JP4461264B2 - 耐震架構体 - Google Patents
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Description
本発明は、地震などの振動外力を受けた場合であっても、耐え得ることができるブレースを備える耐震架構体に関するものである。
背景技術
従来、架構体の耐震力を向上させるために、梁柱架構体の対角にそれぞれ連結された斜め部材を備えるブレース構造が採用されている。また、斜め部材のみからなるブレース構造以外のものとして、例えば、特開2000−27483号公報(以下、特許文献1という)、特開2005−188240号公報(以下、特許文献2という)、特開平9−273329号公報(以下、特許文献3という)、特開2001−234643号公報(以下、特許文献4という)、特開平10−227061号公報(以下、特許文献5という)、特開昭63−89743号公報(以下、特許文献6という)、特開平9−279894号公報(以下、特許文献7という)に開示されたものがある。
特許文献1には、一端側が梁柱架構体に固着された4本の斜め部材と、これらの斜め部材の他端側に固着された四角形部材とを備えるブレース構造が開示されている。特許文献2には、一端側が梁柱架構体に固着された4本の斜め部材と、これらの斜め部材の他端側に固着された低降伏点鋼からなるエネルギー吸収部材とを備えるブレース構造が開示されている。また、特許文献3には、一端側が梁柱架構体に固着された4本の斜め部材と、これらの斜め部材の他端側に取り付けられたダンパとを備えるブレース構造が開示されている。そして、特許文献1〜3は、何れも、振動を抑制するいわゆる制振効果を持つことができると記載されている。
また、特許文献4には、それぞれの斜め部材の他端側に先行塑性体を備えるブレース構造が開示されている。このような構成とすることで、梁柱架構体に水平力が作用する際に、先行塑性体が塑性変形することで、梁柱架構体の変形を抑制するとされている。特許文献5には、斜め部材の他端側及び上下梁にピン接合された中間部材を備えるブレース構造が開示されている。このような構成とすることで、中間部材のうち斜め部材の間に位置する部分がせん断変形をする。これにより、斜め部材が引張破断を起こす前に十分エネルギーを吸収でき、過大な変形を抑制することができるとされている。特許文献6には、斜め部材に接合される塑性化部材を有するブレース構造が開示されている。このような構成とすることで、塑性化部材が、塑性変形することでエネルギーを吸収することができるとされている。つまり、特許文献4〜6は、特許文献1〜3と同様に、振動を抑制する制振効果を持つことになる。
また、特許文献7には、一端側が梁柱架構体に固着された斜め部材と、これらの斜め部材の他端側にピン接合された四角形状の変位吸収装置とを備えるブレース構造が開示されている。このような構成とすることで、梁柱架構体に水平力が作用する際に、全ての斜め部材に引張力が生じるような構成となり、全体として高い靱性を有するとされている。
しかし、特許文献1〜6に記載のブレース構造では、いわゆる制振効果を発揮するようにするために、斜め部材のみからなるブレース構造に比べて耐力(強度)が低下する。例えば、特許文献1に記載のブレース構造は、中央の四角形部材が変形することにより、制振効果を発揮しているが、四角形部材の変形が容易となることにより耐力が低下する。また、特許文献2に記載のブレース構造は、低降伏点鋼が変形することにより、制振効果を発揮しているが、当該低降伏点鋼の変形が容易となることにより耐力が低下する。また、特許文献3に記載のブレース構造では、ダンパが変形することにより、制振効果を発揮しているが、当該低降伏点鋼の変形が容易となることにより耐力が低下する。また、特許文献4〜6についても、同様に、耐力が低下する。
このような制振効果を合わせ持つようなブレース構造は、耐力を大きく向上させることを目的とした場合には適切ではない。
また、特許文献7に記載のブレース構造では、斜め部材のみからなるブレース構造に比べて、耐力が低下するなどの問題は生じない。しかし、中央の変位吸収装置は、四角形状をなしているので、非常に複雑な構成となる。つまり、高コスト化を招来することになり、梁柱架構体への取付が容易ではない。さらに、変位吸収装置の四角形の各辺を構成する部材は、何れも、ある程度の軸力に耐え得るようにしなければならない。従って、変位吸収装置の四角形の各辺を構成する部材がある程度の断面積を有する必要があり、全体として大型化する。
ここで、斜め部材のみからなるブレース構造や上述した特許文献1〜7に記載のブレース構造では、大きな水平力が作用した場合には、梁柱架構体の変形に伴ってブレース自体が大きく変形するために、ブレースが破断するおそれがある。
さらに、上述のブレース構造は、水平力が作用した直後から、梁柱架構体自体の耐震力に加えて、ブレースによる耐震力が発揮し始める。つまり、初期剛性が非常に高い構造となる。このような初期剛性の非常に高いブレース構造を複数階の建物の1階部分のみに作用した場合には、水平力が作用した直後において、上階部分に大きな変形が生じることになる。これは、1階部分と上階部分との初期剛性の比率が大きく異なることが原因である。従って、上階部分の初期剛性を向上させるために、上階部分にもブレース構造を採用するなどの措置を講じなければならない。そうすると、高コスト化を招来するという問題が生じる。
また、特開平7−279478号公報(以下、特許文献8という)に、上記とは異なるブレース構造が開示されている。このブレース構造は、ブレース架構との接続部にギャップ量を与える構成としている。さらに、ギャップ量に対応する層間変形量は、梁柱架構体の許容応力以下、すなわち弾性変形域内となるように設計されている。つまり、このブレース構造によれば、梁柱架構体の弾性変形域内において、ギャップ量に対応する層間変形量を超えると、ブレースによる剛性が加わることになる。これにより、地震荷重と風荷重の両者に対して対応できる梁柱架構体であるとされている。
しかし、特許文献8のブレース構造によれば、ギャップ量を与える装置が複雑であり高コストとなるおそれがある。また、梁柱架構体の弾性変形域内でブレースによる剛性が加わるため、大地震時には他の階に悪影響を及ぼすおそれがある。さらに、非常に大きな地震が発生した場合であっても、ブレースが破断に至るまでの梁柱架構体の水平変位量をさらに大きくすることが望まれている。
発明の開示
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、ブレースによる耐震力を向上させつつ、簡易的な耐震架構体を提供することを目的とする。さらには、小型化が可能で、ブレースが破断に至るまでの梁柱架構体の水平変位量を大きくし、且つ、特許文献1〜7のブレース構造に比べて初期剛性を小さくすることのできる耐震架構体及び当該耐震架構体に使用されるブレース部材を提供することを目的とする。
(1)本発明の耐震架構体
本発明の耐震架構体は、上下梁と該上下梁間に配置される左右柱とからなる四角形状の梁柱架構体と、梁柱架構体のそれぞれの対角に連結される一対のブレースと、を備える耐震架構体であって、各ブレースは、梁柱架構体の水平変位量Uが所定変位Usに達するまでは梁柱架構体に水平力が作用することに伴う引張力及びせん断力を生じず、梁柱架構体の水平変位量Uが所定変位Usを超える場合に梁柱架構体に水平力が作用することに伴う引張力のみを生じるように構成されていることを特徴とする。
ここで、梁柱架構体の水平変位量Uとは、下梁に対して上梁が水平方向の何れかへ相対移動した場合における当該相対移動量をいう。つまり、梁柱架構体の水平変位量Uが所定変位Usとなる場合とは、下梁に対して上梁が水平方向の何れかへ相対的に所定変位Us移動した場合となる。また、梁柱架構体に水平力が作用することに伴う引張力とは、梁柱架構体に水平力が作用していない初期設定状態における張力を含まない意味である。もちろん、梁柱架構体に水平力が作用することに伴うせん断力についても同様である。また、各ブレースが連結される梁柱架構体の対角とは、梁と柱が接合される部位のみならず、その近傍を含む。この意味は、以下の角部という場合も同意である。
また、初期設定状態におけるブレース張力が大きい場合、梁柱架構体に水平変位を作用後に無視できないブレース剛性が生じる場合などがあり、そのような場合、初期の張力をブレースの設計に考慮するとよい。ただし、ブレースの形状を整えるためなどに必要な量を超えて、初期設定状態のブレース張力を入れない方がよい。なお、ブレースには圧縮力が生じないようにするとよい。
つまり、本発明によれば、梁柱架構体の水平変位量Uが所定変位Usに達するまでは、ブレースが耐震力(引張力及びせん断力)を発揮せず、梁柱架構体のみの耐震力が発揮する。そして、梁柱架構体の水平変位量Uが所定変位Usに達した後は、梁柱架構体の耐震力に加えてブレースの耐震力(引張力のみで、せん断力は含まない)が発揮し始める。つまり、ブレースの耐震力が発揮し始める時点が、耐震架構体に水平力が作用した時点から梁柱架構体の水平変位量Uが所定変位Usに達した時点としている。
ここで、ブレースの耐震力が発揮し始める時点を遅らせる場合であって、耐震架構体全体としての耐力は、梁柱架構体の耐力とブレースの耐力とを合計したものとなる。従って、本発明のブレースは、上述した特許文献1〜6などに記載されているようなダンパなどを用いていないため、当該ブレースを備えた架構体の耐力は確実に向上させることができる。
また、ブレースの耐震力が発揮し始める時点を遅らせることにより、次の効果を奏する。すなわち、耐震架構体に大きな水平力が作用した場合には、梁柱架構体の水平変位量Uが大きくなる。このとき、梁柱架構体の水平変位量Uが所定変位Us以下の場合には、ブレースには引張力が作用していない。そして、梁柱架構体の水平変位量Uが所定変位Usを超える場合に、ブレースに引張力が作用し始める。つまり、ブレースが破断するまでの梁柱架構体の水平変位量Uは、ブレース自体の変形による変位量に所定変位Usを加えた変位量となる。ここで、従来のブレース構造の架構体では、梁柱架構体が変形すると同時にブレースが変形していた。つまり、ブレースが破断するまでの梁柱架構体の水平変位量Uは、ブレース自体の変形による変位量のみとなる。従って、本発明の耐震架構体によれば、ブレースが破断するまでの梁柱架構体の水平変位量Uは、従来に比べて所定変位Usの分だけ増加させることができる。つまり、耐震架構体に非常に大きな水平力が作用して、大きな水平変位が生じるような場合であっても、ブレースが破断することなく、高い耐震力を確実に発揮することができる。
さらに、ブレースの耐震力が発揮し始める時点を遅らせることにより、水平力が作用した直後における耐震架構体の剛性(以下、「初期剛性」という)が実質的に梁柱架構体の剛性のみによることになる。例えば、建物の1階部分のみに本発明の耐震架構体を適用し、上階部分には梁柱架構体のみの構造の場合には、1階の初期剛性及び上階の初期剛性が概ね等しくなる。つまり、1階部分と上階部分との初期剛性を等しくすることができる。これにより、従来のようなブレース構造を採用した場合における1階部分と上階部分との初期剛性が大きく異なることにより、上階部分に悪影響が生じることを防止できる。さらに、従来のブレース構造では、1階部分と上階部分との初期剛性が大きく異なることにより上階部分への悪影響が生じないようにするために、上階部分にも同様のブレース構造を採用するなどの対策を施していた。しかし、本発明の耐震架構体によれば、元々初期剛性が等しいので、上階部分へブレース構造を採用しないとしても、上階部分への悪影響が生じることなく、十分に耐震力を確保することができる。つまり、低コスト化を図ることができる。ただし、上階部分へ本発明の耐震架構体を適用することにより、より耐震力を向上させることができる。
また、本発明の耐震架構体の各ブレースは、梁柱架構体に水平力が作用していない場合における梁柱架構体のそれぞれの対角線より長い長さからなり、且つ、梁柱架構体の水平変位量Uが所定変位Usとなる場合に直線状になるように構成されているとよい。
つまり、ブレースに引張力が作用する際に、ブレースが直線状になっている。このようにブレースが直線状となる場合に引張力が作用することにより、ブレースの断面積を最も小さくすることができる。特に、特許文献7に記載されている四角形の変位吸収装置と比べた場合には、本発明によるブレースの小型化が顕著となる。さらに、本発明のブレースの設計は、非常に容易であると共に、構造が非常に簡易的となる。このように、設計の容易化、構造の簡易化、ブレースの断面積の最小化などにより、低コスト化を図ることができる。
さらに、上記の場合、本発明のブレースは、梁柱架構体に水平力が作用していない場合における梁柱架構体の対角線より長い長さからなる。これにより、梁柱架構体の水平変位量Uが所定変位Us以下の場合には、ブレースに引張力が確実に作用しないようにすることができる。そして、梁柱架構体の水平変位量Uが所定変位Usを超える場合に、ブレースに引張力が作用するようにすることができる。
また、本発明の各ブレースは、梁柱架構体の水平変位量Uが所定変位Usとなる場合における梁柱架構体の対角線の長軸長さからなるように構成されているとよい。つまり、梁柱架構体の水平変位量Uが所定変位Usに達するまでの間は、ブレースの長さは、梁柱架構体の対角線の長軸長さよりも長くなる。そして、梁柱架構体の水平変位量Uが所定変位Usに達したときに、ブレースの長さは、梁柱架構体の対角線の長軸長さと同一となる。そして、梁柱架構体の水平変位量Uが所定変位Usより大きくなると、ブレースの長さは、梁柱架構体の対角線の長軸長さの拡大に伴って伸長変形する。つまり、本発明のブレースが、梁柱架構体の水平変位量Uが所定変位Usとなる場合における梁柱架構体の対角線の長軸長さとすることで、梁柱架構体の水平変位量Uが所定変位Usを超える場合にブレースの耐震力が発揮し始めるようにできる。
そして、このブレースの全長は、数1に従って算出されるようにするとよい。このように、数1に従ってブレースの全長を算出することで、ブレースの設計が非常に容易となる。
また、本発明のブレースに引張力が生じる所定変位Usに対応する梁柱架構体の層間変形角Rは、1/60〜1/10の範囲としてもよい。ここで、層間変形角Rとは、梁柱架構体の水平変位量Uを柱長さ(階高)で除した値である。そして、梁柱架構体の層間変形角Rが1/60〜1/10の範囲とは、梁柱架構体が大きく変形して倒壊する前段階の状態、いわゆる大破・中破の状態となる。すなわち、層間変形角Rが1/60〜1/10の範囲における梁柱架構体の水平変位量Usは、梁柱架構体の弾性変形と塑性変形との境界点よりも十分に大きくなる。ここで、梁柱架構体の弾性変形と塑性変形との境界点の状態とは、すなわち梁柱架構体の水平変位量が梁柱架構体の損傷開始点に一致する状態である。
このように大破・中破の状態にてブレースが耐震力を発揮し始めることにより、梁柱架構体のうち倒壊しそうになる部分のみに有効にブレースが機能する。また、梁柱架構体のうち倒壊しそうにない部分にはブレースが機能しないため、ブレースが耐震力を発揮することにより生じる梁柱架構体のうちの他の部分への悪影響を抑制できる。例えば、上階部分にブレース構造を採用していない場合であって、梁柱架構体のうち倒壊しそうにない部分に配置された1階部分のブレースが機能した場合には、上階部分へ大きな変形が生じてしまう等の悪影響を及ぼすおそれがある。しかし、大破・中破の状態にてブレースが耐震力を発揮するようにすることで、このような悪影響を及ぼすことを抑制できる。
さらに、層間変形角Rを1/60〜1/10とすることで、非常に大きな地震が発生した場合であっても、ブレースが破断に至るまでの梁柱架構体の水平変位量をさらに大きくすることができる。従って、非常に大きな地震が発生した場合であっても、建物が倒壊することを防ぐことができる。
なお、本発明のブレースが降伏する際の梁柱架構体の水平変位量Ubについては、以下のようにしてもよい。なお、ブレースが降伏する状態とは、ブレースの弾性変形と塑性変形との境界点の状態である。
ブレースが降伏する際の梁柱架構体の水平変位量Ubは、梁柱架構体が降伏する際の梁柱架構体の水平変位量Uf以下としてもよい。ここで、梁柱架構体が降伏する状態とは、梁柱架構体の弾性変形と塑性変形との境界点の状態である。この場合には、梁柱架構体が塑性変形する前に、ブレースが耐震力(引張力)を発揮し始める。従って、大きな水平力が耐震架構体に作用した場合であっても、出来る限り梁柱架構体及びブレースが塑性変形しないようにすることができる。
ブレースが降伏する際の梁柱架構体の水平変位量Ubは、梁柱架構体が降伏する際の梁柱架構体の水平変位量Ufと略同一としてもよい。この場合には、梁柱架構体及びブレースが全く若しくはほとんど塑性変形することなく耐えることができる水平力が最大とすることができる。なお、ブレースが降伏する際の梁柱架構体の水平変位量Ubが、梁柱架構体が降伏する梁柱架構体の水平変位量Ufよりも僅かでも大きい場合には、梁柱架構体が僅かであるが塑性変形することになる。
また、本発明のブレースの構成は、例えば、以下の4通りの何れかの構成を採用することができる。これらは、場所・目的などに応じて適宜選択するとよい。
第1番目の構成のブレースは、略直線状からなり一端側が梁柱架構体のそれぞれの角部に連結される4つの斜め部材と、略直線状からなり一端側が2つの斜め部材の他端側のみにヒンジ接合により連結され他端側が他の2つの斜め部材の他端側のみにヒンジ接合により連結される連結部材とを有する。このように、4つの斜め部材と連結部材とを有するブレースとすることで、確実に、ブレースの耐震力が発揮し始める時点を遅らせることができる。さらに、このような構成からなるブレースとすることで、非常に簡易的となる。つまり、小型化且つ低コスト化を図ることができる。ここで、第1番目の構成のブレースの斜め部材及び連結部材には、例えば、鋼材などが用いられる。
この第1番目の構成のブレースは、例えば、連結部材が水平方向に延伸するように配置される場合には、以下のようになる。連結部材の一端側には、一端側が右柱の上下端に連結される斜め部材の他端側が連結される。また、連結部材の他端側には、一端側が左柱の上下端に連結される斜め部材の他端側が連結される。すなわち、梁柱架構体とブレースとにより、連結部材の左右に三角形を形成し、連結部材の上下に台形を形成する。
また、第1番目の構成のブレースは、例えば、連結部材が鉛直方向に延伸するように配置される場合には、以下のようになる。連結部材の一端側には、一端側が上梁の両端に連結される斜め部材の他端側が連結される。また、連結部材の他端側には、一端側が下梁の両端に連結される斜め部材の他端側が連結される。すなわち、梁柱架構体とブレースとにより、連結部材の上下に三角形を形成し、連結部材の左右に台形を形成する。
ここで、第1番目の構成のブレースは、連結部材の両端側が斜め部材にヒンジ接合により連結されている。従って、連結部材は、斜め部材に対して回転可能となる。そして、梁柱架構体の水平変位量Uが所定変位Usに達するまでは、対角の斜め部材及び連結部材は、屈曲した状態となる。しかし、梁柱架構体の水平変位量Uが所定変位Usを超える場合には、一方の対角の斜め部材及び連結部材は、直線上になる。
そして、この1番目の構成のブレースの斜め部材は、一端側が梁柱架構体のそれぞれの角部にヒンジ接合により連結されるようにするとよい。このように、斜め部材の一端側と梁柱架構体との連結をヒンジ接合により行うことで、斜め部材は、梁柱架構体に対して回転可能となる。これにより、梁柱架構体の水平変位量Uが所定変位Usに達するまでの間、斜め部材及び連結部材には、確実に引張力が生じないようにすることができる。
また、第1番目の構成のブレースの斜め部材及び連結部材は、長さ調整可能であるとよい。ここで、第1番目の構成のブレースの全長とは、対角に配置される2つの斜め部材の長さと連結部材の長さとを合計した長さとなる。つまり、斜め部材及び連結部材の長さを変更することで、ブレースの全長を変更することができる。このように、ブレースの全長を変更することで、所定変位Usの変更ができるようになる。つまり、斜め部材及び連結部材が長さ調整可能とすることで、ブレースの耐震力が発揮し始める時点を変更することができる。
例えば、連結部材が水平方向に延伸するように配置される第1番目の構成のブレースの場合には、斜め部材の長さm及び連結部材の長さwは、数2に従って算出されるようにするとよい。このように、数2に従って斜め部材の長さm連結部材の長さwを算出することで、ブレースの設計が非常に容易となる。なお、数2は、上述した数1を第1番目の構成のブレースに適用した場合の数式である。
また、例えば、連結部材が鉛直方向に延伸するように配置される第1番目の構成のブレースの場合には、斜め部材の長さm及び連結部材の長さvは、数3に従って算出されるようにするとよい。このように、数3に従って斜め部材の長さm及び連結部材の長さvを算出することで、ブレースの設計が非常に容易となる。なお、数3は、上述した数1を第1番目の構成のブレースに適用した場合の数式である。
また、第1番目の構成のブレースの連結部材は、2つの斜め部材の他端側及び/又は他の2つの斜め部材の他端側に対して着脱可能とするとよい。つまり、連結部材は、一方の2つの斜め部材の他端側のみに対して着脱可能な場合、他方の2つの斜め部材の他端側のみに対して着脱可能な場合、若しくは、一方の2つの斜め部材及び他方の斜め部材の他端側に対して着脱可能な場合の何れか選択できる。このように連結部材と斜め部材とを着脱可能とすることで、梁柱架構体に対してブレース自体の取り外しが容易となる。
第2番目の構成のブレースは、以下のような構成である。まず、梁柱架構体が、角部に梁柱係止部を有し、一対のブレースの少なくとも一方は、略直線状からなり、両端側に梁柱係止部に係止可能な被係止部を備え、梁柱架構体に水平力が作用していない場合に少なくとも一端側の被係止部と梁柱係止部との間に所定のクリアランスが形成されるように構成されている。このように、ブレースの被係止部と梁柱架構体の梁柱係止部との間に、所定のクリアランスが形成されることで、確実に、ブレースの耐震力が発揮し始める時点を遅らせることができる。具体的には、ブレースの被係止部と梁柱架構体の梁柱係止部とが係合するまでの間は、ブレースの耐震力は発揮されない。そして、梁柱架構体の一方の対角間が拡大することに伴ってブレースの被係止部と梁柱架構体の梁柱係止部とが係合した後には、ブレースの耐震力が発揮される。さらに、このような構成からなるブレースとすることで、非常に簡易的となる。つまり、小型化且つ低コスト化を図ることができる。ここで、第2番目の構成のブレースには、例えば、鋼材などが用いられる。
また、第3番目の構成のブレースは、以下のような構成である。すなわち、一対のブレースの少なくとも一方は、両端側が梁柱架構体の角部に連結される屈曲自在な部材からなり、梁柱架構体に水平力が作用していない場合に弛みを有して配置される。このように、屈曲自在な部材からなるブレースが、梁柱架構体に水平力が作用していない場合に弛みを有して配置されることで、確実に、ブレースの耐震力が発揮し始める時点を遅らせることができる。具体的には、屈曲自在な部材からなるブレースが弛んでいる間は、ブレースの耐震力は発揮されない。そして、梁柱架構体の一方の対角間が拡大することに伴って屈曲自在な部材からなるブレースが突っ張られた後には、ブレースの耐震力が発揮される。さらに、このような構成からなるブレースとすることで、非常に簡易的となる。つまり、小型化且つ低コスト化を図ることができる。ここで、第3番目の構成のブレースには、例えば、ワイヤや一部で屈曲可能に形成された鋼材などが用いられる。
上述した第2・第3番目の構成の一対のブレースの少なくとも一方は、長さ調整可能とするとよい。このように、ブレースの長さを容易に変更できることで、所定変位Usの変更が容易にできる。
また、上述した第2・第3番目の構成のブレースは、梁柱架構体の角部に対して着脱可能とするとよい。つまり、梁柱架構体に対してブレース自体の取り外しが容易となる。
第4番目の構成のブレースは、以下のような構成からなる。すなわち、一対のブレースは、それぞれの両端側が梁柱架構体のそれぞれの対角に連結される屈曲自在な一対の屈曲部材と、一対の屈曲部材の中間付近を束状に所定長さ纏める束形成部材とを有する。
つまり、この第4番目の構成のブレースを備える耐震架構体は、上下梁と該上下梁間に配置される左右柱とからなる四角形状の梁柱架構体と、梁柱架構体のそれぞれの対角に連結される一対のブレースと、を備える耐震架構体であって、一対のブレースは、それぞれの両端側が梁柱架構体のそれぞれの対角に連結される屈曲自在な一対の屈曲部材と、一対の前記屈曲部材の中間付近を束状に所定長さ纏める束形成部材とを有する。
ここで、屈曲部材は、例えば、ワイヤなどが用いられる。この第4番目の構成のブレースは、上述した第1番目の構成のブレースと実質的には同一構成となる。つまり、第4番目の構成のブレースの束形成部材及びその内部の屈曲部材が、第1番目の構成のブレースの連結部材に相当する。さらに、第4番目の構成のブレースの束形成部材の所定長さが、第1番目の構成のブレースの連結部材の長さに相当する。そして、第4番目の構成のブレースの屈曲部材のうち束形成部材の内部以外の部分が、第1番目の構成のブレースの斜め部材に相当する。
このように、一対の屈曲部材と束形成部材とを有するブレースとすることで、確実に、ブレースの耐震力が発揮し始める時点を遅らせることができる。さらに、このような構成からなるブレースとすることで、非常に簡易的となる。つまり、小型化且つ低コスト化を図ることができる。
この第4番目の構成のブレース、第1番目と同様に、束形成部材が水平方向又は鉛直方向の何れに延伸するように配置してもよい。これらの場合には、実質的に、上述した第1番目の対応するものと同様となる。
そして、第4番目の構成のブレースの一対の屈曲部材は、それぞれの両端側が梁柱架構体のそれぞれの対角にヒンジ接合により連結されるようにするとよい。このように、屈曲部材の両端側と梁柱架構体との連結をヒンジ接合により行うことで、屈曲部材は、梁柱架構体に対して回転可能となる。これにより、梁柱架構体の水平変位量Uが所定変位Usに達するまでの間、屈曲部材には、確実に引張力が生じないようにすることができる。
また、第4番目の構成のブレースの束形成部材は、以下に示すような種々の形状から選択された形状とするとよい。
すなわち、束形成部材は、一対の屈曲部材を収納可能で且つ周方向全周に閉塞された筒状からなるようにしてもよい。例えば、当該筒状には、円筒状などが含まれる。束形成部材をこのような筒状とすることで、非常に安価に形成することができる。また、例えば円筒状などの筒状のものは、汎用品として多く存在しているので、容易に且つ安価に入手することができる。さらに、高強度を確保することができる。
また、束形成部材は、一対の屈曲部材を収納可能な略C字型断面筒状からなるようにするとよい。このように、略C字型断面筒状することで、屈曲部材の取り外しが非常に容易となる。従って、ブレースの組み立て及び取り外しが、非常に容易にできる。
ここで、屈曲部材は、梁柱架構体に水平力が作用していない初期設定状態において、弛みを取り除くことを目的としてある程度の張力が発生している。しかし、この張力は、初期設定状態における張力であって、梁柱架構体に水平力が作用した場合に発生する引張力とは異なる意味である。
また、束形成部材は、一の屈曲部材を収納可能な略C字型断面筒状からなる第1部材と、他の屈曲部材を収納可能で該第1部材に固定された略C字型断面筒状からなる第2部材と、を有するようにしてもよい。つまり、一対の屈曲部材は、それぞれ別々の部材(第1部材及び第2部材)に収納されることになる。このように、一対の屈曲部材を別々の部材に収納することにより、一対の屈曲部材が相互に接触することを防止できる。これにより、一方の屈曲部材に引張力が作用した場合に、他方の屈曲部材との接触による影響が生じることを防止できる。さらに、相互に接触しないので、屈曲部材を保護することにもなる。
この場合、第2部材は、第1部材に対して筒軸交差方向に回転可能で、且つ、第1部材に対して係止可能とするとよい。第1部材と第2部材とが筒軸交差方向に相対回転可能であるので、第1部材の筒軸方向と第2部材の筒軸方向とを異なるようにすることができる。そして、第1部材と第2部材とが係止された場合には、第1部材の筒軸方向と第2部材の筒軸方向とが略一致するようにされている。ここで、屈曲部材は、それぞれ交差するように配置されている。そして、一対の屈曲部材の中間付近を束状に纏める第1部材と第2部材とは、相互に筒軸方向が異なるようにすることができる。従って、一対の屈曲部材を第1部材及び第2部材の内部にそれぞれ収納することが非常に容易にできる。そして、この状態で、第1部材と第2部材とを相互に係止することにより、一対の屈曲部材の中間付近を束状に纏めることができる。
また、束形成部材が略C字形断面筒状からなる場合、C字形の開口距離が大きくなるようにスライド可能な2部材からなるようにしてもよい。つまり、屈曲部材を束形成部材に収容する際には、C字形の開口距離を大きくしておき、収容した後にC字形の開口距離を小さくするようにする。また、束形成部材を略C字形断面筒状の第1部材と、第1部材の筒軸方向にスライド可能に収容された略C字形断面筒状の第2部材とからなるようにしてもよい。つまり、束形成部材の筒軸長さを調整できるようになる。この場合、屈曲部材を束形成部材に収容する際には、第2部材の大部分を第1部材の内部に収容して、束形成部材の筒軸長さを短くしておく。そして、屈曲部材を収容した後には、第2部材を第1部材に対してスライドさせて、束形成部材の筒軸長さを長くするようにする。
また、第4番目の構成のブレースの屈曲部材は、梁柱架構体の角部に対して着脱可能としてもよい。つまり、梁柱架構体に対してブレース自体の取り外しが容易となる。
(2)本発明のブレース部材
本発明のブレース部材は、上述した本発明の耐震架構体に使用されるブレース部材である。ここで、ブレース部材とは、上述したブレースのみの場合、若しくは、上述したブレースと該ブレースに付けられる付属物との結合物を総称して言う。
本発明の耐震架構体によれば、ブレースによる耐震力を向上させつつ、簡易的な耐震架構体とすることができる。さらには、小型化が可能で、ブレースが破断に至るまでの梁柱架構体の水平変位量Uを大きくし、且つ、特許文献1〜7のブレース構造に比べて初期剛性を小さくすることができる。
本発明のブレース部材によれば、本発明の耐震架構体による効果と同一効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、第1実施形態の耐震架構体の全体構成を示す図である。
第2図は、連結部材25の詳細構成を示す図である。
第3図は、斜め部材21〜24とフレーム10の各角部との連結部位の詳細構成を示す図である。
第4図は、斜め部材21〜24とフレーム10の各角部との連結部位の詳細構成を示す図である。
第5図は、ブレース20の降伏変位Ubとフレーム10の降伏変位Ufとが一致する場合における耐震架構体に作用する水平力Pとフレーム10の水平変位量Uとの関係を示す図である。
第6図は、ブレース20の降伏変位Ubがフレーム10の降伏変位Ufより僅かに小さい場合における耐震架構体に作用する水平力Pとフレーム10の水平変位量Uとの関係を示す図である。
第7図は、ブレース20の降伏変位Ubがフレーム10の降伏変位Ufより僅かに大きい場合における耐震架構体に作用する水平力Pとフレーム10の水平変位量Uとの関係を示す図である。
第8図は、所定変位Usがフレーム10の降伏変位Ufより非常に大きな場合における耐震架構体に作用する水平力Pとフレーム10の水平変位量Uとの関係を示す図である。
第9図は、従来の耐震架構体について示す図である。
第10図は、2階建て建物の1階部分のみに、第1実施形態の耐震架構体を適用した場合と従来の耐震架構体を適用した場合との比較を説明する図である。
第11図は、第1実施形態の変形態様の耐震架構体を示す図である。
第12図は、第1実施形態の変形態様の耐震架構体を示す図である。
第13図は、第1実施形態の変形態様の耐震架構体を示す図である。
第14図は、第1実施形態の変形態様の耐震架構体を示す図である。
第15図は、第2実施形態の耐震架構体の全体構成を示す図である。
第16図は、束形成部材43の詳細構成を示す図である。
第17図は、第3実施形態の耐震架構体の全体構成を示す図である。
第18図は、係止部材15の詳細構成を示す図である。
第19図は、第4実施形態の耐震架構体の全体構成を示す図である。
第20図は、第4実施形態の変形態様の耐震架構体を示す図である。
第21図は、第4実施形態の変形態様の耐震架構体を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。
(1)第1実施形態
(1.1)耐震架構体の全体構成及び動作
第1実施形態の耐震架構体の全体構成について図1を参照して説明する。図1は、第1実施形態の耐震架構体を模式的に示す図である。具体的には、図1(a)は、水平力が作用していない場合における第1実施形態の耐震架構体を示す。図1(b)は、所定の水平力が作用した場合における第1実施形態の耐震架構体を示す。
図1(a)に示すように、水平力が作用していない場合における耐震架構体は、梁柱架構体10(以下、「フレーム」という)と、ブレース20とから構成される。フレーム10は、水平方向に延伸するように配置された下梁11及び上梁12と、下梁11と上梁12の間に鉛直方向に延伸するように配置された左柱13及び右柱14とから構成される四角形の架構体をなしている。このフレーム10を構成する上下梁11、12及び左右柱13、14は、木造、鉄骨造などを含む。すなわち、上下梁11、12及び左右柱13、14は、例えば、木製の角形材、角形鋼管、及びH型鋼などが用いられる。また、下梁11は、基礎コンクリートの布基礎部分となる場合を含む。
ブレース20は、フレーム10のそれぞれの対角に連結される部材である。このブレース20は、4つの斜め部材21〜24と、連結部材25とから構成される。つまり、フレーム10の一方の対角を連結するブレース20は、第1の斜め部材21と、連結部材25と、第4の斜め部材24である。また、フレーム10の他方の対角を連結するブレース20は、第2の斜め部材22と、連結部材25と、第3の斜め部材23である。なお、これらの4つの斜め部材21〜24は、いずれも、主として直線状の鋼棒、鋼管、H型鋼又は鋼板などからなる。さらに、これらの4つの斜め部材21〜24は、ほぼ同じ長さからなる。
そして、第1の斜め部材21は、一端側が上梁12と左柱13とにより形成される左上角部にヒンジ接合により連結されている。すなわち、第1の斜め部材21は、フレーム10の左上角部に対して回転可能とされている。第2の斜め部材22は、一端側が下梁11と左柱13とにより形成される左下角部にヒンジ接合により連結されている。すなわち、第2の斜め部材22は、フレーム10の左下角部に対して回転可能とされている。そして、第1の斜め部材21の他端側と第2の斜め部材22の他端側とは、直接的に若しくは連結部材25を介して間接的に、ヒンジ接合により連結されている。すなわち、第1の斜め部材21の他端側と第2の斜め部材22の他端側とは、回転可能とされている。
第3の斜め部材23は、一端側が上梁12と右柱14とにより形成される右上角部にヒンジ接合により連結されている。すなわち、第3の斜め部材23は、フレーム10の左上角部に対して回転可能とされている。第4の斜め部材24は、一端側が下梁11と右柱14とにより形成される右下角部にヒンジ接合により連結されている。すなわち、第4の斜め部材24は、フレーム10の右下角部に対して回転可能とされている。そして、第3の斜め部材23の他端側と第4の斜め部材24の他端側とは、直接的に若しくは連結部材25を介して間接的に、ヒンジ接合により連結されている。すなわち、第3の斜め部材23の他端側と第4の斜め部材24の他端側とは、回転可能とされている。なお、4つの斜め部材21〜24の一端側とフレーム10の各角部との連結部位の詳細構成は、後述する。
連結部材25は、直線状に配置され得る部材からなる。この連結部材25の左端側は、第1の斜め部材21及び第2の斜め部材22の他端側にヒンジ接合により連結されている。すなわち、連結部材25は、第1の斜め部材21の他端側及び第2の斜め部材22の他端側に対して回転可能とされている。また、連結部材25の右端側は、第3の斜め部材23及び第4の斜め部材24の他端側にヒンジ接合により連結されている。すなわち、連結部材25は、第3の斜め部材23の他端側及び第4の斜め部材24の他端側に対して回転可能とされている。そして、この連結部材25は、ほぼ水平方向に延伸するように配置されている。なお、この連結部材25の詳細構成は、後述する。
ここで、フレーム10のそれぞれの対角を連結するブレース20の全長は、フレーム10に水平力が作用していない場合におけるフレーム10の対角線Laよりも長くされている。なお、フレーム10の一方の対角を連結するブレース20は、第1の斜め部材21と、連結部材25と、第4の斜め部材24である。また、フレーム10の他方の対角を連結するブレース20は、第2の斜め部材22と、連結部材25と、第3の斜め部材23である。
次に、上述したように構成される耐震架構体に、水平力(特に水平右方向への力)が作用した場合について、図1(b)を参照して説明する。図1(b)に示すように、水平右方向への力が耐震架構体に作用した場合には、フレーム10が傾斜する。具体的には、フレーム10の上梁12が下梁11に対して右側へ平行移動する。さらに、フレーム10の左右柱13、14は、右側に傾斜する。つまり、フレーム10は、長方形の状態から平行四辺形の状態へ変化する。以下、下梁11に対する上梁12の水平方向への移動量は、フレーム10の水平変位量Uという。
そして、フレーム10が平行四辺形の状態に変化する際に、ブレース20は、以下のようになる。すなわち、連結部材25が、水平状態から、右端側が右上がりとなるように回転する。この動作に伴って、4つの斜め部材21〜24が移動する。つまり、耐震架構体に水平力が作用した直後、すなわちフレーム10の水平変位量Uが所定変位Us以下の場合においては、ブレース20を構成する全ての部材21〜25には引張力が作用しない。
そして、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達すると、第2の斜め部材22と連結部材25と第3の斜め部材23とがほぼ一直線上に位置するようになる。つまり、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usとなる場合におけるフレーム10の左下角部と右上角部とを結ぶ対角線Lが、第2の斜め部材22と連結部材25と第3の斜め部材23の全長と一致する。この時点においても、ブレース20を構成する全ての部材21〜25には引張力が作用しない。
さらに、フレーム10の水平変位量Uがさらに増大し、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usを超えた場合には、第2の斜め部材22と連結部材25と第3の斜め部材23とがほぼ一直線上の状態で、これら3つの部材22、25、23に引張力が作用する。そして、第2の斜め部材22と連結部材25と第3の斜め部材23とが、軸方向(対角線方向)に伸長する。
つまり、本実施形態の耐震架構体は、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達するまでの間は、ブレース20に引張力が作用しない。換言すると、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達するまでの間は、ブレース20が耐震力を発揮しない。そして、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usを超えた場合に、ブレース20に引張力が作用し始める。つまり、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usを超える場合に、ブレース20が耐震力を発揮し始める。このように、本実施形態の耐震架構体は、ブレース20により耐震力の発揮する時点を、耐震架構体に水平力が作用した直後とするのではなく、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達した時点としている。
(1.2)連結部材25の詳細構成
次に、連結部材25の詳細構成について、図2を参照して説明する。図2(a)〜(h)は、連結部材25の種々の構成を示す図である。連結部材25は、上述したように、直線状に配置され得る部材からなり、両端側が斜め部材21〜24にヒンジ接合により連結されている。ここで、図2(a)〜(g)に示す4つの斜め部材21〜24の他端側は、何れもリング状の部材を有しているものとする。また、図2(h)に示す4つの斜め部材21〜24は、例えば、鋼管やH型鋼と、エンドプレートと、一対のリンク部材とから構成されるものとする。
図2(a)に示す連結部材25は、直線状の鋼棒部25aと、鋼棒部25aの両端に固定されたリング部25bとから構成される。また、そして、連結部材25の左端側のリング部25bには、第1の斜め部材21及び第2の斜め部材22の他端側に固定されたリング状の部材が係合している。また、連結部材25の右端側のリング部25bには、第3の斜め部材23及び第4の斜め部材24の他端側に固定されたリング状の部材が係合している。
図2(b)に示す連結部材25は、リングキャッチ25cと、リングキャッチ25cに係合された2つのリング25dとから構成される。そして、連結部材25の一方のリング25dは、第1の斜め部材21及び第2の斜め部材22の他端側のリング部に係合されている。また、連結部材25の他方のリング25dは、第3の斜め部材23及び第4の斜め部材24の他端側のリング部に係合されている。従って、一方のリング25d、リングキャッチ25c、他方のリング25dの順に、直線状に配置されている。なお、リングキャッチ25cは、開閉可能なキャッチ部を有している。つまり、リングキャッチ25cのキャッチ部を開放することにより、リングキャッチ25cは、それぞれのリング25dに対して着脱可能となる。
図2(c)に示す連結部材25は、リングキャッチ25eのみから構成される。このリングキャッチ25eは、4つの斜め部材21〜24全ての他端側のリング部が係合されている。なお、このリングキャッチ25eは、図2(b)に示すリングキャッチ25cよりも長手方向長さが長いものが用いられている。
図2(d)に示す連結部材25は、ネジシャックル25fと、ネジシャックル25fに係合された2つのリング25gとから構成される。そして、連結部材25の一方のリング25gは、第1の斜め部材21及び第2の斜め部材22の他端側のリング部に係合されている。また、連結部材25の他方のリング25gは、第3の斜め部材23及び第4の斜め部材24の他端側のリング部に係合されている。従って、一方のリング25g、ネジシャックル25f、他方のリング25gの順に、直線状に配置されている。なお、ネジシャックル25fのネジ部を開放することにより、ネジシャックル25fは、それぞれのリング25gに対して着脱可能となる。
図2(e)に示す連結部材25は、ターンバックル25hのみから構成される。このターンバックル25hは、両端にリングを有している。そして、ターンバックル25hの左端側のリングは、第1の斜め部材21及び第2の斜め部材22の他端側のリング部に係合されている。また、ターンバックル25hの右端側のリングは、第3の斜め部材23及び第4の斜め部材24の他端側のリング部に係合されている。なお、ターンバックル25hは、長さ調整が可能である。従って、ターンバックル25hの取付が非常に容易に行うことができる。なお、このターンバックル25hの両端形状は、リング状の他に、フック状のものを用いても良い。
図2(f)に示す連結部材25は、両端にフックを有している。そして、右側のフックは、第1の斜め部材21及び第2の斜め部材22の他端側のリング部に係合されている。また、他方のフックは、第3の斜め部材23及び第4の斜め部材24の他端側のリング部に係合されている。
図2(g)に示す連結部材25は、順に係合された複数のリングからなる。そして、一端側のリングが、第1の斜め部材21及び第2の斜め部材22の他端側のリング部に係合されている。また、他方側のリングが、第3の斜め部材23及び第4の斜め部材24の他端側のリング部に係合されている。
図2(h)に示す連結部材25について説明する。図2(h)の左図は、斜め部材21〜24(21及び22のみ示す)と連結部材25とを接合する前の状態を示す。図2(h)の右図は、斜め部材21〜24(21及び22のみ示す)と連結部材25とを接合した場合の上方から見た図を示す。図2(h)の左図に示すように、連結部材25は、鋼板からなり、両端側に2つの円形孔が形成されている。4つの斜め部材21〜24は、例えば、鋼管やH型鋼21a、22aと、第1面側に鋼管又はH型鋼の端部が溶接されたエンドプレート21b、22bと、エンドプレートの第2面側に溶接された一対のリンク部材21c、22cとから構成されるものとする。そして、図2(h)の右図に示すように、ピンにより、第1の斜め部材21のリンク部材21cと、第2の斜め部材22のリンク部材22cと、連結部材25の一方の円形孔とが、連結される。一方、図示しないが、ピンにより、第3の斜め部材23のリンク部材と、第4の斜め部材24のリンク部材と、連結部材25の他方の円形孔とが、連結される。なお、当該ピンは、本発明におけるブレース20に付けられる付属物に含まれる。
(1.3)斜め部材21〜24とフレーム10の各角部との連結部位の詳細構成
次に、4つの斜め部材21〜24の一端側とフレーム10の各角部との連結部位の詳細構成について図3を参照して説明する。図3(a)〜(e)は、角部の連結部位の種々の構成を示す図である。なお、図3(a)〜(e)に示す角部は、上梁12と左柱13との角部について示す。
図3(a)に示す角部の連結部位には、上梁12及び左柱13の前後面の何れか一方に鋼板31aがボルト31bにより固定されている。そして、この鋼板31aのうち当該角部の内側には、貫通孔が形成されている。この貫通孔には、第1の斜め部材21の一端側に形成された貫通孔が係合されるボルト31cが係合されている。つまり、第1の斜め部材21は、フレーム10に対して、図3(a)の前後軸回りに揺動可能に連結されている。なお、斜め部材21に鋼棒など曲げ剛性の小さな部材を用いた場合には、ボルト31cに高力ボルトを用いて、斜め部材21を鋼板31aに強く締付けて回転拘束した場合でも、ヒンジ接合とみなすことができる。
なお、鋼板31aは、図3(b)に示すような形状としてもよい。この場合、鋼板31aは、上梁12の下面側及び左柱13の左面側にボルト31bにより固定される。また、鋼板31aは、図3(c)に示すように、上梁12の下面側及び左柱13の左面側に溶接により固定してもよい。ただし、溶接による場合には、フレーム10が鉄骨造の場合に限られる。
図3(d)に示す角部の連結部位には、左柱13の上端側に固定部材32が固定されている。この固定部材32は、一端側にリング32aを有している。このリング32aには、第1の斜め部材21の一端側に形成された貫通孔又はリングが係合している。なお、固定部材32は、上梁12に固定するようにしてもよい。つまり、第1の斜め部材21は、フレーム10に対して、あらゆる方向に回転可能となる。
図3(e)に示す角部の連結部位には、左柱13の上端側の外周面に一対の挟持部材33が挟持固定されている。具体的には、それぞれの挟持部材33は、ボルト33aにより連結されている。このボルト33aには、第1の斜め部材21の一端側に形成された貫通孔が係合されている。つまり、第1の斜め部材21は、フレーム10に対して、図3(e)の前後軸回りに揺動可能に連結されている。
また、図4に示すように、角部の連結部位が下梁11の部分の場合には、下梁11を基礎コンクリートの布基礎部分34としてもよい。すなわち、例えば図3(d)に示す固定部材32を布基礎部分34に固定するようにしてもよい。布基礎部分34に図3(d)に示す固定部材32などを固定することで、より強固に固定することができる。
ここで、図3(a)〜(e)及び図4に示した角部の連結部位を構成する部材は、本発明におけるブレース20に付けられる付属物に含まれる。
(1.4)水平力Pと水平変位量Uとの関係
次に、耐震架構体に作用する水平力Pとフレーム10の水平変位量Uとの関係について図5〜図8を参照して説明する。図5〜図8は、ブレース20の耐震力が発揮し始める時点がそれぞれ異なる場合を示す。
ここで、図5〜図8において、耐震架構体に作用する水平力Pとフレーム10のみの耐震力によるフレーム10の水平変位量Uとの関係については、細実線により示す。すなわち、当該関係は、フレーム10の水平変位量Uがフレーム10の降伏変位Ufに達するまでは、水平力Pが増加するにつれてフレーム10の水平変位量Uが比例的に増加する。つまり、フレーム10の水平変位量Uが降伏変位Ufに達するまでは、フレーム10が弾性変形する。このとき、フレーム10のみの初期剛性は、傾き角Kfにて表される。そして、フレーム10の水平変位量Uがフレーム10の降伏変位Ufに達した後は、フレーム10に作用する水平力Pはほぼ一定の水平力Pf状態で、フレーム10の水平変位量Uが増大する。
また、図5〜図8において、耐震架構体に作用する水平力Pとブレース20のみの耐震力によるフレーム10の水平変位量Uとの関係については、細破線により示す。すなわち、当該関係は、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達するまでは、ブレース20は耐震力を発揮しない。つまり、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達するまでは、ブレース20は耐震架構体に作用する水平力Pの影響を全く受けない。そして、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達した後には、ブレース20の降伏変位Ubに達するまで、水平力Pが増加するにつれて、ブレース20の伸長量の比例的な増大に伴ってフレーム10の水平変位量Uが比例的に増加する。つまり、フレーム10の水平変位量Uが降伏変位Ubに達するまでは、ブレース20が弾性変形することに伴って、フレーム10が弾性変形する。このとき、ブレース20のみの初期剛性は、傾き角Kbにて表される。そして、フレーム10の水平変位量Uがブレース20の降伏変位Ubに達した後は、ブレース20及びフレーム10に作用する水平力Pはほぼ一定の水平力Pbの状態で、ブレース20の伸長量の増大に伴ってフレーム10の水平変位量Uが増大する。この状態は、ブレース20が破断する際のフレーム10の水平変位量Ueに達するまで継続される。ここで、ブレースの破断とは、ブレース部材自体が破断する場合だけでなく、ブレースとフレームの接合部が破壊する場合も含まれる。
上記の各関係を踏まえた上で、以下に、ブレース20の耐震力が発揮し始める時点をそれぞれ異ならしめた場合について説明する。
まず、ブレース20の降伏変位Ubとフレーム10の降伏変位Ufとが一致する場合について、図5に示す。そして、図5における太実線が、耐震架構体に作用する水平力Pと実際のフレーム10の水平変位量Uとの関係を示す。
図5の太実線にて示すように、耐震架構体に作用する水平力Pと実際のフレーム10の水平変位量Uは、所定変位Usに達するまでの間、フレーム10のみの耐震力によるフレーム10の水平変位量Uと同じ挙動を示す。すなわち、耐震架構体の初期剛性は、フレーム10の剛性Kfに等しくなる。そして、実際のフレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達した後には、ブレース20が耐震力を発揮し始める。従って、実際のフレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達した後、フレーム10の降伏変位Ufに達するまでの間、傾き角Kf+Kbの弾性変形をする。ここで、実際のフレーム10の水平変位量Uがフレーム10の降伏変位Ufに達した時には、耐震架構体に作用する水平力Pは、Pf+Pbとなる。その後、ブレース20が破断するフレーム10の水平変位量Ueに達するまで、耐震架構体に作用する水平力Pはほぼ一定の状態が継続される。
従って、耐震架構体に作用する水平力PがPf+Pbとなるまでの間は、フレーム10及びブレース20は何れも弾性変形の状態となる。つまり、ブレース20の降伏変位Ubとフレーム10の降伏変位Ufとを一致させることで、非常に大きな水平力Pf+Pbが耐震架構体に作用したとしても、フレーム10及びブレース20は塑性変形することなく、弾性変形のみとすることができる。
次に、ブレース20の降伏変位Ubがフレーム10の降伏変位Ufより僅かに小さい場合について、図6に示す。そして、図6における太実線が、耐震架構体に作用する水平力Pと実際のフレーム10の水平変位量Uとの関係を示す。
図6の太実線にて示すように、耐震架構体に作用する水平力Pと実際のフレーム10の水平変位量Uは、所定変位Usに達するまでの間、フレーム10のみの耐震力によるフレーム10の水平変位量Uと同じ挙動を示す。すなわち、耐震架構体の初期剛性は、フレーム10の剛性Kfに等しくなる。そして、実際のフレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達した後には、ブレース20が耐震力を発揮し始める。従って、実際のフレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達した後、ブレース20の降伏変位Ubに達するまでの間、傾き角Kf+Kbの弾性変形をする。ここで、実際のフレーム10の水平変位量Uがブレース20の降伏変位Ubに達した時には、耐震架構体に作用する水平力Pは、Pcとなる。さらに、実際のフレーム10の水平変位量Uがブレース20の降伏変位Ubに達した後、フレーム10の降伏変位Ufに達するまでの間、傾き角Kfの変形をする。ただし、このとき、ブレース20は、僅かではあるが塑性変形することになる。ここで、実際のフレーム10の水平変位量Uがフレーム10の降伏変位Ufに達した時には、耐震架構体に作用する水平力Pは、Pf+Pbとなる。その後、ブレース20が破断するフレーム10の水平変位量Ueに達するまで、耐震架構体に作用する水平力Pはほぼ一定の状態が継続される。
従って、耐震架構体に作用する水平力PがPcとなるまでの間は、フレーム10及びブレース20は何れも弾性変形の状態となる。つまり、フレーム10及びブレース20の何れもが弾性変形可能な水平力Pは、フレーム10のみにより弾性変形可能な水平力Pf、ブレース20のみにより弾性変形可能な水平力Pbよりも大きな水平力とすることができる。従って、大きな水平力Pcが耐震架構体に作用するまでの間は、フレーム10及びブレース20は塑性変形することなく、弾性変形のみとすることができる。さらに、耐震架構体に作用する水平力PがPc以上であってPf+Pbとなるまでの間は、ブレース20が僅かに塑性変形し、フレーム10は弾性変形のみとなる。つまり、非常に大きな水平力Pf+Pbが耐震架構体に作用したとしても、フレーム10及びブレース20がほとんど塑性変形することのない状態となる。
次に、ブレース20の降伏変位Ubがフレーム10の降伏変位Ufより僅かに大きい場合について、図7に示す。そして、図7における太実線が、耐震架構体に作用する水平力Pと実際のフレーム10の水平変位量Uとの関係を示す。
図7の太実線にて示すように、耐震架構体に作用する水平力Pと実際のフレーム10の水平変位量Uは、所定変位Usに達するまでの間、フレーム10のみの耐震力によるフレーム10の水平変位量Uと同じ挙動を示す。すなわち、耐震架構体の初期剛性は、フレーム10の剛性Kfに等しくなる。そして、実際のフレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達した後には、ブレース20が耐震力を発揮し始める。従って、実際のフレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達した後、ブレース20の降伏変位Ubに達するまでの間、耐震架構体は傾き角Kbの弾性変形をする。ここで、実際のフレーム10の水平変位量Uがブレース20の降伏変位Ubに達した時には、耐震架構体に作用する水平力Pは、Pf+Pbとなる。また、実際のフレーム10の水平変位量Uがブレース20の降伏変位Ubに達したときには、ブレース20は弾性変形のみであるが、フレーム10は僅かではあるが塑性変形している。具体的には、実際のフレーム10の水平変位量Uがフレーム10の降伏変位Ufを超えて、ブレース20の降伏変位Ubに達するまでの間、僅かではあるがフレーム10は塑性変形する。その後、ブレース20が破断するフレーム10の水平変位量Ueに達するまで、耐震架構体に作用する水平力Pはほぼ一定の状態が継続される。
従って、耐震架構体に作用する水平力PがPf+Pbとなるまでの間は、フレーム10が僅かに塑性変形し、ブレース20は弾性変形のみとなる。つまり、非常に大きな水平力Pf+Pbが耐震架構体に作用したとしても、フレーム10及びブレース20がほとんど塑性変形することのない状態となる。
次に、所定変位Usがフレーム10の降伏変位Ufより非常に大きな場合について、図8に示す。そして、図8における太実線が、耐震架構体に作用する水平力Pと実際のフレーム10の水平変位量Uとの関係を示す。そして、この場合の所定変位Usは、フレーム10の層間変形角Rが1/60〜1/10に対応するフレーム10の水平変位量Uの範囲としている。ここで、層間変形角Rとは、実際のフレーム10の水平変位量Uをフレーム10の柱長さ(階高)aで除した値(=U/a)である。そして、層間変形角Rが1/60〜1/10の範囲とはフレーム10がいわゆる大破・中破の状態である。
図8の太実線にて示すように、耐震架構体に作用する水平力Pと実際のフレーム10の水平変位量Uは、所定変位Usに達するまでの間、フレーム10のみの耐震力によるフレーム10の水平変位量Uと同じ挙動を示す。すなわち、耐震架構体の初期剛性は、フレーム10の剛性Kfに等しくなる。そして、実際のフレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達した後には、ブレース20が耐震力を発揮し始める。従って、実際のフレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達した後、ブレース20の降伏変位Ubに達するまでの間、耐震架構体は傾き角Kbの変形をする。ここで、実際のフレーム10の水平変位量Uがブレース20の降伏変位Ubに達した時には、耐震架構体に作用する水平力Pは、Pf+Pbとなる。その後、ブレース20が破断するフレーム10の水平変位量Ueに達するまで、耐震架構体に作用する水平力Pはほぼ一定の状態が継続される。
このように大破・中破の状態にてブレース20が耐震力を発揮し始めることにより、フレーム10のうち倒壊しそうになる部分のみに有効にブレースが機能する。また、フレーム10のうち倒壊しそうにない部分に配置されているブレース20は機能しない。従って、ブレース20が耐震力を発揮することにより生しるフレーム10のうちの他の部分への悪影響を抑制できる。例えば、上階部分にフレース構造を採用していない場合であって、フレーム10のうち倒壊しそうにない部分に配置された1階部分のブレース20が機能した場合には、上階部分へ大きな変形が生じてしまう等の悪影響を及ぼすおそれがある。しかし、大破・中破の状態にてブレース20が耐震力を発揮するようにすることで、このような悪影響を及ぼすことを抑制できる。
(1.5)従来の耐震架構体
ここで、比較のため、従来の耐震架構体について、図9を参照して簡単に説明する。図9(a)は、フレーム10とブレース30とを備えた従来の耐震架構体を示す図である。図9(b)は、従来の耐震架構体に作用する水平力Pとフレーム10の水平変位量Uとの関係について示す図である。なお、図9(b)は、上述した図5〜図8に対応する図となっている。すなわち、図9(b)における細実線は、従来の耐震架構体に作用する水平力Pとフレーム10のみの耐震力によるフレーム10の水平変位量Uとの関係について示す。また、図9(b)における細破線は、従来の耐震架構体に作用する水平力Pとブレース30のみの耐震力によるフレーム10の水平変位量Uとの関係について示す。
図9(a)に示すように、従来の耐震架構体は、鋼棒からなる一対のブレース30がフレーム10のそれぞれの対角に固定されている。図9(b)に示すように、この場合、耐震架構体に水平力Pが作用し始めたと同時に、ブレース30が耐震力を発揮し始める。具体的には、耐震架構体に水平力Pが作用し始めたと同時に、ブレース30の降伏変位Ubに達するまでの間、フレーム10及びブレース30が何れも耐震力を発揮する。つまり、耐震架構体の初期剛性は、フレーム10の剛性Kfとブレース30の剛性Kbとを合計したKf+Kbとなる。ブレース30が降伏した後、実際のフレーム10の水平変位量Uがフレーム10の降伏変位Ufに達するまでの間、傾き角Kfの変形をする。このとき、ブレース30は、塑性変形することになる。ここで、実際のフレーム10の水平変位量Uがフレーム10の降伏変位Ufに達した時には、耐震架構体に作用する水平力Pは、Pf+Pbとなる。その後、ブレース30が破断するフレーム10の水平変位量Ueに達するまで、耐震架構体に作用する水平力Pはほぼ一定の状態が継続される。
このように、本実施形態の耐震架構体に比べて、従来の耐震架構体は、フレーム10の水平変位量Uが小さい状態でブレース30が破断している。つまり、大きな水平力Pが作用して、水平変位量Uが大きくなる際には、ブレース30によっては耐震力を発揮することができなくなる。
また、図10に示すように、2階建ての建物のうち、1階部分のみにブレース20、30を配置して、2階にはブレース20、30を配置しない場合について、比較検討する。ここで、図10(a)は、本実施形態の耐震架構体を1階部分に適用した場合を示し、図10(b)は、従来の耐震架構体を1階部分に適用した場合を示す。
図10(b)に示すように、従来の耐震架構体の初期剛性は、Kf+Kbとなる。一方、フレーム10のみの初期剛性は、Kfとなる。従って、従来の耐震架構体を1階部分のみに適用した場合には、1階部分の初期剛性と2階部分の初期剛性が大きく異なる。この場合、当該2階建て建物に水平力Pが作用した直後において、2階部分のみに大きな変形が生じることになり問題である。しかし、図10(a)に示すように、本実施形態の耐震架構体の初期剛性は、Kfである。従って、本実施形態の耐震架構体を1階部分のみに適用した場合には、1階部分の初期剛性と2階部分の初期剛性が等しくなる。そのため、上述した問題が生じることはない。
(1.6)耐震架構体を構成する部材の長さと所定変位Usとの関係
次に、耐震架構体を構成する部材の長さと所定変位Usとの関係について、数式を用いて説明する。つまり、下記の数式を用いることにより、非常に容易に耐震架構体を構成する部材の長さを決定することができる。具体的には、数4に示すように、ブレース20の全長L、左右柱13、14の長さa、及び、上下梁11、12の長さbと、所定変位Usとの関係を示す。ここで、ブレース20の全長とは、第1・第3の斜め部材21、23の長さmと連結部材25の長さwとの合計値、又は、第2・第4の斜め部材22、24の長さmと連結部材25の長さwとの合計値である。なお、数5には、斜め部材21〜24の長さm及び連結部材25の長さwを用いて示した関係を示す。
そして、例えば、左右柱13、14の長さaが300cmで、上下梁11、12の長さbが400cmの場合に、連結部材25の長さwと所定変位Usとの関係は、表1に示すようになる。なお、この場合、所定変位Usが5cmとなる状態が、層間変形角Rが1/60となる状態である。
そして、一般的には、左右柱13、14の長さa及び上下梁11、12の長さbは予め決定されている。従って、表1のような連結部材25と所定変位Usとの関係を導き出しておくことで、ブレース20の設計が非常に容易に行うことができる。なお、左右柱13、14が傾斜することにより、左右柱13、14の上端と下端との鉛直方向の距離a’は、左右柱13、14の長さaより短くなる。ここで、層間変形角が0〜1/30程度の範囲においては、長さaと距離a’との差は十分に小さい。このような場合には、数4に示すように、長さaを用いて算出することができる。ただし、長さaと距離a’との差が十分に小さいとは言えない場合には、数4において長さaの代わりに距離a’を用いて算出すればよい。
(2)第1実施形態の変形態様
上述した第1実施形態の変形態様の耐震架構体について説明する。まず、第1番目の変形態様について、図11を参照して説明する。図11(a)は、第1実施形態の変形態様の耐震架構体を示す。図11(b)は、ブレース21と連結部材25との接合部分の図11(a)の上方から見た拡大図を示す。ここで、第1番目の変形態様は、連結部材25に鋼板を用いて、第1の斜め部材21の他端側と第2の斜め部材22の他端側とが上下方向に僅かに異なる位置に接合され、且つ、第3の斜め部材23の他端側と第4の斜め部材24の他端側とが上下方向に僅かに異なる位置に接合される場合である。
図11(a)に示すように、連結部材25は、水平方向に長い鋼板からなり、四隅に穴が形成されている。ここで、左右の穴の水平方向距離をtとし、上下の穴の鉛直方向距離をsとする。そして、斜め部材21〜24の他端側は、図11(b)に示すように、コの字側形状をなしており、連結部材25と連結するためのボルトを貫通させる穴が形成されている。そして、第1の斜め部材21の他端側は、連結部材25の図11(a)の左上の穴にボルト・ナットによりヒンジ接合される。第2の斜め部材22の他端側は、連結部材25の図11(a)の左下の穴にボルト・ナットによりヒンジ接合される。第3の斜め部材23の他端側は、連結部材25の図11(a)の右上の穴にボルト・ナットによりヒンジ接合される。第4の斜め部材24の他端側は、連結部材25の図11(a)の右下の穴にボルト・ナットによりヒンジ接合される。
このときの耐震架構体を構成する部材の長さと所定変位Usとの関係は、連結部材25の穴の水平方向距離tと鉛直方向距離sとの関係によって異なる。すなわち、連結部材25の穴の鉛直方向距離sが水平方向距離tよりも十分に小さい場合には、上述した数5における連結部材25の水平方向長さwを連結部材25の穴の水平方向距離tに置換した関係となる。
一方、連結部材25の穴の鉛直方向距離sが水平方向距離tに比べて十分に小さいとは言えない場合には、耐震架構体を構成する部材の長さと所定変位Usとの関係は、数6にて示される関係となる。
なお、斜め部材21〜24と連結部材25とを連結するボルト・ナットは、本発明におけるブレース20に付けられる付属物に含まれる。
次に、第2番目の変形態様について、図12を参照して説明する。図12は、第1実施形態の変形態様の耐震架構体を模式的に示す図である。具体的には、図12(a)は、水平力が作用していない場合における第1実施形態の変形態様の耐震架構体を示す。図12(b)は、所定の水平力が作用した場合における第1実施形態の変形態様の耐震架構体を示す。
図12(a)に示すように、当該変形態様は、上述した第1実施形態の耐震架構体に対して、水平力が作用していない場合において、連結部材25がほぼ鉛直方向に延伸するように配置されている。具体的には、連結部材25の上端側は、第1の斜め部材21及び第3の斜め部材23の他端側にヒンジ接合により連結されている。すなわち、連結部材25は、第1の斜め部材21の他端側及び第3の斜め部材23の他端側に対して回転可能とされている。また、連結部材25の下端側は、第2の斜め部材22及び第4の斜め部材24の他端側にヒンジ接合により連結されている。すなわち、連結部材25は、第2の斜め部材22の他端側及び第4の斜め部材24の他端側に対して回転可能とされている。
そして、当該変形態様の耐震架構体に、水平力(特に水平方向への力)が作用した場合について、図12(b)を参照して説明する。図12(b)に示すように、水平右方向への力が当該変形態様の耐震架構体に作用した場合には、フレーム10が傾斜する。つまり、フレーム10は、長方形の状態から平行四辺形の状態へ変化する。
そして、フレーム10が平行四辺形の状態に変化する際に、ブレース20は、以下のようになる。すなわち、連結部材25が、鉛直状態から右回りに回転する。この動作に伴って、4つの斜め部材21〜24が移動する。つまり、耐震架構体に水平力が作用した直後、すなわちフレーム10の水平変位量Uが所定変位Us以下の場合においては、ブレース20を構成する全ての部材21〜25には引張力が作用しない。
そして、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達すると、第2の斜め部材22と連結部材25と第3の斜め部材23とがほぼ一直線上に位置するようになる。つまり、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usとなる場合におけるフレーム10の左下角部と右上角部とを結ぶ対角線Lが、第2の斜め部材22と連結部材25と第3の斜め部材23の全長と一致する。この時点においても、ブレース20を構成する全ての部材21〜25には引張力が作用しない。
さらに、フレーム10の水平変位量Uがさらに増大し、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usを超えた場合には、第2の斜め部材22と連結部材25と第3の斜め部材23とがほぼ一直線上の状態で、これら3つの部材22、25、23に引張力が作用する。そして、第2の斜め部材22と連結部材25と第3の斜め部材23とが、軸方向(対角線方向)に伸長する。
このときの耐震架構体を構成する部材の長さと所定変位Usとの関係は、数7にて示される。
また、第2番目の変形態様について図13を参照して説明する。図13は、当該変形態様の耐震架構体を模式的に示す図である。具体的には、図13(a)は、連結部材25を第1の斜め部材21及び第2の斜め部材22から取り外した直後の状態を示す図である。図13(b)は、ブレース20を収納している状態を示す図である。
図13(a)に示すように、連結部材25の左端側が、第1の斜め部材21及び第2の斜め部材22の他端側に対して着脱可能な構成としている。さらに、第2の斜め部材21及び第4の斜め部材24は、ヒンジ接合された2つの鋼棒からなる。従って、連結部材25を第1の斜め部材21及び第2の斜め部材22の他端側から取り外すことにより、図13(b)のようにブレース20を収納することができる。すなわち、図13(b)に示すように、第2の斜め部材21及び第4の斜め部材24のヒンジ接合部分を左右柱13、14に設けられたフックなどに引っ掛けるようにして収納している。なお、左右柱13,14に設けられたフックは、本発明におけるブレース20に付けられる付属物に含まれる。
また、第4番目の変形態様について図14を参照して説明する。図14は、当該変形態様の耐震架構体を模式的に示す図である。図14に示すように、ブレース20は、隣り合う柱に接合するのではなく、1以上の柱16を跨いで離間した左右柱13、14に接合するようにしてもよい。また、図示しないが、梁についても同様にしてもよい。すなわち、ブレース20は、隣り合う梁に接合するのではなく、1以上の梁を跨いで離間した上下梁に接合するようにしてもよい。
(3)第2実施形態
(3.1)耐震架構体の全体構成及び動作
第2実施形態の耐震架構体の全体構成について図15を参照して説明する。図15は、第2実施形態の耐震架構体を模式的に示す図である。具体的には、図15(a)は、水平力が作用していない場合における第2実施形態の耐震架構体を示す。図15(b)は、所定の水平力が作用した場合における第2実施形態の耐震架構体を示す。
図15(a)に示すように、水平力が作用していない場合における耐震架構体は、フレーム10と、ブレース40とから構成される。フレーム10は、第1実施形態のフレーム10と同様である。
ブレース40は、フレーム10のそれぞれの対角に連結される部材である。このブレース40は、2本のワイヤ41、42(本発明における一対の屈曲部材)と、束形成部材43とから構成される。つまり、フレーム10の一方の対角を連結するブレース40は、実質的に、第1のワイヤ41となる。また、フレーム10の他方の対角を連結するブレース40は、実質的に、第2のワイヤ42となる。なお、これらの2本のワイヤ41、42は、何れも屈曲自在である。さらに、これらの2本のワイヤ41、42の全長は、フレーム10に水平力が作用していない場合におけるフレーム10の対角線Laよりも長くされている。
そして、第1のワイヤ41の一端側は、上梁12と左柱13とにより形成される左上角部にヒンジ接合により連結されている。すなわち、第1のワイヤ41は、フレーム10の左上角部に対して回転可能とされている。さらに、第1のワイヤ41の他端側は、下梁11と右柱14とにより形成される右下角部にヒンジ接合により連結されている。すなわち、第1のワイヤ41は、フレーム10の右下角部に対して回転可能とされている。
また、第2のワイヤ42の一端側は、上梁12と右柱14とにより形成される右上角部にヒンジ接合により連結されている。すなわち、第2のワイヤ41は、フレーム10の右上角部に対して回転可能とされている。さらに、第2のワイヤ41の他端側は、下梁11と左柱13とにより形成される左下角部にヒンジ接合により連結されている。すなわち、第2のワイヤ41は、フレーム10の左下角部に対して回転可能とされている。
束形成部材43は、2本のワイヤ41、42の中間付近を束状に所定長さwで纏める部材である。この束形成部材43は、軸方向長さが所定長さwからなる例えば円筒状からなる。束形成部材43が円筒状の場合には、この円筒内に、2本のワイヤ41、42が嵌挿されている。また、この束形成部材43は、水平方向に延伸するようにされている。なお、束形成部材43の詳細構成については、後述する。
そして、2本のワイヤ41、42が束形成部材43に嵌挿されている状態において、2本のワイヤ41、42は、何れもターンバックル等(図示せず)により突っ張られた状態となっている。ターンバックルの他には、例えば、ワイヤクリップ等(図示せず)を用いて、ワイヤが突っ張れらた状態となるようにワイヤ同士を固定するようにすることもできる。もちろん、ターンバックル及びワイヤクリップ等の併用もできる。
つまり、束形成部材43の左側口とフレーム10の左上角部との間には、第1のワイヤ41が直線状に配置されていることになる。また、束形成部材43の左側口とフレーム10の左下角部との間には、第2のワイヤ42が直線状に配置されていることになる。また、束形成部材43の右側口とフレーム10の右上角部との間には、第2のワイヤ42が直線状に配置されていることになる。束形成部材43の右側口とフレーム10の右下角部との間には、第1のワイヤ41が直線状に配置されていることになる。なお、この束形成部材43は、金属製、樹脂製など種々の材質とすることができる。
ここで、2本のワイヤ41、42を束形成部材43で所定長さwに纏め、束形成部材43の側口とフレーム10の各角部との間のワイヤ41、42を直線状に配置しておくことにより、後述するようにフレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達した時点で確実に耐震力を発揮させ始めることができる。さらに、ワイヤ41、42の弛みを除いておくことにより、必要な性能を保持していることが外観から確認できるだけでなく、ワイヤ41、42が振れないので安全であり見栄えもよい。
次に、上述したように構成される耐震架構体に、水平力(特に水平右方向への力)が作用した場合について、図15(b)を参照して説明する。図15(b)に示すように、水平右方向への力が耐震架構体に作用した場合には、フレーム10が傾斜する。具体的には、フレーム10の上梁12が下梁11に対して右側へ平行移動する。さらに、フレーム10の左右柱13、14は、右側に傾斜する。つまり、フレーム10は、長方形の状態から平行四辺形の状態へ変化する。
そして、フレーム10が平行四辺形の状態に変化する際に、ブレース40は、以下のようになる。第2のワイヤ42の両端側がフレーム10の左下角部及び右上角部により引っ張られるように作用する。その結果、束形成部材43が、水平状態から、右端側が右上がりとなるように回転する。この動作に伴って、第1のワイヤ41も移動する。つまり、耐震架構体に水平力が作用した直後、すなわちフレーム10の水平変位量Uが所定変位Us以下の場合においては、ブレース40を構成する2本のワイヤ41、42には引張力が作用しない。
そして、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達すると、第2のワイヤ42がほぼ一直線上になる。つまり、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usとなる場合におけるフレーム10の左下角部と右上角部とを結ぶ対角線Lが、第2のワイヤ42の全長と一致する。この時点においても、ブレース40を構成する2本のワイヤ41、42には引張力が作用しない。
さらに、フレーム10の水平変位量Uがさらに増大し、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usを超えた場合には、第2のワイヤ42が一直線上の状態で、第2のワイヤ42に引張力が作用する。そして、第2のワイヤ42が軸方向(対角線方向)に伸長する。
つまり、本実施形態の耐震架構体は、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達するまでの間は、ブレース40に引張力が作用しない。換言すると、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達するまでの間は、ブレース40が耐震力を発揮しない。そして、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usを超えた場合に、ブレース40に引張力が作用し始める。換言すると、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usを超える場合に、ブレース40が耐震力を発揮し始める。このように、本実施形態の耐震架構体は、ブレース40により耐震力の発揮する時点を、耐震架構体に水平力が作用した直後とするのではなく、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達した時点としている。
(3.2)束形成部材43の詳細構成
次に、束形成部材43の詳細構成について、図16を参照して説明する。図16(a)〜(d)は、束形成部材43の種々の構成を示す図である。束形成部材43は、2本のワイヤ41、42の中間付近を束状に所定長さwで纏める部材である。
図16(a)に示す束形成部材43は、単なる円筒状からなる。つまり、この円筒内部に2本のワイヤ41、42が嵌挿される。そして、この束形成部材43の筒長さが、wとなる。
図16(b)に示す束形成部材43は、C字型断面筒状であって、筒長さがwからなる。例えば、この束形成部材43は、円筒状の部材に長手方向へ切欠(開口部)を形成した形状となる。そして、この切欠から2本のワイヤ41、42を挿脱することができる。つまり、2本のワイヤ41、42と束形成部材43との着脱が非常に容易にできる。
図16(c)に示す束形成部材43は、C字型断面筒状であって筒長さがwの部材を2個用いて形成している。具体的には、2個のC字型断面筒状の部材43a、43bが、ほぼ平行に結合されている。そして、一方のC字型断面筒状の部材43aの開口側と他方のC字型断面筒状の部材43bの開口側とが反対側を向くように、両者のC字型断面筒状の部材43a、43bが結合されている。一方のC字型断面筒状の部材43aには、例えば第1のワイヤ41が嵌挿され、他方のC字型断面筒状の部材43bには、例えば第2のワイヤ42が嵌挿される。このように、2本のワイヤ41、42を束形成部材43の中の異なる場所にそれぞれ収納することにより、2本のワイヤ41、42が相互に接触することを防止できる。これにより、特に、一方のワイヤ41、42に引張力が作用した場合に、他方のワイヤ41、42との接触による影響が生じることを防止できる。さらに、相互に接触しないので、2本のワイヤ41、42を保護することにもなる。
図16(d)に示す束形成部材43は、図16(c)に示す束形成部材43の2個のC字型断面筒状の部材43a、43bが、筒軸交差方向に回転可能な構成としている。具体的には、図16(d)左図に示すように、奥側のC字型断面筒状の部材43cの一端側(図16(d)左図の右側)と手前側のC字型断面筒状の部材43dの一端側(図16(d)左図の右側)とが相互に筒軸交差方向(例えば、筒軸直交方向)に回転可能としている。そして、奥側のC字型断面筒状の部材43cの他端側(図16(d)左図の左側)と手前側のC字型断面筒状の部材43dの他端側(図16(d)左図の左側)とは、相互に係止可能とされている(図16(d)右図参照)。さらに詳細には、奥側のC字型断面筒状の部材43cに第1のワイヤ41が嵌挿され、手前側のC字型断面筒状の部材43dに第2のワイヤ42が嵌挿される場合には、係止部分43eは以下のようになる。つまり、奥側のC字型断面筒状の部材43cが手前側のC字型断面筒状の部材43dに対して下側から上側へ動く際に、奥側のC字型断面筒状の部材43cの係止部分43eが手前側のC字型断面筒状の部材43dの係止部分43eに係止される。これにより、2本のワイヤ41、42の引張力により、束形成部材43の係止が解除されないようにできる。さらに、束形成部材43を形成する両部材が相互に回転可能とすることで、2本のワイヤ41、42を非常に容易に束形成部材43の内部に嵌挿することができる。
なお、束形成部材43は、上述した機能と同様の機能を有する限り、上述した筒状やC字型断面筒状など以外の任意形状の部材を用いてもよい。
(4)第2実施形態の変形態様
上述した第2実施形態の変形態様の耐震架構体について説明する。上述した第2実施形態の耐震架構体を構成する2本のワイヤ41、42は、何れか一端側、若しくは両端側がフレーム10に対して着脱可能となるようにしてもよい。例えば、ワイヤ41、42の一端側のみがフレーム10に対して着脱可能となる場合には、取り外したワイヤ41、42の一端側が保持可能なフックなどをフレーム10に設けるようにしてもよい。
(5)第3実施形態
(5.1)耐震架構体の全体構成及び動作
第3実施形態の耐震架構体の全体構成について図17を参照して説明する。図17は、第3実施形態の耐震架構体を模式的に示す図である。具体的には、図17(a)は、水平力が作用していない場合における第3実施形態の耐震架構体を示す。図17(b)は、所定の水平力が作用した場合における第3実施形態の耐震架構体を示す。
図17(a)に示すように、水平力が作用していない場合における耐震架構体は、フレーム10と、ブレース50とから構成される。フレーム10は、第1実施形態のフレーム10と実質的に同様である。ただし、当該フレーム10は、左下角部及び右下角部に、係止部材15が固定されている。この係止部材15は、後述するブレース50の他端側を対角側に向かって係止可能とされている。この係止部材15の詳細構成については、後述する。
ブレース50は、フレーム10のそれぞれの対角に連結される部材である。このブレース50は、フレーム10の左上角部及び右下角部に配置された係止部材15を連結する第1のブレース51と、フレーム10の左下角部及び右上角部に配置された係止部材15を連結する第2のブレース52とから構成される。これらの第1のブレース51及び第2のブレース52は、何れもいわゆる長さ調整が可能なターンバックルからなる。
そして、第1のブレース51の一端側は、フレーム10の左上角部にヒンジ接合により連結されている。すなわち、第1のブレース51は、フレーム10の左上角部に対して回転可能とされている。さらに、この第1のブレース51の他端側には、係止部材15に係止可能な例えばナットなどが固定されている。水平力が作用していない場合において、この第1のブレース51の他端側のナットとフレーム10の係止部材15との間には、所定のクリアランスdが形成されている。つまり、第1のブレース51の全長は、フレーム10に水平力が作用していない場合におけるフレーム10の対角線La(ここでは、フレーム10の上角部から係止部材15までの距離)よりも長くされている。
第2のブレース52の一端側は、フレーム10の右上角部にヒンジ接合により連結されている。すなわち、第2のブレース52は、フレーム10の左上角部に対して回転可能とされている。さらに、この第2のブレース52の他端側には、係止部材15に係止可能な例えばナットなどが固定されている。水平力が作用していない場合において、この第2のブレース52の他端側のナットとフレーム10の係止部材15との間には、所定のクリアランスdが形成されている。つまり、第2のブレース52の全長は、フレーム10の水平力が作用していない場合におけるフレーム10の対角線Laよりも長くされている。
次に、上述したように構成される耐震架構体に、水平力(特に水平右方向への力)が作用した場合について、図17(b)を参照して説明する。図17(b)に示すように、水平右方向への力が耐震架構体に作用した場合には、フレーム10が傾斜する。具体的には、フレーム10の上梁12が下梁11に対して右側へ平行移動する。さらに、フレーム10の左右柱13、14は、右側に傾斜する。つまり、フレーム10は、長方形の状態から平行四辺形の状態へ変化する。
そして、フレーム10が平行四辺形の状態に変化する際に、ブレース50は、以下のようになる。フレーム10の左下角部と右上角部との距離が遠ざかるにつれて、第2のブレース52の他端側のナットとフレーム10の係止部材15との距離が近づく。逆に、このとき、第1のブレース51の他端側のナットとフレーム10の係止部材15との距離は遠ざかる。つまり、耐震架構体に水平力が作用した直後、すなわちフレーム10の水平変位量Uが所定変位Us以下の場合においては、ブレース50を構成する第1のブレース51及び第2のブレース52には引張力が作用しない。
そして、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達すると、第2のブレース51の他端側のナットとフレーム10の係止部材15とが当接する。つまり、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usとなる場合におけるフレーム10の左下角部と右上角部とを結ぶ対角線L(ここでは、フレーム10の上角部から係止部材15までの距離)が、第2のブレース51の全長と一致する。この時点においても、ブレース50を構成する第1のブレース51及び第2のブレース52には引張力が作用しない。
さらに、フレーム10の水平変位量Uがさらに増大し、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usを超えた場合には、第2のブレース51の他端側のナットがフレーム10の係止部材15に当接した状態で、第2のブレース51に引張力が作用する。そして、第2のブレース51が軸方向(対角線方向)に伸長する。
つまり、本実施形態の耐震架構体は、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達するまでの間は、ブレース50に引張力が作用しない。換言すると、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達するまでの間は、ブレース50が耐震力を発揮しない。そして、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usを超えた場合に、ブレース50に引張力が作用し始める。換言すると、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usを超える場合に、ブレース50が耐震力を発揮し始める。このように、本実施形態の耐震架構体は、ブレース50により耐震力の発揮する時点を、耐震架構体に水平力が作用した直後とするのではなく、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達した時点としている。
(5.2)係止部材15の詳細構成
次に、フレーム10の係止部材15の詳細構成について、図18を参照して説明する。図18(a)(b)は、係止部材15の種々の構成を示す図である。係止部材15は、上述したように、ブレース50の他端側のナットを対角側に向かって係止可能とする部材である。
図18(a)に示す係止部材15は、略板状からなり、両端側がボルトにより左右柱13、14及び下梁11に固定されている。そして、係止部材15の中間部分の垂線が、フレーム10の対角線となるように配置されている。そして、この係止部材15の中間部分には、円形穴15aが形成されている。この円形穴15aは、第1のブレース51及び第2のブレース52が貫通し、且つ、ブレース51、52の他端側に固定されたナットに係合する。
図18(b)に示す係止部材15は、略板状からなる本体部15bと、外れ止め金具15cとから構成される。本体部15bは、両端側がボルトにより左右柱13、14及び下梁11に固定されている。そして、本体部15bの中間部分の垂線が、フレーム10の対角線となるように配置されている。そして、この本体部15bの中間部分には、切欠部15dが形成されている。この切欠部15dは、第1のブレース51及び第2のブレース52が貫通し、且つ、ブレース51、52の他端側に固定されたナットに係合する。外れ止め金具15cは、本体部15bの切欠部15dを開閉可能となるように本体部15bに取り付けられている。具体的には、外れ止め金具15cは、一端側が本体部15bに回転可能に取り付けられ、他端側が本体部15bに係止可能とされている。
つまり、ブレース51、52を係止部材15へ取り付ける際には、切欠部15dが開放されるように外れ止め金具15cを回転して、ブレース51、52を切欠部15dへ挿入する。そして、ブレース51、52を切欠部15dへ挿入した後には、外れ止め金具15cの他端側を本体部15bに装着する。また、ブレース51、52を係止部材15から取り外す際には、上記と逆の動作を行う。
ここで係止部材15は、本発明におけるブレース50に付けられる付属物に含まれる。
(5.3)耐震架構体を構成する部材の長さと所定変位Usとの関係
次に、耐震架構体を構成する部材の長さと所定変位Usとの関係について、数式を用いて説明する。つまり、下記の数式を用いることにより、非常に容易に耐震架構体を構成する部材の長さを決定することができる。具体的には、数8に示すように、ブレース50の全長L、左右柱13、14の長さa、及び、上下梁11、12の長さbと、所定変位Usとの関係を示す。
そして、例えば、左右柱13、14の長さaが300cmで、上下梁11、12の長さbが400cmの場合に、クリアランスdと所定変位Usとの関係は、表2に示すようになる。
そして、一般的には、左右柱13、14の長さa及び上下梁11、12の長さbは予め決定されている。従って、表2のようなクリアランスdと所定変位Usとの関係を導き出しておくことで、ブレース50の設計が非常に容易に行うことができる。なお、クリアランスdは、ブレース50の長さを調整することにより、非常に容易に行うことができる。
(6)第4実施形態
第4実施形態の耐震架構体の全体構成について図19を参照して説明する。図19は、第4実施形態の耐震架構体を模式的に示す図である。具体的には、図19(a)は、水平力が作用していない場合における第4実施形態の耐震架構体を示す。図19(b)は、所定の水平力が作用した場合における第4実施形態の耐震架構体を示す。
図19(a)に示すように、水平力が作用していない場合における耐震架構体は、フレーム10と、ブレース60とから構成される。フレーム10は、第1実施形態のフレーム10と同様である。
ブレース60は、フレーム10のそれぞれの対角に連結される部材である。このブレース60は、2本のワイヤ61、62から構成される。そして、これら2本のワイヤ61、62の全長は、フレーム10に水平力が作用していない場合におけるフレーム10の対角線La(ここでは、フレーム10の上角部の連結部位から対角の下角部の連結部位までの距離)よりも長くされている。
そして、第1のワイヤ61の一端側は、フレーム10の左上角部にヒンジ接合により連結されている。すなわち、第1のワイヤ61は、フレーム10の左上角部に対して回転可能とされている。さらに、第1のワイヤ61の他端側は、フレーム10の右下角部にヒンジ接合により連結されている。すなわち、第1のワイヤ61は、フレーム10の右下角部に対して回転可能とされている。そして、上述したように、第1のワイヤ61の全長は、フレーム10に水平力が作用していない場合におけるフレーム10の対角線Laよりも長いため、第1のワイヤ61は僅かに弛んだ状態となっている。
また、第2のワイヤ62の一端側は、フレーム10の右上角部にヒンジ接合により連結されている。すなわち、第2のワイヤ62は、フレーム10の右上角部に対して回転可能とされている。さらに、第2のワイヤ62の他端側は、フレーム10の左下角部にヒンジ接合により連結されている。すなわち、第2のワイヤ62は、フレーム10の左下角部に対して回転可能とされている。そして、上述したように、第2のワイヤ62の全長は、フレーム10に水平力が作用していない場合におけるフレーム10の対角線Laよりも長いため、第2のワイヤ62は僅かに弛んだ状態となっている。
次に、上述したように構成される耐震架構体に、水平力(特に水平右方向への力)が作用した場合について、図19(b)を参照して説明する。図19(b)に示すように、水平右方向への力が耐震架構体に作用した場合には、フレーム10が傾斜する。具体的には、フレーム10の上梁12が下梁11に対して右側へ平行移動する。さらに、フレーム10の左右柱13、14は、右側に傾斜する。つまり、フレーム10は、長方形の状態から平行四辺形の状態へ変化する。
そして、フレーム10が平行四辺形の状態に変化する際に、ブレース60は、以下のようになる。フレーム10の左下角部と右上角部との距離が遠ざかるにつれて、第2のワイヤ62の弛み量が小さくなっていく。一方、第1のワイヤ61は、弛み量が大きくなっていく。つまり、耐震架構体に水平力が作用した直後、すなわちフレーム10の水平変位量Uが所定変位Us以下の場合においては、ブレース60を構成する第1のワイヤ61及び第2のワイヤ62には引張力が作用しない。
そして、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達すると、第2のワイヤ62がほぼ一直線上になる。つまり、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usとなる場合におけるフレーム10の左下角部と右上角部とを結ぶ対角線L(ここでは、フレーム10の上角部の連結部位から対角の下角部の連結部位までの距離)が、第2のワイヤ62の全長と一致する。この時点においても、ブレース60を構成する2本のワイヤ61、62には引張力が作用しない。
さらに、フレーム10の水平変位量Uがさらに増大し、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usを超えた場合には、第2のワイヤ62が一直線上の状態で、第2のワイヤ62に引張力が作用する。そして、第2のワイヤ62が軸方向(対角線方向)に伸長する。
つまり、本実施形態の耐震架構体は、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達するまでの間は、ブレース60に引張力が作用しない。換言すると、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達するまでの間は、ブレース60が耐震力を発揮しない。そして、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usを超えた場合に、ブレース60に引張力が作用し始める。つまり、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usを超える場合に、ブレース60が耐震力を発揮し始める。このように、本実施形態の耐震架構体は、ブレース60により耐震力の発揮する時点を、耐震架構体に水平力が作用した直後とするのではなく、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達した時点としている。
(7)第4実施形態の変形態様
上述した第4実施形態の変形態様の耐震架構体について図20を参照して説明する。上述した第4実施形態の耐震架構体を構成するブレース60は、2本のワイヤ61、62を用いたが、以下のようにしてもよい。すなわち、図20(a)に示すように、それぞれのワイヤ61、62をヒンジ接合された2つの鋼棒からなる第1・第2のブレース71、72にそれぞれ置き換えてもよい。具体的には、第1のブレース71は、ヒンジ接合された鋼棒からなり、一端側がフレーム10の左上角部にヒンジ接合により連結されている。そして、第1のブレース71の他端側は、フレーム10の右下角部にヒンジ接合により連結されている。そして、第1のブレース71の全長は、フレーム10に水平力が作用していない場合におけるフレーム10の対角線La(ここでは、フレーム10の上角部の連結部位から対角の下角部の連結部位までの距雌)よりも長くされている。そのため、第1のブレース71は僅かに弛んだ状態となっている。
また、第2のブレース72は、ヒンジ接合された鋼棒からなり、一端側がフレーム10の右上角部にヒンジ接合により連結されている。そして、第2のブレース72の他端側は、フレーム10の左下角部にヒンジ接合により連結されている。そして、第2のブレース72の全長は、フレーム10に水平力が作用していない場合におけるフレーム10の対角線Laよりも長くされている。そのため、第2のブレース72は僅かに弛んだ状態となっている。
このような構成からなる耐震架構体に、水平力(特に水平右方向への力)が作用した場合について、図20(b)を参照して説明する。図20(b)に示すように、水平右方向への力が耐震架構体に作用した場合には、フレーム10が傾斜する。具体的には、フレーム10の上梁12が下梁11に対して右側へ平行移動する。さらに、フレーム10の左右柱13、14は、右側に傾斜する。つまり、フレーム10は、長方形の状態から平行四辺形の状態へ変化する。
そして、フレーム10が平行四辺形の状態に変化する際に、ブレース70は、以下のようになる。フレーム10の左下角部と右上角部との距離が遠ざかるにつれて、第2のブレース72の弛み量が小さくなっていく。一方、第1のブレース71は、弛み量が大きくなっていく。つまり、耐震架構体に水平力が作用した直後、すなわちフレーム10の水平変位量Uが所定変位Us以下の場合においては、ブレース70を構成する第1のブレース71及び第2のブレース72には引張力が作用しない。
そして、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達すると、第2のブレース72がほぼ一直線上になる。つまり、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usとなる場合におけるフレーム10の左下角部と右上角部とを結ぶ対角線L(ここでは、フレーム10の上角部の連結部位から対角の下角部の連結部位までの距離)が、第2のブレース72の全長と一致する。この時点においても、ブレース70を構成する第1・第2のブレース71、72には引張力が作用しない。
さらに、フレーム10の水平変位量Uがさらに増大し、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usを超えた場合には、第2のブレース72が一直線上の状態で、第2のブレース72に引張力が作用する。そして、第2のブレース72が軸方向(対角線方向)に伸長する。
つまり、本実施形態の耐震架構体は、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達するまでの間は、ブレース70に引張力が作用しない。換言すると、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達するまでの間は、ブレース70が耐震力を発揮しない。そして、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usを超えた場合に、ブレース70に引張力が作用し始める。換言すると、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usを超える場合に、ブレース70が耐震力を発揮し始める。このように、本実施形態の耐震架構体は、ブレース70により耐震力の発揮する時点を、耐震架構体に水平力が作用した直後とするのではなく、フレーム10の水平変位量Uが所定変位Usに達した時点としている。
また、他の変形態様について図21を参照して説明する。図21は、第1のブレース71及び第2のブレース72を収納している状態を示す図である。図21に示すように、第1のブレース71の他端側が、フレーム10の右下角部に対して着脱可能な構成としている。ここで、ブレース71が弛んでいるため着脱が容易である。そして、フレーム10の右下角部から取り外した第1のブレース71の他端側を左柱13に設けられたフックなどに引っ掛けている。また、第2のブレース72の他端側が、フレーム10の左下角部に対して着脱可能な構成としている。そして、フレーム10の左下角部から取り外した第2のブレース72の他端側を右柱14に設けられたフックなどに引っ掛けている。このように、ブレース70を収納することができる。なお、左右柱13,14に設けられたフックは、本発明におけるブレース70に付けられる付属物に含まれる。
Claims (16)
- 上下梁と該上下梁間に配置される左右柱とからなる四角形状の梁柱架構体と、
前記梁柱架構体のそれぞれの対角に連結される一対のブレースと、
を備える耐震架構体であって、
各前記ブレースは、前記梁柱架構体の水平変位量が所定変位に達するまでは前記梁柱架構体に水平力が作用することに伴う引張力及びせん断力を生じず、前記梁柱架構体の水平変位量が所定変位を超える場合に前記梁柱架構体に水平力が作用することに伴う引張力のみを生じるように構成され、
前記所定変位に対応する前記梁柱架構体の層間変形角は、1/60〜1/10の範囲であることを特徴とする耐震架構体。 - 上下梁と該上下梁間に配置される左右柱とからなる四角形状の梁柱架構体と、
前記梁柱架構体のそれぞれの対角に連結される一対のブレースと、
を備える耐震架構体であって、
各前記ブレースは、前記梁柱架構体の水平変位量が所定変位に達するまでは前記梁柱架構体に水平力が作用することに伴う引張力及びせん断力を生じず、前記梁柱架構体の水平変位量が所定変位を超える場合に前記梁柱架構体に水平力が作用することに伴う引張力のみを生じるように構成され、
前記ブレースが降伏する際の前記梁柱架構体の水平変位量は、前記梁柱架構体が降伏する際の前記梁柱架構体の前記水平変位量と略同一であることを特徴とする耐震架構体。 - 前記ブレースは、
略直線状からなり、一端側が前記梁柱架構体のそれぞれの角部に連結される4つの斜め部材と、
略直線状からなり、一端側が2つの前記斜め部材の他端側のみにヒンジ接合により連結され、他端側が他の2つの前記斜め部材の他端側のみにヒンジ接合により連結される連結部材と、
を有する請求項1〜3の何れか一項に記載の耐震架構体。 - 前記斜め部材は、一端側が前記梁柱架構体のそれぞれの角部にヒンジ接合により連結される請求項4記載の耐震架構体。
- 前記斜め部材及び前記連結部材は、長さ調整可能である請求項4又は5に記載の耐震架構体。
- 前記梁柱架構体は、角部に梁柱係止部を有し、
一対の前記ブレースの少なくとも一方は、略直線状からなり、両端側に前記梁柱係止部に係止可能な被係止部を備え、前記梁柱架構体に水平力が作用していない場合に少なくとも一端側の前記被係止部と前記梁柱係止部との間に所定のクリアランスが形成されるように構成されている請求項1〜3の何れか一項に記載の耐震架構体。 - 一対の前記ブレースの少なくとも一方は、両端側が前記梁柱架構体の角部に連結される屈曲自在な部材からなり、前記梁柱架構体に水平力が作用していない場合に弛みを有して配置される請求項1〜3の何れか一項に記載の耐震架構体。
- 一対の前記ブレースの少なくとも一方は、長さ調整可能である請求項7又は8に記載の耐震架構体。
- 一対の前記ブレースは、
それぞれの両端側が前記梁柱架構体のそれぞれの対角に連結される屈曲自在な一対の屈曲部材と、
一対の前記屈曲部材の中間付近を束状に所定長さ纏める束形成部材と、
を有する請求項1〜3の何れか一項に記載の耐震架構体。 - 一対の前記屈曲部材は、それぞれの両端側が前記梁柱架構体のそれぞれの対角にヒンジ接合により連結される請求項10記載の耐震架構体。
- 前記束形成部材は、一対の前記屈曲部材を収容可能で且つ周方向全周に閉塞された筒状からなる請求項10又は11に記載の耐震架構体。
- 前記束形成部材は、一対の前記屈曲部材を収納可能な略C字型断面筒状からなる請求項10又は11に記載の耐震架構体。
- 前記束形成部材は、
一の前記屈曲部材を収納可能な略C字型断面筒状からなる第1部材と、
他の前記屈曲部材を収納可能で該第1部材に固定された略C字型断面筒状からなる第2部材と、
を有する請求項10又は11に記載の耐震架構体。 - 前記第2部材は、前記第1部材に対して筒軸交差方向に回転可能で、且つ、前記第1部材に対して係止可能である請求項14記載の耐震架構体。
- 請求項1〜15の何れか一項に記載の耐震架構体に使用されるブレース部材。
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