JP4461322B2 - 石炭灰を主原料とする単結晶高機能ゼオライトの製造方法及びそのための製造装置 - Google Patents

石炭灰を主原料とする単結晶高機能ゼオライトの製造方法及びそのための製造装置 Download PDF

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本発明は、廃棄物である石炭灰を主原料とし、石炭灰におけるSiO2/Al23の構成比を、副原料を添加することによりA型,X型,又はY型のいずれかの単結晶ゼオライトの所定割合になるように調合してA型,X型,又はY型のいずれかの単結晶高機能ゼオライトを連続的に製造する方法とそのための製造装置に関するものである。
ゼオライトは、シリカとアルミナが規則的な立体構造をもち、結晶水を含んだアルミノケイ酸塩に属するケイ酸塩鉱物で、イオン交換性の陽イオンを含み、可逆脱水されやすい弱く保持された水と結合し、三次元網目状構造をもつなどの特徴がある。ゼオライトはその強い吸着性から乾燥材や脱臭剤として使用され、また水溶液中で陽イオン交換性をもつため土壌改良材,廃水処理,養魚池の浄化などに使用されている。また、固体酸としての触媒作用もあることから、例えば、ガソリン製造用の触媒として使用されることもあり、更に、分子ふるいとして、潤滑油の精製などにも使用されている。
ゼオライトは大きく天然ゼオライトと合成ゼオライトに分けられるが、特に石炭灰から合成されたゼオライトは人工ゼオライトと呼ばれることが多い。天然ゼオライトは、鉱物資源として2〜3種類のゼオライトが主に産出されているが、天然鉱物のため、廉価であるものの、不純物が多く、また不純物の含有量が不定であることから、ゼオライトの機能が低く、更に不純物の含有量により品質に大きなばらつきが出るという使用上の問題がある。廉価であることから一部農業土壌改良,排水水質浄化分野で使用され年々需要が増えてきているが、天然鉱物のため、産出量に限度があり、需要に対応できていない。
合成ゼオライトは、主に工業原料から製造され、従来からアルミン酸ソーダ、水ガラス及び苛性ソーダを主原料として回分式(バッチ式)装置により多種類の純度の高い単結晶ゼオライトが合成されている。この合成ゼオライトは不純物のない純度の高い単結晶であるため、高機能を発揮するが、原料が工業原料であること、及び、回分式装置による少量生産のため製造コストが高いという問題がある。従って、利用分野は特殊な分野に限られ、農業土壌改良、一般土壌改良、排水水質浄化等の大規模消費分野には利用されていない。
次に、人工ゼオライトは、一部のメーカーによって石炭灰からの合成が行われ、人工ゼオライトと呼称して製造販売されている。このような人工ゼオライトは、例えば、特許文献1〜特許文献3に開示されているような回分式或は半回分式装置により製造されている。
上記の人工ゼオライトは、多種類あるゼオライトのうちP型のものを主成分としたもので、ときには1種類から数種類のゼオライト及び/又はゼオライトではないソーダライトを少量含む混結晶のゼオライトを含むものもあり、回分式装置により製造されている。廃棄物である石炭灰から単結晶のゼオライトを合成するには、合成するゼオライト毎に違った一定の狭い合成条件を作る必要があるが、回分式装置では合成条件を狭い範囲で一定に保つことができないため、P型ゼオライトを主成分とした混結晶のゼオライトが製造されることになる。一般にP型ゼオライトはその細孔径が2.6Åと多数種あるゼオライトの中で一番小さく、仮令、陽イオン交換容量が他のゼオライトと同等としても、用途先が限られてくるという問題があった。
更に、人工ゼオライトは、上述したように回分式装置により製造されているため、現在までA型、X型又はY型の単結晶高機能ゼオライトの合成に至らず、各製造バッチ毎に混結晶の上に、主成分のP型ゼオライトの純度がばらつくと共に、混結晶の割合もばらつくので、品質が均一でないという問題があり、このような問題ゆえに、その利用先があまり広がっていない。なお、上記において単結晶高機能ゼオライトとは、A型、X型又はY型のいずれかの結晶タイプのものを単独で含有するという意味で、例えば、A型の場合は、他のX型,Y型,P型のものは含有しないという意味であるが、ゼオライト結晶以外のものが全く含有されないという意味ではない。この点は、以下も同じである。
回分式装置には上記のような問題があったことから、最近、ゼオライトの連続製造方法や装置が、例えば、特許文献4や特許文献5に提案されている。
特許文献4の例は、循環流動槽により人工ゼオライトを連続的に製造する方法とそのための装置に関するもので、この装置によれば攪拌は比較的よく行われるが、循環により反応生成物と原料が混ざるバックミキシングが起こるため、P型を主成分とする混結晶ゼオライトが合成され、A型、X型又はY型のいずれかの単結晶高機能ゼオライトを選択的に合成できないという問題があった。
特許文献5の例は、特許文献4の例における問題点を解決するために提案されたもので、反応工程を、管接触反応工程と回転ディスク接触反応工程の二工程に分け、管接触反応工程においてゼオライト原料を接触反応管内に連続的に通過させてゼオライト中間組成物を生成し、その中間組成物を回転ディスク接触反応工程において多段回転ディスクにより順次攪拌して所望のゼオライトを生成する方法である。
しかし乍ら、特許文献5の方法では、第一工程の管接触反応工程における石炭灰及び副原料の溶解温度に比べ、溶解後の初期反応のための反応温度が低いため、適正初期反応温度より高温の溶解温度で初期反応が起こるとA型、X型又はY型ゼオライト前駆体の他にP型ゼオライトの前駆体もでき、A型、X型又はY型の単結晶高機能ゼオライトを合成できず、P型ゼオライトが混結晶する問題が生じる。
更に、特許文献5の発明では、ゼオライト原料又はゼオライト中間組成物に特定のSi/Al比を有する一種又は二種以上の結晶鉱物を添加してゼオライト化反応をさせることによって、多種多様な廃棄物等を原料として使用した場合であっても、添加した結晶鉱物に対応した特定の種類のゼオライトを誘導するようにしているので、その結果、予めSi/Al比を所定の値に調整することなく、任意のSi/Al比を有する廃棄物等をゼオライト原料として容易に採用することができるとしているが、これはP型ゼオライトを主成分に混結晶のゼオライトを合成する場合であり、これでは単結晶の高機能ゼオライト(A型,X型,Y型)を選択的に製造することはできない。加えて、循環工程も設けられていることから、バックミキシングが起こるため、P型を主成分とする混結晶ゼオライトが合成され、A型、X型又はY型の単結晶高機能ゼオライトを合成できないという問題があった。
なお、特許文献6には、石炭灰を主原料としたA型ゼオライトの製造についての発明が記載されているが、特許文献6の発明には、A型、X型又はY型のいずれかの単結晶高機能ゼオライトを選択的に合成する構成はなく、また、これらのゼオライトを連続的に製造する方法や装置については特許文献6の発明においては全く検討されていない。
特開平6−321524号公報 特開平6−321525号公報 特開平6−321526号公報 特開平10−324518号公報 特開2002−187715号公報 特開平6−100314号公報
従って、本発明は、従来の回分式装置による製造方法に代え提案されている人工ゼオライトの連続製造方法や装置には、上記のような問題点があったことに鑑み、その問題点を改良すると共に、主原料を廃棄物である石炭灰に特定し、この石炭灰におけるSiO2/Al23の構成比を、副原料を添加することによりA,X,又はY型のそれぞれの単結晶ゼオライトの所定割合になるように調合してA型,X型又はY型のいずれかの単結晶高機能ゼオライトを連続的に製造する方法とそのための製造装置を提供することを、その課題とするものである。
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明の製造方法の構成は、主原料となる石炭灰に対し、SiO2源又はAl23源となる副原料を添加して前記石炭灰におけるSiO2/Al23の構成比がA型,X型,又はY型のいずれかの単結晶ゼオライトの所定割合になるように調合し、アルカリ水溶液と攪拌混合するゼオライト原料製造工程、当該ゼオライト原料を熱交換器により加温して加熱溶解器に連続投入し、当該溶解器内で温度調節しながら原料中のSiO2,Al23成分をアルカリ水溶液中に溶解させるゼオライト原料成分溶解工程、得られた原料成分溶解物を反応温度調節用熱交換器においてゼオライト合成反応に適した温度に調節する反応温度調節工程、反応に適した温度に調節された前記原料成分溶解物を流動円盤式反応器に連続投入し、当該反応器内の多段回転円盤により順次攪拌しながら反応させてゼオライト前駆体を製造すると共に、当該前駆体からゼオライト結晶を成長させ、A型,X型,Y型のいずれかのゼオライトを合成するゼオライト合成工程、を少なくとも有することを特徴とするものである。
また、上記課題を解決することを目的としてなされた本発明の製造装置の構成は、主原料となる石炭灰に対し、SiO2源又はAl23源となる副原料を添加して前記石炭灰におけるSiO2/Al23の構成比がA型,X型,又はY型のいずれかの単結晶ゼオライトの所定割合になるように調合し、原料製造槽内でアルカリ水溶液と攪拌混合するゼオライト原料製造手段と、当該ゼオライト原料を熱回収用熱交換器、及び、反応温度調節用熱交換器を通過させて加温し、加熱器によって温度調節可能に加熱されている加熱溶解器に連続投入して当該溶解器内で温度調節しながら原料中のSiO2,Al23成分をアルカリ水溶液中に溶解させるゼオライト原料成分溶解手段と、得られた原料成分溶解物を前記反応温度調節用熱交換器においてゼオライト合成反応に適した温度に調節する反応温度調節手段と、反応に適した温度に調節された前記原料成分溶解物を流動円盤式反応器内に連続投入して当該反応器内に回転速度調節可能に設けられた多段回転円盤により順次攪拌しながら反応させてゼオライト前駆体を製造すると共に、当該前駆体からゼオライト結晶を成長させ、A型,X型,Y型のいずれかのゼオライトを合成するゼオライト合成手段を、少なくとも具備して成ることを特徴とするものである。
上記において、ゼオライト前駆体は、ゼオライトの核結晶のことをいい、原料成分溶解物を流動円盤式反応器内へ投入した後の反応の初期段階において生成される。
本発明は、上記構成において、加熱溶解器に内部に多段回転円盤を具備する流動円盤式加熱溶解器を使用することができる。
また、本発明は、SiO2/Al23の構成比を、副原料を添加し、モル比で換算して、Al23が1に対し、SiO2が1〜5になるように調合してA型のゼオライトを合成することができ、また、同じくモル比で換算して、Al23が1に対し、SiO2が1.77〜10.77になるように調合してX型のゼオライトを合成することができ、更に、同じくモル比で換算して、Al23が1に対し、SiO2が2.5〜12.0になるように調合してY型のゼオライトを合成することができる。なお、SiO2源となる副原料は、水ガラス,珪砂,製紙スラッジ焼却灰,籾殻焼却灰,廃ガラスから選択されるいずれか1又は2以上であり、また、Al23源となる副原料は、アルミン酸ソーダ,水酸化アルミニウム,アルミニウムドロス,赤泥,アルミニウム缶,アルミニウム加工廃液、アルミニウム加工スラッジから選択されるいずれか1又は2以上である。
更に、本発明の製造装置の構成において、合成されたゼオライトを速やかに合成が進まない温度以下に下げるための熱回収熱交換器及び冷却器を通過させる冷却手段を設けることができ、また、装置内の圧力を一定に保つ圧力調節手段を設けることもできる。
而して、A型、X型、Y型ゼオライトの機能については公知の事実となっているが、工業原料からの合成でしか製造されておらず、高機能で利用範囲は非常に広いが、高価格のため、利用分野が限定されているのが現状であることに鑑み、本発明の発明者は、この工業原料から合成されたA型、X型、Y型のゼオライトに匹敵する単結晶・高機能のA型、X型、Y型のゼオライトが現在は埋め立て処理されている廃棄物である石炭灰から合成されれば、製造コストも格段と廉価となり、利用分野も農業土壌改良、排水水質浄化等の大規模分野に大量使用されることになり、循環型環境社会の達成に貢献できることを知得し、鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。
より詳細には、本発明は、日本で初めて石炭灰を主原料としてA型、X型又はY型の単結晶・高純度の高機能ゼオライトを連続合成する技術であるが、A型、X型、Y型ゼオライトを単結晶で合成するためには、原料の調合比及び調合条件並びに合成条件を各ゼオライト毎に狭い範囲に一定にすること、及び、原料溶解、ゼオライト前駆体合成、ゼオライト合成の各工程の原料が混ざらないように、即ち、バックミキシングを起こさないようにする必要がある。この点、本発明における加熱溶解器(流動円盤式加熱溶解器)及び流動円盤式加熱反応器を用いた装置では、単結晶ゼオライトを合成するのに必要な条件を容易に管理・調整することができ、またバックミキシングを起こさないので、A型、X型、Y型の単結晶ゼオライト合成方法を連続して製造する方法とそのための装置を発明することができるに至った。
本発明は以上の通りであって、本発明によれば、廃棄物である石炭灰を主原料とし、単結晶高機能ゼオライト(A型,X型,Y型)を連続的に製造することができるので、製造コストが安くてすみ、またその性能も従来の工業原料から合成されたゼオライトに匹敵するので、極めて利用価値が高い。
また、本発明では、上記の通り廃棄物である石炭灰を主原料としているので、製造コストも格段と廉価となり、利用分野も農業土壌改良、排水水質浄化等の大規模分野に大量使用することができることになり、循環型環境社会の達成に貢献できるという優れた効果が得られる。
更に、本発明では、流動回転円盤式反応器内における回転円盤の回転速度を調節することによって、ゼオライト原料成分溶解物の攪拌混合をバックミキシングを伴わずに行うことができ十分な接触反応を行わせることができるので、高純度のものが得られるという効果がある。
加えて、本発明では、ゼオライト製造工程において、石炭灰中の重金属の一部がアルカリ水溶液に溶けて除かれるので、合成されたゼオライトの重金属溶出量が環境基準に適合したものとなるという効果も得られる。
次に、本発明の実施の形態例を図に拠り説明する。なお、本発明の製造方法については、その方法を実施する本発明製造装置の説明と併せて説明する。図1は本発明の一例の製造装置の概要を示す斜視図、図2は図1の製造装置における流動円盤反応器の内部構造を示す断面図、図3は図2の流動円盤反応器の回転円盤の拡大図で、(a)は鳥瞰図、(b)は断面で示す側面図、図4は図1の製造装置によるゼオライト製造の流れを示すフロー図、図5は石炭灰からのA型単結晶合成X線解析図、図6は石炭灰からのX型単結晶合成X線解析図、図7は石炭灰からのY型単結晶合成X線解析図である。
図において、1はゼオライトを製造するための原料(以下、ゼオライト原料Zという)を製造するための原料製造槽、1aはこの原料製造槽1内に設けた攪拌翼、1bはこの攪拌翼1aを回転させるためのモータ、2は原料製造槽1で製造したゼオライト原料Z中のSiO2,Al23成分を温度調節しながらアルカリ水溶液中に十分溶解させるための加熱溶解器で、ここでは流動円盤式加熱溶解器を用いている。2aはこの流動円盤式加熱溶解器2内に上下適宜間隔を開けて水平に多段に設けられている回転円盤、2bはこれらの回転円盤2aをそれらの中心部において支持する回転軸で、モータ2cによって回転駆動され、回転円盤2aを回転させるようになっている。これら回転円盤2aの回転速度は、モータ2cにより所定速度に調節することができる。Qはこの流動円盤式加熱溶解器2に外部から熱を供給するための熱媒体等による加熱器である。この流動円盤式加熱溶解器2は熱交換する熱媒体の条件(温度,流量)を変更することによって、溶解条件を変更することができる。なお、加熱溶解器には上記の流動円盤式加熱溶解器2の他、図示しないが、連続接触管式溶解器などを用いることもできる。
3は流動円盤式加熱溶解器2において溶解され生成したゼオライト原料成分溶解物を、反応に適した温度に調節した後、連続投入し、反応させるための流動円盤式反応器である。この流動円盤式反応器3の構造は、流動円盤式加熱溶解器2と略同様のもので、3aはこの流動円盤式反応器3内に上下適宜間隔を開けて水平に多段に設けられている回転円盤、3bはこれらの回転円盤3aをそれらの中心部において支持する回転軸で、モータ3cによって回転駆動され、回転円盤3aを回転させるようになっている。これら回転円盤3aの回転速度は、モータ3cにより所定速度に調節することができる。この回転円盤3aの回転速度の調節、回転円盤3a及びインナートレイ3dの寸法、形状及び段数によってバックミキシングの防止、反応時間を制御し、各型に対応したゼオライトの単結晶の合成、また各型に対応したゼオライトの合成率を変化させることができる。なお、流動円盤式加熱溶解器2及び流動円盤式反応器3の内部構造については後に詳述する。
4は流動円盤式加熱溶解器2と流動円盤式反応器3との間に設けられている反応温度調節用の熱交換器で、原料製造槽1から原料供給ポンプPにより送られ熱回収用の熱交換器5を通過して加温されたゼオライト原料Zと、流動円盤式加熱溶解器2から流動円盤式反応器3に供給されるゼオライト原料成分溶解物との間で熱交換し、ゼオライト原料Zを更に加温する一方、ゼオライト原料成分溶解物の温度を、反応に適した温度に冷却するためのものである。なお、温度の調節は、熱交換器5を通過するときのゼオライト原料Zの流量,流速を調節することによって行うことができ、また、ゼオライト原料Zをバイパス路により迂回させることによっても行うこともできる。
6は流動円盤式反応器3内における反応により合成されたゼオライトを冷却し、速やかに合成の進まない温度以下にする冷却器である。流動円盤式反応器3から取出された合成ゼオライトは、この冷却器4に送られる前に、熱回収用の熱交換器5を通過し、原料製造槽1から原料供給ポンプPにより送られてくる低温のゼオライト原料と熱交換されて冷却される。
7は、圧力調節弁で、上述した製造装置における反応システム系の圧力を一定に保つためのものである。この圧力調節弁7の操作により、反応システム系内の圧力を一定に保ち、反応液が沸騰による蒸気化さらに蒸気化によるベーパーロック(流動固着)を防ぐことができる。
次に、流動円盤式加熱溶解器2と流動円盤式反応器3の内部構造は略同一であるので、流動円盤式反応器3の内部構造について図2により説明する。図2において、流動円盤式反応器3は、多段の回転円盤3aと、これらの回転円盤3aを上下適宜間隔で水平に支持する回転軸3bと、この回転軸3bを回転させるモータ3cと、各回転円盤3a間に設けられ、流動円盤式反応器3の内側面からリング状に突出したインナートレイ3dと、流動円盤式反応器3の外側に設けられたジャケット加熱管JKとそれらの制御装置やセンサー(図示せず)等から構成され、A型,X型又はY型の単結晶高機能ゼオライトの合成要素であるバックミキシングの防止、反応時間、反応温度を制御している。また、図2において、RTはゼオライト原料成分溶解物の連続投入口、ZTは合成されたゼオライトの取出口である。なお、回転円盤3aには、図3に示したように、邪魔板jや突起物tを必要に応じて任意の個所に複数個設けることが好ましく、またインナートレー3dは流動円盤式反応器3への取付部をR形状にすることが好ましい。これらの回転円盤3aの邪魔板jや突起物t及びインナートレー3dの取付部のR形状はバックミキシング防止作用をさらに向上させることができる。図示しないが、流動円盤式加熱溶解器2にも取付部をR形状にしたインナートレー2dが設けられ、また、回転円盤2aには邪魔板j,突起物tが設けられており、これらが相俟って、原料中のSiO2,Al23成分がアルカリ水溶液中に溶解するのを促進することができる。
而して、ゼオライトは、原料中のSiO2源及びAl23源がアルカリ水溶液中に溶解する溶解工程と、ゼオライト結晶化の前の前駆体の生成とゼオライトの結晶化・結晶成長工程が混合せずに順次行われて合成される。上記各工程が混合される(バックミキシングの発生)とゼオライトの合成が止まり、所定のゼオライトが合成されず、P型ゼオライト、最後にソーダライト又はアナルサイム結晶物が合成される。本発明は、流動円盤式加熱溶解器2、流動円盤式反応器3によりバックミキシングの発生を好適に防止するとともに、反応時間、反応温度を制御して、所望のゼオライト(A型,X型,Y型)を合成することができる。
本発明の石炭灰を主原料とする単結晶高機能ゼオライトの製造方法は、上述した製造装置の一例において実施されるが、この装置の運転開始時はアルカリ水溶液を導入し、装置内を循環させ装置系内が合成運転に必要な温度になるようにする。装置系内が所定の温度になったら、ゼオライト原料を加熱溶解工程に導入し、ゼオライト合成運転を開始する。
以下、製造工程の流れを順を追って説明すると、原料製造槽1において、所定の濃度のアルカリ水溶液に、主原料となる石炭灰と製造するゼオライトの型に応じてSiO2源又はAl23源となる副原料を添加して、石炭灰中における当初のSiO2/Al23の構成比がA型,X型,又はY型のいずれかの単結晶ゼオライトの所定の割合なるように調合し、原料製造槽1内の攪拌翼1aにより十分攪拌して混合させる。なお、このとき合成するゼオライトの型に応じて対応するA型、X型、Y型のいずれかの種結晶を添加する。また、図示しないが、副原料が工業製品のアルミン酸ソーダ又は水ガラスのような水溶液で添加できるものとなる場合は、副原料は原料製造槽1にではなく、流動円盤式反応器3に直接添加する。例えば、流動円盤式反応器3の直前の原料供給ラインに副原料供給ラインを接続し、流動円盤式加熱溶解器2から供給される原料と一緒に副原料を流動円盤式反応器3に供給し添加する。勿論、副原料供給ラインを直接流動円盤式反応器3に接続して副原料を添加してもよい。
次に、原料製造槽1において製造されたゼオライト原料Zを、原料供給ポンプPにより、熱回収用の熱交換器5に送り、流動円盤式反応器3から取出された合成ゼオライトとの間で熱交換し加温する。これを反応温度調節用の熱交換器4に送り、流動円盤式加熱溶解器2から流動円盤式反応器3に供給されるゼオライト原料成分溶解物との間で熱交換し更に加温する。なお、これらの熱交換器はチューブリング状又は多管式若しくは2重管式のものを使用することができる。
上記のように加温されたゼオライト原料を次に流動円盤式加熱溶解器2内に連続投入し、この流動円盤式加熱溶解器2内においてゼオライト原料中のSiO2,Al23成分を、同じくゼオライト原料中のアルカリ水溶液に十分溶解させると共に、所定温度まで加温する。このときの溶解温度は85℃〜140℃、好ましくは85℃〜120℃である。
次に、流動円盤式加熱溶解器2内において溶解されたゼオライト原料成分溶解物を上記の反応温度調節用の熱交換器4に送り、反応に適する所定温度(80℃〜120℃)になるように調節する。なお、流動円盤式加熱溶解器2内においては溶解に適する温度に加温されるが、溶解に適する温度は前駆体形成、及び単結晶成長に適する温度に較べて高温なので、上述した熱交換器4において反応に適する所定温度に調節した上で、流動円盤式反応器3に供給する。
流動円盤式反応器3内において、連続投入されたゼオライト原料成分溶解物は、回転する上段の回転円盤3aによりその中心部からこの反応器3の内周壁側に移動させられると共にインナートレイ3dにより下段の回転円盤3aの中心部側に移動させられ、回転円盤3aの上段から下段に至るまで、このような移動が繰り返しなされるので、その移動中においてゼオライト原料成分溶解物は十分反応し、ゼオライト前駆体の形成及び単結晶成長を高効率で生成することができる。なお、回転円盤3aの回転速度を調節することによって、ゼオライト原料成分溶解物の攪拌混合をバックミキシングを伴わずに行うことができ、十分な接触反応を行わせることができるので、原料成分溶解物の供給と反応を連続して行うことができる。
上記の流動円盤式反応器3において生成したゼオライトは、取出されて熱回収用の熱交換機5に送られ、上述したようにゼオライト原料Zと熱交換されて冷却される。この熱交換機5における冷却だけでは冷却が不十分であるので、更に冷却器4に送られ、速やかに合成が進まない温度以下にして所望型のゼオライトを合成する。なお、製造装置の停止時に装置系内の固化を防ぐために、ソーダにて一挙に入替える。上記の一連の製造工程の流れのフロー図を図4に示す。
次に、本発明において使用される原料成分について説明すると、本発明では、上述したように主原料として、石炭灰を使用する。ゼオライトの合成率をより向上させ、また合成時間をより短縮させるには、石炭灰を前処理として、粉砕又は分級する。粉砕は石炭灰の粒径を平均粒径10μm以下で、30μm以上のものが全体の1%以下にするのが好ましい。分級は45μm、好ましくは25μmで分級し、粒子の小さい方で合成するのが好ましい。
而して、ゼオライト合成には、SiO2,Al23,Na2O,H2Oの4種類の化合物が必要である。石炭灰にはSiO2とAl23が含まれているが、その成分量はA型,X型,Y型の各ゼオライト合成に必要な割合に合っておらず、合成するゼオライトの型により、SiO2又はAl23のいずれかが不足し、いずれか一方が未反応分として余剰となる。この未反応分をもゼオライト合成に使用するために、不足分の補充に副原料を添加する。副原料は固体又は液体のいずれでもよい。石炭灰を基準として各型のゼオライトを製造するときに不足する成分は、A型の場合はAl23が不足成分となり、X型の場合はAl23又はSiO2(石炭灰中のSiO2の含有量による)が不足成分となり、Y型の場合はSiO2が不足成分となる。
使用する副原料としては、SiO2源として、例えば、水ガラス等のSiO2を含む工業原料、珪砂等のようなSiO2を含む天然原料、製紙スラッジ焼却灰,籾殻焼却灰,廃ガラス等のようなSiO2を含む産業廃棄物が挙げられる。
また、Al23源として、例えば、アルミン酸ソーダ,水酸化アルミニウム等のようなAl23を含む工業原料、アルミニウムドロス,赤泥,アルミニウム缶,アルミニウム加工廃液、アルミニウム加工スラッジ等のようなAl23を含む産業廃棄物が挙げられる。
上記の主原料及び副原料を規定の濃度のアルカリ水溶液に混合,反応させてゼオライトを合成するが、アルカリ水溶液の原料としては、例えば、水酸化ナトリウム,炭酸ナトリウム等のNa2Oを含む工業原料や、各種廃ソーダ等のNa2Oを含む産業廃棄物が挙げられる。なお、上記装置においてゼオライトの連続合成は開始され、合成後の脱液されるアルカリ水溶液を回収し、アルカリ水溶液の一部として再使用することができる。なお、石炭灰中にある重金属はその一部がアルカリ水溶液に溶け出して除かれる。
次に、主原料、副原料、アルカリ成分、水との各ゼオライトの型毎に次の表1にモル比で調合する。なお、合成時間の短縮のために、調合された主原料、副原料、アルカリ水溶液を80℃以下で6時間以上熟成させるのが好ましい。
Figure 0004461322
また、合成時間の短縮のために、調合された主原料、副原料及びアルカリ水溶液に、種結晶として合成されたゼオライトを下記の表2に示す比率で添加するのがより好ましい。なお、種結晶として使用するゼオライトは市販の工業原料からのゼオライト又は本発明で製造されたゼオライトを使用することができる。本発明で製造されたゼオライトを使用するときの添加量はゼオライトだけの重量ベースで添加量が3%以上になるようにする。また、添加するゼオライトを予め調合されるアルカリ水溶液中に常温若しくは80℃以下で熟成させた後、添加するのがより好ましい。
Figure 0004461322
次に、本発明の製造装置におけるゼオライトの合成条件について説明する。
(1)合成時の調合された主原料、副原料、アルカリ水溶液の装置内の流速
装置内で石炭灰が沈降しないように流速を0.3m/秒以上に保つ。なお、石炭灰を粉砕したときは、流速を0.2m/秒以上にすることができる。
(2)流動回転円盤式反応器内における回転円盤の回転数
流動回転円盤式反応器内で調合された原料の流動がレイノルズ数で10の5乗から10の6乗になるように回転円盤を回転させる。好ましくは、レイノルズ数が50,000〜150,000になる回転数がよい。
(3)合成温度
ゼオライトの型で、A型の場合は90℃〜105℃、好ましくは98℃〜102℃、X型の場合は85℃〜100℃、好ましくは85℃〜90℃、Y型の場合は、85℃〜105℃である。
(4)合成時間
ゼオライトの型で、A型の場合は、1時間〜3時間、好ましくは2時間〜3時間、X型の場合は、2時間〜6時間、好ましくは3時間〜4時間、Y型の場合は、2時間〜6時間、好ましくは3時間〜4時間である。
次に、本発明の実施例について説明する。ゼオライト製造原料の各型における調合割合を下記の表3に示す。
Figure 0004461322
次に、ゼオライト製造原料の各型における合成条件を次に表4に示す。
Figure 0004461322
上記の実施例において合成されたゼオライトをX線解析の結果、A,X,Y型の合成が確認された。これらの解析結果は、図5に石炭灰からのA型単結晶合成X線解析図として、図6に石炭灰からのX型単結晶合成X線解析図として、図7に石炭灰からのY型単結晶合成X線解析図としてそれぞれ示してある。
本発明は、廃棄物である石炭灰を主原料とし、単結晶高機能ゼオライト(A型,X型,Y型)を連続的に且つ廉価に製造することができ、利用分野も農業土壌改良、排水水質浄化等の大規模分野に大量使用することができることになり、循環型環境社会の達成に貢献できる。
本発明の一例の製造装置の概要を示す斜視図。 図1の製造装置における流動円盤反応器の内部構造を示す断面図。 図2の流動円盤反応器の回転円盤の拡大図で、(a)は鳥瞰図、(b)は断面で示す側面図。 図1の製造装置によるゼオライト製造の流れを示すフロー図。 石炭灰からのA型単結晶合成X線解析図。 石炭灰からのX型単結晶合成X線解析図。 石炭灰からのY型単結晶合成X線解析図。
符号の説明
1 原料製造槽
1a 攪拌翼
1b モータ
2 流動円盤式加熱溶解器
2a 回転円盤
2b 回転軸
2c モータ
3 流動円盤式反応器
3a 回転円盤
3b 回転軸
3c モータ
3d インナートレイ
4 反応温度調節用の熱交換器
5 熱回収用の熱交換器
6 冷却器
7 圧力調節弁
P 原料供給ポンプ
Q 加熱器
JK ジャケット加熱管
j 邪魔板
t 突起物
Z ゼオライト原料

Claims (11)

  1. 主原料となる石炭灰に対し、SiO2源又はAl23源となる副原料を添加して前記石炭灰におけるSiO2/Al23の構成比がA型,X型,又はY型のいずれかの単結晶ゼオライトの所定割合になるように調合し、アルカリ水溶液と攪拌混合するゼオライト原料製造工程、当該ゼオライト原料を熱交換器により加温して加熱溶解器に連続投入し、当該溶解器内で温度調節しながら原料中のSiO2,Al23成分をアルカリ水溶液中に溶解させるゼオライト原料成分溶解工程、得られた原料成分溶解物を反応温度調節用熱交換器においてゼオライト合成反応に適した温度に調節する反応温度調節工程、反応に適した温度に調節された前記原料成分溶解物を流動円盤式反応器に連続投入し、当該反応器内の多段回転円盤により順次攪拌しながら反応させてゼオライト前駆体を製造すると共に、当該前駆体からゼオライト結晶を成長させ、A型,X型,Y型のいずれかのゼオライトを合成するゼオライト合成工程、を少なくとも有することを特徴とする石炭灰を主原料とする単結晶高機能ゼオライトの製造方法。
  2. 加熱溶解器は、内部に多段回転円盤を具備する流動円盤式加熱溶解器である請求項1の石炭灰を主原料とする単結晶高機能ゼオライトの製造方法。
  3. SiO2/Al23の構成比を、副原料を添加し、モル比でAl23が1に対し、SiO2が1〜5になるように調合し、A型のゼオライトを合成する請求項1又は2の石炭灰を主原料とする単結晶高機能ゼオライトの製造方法。
  4. SiO2/Al23の構成比を、副原料を添加し、モル比でAl23が1に対し、SiO2が1.77〜10.77になるように調合し、X型のゼオライトを合成する請求項1又は2の石炭灰を主原料とする単結晶高機能ゼオライトの製造方法。
  5. SiO2/Al23の構成比を、副原料を添加し、モル比でAl23が1に対し、SiO2が2.5〜12.0になるように調合し、Y型のゼオライトを合成する請求項1又は2の石炭灰を主原料とする単結晶高機能ゼオライトの製造方法。
  6. SiO2源となる副原料は、水ガラス,珪砂,製紙スラッジ焼却灰,籾殻焼却灰,廃ガラスから選択されるいずれか1又は2以上である請求項1〜5のいずれかの石炭灰を主原料とする単結晶高機能ゼオライトの製造方法。
  7. Al23源となる副原料は、アルミン酸ソーダ,水酸化アルミニウム,アルミニウムドロス,赤泥,アルミニウム缶,アルミニウム加工廃液、アルミニウム加工スラッジから選択されるいずれか1又は2以上である請求項1〜5のいずれかの石炭灰を主原料とする単結晶高機能ゼオライトの製造方法。
  8. 主原料となる石炭灰に対し、SiO2源又はAl23源となる副原料を添加して前記石炭灰におけるSiO2/Al23の構成比がA型,X型,又はY型のいずれかの単結晶ゼオライトの所定割合になるように調合し、原料製造槽内でアルカリ水溶液と攪拌混合するゼオライト原料製造手段と、当該ゼオライト原料を熱回収用熱交換器、及び、反応温度調節用熱交換器を通過させて加温し、加熱器によって温度調節可能に加熱されている加熱溶解器に連続投入して当該溶解器内で温度調節しながら原料中のSiO2,Al23成分をアルカリ水溶液中に溶解させるゼオライト原料成分溶解手段と、得られた原料成分溶解物を前記反応温度調節用熱交換器においてゼオライト合成反応に適した温度に調節する反応温度調節手段と、反応に適した温度に調節された前記原料成分溶解物を流動円盤式反応器内に連続投入して当該反応器内に回転速度調節可能に設けられた多段回転円盤により順次攪拌しながら反応させてゼオライト前駆体を製造すると共に、当該前駆体からゼオライト結晶を成長させ、A型,X型,Y型のいずれかのゼオライトを合成するゼオライト合成手段を、少なくとも具備して成ることを特徴とする石炭灰を主原料とする単結晶高機能ゼオライトの製造装置。
  9. 加熱溶解器は、内部に多段回転円盤を具備する流動円盤式加熱溶解器である請求項8の石炭灰を主原料とする単結晶高機能ゼオライトの製造装置。
  10. 合成されたゼオライトを速やかに合成が進まない温度以下に下げるための熱回収熱交換器及び冷却器を通過させる冷却手段を設けた請求項8又は9の石炭灰を主原料とする単結晶高機能ゼオライトの製造装置。
  11. 装置内の圧力を一定に保つ圧力調節手段を設けた請求項8〜10のいずれかの石炭灰を主原料とする単結晶高機能ゼオライトの製造装置。
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