以下、本発明に係る光ピックアップの調整装置の一実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、光ピックアップに搭載される対物レンズの傾きを調整するために利用される光ピックアップの調整装置の全体概略図である。この調整装置は、光ピックアップ10を載置する光ピックアップ支持装置20と、光ピックアップ10の上方に配置される模擬部材31を支持する模擬部材保持装置30とを備えている。
光ピックアップ10は、CD,DVDなどの光ディスクに記録されている信号を再生し、および/または、同光ディスクに信号を記録するものであり、本発明に係る光ピックアップの調整装置による調整対象である。この調整対象である光ピックアップ10について簡単に説明しておくと、同光ピックアップ10は、ケーシング10aにそれぞれ組み付けられたレーザ光源11、コリメーティングレンズ12、立上ミラー13および対物レンズ14などから構成されている。レーザ光源11は、後述するレーザ駆動回路102に制御されてレーザ光を出射する。レーザ光源11から出射されたレーザ光は、コリメーティングレンズ12により平行光束にされた後、立上ミラー13により反射されて対物レンズ14に向けて進行し、対物レンズ14により焦点を結ぶ。この対物レンズ14は、ケーシング10aに対して弾性支持部材10b(例えば、ワイヤー)により片持梁または両持梁によって弾性的に支持されている。
この光ピックアップ10は、フォーカスアクチュエータ15およびトラックアクチュエータ16も備えている。フォーカスアクチュエータ15は、対物レンズ14をレーザ光の光軸方向、換言すれば、この光ピックアップ10が用いられる光ディスク(図示せず)の板面と垂直方向に微動させて光スポットを光ディスクの記録面に正確に形成させるものである。フォーカスアクチュエータ15は、この光ピックアップの調整装置の作動時には、対物レンズ14を図示Z軸方向における所定の位置、具体的には、収差が最小となる位置である後述するコリメーティングレンズ41の物点位置に点像が正確に位置するように対物レンズ14を保持するために用いられる。なお、この対物レンズ14を保持する位置は、対物レンズ14の図示Z軸方向における弾性支持部材10bの力学的な中立位置に設定さられている場合もある。
トラックアクチュエータ16は、対物レンズ14を、この光ピックアップ10が用いられる光ディスク(図示せず)のトラック方向(光ディスクの径方向)に微動させて光スポットを光ディスクのトラックに正確に追従させるものである。トラックアクチュエータ16は、この光ピックアップの調整装置の作動時には、対物レンズ14を前記トラック方向、すなわち図示Y軸方向における所定の位置(例えば、対物レンズ14の図示Y軸方向における弾性支持部材10bの力学的な中立位置)に保持するために用いられる。
また、この光ピックアップ10は、傾角調整機構17,18も備えている。傾角調整機構17,18は、レーザ光の光軸に直交する平面、換言すればこの光ピックアップ10が用いられる光ディスク(図示せず)の板面に対して、対物レンズ14の傾きを2軸回りにそれぞれ調整することが可能なネジ機構により構成されている。この光ピックアップの調整装置の作動時には、図示X−Y座標平面に対してX軸およびY軸回り、すなわち図示θx,θy回転方向の傾きが調整される。なお、これらの図示θx,θy回転方向は一例を示すものであり、対物レンズ14の傾角を調整するための互いに直交する2つの軸線回りの回転方向であれば他の2つの軸線回りの回転方向であってもよい。この対物レンズ14の傾きは、傾角調整機構17,18をドライバ工具などを用いて操作することにより調整される。なお、この光ピックアップ10の底面には、後述する光ピックアップ支持装置20にセットされる際に利用される2つの取り付け部19a,19bが設けられている。
このような光ピックアップ10の具体的な一例を図2に示す。図中における符号は前記した光ピックアップ10の説明に対応している。なお、前記取り付け部19aは、図においては、ケーシング10aの外側前面の一角部から水平方向に突出した2つの四角柱状に形成されているとともに、前記取り付け部19bは、図においては、ケーシング10aの外側後面の両端から突出した2つのフランジ状に形成されている。また、コリメーティングレンズ12および傾角調整機構18は、死角によって図示されていない。
光ピックアップ支持装置20は、前記光ピックアップ10を着脱可能に支持する支持部であり、ステージ21および移動装置22から構成されている。光ピックアップ10を支持するステージ21は図を簡略化するために平板状に示されており、同ステージ21には光ピックアップ10を着脱可能な状態で支持する一対の支持部23a,23bが設けられている。実際には、図3に示すように、光ピックアップ10を支持する支持部23a,23bは、直方体状に形成されたステージ21の側面から水平方向に延設されており、これらの支持部23a,23bに光ピックアップ10の外側前後面にそれぞれ設けられた取り付け部19a,19bを侵入させ、取り付け部19a,19bの両端をクリップなどにより挟み支持部23a,23b上に光ピックアップ10を固定するようになっている。
移動装置22は、ステージ21を支持するとともに、同ステージ21を3軸方向に変位させ、かつ2軸回りに回転させることが可能な移動機構を備えている。ここで、前記3軸方向とは、図1に示すように、各一対が互いに直交するX,Y,Z軸方向であり、前記2軸回りとは、図示X,Y軸回り、すなわちθx,θy回転方向である。この移動装置22は、前記X,Y,Z軸方向およびθx,θy回転方向に移動装置22を手動操作によりそれぞれこの順で変位させることができる操作子24〜28を備えている。
実際には、図3に示すように、操作子24を回転操作することにより、プレート22aがプレート22bに対して図示X軸方向に摺動するとともに、操作子25を回転操作することにより、プレート22cがプレート22aに対して図示Y軸方向に摺動するようになっている。また、操作子26を回転操作することにより、プレート22bがプレート22dに対して図示Z軸方向に変位するようになっている。さらに、操作子27を回転操作することにより、プレート22eがプレート22fに対して図示θx回転方向に摺動するとともに、操作子28を回転操作することにより、プレート22fがプレート22gに対して図示θy回転方向に摺動するようになっている。したがって、これらの各操作子24〜28を操作することによりステージ21、すなわちステージ21上に支持される光ピックアップ10を、それぞれ対応する方向に変位させることができる。なお、前記θx,θy回転方向をX,Y軸回りとしたが、これらのθx,θy回転方向は、これに限らずX−Y平面に存在し、かつ互いに直交する2つの軸線回りの回転方向であれば、他の2つの軸線回りの回転方向であってもよい。
図1に戻り、模擬部材保持装置30は、模擬部材31を保持するとともに、同模擬部材31の傾きを調整することが可能な模擬部材傾き調整機構を備えた支持装置である。模擬部材31は、ガラス、プラスチック等の透明な部材からなり、光ピックアップ10が用いられる光ディスクの光学特性と等価な光学特性を有するものである。一般に、光ディスクは、金属薄膜等で形成されたデータ記録面の前面側、すなわち照射されるレーザ光の光源側に、同データ記録面をキズまたは埃等から保護するためのポリカーボネート材からなる透明基板を備えている。このため、光ディスクに照射されるレーザ光は、同透明基板を透過してデータ記録面上に合焦されることになる。
本発明に係る光ピックアップの調整装置は、実際には、対物レンズ14から出射されて、光ディスクの透明基板を透過したレーザ光の波面と等価なレーザ光を得るために、透明基板の厚みおよび屈折率によるレーザ光の波面収差を補正するための模擬部材31を必要とする。すなわち、模擬部材31は、光ディスクを模擬するために光ディスクの代わりに配置されるもので、光ディスクのデータ記録面上に照射されるレーザ光の波面と等価なレーザ光の波面を得るために光ディスクと等価な性質、具体的には等価な厚さおよび屈折率、すなわち光ディスクと等価な光路長を有する。
この模擬部材保持装置30は、図4に詳しく示すように、模擬部材保持器としての保持プレート32およびプレート支持台33から構成されている。保持プレート32は、円盤状に形成されており、その中央部に設けた貫通孔に回転軸34を貫通させて固定している。この保持プレート32には、その上面から底面に貫通した複数の貫通孔が、周方向に沿って略等間隔に設けられている。これら複数の貫通孔のうちの1つを除く他の複数の貫通孔(例えば3つの貫通孔)には、保持プレート32を回転することにより模擬部材31が交換可能な状態でそれぞれ取り付けられている。この場合、複数の模擬部材31(例えば、3つの模擬部材31)は、光学特性の異なる光ディスクの基板に対応して、それぞれ光学特性の異なる複数種類の模擬部材となっている。また、模擬部材31が取り付けられていない1つの貫通孔(すなわち開口部)は、模擬部材31を用いない工程が存在するために用意されている。
プレート支持台33は、保持プレート32を支持するとともに、保持プレート32の傾きを調整することが可能な模擬部材傾き調整機構を備えており、支持部33a,33bおよび基部33cから構成されている。支持部33aは、略U字状に形成されており、水平方向に延設された上下一対のアーム33a1,33a2の先端部には、保持プレート32の回転軸34の両端を、同回転軸34の軸線回りに回転可能な状態でそれぞれ支持する。回転軸34の上端部は、上側のアーム33a1から突出しており、同上端部には、手動操作により保持プレート32を回転軸34の軸線回りに回転させるための操作子35が設けられている。
支持部33aにおけるアーム33a1,33a2の基端部下面は、支持部33bの上端部と接し、支持部33aと支持部33bとの接触面のY軸に直交する断面形状がX−Z平面にて円弧状となるように成型されている。また、支持部33aと支持部33bとの接触面のX軸に直交する断面形状がY−Z平面にて直線状になるように成形されている。そして、支持部33aの下面は支持部33bの上面上に摺動可能に係合しており、支持部33aはその下面にて支持部33bの上面上にY軸回りに回転可能に支持されている。また、支持部33bには、手動操作により支持部33aを支持部33bに対してY軸回り、すなわちθy方向に回転させるための操作子36が設けられている。
支持部33bの下面は、基部33cの上端部と接し、支持部33bと基部33cとの接触面のX軸に直交する断面形状がY−Z平面にて円弧状となるように成型されている。また、支持部33bと基部33cとの接触面のY軸に直交する断面形状がX−Z平面にて直線状になるように成形されている。そして、支持部33bの下面は基部33cの上面上に摺動可能に係合しており、支持部33bはその下面にて基部33cの上面上にX軸回りに回転可能に支持されている。また、基部33cには、手動操作により支持部33bを基部33cに対してX軸回り、すなわちθx方向に回転させるための操作子37が設けられている。
この光ピックアップの調整装置は、光ピックアップ支持装置20上に載置固定される後述する角度校正治具110に設けられた平面ミラー部112にレーザ光を照射し、平面ミラー部112での反射光を1/2波長板42およびビームスプリッタ43を介して入射させるオートコリメータ50も備えている。ここで1/2波長板42は、入射したレーザ光の光ピックアップの調整装置内に設けられたビームスプリッタなどの光学素子の偏光依存性を解消するために設けられている。ビームスプリッタ43は、入射したレーザ光の一部を入射方向と同一方向に透過させるとともに、他の一部を入射方向と直角方向に反射させる光学素子である。
オートコリメータ50は、レーザ光源51、コリメーティングレンズ52、ビームスプリッタ53、集光レンズ54およびCCD撮像素子55から構成されており、対象物体に向けてレーザ光を照射し、同対象物体からの反射光を受光して照射されたレーザ光に対する対象物体の傾きを検出する傾角検出装置である。レーザ光源51から出射されたレーザ光は、コリメーティングレンズ52およびビームスプリッタ53を介して、光ピックアップ支持装置20に向けて照射され、同光ピックアップ支持装置20からの反射光がビームスプリッタ53、集光レンズ54を介して撮像器としてのCCD撮像素子55により受光される。CCD撮像素子55には、モニタ装置56が接続されており、CCD撮像素子55による受光像がモニタ装置56に表示されるようになっている。この場合、モニタ装置56の表示画面には、このオートコリメータ50から光ピックアップ支持装置20に照射されるレーザ光の光軸の方向を交点とする十字状の目盛りが表示されており、ステージ21(すなわち支持部23a,23b)に取り付けられる後述する角度校正治具110に設けられた平面ミラー部112による反射光をCCD撮像素子55を介してモニタ装置56に表示させることにより、ステージ21の傾きを目視することができるようになっている。なお、モニタ装置56は、光ピックアップの調整装置の図示しない支持部材により、作業者の視認し易い位置に固定されている。また、オートコリメータ50は、上記と同様にして対物レンズ14から出射されるレーザ光の光軸に対する模擬部材31の傾きを検出することもできる。
また、この光ピックアップ調整装置は、光ピックアップ支持装置20上に載置固定される光ピックアップ10の対物レンズ14を透過するレーザ光を、前述した模擬部材31、コリメーティングレンズ41および1/2波長板42を介し、ビームスプリッタ43で反射させて後述するシャックハートマンセンサ60、スポットアナライザ70、4分割フォトディテクタ83および2次元ポジションセンサ(PSD)93に導くようになっている。ここで、コリメーティングレンズ41は、入射したレーザ光を平行光束にする光学素子であり、光ピックアップの調整装置内に設けた図示しないコリメーティングレンズ移動機構により、前記レーザ光の光路上または光路外に配置されるように支持されている。このコリメーティングレンズ41は、高倍率と低倍率の2種類のレンズからなり、使用目的に応じて一方の倍率のコリメーティングレンズ41がコリメーティングレンズ移動機構に交換可能な状態で取り付けられている。また、このコリメーティングレンズ41は、コリメーティングレンズアクチュエータ44の駆動により、光ピックアップ10のトラックアクチュエータ16の駆動方向と直交する方向、図1においてはX軸方向に変位するようになっている。
ビームスプリッタ43により反射されたレーザ光の光軸上には、ビームスプリッタ45,46,47を介してシャックハートマンセンサ60が設けられている。ビームスプリッタ45,46,47は、前述したビームスプリッタ43と同様に、入射したレーザ光の一部を入射方向と同一方向にそれぞれ透過させるとともに、他の一部を入射方向と直角方向にそれぞれ反射させる光学素子である。ビームスプリッタ43により反射されたレーザ光は、ビームスプリッタ45によりその一部が直角方向に反射されるとともに、同反射光の一部がそれぞれビームスプリッタ46,47を透過してレーザ光の観測装置としてのシャックハートマンセンサ60に入射するようになっている。
シャックハートマンセンサ60は、ND(Neutral Density)フィルタ61、レンズアレイ62およびCCD撮像素子63から構成されており、ビームスプリッタ45,46,47を介して入射するレーザ光の波面収差を計測する波面計測器である。NDフィルタ61は、入射するレーザ光の光量を適切にするための光学フィルタである。レンズアレイ62は、入射するレーザ光のビーム径に比べ小さなレンズを2次元格子状に配列した複数のレンズから構成され、入射したレーザ光を各レンズごとにそれぞれCCD撮像素子63上に集光させる。CCD撮像素子63は、レンズアレイ62を構成する複数のレンズによるレーザ光の集光位置に配置され、同複数のレンズによって形成される複数の点像を撮像する撮像器である。このCCD撮像素子63によって撮像された複数の点像は、ハートマンノグラムと呼ばれ、収差を含まない波面により得られる複数の点像からのそれぞれの変位、すなわち、CCD撮像素子63による撮像面におけるレーザ光の波面の法線ベクトルの正弦(サイン)成分に対応する。CCD撮像素子63によって撮像された複数の点像、すなわちビデオ信号は画像生成装置64に供給される。
画像生成装置64は、後述するコントローラ100によって制御されて、CCD撮像素子63から出力されるビデオ信号を用いてレーザ光の波面形状を計算し、同波面を立体画像として表示するための立体画像データを生成する装置である。この画像生成装置64により生成された立体画像データは、モニタ装置65に出力され、同モニタ装置65によりレーザ光の波面の様子が立体画像として表示される。また、同時に収差量を計算し、数値データとしてモニタ装置65に表示させたり、測定および計算された波面に基づいて擬似的に干渉縞をモニタ装置65に表示させることも可能である。このモニタ装置65は、光ピックアップの調整装置の図示しない支持部材により、作業者の視認し易い位置に固定されている。
ビームスプリッタ45を透過したレーザ光の光軸上には、スポットアナライザ70が設けられている。スポットアナライザ70は、NDフィルタ71、集光レンズ72およびCCD撮像素子73から構成されており、ビームスプリッタ45を透過したレーザ光(すなわちシャックハートマンセンサ60に入射するレーザ光に等価なレーザ光)の光軸の同光軸に直交する面内におけるずれ、具体的は図示X−Y軸平面内における対物レンズ14によるレーザ光の焦点スポットの形状および位置を観察する検出器である。また、スポットアナライザ70は、対物レンズ14により出射されるレーザ光の光軸に対する模擬部材31の傾角を検出することも可能である。さらに、前述したオートコリメータ50の集光レンズ54およびCCD撮像素子55の機能を代わりに行うことも可能である。NDフィルタ71は、前記NDフィルタ61と同様に、入射するレーザ光の光量を適切にするための光学フィルタである。集光レンズ72は、入射するレーザ光をCCD撮像素子73上に集光させる光学レンズである。CCD撮像素子73は、集光レンズ72の集光位置に配置され、同集光レンズ72によって形成される点像を撮像する撮像器である。
CCD撮像素子73には、モニタ装置74が接続されており、CCD撮像素子73による受光像がモニタ装置74に表示されるようになっている。この場合、モニタ装置74の表示画面には、シャックハートマンセンサ60、後述する4分割フォトディテクタ83および2次元ポジションセンサ(PSD)93がレーザ光を受光することができる受光範囲の中心位置を交点とする十字状の目盛りが表示されており、シャックハートマンセンサ60に入射するレーザ光の光軸と前記受光範囲の中心位置との位置関係を目視することができるようになっている。また、モニタ装置74に表示される点像の大きさにより、対物レンズ14によるレーザ光の焦点位置とシャックハートマンセンサ60にレーザ光を的確に入射させるための位置関係を、さらに1次回折リングが観察できる場合には、そのリングの途切れ具合から模擬部材31の最大傾角となる方向を目視することができるようになっている。なお、モニタ装置74は、光ピックアップの調整装置の図示しない支持部材により、作業者の視認し易い位置に固定されている。
ビームスプリッタ46により反射されたレーザ光の光軸上には、凸レンズ81、シリンドリカルレンズ82および4分割フォトディテクタ83が設けられており、ビームスプリッタ46により反射されたレーザ光、すなわちシャックハートマンセンサ60に入射するレーザ光の一部が4分割フォトディテクタ83上の図示しない受光部a,b,c,dでの受光量に対応した受光信号A,B,C,Dに変換されてフォーカスエラー信号生成回路84に出力される。フォーカスエラー信号生成回路84は、4分割フォトディテクタ83から出力された受光信号A〜Dから非点収差法などによりフォーカスエラー信号を生成し、フォーカスサーボ制御回路85に出力する。フォーカスサーボ制御回路85は、後述するコントローラ100に制御されて、フォーカスエラー信号生成回路84から出力されるフォーカスエラー信号に基づいてフォーカスサーボ信号を生成し、ドライブ回路86に出力する。ドライブ回路86は、フォーカスサーボ信号に応じて調整対象である光ピックアップ10に内蔵されるフォーカスアクチュエータ15を駆動制御することによって対物レンズ14を光軸方向に変位させる。したがって、フォーカスエラー信号生成回路84、フォーカスサーボ制御回路85およびドライブ回路86の協働により対物レンズ14のフォーカスサーボ制御が実現される。
ビームスプリッタ47により反射されたレーザ光の光軸上には、NDフィルタ91および凸レンズ92を介して2次元ポジションセンサ(PSD)93が設けられている。NDフィルタ91は、前述したNDフィルタ71,61と同様に、入射するレーザ光の光量を適切にするための光学フィルタである。凸レンズ92は、入射したレーザ光を2次元ポジションセンサ(PSD)93上に集光する光学レンズである。2次元ポジションセンサ(PSD)93は、フォトダイオードの表面抵抗を利用した2次元の受光光量の重心を検出する素子であり、凸レンズ92の集光位置に配置され、同凸レンズ92によって2次元ポジションセンサ(PSD)93上に形成される点像の重心位置を表す受光信号を位置計算回路94に出力する。この受光信号が表す位置とは、ビームスプリッタ47により反射されたレーザ光(すなわちシャックハートマンセンサ60に入射するレーザ光に等価なレーザ光)の光軸と直交する平面内における位置、すなわち図示X−Y軸平面内におけるシャックハートマンセンサ60の光軸と対物レンズ14から放射されるレーザ光の光軸とのずれを2次元ポジションセンサ(PSD)93上に投影したものである。
位置計算回路94は、2次元ポジションセンサ(PSD)93から出力される受光信号を用いて、シャックハートマンセンサ60がレーザ光を受光することができる受光範囲の中心位置とシャックハートマンセンサ60に入射するレーザ光の光軸の位置との図示X−Y軸平面におけるずれをそれぞれ計算し、同ずれをそれぞれ表すX方向エラー信号およびY方向エラー信号をX−Y方向サーボ制御回路95に出力する。X−Y方向サーボ制御回路95は、後述するコントローラ100に制御されて、前記X方向エラー信号およびY方向エラー信号に基づいてX方向サーボ信号およびY方向サーボ信号を生成し、ドライブ回路96,97にそれぞれ出力する。
ドライブ回路96は、X方向サーボ信号に応じてコリメーティングレンズ用のコリメーティングレンズアクチュエータ44を駆動制御することによってコリメーティングレンズ41を図示X軸方向に変位させる。また、ドライブ回路97は、Y方向サーボ信号に応じて調整対象である光ピックアップ10に内蔵されるトラックアクチュエータ16を駆動制御することによって対物レンズ14を図示Y軸方向に変位させる。したがって、位置計算回路94、X−Y方向サーボ制御回路95、ドライブ回路96,97の協働によりコリメーティングレンズ41の図示X軸方向および対物レンズ14の図示Y軸方向の2方向サーボ制御が実現される。なお、コリメーティングレンズアクチュエータ44は、対物レンズ14から出射したレーザ光の光軸を模擬部材31を介してX軸方向に変位させるために利用される。
コントローラ100は、CPU、ROM、RAMなどからなり、入力装置101からの指示に応じて、画像生成装置64、フォーカスサーボ制御回路85、X−Y方向サーボ制御回路95およびレーザ駆動回路102の作動をそれぞれ制御する。入力装置101は、複数の押しボタンスイッチからなり、画像生成装置64、フォーカスサーボ制御回路85、X−Y方向サーボ制御回路95およびレーザ駆動回路102のそれぞれの作動の開始を指示する。レーザ駆動回路102は、コントローラ100からの指示に応じて、光ピックアップ10のレーザ光源11およびオートコリメータ50のレーザ光源51の作動を制御する。
このように構成された光ピックアップの調整装置の使用に際しては、予め光ピックアップ支持装置20のステージ21および模擬部材31の角度校正が必要であるため、これらの角度校正工程について説明する。まず、光ピックアップ支持装置20のステージ21の角度校正工程について説明する。
図5に示すように、作業者により、角度校正治具110を光ピックアップ支持装置20のステージ21上にセットする。この角度校正治具110は、図6に示すように、方形状の平板部材からなる基台111上に設けられた平面ミラー部112が設けられている。実際には、図7に示すように、前述したステージ21の一対の支持部23a,23bは2本のシャフトで構成されており、基台111の底面に設けた互いに平行な2本の溝からなる一対の取り付け部113a,113bが同シャフト上にそれぞれ載置されてステージ21にセットされる。平面ミラー部112は、ステージ21の角度校正に用いられる反射部材であり、ステージ21上に基台111を載置した状態で、反射面の法線がシャックハートマンセンサ60の光軸と平行になるように角度校正が行われる。この角度校正によりステージ21上に固定される光ピックアップ10から出射されるレーザ光の光軸とシャックハートマンセンサ60の光軸が平行になる。
この角度校正治具をステージ21上に載置固定した状態で、作業者は、図示しない電源スイッチの投入により、コントローラ100を含む光ピックアップの調整装置の作動を開始させる。次に、作業者は、模擬部材保持装置30の操作子35を操作することにより保持プレート32を回転させて、保持プレート32の模擬部材31が取り付けられていない1つの貫通孔(開口部)を、オートコリメータ50から出射されるレーザ光の光軸上に位置させる。これは、オートコリメータ50から出射されるレーザ光が、模擬部材31を介さずに平面ミラー部112に照射されることにより、模擬部材31による反射光を生じさせないためである。なお、オートコリメータ50から出射されるレーザ光の光軸は、ビームスプリッタ43を介したシャックハートマンセンサ60の光軸に一致するように予め設定されている。
このとき、光ピックアップの調整装置内に設けられた図示しないコリメーティングレンズ移動機構を操作して、コリメーティングレンズ41をオートコリメータ50から出射されるレーザ光の光路外に位置するように移動させておく。これは、オートコリメータ50から出射されるレーザ光が、同オートコリメータ50に内蔵されるコリメーティングレンズ52によって既に平行光束に変換されているためである。
次に、作業者は、入力装置101を操作してコントローラ100に対して、オートコリメータ50からのレーザ光の出射を指示する。この指示に応答してコントローラ100は、レーザ駆動回路102に対して、オートコリメータ50内のレーザ光源51の作動の開始を指示する。これにより、オートコリメータ50は、レーザ光源51から出射されたレーザ光を、コリメーティングレンズ52およびビームスプリッタ53を介して、光ピックアップ支持装置20上に載置された平面ミラー部112に向けて出射する。オートコリメータ50から出射されたレーザ光は、ビームスプリッタ43および保持プレート32の模擬部材31が取り付けられていない1つの貫通孔(開口部)を通って平面ミラー部112に照射される。
平面ミラー部112に照射されたレーザ光は、平面ミラー部112の反射面により反射されて、再び保持プレート32の模擬部材31が取り付けられていない1つの貫通孔(開口部)およびビームスプリッタ43を通ってオートコリメータ50に入射する。オートコリメータ50に入射した反射光は、ビームスプリッタ53を介してコンデンサレンズ54に入射し、コンデンサレンズ54は、入射した反射光をCCD撮像素子55上に結像する。そして、このCCD撮像素子55に結像した反射光を表すビデオ信号は、モニタ装置56に入力され同モニタ装置56は、図示X−Y軸平面における反射光の角度を点像として表示する。作業者は、このモニタ装置56の表示に基づいて、前記点像の位置がモニタ装置56上に表示されている十字状の目盛りの交点に位置するように光ピックアップ支持装置20の図示θx,θy回転方向調整用の操作子27,28を操作して、ステージ21の図示θx,θy回転方向における傾きを調整する。なお、この場合も、前記θx,θy回転方向をX,Y軸回りとしたが、これらのθx,θy回転方向は、これに限らずX−Y平面に存在し、かつ互いに直交する2軸回りの回転方向であれば、他の2つの軸線回りの回転方向であってもよい。
これにより、オートコリメータ50から出射されるレーザ光の光軸に対して光ピックアップ支持装置20のステージ21の一対の支持部23a,23b(2本のシャフト)上の母線が垂直となるように、ステージ21の傾きが調整される。その後、作業者は、入力装置101を操作して、オートコリメータ50からのレーザ光の出射を停止させるとともに、角度校正治具110をステージ21上から取り除く。これにより、光ピックアップ支持装置20のステージ21の角度校正工程が終了する。このような光ピックアップ支持装置20によれば、モニタ装置56の表示を確認しながら図示θx,θy回転方向調整用の操作子27,28を操作することにより、ステージ21の図示θx,θy回転方向における傾きを簡単に調整することができる。
次に、模擬部材31の角度校正工程について説明する。この模擬部材31の角度校正工程は、オートコリメータ50から出射されるレーザ光を模擬部材31で反射させ、同反射光の位置をモニタ装置56に表示させて模擬部材31の傾きを調整するものである。具体的には、まず、作業者は、模擬部材保持装置30の操作子35を操作することによって保持プレート32を回転させて、保持プレート32に取り付けられている複数の模擬部材31のうちの1つの模擬部材31をオートコリメータ50から出射されるレーザ光の光軸上に位置させる。この場合、複数の模擬部材31から選択される1つの模擬部材31は、この光ピックアップの調整装置によって調整される光ピックアップ10が用いられる光ディスクに対応する光学特性を有する模擬部材31である。
次に、作業者は、入力装置101を操作してコントローラ100に対して、オートコリメータ50からのレーザ光の出射を指示する。これにより、オートコリメータ50は、前記光ピックアップ支持装置20のステージ21の角度校正工程の場合と同様にレーザ光を出射する。オートコリメータ50から出射されたレーザ光は、ビームスプリッタ43を介して模擬部材31に照射される。模擬部材31に照射されたレーザ光は、その一部が模擬部材31を透過するとともに、他の一部が模擬部材31により反射されて再びビームスプリッタ43を介してオートコリメータ50に受光される。この場合も、コリメーティングレンズ41はオートコリメータ50から出射されるレーザ光の光路外に位置している。また、模擬部材31を透過したレーザ光は、光ピックアップ支持装置20のステージ21上に照射されるが、ステージ21上には平面ミラーまたは光ピックアップ10は存在しないため、これらからの反射光はない。
オートコリメータ50は、受光した反射光に基づいて、θx−θy方向における反射光の角度を点像としてモニタ装置56に表示させる。作業者は、このモニタ装置56の表示に基づいて、前記点像の位置がモニタ装置56上に表示されている十字状の目盛りの交点に位置するように模擬部材保持装置30の操作子36,37を操作して、保持プレート32、すなわち模擬部材31の図示θx,θy回転方向における傾きを調整する。これにより、オートコリメータ50から出射されるレーザ光の光軸が模擬部材31に対して垂直となるように、模擬部材31の傾きが調整される。その後、作業者は、入力装置101を操作して、オートコリメータ50からのレーザ光の出射を停止させる。これにより、模擬部材31の角度校正工程が終了する。なお、この模擬部材31の角度校正工程は、前述した光ピックアップ支持装置20のステージ21の角度校正工程の前工程として行ってもよい。
次に、作業者は、光ピックアップの位置調整工程に移る。光ピックアップの位置調整工程は、シャックハートマンセンサ60がレーザ光を受光することができる受光範囲の中心位置に光ピックアップ10から出射されるレーザ光の光軸が位置するように光ピックアップ10の図示X−Y座標方向における位置を調整するとともに、光ピックアップ10から出射されるレーザ光の焦点位置が模擬部材31を介してシャックハートマンセンサ60にレーザ光を的確に取り込む位置に位置するように光ピックアップ10の図示Z軸方向における位置を調整するものである。具体的には、コリメーティングレンズ41の下方に位置する点(すなわち、コリメーティングレンズ41の収差を最小にするための点で、理想的な軸上の物点)である。まず、作業者は、図1に示すように、この光ピックアップの調整装置における調整対象である光ピックアップ10を、光ピックアップ支持装置20のステージ21上に載置し固定する。そして、光ピックアップの調整装置内に設けられた図示しないコリメーティングレンズ移動機構に低倍率のコリメーティングレンズ41をセットするとともに、同コリメーティングレンズ移動機構を操作して、コリメーティングレンズ41を光ピックアップ10から出射されるレーザ光の光路上に位置させるように移動する。この場合、低倍率のコリメーティングレンズ41を用いるのは、光ピックアップ10から出射されるレーザ光が、後述するスポットアナライザ70の受光範囲内に入射され易くするためである。また、光ピックアップ10のレーザ光源11にレーザ駆動回路102を接続するとともに、フォーカスアクチュエータ15およびトラックアクチュエータ16をドライブ回路86,96にそれぞれ接続する。
次に、作業者は、入力装置101を操作してコントローラ100に対して、光ピックアップ10からのレーザ光の出射を指示する。この指示に応答してコントローラ100は、レーザ駆動回路102に対して、光ピックアップ10内のレーザ光源11の作動の開始を指示する。これにより、光ピックアップ10は、レーザ光源11から出射されたレーザ光をコリメーティングレンズ12、立上ミラー13および対物レンズ14を介して模擬部材31に向けてレーザ光を出射する。光ピックアップ10から出射されたレーザ光は、模擬部材31、コリメーティングレンズ41およびビームスプリッタ43,45,46,47を介して、それぞれスポットアナライザ70、4分割フォトディテクタ83、2次元ポジションセンサ(PSD)93およびシャックハートマンセンサ60に受光される。これらのうち、シャックハートマンセンサ60、4分割フォトディテクタ83および2次元ポジションセンサ(PSD)93により受光されたレーザ光は、それぞれ画像生成装置64、フォーカスサーボ制御回路85およびX−Y方向サーボ制御回路95の作動がコントローラ100によりそれぞれ停止された状態であるので、結果として無視される。
スポットアナライザ70は、ビームスプリッタ45から入射したレーザ光を、NDフィルタ71および集光レンズ72を介してCCD撮像素子73上に集光させる。このCCD撮像素子73は、この集光されたレーザ光に対応するビデオ信号をモニタ装置74に出力し、モニタ装置74は、このビデオ信号に基づき図示X−Y座標平面におけるレーザ光の位置を点像として表示する。この場合、対物レンズ14の焦点位置が模擬部材31を介してシャックハートマンセンサ60にレーザ光を的確に取り込む位置、すなわちコリメーティングレンズ41の下方に位置する点(すなわち、コリメーティングレンズ41の収差を最小にするための点で、理想的な軸上の物点)に位置していなければ、モニタ装置74に表示される点像は不明瞭な像として表示される。したがって、作業者は、まず、対物レンズ14の焦点位置が前記コリメーティングレンズ41の下方に位置する点に位置するように光ピックアップ10の位置調整を行う。具体的には、作業者は、モニタ装置74の表示を確認しながら、前記不明瞭な像が明瞭かつ最小な点像となるように光ピックアップ支持装置20の図示Z軸方向調整用の操作子26を操作して、ステージ21の図示Z軸方向の位置を調整する。これにより、対物レンズ14の焦点位置がコリメーティングレンズ41の下方に位置する点(すなわち、コリメーティングレンズ41の収差を最小にするための点で、理想的な軸上の物点)に位置するようになる。次に、作業者は、モニタ装置74の表示に基づいて、前記点像の位置がモニタ装置74上に表示されている十字状の目盛りの交点に位置するように光ピックアップ支持装置20の図示X,Y軸方向調整用の操作子24,25を操作して、ステージ21の図示X,Y軸方向における位置を調整する。
次に、作業者は、コリメーティングレンズ移動機構にセットされている低倍率のコリメーティングレンズ41に代えて高倍率のコリメーティングレンズ41をセットする。そして、前述したように、モニタ装置74の表示を確認しながら前記点像が最小となるように光ピックアップ支持装置20の図示Z軸方向調整用の操作子26を操作するとともに、前記点像の位置がモニタ装置74上に表示されている十字状の目盛りの交点に位置するように光ピックアップ支持装置20の図示X,Y軸方向調整用の操作子24,25を操作して、ステージ21の図示X,Y軸方向における位置を調整する。このような、高倍率のコリメーティングレンズ41を用いることにより、さらに高精度に光ピックアップ10の位置決めを行うことができる。
これにより、スポットアナライザ70におけるレーザ光の受光範囲の中心位置に対物レンズ14を介して光ピックアップ10から出射されるレーザ光の光軸を表す点像が投影されるようになる。このことは、シャックハートマンセンサ60の光軸と光ピックアップ10から出射されるレーザ光の光軸が平行になったことを意味する。これにより、光ピックアップの位置調整工程が終了する。このような光ピックアップ支持装置20によれば、モニタ装置74の表示を確認しながら図示X,Y,Z軸方向調整用の操作子24〜26を操作することにより、光ピックアップ10の図示X,Y,Z軸方向における位置を簡単に調整することができる。
次に、作業者は、対物レンズのフォーカスサーボ制御開始工程に移る。対物レンズのフォーカスサーボ制御開始工程は、対物レンズ14のフォーカスサーボ制御を正確かつ安定的に行わせるための工程であり、前述した光ピックアップの位置調整工程から連続的に行われるものである。具体的には、作業者は、入力装置101を操作して、コントローラ100に対して、対物レンズ14のフォーカスサーボ制御の開始を指示する。この指示に応答してコントローラ100は、フォーカスサーボ制御回路85の作動を開始させる。この場合、ビームスプリッタ46により反射されたレーザ光は、凸レンズ81およびシリンドリカルレンズ82を介して4分割フォトディテクタ83に入射し、4分割フォトディテクタ83により図示しない受光部a,b,c,dでの受光量に対応する受光信号A〜Dに変換されてフォーカスエラー信号生成回路84に供給されている。そして、フォーカスエラー信号生成回路84により、同受光信号A〜Dに基づいてフォーカスエラー信号が生成され、フォーカスサーボ制御回路85は、同フォーカスエラー信号に基づいてフォーカスサーボ信号を生成してドライブ回路86に出力する。ドライブ回路86は、このフォーカスサーボ信号に応じて対物レンズ14の駆動制御を開始する。
次に、作業者は、この対物レンズ14がフォーカスサーボ制御された状態で対物レンズ14の図示X,Y,Z軸方向における位置の補正を行う。具体的には、前述した光ピックアップの位置調整工程と同様に光ピックアップ支持装置20の図示X,Y,Z軸方向調整用の操作子24〜26を操作して光ピックアップ10の位置を補正する。これは、光ピックアップ10に内蔵される対物レンズ14が、ワイヤー等からなる弾性支持部材により弾性的に支持されているため、対物レンズ14がフォーカスサーボ制御されない状態においては、対物レンズ14の自重により図示Z軸方向における弾性支持部材10bの力学的な中立位置から下方にずれた位置にあるためである。
すなわち、この対物レンズ14が前記中立位置から下方にずれた位置にある状態で、前述した光ピックアップの位置調整工程により、光ピックアップ10の図示Z軸方向における位置を決定してフォーカスサーボ制御を開始すると、対物レンズ14は前記中立位置から下方にずれた位置を中心にしてフォーカスサーボ制御されることになる。したがって、作業者は、光ピックアップ支持装置20の図示Z軸方向調整用の操作子26を操作して、光ピックアップ10の図示Z軸方向における位置を、対物レンズ14が前記中立位置からずれている量だけ下方に変位させて、対物レンズ14のフォーカスサーボ制御が、前記中立位置を中心にして行われるようにする。この場合、対物レンズ14の前記中立位置からのずれ量を予め測定しておき、このずれ量を所定値として作業者は、光ピックアップ10の図示Z軸方向における位置を下方に変位させる。
また、これに代えて、対物レンズ14の外周に環状の平面部を設けておき、この平面部を含む対物レンズ14に向けてオートコリメータ50からレーザ光を照射して、同平面部からの反射光をモニタ装置56に表示させる。この場合、図1の破線に示すように、ビームスプリッタ43とオートコリメータ50の間に集光レンズ48を設けることにより、オートコリメータ50から出射された平行光束を対物レンズ14の環状の平面部に照射し、この平面部からの反射光をオートコリメータ50にて受光する。これにより、モニタ装置56上には平面部の傾角に対応して点像が表示され、作業者は、同像がモニタ装置56上の所定の位置になるように光ピックアップ支持装置20の図示Z軸方向調整用の操作子26を操作して、光ピックアップ10の図示Z軸方向における位置を補正することもできる。このような光ピックアップの図示Z軸方向における位置の補正は、対物レンズ14が光ピックアップ10のケーシング10aに対して片持梁によって支持されている場合には特に有効である。なお、この集光レンズ48は、対物レンズ14の位置の補正作業においてのみ用いるものであるから、光ピックアップの調整装置内に設けられた図示しない集光レンズ移動機構により、オートコリメータ50から出射されるレーザ光の光路上または光路外に選択的に配置されるように支持されている。したがって、集光レンズ48が不必要な場合には、図5の破線に示すように、集光レンズ48をオートコリメータ50から出射されるレーザ光の光路外に配置させるようにする。
また、この光ピックアップ10の図示Z軸方向の位置の補正作業によって、図示X、Y軸方向における光ピックアップ10の位置がずれた場合には、スポットアナライザ70に接続されたモニタ装置74に表示される前述した点像を確認しながら光ピックアップ支持装置20の図示X,Y軸方向調整用の操作子24,25を操作して、光ピックアップ10の図示X,Y軸方向における位置を補正する。これにより、対物レンズ14のフォーカスサーボ制御が正確かつ安定的に行われるようになり、対物レンズのフォーカスサーボ制御開始工程が終了する。
次に、作業者は、2方向サーボ制御開始工程に移る。2方向サーボ制御開始工程は、コリメーティングレンズ41の図示X軸方向におけるサーボ制御を開始させるとともに、対物レンズ14の図示Y軸方向におけるサーボ制御を開始させる工程であり、前述した対物レンズのフォーカスサーボ制御開始工程から連続的に行われるものである。具体的には、作業者は、入力装置101を操作してコントローラ100に対して、2方向サーボ制御の開始を指示する。この指示に応答してコントローラ100は、X−Y方向サーボ制御回路95の作動を開始させる。
この場合、ビームスプリッタ47により反射されたレーザ光は、NDフィルタ91および凸レンズ92を介して2次元ポジションセンサ(PSD)93に入射し、2次元ポジションセンサ(PSD)93により対応する点像の重心位置を表す受光信号に変換されて位置計算回路94に供給される。そして、位置計算回路94により、同受光信号に基づいてX方向エラー信号およびY方向エラー信号がそれぞれ生成され、X−Y方向サーボ制御回路95は、同X方向エラー信号および同Y方向エラー信号に基づいてX方向サーボ信号およびY方向サーボ信号をそれぞれ生成しドライブ回路96,97にそれぞれ出力する。ドライブ回路96は、このX方向サーボ信号に応じてコリメーティングレンズ41の図示X方向における駆動制御を開始する。また、ドライブ回路97は、このY方向サーボ信号に応じて対物レンズ14の図示Y方向における駆動制御を開始する。これにより、コリメーティングレンズ41の図示X方向におけるサーボ制御が開始されるとともに、対物レンズ14の図示Y方向におけるサーボ制御が開始され、2方向サーボ制御開始工程が終了する。
次に、作業者は、対物レンズの傾角調整工程に移る。対物レンズ14の傾角調整工程は、光ピックアップ10のレーザ光源11からコリメーティングレンズ12を介して出射されるレーザ光の光軸が、対物レンズ14の光軸と平行に対物レンズ14の傾きを調整する工程であり、前述した2方向サーボ制御開始工程から連続的に行われるものである。具体的には、作業者は、入力装置101を操作してコントローラ100に対して、画像生成装置64の作動の開始を指示する。この指示に応答してコントローラ100は、画像生成装置64の作動を開始させる。
この場合、ビームスプリッタ47を透過したレーザ光は、シャックハートマンセンサ60に入射する。シャックハートマンセンサ60は、ビームスプリッタ47から入射したレーザ光を、NDフィルタ61およびレンズアレイ62を介してCCD撮像素子63上に集光させる。この場合、レンズアレイ62によって複数の点像がCCD撮像素子63上に集光される。CCD撮像素子63は、これらの集光されたレーザ光に対応するビデオ信号を画像生成装置64に出力し、画像生成装置64は、同ビデオ信号に基づいてレーザ光の波面を計算し立体画像として表示するための立体画像データを生成してモニタ装置65に出力する。モニタ装置65は、この立体画像データに基づきレーザ光の波面の様子を立体画像として表示する。
作業者は、モニタ装置65に表示されるレーザ光の波面の様子を確認しながら、波面の立体画像が平坦となるように、光ピックアップ10の図示θx回転方向調整用の傾角調整機構17および図示θy回転方向調整用の傾角調整機構18を操作して、対物レンズ14の図示θx,θy回転方向における傾きを調整する。この場合、対物レンズ14の図示θx,θy回転方向における傾きを調整する過程において、光ピックアップ10から出射されるレーザ光の光軸がシャックハートマンセンサ60のレーザ光の受光範囲から外れた場合には、前述した光ピックアップの位置調整工程に戻って、光ピックアップの位置調整工程から再度各工程の作業を行う。これにより、光ピックアップ10のレーザ光源11からコリメーティングレンズ12を介して出射されるレーザ光の光軸が、対物レンズ14の光軸と平行となる。
このようにして、対物レンズ14の傾きが調整された場合には、作業者は、入力装置101を操作して、コントローラ100に対して、画像生成装置64、フォーカスサーボ制御回路85、X−Y方向サーボ制御回路95およびレーザ駆動回路102のそれぞれの作動の停止を指示する。この指示に応答してコントローラ100は、画像生成装置64、フォーカスサーボ制御回路85、X−Y方向サーボ制御回路95およびレーザ駆動回路102のそれぞれの作動を停止させる。そして、作業者は、光ピックアップ10を光ピックアップ支持装置20のステージ21から取り除き、対物レンズの傾角調整工程が終了する。
なお、続けて他の光ピックアップ10の調整作業を行う場合には、前述した光ピックアップの位置調整工程から作業を開始すればよい。また、他の光学特性を有する光ディスクに用いられる光ピックアップ10の調整を行う場合には、模擬部材保持装置30の操作子35を操作することによって保持プレート32を回転させて、保持プレート32に取り付けられている複数の模擬部材31のうち必要な光学特性を有する1つの模擬部材31をオートコリメータ50から出射されるレーザ光の光軸上に位置させた後、前述した光ピックアップの位置調整工程から作業を開始すればよい。
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、光ピックアップ10から出射されるレーザ光は、対物レンズ14および模擬部材31を介してシャックハートマンセンサ60により受光され、同シャックハートマンセンサ60により受光したレーザ光の波面収差が計測されて、この計測された収差に基づいて計算された波面の様子がモニタ装置65上に表示される。そして、作業者は、モニタ装置65に表示されるレーザ光の波面の様子を確認しながら対物レンズ14の傾きを調整する。このレーザ光の波面収差はレーザ光の可干渉性とは無関係に計測され、かつレーザ光の波面はレーザ光の可干渉性と無関係に観察されるため、レーザ光の可干渉性に影響されることなく対物レンズ14の傾きを調整することができる。また、このレーザ光の波面収差は高開口数のコリメーティングレンズ41を用いることなく計測できるため、対物レンズ14の開口数に影響されることなく対物レンズ14の傾きを調整することができる。
また、このような対物レンズ14の傾角の調整後に、次のような方法により、対物レンズ14の傾角が最良に調整されていることを確認することもできる。例えば、光ディスクの光路長に相当する光路長に対して、所定の光路長だけ長い光路長を有する第1模擬部材と、前記所定の光路長だけ短い光路長を有する第2模擬部材とを順次入れ換えて、光ピックアップ10から出射されるレーザ光をシャックハートマンセンサ60に取り込むようにする。そして、前記第1模擬部材および第2模擬部材を用いた場合におけるレーザ光束の波面が有する収差をそれぞれ計算するとともに、前記対物レンズ14の傾角調整完了時の収差に対する前記計算した両収差の変化量を計算する。そして、これらの計算した両変化量の対称性を確認することにより、対物レンズ14の傾角が最良に調整されていることを確認する。
また、前記第1模擬部材および第2模擬部材を入れ換えて用いるのに代えまたは加えて、前記対物レンズ14の傾角調整完了後に、模擬部材31をθx回転方向および/またはθy回転方向に所定量だけ順次正逆に傾ける。そして、前述のように、各正逆に傾けた状態におけるレーザ光束の波面が有する両収差をそれぞれ計算するとともに、前記計算した両収差の変化量の対称性を確認することにより、対物レンズ14の傾角が最良に調整されていることを確認することもできる。
また、上記実施形態によれば、異なる光学特性を有する複数の模擬部材31を保持するとともに、同模擬部材31の傾きを調整することができる模擬部材傾き調整機構を備えた模擬部材保持装置30を用いて、模擬部材31を光ピックアップ10から出射されるレーザ光の光軸上に配置している。これによれば、異なる光学特性を有する複数の模擬部材31の中から必要とする光学特性を有する模擬部材31を即座に光ピックアップ10およびオートコリメータ50から出射されるレーザ光の光軸上に配置させることができ、作業効率を向上させることができる。また、複数の模擬部材31の他に模擬部材31を有しない1つの貫通孔(開口部)を設けることにより、光ピックアップ支持装置20のステージ21の角度校正工程のような模擬部材31を必要としない場合にも速やかに対応することができる。また、モニタ装置56の表示を確認しながら操作子36,37を操作することにより、保持プレート、すなわち模擬部材31の図示θx,θy回転方向における傾きを簡単に調整することができる。これにより、対物レンズ14の傾き調整精度を向上させることができる。また、この場合、複数の模擬部材31のうちの1つの模擬部材31に対して同傾きを調整することにより、他の複数の模擬部材31の傾きを調整する必要がないため、更に作業効率を向上させることができる。
また、上記実施形態によれば、フォーカスエラー信号生成回路84、フォーカスサーボ制御回路85およびドライブ回路86により、対物レンズ14をフォーカスサーボ制御するとともに、位置計算回路94、X−Y方向サーボ制御回路95およびドライブ回路96,97により、コリメーティングレンズ41の図示X軸方向および対物レンズ14の図示Y軸方向の2方向サーボ制御を行うようにした。これにより、対物レンズの傾角調整工程において、対物レンズ14の図示θx,θy回転方向における位置調整により対物レンズ14の位置が変化しても、常に対物レンズ14の焦点を所定の位置に保持することができ、作業効率を向上させることができる。
さらに、本発明の実施にあたっては、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記実施形態においては、対物レンズ14をフォーカスサーボ制御するとともに、対物レンズ14のY軸方向およびコリメーティングレンズ41のX軸方向の2方向サーボ制御を行うように構成したが、これに限定されるものではない。例えば、光ピックアップ10の構造上、対物レンズ14のX軸方向の振動が少ない場合には、同X軸方向のサーボ制御を省略することもできる。
また、上記実施形態においては、画像生成装置64は、シャックハートマンセンサ60から出力されるビデオ信号に基づいてレーザ光の波面収差を計算して、この計算した波面収差に基づいて計算された波面の様子をモニタ装置65に表示させていたが、これに限定されるものではない。例えば、画像生成装置64は、シャックハートマンセンサ60から出力されるビデオ信号に基づいて、レーザ光の波面とともに、または波面とは別に擬似的な干渉縞を生成したり、レーザ光の非点収差、コマ収差および球面収差をそれぞれ計算して、同計算した波面の立体画像とともに、または波面の立体画像とは別に擬似的な干渉縞、レーザ光の非点収差、コマ収差および球面収差の値をモニタ装置65に表示させるようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、光ピックアップ支持装置20のステージ21の図示X,Y,Z軸方向および図示θx,θy回転方向の調整は、移動装置22の操作子24〜28を手動操作することにより行ったが、これに限定されるものではなく、例えば、入力装置101を介してコントローラ100を操作することにより同調整を行うこともできる。この場合、操作子24〜28に代えて、電動モータなどの駆動装置をステージ21を3軸方向に変位させ、かつ2軸回りに回転させることが可能な移動機構にそれぞれ設けるとともに、同各駆動装置をコントローラ100により制御するように構成する。そして、作業者は、入力装置101を操作してステージ21のX,Y,Z軸方向およびθx,θy回転方向における位置を指定する。この指示に応答してコントローラ100は、ステージ21を同指示された位置に位置するように前記各駆動装置を駆動制御する。
また、上記実施形態においては、光ピックアップ支持装置20のステージ21の図示θx,θy回転方向の変位は、光ピックアップ支持装置20の移動装置22におけるプレート22e,22fを、円弧状に形成されたプレート22f,22g上面をそれぞれ摺動させることによって行ったが、これに限定されるものではない。例えば、図8に示すように、移動装置22におけるプレート22e,22f,22gをそれぞれリンク機構により組み付けて行ってもよい。具体的には、平板状に形成されたプレート22e,22f,22gを、それぞれ4つの引張スプリング121,122(各1つ図示せず)を介して積み重ね、それぞれ上下関係にあるプレート22f,22eおよびプレート22e,22fをそれぞれ4つのリンク123a,123b,124a,124bおよびリンク125a,125b,126a,126bによって連結する。なお、リンク123b,124b,125b,126bはそれぞれリンク123a,124a,125a,126aが取り付けられているプレート22e,22f,22gの各側面の反対側の側面に取り付けられるため図示されない。
この場合、それぞれ2つのリンク123a(123b),124a(124b)、125a(125b),126a(126b)は互いに非平行な状態でそれぞれ取り付けられる。具体的には、リンク123a(123b)は、図示Z軸方向と平行な向きで取り付けられているが、リンク124a(124b)は、図示Z軸方向に対して図示Y軸方向に傾いた状態で取り付けられている。また、リンク125a(125b)は、図示Z軸方向と平行な向きで取り付けられているが、リンク126a(126b)は、図示Z軸方向に対して図示X軸方向に傾いた状態で取り付けられている。これらにより、プレート22eはリンク125a(125b)側を支点としてリンク126a(126b)側が図示θy回転方向に変位可能となるとともに、プレート22fはリンク123a(123b)側を支点としてリンク124a(124b)側が図示θx回転方向に変位可能となる。なお、プレート22e,22fは、引張スプリング121,122により、常に下方に付勢された状態となっている。
また、プレート22e,22fのそれぞれ図示θy,θx回転方向に変位する側の側面中央部には、円柱状のカムフォロア127a,127bが回転可能に組み付けられており、このカムフォロア127a,127bの各円周面にそれぞれカム128a,128bが接している。これらのカム128a,128bは、それぞれモータ129a,129bにシャフトを介して接続されており、モータ129a,129bの回転により、それぞれ回転するようになっている。モータ129a,129bは図示しない制御装置(例えば、コントローラ100)にそれぞれ接続されており、その回転が制御される。したがって、モータ129a,129bの回転によるカム128a,128bの回転変位により、カムフォロア127a,127bがそれぞれ下方に引かれることによって、プレート22e,22fは、引張スプリング121,122の弾性力に抗して図示θy,θx回転方向に変位する。これにより、作業者は、制御装置を操作することにより、ステージ21を図示θy,θx回転方向に変位させることができる。
なお、モータ129a,129bに代えて、手動操作用操作子をカム128a,128bに取り付け、上記実施形態のように作業者による手動操作によりプレート22e,22f、すなわちステージ21の傾きを調整するようにしてもよい。また、このような移動装置22は、上記実施形態における模擬部材保持装置30の模擬部材傾き調整機構にも適用できるものである。
また、上記実施形態においては、光ピックアップ10に備えられたフォーカスアクチュエータ15およびトラックアクチュエータ16に、ドライブ回路86およびドライブ回路97を接続するとともに、光ピックアップの調整装置に備えられたコリメーティングレンズアクチュエータ41にドライブ回路96を接続して、対物レンズ14の焦点位置のフォーカスサーボ制御およびシャックハートマンセンサ60に取り込まれる光軸の図示X,Y軸方向における2方向サーボ制御を行ったが、これに限定されるものではない。例えば、光ピックアップ支持装置20のステージ21を図示X,Y,Z軸方向にそれぞれサーボ制御するようにしてもよい。この場合、図1の破線に示すように、光ピックアップ支持装置20内にステージ21を図示X,Y,Z軸方向にそれぞれ駆動するX軸方向アクチュエータ44’、Y軸方向アクチュエータ16’およびZ軸方向アクチュエータ15’を設け、これらX軸方向アクチュエータ44’、Y軸方向アクチュエータ16’およびZ軸方向アクチュエータ15’に、ドライブ回路96,97,86をそれぞれ接続して対物レンズ14の焦点位置のフォーカスサーボ制御およびシャックハートマンセンサ60に取り込まれる光軸の図示X,Y軸方向における2方向サーボ制御を行うようにする。
また、上記実施形態においては、図示X,Y,Z軸方向および図示θx,θy回転方向の5軸方向にステージ21を変位させることができる光ピックアップ支持装置20を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、図示X,Y,Z軸方向の3軸または図示θx,θy回転方向の2軸方向にステージ21を変位させることができる光ピックアップ支持装置20としてもよい。
また、上記実施形態においては、1つのオートコリメータ50を用いて、光ピックアップ支持装置20のステージ21の傾きおよび模擬部材31の傾きを調整するようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、光ピックアップ支持装置20のステージ21の傾きを調整するオートコリメータ50および模擬部材31の傾きを調整するオートコリメータ50をそれぞれ備えるようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、オートコリメータ50、シャックハートマンセンサ60およびスポットアナライザ60に内蔵される受光素子としてCCD撮像素子55,63,73を用いた。しかし、これらのCCD撮像素子55,63,73いずれか1つまたは複数を、例えば、CMOS撮像素子などの受光素子で構成してもよい。また、オートコリメータ50およびスポットアナライザ70においては、CCD撮像素子55,73に代えて、2次元ポジションセンサ(PSD)を用いるようにしてもよい。この場合、2次元ポジションセンサ(PSD)の出力をオシロスコープに表示させるようにすればよい。
また、上記実施形態においては、複数の模擬部材31を保持する保持プレート32を円盤状に形成して、この保持プレート32を操作子35を回転操作することにより、1つの模擬部材31を光ピックアップ10から出射されるレーザ光の光軸上に配置するようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、図9に示すように、保持プレート32を長方形状に形成し、この長方形状に形成した保持プレート32’の長手方向に複数の模擬部材31を保持させるようにしてもよい。
この場合、保持プレート32’を、保持プレート32’の長手方向に変位させることができる機構、例えば、図に示すように、保持プレート32の下面に固着したナット38aにスクリューロッド38bが螺合してなるネジ送り機構を設け、このネジ送り機構のスクリューロッド38bの一端にモータ39を接続する。このモータ39は、制御装置、例えばコントローラ100に接続されており、その回転が制御される。保持プレート32’は、このモータ39の回転駆動によりスクリューロッド38bの軸線方向に変位し、1つの模擬部材31を光ピックアップ10から出射されるレーザ光の光軸上に配置するように位置決めされる。また、前記スクリューロッド38bの一端にモータ39に代えて、手動操作用操作子を設け、同操作子を操作することによって、1つの模擬部材31を光ピックアップ10から出射されるレーザ光の光軸上に配置するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、保持プレート32に複数の貫通孔を設けて、この貫通孔に模擬部材31を取り付けていたが、これに限定されるものではない。例えば、保持プレート32の周方向に沿って、外周上に複数の切欠部を設けて、これらの切欠部に模擬部材31を取り付けるようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、保持プレート32を模擬部材保持装置30の支持部33aに回転可能な状態で支持させるようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、保持プレート32を模擬部材保持装置30の支持部33aに対して着脱可能な状態で支持させるようにしてもよい。
また、上記実施形態およびその変形例におけるレーザ光の観測装置としてのシャックハートマンセンサを、干渉計またはスポットアナライザで置換することでも可能である。
観測装置として干渉計を用いた光ピックアップの調整装置においては、図10に示すように、シャックハートマンセンサ60に代えて干渉計130を配置するとともに、画像生成装置64に代えて画像生成装置140を配置する。なお、対物レンズ14をフォーカスサーボ制御するためのフォーカスエラー信号生成回路84、フォーカスサーボ制御回路85およびドライブ回路86を設けるとともに、コリメーティングレンズ41の図示X軸方向および対物レンズ14の図示Y軸方向の2方向サーボ制御を行うための位置計算回路94、X−Y方向サーボ制御回路95およびドライブ回路96,97は、上記実施形態と同じ構成でよい。
干渉計130は、ハーフミラー131a,131b、ミラー132a,132b、凸レンズ133,134,135,136、ピンホール137およびCCD撮像素子138から構成されており、ビームスプリッタ45,46,47を介して入射するレーザ光を2つの異なる光路にそれぞれ導いた後、再び重ね合わせ光路差により発生する干渉縞を計測する計測器である。ハーフミラー131aは、入射したレーザ光の一部を入射方向と同一方向に透過させるとともに、他の一部を入射方向と直角方向に反射させる光学素子である。
このハーフミラー131aを透過したレーザ光の光軸上には、ミラー132a、凸レンズ133、ピンホール137、凸レンズ134およびハーフミラー131bが設けられている。ミラー132aは、入射したレーザ光を入射方向と直角方向に全反射させる反射板である。凸レンズ133は、ミラー132aにより反射されたレーザ光をピンホール137上に集光させるコンデンサレンズである。ピンホール137は、平板状に形成された板面の中央部に設けられた小さな孔(4〜20μm)であり、前記凸レンズ133から出射したレーザ光を集光し、同集光された点像の中心部のみを透過させて、同レーザ光の収差を除去する光学素子である。凸レンズ134は、ピンホール137を透過したレーザ光をハーフミラー131bを介してCCD撮像素子138上に参照光として導くためのリレーレンズである。ハーフミラー131bは、凸レンズ134から出射したレーザ光を直角方向に反射させ、同レーザ光をCCD撮像素子138に導くとともに、後述するミラー132bにより反射されたレーザ光を透過させて同CCD撮像素子138に導く光学素子である。すなわち、凸レンズ134から出射したレーザ光とミラー132bにより反射されたレーザ光を重ね合わせてCCD撮像素子138に導くものである。
一方、ハーフミラー131aにより反射されたレーザ光の光軸上には、コンデンサレンズとしての凸レンズ135、リレーレンズとしての凸レンズ136、ミラー132bおよびハーフミラー131bが設けられている。凸レンズ135は、ハーフミラー131aにより反射されたレーザ光を集光させる光学レンズである。凸レンズ136は、凸レンズ135によって一旦集光されたレーザ光を入射して、同レーザ光をミラー132bおよびハーフミラー131bを介してCCD撮像素子138上に被測定光として導くためのリレーレンズである。ミラー132bは、前記ミラー132aと同様に、入射したレーザ光を入射方向と直角方向に全反射させる反射板である。すなわち、ハーフミラー131aにより反射されたレーザ光は、その収差が除去されない状態でCCD撮像素子138に導かれる。
CCD撮像素子138は、前記凸レンズ134,136によりコリメート光束に変換された2つの光束をハーフミラー131bにより重ね合わせ、干渉縞を取り込む撮像器である。このCCD撮像素子138によって撮像される干渉縞は、ピンホール137により収差が除去されたレーザ光と、ピンホール137を介さずに収差が除去されないレーザ光が重ね合わされた2つの光束の干渉縞である。このCCD撮像素子138によって撮像された干渉縞、すなわちビデオ信号は画像生成装置140に供給される。
画像生成装置140は、コントローラ100によって制御されて、CCD撮像素子138から出力されるビデオ信号を基にレーザ光の干渉縞を解析して収差量などの解析結果を算出したり、波面の立体画像データを生成する装置である。この画像生成装置140により算出された解析結果および生成された画像データは、ビデオ信号とともにモニタ装置65に出力され、同モニタ装置65によりレーザ光の干渉縞、レーザ光の波面の立体画像および解析結果が表示される。
このような観測装置として干渉計130を用いた光ピックアップの調整装置の使用に際して作業者は、上記実施形態と同様の手順により対物レンズの傾角調整工程まで作業を行う。そして、対物レンズの傾角調整工程において作業者は、モニタ装置65に表示されるレーザ光の干渉縞の様子や生成されたレーザ光の波面の立体画像および表示された収差を確認しながら、同干渉縞が所定の規格内となるように、光ピックアップ10の図示θx回転方向調整用の傾角調整機構17および図示θy回転方向調整用の傾角調整機構18を操作して、対物レンズ14の図示θx,θy回転方向における傾きを調整する。
これによれば、観測装置として干渉計130を用いた光ピックアップの調整装置においても、異なる光学特性を有する複数の模擬部材31の中から必要とする光学特性を有する模擬部材31を即座に光ピックアップ10およびオートコリメータ50から出射されるレーザ光の光軸上に配置させることができ、作業効率を向上させることができる。また、複数の模擬部材31の他に模擬部材31を有しない1つの貫通孔(開口部)を設けることにより、光ピックアップ支持装置20のステージ21の角度校正工程のような模擬部材31を必要としない場合にも速やかに対応することができる。また、モニタ装置56の表示を確認しながら操作子36,37を操作することにより、保持プレート、すなわち模擬部材31の図示θx,θy回転方向における傾きを簡単に調整することができる。この場合、複数の模擬部材31のうちの1つの模擬部材31に対して同傾きを調整することにより、他の複数の模擬部材31の傾きを調整する必要がないため、更に作業効率を向上させることができる。
また、フォーカスエラー信号生成回路84、フォーカスサーボ制御回路85およびドライブ回路86により、対物レンズ14をフォーカスサーボ制御するとともに、位置計算回路94、X−Y方向サーボ制御回路95およびドライブ回路96,97により、コリメーティングレンズ41の図示X軸方向および対物レンズ14の図示Y軸方向の2方向サーボ制御を行うようにした。これにより、対物レンズの傾角調整工程において、対物レンズ14の図示θx,θy回転方向における位置調整により対物レンズの位置が変化しても、常に対物レンズ14より出射されたレーザ光の点像を所定の位置に保持することができ、作業効率を向上させることができる。
また、観測装置としてスポットアナライザを用いた光ピックアップの調整装置においては、図11に示すように、シャックハートマンサンサ60に代えてスポットアナライザ70’を配置するとともに、画像生成装置65に代えて画像生成装置150を配置する。この場合、図1におけるスポットアナライザ70はスポットアナライザ70’によって兼用できるため、スポットアナライザ70およびモニタ装置74は不要である。したがって、ビームスプリッタ45を透過したレーザ光の光軸上には、凸レンズ81、シリンドリカルレンズ82および4分割フォトディテクタ83が設けられるとともに、4分割フォトディテクタ83には、フォーカスエラー信号生成回路84が接続されている。また、ビームスプリッタ46により反射されたレーザ光の光軸上には、NDフィルタ91、凸レンズ92および2次元ポジションセンサ93が設けられているとともに、2次元ポジションセンサ93には、位置計算回路94が接続されている。そして、ビームスプリッタ46を透過したレーザ光の光軸上には、スポットアナライザ70’が設けられているとともに、スポットアナライザ70’には画像生成装置150が接続されている。
スポットアナライザ70’は、上記実施形態におけるスポットアナライザ70と同じ構成であるので説明は省略する。すなわち、NDフィルタ71はNDフィルタ71’に対応しており、集光レンズ72は集光レンズ72’に対応しており、CCD撮像素子73はCCD撮像素子73’に対応している。画像生成装置150は、コントローラ100によって制御されて、CCD撮像素子138から出力されるビデオ信号を用いてレーザ光のスポット形状を0次光画像および1次回折光によるリング状画像として表示するための画像データを生成する装置である。この画像生成装置150により生成された画像データは、モニタ装置65に出力され、同モニタ装置65によりレーザ光のスポット形状の様子が0次光画像および1次回折光によるリング状画像として表示される。
このような観測装置としてスポットアナライザ70’を用いた光ピックアップの調整装置の使用に際して作業者は、上記実施形態と同様の手順により対物レンズの傾角調整工程まで作業を行う。そして、対物レンズの傾角調整工程において作業者は、モニタ装置65に表示されるレーザ光の0次光画像およびリング画像を確認しながら、同0次光画像およびリング画像が所定の形状となるように、光ピックアップ10の図示θx回転方向調整用の傾角調整機構17および図示θy回転方向調整用の傾角調整機構18を操作して、対物レンズ14の図示θx,θy回転方向における傾きを調整する。
これによれば、観測装置としてスポットアナライザ70’を用いた光ピックアップの調整装置においても、上記観測装置として干渉計を用いた場合と同様に、複数の模擬部材31の中の1つを選択切り替え可能にし、複数の模擬部材31の他に模擬部材31を有しない1つの貫通孔(開口部)を設け、対物レンズ14をフォーカスサーボ制御し、かつ対物レンズ14の図示X軸方向およびコリメーティングレンズ41の図示Y軸方向の2軸方向サーボ制御を行うようにしたので、対物レンズの傾き調整精度が向上するとともに作業効率も向上させることができる。
さらに、上記シャックハートマンセンサ60、干渉計130およびスポットアナライザ70’に代えて、複数の円形開口および凸レンズと同凸レンズの焦点位置に配置された撮像素子にて構成されたハートマンセンサを観測装置として用いてもよい。
10…光ピックアップ、11…レーザ光源、14…対物レンズ、15…フォーカスアクチュエータ、16…トラックアクチュエータ、20…光ピックアップ支持装置、21…ステージ、30…模擬部材保持装置、31…模擬部材、32…保持プレート、41…コリメーティングレンズ、43…コリメーティングレンズアクチュエータ、50…オートコリメータ、56…モニタ装置、60…シャックハートマンセンサ、64…画像生成装置、65…モニタ装置、70…スポットアナライザ、74…モニタ装置、84…フォーカスエラー信号生成回路、85…フォーカスサーボ制御回路、94…位置計算回路、95…X−Y方向サーボ制御回路、100…コントローラ。