JP4455028B2 - 受信機 - Google Patents

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Description

本発明は、受信信号の復調を行う受信機に関する。
従来より、どのような条件下においても最高の受信性能を最小の消費電力で実現する受信信号処理方式は開発されていない。そのため、例えばπ/4シフトQPSK(Quadrature Phase Shift Keying )信号やQAM(Quadrature Amplitude Modulation )信号等を受信する場合は、代表的な検波方式として遅延検波や同期検波を用いる受信機が一般的であるが、これら2つの処理方式には、下記表1に示すような特徴の差がある。
Figure 0004455028
従来は、このような問題を解決するために、下記表2に示す各方式のように、受信信号の受信状態に応じて検波方式を選択する適応的な受信機が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照。)。
Figure 0004455028
また、CDMA(Code Division Multiple Access )信号あるいはスペクトラム拡散信号を受信する受信機の場合は、複数のフィンガを備えたレイク受信機において、受信信号の受信状態に応じて動作させるフィンガの数を変更することで低消費電力化を行っている(例えば、特許文献4、特許文献5。)。
特開平08−23232号公報 特開平07−23072号公報 特許第2977396号公報 特開平11−261523号公報 特開2000−252896号公報
ところで、上述のような受信機においては、該受信機を利用する利用者の要求内容という観点で見た場合、最高の受信性能を得ることが必ずしも利用者にとって最も利益を得ることになるとは限らないという問題があった。具体的には、特許文献1及び特許文献2に記載された受信機の場合、2つの受信方式が同時に動作するので、最高の受信性能を得るために電池寿命を大きく犠牲にすることになる。もし、利用者の最も望む要求内容が最高の受信性能による安定した受信処理である場合には問題ないが、利用者の最も望む要求内容が電池寿命の延長である場合、2つの受信方式を同時に動作させて電池寿命を犠牲にすることは利用者の利益に反することになるという問題があった。
一方、消費電力を考慮している特許文献3に記載の技術では、受信時に遅延検波回路を用いるか、あるいは準同期検波回路を用いるかを決定するために、常に符号間干渉量や信号判定誤差等により受信信号の受信状態を監視しているが、利用者の最も望む要求内容が最高の受信性能による安定した受信処理ではなく電池寿命の延長である場合には、受信信号の受信状態の監視動作が冗長な処理となり、不要な電力を消費することになるため、利用者の利益に反することになるという問題があった。
また、特許文献4や特許文献5に記載の技術では、複数のフィンガを備えたレイク受信機において、受信信号の受信状態に応じて動作するフィンガ数を変更することで低消費電力化を行っているが、利用者が要求する受信品質に対してレイク受信機で動作するフィンガ数が過剰である場合には、不要な電力を消費することになるため、利用者の利益に反することになるという問題があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、利用目的と要求性能に応じた最適な消費電力と受信性能を実現する受信機を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、請求項1の発明に係る受信機は、受信信号の復調を行う受信機であって、複数の処理方式の何れかにより前記受信信号の処理を行う信号処理手段(例えば後述する実施例の遅延検波回路2及び準同期検波回路4)と、利用者の通信目的に応じた評価値を算出する評価値算出手段(例えば後述する実施例の制御回路13が実行するステップS3の処理)と、算出された評価値に基づいて前記信号処理手段の処理方式を選択する判断手段(例えば後述する実施例の制御回路13が実行するステップS5の処理)とを備えたことを特徴とする。
以上の構成を備えた受信機は、評価値算出手段が算出する利用者の通信目的に応じた評価値に従って、判断手段が信号処理手段の処理方式を決定することで、利用者の通信目的に応じた処理方式によって信号を受信することができる。
請求項2の発明に係る受信機は、請求項1に記載の受信機において、前記受信信号の受信状態を判断する受信状態判断手段(例えば後述する実施例の受信レベル検波器12)を備え、前記評価値算出手段が、前記通信目的と該受信状態とに応じた評価値を算出することを特徴とする。
以上の構成を備えた受信機は、評価値算出手段が利用者の通信目的と受信信号の受信状態の両方に応じた評価値を算出し、該評価値に従って、判断手段が信号処理手段の処理方式を決定することで、利用者の通信目的と受信信号の受信状態との両方に均衡した処理方式によって信号を受信することができる。
請求項3の発明に係る受信機は、請求項2に記載の受信機において、前記受信状態判断手段が、前記受信信号の受信状態の判断を、目的の通信開始前または目的の通信開始時のいずれかのみに行うことを特徴とする。
以上の構成を備えた受信機は、受信状態判断手段が、受信信号の受信状態の判断を、利用者が実行しようとする目的の通信開始前または目的の通信開始時のいずれかのみに行うことで、受信信号の受信状態の判断に要する処理負担を軽減することができる。
請求項4の発明に係る受信機は、請求項2に記載の受信機において、前記受信状態判断手段が、前記受信信号の受信状態の判断を、通信中に所定の間隔で間欠的に行い、前記評価値算出手段が、同時に前記通信目的と該受信状態とに応じた評価値を算出することを特徴とする。
以上の構成を備えた受信機は、受信状態判断手段が、受信信号の受信状態の判断を、通信中に所定の間隔で間欠的に行うことで、受信信号の受信状態の判断に要する処理負担を軽減しつつ、実際の受信信号に応じた受信状態の判断を実行し、同時に評価値算出手段が判断された受信状態に最適な評価値を算出することができる。
請求項5の発明に係る受信機は、請求項1に記載の受信機において、前記信号処理手段が、スペクトラム拡散信号を受信するためのレイク受信機(例えば後述する実施例のレイク受信部23)を備え、前記判断手段が、前記レイク受信機のフィンガ数を選択することを特徴とする。
以上の構成を備えた受信機は、判断手段が、信号処理手段に含まれるレイク受信機のフィンガ数を選択することで、利用者の通信目的に応じたフィンガ数によって信号をレイク受信することができる。
請求項6の発明に係る受信機は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の受信機において、前記評価値算出手段が、前記利用者の要求する条件に基づく補正値を用いて前記評価値に重み付けを行うことを特徴とする。
以上の構成を備えた受信機は、評価値算出手段が、利用者の要求する条件に基づく補正値を用いて評価値に重み付けを行うことで、利用者の通信目的あるいは受信信号の受信状態に加えて、更に利用者の要求する条件を考慮した処理方式、あるいはフィンガ数によって信号を受信することができる。
請求項7の発明に係る受信機は、請求項6に記載の受信機において、前記補正値を前記通信目的に応じて設定可能とすることを特徴とする。
以上の構成を備えた受信機は、更に利用者の要求する条件に基づく補正値も通信目的に応じて設定可能とすることで、利用者の通信目的あるいは受信信号の受信状態に加えて、更に利用者の通信目的毎に要求された条件と利用者の意思とを考慮した処理方式、あるいはフィンガ数によって信号を受信することができる。
請求項1に記載の受信機によれば、利用者の通信目的に応じた処理方式によって信号を受信することができる。
従って、利用者の通信目的に応じた処理方式を用いることで、消費電力と受信性能とを均衡させて、利用者の通信目的に応じた受信性能と、不必要な電力消費の防止の両方を実現することができるという効果が得られる。
請求項2に記載の受信機によれば、利用者の通信目的と受信信号の受信状態との両方に均衡した処理方式によって信号を受信することができる。
従って、利用者の通信目的と受信信号の受信状態に応じた処理方式を用いることで、更に消費電力と受信性能とを正確に均衡させて、利用者の通信目的に応じた受信性能と、不必要な電力消費の防止の両方を的確に実現することができるという効果が得られる。
請求項3に記載の受信機によれば、受信信号の受信状態の判断に要する処理負担を軽減することができる。
従って、受信機の処理負担を軽減することで、不必要な電力消費の防止を実現することができるという効果が得られる。
請求項4に記載の受信機によれば、受信信号の受信状態の判断に要する処理負担を軽減しつつ、実際の受信信号に応じた受信状態の判断を実行し、評価値算出手段が判断された受信状態に最適な評価値を算出することができる。
従って、実際の受信信号に応じて受信状態を判断することで、消費電力と受信性能とを正確に均衡させて、利用者の通信目的に応じた受信性能と、不必要な電力消費の防止の両方を実現することができるという効果が得られる。また、受信機の処理負担を軽減することで、更に不必要な電力消費の防止を実現することができる。
請求項5に記載の受信機によれば、利用者の通信目的に応じたフィンガ数によって信号をレイク受信することができる。
従って、利用者の通信目的に応じたフィンガ数を用いることで、消費電力と受信性能とを均衡させて、利用者の通信目的に応じた受信性能と、不必要な電力消費の防止の両方を実現することができるという効果が得られる。
請求項6に記載の受信機によれば、利用者の通信目的あるいは受信信号の受信状態に加えて、更に利用者の要求する条件を考慮した処理方式、あるいはフィンガ数によって信号を受信することができる。
従って、利用者の要求する条件に従って消費電力と受信性能とを均衡させて、利用者の通信目的及び条件に応じた受信性能と、不必要な電力消費の防止の両方を実現することができるという効果が得られる。
請求項7に記載の受信機によれば、利用者の通信目的あるいは受信信号の受信状態に加えて、更に利用者の通信目的毎に要求された条件と利用者の意思とを考慮した処理方式、あるいはフィンガ数によって信号を受信することができる。
従って、利用者の要求する条件と利用者の意思とに従って消費電力と受信性能との均衡を最適化させて、利用者の通信目的及び条件に応じた受信性能と、不必要な電力消費の防止の両方を的確に実現することができるという効果が得られる。
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
(受信機の構成)
図1は、本発明の第1の実施例の受信機の構成を示すブロック図である。なお、本実施例の受信機への入力信号には、遅延検波を行うために、差動符号化が施されているものとする。また、受信信号には、既知である信号長Nのトレーニング信号区間が付与されているものとする。
図1において、本実施例の受信機には、入力端子1から入力されたRF周波数もしくはIF周波数の受信信号を遅延検波する遅延検波回路2が備えられており、その出力には遅延検波回路2が出力する信号の信号判定を行う判定回路3が接続されている。一方、本実施例の受信機には、入力されたRF周波数もしくはIF周波数の受信信号を準同期検波する準同期検波回路4も備えられており、その出力には、切り換え器5を介して、縦続接続(カスケード接続)された信号判定器6と差動復号器7、及び同様に縦続接続(カスケード接続)された遅延検波器8とデータ判定器9が、並列に接続されている。
ここで、信号判定器6は準同期検波回路4が出力する信号の信号判定を行う判定回路であって、遅延検波を行うために入力信号に施された差動符号化は、信号判定器6の出力に接続された差動復号器7により復号される。
また、遅延検波器8は準同期検波回路4が出力するベースバンド信号を遅延検波する検波回路であって、データ判定器9は、判定回路3と同様に、遅延検波器8の出力する遅延検波後(差動符号化を復号した後)の信号の信号判定を行う判定回路である。
また、判定回路3、差動復号器7、及びデータ判定器9の出力には、判定回路3、差動復号器7、及びデータ判定器9のぞれぞれが出力する信号をいずれか1つ選択して、本実施例の受信機の出力信号として出力端子11から出力する選択回路10が接続されている。
また、本実施例の受信機には、入力されたRF周波数もしくはIF周波数の受信信号のレベル(受信レベルR)を測定する受信レベル検波器12が備えられている。
更に、本実施例の受信機には、利用者の通信目的に対して最適な検波回路を選択するために、受信レベル検波器12が出力する受信レベルを読み込んで、通信目的と受信信号の受信状態と検波方式とに係る評価値Hを算出したり、受信信号の受信状態に対して最適な検波回路を選択するために、遅延検波回路2の出力及び準同期検波回路4の出力を読み込んで、それぞれの検波回路における受信状態を評価する符号間干渉量や信号判定誤差を算出すると共に、算出された評価値H、あるいは符号間干渉量や信号判定誤差に基づいて、選択回路10や切り換え器5を制御することにより、利用者の通信目的や受信信号の受信状態に応じて最適な検波回路を選択する制御回路13が備えられている。
これにより、本実施例の受信機は、選択回路10や切り換え器5を制御して、入力されたRF周波数もしくはIF周波数の受信信号を、遅延検波回路2及び判定回路3によりRF周波数もしくはIF周波数のまま遅延検波するか、入力されたRF周波数もしくはIF周波数の受信信号を、準同期検波回路4、信号判定器6及び差動復号器7により準同期検波するか、入力されたRF周波数もしくはIF周波数の受信信号を、準同期検波回路4によりベースバンド信号に変換した後、遅延検波器8及びデータ判定器9により遅延検波するかを選択して受信信号を処理することができる。
なお、本実施例の受信機において、遅延検波回路2、判定回路3、準同期検波回路4、信号判定器6、差動復号器7、遅延検波器8、データ判定器9、受信レベル検波器12は、受信信号をアナログ値のまま処理するアナログ信号処理により実現しても良いし、受信信号を量子化して処理するディジタル信号処理により実現しても良い。
また、制御回路13による最適な検波回路を選択するための制御動作については詳細を後述する。
(制御回路の制御動作)
次に、図面を参照して、本実施例の受信機の制御回路13による最適な検波回路を選択するための制御動作について説明する。まず、フローチャートを参照して、利用者の通信目的に対して最適な検波回路を選択するための制御動作について説明する。図2は、本実施例の受信機の制御回路13における制御動作を示すフローチャートである。
図2において、本実施例の受信機の制御回路13は、まず、利用者の通信目的に最適な検波回路を選択する際に、受信信号の受信状態を考慮するか否か、利用者によっていずれが指定されているかを判定する(ステップS1)。
もし、ステップS1において、受信信号の受信状態を考慮すると指定されていた場合(ステップS1のYES)、制御回路13は、受信レベル検波器12から受信信号の受信レベルRを取得する(ステップS2)。
そして、予め制御回路13に記憶された制御テーブルに基づいて、通信目的と受信信号の受信状態と検波方式とに係る評価値Hを算出する(ステップS3)。
一方、ステップS1において、受信信号の受信状態を考慮しないと指定されていた場合(ステップS1のNO)、制御回路13は、受信信号の受信レベルRに「0」を設定し(ステップS4)、ステップS3へ進み、予め制御回路13に記憶された制御テーブルに基づいて、通信目的と受信信号の受信状態と検波方式とに係る評価値Hを算出する(ステップS3)。
ここで、通信目的と受信信号の受信状態と検波方式とに係る評価値Hを算出するために制御回路13に記憶された制御テーブルについて説明すると、下記に示す表3は、利用者の通信目的と検波方式との組合せ毎に設定された固定プロファイルを示す表であって、固定プロファイルは、更に受信信号の受信レベルRと比較対象の受信レベルしきい値Rthとにより、「受信レベルR<受信レベルしきい値Rth」の場合と、「受信レベルR≧受信レベルしきい値Rth」の場合との2つに区分されて設定されている。なお、表3では数値が大きい程、要求される受信品質が高いことを示す。
Figure 0004455028
なお、「検波方式の動的制御」とは、制御回路13が信号の受信中に絶えず算出する受信信号品質を表す判定値に基づいて、信号の受信中に検波回路を動的に切り換え制御することを意味し、その詳細については後述する。
また、利用者の通信目的には、アプリケーションの例として、セルラー用のセルプ系コーデックによる通常音声やテキスト情報による電子メール等、要求される受信品質が比較的低くても良いアプリケーション、VOIP(Voice over IP )による音声等、要求される受信品質が比較的高いアプリケーション、動画等、要求される受信品質がかなり高いアプリケーションがある。なお、利用者の通信目的が不特定の場合には、通信に影響が出ないように、要求される受信品質が比較的高いアプリケーションとして取り扱うものとする。
また、下記に示す表4は、利用者の通信目的と検波方式との組合せ毎に設定された固定プロファイルを補正するために、利用者の通信目的と検波方式との組合せ毎に利用者の要求する条件を考慮して設定されたユーザ要求プロファイル修正値を示しており、具体的に表4では、例えば一例として利用者の要求する条件を「電池寿命の延長」及び「受信品質の向上」として示す。なおこれ以降、文書、表、及び図面において、「電池寿命の延長」及び「受信品質の向上」は、それぞれ「電池寿命」及び「受信品質」と略して表記する。また、表4では数値が大きい程、利用者の要求に対して優位性があることを示す。
具体的に表4を参照すると、例えば通常音声やテキスト情報による電子メール等、要求される受信品質が比較的低くても良いアプリケーションでは、「遅延検波」が「電池寿命」には有利なのでユーザ要求プロファイル修正値「2」が指定され、一方、「検波方式の動的制御」は「電池寿命」には不利なのでユーザ要求プロファイル修正値「−2」が指定されている。また、「受信品質」についてはアプリケーション自身が高い品質を要求しないので、どの検波方式でもアドバンテージはなく、全て「0」が指定されている。
Figure 0004455028
更に、下記に示す表5は、表4に設定されたユーザ要求プロファイル修正値に対して、利用者が個人の好みにより指定したユーザ設定要求倍率を示す表であって、表5に示すように、利用者の通信目的と利用者の要求する条件との組合せ毎に、ユーザ要求プロファイル修正値に対して利用者が例えば「0」から「5」の値で自由に設定できるユーザ設定要求倍率を指定することができる。例えば表5に示す例では、通常音声やテキスト情報による電子メール等、要求される受信品質が比較的低くても良いアプリケーションでは、更に「電池寿命」を優先させるべく、利用者によって「電池寿命」の欄にユーザ設定要求倍率「4」が指定されている。
Figure 0004455028
これにより、通信目的と受信信号の受信状態と検波方式とに係る評価値Hは、表3から表5に示す予め制御回路13に記憶された制御テーブルに基づいて、下記(1)式によって通信目的と受信信号の受信状態と検波方式との組合せの数だけ算出される。
Figure 0004455028
但し、(1)式において、Pは固定プロファイル、Q(n)はn種類(nは正の整数)設定されたユーザ要求プロファイル修正値、R(n)はn種類のユーザ要求プロファイル修正値に対応するユーザ設定要求倍率を示し、Jはユーザ要求プロファイル修正値の総数とする。なお、本実施例では、ユーザ要求プロファイル修正値は「電池寿命(n=1)」と「受信品質(n=2)」に関する2種類なので、ユーザ要求プロファイル修正値の総数Jは「J=2」である。一例を挙げて説明すると、例えば通常音声やテキスト情報による電子メール等、要求される受信品質が比較的低くても良いアプリケーションで、「受信レベルR<受信レベルしきい値Rth」の場合、「遅延検波」に対する最終的な評価値Hは、固定プロファイルP=2、ユーザ要求プロファイルQ(1)=2、Q(2)=0、ユーザ設定要求倍率R(1)=4、R(2)=0として、下記(2)式のように算出される。
Figure 0004455028
一方、制御回路13は、評価値Hが算出できたら、算出した評価値Hに基づいて最適な検波回路を選択する(ステップS5)。具体的には、一例として下記表6に示す上記(1)式によって算出された評価値Hの中から、利用者が要求する通信目的に応じて、その中で評価値Hが最大の検波方式を選択し、選択回路10や切り換え器5を制御することにより、選択された検波方式に対応する検波回路に接続された信号の判定回路の出力を本実施例の受信機の出力信号とする。
また、制御回路13は、選択されなかった検波方式に対応する検波回路及び信号の判定回路が動作するための電源供給あるいはクロック供給を停止することにより、省電力化のために、選択されなかった検波方式に対応する検波回路及び信号の判定回路の動作を停止する(ステップS6)。
Figure 0004455028
表6を参照しながら具体的に説明すると、例えば、セルラー用のセルプ系コーデックによる通常音声やテキスト情報による電子メール等、要求される受信品質が比較的低くても良いアプリケーションの場合では、「受信レベルR<受信レベルしきい値Rth」の場合でも、「受信レベルR≧受信レベルしきい値Rth」の場合でも、評価値Hが最大の検波方式として「遅延検波」が選択される。一方、VOIP(Voice over IP )による音声等、要求される受信品質が比較的高いアプリケーションの場合では、「受信レベルR<受信レベルしきい値Rth」の場合、評価値Hが最大の検波方式として「検波方式の動的制御」が選択され、「受信レベルR≧受信レベルしきい値Rth」の場合、評価値Hが最大の検波方式として「準同期検波」が選択される。
そして、評価値Hが最大の検波方式として「遅延検波」が選択された場合、制御回路13は、遅延検波回路2及び判定回路3を動作させ、選択回路10において判定回路3の出力信号を選択し、本実施例の受信機の出力信号として出力端子11から出力する。一方、制御回路13は、準同期検波回路4、信号判定器6、及び差動復号器7が動作するための電源供給あるいはクロック供給を停止することにより、省電力化のために、準同期検波回路4、信号判定器6、及び差動復号器7の動作を停止する。
また、評価値Hが最大の検波方式として「準同期検波」が選択された場合、制御回路13は、準同期検波回路4、信号判定器6、及び差動復号器7を動作させ、選択回路10において差動復号器7の出力信号を選択し、本実施例の受信機の出力信号として出力端子11から出力する。一方、制御回路13は、遅延検波回路2及び判定回路3が動作するための電源供給あるいはクロック供給を停止することにより、省電力化のために、遅延検波回路2及び判定回路3の動作を停止する。
また、評価値Hが最大の検波方式として「検波方式の動的制御」が選択された場合、制御回路13は、以下に示す動作を実行する。なお、遅延検波器8及びデータ判定器9については、以下に示す「検波方式の動的制御」において利用する場合のみ、動作するための電源あるいはクロックが供給されるものとする。
(検波方式の動的制御)
次に、本実施例の受信機の制御回路13による検波方式の動的制御動作について説明する。
制御回路13は、遅延検波回路2の出力信号と準同期検波回路4の出力信号とを入力として、遅延検波回路2および準同期検波回路4の内で受信特性の良い方を切替タイミングごとに選択し動作させる。また、制御回路13は選択回路10を制御して、判定回路3または差動復号器7、更にはデータ判定器9のいずれかの出力信号を選択し、本実施例の受信機の出力信号として出力端子11から出力する。
なお、以下の説明で変調方式は差動符号化QPSKとし、信号のサンプリング周期は変調波のシンボル周期Tとする。加えて、全ての信号は同相成分を実部に、直交成分を虚部に持つ複素表示を用いて表す。
まず、遅延検波回路2及び判定回路3を既に選択し動作させ、選択回路10において判定回路3の出力信号を選択し、本実施例の受信機の出力信号として出力端子11から出力しているとき、制御回路13は遅延検波回路2の出力信号に含まれる符号間干渉量を求める。符号間干渉量は、符号間干渉による波形歪みの度合いを表す物理量であり、この値が大きいときには遅延検波回路2及び判定回路3による受信処理よりも準同期検波回路4、信号判定器6、及び差動復号器7による受信処理の方が受信に適していると判断することができる。従って、符号間干渉量が予め設定されたしきい値を超えるときには切替タイミングで準同期検波回路4、信号判定器6、及び差動復号器7による受信処理の方に切替えるように制御する。例えば、切替タイミングをバーストタイミングに設定したとき、次のバーストタイミングで、制御回路13は、準同期検波回路4、信号判定器6、及び差動復号器7を動作させ、選択回路10を制御して、差動復号器7の出力信号を選択し、本実施例の受信機の出力信号として出力端子11から出力する。
なお、遅延検波回路2が出力する信号の時刻t=kT(kは整数)におけるサンプリング値をz(k)、時刻t=kTと時刻(k−1)Tにおける複素シンボルの位相差をd(k)とすると、符号間干渉による波形歪が生じるとき、このz(k)d(k)とd(k−1)に相関が現れる。ここで、*は複素共役を表す。従って、符号間干渉量は、z(k)d(k)とd(k−1)との相関量として算出することができる。例えば、指定された信号区間をd(k)が既知である信号長Nのトレーニング信号区間とすれば、この相関ρは下記(3)式のように与えられる。
Figure 0004455028
一方、準同期検波回路4、信号判定器6、及び差動復号器7を既に選択し動作させ、選択回路10において差動復号器7の出力信号を選択し、本実施例の受信機の出力信号として出力端子11から出力してるとき、制御回路13は、受信品質を表す信号判定誤差から求められる判定式に基づき、遅延検波回路2の出力信号と準同期検波回路4の出力信号とから、遅延検波回路2と準同期検波回路4の内BER(Bit Error Rate)特性が良いと思われる方を選択する。
具体的には、遅延検波方式と同期検波方式とで同じBERを得ようとすると、検波回路の出力における信号のS/N比(Signal to Noise Ratio )、あるいは1ビット当たりの信号エネルギー対雑音電力密度E /N を同じにすれば良い。従って、例えば下記(4)式により、既知である信号長Nのトレーニング信号区間における、遅延検波回路2の出力信号に対する信号判定誤差と準同期検波回路4の出力信号に対する信号判定誤差とを比較することで、遅延検波回路2と準同期検波回路4の内BER特性が良いと思われる方を選択することができる。
Figure 0004455028
なお、上記(4)式において、e(k)は、遅延検波回路2の出力信号に対する信号判定誤差とし、e(k)は、準同期検波回路4の出力信号に対する信号判定誤差とする。また、判定値Dが負の時には、次のバーストタイミングで、制御回路13は、遅延検波回路2及び判定回路3を動作させ、選択回路10を制御して、判定回路3の出力信号を選択し、本実施例の受信機の出力信号として出力端子11から出力する。一方、判定値Dが正の時には、制御回路13は、準同期検波回路4、信号判定器6、及び差動復号器7を動作させ、選択回路10を制御して、差動復号器7の出力信号を選択し、本実施例の受信機の出力信号として出力端子11から出力する。
また、準同期検波回路4、信号判定器6、及び差動復号器7を既に選択し動作させ、選択回路10において差動復号器7の出力信号を選択し、本実施例の受信機の出力信号として出力端子11から出力してるときに、制御回路13が、判定値Dに基づいて検波方式を遅延検波に変更する場合、まず遅延検波器8及びデータ判定器9を動作させ、選択回路10を制御して、データ判定器9の出力信号を選択し、本実施例の受信機の出力信号として出力端子11から出力すると共に、次のバーストタイミングで、遅延検波回路2及び判定回路3を動作させ、選択回路10を制御して、判定回路3の出力信号を選択し、本実施例の受信機の出力信号として出力端子11から出力するようにしても良い。
例えば移動無線通信方式では、移動局装置が移動するために、伝搬路の遅延分散が大きく変動して受信信号の受信状態も時々刻々変化するが、上述のように、検波方式を動的に切り替え制御する場合は、常に受信信号の受信状態を監視し、絶えず受信信号の受信状態に最適な検波方式に切り替えて信号を処理することができるので、動画等、要求される受信品質がかなり高いアプリケーションを利用する場合でも、一定レベル以上の高い受信品質を保持しながら、装置の消費電力を可能な限り削減することができるという効果が得られる。
なお、上述の実施例において、制御回路13が通信目的と受信信号の受信状態と検波方式とに係る評価値Hを算出する際、表3に示した固定プロファイルは、受信状態を示す指標として受信信号の受信レベルRと比較対象の受信レベルしきい値Rthとにより、受信レベルR<受信レベルしきい値Rthの場合と、受信レベルR≧受信レベルしきい値Rthの場合との2つに区分されて設定され、評価値Hは表6において受信信号の受信レベルRと比較対象の受信レベルしきい値Rthとにより分類されて算出されていたが、下記表7に示すように、固定プロファイルを、受信状態を示す指標として受信信号の遅延時間Tと比較対象の遅延時間しきい値Tthとにより、遅延時間T<遅延時間しきい値Tthの場合と、遅延時間T≧遅延時間しきい値Tthの場合との2つに区分して設定し、評価値Hを受信信号の遅延時間Tと比較対象の遅延時間しきい値Tthとにより分類して算出するようにしても良い。
また、受信信号の遅延時間Tは、既知である信号長Nのトレーニング信号の受信時間から算出することができる。従って、その場合は本実施例の受信機に受信レベル検波器12を備えなくても良い。
Figure 0004455028
上述のように、図2のステップS1からステップS6に示した、利用者の通信目的に対する検波方式の選択動作は、リアルタイムに実行する必要はなく、特に目的の通信が短時間で終了するような場合は、少なくとも目的の通信を開始するまでに検波方式が決定していれば良い。従って、例えば受信レベル検波器12による受信状態の判断もリアルタイムに実行する必要はなく、目的の通信開始前または目的の通信開始時のいずれかのみに実行すれば良い。これにより、消費電力の低減と回路に要求される処理能力を軽減することができる。
なお、ここで言う「目的の通信」とは、上述の表3から表7において利用者の通信目的として示したようなアプリケーションによる通信のことを指し、送受信機間において、双方を通信可能な状態に保持するために実行される制御信号の送受信に係る通信は、送信機及び受信機に電源が供給されている状態であれば、常時あるいは適宜実行されるものとする。従って、本実施例の受信機は、目的の通信開始前または目的の通信開始時に、受信レベル検波器12による受信状態の判断を行う場合、送信機から制御信号を受信する際の受信信号によって受信状態を判断すれば良い。
しかし、目的の通信が短時間で終了しない場合は、例えば移動無線通信方式では移動局装置が利用者と共に移動することにより受信状態が大きく変化することになるので、図2のステップS1からステップS6に示した処理を所定間隔で間欠的に実行し、定期的に受信状態を見直して最適な検波方式(検波回路)を選択するようにしても良い。これにより、受信信号の受信状態の判断を、通信中に所定の間隔で間欠的に行うことで、受信信号の受信状態の判断に要する処理負担を軽減しつつ、実際の受信信号に応じた受信状態の判断を実行し、同時に判断された受信状態に最適な評価値Hを算出することができる。従って、実際の受信信号に応じて受信状態を判断することで、消費電力と受信性能とを正確に均衡させて、利用者の通信目的に応じた受信性能と、不必要な電力消費の防止の両方を的確に実現することができるという効果が得られる。また、受信機の処理負担を軽減することで、更に不必要な電力消費の防止を実現することができる。
なお、本実施例では、制御回路13が評価値算出手段と、判断手段とを含んでいる。より具体的には、図2のステップS3が評価値算出手段に相当し、図2のステップS5が判断手段に相当する。
以上説明したように、本実施例の受信機によれば、予め制御回路13に記憶された制御テーブルに基づいて、通信目的と受信信号の受信状態と検波方式とに係る評価値Hを算出すると共に、算出された評価値Hに基づいて検波方式を選択し、選択された検波方式に対応した検波回路を動作させることで、利用者の通信目的と受信信号の受信状態との両方に均衡した処理方式によって信号を受信することができる。
従って、利用者の通信目的と受信信号の受信状態との両方に均衡した処理方式を用いることで、消費電力と受信性能とを均衡させて、利用者の通信目的に応じた受信性能と、不必要な電力消費の防止の両方を実現することができるという効果が得られる。
また、目的の通信が短時間で終了することが想定できる用途では、受信レベル検波器12による受信状態の判断を目的の通信開始前または目的の通信開始時のいずれかのみに実行すると共に、利用者の通信目的に対する検波方式の選択動作を、少なくとも目的の通信を開始するまでに終了することで、消費電力の低減と回路に要求される処理能力を軽減することができる。
一方、目的の通信が短時間で終了しないことが想定できる用途では、受信レベル検波器12による受信状態の判断を定期的に実行すると共に、同時に利用者の通信目的に対する検波方式の選択動作を実行し、判断された受信状態に最適な検波方式(検波回路)を選択するようにすることで、受信信号の受信状態の判断に要する処理負担を軽減しつつ、実際の受信信号に応じた受信状態の判断を実行し、消費電力と受信性能とを正確に均衡させて、利用者の通信目的に応じた受信性能と、不必要な電力消費の防止の両方を的確に実現することができるという効果が得られる。また、受信機の処理負担を軽減することで、更に不必要な電力消費の防止を実現することができる。
また、評価値Hを算出する際に、利用者の要求する条件を検波方式の選択に反映させるべく、ユーザ要求プロファイル修正値とユーザ設定要求倍率とにより、利用者の要求する条件及び利用者の意思を数値化して評価値Hに反映させることで、利用者の要求する条件と利用者の意思とに従って消費電力と受信性能との均衡を最適化させて、利用者の通信目的及び条件に応じた受信性能と、不必要な電力消費の防止の両方を的確に実現することができるという効果が得られる。
(受信機の構成)
図3は、本発明の第2の実施例の受信機の構成を示すブロック図である。なお、本実施例の受信機への入力信号には、スペクトラム拡散が施されているものとする。また、送信側でスペクトラム拡散を行う際に用いられた拡散符号は、受信機側では既知であるものとする。また、送信側からは、送受信機間で信号の送受信のタイミングを同期させ、受信機が受信信号の先頭信号を見つけるための同期信号が送信されており、該同期信号も受信機側では既知であるものとする。
図3において、本実施例の受信機には、パスサーチャ21と複数のフィンガ22−1〜22−3を備えたレイク受信部23が設けられている。なお、説明の簡単化のため、本実施例ではレイク受信部23に備えられたフィンガの個数は3個とし、フィンガフィンガ22−1〜22−3として示したが、必要に応じてフィンガの数は減らしても良いし、増やしても良い。パスサーチャ21には、周波数変換器24によりベースバンドの信号に周波数変換された受信信号が入力されており、パスサーチャ21は、該受信信号から、該受信信号に含まれるマルチパス信号の受信タイミングを抽出する。具体的には、スライディング相関器を備えて、例えば受信信号に対してタイミングをずらしながら、該受信信号と基地局から送信されているはずの同期信号のレプリカとの相関を算出し、相関値が大きくなるタイミングを該受信信号に含まれるマルチパス信号の受信タイミングとする。
すなわちパスサーチャ21からは、一定のしきい値以上の相関値が算出されたタイミングに対して、相関値が大きい順に、備えられた複数のフィンガ22−1〜22−3に合わせた数(本実施例では最大3個)の受信タイミングが選択されて出力され、複数のフィンガ22−1〜22−3に順に設定される。なお、一定のしきい値以上の相関値が算出されたタイミングが少なく、パスサーチャ21から出力される受信タイミングの数が、備えられたフィンガの数に満たない場合、受信タイミングが設定されなかったフィンガは、後述する制御回路30が、受信タイミングが設定されなかったフィンガが動作するための電源供給あるいはクロック供給を停止することにより、省電力化のためにその動作を停止し、その時の受信処理には係わらないものとする。
一方、フィンガ22−1〜22−3は、全て同じ構成を備えた逆拡散器であって、それぞれのフィンガでは、入力された受信信号に、パスサーチャ21から設定された受信タイミングに従って拡散符号を掛け合わせて両者の相関値を算出すると共に、受信信号と拡散符号とのタイミングを順次シンボル周期ずつずらしながら、両者の相関値を算出することで、受信信号に施されたスペクトラム拡散が復調されシンボル信号に変換される。
これにより、入力された受信信号がマルチパス信号であった場合、マルチパス信号を構成する複数の経路の信号が、各経路の信号の受信タイミングで復調処理を実行する1つ1つのフィンガにより各経路の信号に分解されて抽出される。なお、本実施例では一例としてフィンガの数を3個としたので、異なる経路を辿って到達した3波の信号を抽出することができる。
また、フィンガ22−1〜22−3から出力されるシンボル信号は、シンボル合成器25において、受信信号の受信タイミングずれを考慮して加算されることにより、マルチパス信号がレイク合成される。
更に、シンボル合成器25の出力信号は復調器26に入力され、送信側で施された例えばQPSK等の一次変調が復調されると共に、送信側で施された畳み込み符号化を復号することによりエラー訂正等が行われて受信データに変換される。
一方、シンボルエラーレート算出部27では、送信側で施された畳み込み符号化を受信データに再度施すと共に、シンボル合成器25が出力するシンボル信号の硬判定値と、再度畳み込み符号化を施された受信データとの比較を行い、両者が一致しないエラーの場合である度合、すなわちシンボルエラーレートSERを算出する。
また、シンボルエラーレート算出部27において算出されたシンボルエラーレートSERは、比較器28において、2個のレジスタ29−1、29−2の値R1、R2(但し、R1>R2)とそれぞれ比較され、「SER>R1>R2」、「R1>SER>R2」、「R1>R2>SER」の場合の3種類の比較結果が比較器28より出力され、制御回路30に入力される。
なお、レジスタの個数は、レイク受信部23に備えられたフィンガの個数より1つ少ない数を備えるものとし、本実施例では一例としてフィンガの数が3個の場合を説明するので、これに対応してレジスタの数を2個とする。従って、フィンガの数がn個(n=正の整数)場合、シンボルエラーレート算出部27において算出されたシンボルエラーレートは、比較器28において、(n−1)個のレジスタの値とそれぞれ比較され、n種類の比較結果が比較器28より出力され、制御回路30に入力される。
また、制御回路30はレイク受信部23の動作を制御する制御部であって、比較器28より出力されるシンボルエラーレートSERとレジスタの値との比較結果に基づいて、レイク受信部23においてレイク合成に寄与するフィンガの数を制御する。具体的には、比較器28より出力される比較結果が「SER>R1>R2」の場合は、受信状態が良好ではないので、レイク受信部23においてレイク合成に寄与するフィンガの数を3個とする。また、比較器28より出力される比較結果が「R1>SER>R2」の場合は、レイク受信部23においてレイク合成に寄与するフィンガの数を2個とする。また、比較器28より出力される比較結果が「R1>R2>SER」の場合は、受信状態が良好なので、レイク受信部23においてレイク合成に寄与するフィンガの数を1個とする。
更に、制御回路30は、利用者の通信目的に対して最適なフィンガ数を選択するために、利用者の通信目的に係る評価値Hを算出し、算出された評価値Hに基づいてレジスタ29−1、29−2の値R1、R2を変更する制御を実行する。なお、本実施例においても、実施例1と同様に、制御回路30が評価値算出手段と、判断手段とを備えており、評価値算出手段が利用者の通信目的に応じた評価値Hを算出すると共に、判断手段が、算出された評価値Hに基づいて信号処理手段の処理方式、すなわちレイク受信部23においてレイク合成に寄与するフィンガの数を選択するように、レジスタ29−1、29−2の値R1、R2を変更する制御を実行する。
(制御回路の制御動作)
次に、本実施例の受信機の制御回路30による最適なフィンガ数を選択するための制御動作について説明する。
本実施例の受信機の制御回路30は、まず、予め制御回路30に記憶された制御テーブルに基づいて、利用者の通信目的に係る評価値Hを算出する。ここで、通信目的と受信信号の受信状態と検波方式とに係る評価値Hを算出するために制御回路30に記憶された制御テーブルについて説明すると、下記に示す表8は、利用者の通信目的毎に設定された固定プロファイルを示す表である。なお、表8では数値が大きい程、要求される受信品質が高いことを示す。
Figure 0004455028
ここで、利用者の通信目的には、アプリケーションの例として、テキスト情報による電子メール等、要求される受信品質が低くても良いアプリケーション、セルラー用のセルプ系コーデックによる通常音声等、要求される受信品質が比較的低くても良いアプリケーション、通常音声よりビットレートの高い高音質音声等、要求される受信品質が少し高いアプリケーション、VOIP(Voice over IP )による音声や動画等、要求される受信品質が比較的あるいはかなり高いアプリケーションがある。なお、利用者の通信目的が不特定の場合には、通信に影響が出ないように、要求される受信品質が低いアプリケーションと高いアプリケーションの中間のものとして取り扱うものとする。
また、下記に示す表9は、利用者の通信目的毎に設定された固定プロファイルを補正するために、利用者の通信目的毎に利用者の要求する条件を考慮して設定されたユーザ要求プロファイル修正値を示しており、具体的に表9では、例えば一例として利用者の要求する条件を「電池寿命の延長」及び「受信品質の向上」として示す。なお、本実施例でもこれ以降、文書、表、及び図面において、「電池寿命の延長」及び「受信品質の向上」は、それぞれ「電池寿命」及び「受信品質」と略して表記する。また、表9では数値が大きい程、利用者の要求に対してフィンガ数が多く必要であることを示す。
具体的に表9を参照すると、例えばテキスト情報による電子メール等、要求される受信品質が低くても良いアプリケーションでは、「電池寿命」を優先させるにはフィンガ数を少なくする方が良いので、ユーザ要求プロファイル修正値「−1」が指定され、一方、「受信品質」を優先させる時は、フィンガ数を過度に増やすことはないのでユーザ要求プロファイル修正値「0」が指定されている。
また、VOIP(Voice over IP )による音声や動画等、要求される受信品質が比較的あるいはかなり高いアプリケーションでは、「電池寿命」を優先させるにはフィンガ数を少なくする方が良いので、ユーザ要求プロファイル修正値「−1」が指定され、一方、「受信品質」を優先させる時は、フィンガ数をなるべく増やしたいのでユーザ要求プロファイル修正値「2」が指定されている。
Figure 0004455028
更に、下記に示す表10は、表9に設定されたユーザ要求プロファイル修正値に対して、利用者が個人の好みにより指定したユーザ設定要求倍率を示す表であって、表10に示すように、利用者の通信目的と利用者の要求する条件との組合せ毎に、ユーザ要求プロファイル修正値に対して利用者が例えば「0」から「5」の値で自由に設定できるユーザ設定要求倍率を指定することができる。例えば表10に示す例では、テキスト情報による電子メール等、要求される受信品質が低くても良いアプリケーションでは、更に「電池寿命」を優先させるべく、利用者によって「電池寿命」の欄にユーザ設定要求倍率「2」が指定されている。
Figure 0004455028
これにより、利用者の通信目的に係る評価値Hは、表8から表10に示す予め制御回路30に記憶された制御テーブルに基づいて、下記(5)式によって通信目的の数だけ算出される。
Figure 0004455028
但し、(5)式において、Pは固定プロファイル、Q(n)はn種類(nは正の整数)設定されたユーザ要求プロファイル修正値、R(n)はn種類のユーザ要求プロファイル修正値に対応するユーザ設定要求倍率を示し、Jはユーザ要求プロファイル修正値の総数とする。なお、本実施例でも、ユーザ要求プロファイル修正値は「電池寿命(n=1)」と「受信品質(n=2)」に関する2種類なので、ユーザ要求プロファイル修正値の総数Jは「J=2」である。一例を挙げて説明すると、例えばテキスト情報による電子メール等、要求される受信品質が低くても良いアプリケーションの場合、最終的な評価値Hは、固定プロファイルP=−2、ユーザ要求プロファイルQ(1)=−1、Q(2)=0、ユーザ設定要求倍率R(1)=2、R(2)=0として、下記(6)式のように算出される。
Figure 0004455028
一方、制御回路30は、評価値Hが算出できたら、算出した評価値Hに基づいて更に下記(7)式に従い、レジスタ29−1、29−2の値R1、R2を変更するためのレジスタ補正値RHを算出する。
Figure 0004455028
具体的には、一例として下記表11に示す上記(5)式によって算出された評価値Hに基づいて、同様に下記表11に示す上記(7)式によって算出されたレジスタ補正値RHを算出する。そして、下記(8)式及び(9)式に従い、レジスタ29−1、29−2の値R1、R2を変更する。なお、(8)式及び(9)式におけるレジスタ初期値は、受信機の設計時に、受信機の総合的な受信性能に基づいて任意に決定するものとする。
R1=レジスタ初期値×RH ・・・(8)
R2=レジスタ初期値×RH ・・・(9)
そして、制御回路30は、比較器28より出力されるシンボルエラーレートSERと、利用者の通信目的に対して最適なフィンガ数を選択できるように制御されたレジスタ29−1、29−2の値R1、R2との比較結果に基づいて、レイク受信部23においてレイク合成に寄与するフィンガの数を制御する。
また、レイク合成に利用されなかったフィンガは、後述する制御回路30が、レイク合成に利用されなかったフィンガが動作するための電源供給あるいはクロック供給を停止することにより、省電力化のためにその動作を停止し、その時の受信処理には係わらないものとする。
Figure 0004455028
表11を参照しながら具体的に説明すると、例えば、テキスト情報による電子メール等、要求される受信品質が低くても良いアプリケーションでは、レジスタ補正値RH≒316と算出されるため、レジスタ29−1、29−2の値R1、R2が大きくなり、多少シンボルエラーレートSERが悪化しても、比較器28における比較結果が「R1>R2>SER」になりやすくなるので、レイク受信部23においてレイク合成に寄与するフィンガの数が1個となり、利用者の通信目的に応じた受信性能と、不必要な電力消費の防止の両方を実現することができる。
一方、VOIPによる音声や動画等、要求される受信品質が比較的あるいはかなり高いアプリケーションでは、レジスタ補正値RH≒0.00316と算出されるため、レジスタ29−1、29−2の値R1、R2が小さくなり、多少シンボルレートSERが良くても、比較器28における比較結果が「SER>R1>R2」になりやすくなるので、レイク受信部23においてレイク合成に寄与するフィンガの数が3個となり、電力消費を犠牲にしても利用者の通信目的に応じた受信性能を安定して実現することができる。
以上説明したように、本実施例の受信機によれば、予め制御回路30に記憶された制御テーブルに基づいて、通信目的に係る評価値Hを算出すると共に、算出された評価値Hに基づいてレイク受信に寄与するフィンガの数を選択し、選択された数のフィンガを動作させることで、利用者の通信目的に応じたフィンガ数によって信号をレイク受信することができる。
従って、利用者の通信目的に応じたフィンガ数を用いることで、消費電力と受信性能とを均衡させて、利用者の通信目的に応じた受信性能と、不必要な電力消費の防止の両方を実現することができるという効果が得られる。
また、評価値Hを算出する際に、利用者の要求する条件を検波方式の選択に反映させるべく、ユーザ要求プロファイル修正値とユーザ設定要求倍率とにより、利用者の要求する条件及び利用者の意思を数値化して評価値Hに反映させることで、利用者の要求する条件と利用者の意思とに従って消費電力と受信性能との均衡を最適化させて、利用者の通信目的及び条件に応じた受信性能と、不必要な電力消費の防止の両方を的確に実現することができるという効果が得られる。
本実施例の受信機は、上述の実施例の範囲に限らず、受信機の検波器において更に選択可能な検波方式を増やすことで、できる限り性能を良くするのではなく、ユーザの要求に最も近い消費電力と性能を実現し、必要以上の電力消費の削減と要求性能の維持の両方を満足することができる。
本発明の第1の実施例の受信機の構成を示すブロック図である。 同実施例の受信機の制御回路における制御動作を示すフローチャートである 本発明の第2の実施例の受信機の構成を示すブロック図である。。
符号の説明
1 入力端子
2 遅延検波回路(信号処理手段)
3 判定回路
4 準同期検波回路(信号処理手段)
5 切り換え器
6 信号判定器
7 差動復号器
8 遅延検波器
9 データ判定器
10 選択回路
11 出力端子
12 受信レベル検波器(受信状態判断手段)
13 制御回路
21 パスサーチャ
22−1〜22−3 フィンガ
23 レイク受信部(レイク受信機)
24 周波数変換器
25 シンボル合成器
26 復調器
27 シンボルエラーレート算出部
28 比較器
29−1、29−2 レジスタ
30 制御回路
S3 評価値算出手段
S5 判断手段

Claims (7)

  1. 受信信号の復調を行う受信機であって、
    複数の処理方式の何れかにより前記受信信号の処理を行う信号処理手段と、
    前記受信信号の通信方式によって前記受信信号の受信レベル及び受信機の電池寿命に相異なる加重値を割り当てることにより評価値を算出する評価値算出手段と、
    前記算出された評価値に基づいて前記信号処理手段の処理方式を選択する判断手段と
    を備え
    前記通信方式は、テキスト及び音声通信のうち、少なくとも一つを含むことを特徴とする受信機。
  2. 前記受信信号の受信状態を判断する受信状態判断手段を備え、
    前記評価値算出手段が、前記通信目的と該受信状態とに応じた評価値を算出する
    ことを特徴とする請求項1に記載の受信機。
  3. 前記受信状態判断手段が、前記受信信号の受信状態の判断を、目的の通信開始前または目的の通信開始時のいずれかのみに行う
    ことを特徴とする請求項2に記載の受信機。
  4. 前記受信状態判断手段が、前記受信信号の受信状態の判断を、通信中に所定の間隔で間欠的に行い、
    前記評価値算出手段が、同時に前記通信目的と該受信状態とに応じた評価値を算出する
    ことを特徴とする請求項2に記載の受信機。
  5. 前記信号処理手段が、スペクトラム拡散信号を受信するためのレイク受信機を備え、
    前記判断手段が、前記レイク受信機のフィンガ数を選択する
    ことを特徴とする請求項1に記載の受信機。
  6. 前記評価値算出手段が、前記利用者の要求する条件に基づく補正値を用いて前記評価値に重み付けを行う
    ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の受信機。
  7. 前記補正値を前記通信目的に応じて設定可能とする
    ことを特徴とする請求項6に記載の受信機。
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