JP4454216B2 - 茶系組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、茶系飲料の製造方法及び該方法によって得られる茶系組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリビニルポリピロリドンは、世界各国において、ビール、ワイン、食酢、フルーツジュース、植物抽出系飲料等の食品、飲料および調味料等の清澄ろ過助剤として広く使用されており、日本においては、1995年4月に、食品添加物として承認されている。また、ポリビニルポリピロリドンを用いて、各種食品中に含まれるポリフェノールを選択的に吸着し、おりや混濁を抑制したり、風味を調整したりすることができることは広く知られている。
【0003】
一方、近年、PETボトルの普及とともに、茶系飲料の消費量が著しく増加している。しかしながら、PETボトルは酸素バリア性が乏しいため、保存中に茶飲料中のカテキン類が酸化されやすく、その結果、混濁や沈澱が発生することがあり、カテキン類の含有量を減少させるように調整する必要がある。さらに、茶系飲料の消費量の増加とともに消費者の嗜好も多様化しており、苦渋味の少ない、ライトでまろやかな風味の茶系飲料が要望されている。
【0004】
カテキン(類)は、茶系飲料の味(渋味)の主成分である「ポリフェノール(別名タンニン)」の一種であり、フラボン骨格という構造を有するお茶特有のフラボノイドである。
【0005】
この茶系飲料中のカテキン類をポリビニルポリピロリドンを用いて取り除いた例が報告されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0006】
特許文献1には、温水で茶葉を抽出する途中においてポリビニルポリピロリドンを添加し、カテキン類濃度を減少させる茶飲料の製造方法が開示されている。通常、緑茶等飲料の製造においてカテキン類を除去するには、まず、茶葉の抽出操作を行い、次いで、ポリビニルポリピロリドンを20〜40℃の温度範囲で接触させてカテキン類を吸着する二段階操作を行っている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、特許文献1の方法は、温水による茶葉抽出操作とポリビニルポリピロリドンによるカテキン類の吸着操作を60〜70℃の温度範囲で同時に行い、短時間で茶飲料を製造するものである。
【0007】
また、特許文献2には、タンニンおよびアミノ酸を含有する茶類抽出液をポリビニルポリピロリドン樹脂と接触させ、タンニンを吸着させ、除去し、アミノ酸/タンニン比を設定する方法が開示されている。
【0008】
さらに、特許文献3には、茶葉を50〜70℃で抽出し、この抽出液にポリビニルポリピロリドンを添加して、茶葉カフェイン含有量の少なくとも40重量%を回収するとともに、渋味成分のカテキン類を除去する方法が示されている。
【0009】
しかしながら、これらの公報では、茶葉抽出液の渋味が強まるのを抑制するために茶葉を50〜70℃の温度で抽出し、ポリビニルポリピロリドンを添加してカテキン類を吸着させてはいるが、ポリビニルポリピロリドンの処理温度が吸着されるカテキンの種類及び量に及ぼす影響については特に検討されておらず、室温か、又は茶葉抽出時の温度においてそのまま行っている。さらに、これらの公報には、茶葉抽出液をポリビニルポリピロリドン処理してカテキン類を吸着させてはいるが、茶系飲料の渋味に係わるガレート型カテキン類を選択的にポリビニルポリピロリドンに吸着させるという発想や開示、並びに、総カテキン類に占めるガレート型カテキンの割合が30%以下であるという特徴を有する茶系飲料については、これらの公報には全く記載されていない。
【0010】
【特許文献1】
特開平9-220053号公報(第2頁)
【特許文献2】
特開平9-220055号公報(第2頁)
【特許文献3】
特開2000-41577号公報(第2頁)
【特許文献4】
特開平1-218550号公報(第2〜3頁)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、茶系組成物中のカテキン類、特に茶系組成物中に含まれるガレート型カテキン類を選択的に低減させるための方法、及び該方法によって得られる茶系組成物を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、茶葉抽出液のポリビニルポリピロリドンによる処理をより高い温度で処理すればガレート型カテキン類がより多く吸着されることを見出した。この知見に基づいて、まず、ガレート型カテキンの溶出が抑制される温度において茶葉を抽出し、次いで、茶葉抽出時の温度よりも高く設定した温度において茶葉抽出液をポリビニルポリピロリドンに接触させることによって、強い渋味を持つガレート型カテキン類のみを選択的に吸着させ、ライトでまろやかな風味の茶系組成物を得ることができることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(8)を提供する。
(1) 茶葉を40〜80℃の温水で抽出し、ガレート型カテキン類の総カテキン類に占める割合が50%以下である茶葉抽出液を調製する工程と、茶葉抽出液を60〜90℃の温度範囲でポリビニルポリピロリドンと接触させて茶葉抽出液中のガレート型カテキン類の総カテキン類に占める割合を30%以下に低減させる工程を含んでなる、茶系組成物の製造方法。
(2) ポリビニルポリピロリドンと接触させる温度範囲が60〜80℃である、(1)に記載の製造方法。
(3) ガレート型カテキン類が、エピガロカテキンガレート及びエピカテキンガレートである、(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4) 茶葉を抽出する温度範囲が40〜60℃である、(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5) 茶葉が緑茶の葉である、(4)に記載の製造方法。
(6) さらに、ガレート型カテキン類の総カテキン類に占める割合を30%以下に低減させた茶葉抽出液を凍結乾燥又はスプレードライにより粉末化する工程を含む、(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7) (1)〜(6)のいずれかに記載の方法によって得られる茶系組成物。
(8) ガレート型カテキン類の総カテキン類に占める割合が30%以下である、(7)に記載の茶系組成物。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の茶系組成物の製造方法及び該方法によって得られる茶系組成物についてさらに詳細に説明する。
【0015】
本発明における茶系組成物は、原料となる茶葉から抽出液を調製する。本発明において「茶葉」とは、カテキン類が含まれた茶エキスが得られる植物原料の葉、茎、芽及びそれらの組み合わせであれば特に限定されないが、代表的には不発酵茶の緑茶(玉露、煎茶、番茶、ほうじ茶等の各原料葉を含む)、半発酵茶のウーロン茶、発酵茶の紅茶の葉等があり、その他、カテキン類を含む生薬原料の植物の葉等も含まれる。
【0016】
本発明の方法において除去の対象となる「カテキン類」とは、茶葉に含まれるフラボン骨格を有するポリフェノールであり、具体的には、主要カテキン類であるエピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピカテキン、及び、微量カテキン類であるカテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレートが含まれる。緑茶においては、これらカテキン類の中でエピガロカテキンガレートの含有量が最も多く、全体の50〜60%を占める(村松敬一郎(1993)、茶の科学、pp106-123、朝倉書店)。
【0017】
上記カテキン類は、ガレート基の付いていないカテキン類である遊離型カテキン類とガレート基の付いたカテキン類であるガレート型カテキン類((没食子酸)エステル型カテキン類とも称する)とに分類され、前者にはエピガロカテキン、エピカテキン、カテキン、ガロカテキンが該当し、後者にはエピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、カテキンガレート、ガロカテキンガレートが該当する。
【0018】
ガレート型カテキン類は、強い苦味及び瞬間的で刺激的な渋味を有し、味の強度も遊離型カテキン類よりも数倍強いのに対し、遊離型カテキン類は渋味が弱く温和な苦味があり、後味が甘味となるといった呈味上の特徴を有する。
【0019】
本発明の方法は、まず、茶葉を通常用いられている抽出装置(例えば、ニーダー抽出器等)において抽出する。緑茶葉の場合、抽出温度は40〜60℃であり、特に好ましくは45〜55℃である。また、ウーロン茶、紅茶、生薬の葉の抽出温度は60〜80℃である。前記範囲の温度より低い場合には、各茶葉の成分が十分に抽出されない。また、高い温度で抽出した場合、苦渋味の強いガレート型カテキン類が多く抽出されてしまうため、前記温度範囲内で抽出することが重要である。前記温度条件による茶葉の抽出によって、ガレート型カテキン類の総カテキン類に対する割合が50%以下、好ましくは45%以下である茶葉抽出液を調製することができる。
【0020】
茶葉の抽出条件は、茶葉の種類、製造する目的の茶系飲料に応じて適宜設定することができるが、例えば、緑茶の場合、茶葉に対し15〜30倍量の水で抽出するのが好ましく、茶葉抽出液中の総カテキン類濃度は2,500〜4,000mg/Lとなる。茶葉抽出液は前記濃度のように濃厚液として調製することができるが、茶葉に対し5〜15倍量の水で抽出した薄い抽出液を調製してもよい。抽出時間は、茶葉の重量、茶葉の種類や製造する茶系飲料の濃度等によって異なるが、前記条件において抽出する場合、5〜20分が好ましい。得られた茶葉抽出液は、濃厚な溶液をそのまま次のポリビニルポリピロリドン処理に供することができるが、場合によっては、さらに水で希釈して用いてもよい。
【0021】
上述のようにして得られた茶葉抽出液には、各種カテキン類が含まれている。この茶葉抽出液を60〜90℃の温度範囲でポリビニルポリピロリドンに接触させ、茶葉抽出液に含有させるガレート型カテキン類の量を制御する。
【0022】
本発明の方法に用いるポリビニルポリピロリドンは、アルコール飲料、非アルコール飲料等の濾過助剤として承認されている食品添加物である。カテキン類の吸着するには、特に平均粒径20〜120μmであって、ポリビニルピロリドンを架橋結合によって得られる3次元網目構造のポリビニルポリピロリドンを用いるのが好ましい。具体的には、市販品のダイバガンF、ダイバガンEF、ダイバガンRS、クロスポビドンC(BASF社製)等を用いることができる。
【0023】
ポリビニルポリピロリドンに接触させる処理時の温度範囲は、60〜90℃であり、特に好ましくは、60〜80℃である。前記温度範囲において接触の処理温度が上昇するにつれて、茶葉抽出液中のガレート型カテキンがポリビニルポリピロリドンに吸着され、その残存率は低下する。なお、90℃を超えると茶系飲料の色が褐色化し、旨味も弱くなる。また、60℃より低い温度では十分にガレート型カテキン類が吸着されない。
【0024】
ポリビニルポリピロリドン処理時の茶葉抽出液の温度範囲の設定は、各種茶葉抽出液を加熱又は冷却することによってその温度を上昇又は低下させ、60〜90℃の温度範囲とする。その後、茶葉抽出液にポリビニルポリピロリドンを接触させて液温を一定に維持し、例えば、攪拌羽を用いて十分に攪拌する。
【0025】
本明細書において、「ポリビニルポリピロリドンと接触させて」とは、茶葉抽出液とポリビニルポリピロリドンとが接触する状態であれば特に限定されないが、例えば、(1)茶葉抽出液にポリビニルポリピロリドンを添加する、(2)ポリビニルポリピロリドンを充填したカラムに緑茶液を通過させる等が実施可能である。
【0026】
ポリビニルポリピロリドンの茶葉抽出液に対する使用量及び処理時間は、茶葉の種類、抽出液の容量、ポリビニルポリピロリドンによる処理温度等、種々の条件によって異なるが、例えば、抽出液1Lに対してポリビニルポリピロリドンを3,000〜10,000mg添加するのが好ましい。また、処理温度としては、例えば、抽出液に対しポリビニルポリピロリドンを5,000mg/lの割合で添加した場合、処理時間は10〜60分が適当である。
【0027】
本発明において、茶葉抽出液を60〜90℃、好ましくは60〜80℃の温度範囲でポリビニルポリピロリドンと接触させることによって、ガレート型カテキン類の総カテキン類に対する割合を低減させることができる。特に、前記茶葉抽出工程によって得られた抽出液中に50%以下、好ましくは45%以下含まれるガレート型カテキン類(エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート)の総カテキン類(カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン及びガレート型カテキン類)に対する割合を30%以下、好ましくは20%以下、特に好ましくは15%以下に低減させることが好ましい。
【0028】
本発明の方法によって、ガレート型カテキン類に由来する強い苦味及び瞬間的で刺激的な渋味を効率よく除去し、遊離型カテキン類による後味が甘味となる温和な苦味を選択的に残存させることにより、ライトでまろやかな風味の茶系組成物を得ることが出来ると共に、カテキン類に起因する沈澱・おりをも防止することができる。特に、ガレート型カテキン類を多く含有する中級〜低級緑茶の葉を原料とする飲料及びエキスの製造において効果的である。
【0029】
上記のようにして得られた茶系組成物は、そのまま液体として茶系飲料として使用しても良く、また、茶系飲料などに添加して風味を改良する茶系エキスとして利用することができる。また、本発明の茶系組成物は、凍結乾燥やスプレードライ等の処理を行うことによって粉体化し、使用にあたって適宜液体の形態に戻すこともできる。
【0030】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
なお、実施例には、以下の原料及び試薬を使用した。
(試験材料)
緑茶葉:中級緑茶葉(三重県産)
ポリビニルピロリドン(以下、PVPPと称する):ダイバガンF (BASF社製)
(+)-カテキン:Sigma Aldrich社製試薬
(-)-エピカテキン:Sigma Aldrich社製試薬
(-)-エピガカテキン:Sigma Aldrich社製試薬
(-)-エピカテキンガレート:Sigma Aldrich社製試薬
(-)-エピガロカテキンガレート:Sigma Aldrich社製試薬
【0032】
[実施例1] 緑茶試験液の調製と該試験液中のカテキン及びカフェインの定量
1.緑茶試験液の調製
緑茶葉140gを3Lビーカーに入れ、52℃〜53℃に加温した蒸留水2800mLを加えた(茶葉1:蒸留水=1:20)。次に、液温を48℃〜50℃に保ったまま、撹拌羽を用い、200r.p.m.で10分間攪拌して緑茶液を調製した。さらに、この緑茶液を330メッシュの篩でろ過し、粗茶葉を分離し、これを試験液とした。この調製の工程図を図1に示す。
【0033】
2.緑茶試験液中のカテキン及びカフェイン濃度の定量
得られた試験液中のカテキン(遊離型カテキン:カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、ガレート型カテキン:エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート)及びカフェイン濃度を下記の方法により定量した。
【0034】
試験液を適宜蒸留水または移動相で希釈し、O.45μmのメンブランフィルターでろ過して分析液とし、下記のHPLC条件にて各種カテキンを標準試薬の基準値に基づいて定量した。
装置:高速液体クロマトグラフィー(LC-10システム、島津製作所製)
カラム:CAPCELL PAK C18(5μm) SG4.6mmφ×25cm
カラム温度:40℃
移動相:メタノール:0.5%リン酸=18:82
流量:1.0 mL/min.
注入量:10μL
検出:UV 280nm
その結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
なお、表1中、遊離型カテキン類の総カテキン類に占める割合は約56%であり、ガレート型カテキン類の総カテキン類に占める割合は44%である。
【0037】
3.カテキン類の除去に及ぼすPVPP添加量の影響
試験液500mLを1Lビーカーに入れ、1000、3000、5000、7500、10,000mg/LのPVPPを各ビーカーにそれぞれ添加した。40℃において、撹拌羽を用いて200r.p.m.で60分間撹絆した後、試験液を採取した。0.45μmのメンブランフィルターにてろ過後、分析液とした。この処理方法の工程図を図2に示す。
【0038】
得られた分析液を上記のカテキン及びカフェインの定量方法に基づいて各種カテキン及びカフェインを検出し、表1に示した緑茶試験液中の各種カテキン及びカフェイン量と比較して残存率を求めた。その結果を表2及び図3に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
表2及び図3から明らかなように、いずれのカテキンもPVPP添加量が増加するほど多く吸着されることが確認された。これに対し、カフェインはほとんど吸着されないことがわかった。
【0041】
[実施例2] PVPPによる緑茶処理における温度の影響の検討
実施例1において得られた緑茶試験液にPVPPを5,000 mg/L添加し、20、40、50、60、70、80、90℃で200r.p.m.の速度で60分間処理し、その後、PVPP処理液中の各種カテキンおよびカフェインの残存率を実施例1のカテキンおよびカフェイン定量法に基づいて求めた。この処理方法の工程図を図4に示す。また、各カテキンの残存率の結果を表3及び図5に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
表3及び図5から明らかなように、カテキン(CA)、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)の遊離型カテキン類がPVPP処理の温度が高くなっても残存率が低下しなかったのに対し、エピカテキンガレート(ECG)、エピガロカテキンガレート(EGCG)のガレート型カテキン類は、PVPP処理の温度が高くなるにつれて、特に60〜90℃の高温のPVPP処理において残存率が著しく低下し、PVPPに効率的に吸着されたことが明らかであった。この結果から、遊離型カテキン類及びガレート型カテキン類のPVPPへの吸着選択性は温度に依存するものと考えられた。
【0044】
また、各処理温度におけるPVPP処理後の緑茶試験液の組成比を表4に示した。さらに、この結果に基づいた、各処理温度におけるPVPP処理後の緑茶試験液中の遊離型カテキン(CA+EC+EGC)、ガレート型カテキン(ECG+EGCG)、カフェインの組成比を図6に示した。
【0045】
【表4】
【0046】
その結果、緑茶抽出液は、異なる温度でPVPP処理することによって、各種カテキン、特に遊離型カテキン類とガレート型カテキン類の組成比が異なった緑茶液を得ることができることが確認された。特に、60℃以上の温度で行った場合、ガレート型カテキン類の組成比が20%以下となり、低温での処理に比べて著しく低減されていることが確認された。従って、温度に対する各種カテキンの吸着選択性の差を利用することによって、緑茶液中のカテキン組成を変えることができ、それによって、緑茶の味、特に渋味を自由にコントロールすることができる。
【0047】
さらに、異なる温度におけるPVPP処理によって得られる緑茶液について、官能検査を行った結果を表5に示す。
【0048】
【表5】
【0049】
表5から明らかなように、官能評価及び沈澱の発生状況の結果を総合的に判断した結果、高い温度のけるPVPP処理において、特に60〜80℃の温度範囲におけるPVPP処理において、優れた総合評価を得ることができた。
【0050】
また、表3〜表5及び図5〜図6から明らかなように、50℃での緑茶抽出液は、50℃(抽出温度)におけるPVPP処理に比べて、本発明の60℃以上のPVPP処理を行った方がガレート型カテキンの総カテキン類に占める割合が低くなり、その結果、苦味、渋味が抑制され、かつ旨味が活かされた緑茶組成物が得られることがわかる。
【0051】
[実施例3]
さらに、現在市販されている緑茶飲料の市販品5種(市販品A〜E)と本発明の60℃PVPP処理及び70℃PVPP処理によって得られた緑茶飲料中の遊離型カテキン類とガレート型カテキン類の総カテキン類に占める割合を比較検討した結果を図7に示す。その結果、本発明の方法によって得られる緑茶飲料はガレート型カテキン類の割合が市販品の緑茶飲料に比べて極めて著しく低く、これまでにない非常に特徴的な飲料であることが確認された。
【0052】
以上の各結果をもとに総合的に判断すると、緑茶抽出液を60℃以上、特に60〜80℃でPVPP処理することによって、ガレート型カテキン類の組成比が顕著に低減され、苦味、渋味が抑制された、ライトでまろやかな風味の緑茶を得ることができることが明らかになった。
【0053】
【発明の効果】
本発明により、茶の風味に大きな影響を及ぼす、強い苦渋味を持つガレート型カテキン類の総カテキン類に対する割合を選択的に低減することが可能となり、その結果、ライトでまろやかな風味の茶系飲料及びエキスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】緑茶試験液の調製の工程を示す図である。
【図2】緑茶試験液に1000、3000、5000、7500、10,000mg/LのPVPPを添加して処理する工程を示す図である。
【図3】緑茶試験液に1000、3000、5000、7500、10,000mg/LのPVPPを添加、処理して得られる緑茶組成物中の各種カテキン及びカフェイン量の残存率を示す図である。
【図4】緑茶試験液を20、40、50、60、70、80、90℃においてPVPP処理する工程を示す図である。
【図5】緑茶試験液を20、40、50、60、70、80、90℃においてPVPP処理して得られた緑茶組成物中の各種カテキンの残存率を示す図である。
【図6】緑茶試験液を20、40、50、60、70、80、90℃においてPVPP処理して得られた緑茶組成物中の遊離型カテキン類とガレート型カテキン類の割合を示す図である。
【図7】緑茶市販品と本発明で得られた緑茶組成物中の遊離型カテキン類とガレート型カテキン類の割合を比較した図である。
Claims (5)
- 緑茶葉を40〜55℃の温水で抽出し、ガレート型カテキン類の総カテキン類に占める割合が50%以下である茶葉抽出液を調製する工程と、茶葉抽出液を60〜90℃の温度範囲でポリビニルポリピロリドンと接触させて茶葉抽出液中のガレート型カテキン類の総カテキン類に占める割合を20%以下に低減させる工程を含んでなる、茶系組成物の製造方法。
- ポリビニルポリピロリドンと接触させる温度範囲が60〜80℃である、請求項1に記載の製造方法。
- ガレート型カテキン類が、エピガロカテキンガレート及びエピカテキンガレートである、請求項1又は2に記載の製造方法。
- ポリビニルポリピロリドンの量が茶葉抽出液1Lに対して3,000〜10,000mgである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- さらに、ガレート型カテキン類の総カテキン類に占める割合を20%以下に低減させた茶葉抽出液を凍結乾燥又はスプレードライにより粉末化する工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
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