JP4460130B2 - 更生管用塩化ビニル系樹脂組成物及び塩化ビニル系樹脂更生管 - Google Patents
更生管用塩化ビニル系樹脂組成物及び塩化ビニル系樹脂更生管 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、更生管用の塩化ビニル系樹脂組成物及びその塩化ビニル系樹脂組成物を用いた塩化ビニル系樹脂更生管に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、老朽化した既設管が増加しており、この様な既設管を更生、修復する方法の一つとして、機械的強度や耐薬品性等に優れた塩化ビニル系樹脂管が用いられている。
【0003】
例えば、特表平6−508647号公報では、塩化ビニル樹脂に混合しうる熱可塑性エラストマーを加えた塩化ビニル系樹脂管により修復する方法が開示されている。しかし、この方法の場合、輸送時や施工時における樹脂管の破損を防止するに足る耐衝撃性を発現させるためには、多量の熱可塑性エラストマーや耐衝撃性改質剤等を添加する必要があり、得られる塩化ビニル樹脂管の機械的強度が不十分になるという問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、優れた機械的強度と耐衝撃性を有し、施工性にも優れる更生管を得るために適した更生管用塩化ビニル系樹脂組成物及びその塩化ビニル系樹脂組成物を用いた塩化ビニル系樹脂更生管を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明(以下、発明1という)による更生管用塩化ビニル系樹脂組成物(以下、単に塩化ビニル系樹脂組成物ともいう)は、単独重合体のガラス転移温度(以下、Tgという)が−140〜−20℃であるアルキル(メタ)アクリレートモノマー50重量%以上及びその他のアクリル系モノマーを含有してなるアクリル系モノマー成分100重量部と多官能性モノマー成分0.01〜30重量部とを共重合したアクリル系共重合体3〜10重量%に、塩化ビニル系モノマー97〜90重量%をグラフト共重合してなる平均重合度400〜2500の複合塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、該複合塩化ビニル系樹脂と相溶し得るアクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体より選ばれた1種もしくは2種の熱可塑性エラストマー3〜30重量部が添加されてなることを特徴とする。尚、ここで(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0007】
また、請求項2記載の発明(以下、発明2という)による塩化ビニル系樹脂更生管(以下、単に更生管ともいう)は、上記発明1の更生管用塩化ビニル系樹脂組成物からなり、且つ、既設管中に挿入され、加熱されることにより上記既設管の内面に密着することを特徴とする。
【0008】
発明1で用いられるアクリル系モノマー成分中に含有される単独重合体のTgが−140〜−20℃であるアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、エチルアクリレート(−24℃)、n−プロピルアクリレート(−37℃)、n−ブチルアクリレート(−54℃)、イソブチルアクリレート(−24℃)、sec−ブチルアクリレート(−21℃)、n−ヘキシルアクリレート(−57℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(−85℃)、n−オクチルアクリレート(−85℃)、n−オクチルメタクリレート(−25℃)、イソオクチルアクリレート(−45℃)、n−ノニルアクリレート(−63℃)、n−ノニルメタクリレート(−35℃)、イソノニルアクリレート(−85℃)、n−デシルアクリレート(−70℃)、n−デシルメタクリレート(−45℃)、ラウリルメタクリレート(−65℃)等が挙げられる。これらのアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。尚、括弧内は単独重合体のTgを示す。
【0009】
上記アルキル(メタ)アクリレートモノマーの単独重合体のTgが−140℃未満であると、得られる塩化ビニル系樹脂組成物及び更生管の機械的強度が不十分となり、逆にアルキル(メタ)アクリレートモノマーの単独重合体のTgが−20℃を超えると、得られる塩化ビニル系樹脂組成物及び更生管の耐衝撃性が不十分となる。
【0010】
また、発明1で用いられるアクリル系モノマー成分中に含有されるその他のアクリル系モノマーとしては、例えば、フェニルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、フェニルメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。これらのその他のアクリル系モノマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0011】
発明1で用いられるアクリル系モノマー成分中における前記単独重合体のTgが−140〜−20℃であるアルキル(メタ)アクリレートモノマーの含有量が50重量%未満であるか、又は上記その他のアクリル系モノマーの含有量が50重量%を超えると、得られる塩化ビニル系樹脂組成物及び更生管の耐衝撃性が不十分となったり、更生管の既設管に対する密着性が不十分となる。
【0012】
発明1で用いられる多官能性モノマー成分としては、上記アクリル系モノマー成分と共重合可能なものであれば良く、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;ジアリルフタレート、ジアリルマレート、トリアリルイソシアヌレート等の多官能アリル化合物;ブタジエン等の不飽和化合物等が挙げられる。これらの多官能性モノマー成分は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0013】
発明1で用いられるアクリル系共重合体は、上記アクリル系モノマー成分100重量部と上記多官能性モノマー成分0.01〜30重量部とを共重合して得られる。アクリル系モノマー成分100重量部に対する多官能性モノマー成分の共重合量が0.01重量部未満であるか、逆に30重量部を超えると、得られるアクリル系共重合体がエラストマー的機能を十分に発揮せず、又得られる塩化ビニル系樹脂組成物及び更生管の耐衝撃性が不十分となる。
【0014】
上記アクリル系共重合体は、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法等により得ることができるが、なかでも、共重合体の粒子径制御が容易なことから、乳化重合法が好ましく採用される。上記乳化重合の方法は、従来公知の方法で良く、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、乳化分散剤、重合開始剤、pH調整剤、酸化防止剤等の各種添加剤の1種もしくは2種以上を添加して乳化重合を行えば良い。
【0015】
上記乳化分散剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、部分鹸化ポリビニルアルコール、セルロース系分散剤、ゼラチン等が挙げられるが、なかでもアニオン系界面活性剤が好適に用いられる。アニオン系界面活性剤の市販品としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルサルフェート(商品名「ハイテノールN−08」、第一工業製薬社製)等が挙げられる。これらの乳化分散剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0016】
上記重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素等の水溶性開始剤;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート等の有機系過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0017】
上記乳化重合法の具体的な方法としては、例えば、一括重合法、モノマー滴下法、エマルジョン滴下法等が挙げられる。上記一括重合法は、ジャケット付重合反応器内に純水、乳化分散剤、重合開始剤、アクリル系混合モノマー(前記アクリル系モノマー成分+多官能性モノマー成分)を一括して仕込み、窒素気流中において加圧下で攪拌して十分に乳化した後、重合反応器内をジャケットで昇温して重合反応を開始させる方法である。又、上記モノマー滴下法は、ジャケット付重合反応器内に純水、乳化分散剤、重合開始剤を仕込み、窒素気流下で重合反応器内を昇温した後、上記アクリル系混合モノマーを一定量ずつ滴下して重合反応を開始させる方法である。さらに、上記エマルジョン滴下法は、上記アクリル系混合モノマー、乳化分散剤、純水を攪拌して予め乳化モノマー液を調製し、次いで、ジャケット付重合反応器内に純水、重合開始剤を仕込み、窒素気流下で重合反応器内を昇温した後、上記乳化モノマー液を一定量ずつ滴下して重合反応を開始させる方法である。
【0018】
この様にして得られるアクリル系共重合体(アクリル系樹脂)の構造や形態としては、特に限定されるものではないが、樹脂粒子の安定性向上や塩化ビニル系樹脂組成物及び更生管の機械的強度向上を図れることから、例えば、樹脂粒子の表層部と内部とでモノマー組成や架橋構造が異なる、所謂コア−シェル構造を有するものが好ましい。
【0019】
上記コア−シェル構造の形成方法としては、例えば、コア部を構成するアクリル系混合モノマー、乳化分散剤、純水から予め調製した乳化モノマー液に重合開始剤を添加して重合反応を行い、先ず、コア部の樹脂粒子を形成する。次いで、シェル部を構成するアクリル系混合モノマー、乳化分散剤、純水から予め調製した乳化モノマー液を添加し、上記コア部にグラフト共重合させる方法等が挙げられる。
【0020】
上記方法において、コア部に対するシェル部のグラフト共重合は、コア部の重合と同一の重合工程で連続的に行っても良い。コア部とシェル部の割合は、コア部を形成するアクリル系混合モノマーとシェル部を形成するアクリル系混合モノマーとの割合を調整することによって自在に調節可能である。又、シェル部に三次元的な架橋構造を形成させるために、前記多官能性モノマー成分をシェル部のみに使用しても良いし、シェル部に偏らせて使用しても良い。この場合も、多官能性モノマー成分の使用量は、アクリル系共重合体全体について、前記アクリル系モノマー成分100重量部に対して、多官能性モノマー成分0.01〜30重量部とされる。
【0021】
このような方法で得られるアクリル系共重合体粒子は、コア部の表面をシェル部が三次元的に覆い、シェル部を構成する樹脂とコア部を構成する樹脂とが部分的に共有結合しており、シェル部が三次元的な架橋構造を形成している。
【0022】
発明1で用いられる複合塩化ビニル系樹脂は、上記アクリル系共重合体3〜10重量%に対し、塩化ビニル系モノマー97〜90重量%をグラフト共重合してなり、平均重合度が400〜2500である。
【0023】
上記複合塩化ビニル系樹脂において、アクリル系共重合体の含有量が3重量%未満であるか、塩化ビニル系モノマーの含有量が97重量%を超えると、得られる塩化ビニル系樹脂組成物及び更生管の耐衝撃性が不十分となり、逆にアクリル系共重合体の含有量が10重量%を超えるか、塩化ビニル系モノマーの含有量が90重量%未満であると、塩化ビニル系樹脂が有する本来の特性を得られなくなる。
【0024】
また、上記複合塩化ビニル系樹脂の平均重合度が400未満であると、得られる塩化ビニル系樹脂組成物及び更生管の機械的強度が不十分となり、逆に平均重合度が2500を超えると、得られる塩化ビニル系樹脂組成物の成形性が悪化する。尚、上記平均重合度は、複合塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、濾過により不溶解成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K−6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定したものである。
【0025】
上記塩化ビニル系モノマーとは、塩化ビニルモノマー単独、もしくは塩化ビニルモノマーと塩化ビニルモノマーと共重合可能なその他のモノマーとの混合物を意味する。上記その他のモノマーとしては、塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーであれば特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン類;プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類等が挙げられる。これらのその他のモノマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0026】
上記塩化ビニルモノマーと塩化ビニルモノマーと共重合可能なその他のモノマーとの混合物中の、その他のモノマーの含有量は、塩化ビニル系樹脂組成物及び更生管の性能や目的に応じて適宜設定されれば良く、特に限定されるものではないが、上記混合物中の20重量%以下であることが好ましい。その他のモノマーの含有量が上記混合物中の20重量%を超えると、塩化ビニル系樹脂が有する本来の特性を得られなくなることがある。
【0027】
上記アクリル系共重合体と上記塩化ビニル系モノマーとのグラフト共重合は、従来公知の方法で行うことができる。例えば、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法等が挙げられるが、一般的には、乳化状態(エマルジョン状態)のアクリル系共重合体に塩化ビニルモノマー又は塩化ビニル系混合モノマーを添加して、懸濁重合する方法が用いられる。上記懸濁重合法には、乳化分散剤や重合開始剤等が用いられる。
【0028】
上記懸濁重合法の具体的な方法としては、例えば、攪拌機及び温度調整機を備えた重合反応器内に、純水、乳化分散剤、重合開始剤、アクリル系共重合体エマルジョンを仕込み、重合反応器内の空気を真空ポンプで排除した後、塩化ビニル系モノマーを重合反応器内に導入する。次いで、重合反応器を昇温して、所望の重合温度で重合反応を開始させる。重合反応終了後、残存モノマーを重合反応器外に排出して複合塩化ビニル系樹脂のスラリーを得た後、脱水機による脱水や乾燥機による乾燥等の工程を経て、所望の複合塩化ビニル系樹脂を得ることができる。
【0029】
発明1による更生管用塩化ビニル系樹脂組成物は、上記複合塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、該複合塩化ビニル系樹脂と相溶し得る熱可塑性エラストマー3〜30重量部が添加されてなる。
【0030】
上記熱可塑性エラストマーとしては、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体(EVACO)である。これらの熱可塑性エラストマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0031】
発明1において、上記熱可塑性エラストマーの添加量が3重量部未満であると、得られる塩化ビニル系樹脂組成物からなる更生管を既設管中に挿入し、加熱して既設管の内面に密着させる時の施工性が損なわれ、逆に熱可塑性エラストマーの添加量が30重量部を超えると、得られる塩化ビニル系樹脂組成物及び更生管の機械的強度が不十分となる。
【0033】
発明1において、熱可塑性エラストマーが、NBR、EVACOより選ばれた1種もしくは2種以上を含有することにより、得られる塩化ビニル系樹脂組成物及び更生管の機械的強度と耐衝撃性とのバランスがより優れたものとなると共に、更生管を既設管中に挿入し、加熱して既設管の内面に密着させる時の施工性もより優れたものとなる。
【0034】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物には、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、充填剤、顔料、滑剤、加工助剤、安定剤、安定化助剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤(老化防止剤)、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤の1種もしくは2種以上が添加されていても良い。これらの添加剤の添加方法や添加順序は、特に限定されるものではなく、任意の添加方法や添加順序であって良い。
【0035】
上記充填剤としては特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ等の無機充填剤が挙げられる。これらの充填剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0036】
上記顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料;クロム酸モリブデン系、フェロシアン化物系等の無機顔料等が挙げられる。これらの顔料は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0037】
上記滑剤としては特に限定されず、例えば、ステアリン酸等の脂肪酸類;脂肪酸エステル類;オレフィンワックス類等が挙げられる。これらの滑剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0038】
上記加工助剤としては特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系モノマーの単独重合体もしくは共重合体;上記(メタ)アクリレート系モノマーとスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル等のビニル系モノマーとの共重合体等が挙げられる。これらの加工助剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0039】
上記安定剤としては特に限定されず、例えば、ジブチル錫マレート、ジオクチル錫ラウレート等の有機錫系安定剤;鉛白、塩基性亜硫酸鉛、二塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜燐酸鉛、シリカゲル共沈硅酸鉛、ステアリン酸鉛、安息香酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛等の鉛系安定剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸系安定剤;ハイドロタルサイト、ゼオライト等の無機系安定剤等が挙げられる。これらの安定剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0040】
上記安定化助剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、燐酸エステル等が挙げられる。これらの安定化助剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0041】
上記光安定剤としては特に限定されず、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。これらの光安定剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0042】
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0043】
発明2による塩化ビニル系樹脂更生管は、上述した発明1の更生管用塩化ビニル系樹脂組成物からなり、且つ、既設管中に挿入され、加熱されることにより上記既設管の内面に密着することを特徴とする。
【0044】
上記塩化ビニル系樹脂更生管は、押出機を用いて、発明1の塩化ビニル系樹脂組成物を溶融混練し、押出し成形を行って、所望の断面形状の管状体に賦形することにより作製される。上記更生管の断面形状は、更生、修復しようとする既設管中に挿入可能であって、加熱により上記既設管の内面に密着し得る形状であれば良く、特に限定されるものではない。
【0045】
【発明の実施の形態】
本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。尚、実施例中の「部」は「重量部」を意味し、「%」は「重量%」を意味する。
【0046】
(実施例1)
(1)アクリル系共重合体の作製
アクリル系モノマー成分としてn−ブチルアクリレート(n−BA)95%及び多官能性モノマー成分としてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPA)5%を含有してなるアクリル系混合モノマー2.36kg、乳化分散剤として商品名「ハイテノールN−08」(第一工業製薬社製)の10%水溶液50g及び純水1.5kgからなる乳化モノマー液を予め調製した。
攪拌機及び温度調整機を備えた重合反応器(内容積10リットル)内に、純水4kg、重合開始剤として過硫酸アンモニウムの10%水溶液24gを仕込み、重合容器内を窒素ガスで置換した後、攪拌下、重合反応器内を75℃に昇温した。次いで、予め調製した上記乳化モノマー液を昇温後の重合反応器内に一定の滴下速度で滴下した。乳化モノマー液の全量の滴下を3時間で終了し、その後、1時間攪拌を続けた後、重合反応を終了し、固形分の濃度が30%のアクリル系共重合体エマルジョンを得た。
【0047】
(2)複合塩化ビニル系樹脂の作製
攪拌機及び温度調整機を備えた重合反応器(内容積15リットル)内に、純水7.5kg、上記で得られたアクリル系共重合体エマルジョン0.5kg(固形分0.15kg)、乳化分散剤として部分鹸化ポリビニルアルコール(商品名「クラレポバールL−8」、クラレ社製)の3%水溶液330g、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシデカネート及びα−クミルパーオキシネオデカネート各々1.1gを仕込み、重合反応器内の空気を真空ポンプで排出した後、攪拌下、塩化ビニルモノマー3.0kgを添加した。次いで、重合反応器内を50℃に昇温して、グラフト重合反応を開始した。重合反応器内の圧力の低下でグラフト重合反応の終了を確認した後、未反応の塩化ビニルモノマーを排出して、複合塩化ビニル系樹脂を作製した。得られた複合塩化ビニル系樹脂中の塩化ビニルのグラフト量は94%であり、アクリル系共重合体の含有量は6%であった。又、平均重合度は1400であった。
【0048】
(3)塩化ビニル系樹脂組成物及び管状体の作製
内容積100リットルのヘンシェルミキサー(川田工業社製)内に、上記で得られた複合塩化ビニル系樹脂100部、熱可塑性エラストマーとしてEVACO(商品名「エルバロイ742」、三井デュポンポリケミカル社製)10部、安定剤として有機錫系安定剤(商品名「ONZ−142F」、三共有機社製)2部、滑剤としてポリエチレンワックス系滑剤(商品名「Hiwax220MP」、三井石油化学工業社製)0.5部及びステアリン酸(商品名「S−30」、花王社製)0.5部、及び加工助剤として商品名「メタブレンP501A」(三菱レイヨン社製)3部を仕込み、均一に攪拌混合して、塩化ビニル系樹脂組成物を作製した。
【0049】
上記で得られた塩化ビニル系樹脂組成物を直径50mmの2軸異方向回転押出機(商品名「SLM−50」、長田製作所社製)に供給し、外径50mmの管状の成形体を得た。この成形体を80℃に加熱されたギアオーブン内に20分間静置した後、管状体断面が4つ折りの形状になるようにし、この形状を維持したまま成形体の温度が20℃になるまで冷却して、管状体を作製した。
【0050】
(4)評価
上記で得られた管状体の性能(曲げ弾性率、耐衝撃性、施工性)を以下の方法で評価した。その結果は表1に示すとおりであった。
・曲げ弾性率:JIS K−7203に準拠して、管状体の曲げ弾性率を20℃の雰囲気下及び50℃の雰囲気下で測定した。
【0051】
・耐衝撃性:JIS K−7111「硬質プラスチックのシャルピー衝撃試験方法」に準拠して、ノッチ付き(切欠き付き)試験片を用い、管状体のシャルピー衝撃値を測定した。尚、測定は23℃の雰囲気下で行った。
【0052】
・施工性:管状体を内径50mmの鋼管内に挿入し、管状体の一方の端部から管状体の内部に90℃の熱風を10分間送風して、鋼管の内面に管状体を密着させた。次いで、20℃の空気を30分間送風して冷却した後、鋼管と管状体との密着状態を目視で観察し、下記判定基準により、施工性を評価した。
〔判定基準〕
○‥‥鋼管に対し管状体が全面的に密着していた。
×‥‥鋼管に対し管状体が部分的もしくは全面的に密着していなかった。
【0053】
(実施例2)
塩化ビニルのグラフト量が92%、アクリル系共重合体の含有量が8%である複合塩化ビニル系樹脂を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、塩化ビニル系樹脂組成物及び管状体を作製した。
【0054】
(実施例3)
平均重合度が1000の複合塩化ビニル系樹脂を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、塩化ビニル系樹脂組成物及び管状体を作製した。
【0055】
(実施例4)
塩化ビニル系樹脂組成物の作製において、EVACO「エルバロイ742」の添加量を15部としたこと以外は実施例1の場合と同様にして、塩化ビニル系樹脂組成物及び管状体を作製した。
【0056】
(実施例5)
塩化ビニル系樹脂組成物の作製において、熱可塑性エラストマーとして、EVACO「エルバロイ742」10部の代わりに、NBR(商品名「PN−20HA」、ジェイエスアール社製)10部を添加したこと以外は実施例1の場合と同様にして、塩化ビニル系樹脂組成物及び管状体を作製した。
【0057】
(実施例6)
塩化ビニル系樹脂組成物の作製において、熱可塑性エラストマーとして、EVACO「エルバロイ742」10部に加えて、NBR「PN−20HA」5部を添加したこと以外は実施例1の場合と同様にして、塩化ビニル系樹脂組成物及び管状体を作製した。
【0058】
(比較例1)
塩化ビニルのグラフト量が98%、アクリル系共重合体の含有量が2%である複合塩化ビニル系樹脂を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、塩化ビニル系樹脂組成物及び管状体を作製した。
【0059】
(比較例2)
塩化ビニル系樹脂組成物の作製において、熱可塑性エラストマーを添加しなかったこと以外は実施例1の場合と同様にして、塩化ビニル系樹脂組成物及び管状体を作製した。
【0060】
(比較例3)
塩化ビニル系樹脂組成物の作製において、EVACO「エルバロイ742」の添加量を40部としたこと以外は実施例1の場合と同様にして、塩化ビニル系樹脂組成物及び管状体を作製した。
【0061】
(比較例4)
複合塩化ビニル系樹脂の代わりに、平均重合度が1400の塩化ビニル単独重合体を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、塩化ビニル系樹脂組成物及び管状体を作製した。
【0062】
実施例2〜6、及び、比較例1〜4で得られた塩化ビニル系樹脂管状体の性能(曲げ弾性率、耐衝撃性、施工性)を実施例1の場合と同様にして評価した。その結果は表1に示すとおりであった。
【0063】
【表1】
【0064】
表1から明らかなように、本発明の実施例による塩化ビニル系樹脂更生管は、機械的強度(曲げ弾性率)、耐衝撃性及び施工性のいずれも優れていた。
【0065】
これに対し、塩化ビニル系モノマーが97重量%を超えて共重合してなる複合塩化ビニル系樹脂を用いて作製した比較例1の塩化ビニル系樹脂更生管、及び、複合塩化ビニル系樹脂を用いることなく作製した比較例4の塩化ビニル系樹脂更生管は、耐衝撃性が極端に悪化した。
【0066】
また、複合塩化ビニル系樹脂に対し熱可塑性エラストマーを添加しない塩化ビニル系樹脂組成物を用いて作製した比較例2の塩化ビニル系樹脂更生管は、施工性が悪かった。さらに、熱可塑性エラストマーの添加量が30重量部を超えた塩化ビニル系樹脂組成物を用いて作製した比較例3の塩化ビニル系樹脂更生管は、曲げ弾性率が劣っていた。
【0067】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の更生管用塩化ビニル系樹脂組成物は、優れた機械的強度と耐衝撃性を有し、更に施工性にも優れる更生管を得るために適しているので、これを用いた塩化ビニル系樹脂更生管は、既設管の更生、修復に好適に用いられる。
Claims (2)
- 単独重合体のガラス転移温度が−140〜−20℃であるアルキル(メタ)アクリレートモノマー50重量%以上及びその他のアクリル系モノマーを含有してなるアクリル系モノマー成分100重量部と多官能性モノマー成分0.01〜30重量部とを共重合したアクリル系共重合体3〜10重量%に、塩化ビニル系モノマー97〜90重量%をグラフト共重合してなる平均重合度400〜2500の複合塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、該複合塩化ビニル系樹脂と相溶し得るアクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体より選ばれた1種もしくは2種の熱可塑性エラストマー3〜30重量部が添加されてなることを特徴とする更生管用塩化ビニル系樹脂組成物。
- 請求項1の更生管用塩化ビニル系樹脂組成物からなり、且つ、既設管中に挿入され、加熱されることにより上記既設管の内面に密着することを特徴とする塩化ビニル系樹脂更生管。
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