JP4452121B2 - 高分子分散剤 - Google Patents
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Description
ところが着色剤が顔料であるインクは、顔料の分散が難しく、保存安定性が問題となることが多く、更に、染料と比較して、光沢性に劣るという問題点がある。
これを解決するため、ポリオキシエチレングリコール鎖を有するアクリル系モノマーを数種併用したポリマーを分散剤として用いることが開示されている(例えば、特許文献1参照)が、更に優れた光沢性を有するインクが求められている。
また、インククジェット用のインクに適する、リン酸基を含む樹脂を含有した顔料組成物(例えば、特許文献2参照)およびリン酸系の分散剤及びインクジェット記録用水系インクが開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、これらはいずれも光沢性が十分であるとは言い難い。
(高分子分散剤)
本発明の高分子分散剤は、前記一般式(1)で表される構成単位を含有するビニルポリマーからなる。一般式(1)において、R1は、水素原子又はメチル基を示すが、好ましくはメチル基である。M1、M2は、それぞれ、水素原子又は陽イオンを示し、少なくともその一部が陽イオンであることが好ましく、該ビニルポリマーが水分散性を有するようになっているものをいう。陽イオンとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、オニウム化合物又は塩基性アミノ酸等を挙げることができる。
アルカリ金属の好ましい例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられ、その中でもナトリウム及びカリウムが好ましい。アルカリ土類金属の好ましい例としては、マグネシウム及びカルシウムが挙げられる。
オニウム化合物としては、15族原子のオニウム化合物が好ましく、中でも窒素原子及びリン原子のオニウム化合物が好ましい。窒素原子のオニウム化合物としては、アンモニウム、イミダゾリニウム、総炭素数1〜22のアルキルもしくはアルケニルアンモニウム、炭素数1〜22のアルキルもしくはアルケニル置換ピリジニウム、総炭素数1〜22のアルカノールアンモニウムが好ましく、リン原子のオニウム化合物としては、ホスホニウムが好ましい。オニウム化合物としては、一級、二級、三級、四級のいずれの化合物でもよい。
前記一般式(1)において、pは2〜6、qは1〜4、rは2〜10、sは1〜30の範囲であれば任意であるが、インクの分散安定性発現の点から、好ましくはpは2〜4、qは1〜2、rは2〜8、sは1〜10であり、更に好ましくはpは2〜3、qは1、rは1〜6、sは1〜3である。
本発明の高分子分散剤に用いられるビニルポリマーは、更に疎水性構成単位を含有するものが好ましい。前記ビニルポリマー中、疎水性構成単位の含有量は、インクの分散安定性発現の点から、40〜98重量%が好ましく、50〜90重量%が更に好ましい。ここで、疎水性構成単位は、後述する疎水性モノマー由来の構成単位である。
また、着色剤への吸着性を向上させる観点から、本発明の高分子分散剤に用いられるビニルポリマーは、水不溶性であることが好ましい。「水不溶性」とは、本発明のビニルポリマーの未中和品を、温度25℃で水100gに溶解させたときに、その溶解量が2g未満であることをいう。本発明の高分子分散剤の酸価(KOHmg/g)は、安定な分散体とするために、5〜200が好ましく、10〜130が更に好ましい。
本発明の高分子分散剤に用いられるビニルポリマーの製造方法については何ら制限はなく、下記一般式(2)で表されるモノマー(A)、疎水性モノマー(B)、及び必要により他の共重合可能なモノマー(C)からなるモノマー混合物(以下、単にモノマー混合物という)を公知の方法でラジカル共重合させて得るのが簡便で好ましい。
好ましいR1、M1、M2、p、q、r、sも、前記と同じである。
一般式(2)で表されるモノマー(A)は、例えば、CH2=CR1C(O)O−[(CH2)p−O]qHで表わされるヒドロキシ基含有モノマーと、好ましくは炭素数2〜10のラクトンとを反応させ、得られた反応物をオキシ塩化リンと反応させることで得られる。
前記ヒドロキシ基含有モノマーと前記ラクトンとの反応モル比は、好ましくは、前記ヒドロキシ基含有モノマー1モルに対して、前記ラクトンを1〜3モル、温度は、好ましくは、50〜130℃で反応させる。得られた反応物は、アルカリ触媒の存在下、オキシ塩化リンと反応させる。反応モル比は、好ましくは、前記反応物1モルに対して、前記オキシ塩化リンを1モル、温度は、好ましくは、−30〜−20℃で反応させる。
疎水性モノマー(B)としては、共重合可能な疎水性モノマーであれば任意のものが使用可能であり、アルキル(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー、マクロマー等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等のエステル部分が炭素数1〜30、好ましくは1〜18のアルキル基である(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
該マクロマーの具体例としては、片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するシリコーン系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するメチルメタクリレート系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するブチルアクリレート系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するイソブチルメタクリレート系マクロマー等が挙げられる。これらの中では、ビニルポリマーに顔料を十分に含有させるようにする観点から、片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマーが好ましい。
片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマーとしては、片末端に重合性官能基を有するスチレン単独重合体及び片末端に重合性官能基を有する、スチレンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
片末端に重合性官能基を有する、スチレンと他のモノマーとの共重合体における、他のモノマーとしては、アクリロニトリル等が挙げられる。また、その共重合体中のスチレンの含有量は、顔料が十分にビニルポリマーに含有されるようにする観点から、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマーの中では、片末端に重合性官能基としてアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有するスチレン系マクロマーが好ましい。
商業的に入手しうるスチレン系マクロマーとしては、例えば、東亜合成(株)製の商品名、AS-6, AS-6S, AN-6, AN-6S, HS-6,HS-6S等が挙げられる。
X(Y1)uSi(R2)3-v(Z)v (3)
(式中、Xは重合可能な不飽和基、Y1は2価の結合基、R2はそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、アリール基又はアルコキシ基、Zは500以上の数平均分子量を有する1価のシロキサンポリマーの残基、uは0又は1、vは1〜3の整数を示す)
なお、マクロマーの数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミン含有クロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
必要により用いられる他の共重合可能なモノマー(C)としては、親水性ノニオン性モノマー及び前述の一般式(2)で表わされるモノマー(A)以外の塩生成基含有モノマー等が挙げられる。
親水性ノニオン性モノマーとしては、一般式(4)で表される化合物、及び/又は(メタ)アクリルアミド系モノマーを用いるのがよい。
CH2=C(R3)C(O)O(Y2O)k−R4 (4)
(ここで、Y2は、炭素数2〜3の分岐していてもよいアルキレン基であり、kは2〜100の数を示し、R3は、水素原子又はメチル基であり、R4は、水素原子又は分岐していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基もしくはアラルキル基を表す。)
このとき、Y2,R3,R4のうち少なくとも一つが異なるものを、任意に組み合わせて用いてもよい。k個のY2は、同一又は異なっていてもよく、ブロック結合、ランダム結合のいずれであってもよい。kは2〜30が好ましい。R4は、水素原子、メチル基もしくは2−エチルヘキシル基であることが好ましい。
一般式(4)で表される化合物の具体例は、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレートなどが挙げられる。
本発明の高分子分散剤として用いられるビニルポリマー中、一般式(1)で表される構成単位と他の構成単位との連鎖の様式については特に制限はなく、ランダム結合、ブロック結合、グラフト結合、及びこれらの組み合わせのいずれでもよい。
溶液重合法で用いる溶媒としては、特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましい。また、極性有機溶媒を水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;等が挙げられる。これらの中では、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルメチルケトン又はこれらと水との混合液が好ましい。
なお、重合の際には、ラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、2,2’―アゾビスイソブチロニトリル、2,2’―アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’―アゾビスブチレート、2,2’―アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'―アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物が好適である。また、t-ブチルペルオキシオクトエート、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド等の有機過酸化物を使用することもできる。
ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物に対して、好ましくは0.001〜5モル%、より好ましくは0.01〜2モル%である。
本発明の高分子分散剤として用いられるビニルポリマーの重量平均分子量は、特に何ら制限はないが、1,000〜1,000,000が好ましく、更には、2,000〜500,000の範囲であるのが好ましい。分子量の調整は連鎖移動剤を重合系に共存させてもよい。重量平均分子量は、標準物質としてポリスチレン、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミン含有クロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量である。
このようにして得られたビニルポリマーはそれのみで水分散性を有するものと有しないものとがあり、後者の場合はさらに、中和剤を用いてリン酸基を中和して水分散性とすることによって高分子分散剤が得られる。リン酸基の中和度は、10〜200%であることが好ましく、さらには20〜150%、特には50〜150%であることが好ましい。
中和剤としては、前記陽イオンを形成する塩基性物質が挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、トリエタノールアミン、アンモニア等のオニウム化合物等が例示される。
中和度は、下記式によって求めることができる。
[N(g)/Nの当量]/[ポリマーの酸価(KOHmg/g)×ポリマーの重量(g)/(56×1000)]×100
ここでN(g)は、中和剤の重量を意味し、Nの当量は、前記中和剤の当量を意味する。
本発明のインクジェット記録用水分散体及び水系インクは、前記高分子分散剤、水、着色剤を含有する。なお、「インクジェット記録用水系インク」における「水系」とは、水系インクに含まれる溶媒中、水が最大割合を占めていることを意味するものであり、水100重量%でも良いし、前記要件を満たすものであれば、水と1種又は2種以上の有機溶媒との混合物も含まれる。
着色剤は染料、顔料のいずれでもよい。また、両者を任意の比率で混合して用いることもできる。中でも、近年要求が強い高耐候性の発現には、顔料を用いるのがよい。
顔料は、有機顔料及び無機顔料のいずれであってもよい。また、必要に応じて、それらに体質顔料を併用することもできる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー 13, 17, 74, 83, 97,109, 110,120, 128,139, 151,154,155,174,180;C.I. ピグメント・レッド 48, 57:1, 122, 146,176,184, 185,188, 202;C.I.ピグメント・バイオレット 19,23;C.I. ピグメント・ブルー 15, 15:1, 15:2, 15:3, 15:4, 16,60;C.I. ピグメント・グリーン 7, 36;等が挙げられる。
体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム及びタルク等が挙げられる。
油性染料としては、特に限定されるものではないが、例えば、C.I.ソルベント・ブラック3, 7, 27, 29, 34,45;C.I.ソルベント・イエロー14, 16, 29, 56, 82,83:1;C.I.ソルベント・レッド1, 3, 8, 18, 24, 27, 43, 49,51, 72, 73;C.I.ソルベント・バイオレット 3;C.I.ソルベント・ブルー2,4, 11, 44,64,70;C.I.ソルベント・グリーン3, 7;C.I.ソルベント・オレンジ2;等が挙げられる。
本発明の水分散体及び水系インク中における高分子分散剤の含有率は、着色剤の分散性の点から、1〜20重量%が好ましく、2〜10重量%がさらに好ましく、水の含有率は、40〜90重量%が好ましく、50〜80重量%が更に好ましい。
本発明の高分子分散剤と着色剤の量比については、印字濃度を高める観点から、高分子分散剤の固形分100重量部に対して、着色剤は、20〜1,000重量部が好ましく、より好ましくは40〜800重量部、更に好ましくは60〜600重量部である。
製造方法の一例として、先ず本発明の高分子分散剤を有機溶媒に溶解させ、次に着色剤、水、及び必要に応じてアルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはアルカノールアミンのような中和剤、界面活性剤等を、前記有機溶媒に加えて混合した後、必要に応じて最適な混錬機や分散機を用いて所望の分散度に応じて分散させる。得られた分散体から有機溶媒を留去して水分散体を得ることができる。ここで用いられる有機溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられ、これらの中では、アセトン及びメチルエチルケトンがより好ましい。得られた水分散体の平均粒径は、分散安定性の観点から、0.01〜1μmが好ましく、0.02〜0.5μmがより好ましい。
この他の製造方法として、高分子分散剤、着色剤、水、及び必要に応じてアルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはアルカノールアミンのような中和剤、界面活性剤等を、混合した後、必要に応じて分散機を用いて分散させてもよい。
この水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体に、インクジェット記録用水系インクに通常用いられる湿潤剤、浸透剤、分散剤、粘度調整剤、消泡剤、防黴剤、防錆剤等を添加して水系インクとすることができる。この際、各成分の添加量も任意であり、要求される性能を発現するために最適な量を用いれば良い。本発明の水系インクのpHは、4〜10が好ましい。
(1)光沢性
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製,型番EM930C)を用い、専用紙として市販のMC光沢紙を用いてこれにベタ印字し、25℃で1時間放置後、光沢を光沢計(日本電飾(株)製、商品名:HANDY GLOSSMETER,品番:PG−1)で測定し、60°光沢度について以下の基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
◎:光沢が40以上
○:光沢が35以上40未満
△:光沢が30以上35未満
×:光沢が30未満。
(2)平均粒径
平均粒径は、大塚電子(株)製のELS−8000を用いて測定する。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333) を入力する。また標準物質としてセラディン(Seradyn) 社製のユニフォーム・マイクロパーティクルズ (平均粒径204nm)を用いる。
(3)保存安定性
前記大塚電子(株)製、レーザー粒子解析システムELS−8000(キュムラント法)を用い、インクに含まれている着色剤を含有するポリマー粒子の平均粒径(以下、「保存前の平均粒径」という)を測定した。次に、実施例1、比較例1、2のインク各1gをガラスカップにとり、圧力0.02MPa、温度40℃の条件で12時間保存後、同様の方法にて平均粒径(以下、「保存後の平均粒径」という)を測定した。分散安定性の指標として、
分散安定度(%)=(〔保存後の平均粒径〕/〔保存前の平均粒径〕)×100
に従って求め、以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
○:250未満 実用上の支障全く無し
△:250以上350未満 実用上支障無し
×:350以上 実用上支障あり
オキシ塩化リン36.8g(0.24mol)を70mlのエチルエーテルに溶かし、300mlの4口反応容器に入れ、−20〜−30℃まで冷却した。ジ(ε-カプロラクトキシ)エチルメタクリレート[ダイセル化学工業(株)製プラクセルFM2D、水酸
基価153.8KOHmg/g]73g(0.2mol)とトリエチルアミン24.2g(0.24mol)をエチルエーテル70mlに溶解させ滴下ロートに入れ、反応容器に接続した。オキシ塩化リン溶液を攪拌し、乾燥窒素ガスを吹き込みながら約2時間かけて、ジ(ε-カプロラクトキシ)エチルメタクリレートとトリエチルアミンの溶液をオキシ塩化リン溶液に滴下した。滴下後、−20℃以下の温度で3時間攪拌し、リン酸エステル中間体を合成した。その後、0℃へ昇温し、生成したトリエチルアミン塩酸塩をろ過により取り除く。ろ液に、イオン交換水20gを加え、ヒドロキノンモノメチルエーテル20mgを加え、40℃で2時間撹拌を行った。減圧下、エチルエーテルを留去し、得られた液体を200mlのイオン交換水に分散させ、液がアルカリ性を示すまで炭酸ナトリウムを添加した。該水溶液を分液ロートに入れクロロホルムで3回洗浄を行った。次に該水溶液に6mol/Lの塩酸水溶液をpHが1以下になるまで加え、酢酸エチルで該水溶液から3回抽出を行い、得られた酢酸エチル溶液を集め硫酸ナトリウムで乾燥後、ヒドロキノンモノメチルエーテル20mgを加え、減圧下濃縮を行い、アシッドホスホオキシジ(ε-カプロラクトキシ)エチルメタクリレートの粗生成物淡黄色液体50gを得た。
該液体をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=20:1)で精製を行い、ヒドロキノンモノメチルエーテル20mgを加え、有機溶媒を留去することでアシッドホスホオキシジ(ε-カプロラクトキシ)エチルメタクリレート45gを得た。得られたモノマーが、リン酸基を有していることは31P−NMRにより確認した。また、酸価は、224.0KOHmg/gであった。
合成例1において、ジ(ε-カプロラクトキシ)エチルメタクリレート73gの代わりにモノ(ε-カプロラクトキシ)エチルメタクリレート[ダイセル化学工業(株)製プラ
クセルFM1、水酸基価224.6KOHmg/g]50gを用いた他は合成例1と同様にして、アシッドホスホオキシモノ(ε-カプロラクトキシ)エチルメタクリレートモノマー35g(酸価287KOHmg/g)を得た。
合成例1において、ジ(ε-カプロラクトキシ)エチルメタクリレート73gの代わりにトリ(ε-カプロラクトキシ)エチルメタクリレート[ダイセル化学工業(株)製プラ
クセルFM3、水酸基価118.3KOHmg/g]95gを用いた他は合成例1と同様にして、アシッドホスホオキシモノ(ε-カプロラクトキシ)エチルメタクリレートモノマー50g(酸価200.0KOHmg/g)を得た。
反応容器内に、メチルエチルケトン10重量部及び2−メルカプトエタノール0.03重量部、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート2.5重量部、スチレンマクロモノマー溶液3重量部、スチレンモノマー4.6重量部、合成例1で得られたモノマー1.4重量部を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロートに、2−メルカプトエタノール0.27重量部、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート22.5重量部、スチレンマクロモノマー溶液27重量部、スチレンモノマー41.4重量部、合成例1で得られたモノマー12.6重量部、メチルエチルケトン50重量部及び2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2重量部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から2時間経過後、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3重量部をメチルエチルケトン5重量部に溶解した溶液を加え、更に75℃で2時間、またさらに2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3重量部をメチルエチルケトン5重量部に溶解した溶液を加え80℃で1時間熟成させることで、一般式(1)で表される構成単位として、M1、M2が水素原子、pが2、qが1、rが5、sが2であり、酸価31KOHmg/gのビニルポリマーを得た。
標準物質としてポリスチレン、溶媒として1mmo1/Lのドデシルジメチルアミン含有クロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、得られたポリマーの重量平均分子量を測定した。その結果、重量平均分子量は38,000であった。
なお、上記で使用した化合物の詳細は、以下のとおりである。
メチルエチルケトン、2−メルカプトエタノール:和光純薬社製試薬 一級
2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル):和光純薬社製 V−65
スチレンマクロモノマー溶液:東亜合成(株)製、商品名、AS−6S(スチレンマクロモノマー)、固形分50重量%、数平均分子量:6,000
ポリプロピレングリコールモノメタクリレート:アルドリッチジャパン(株)製試薬(数平均分子量:375)
スチレンモノマー:和光純薬工業社製試薬 特級
合成例4において、合成例1で得られた化合物の代わりに合成例2で得られた化合物を用いた他は合成例4に準拠して、一般式(1)で表される構成単位として、M1、M2が水素原子、pが2、qが1、rが5、sが1のビニルポリマー(酸価40KOHmg/g)を得た。得られたポリマーの重量平均分子量は33,200であった。
合成例4において、合成例1で得られた化合物の代わりに合成例3で得られた化合物を用いた他は合成例4に準拠して、一般式(1)で表される構成単位として、M1、M2が水素原子、pが2、qが1、rが5、sが3のビニルポリマー(酸価28KOHmg/g)を得た。得られたポリマーの重量平均分子量は25,700であった。
合成例4において、合成例1で得られたモノマーを用いる代わりにアシッドホスホノキシポリプロピレングリコールメタクリレート(ユニケミカル社製ホスマーPP(酸価238KOHmg/g))を用いる以外は合成例4に準拠してポリマー(酸価33KOHmg/g)を得た。重量平均分子量は50,000であった。
反応容器内に、メチルエチルケトン10重量部及び2−メルカプトエタノール0.03重量部、スチレンマクロモノマー溶液3重量部、スチレンモノマー6.5重量部、メタクリル酸1.4重量部を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロートに、2−メルカプトエタノール0.27重量部、スチレンマクロモノマー溶液27重量部、スチレンモノマー63重量部、メタクリル酸12.6重量部、メチルエチルケトン50重量部及び2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2重量部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に滴下する。滴下終了から2時間経過後、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3重量部をメチルエチルケトン5重量部に溶解した溶液を加え、更に75℃で2時間、またさらに2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3重量部をメチルエチルケトン5重量部に溶解した溶液を加え80℃で1時間熟成させることで、カルボキシル基を有するポリマー(酸価91KOHmg/g)を得た。
標準物質としてポリスチレン、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミン含有クロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、得られたカルボキシ基を有するポリマーの重量平均分子量を測定した。重量平均分子量は35,000であった。
なお、用いた原料は、合成例4で用いたものと同じである。
合成例4で得られたビニルポリマー15重量部(固形分)を、メチルエチルケトン25重量部に溶かし、その中に中和剤(5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液、和光純薬社製、容量分析用)1.3重量部(中和度50%)を加え、更に着色剤としてカーボンブラックモナーク800(キャボット社製)35重量部を加えた。これにイオン交換水300重量部を加えて攪拌した後、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)を用いて、30分間分散した。
得られた混合物にイオン交換水120重量部を加えて攪拌した後、減圧下で70℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去することにより、着色剤がカーボンブラックであり、一般式(1)で表される構成単位を有する高分子分散剤を含有する水性分散液1を得た。得られた水性分散液1は、カーボンブラックを含有する水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体(固形分20重量%)で有り、その平均粒径は140nmであった。
製造例1において、合成例4で得られたビニルポリマーの代わりに合成例5で得られたビニルポリマーを用い、中和剤1.3重量部の代わりに1.5重量部(中和度50%)を用いた他は製造例1と同様にして一般式(1)で表される構成単位を有する高分子分散剤を含有する水性分散液2(固形分20重量%)を得た。その平均粒径は120nmであった。
製造例1において、合成例4で得られたビニルポリマーの代わりに合成例6で得られたビニルポリマーを用い、中和剤1.3重量部の代わりに0.9重量部(中和度50%)を用いた他は製造例1と同様にして一般式(1)で表される構成単位を有する高分子分散剤を含有する水性分散液3(固形分20重量%)を得た。その平均粒径は140nmであった。
製造例1において、合成例4で得られたビニルポリマーの代わりに合成例7で得られたポリマーを用い、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1.3重量部の代わりに同2.1重量部を用いる他は製造例1(中和度50%)に準拠して、水性分散液4(固形分20重量%)を得た。その平均粒径は170nmであった。
製造例1において、合成例4で得られたビニルポリマーの代わりに合成例8で得られたポリマーを用い、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1.3重量部の代わりに同2.9重量部(中和度50%)を用いる他は製造例1に準拠して、水性分散液5(固形分20重量%)を得た。その平均粒径は110nmであった。
製造例1で得られた水性分散液1(固形分20重量%)、24.7重量部、グリセリン(和光純薬社製試薬特級)、10重量部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(和光純薬社製試薬特級)7重量部、サーフィノール465(エアプロダクツ社製)1重量部、プロキセルXL2(S)(ZENECA社製)0.3重量部、イオン交換水58重量部を混合し、5μmのフィルター〔アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士写真フイルム(株)製〕を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ〔テルモ(株)製〕で濾過して粗大粒子を除去し、本発明のインクジェット記録用水系インク1を得た。得られたインクジェット記録用水系インク1を用いて、前記の方法により、光沢性及び保存安定性の評価を行った。その結果を後記の表1に示した。
製造例1で得られた水性分散液1(固形分20重量%)24.7重量部の代わりに、製造例2で得られた水性分散液2(固形分20重量%)24.7重量部を用いるほかは実施例1に準拠して、本発明のインクジェット記録用水系インク2を得た。得られた本発明のインクジェット記録用水系インク2を用いて、前記の方法により、光沢性及び保存安定性の評価を行った。その結果を後記の表1に示した。
製造例1で得られた水性分散液1(固形分20重量%)24.7重量部の代わりに、製造例3で得られた水性分散液3(固形分20重量%)24.7重量部を用いるほかは実施例1に準拠して、本発明のインクジェット記録用水系インク3を得た。得られた本発明のインクジェット記録用水系インク3を用いて、前記の方法により、光沢性及び保存安定性の評価を行った。その結果を後記の表1に示した。
製造例1で得られた水性分散液1(固形分20重量%)24.7重量部の代わりに、製造例4で得られた水性分散液4(固形分20重量%)24.7重量部を用いるほかは実施例1に準拠して、比較インク1を得た。得られた比較インク1を用いて、前記の方法により、光沢性及び保存安定性の評価を行った。その結果を後記の表1に示した。
製造例1で得られた水性分散液1(固形分20重量%)24.7重量部の代わりに、製造例5で得られた水性分散液5(固形分20重量%)24.7重量部を用いるほかは実施例1に準拠して、比較インク2を得た。得られた比較インク2を用いて、前記の方法により、光沢性及び保存安定性の評価を行った。その結果を表1に示した。
Claims (6)
- 請求項1又は2に記載の高分子分散剤、水及び着色剤を含有するインクジェット記録用水分散体。
- 請求項3に記載の水分散体を含有するインクジェット記録用水系インク。
- 水系インク中における、高分子分散剤、水及び着色剤の含有率が、それぞれ1〜20重量%、40〜90重量%及び1〜20重量%である請求項4に記載のインクジェット記録用水系インク。
- 着色剤が、顔料である請求項4又は5に記載のインクジェット記録用水系インク。
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