成例1と同様の方法で合成し、イソ酪酸−4−t−ブチルシクロヘキシル(溶剤4、純度98%)を178g得た。
合成例5
<溶剤5:酢酸−2−t−ブチルシクロヘキシル(式(III)の化合物)の合成>
500mLオートクレーブ反応容器に、2−t−ブチルフェノール(和光純薬(株)製)150g(1モル)、イソプロパノール150gを仕込み、次いで5%ルテニウム担持アルミナ触媒を5g加えた。次いでこれを密閉し、雰囲気を窒素ガスで置換した後、水素ガス0.5kg/cm2 の圧力をかけながら導入した。その後攪拌しながら加熱し125℃となったところで、水素の圧力を5kg/cm2 とし、吸収された水素を補うことで圧力を5kg/cm2 に保ちながら6時間反応させた。反応後は触媒をろ過で除去し、エバポレーターにてイソプロパノールを留去した。その後、この濃縮油、酢酸90g(1.5モル)、硫酸4.7g、トルエン300gを1Lのディーン・シュターク装置に仕込み、2時間還流脱水を行った。反応終了後、理論量の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、水洗を行い、蒸留によって、酢酸−2−t−ブチルシクロヘキシル(溶剤5:純度98%)150gを得た。
合成例6
<溶剤6:プロピオン酸−2−t−ブチルシクロヘキシル(式(III)の化合物)の合成>
酢酸90gの代わりにプロピオン酸111g(1.5モル)を用いた以外は合成例5と同様の方法で合成し、プロピオン酸−2−t−ブチルシクロヘキシル(溶剤6、純度98%)を169g得た。
合成例7
<溶剤7:酪酸−2−t−ブチルシクロヘキシル(式(III)の化合物)の合成>
酢酸90gの代わりに酪酸132g(1.5モル)を用いた以外は合成例5と同様の方法で合成し、酪酸−2−t−ブチルシクロヘキシル(溶剤7、純度98%)を180g得た。
合成例8
<溶剤8:イソ酪酸−2−t−ブチルシクロヘキシル(式(III)の化合物)の合成>
酢酸90gの代わりにイソ酪酸132g(1.5モル)を用いた以外は合成例5と同様の方法で合成し、イソ酪酸−2−t−ブチルシクロヘキシル(溶剤8、純度98%)を177g得た。
合成例9
<溶剤9:酢酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル(式(III)の化合物)の合成>
2−t−ブチルフェノール150gの代わりに2−t−ブチル−p−クレゾール(和光純薬(株)製)を164g(1モル)用いた以外は合成例5と同様の方法で合成し、酢酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル(溶剤9、純度98%)を167g得た。
合成例10
<溶剤10:プロピオン酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル(式(III)の化合物)の合成>
2−t−ブチルフェノール150gの代わりに2−t−ブチル−p−クレゾール(和光純薬(株)製)を164g(1モル)、酢酸90gの代わりにプロピオン酸111g(1.5モル)を用いた以外は合成例5と同様の方法で合成し、プロピオン酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル(溶剤10、純度98%)を183g得た。
合成例11
<溶剤11:酪酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル(式(III)の化合物)の合成>
2−t−ブチルフェノール150gの代わりに2−t−ブチル−p−クレゾール(和光純薬(株)製)を164g(1モル)、酢酸90gの代わりに酪酸132g(1.5モル)を用いた以外は合成例5と同様の方法で合成し、酪酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル(溶剤11、純度98%)を199g得た。
合成例12
<溶剤12:イソ酪酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル(式(III)の化合物)の合成>
2−t−ブチルフェノール150gの代わりに2−t−ブチル−p−クレゾール(和光純薬(株)製)を164g(1モル)、酢酸90gの代わりにイソ酪酸132g(1.5モル)を用いた以外は合成例5と同様の方法で合成し、イソ酪酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル(溶剤12、純度98%)を201g得た。
合成例13
<溶剤13:酢酸−2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル(式(I)に該当する化合物)の合成>
2−t−ブチルフェノール150gの代わりに2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン(和光純薬(株)製)を220g(1モル)用いた以外は合成例5と同様の方法で合成し、酢酸−2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル(溶剤13、純度98%)を221g得た。
合成例14
<溶剤14:酢酸−4−t−アミルシクロヘキシル(式(IV)の化合物)の合成>
4−t−ブチルシクロヘキサノール156gの代わりに4−t−アミルシクロヘキサノール(和光純薬(株)製)を170g(1モル)用いた以外は合成例1と同様の方法で合成し、酢酸−4−t−アミルシクロヘキシル(溶剤14、純度98%)168gを得た。
合成例15
<溶剤15:プロピオン酸−4−t−アミルシクロヘキシル(式(IV)の化合物)の合成>
4−t−ブチルシクロヘキサノール156gの代わりに4−t−アミルシクロヘキサノール(和光純薬(株)製)を170g(1モル)、酢酸90gの代わりにプロピオン酸111g(1.5モル)を用いた以外は合成例1と同様の方法で合成し、プロピオン酸−4−t−アミルシクロヘキシル(溶剤15、純度98%)を181g得た。
合成例16
<溶剤16:酢酸−2−t−アミルシクロヘキシル(式(V)の化合物)の合成>
2−t−ブチルフェノール150gの代わりに2−t−アミルフェノール(東京化成工業(株)製)を164g(1モル)用いた以外は合成例5と同様の方法で合成し、酢酸−2−t−アミルシクロヘキシル(溶剤16、純度98%)を161g得た。
合成例17
<溶剤17:プロピオン酸−2−t−アミルシクロヘキシル(式(V)の化合物)の合成>
2−t−ブチルフェノール150gの代わりに2−t−アミルフェノール(東京化成工業(株)製)を164g(1モル)、酢酸90gの代わりにプロピオン酸111g(1.5モル)を用いた以外は合成例5と同様の方法で合成し、プロピオン酸−2−t−アミルシクロヘキシル(溶剤17、純度98%)を168g得た。
(ブチラール樹脂の溶解性試験:実施例1〜17)
50mL共栓付試験管にブチラール樹脂(和光純薬製:商品名ポリビニルブチラール2400、あるいは住友化学社製:商品名S−LEC BH−3)500mgと本発明の各溶剤(溶剤1〜溶剤17)25gを入れ、スターラーで撹拌しながら60℃で2時間加温した。加温終了後、上清を分取し、さらに2,000rpmで5分間遠沈操作を行った。このものの上澄み1gに対して、標品(ADEKA社製:アデカスタブAO−330)を20mg、テトラヒドロフラン20mLになるように試料を調製し、GPCを測定した。
こで、GPCの測定は、以下の条件で実施した。
装置:Waters社製、モデル510
カラム:東ソー社製、TSKgel(G2000H8×2およびG3000HXL×1)
溶離液:テトラヒドロフラン
注入量:250μL
流速
:1.0mL/分
検出器:示差屈折率計(RI)
測定後、ブチラール樹脂に相当するピークエリアと標品のピークエリア比より、各溶剤25gに溶解したブチラール樹脂量(mg)を算出した。その結果を表1に示す。
(エチルセルロースの溶解性試験:実施例1〜17)
50mL共栓付試験管にエチルセルロースSTD45(和光純薬製:商品名エチルセルロース45)1,250mgと本発明の各溶剤(溶剤1〜溶剤17)25gを入れ、スターラーで撹拌しながら60℃で2時間加温した。加温終了後室温まで放冷し、エチルセルロースの溶け残りが無いか目視で確認した。完全に溶解したものについては○、白濁が認められたものについては△、溶け残りが確認されたものについては×とした。その結果を表1に示す。
(ブチラール樹脂の溶解性試験:比較例1〜10)
50mL共栓付試験管にブチラール樹脂(和光純薬製:商品名ポリビニルブチラール2400、あるいは住友化学社製:商品名S−LEC BH−3)500mgと比較溶剤〔ターピネオール(比較例1)、ジヒドロターピネオール(比較例2)、ブチルカルビトールアセテート(比較例3)、ノピルアセテート(比較例4)、酢酸ジヒドロターピニル(比較例5)、プロピオン酸イソボルニル(比較例6)、プロピオン酸−2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル(比較例7)、プロピオン酸−4−ノニルシクロヘキシル(比較例8)、オクチル酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル(比較例9)、酢酸−2,4−ジメチルシクロヘキシル(比較例10)〕25gを入れ、スターラーで撹拌しながら60℃で2時間加温した。加温終了後、上清を分取し、さらに2,000rpmで5分間遠沈操作を行った。このものの上澄みを1gに対して、標品(ADEKA社製:アデカスタブAO−330)を20mg、テトラヒドロフラン20mLになるように試料を調製し、上記と同様の条件でGPCを測定した。測定後、ブチラール樹脂に相当するピークエリアと標品のピークエリア比より、各溶剤25gに溶解したブチラール樹脂量(mg)を算出した。その結果を表1に示す。
なお、プロピオン酸−2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル(比較例7)、プロピオン酸−4−ノニルシクロヘキシル(比較例8)、オクチル酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル(比較例9)は、R〜Rの合計炭素数が11または12の化合物、酢酸−2,4−ジメチルシクロヘキシル(比較例10)はR〜Rの合計炭素数が3の化合物である。
(エチルセルロースの溶解性試験:比較例1〜10)
50mL共栓付試験管にエチルセルロースSTD45(和光純薬製:商品名エチルセルロース45)1,250mgと比較溶剤〔ターピネオール(比較例1)、ジヒドロターピネオール(比較例2)、ブチルカルビトールアセテート(比較例3)、ノピルアセテート(比較例4)、酢酸ジヒドロターピニル(比較例5)、プロピオン酸イソボルニル(比較例6)、プロピオン酸−2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル(比較例7)、プロピオン酸−4−ノニルシクロヘキシル(比較例8)、オクチル酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル(比較例9)、酢酸−2,4−ジメチルシクロヘキシル(比較例10)〕25gを入れ、スターラーで撹拌しながら60℃で2時間加温した。加温終了後室温まで放冷し、エチルセルロースの溶け残りが無いか目視で確認した。完全に溶解したものについては○、白濁が認められたものについては△、溶け残りが確認されたものについては×とした。その結果を表1に示す。
なお、プロピオン酸−2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル(比較例7)、プロピオン酸−4−ノニルシクロヘキシル(比較例8)、オクチル酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル(比較例9)は、R〜Rの合計炭素数が11または12の化合物、酢酸−2,4−ジメチルシクロヘキシル(比較例10)はR〜Rの合計炭素数が3の化合物である。
(シートアタック性の評価方法:実施例1〜17、比較例1〜6、10)
積層セラミックコンデンサーを製造する場合について、以下の方法で、本発明の導電性ペーストを評価した。
微細化したチタン酸バリウム粉末90重量%とポリビニルブチラール(積水化学工業(株)製ポリビニルブチラールS−LEC SB3)4重量%、エチルアルコール6重量%からなる有機ビヒクルを混練して、セラミックスラリーを作製し、ドクターブレード法により、誘電体グリーンシートを作製した。
次に、溶剤1〜溶剤17、および上記比較例1〜6、ならびに比較例10で使用したそれぞれの溶剤30重量部に、エチルセルロース樹脂(和光純薬工業(株)製エチルセルロース)5重量部を溶解させ、有機ビヒクルを調合した。次に、この有機ビヒクル10重量部と、Pd(パラジウム)粉末10重量部を混練して、導電性ペーストを作製した。上記誘電体グリーンシート上に、この導電性ペーストをスクリーン印刷し、そのシートを120℃で10分間乾燥させた。その後、シートを3cm×3cm角のシート片20ピースにカットし、大気炉にて1,300〜1,350℃で2時間焼成した。その後、焼成体を研磨し、表面を光学顕微鏡で観察してシートアタック現象発生の有無を観察した。20ピース中、0〜3ピースにシートアタックが見られたものを○、4〜10ピースに見られたものを△、11ピース以上に見られたものを×として評価を行った。結果を表1に示す。



























表1に示すように、本発明の溶剤(溶剤1〜溶剤17)は従来の金属ペースト用溶剤として使用されているターピネオールやジヒドロターピネオール、酢酸ジヒドロターピニルやブチルカルビトールアセテートなどと比較して、エチルセルロースを溶解しつつ、ブチラール樹脂を著しく溶かさないことが明らかである。従って、これら溶剤を用いた導電性ペーストは、従来のものと比較し、積層時のシートアタック現象やそれに伴うデラミネーション現象をより抑制することができる。
また、本発明の溶剤はいずれもテルペン類を出発原料とせず、供給量の面で制限を受けにくく、比較的安定的に供給できるメリットがある。
本発明の導電性ペースト用溶剤を用いた導電性ペーストは、積層セラミックコンデンサーなどの製造の際に使用される導電性ペーストとして利用できる。

Claims (11)

  1. 多層セラミック部品を製造する際に用いる導電性ペーストに含有される溶剤成分であって、該溶剤成分が下記式(I)で示されるアルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルである導電性ペースト用溶剤。
    〔ただし、式(I)において、R〜Rはそれぞれ飽和炭化水素またはHであり、R〜Rの合計炭素数が4〜10である。〕
  2. 式(I)において、RおよびRがHである請求項1記載の導電性ペースト用溶剤。
  3. 式(I)において、RおよびRがHである請求項1記載の導電性ペースト用溶剤。
  4. アルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルが下記式(II)で表される化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペースト用溶剤。
    〔ただし、式(II)において、Rは炭素数1〜4の飽和炭化水素であり、RはHまたはCH3である。〕
  5. アルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルが下記式(III)で表される化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペースト用溶剤。

    〔ただし、式(III)において、Rは炭素数1〜4の飽和炭化水素であり、RはHまたはCH3である。〕
  6. アルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルが下記式(IV)で表される化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペースト用溶剤。
    〔ただし、式(IV)において、Rは炭素数1〜4の飽和炭化水素であり、RはHまたはCH3である。〕
  7. アルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルが下記式(V)で表される化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペースト用溶剤。
    〔ただし、式(V)において、Rは炭素数1〜4の飽和炭化水素であり、RはHまたはCH3である。〕
  8. アルキルシクロヘキシル脂肪酸エステルが、酢酸−2−t−ブチルシクロヘキシル、プロピオン酸−2−t−ブチルシクロヘキシル、酪酸−2−t−ブチルシクロヘキシル、イソ酪酸−2−t−ブチルシクロヘキシル、酢酸−4−t−ブチルシクロヘキシル、プロピオン酸−4−t−ブチルシクロヘキシル、酪酸−4−t−ブチルシクロヘキシル、イソ酪酸−4−t−ブチルシクロヘキシル、酢酸−2−t−アミルシクロヘキシル、プロピオン酸−2−t−アミルシクロヘキシル、酢酸−4−t−アミルシクロヘキシル、プロピオン酸−4−t−アミルシクロヘキシル、酢酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル、プロピオン酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル、酪酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル、イソ酪酸−2−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシル、または酢酸−2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルシクロヘキシルである請求項1〜7のいずれかに記載の導電性ペースト用溶剤。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の導電性ペースト用溶剤、およびバインダー樹脂を含有するビヒクル。
  10. バインダー樹脂がセルロース系樹脂、またはアクリル系樹脂を含有する請求項9記載のビヒクル。
  11. 請求項9または10記載のビヒクル、および導電性粉末を含有する導電性ペースト。
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