JP4457309B2 - 伸縮自在シャフトを製造する方法 - Google Patents
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Description
本発明によれば、外軸の軸方向溝を径方向外方へ弾性的に変位させることで、内軸および外軸の軸方向溝間の距離を広げることができる。この状態で両軸の軸方向溝間にボールを挿入するので、ボールが各軸方向溝に強く擦られることを防止でき、これらの軸方向溝に傷が付くことを防止できる。
また、互いに嵌め合わされた内軸および中空の外軸の対応する少なくとも1対の軸方向溝間に、それぞれ列をなす複数のボールが介在し、各列のボールは外軸の弾性変形の復元力により予圧が付与された伸縮自在シャフトを製造する方法において、外軸の周方向に隣接する軸方向溝間の部分を押圧治具により径方向内方へ押圧することにより、外軸の軸方向溝を径方向外方へ弾性的に変位させた状態で、内軸および外軸の対応する軸方向溝間にボールを挿入するボール挿入工程と、上記ボール挿入工程において挿入されたボールを内軸および外軸に対して軸方向に位置決めするボール位置決め工程と、上記押圧治具による外軸に対する押圧を解除することにより、上記位置決めされたボールに外軸の弾性変形の復元力により予圧を付与する予圧付与工程と、上記ボール位置決め工程の前に、ボール挿入工程で軸方向溝に挿入されたボールの抜脱を防止するための抜け止め(21)を外軸に設ける工程と、を含み、上記ボール位置決め工程では、内軸を外軸から引き抜く方向に相対的に移動させて、内軸および外軸のそれぞれに設けられた抜け止め(20,21)間に列をなすボールを挟持することで、ボールを内軸および外軸の軸方向に位置決めする場合がある。
を、ボールの位置決め用の治具として兼用することができるため、ボール位置決め用の専用の治具を取り付ける工程を設けなくて済み、伸縮自在シャフトの製造に掛かる時間をより短くすることができる。
図1は、本発明の一実施の形態にかかる伸縮自在シャフトが中間軸に適用されたステアリング装置の模式図であり、図2は中間軸の要部の断面図であり、図3は図2のIII−III線に沿う断面図である。
なお、以下では、伸縮自在シャフトを車両のステアリング装置の中間軸に適用した場合を説明するが、本発明は、ステアリングシャフト等の他の用途に用いられる伸縮自在シャフトに適用することができる。
操舵部材2が操作されて操舵トルクが発生し、ステアリングシャフト3が回転されると、この回転がピニオン7aおよびラック8aによって、車両の左右方向に沿ってのラック軸8の直線運動に変換される。これにより、操向輪11の転舵が達成される。
内軸13は、軸方向Sに細長に形成されており、一端部が自在継手4に接続されている。なお、内軸13は、例えば数mmの肉厚を有する中空軸によって形成されていてもよい。外軸14は、軸方向Sに細長に形成されており、一端部が自在継手6に接続されている。外軸14の肉厚は例えば2mm、外径の最大値は例えば28mmとされており、外力を受けたときに弾性変形できるようになっている。
各列19において、ボール15は複数(例えば、5つ)設けられており、対応する軸方向溝16,17間において軸方向Sに整列されている。対応する軸方向溝16,17間には、潤滑剤としてのグリースが注入されており、各ボール15と対応する軸方向溝16,17との接触部分が潤滑されるようになっている。各ボール15はそれぞれ、軸方向Sに隣接するボール15と接触可能となっている。
内軸13の他端部および外軸14の他端部のそれぞれには、ストッパとしての抜け止め突起20,21が設けられている。抜け止め突起20,21は、ボール15が対応する軸方向溝16,17から軸方向Sに抜脱するのを防止するためのものである。
一方の抜け止め突起20は、中間軸5の伸張時に、各列19の一端にあるボール15と接触して当該ボール15のさらなる軸方向移動を規制するようになっており、他方の抜け止め突起21は、中間軸5の伸張時に、各列19の他端にあるボール15と接触して当該ボール15のさらなる軸方向移動を規制するようになっている。
具体的には、対向する軸方向溝16,17間にボール15を介在させることで、外軸14を径方向外方に弾性変形させ(すなわち、弾性的に拡径させ)、外軸14に弾性復元力による収縮力を発生させている。これにより、内軸13および外軸14の互いに対向する軸方向溝16,17間に、ボール15を弾性的に挟持している。すなわち、予圧用の弾性体としての外軸14を用いて、ボール15を、互いに対向する軸方向溝16,17間に弾性的に挟持して、ボール15に予圧を付与している。内軸13と外軸14との間にボール15が介在することによる外軸14の軸方向溝17の径方向外方への移動量は、例えば数μm〜数10μmである。
また、外軸14のうち、規制部26が形成されている部分50と、軌道溝17が形成されている部分51との間のそれぞれに、互いに逆向きに屈曲する屈曲部28,29が形成されている。同様に、外軸14のうち、規制部27が形成されている部分52と、軌道溝17が形成されている部分51との間のそれぞれに、互いに逆向きに屈曲する屈曲部28,29が形成されている。これら波形状を呈する屈曲部28,29は、外軸14の変形を促進する変形促進部として設けられている。
以上の概略構成を有するステアリング装置1において、中間軸5は、以下のようにして製造される。すなわち、図4を参照して、まず、内軸13を保持するための第1の保持治具30によって、内軸13の一端部を保持し、内軸13を、その他端部が下向きとなるように鉛直に立てる。
次に、図6(A)および図6(B)を参照して、押圧治具32を用いて、外軸14のうち内軸13と対向している部分を弾性的に変形させることで、内軸13および外軸14の対応する軸方向溝16,17間の隙間を広げる。
このとき、外軸14の径方向に関して、各軸方向溝16,17間の隙間は、例えば、0.2mm程度広がる。この拡がり量(変位量)は、内軸13および外軸14の対応する各軸方向溝16,17間にボール15を介在することに伴う内軸13および外軸14間の隙間の広がり量(変位量、例えば数10μm程度)よりも大きくされている。
図7を参照して、外軸14の軸方向溝17を、外軸14の径方向外方へ弾性的に変位させた状態で、内軸13および外軸14の対応する軸方向溝16,17間にボール15を挿入するボール挿入工程を行う。
なお、グリースは、ボール15を内軸13および外軸14の対応する軸方向溝16,17間に挿入する前に、これらの軸方向溝16,17間に注入されてもよいし、ボール15の挿入後に注入されてもよい。グリースの注入は、例えば定量ポンプを用いて行うことができる。
具体的には、凸部を有する工具38を用いて、外軸14の他端の外周面の一部を径方向内方に押圧して塑性変形させ、軸方向溝17の底面の一部を外軸14の径方向内方に隆起させる。この時、外軸14と内軸13との間には、工具38からの押圧力を受けるバックアップ部材60が介在している。工具38の押圧により抜け止め突起20以外の部分が変形してしまうことを防止できる。なお、バックアップ部材60を用いなくてもよい。内軸13の抜け止め突起20は、内軸13を外軸14に挿入する前に予め形成されている。
具体的には、第1および第2の保持治具30,31を相対移動させることにより、内軸13を外軸14から引く抜く方向に相対的に移動させて、内軸13および外軸14のそれぞれに設けられた抜け止め突起20,21間に、対応する列19の各ボール15を挟持する。これにより、各ボール15を内軸13および外軸14の軸方向Sに位置決めする。
収縮された中間軸5は、第1および第2の保持治具30,31から取り外され、保管・輸送等される。
この状態で両軸13,14の対応する軸方向溝16,17間にボール15を挿入するので、ボール15が各軸方向溝16,17に強く擦られることを防止でき、これらの軸方向溝16,17に傷が付くことを防止できる。
さらに、外軸14から押圧治具32を取り外すという簡易な動作で、ボール15への予圧の付与を容易行うことができる。
このように、内軸13および外軸14を相対的に移動させるという簡易な動作で、列19をなす複数のボール15の位置決めを一括して容易に行うことができる。また、内軸13および外軸14の抜け止め突起20,21を、ボール15の位置決め用の治具として兼用することができるため、ボール位置決め用の専用の治具を取り付ける工程を設けなくて済む。したがって、中間軸5の製造に掛かる時間をより短くすることができる。
なお、以下では、図1〜図11に示す実施の形態と異なる点を主に説明し、図1〜図11に示す実施の形態と同様の構成には、図に同様の符号を付してその説明を省略する。
図12〜図14を参照して、ボール位置決め工程で用いられる位置決め治具39は、第1の部材40と、第2の部材41とを備えている。
第1の部材40は、外軸14の一端部から外軸14の他端部側に挿通された部材であり、ベース40aと、アーム40bとを含んでいる。ベース40aは、その外周面が外軸14の内周面141に弾力的に接触しており、内軸13および外軸14のそれぞれに対して位置決め(仮保持)されている。アーム40bは、軸方向溝16(軸方向溝17)の数に対応する数(本実施の形態では、2つ)設けられており、それぞれベース40aから内軸13側に突出している。各アーム40bは、内軸13および外軸14の対応する軸方向溝16,17間を挿通しており、各アーム40bの先端部は、対応する列19の一端のボール15を受けている。
なお、軸方向Sに関するベース41aの一端部が、外軸14の他端部に受けられるようにすることで、第2の部材41を内軸13および外軸14のそれぞれに対して位置決めするようにしてもよい。
上記のように、内軸13および外軸14のそれぞれに位置決めされた位置決め治具39の、第1および第2の部材40,41のそれぞれのアーム40b,41b間に、列19をなすボール15を挟持することで、各ボール15を軸方向Sに位置決めしている。
例えば、第1および第2の部材40,41のそれぞれを、対応する内軸13および外軸14のそれぞれに対して軸方向Sに位置決めし、その後、内軸13および外軸14を軸方向Sに相対移動することにより、ボール15を軸方向Sに位置決めすることができる。
次に、第1および第2の保持治具30,31を相対移動させることにより、中間軸5の内軸13を、外軸14に差し入れる方向に相対的に移動させて、中間軸5を収縮させ、その後、中間軸5を第1および第2の保持治具30,31から取り外す。
また、中間軸5を製造する際に、内軸13の他端面に形成されるセンタ孔に内軸保持用の治具を通して内軸13を両端支持してもよい。さらに、内軸13および外軸14のそれぞれに3つ以上の軸方向溝が設けられていてもよい。この場合、外軸の周方向に隣接する軸方向溝間の部分のそれぞれを押圧治具により同時に径方向内方へ押圧することにより、これらの軸方向溝を径方向外方へ弾性的に変位することができる。
Claims (5)
- 互いに嵌め合わされた内軸および中空の外軸の対応する1対の軸方向溝間に列をなす複数のボールが介在し、ボールが介在する1対の軸方向溝は複数設けられ、各列のボールは外軸の弾性変形の復元力により予圧が付与された伸縮自在シャフトを製造する方法において、
外軸の周方向に隣接する軸方向溝間の部分を押圧治具により径方向内方へ押圧することにより、外軸の軸方向溝を径方向外方へ弾性的に変位させることで、各1対の軸方向溝間にボールが介在し外軸の弾性変形の復元力によりボールに予圧が付与されているときよりも大きな隙間を各1対の軸方向溝間に同時に形成し、この状態で、内軸および外軸の対応する軸方向溝間にボールを挿入するボール挿入工程を含むことを特徴とする伸縮自在シャフトを製造する方法。 - 請求項1において、上記ボール挿入工程において挿入されたボールを内軸および外軸に対して軸方向に位置決めするボール位置決め工程と、
上記押圧治具による外軸に対する押圧を解除することにより、上記位置決めされたボールに外軸の弾性変形の復元力により予圧を付与する予圧付与工程とを含むことを特徴とする伸縮自在シャフトを製造する方法。 - 請求項2において、上記ボール位置決め工程では、内軸および外軸のそれぞれに設けられた抜け止めによって列をなすボールを挟持することで、ボールを内軸および外軸の軸方向に位置決めすることを特徴とする伸縮自在シャフトを製造する方法。
- 互いに嵌め合わされた内軸および中空の外軸の対応する少なくとも1対の軸方向溝間に、それぞれ列をなす複数のボールが介在し、各列のボールは外軸の弾性変形の復元力により予圧が付与された伸縮自在シャフトを製造する方法において、
外軸の周方向に隣接する軸方向溝間の部分を押圧治具により径方向内方へ押圧することにより、外軸の軸方向溝を径方向外方へ弾性的に変位させた状態で、内軸および外軸の対応する軸方向溝間にボールを挿入するボール挿入工程と、
上記ボール挿入工程において挿入されたボールを内軸および外軸に対して軸方向に位置決めするボール位置決め工程と、
上記押圧治具による外軸に対する押圧を解除することにより、上記位置決めされたボールに外軸の弾性変形の復元力により予圧を付与する予圧付与工程と、
上記ボール位置決め工程の前に、ボール挿入工程で軸方向溝に挿入されたボールの抜脱を防止するための抜け止めを外軸に設ける工程と、を含み、
上記ボール位置決め工程では、内軸を外軸から引き抜く方向に相対的に移動させて、内軸および外軸のそれぞれに設けられた抜け止め間に列をなすボールを挟持することで、ボールを内軸および外軸の軸方向に位置決めすることを特徴とする伸縮自在シャフトを製造する方法。 - 請求項1〜4のいずれか1項において、上記ボール挿入工程では、内軸および外軸の対応する軸方向溝間にグリースを注入することを特徴とする伸縮自在シャフトを製造する方法。
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