JP4461308B2 - 美爪料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水系美爪料に関し、乾燥速度、耐水性を損なうことなく付着性、成膜性、更に防腐性を改善することができ、成膜性、乾燥速度、耐水性、付着性、柔軟性、更に防腐性においても美爪料の品質を充分満足し得る優れた水系美爪料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の美爪料は、ニトロセルロース等の被膜形成剤と、アルキット樹脂、スルホンアミド樹脂、シュークロース系樹脂、アクリル樹脂等の樹脂類に、可塑剤、色材等の添加成分を加えたものを、エステル系、ケトン系等の有機溶剤に溶解したいわゆる溶剤系のものが一般的である。しかしながら、これらの有機溶剤系美爪料は、被膜形成剤としての諸物性は優れているものの、有機溶剤を使用しているために、引火性、溶剤臭、人体への悪影響等の問題があり、更に爪そのものへの悪影響において、改善すべき課題を有している。
【0003】
これらの欠点を解決するために、近年、有機溶剤を使用しない水系の美爪料が開発、提案されている。その一つとしてポリマーエマルジョンの使用が検討されているが以下の問題を有している。ポリマーエマルジョンはエマルジョン粒子間の熱的融着を介して始めて均一な膜が形成されるため、良好な結着性を示す被膜を生成するためには十分軟質である必要があるが、一方では高い強度を有するべく十分硬質であることが必要とされる。しかしながら、良好な被膜形成をもたらすポリマーエマルジョンの柔軟性は、生成された被膜が強度、硬度、耐摩耗性及び靭性を示すことに対立する軟質性又は粘着性を意味している。そのために、ポリマーエマルジョンを水系美爪料に用いる場合には、最低造膜温度を低下させ、常温又はそれ以下の温度においても被膜形成能を有するものとする必要がある。
【0004】
このような観点から通常、ビニル系ポリマーエマルジョンには可塑剤、成膜助剤を添加して最低造膜温度を低下させている。しかしながら、従来のビニル系ポリマーエマルジョンと可塑剤又は成膜助剤の組合わせでは、生じた被膜が乾燥速度や、耐水性及び耐久性、成膜性等に劣るという欠点があり、可塑剤又は成膜助剤の選定は難しく、成膜性と被膜物性の両立は困難であった。なお、同様の目的として特開平7−89827号公報にはポリマーエマルジョンと特定のオキシアルキレングリコール誘導体及び特定の沸点と溶解性パラメーターを有する可塑剤を配合することが提案されているが、耐水性や乾燥性が劣っており、実用上の総合的な性能としては必ずしも満足のいくものではない。
【0005】
更に、ポリマーエマルジョンを用いた水系美爪料は、有機溶剤を使用していないため、安全性等の点で優れているものの、水を多量に含んでいるために、カビや細菌などの微生物に侵されやすい。更に、取り出し時において、大気中に浮遊する微生物が開栓された水系美爪料中に混入したり、水系美爪料を使用する際には、少量を取り出して爪に塗布するため、爪と接触した筆及び水系美爪料が容器内へもどされることにより、爪の表面に付着した微生物が混入する可能性が高い。また、水系美爪料の一回当たりの使用量は容器内に充填された量に比較して一般に少ないため、消費者が使用し始めてから使用し終わる迄に、水系美爪料を取り出す頻度が極めて高く、また長時間を経過することが多い。従って、水系美爪料はカビや細菌などの微生物により使用中に変質しやすいという問題があり、これを防止するために、水系美爪料には、より高い防腐性を有することが極めて重要である。
【0006】
しかしながら、水系美爪料に、微生物安定性を付与するために通常の化粧料に用いられる防腐剤を配合しても、十分な防腐性は得られず、また、化粧品原料基準には配合できる防腐剤の種類及び量が制限されており、十分な防腐効果を得るために多量に配合することができなかった。更に、化粧品原料基準に記載されている防腐剤の配合は、エマルジョンの凝集や破壊などがみられ、安全性の点でも問題があった。従って、化粧品原料基準に記載されている防腐剤の1種又は2種の組み合わせにより、水系美爪料中で安定かつ基材安定性に悪影響を及ぼさず、効果の高い防腐剤を選定することは困難であった。
また、化粧料中にエタノール等のアルコール類を配合することにより防腐効果を与えることも可能であるが、二次汚染まで防ぐには多量に配合する必要があり、エタノール等のアルコール類は安全性の観点から敬遠されることが多く、少量の配合にとどめることが望ましく、可能であれば配合しないことが望まれている。更にエタノール等のアルコール類を多量に配合したものでは、エマルジョンの凝集や破壊がみられるなど、安定性の点でも問題があった。
なお、防腐性の改善を目的として特開平8−225433号公報にエタノール等のアルコール類と抗菌性物質とを組み合わせて用いることが提案されている。しかしながら、前述した理由で、事実上の性能を得るためには課題を含んでいる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記諸事情に鑑みてなされたもので、安全で、しかも耐水性及び耐久性、付着性、乾燥性に優れ、高い被膜物性を有し、更に水系美爪料に必要な高い防腐性をも同時に兼ね備えた水系美爪料を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ビニル系ポリマーエマルジョンにベンジルアルコール及び特定の範囲の沸点を有する可塑剤を配合すれば光沢、付着性、耐水性、乾燥性に優れ、更に水系美爪料に必要とされる高い防腐性をも同時に兼ね備え、しかも、引火性、溶剤臭がない等の長所を備えた水系美爪料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、次の成分(A)ビニル系ポリマーエマルジョン、(B)ベンジルアルコール、(C)沸点が100℃〜450℃の可塑剤を配合してなる水系美爪料を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる(A)成分のビニル系ポリマーエマルジョンは、例えば重合可能な二重結合を有する単量体の1種又は2種以上を重合することにより製造されるものが使用できるポリマーエマルジョンのための単量体としては、親水性単量体、疎水性単量体のいずれでもよく、親水性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸;ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、等のヒドロキシ基又はグリシジル基含有エチレン性単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ダイアセトンアクリルアミド等のエチレン性アミド;アミノエチルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,Nジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N,N,−トリメチルアミノエチルアクリレート、N,N,N,−トリメチルアミノエチルメタクリレート等のエチレン性アミン又はその塩等があげられる。
【0010】
また、疎水性単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、アルキルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族モノ及びジビニル化合物;メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ターシャリーブチルアクリレート、ターシャリーブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、パーフルオロオクチルメタクリレート、パーフルオロオクチルアクリレート等のフッ素系単量体、シリコーンマクロモノマーなどが挙げられる。これらの単量体は1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0011】
成分(A)のビニル系ポリマーエマルジョンは、例えば上記単量体の1種又は2種以上を常法に従って重合させ、エマルジョン重合物に必要に応じて水等を加えて粘度、固形分等を調整したものを用いるとよい。ポリマーエマルジョンの好ましい重合法としては、分散重合法、転相乳化重合法、シード重合法、乳化重合法等が挙げられる。本発明の成分(A)のビニル系ポリマーエマルジョンとしては、例えば、オレフィン又はジエン系エマルジョン[例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブチレン,ポリイソブチレンなどのエマルジョン,ポリブタジエンラテックス,天然ゴムラテックス,ポリクロロプレン系ラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス,アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス,(メタ)アクリル酸エステル−ブタジエン共重合体ラテックスなど]、アクリル系重合体エマルジョン[例えば、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル−スチレン共重合体,メタクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体,メタクリル酸エステル−スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体など]、スチレン系重合体エマルジョン[例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体,スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体など]、
【0012】
ハロゲン含有重合体エマルジョン[例えば、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体エマルジョン、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、エチレン−塩化ビニル共重合体エマルジョンなど]、ビニルエステル系エマルジョン[例えば、ポリ酸化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−高級脂肪酸ビニルエステル共重合体(例えば、エチレン−ベオバ(Veova)共重合体など)、エチレン−高級脂肪酸ビニルエステル−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−フマル酸エステル(又はマレイン酸エステル)共重合体、エチレン−酢酸ビニル−フマル酸エステル(又はマレイン酸エステル)共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−高級脂肪酸ビニルエステル−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル単量体共重合体、酢酸ビニル−高級脂肪酸ビニルエステル共重合体系、酢酸ビニル−高級脂肪酸ビニルエステル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など]、エポキシ樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、シリコーン樹脂エマルジョンなどが例示できる。
【0013】
前記(メタ)アクリル酸エステルには、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのメタクリル酸C1-18アルキルエステル(特にメタクリル酸C1-10アルキルエステル,好ましくはメタクリル酸C1-4 アルキルエステル)、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸C1-18アルキルエステル(特にアクリル酸C1-10アルキルエステル,好ましくはアクリル酸C2-10アルキルエステル)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2-6 アルキル(メタ)アリレート、グリシジル(メタ)アリレート、(メタ)アクリル酸などが含まれる。「ベオバ(Veova)」とは、分岐鎖を有するC6-18カルボン酸(すなわちアルキル部分に第2級又は第3級炭素原子を有するカルボン酸)のビニルエステル、好ましくはアルキル部分の第3級炭素原子にカルボキシル基が結合したC6-16カルボン酸(特にC6-12カルボン酸)のビニルエステルである。前記フマル酸エステルやマレイン酸エステルには、フマル酸モノC1-16アルキルエステル、フマル酸ジC1-16アルキルエステル、マレイン酸モノC1-16アルキルエステル、マレイン酸ジC1-16アルキルエステルなどが含まれる。これらの水性エマルジョンは1種又は2種以上を組み合わせても使用できる。
【0014】
なお、以上のポリマーエマルジョンの中でも、特にアクリル系エマルジョンが耐水性、被膜形成性等の点で好ましい。アクリルエマルジョンは、通常、アクリル酸エステルと少量のアクリル酸、メタクリル酸エステルとの乳化重合物であるが、被膜の光沢を向上させるためにスチレン等の芳香族系ビニルポリマーをまた、爪への付着性を改善するためには酢酸ビニル等のモノマーを目的に応じて共重合又はグラフト重合したものを使用するとよい。
【0015】
被膜の耐水性を向上させるためには、自己架橋型エマルジョンが好ましく、必要に応じて少量のメラミン樹脂を配合するなどしてもよい。ポリマーエマルジョンの重合度は、被膜形成性及び爪への付着性が得られれば良く、特に限定されず平均分子量3万〜20万程度のものが使用でき、特に4万〜10万程度のものが好ましい。水性エマルジョンの重合体の平均粒子径は、例えば、0.01〜5μm、好ましくは0.01〜1μm程度の範囲から選択でき、重合体粒子の構造は、均質構造に限らず、コア/シェル構造、海/島構造などの異相構造であってもよい。ベンジルアルコール及び、ベンジルアルコールと可塑剤を添加した後のビニル系ポリマーエマルジョンの最低造膜温度は20℃以下(例えば、−15℃〜20℃)、好ましくは−10℃〜15℃、更に好ましくは−5℃〜10℃程度の範囲から選択できる。なお、ビニル系ポリマーエマルジョンの重合体のガラス転移温度Tg(Foxの式による計算値)は、例えば、0℃〜100℃、好ましくは10℃〜90℃更に好ましくは、20〜80℃程度の範囲から選択できる。
【0016】
本発明において使用される(B)成分は、ベンジルアルコールとして市販されているものが使用でき、工業用、試薬用のいずれの純度でもよい。
本発明で使用される(C)成分である可塑剤は、(B)成分以外のもので、常圧における沸点が100〜450℃、好ましくは150〜350℃であるものが望ましい。沸点が100℃未満では可塑化効果が得られず、450℃を超えると爪に塗布後も揮散せず、べたついたままになるので好ましくない。
【0017】
(C)成分の可塑剤の例としては、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ等のセロソルブ類:メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類;ブタノール、ヘキサノール等の(B)成分以外のアルコール類;ヘキシレングリコール、ジブロピレングリコール等のジオール類;フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、カプリル酸エチル、カブロン酸ブチル、酢酸2−エチルヘキシル、クエン酸アセチルトリエチル等のエステル類:ジエチルベンゼン、オクチルベンゼン、ブチルベンゼン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0018】
本発明水系美爪料は、例えば上記(A)成分と(B)成分、及び必要に応じて(C)成分を混合し、更に所望により他の成分を配合することにより製造することができる。
(A)成分、(B)成分及び(C)成分の混合の方法は特に限定されず常法により行うことができ、例えば(A)成分と(B)成分、又は(A)成分、(B)成分及び(C)成分を単に攪拌混合する方法、(A)成分のビニル系ポリマーエマルジョン製造の際、単量体と共にあるいは単独で(B)成分及び/又は(C)成分を加える方法、あらかじめ水に分散させた(B)成分及び/又は(C)成分と(A)成分とを混合する方法等が用いられる。
【0019】
本発明の水系美爪料において、(A)成分及び(B)成分の混合物、又は(A)成分、(B)成分及び(C)成分の混合物は塗膜形成基剤として作用する。水系美爪料としたときのポリマー固形分の配合量は、5〜70重量%となるようにするとよい。ポリマーの種類によって異なるが、合計量が5重量%未満であると、実用上必要な被膜を得るためには数度の重ね塗りが必要となり、一方、70重量%を超えると得られる水系美爪料の粘度が高くなり、筆さばき性等の塗布性の低下がみられる。
(B)成分と(C)成分の配合量は、(A)成分のポリマーエマルジョンの固形分に対して(B)成分は0.05%〜50%、好ましくは、0.5%〜35%、更に好ましくは、1.5%〜20%である。(B)成分の配合量が0.05%未満では防腐性に劣り、他の防腐剤と併用しなければ必要とする防腐性が得られない。しかし、通常の化粧品に配合される防腐剤を配合してしまうとエマルジョンが破壊されるなど安定性の点で問題がある。また、(B)成分の配合量が50%以上だと、十分な防腐力は得られるが、爪に塗布後も揮散せず、べたついたままになり、希望とする被膜物性が得られないので好ましくない。(C)成分は0.05%〜50重量%、好ましくは0.5%〜40%、更に好ましくは5.0%〜30%の範囲で加えるとよい。(B)成分と(C)成分の配合量は両者の合計で1〜50重量%の範囲での使用が本発明の効果を得る点で好ましい。
【0020】
本発明の水系美爪料には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分の他に水系美爪料成分として一般に使用されている成分、例えば油分、保湿剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、染料、顔料、香料等を、適宜配合することができる。ここで顔料としては、例えば、特開平4−103516号公報に記載された顔料を好適に使用することができる。より具体的には、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、青色404号等の有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム、又はアルミニウムレーキ等のレーキ顔料、等公知の有機顔料が挙げられる。このような有機着色剤以外に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、チタン酸鉄、γ−酸化鉄、黄酸化鉄、黄土、黒酸化鉄、カーボンブラック、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト、群青、紺青、雲母チタン、オキシ塩化ビスマス等といった無機物質も使用することができる。また、増粘剤としては公知のものが使用でき、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の有機系増粘剤や、無機系のベントナイト等の水膨潤性土鉱物、ベーマイト等の含水酸化物、珪酸アルミニウムマグネシウム等の珪酸塩が使用できる。
【0021】
【発明の効果】
本発明の水系美爪料は、優れた光沢を有すると共に、従来の水系美爪料では達成できなかった耐水性、付着性、乾燥性等の性質をすべて満足させ、更に高い防腐性をも有し、しかも引火性、溶剤臭がない等の優れた性質を備えるものであり、特に優れた密着性及び防腐性を有するものである。従って、従来の有機溶剤を利用する美爪料に代わるものとして広く利用することができる。
【0022】
【実施例】
以下に本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」、「%」はそれぞれ「重量部」、「重量%」を示す。
【0023】
合成例1:
攪拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス吹き込み管を備えた反応器に、イオン交換水50部、炭酸ナトリウム0.1部、Newcol 714SN(日本乳化剤(株)製、ポリオキシエチレン特殊フェニルエーテル硫酸ナトリウム)3部を仕込み、窒素ガスを流し、溶存酸素を除去した。攪拌下において反応器を80℃に昇温させ、イオン交換水1部に過硫酸アンモニウム0.1部を溶解した水溶液を添加した後、メチルメタクリレート35部、n−ブチルアクリレート10部、アクリル酸2.3部からなる単量体混合液を、前記反応器内に3時間かけて滴下する。単量体混合液滴下終了後、更に80℃で3時間保温する。反応終了後、25%アンモニア水でpHを7に調整し、アクリルエマルジョンを得た。得られたエマルジョンは、Tg計算値54℃、固形分47%、粘度5,800mPa・s、重量平均分子量(Mw)はGPCを用いた測定により17万であった。
ビニル系ポリマーエマルジョン(a)を得た。
上記ポリマーエマルジョン(a)100部にベンジルアルコール10部及びセバシン酸ジエチル(沸点:308℃)5部を加え、ホモデイスパーを用い30分間攪拌し、ビニル系ポリマーエマルジョン(1)(ポリマー固形分40.9%)を得た。
【0024】
合成例2:
攪拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス吹き込み管を備えた反応器に、イオン交換水50部、炭酸ナトリウム0.1部、レベノールWZ(花王(株)製、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム)3部を仕込み、窒素ガスを流し、溶存酸素を除去した。攪拌下において反応器を80℃に昇温させ、イオン交換水1部に過硫酸カリウム0.1部を溶解した水溶液を添加した後、メチルメタクリレート15部、スチレン15部、エチルアクリレート15部、メタクリル酸2.5部からなる単量体混合液を、前記反応器内に3時間かけて滴下する。単量体混合液滴下終了後、更に80℃で3時間保温する。反応終了後、25%アンモニア水でpHを7に調整し、アクリルエマルジョンを得た。得られたエマルジョンは、Tg計算値53℃、固形分48%、粘度6,000mPa・s、重量平均分子量(Mw)はGPCを用いた測定により16万であった。
上記ポリマーエマルジョン100部にベンジルアルコール20部及びフタル酸ジエチル(沸点:296℃)5部を加え、ホモディスパーを用い30分攪拌し、ビニル系ポリマーエマルジョン(2)(ポリマー固形分38.4%)を得た。
【0025】
合成例3:
攪拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス吹き込み管を備えた反応器に、イオン交換水50部、炭酸ナトリウム0.1部を仕込み、窒素ガスを流し、溶存酸素を除去した。攪拌下において反応器を80℃に昇温させ、イオン交換水1部に過硫酸アンモニウム0.1部を溶解した水溶液を添加した後、メチルメタクリレート40部、アクリル酸2−エチルヘキシル7.5部、アクリル酸2.5部、ラテムルS−180A(花王(株)製、スルホコハク酸型反応性活性剤)2部からなる単量体及び乳化剤混合液を、前記反応器内に3時間かけて滴下する。混合液滴下終了後、更に80℃で3時間保温する。反応終了後、25%アンモニア水でpHを7に調整し、アクリルエマルジョンを得た。得られたエマルジョンは、Tg計算値55℃、固形分50%、粘度200mPa・s、重量平均分子量(Mw)はGPCを用いた測定により17万であった。
ビニル系ポリマーエマルジョン(c)を得た。
上記ポリマーエマルジョン100部にベンジルアルコール15部を加え、30分間攪拌し、ビニル系ポリマーエマルジョン(3)(ポリマー固形分43.5%)を得た。
【0026】
合成例4:
攪拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス吹き込み管を備えた反応器に、イオン交換水50部、炭酸ナトリウム0.1部、レベノールWZ(花王(株)製、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム)3部を仕込み、窒素ガスを流し、溶存酸素を除去した。攪拌下において反応器を80℃に昇温させ、イオン交換水1部に過硫酸アンモニウム0.1部を溶解した水溶液を添加した後、メチルメタクリレート35部、n−ブチルアクリレート10部、アクリル酸2.3部、t−ドデシルメルカプタン0.5部からなる単量体混合液を、前記反応器内に3時間かけて滴下する。単量体混合液滴下終了後、更に80℃で3時間保温する。反応終了後、25%アンモニア水でpHを7に調整し、アクリルエマルジョンを得た。得られたエマルジョンは、Tg計算値54℃、固形分47%、粘度5,200mPa・s、重量平均分子量(Mw)はGPCを用いた測定により4万であった。
上記ポリマーエマルジョン(d)100部にベンジルアルコール10部及びセバシン酸ジエチル(沸点:308℃)5部を加え、ホモディスパーを用い30分間攪拌し、ビニル系ポリマーエマルジョン(4)(ポリマー固形分40.9%)を得た。
【0027】
比較合成例1
合成例1で得られたポリマー固形分47%のビニル系ポリマーエマルジョン(a)を、比較美爪料基剤のエマルジョン(5)とした。
【0028】
比較合成例2
合成例1で得られたポリマー固形分47%のポリマーエマルジョン(a)100部にブチルセロソルブ20部及びセバシン酸ジエチル(沸点:308℃)5部を加え、ホモディスパーを用いて30分間攪拌し、美爪料基剤としてポリマーエマルジョン(6)(ポリマー固形分37.6%)を得た。
【0029】
比較合成例3
合成例1で得られたポリマー固形分47%のポリマーエマルジョン(a)100部にヘキシレングリコール(沸点:197℃)20部を加え、ホモディスパーを用いて30分間攪拌し、美爪料基剤としてビニル系ポリマーエマルジョン(7)(ポリマー固形分:39.2%)を得た。
【0030】
比較合成例4
合成例1で得られたポリマー固形分47%のポリマーエマルジョン(a)100部にブチルセロソルブ20部及びセバシン酸ジエチル10部を加え、ホモディスパーを用いて30分間攪拌し、美爪料基剤としてビニル系ポリマーエマルジョン(8)(ポリマー固形分:39.2%)を得た。
【0031】
実施例1〜4及び比較例1〜4
上記各合成例で得た美爪料基剤としてのポリマーエマルジョンを用いて水系美爪料(水系ネイルエナメル)を調整した。
美爪料は表1に示す組成の水系ネイルエナメルとし、下記製法に従って製造した。得られた水系ネイルエナメルそれぞれについて、下記の評価方法に従って、乾燥性、光沢、付着性、耐水性、臭い、防腐性及び安定性の各評価を行った。その結果を表1に示す。
表1中、エマルジョン(種別)は上記各合成例で得られたポリマーエマルジョンの番号を示し、エマルジョン(配合量)は該ポリマーエマルジョンの使用量を示す。なお、表中の(配合量)は重量%を示す。
【0032】
(製造方法)
イオン交換水に顔料を分散させた後、水性ポリマーエマルジョン、次いでその他の成分を添加し、均一に攪拌・混合して水系ネイルエナメルを製造した。各成分の配合量を表1に示す。
【0033】
(評価方法)
(1)乾燥性
ガラス板上に20μmのスリットを有するドクターブレードで試料を塗布し、指触、乾燥時間を測定する。
○:3分未満。
△:3分以上6分未満。
×:6分以上。
(2)光沢
ガラス板上に20μmのスリットを有するドクターブレードで試料を塗布し、1時間室温にて乾燥後の光沢を目視にて評価した。
(3)付着性
18才から35才までのパネラー10人により実用テストを行い、被膜の持ち(剥がれ難さ、傷つき難さ)について評価した。
【0034】
(4)耐水性
ガラス板上に試料を、ネイルエナメル筆にて均一に塗布し、1時間乾燥後40℃の水に1時間浸漬して被膜の変化(白濁、膨潤、柔軟化、剥離等)を評価する。
(5)臭い
ネイルエナメルビンの口元で臭いを官能評価する。
なお、上記評価項目(2)〜(6)については次のように判定した。
◎:非常に良好
○:良好
△:普通
×:不良
【0035】
(6)防腐性
試料20gに対し、細菌(Escherichia Coli、Staphylococcus aureus 、Pseudomonas aeruginosa)及び、真菌(Candida albicans、Aspergillus niger )を105 〜106 個/gとなるように菌液を接種した後、経日の生残微生物数を計測し、次の3段階評価を行った。
○:非常に良好(7日目までに死滅)
△:良好(14日目までに死滅)
×:不良(14日目以降も死滅せず)
(7)安定性
試料を作製した後に、ガラスびんに充填して、室温(3ケ月間)、50℃(1カ月間)に放置して、沈殿及び変色の状態を目視で観察し、評価した。
○:非常に良好(沈殿及び変色が生じなかった)
△:良好(僅かに沈殿及び変色が生じた)
×:不良(沈殿及び変色が生じた)
【0036】
【表1】
【0037】
表1の結果から明らかなように、エマルジョン(種別)として、ベンジルアルコールを加えたエマルジョン(3)、ベンジルアルコールと本発明で規定する可塑剤を加えたエマルジョン(1)、(2)、(4)を使用した実施例1〜5の本発明の水系美爪料は、ベンジルアルコール等を加えない従来のものに比べ、付着性、耐水性、乾燥性等の点において優れ、更に防腐性、安定性にも優れた水系美爪料であった。
Claims (1)
- 少なくとも(A)ビニル系ポリマーエマルジョンと(B)ベンジルアルコールと(C)沸点が100℃〜450℃の可塑剤とを含有し、(A)成分のポリマー固形分の配合量が美爪料に対して5〜70重量%、(B)成分の配合量がポリマー固形分に対して20〜50重量%、(C)成分の配合量がポリマー固形分に対して0.05〜50重量%であることを特徴とする水系美爪料。
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