JP4606253B2 - インクジェット記録用水分散体 - Google Patents
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Description
ところが着色剤が顔料であるインクは、顔料の分散が難しく、保存安定性が問題となることが多く、更に、染料と比較して、光沢性に劣るという問題点がある。
これを解決するため、ポリオキシエチレングリコール鎖を有するアクリル系モノマーを数種併用したポリマーを分散剤として用いることが開示されている(例えば、特許文献1参照)が、更に優れた光沢性を有するインクが求められている。
また、インクジェット用のインクに適する、リン酸基を含む樹脂を含有した顔料組成物(例えば、特許文献2参照)およびリン酸系の分散剤及びインクジェット記録用水系インクが開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、これらはいずれも光沢性が十分であるとは言い難い。
高分子分散剤
本発明の高分子分散剤は、前記一般式(1)で表される構成単位を含有するビニルポリマーの少なくとも1種を含む。一般式(1)において、R1は水素原子又はメチル基を示すが、好ましくはメチル基である。M1とM2は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子又は陽イオンを示す。該ビニルポリマーの水分散性が良好になるので、少なくともM1とM2の一部が陽イオンであることが好ましい。陽イオンとしては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、オニウムイオン又は塩基性アミノ酸等を挙げることができる。
アルカリ金属イオンの好ましい例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムのイオンが挙げられ、その中でもナトリウムイオン及びカリウムイオンが好ましい。アルカリ土類金属イオンの好ましい例としては、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンが挙げられる。
オニウムイオンとしては、周期律表第15族原子のオニウムイオンが好ましく、中でも窒素原子及びリン原子のオニウムイオンが好ましい。窒素原子のオニウムイオンとしては、アンモニウムイオン、イミダゾリニウムイオン、総炭素数1〜22のアルキル若しくはアルケニルアンモニウムイオン、炭素数1〜22のアルキル若しくはアルケニル置換ピリジニウムイオン、総炭素数1〜22のアルカノールアンモニウムイオンが好ましく、リン原子のオニウムイオンとしては、ホスホニウムイオンが好ましい。オニウムイオンは、一級、二級、三級、四級のいずれでもよい。
R3は、炭素数4〜18のアルキレン基又は炭素数6〜18のアリーレン基を示す。アルキレン基は、アリールアルキレン基であってもよく、炭素数4〜12のアルキレン基又は炭素数7〜12のアリールアルキレン基が好ましく、炭素数4〜10のアルキレン基又は炭素数7〜10のアリールアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。また、アリーレン基は、アルキルアリーレン基であってもよく、炭素数6〜12のアリーレン基又は炭素数7〜12のアルキルアリーレン基が好ましい。具体的には、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、1,1-ジフェニルメチレン基、2,2−ジフェニルプロピレン基、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,2−ナフチレン基、1,4−ナフチレン基、2,2’−ビス(フェニレン)プロパン基(ビスフェノールAから誘導される−C6H4−C(CH3)2−C6H4−)等が挙げられる。
k、L、mは、平均付加モル数を意味する。k、mは同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して0〜20の数を示し、好ましくは0〜16であり、さらに好ましくは0〜10であり、特に好ましくは0〜2である。Lは、1〜20の数を示すが、好ましく1〜10であり、さらに好ましくは1〜5、特に好ましくは1である。但し、kが0のときは、Lは2以上を示す。
k個の−R2O−、L個の−R3O−、m個の−R4O−の結合は、この順序でエステル酸素原子にブロック結合している。k個のR2、L個のR3、m個のR4のそれぞれは、同一であっても異なっていてもよい。k個のR2、L個のR3、m個のR4がそれぞれ異なる場合、例えば、k個のR2がR21、R22、R23の3種類からなる場合、k個の−R2O−は、−R21O−、−R22O−、−R23O−のランダム結合、ブロック結合、交互結合等のいずれの結合様式で形成されていてもよい。
本発明の高分子分散剤に用いられるビニルポリマーは、更に、疎水性構成単位を含有するものが好ましい。前記ビニルポリマー中の疎水性構成単位の含有量は、インクの分散安定性発現の点から、40〜98重量%が好ましく、50〜90重量%が更に好ましく、50〜80重量%が特に好ましい。疎水性構成単位としては、後述する疎水性モノマー(B)由来の構成単位が挙げられる。
前記一般式(1)で表される構成単位の含有量と前記疎水性構成単位の含有量の重量比(一般式(1)で表される構成単位/疎水性構成単位)は、1/1〜1/8が好ましく、1/2〜1/6が更に好ましい。
本発明の高分子分散剤に用いられるビニルポリマーは、後述する共重合可能なモノマー(C)に由来する構成単位を任意成分として含有してもよい。分散安定性を向上させる観点から、前記ビニルポリマー中の該任意の構成単位の含有量は、0〜40重量%が好ましく、1〜30重量%が更に好ましく、10〜25重量%が特に好ましい。
また、着色剤への吸着性を向上させる観点から、本発明の高分子分散剤に用いられるビニルポリマーは、水不溶性であることが好ましい。「水不溶性」とは、本発明のビニルポリマーの未中和品を、温度25℃で水100gに溶解させたときに、その溶解量が2g未満であることをいう。本発明の高分子分散剤の酸価は、安定な分散体とするために、5〜200KOHmg/gが好ましく、10〜130KOHmg/gが更に好ましい。
本発明の高分子分散剤に用いられるビニルポリマーの製造方法については何ら制限はなく、下記一般式(2)で表されるモノマー(A)、疎水性モノマー(B)、及び必要により他の共重合可能なモノマー(C)からなるモノマー混合物(以下、単にモノマー混合物という)を公知の方法でラジカル共重合させて得るのが簡便で好ましい。
で表されるモノマー(A)は、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはその酸無水物、又はハロゲン化物(以下、(メタ)アクリル酸等という)と、両末端にヒドロキシ基を有するアルキレングリコール若しくはポリオキシアルキレングリコールとエステル反応させる。得られた反応物を、常法により精製を行い、アルキレングリコール又はポリオキシアルキレングリコール(メタ)アクリル酸モノエステルを得た後、オキシ塩化リンと反応させることで得られる。
前記(メタ)アクリル酸等と前記両末端にヒドロキシ基を有するアルキレングリコール若しくはポリオキシアルキレングリコールとの反応モル比を、好ましくは、前記ヒドロキシ基1モルに対して、前記(メタ)アクリル酸等を0.5〜2モルにし、必要なら酸又はアルカリ触媒の存在下で、好ましくは、50〜130℃で反応させる。次に、常法により精製を行い、得られたモノエステルは、アルカリ触媒の存在下、オキシ塩化リンと反応させる。反応モル比は、前記得られたモノエステル1モルに対して、前記オキシ塩化リンを1〜1.5モル程度、温度は、−30〜−20℃程度で反応させる。
疎水性モノマー(B)としては、モノマー(A)と共重合可能な疎水性モノマーであれば任意のものが使用可能であり、アルキル(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー、マクロマー等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等のエステル部分が炭素数1〜30、好ましくは1〜18のアルキル基である(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
該マクロマーの具体例としては、片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するシリコーン系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するメチルメタクリレート系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するブチルアクリレート系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するイソブチルメタクリレート系マクロマー等が挙げられる。これらの中では、ビニルポリマー粒子に顔料を十分に含有させるようにする観点から、片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマーが好ましい。
片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマーとしては、片末端に重合性官能基を有するスチレン単独重合体及び片末端に重合性官能基を有する、スチレンとアクリロニトリル等の他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
また、その共重合体中のスチレンの含有量は、顔料が十分にビニルポリマー粒子に含有されるようにする観点から、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
スチレン系マクロマーの末端重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましい。
商業的に入手しうるスチレン系マクロマーとしては、例えば、東亜合成(株)製の商品名、AS-6, AS-6S, AN-6, AN-6S, HS-6,HS-6S等が挙げられる。
X(Y1)uSi(R5)3-v(Z)v (3)
(式中、Xは重合可能な不飽和基、Y1は2価の結合基、R5は水素原子、低級アルキル基、アリール基又はアルコキシ基、Zは500以上の数平均分子量を有する1価のシロキサンポリマーの残基、uは0又は1、vは1〜3の整数を示し、vが1である場合、2個のR5は同一でも異なっていてもよい。)。
なお、マクロマーの数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミン含有クロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定できる。
必要により用いられる他の共重合可能なモノマー(C)としては、親水性ノニオン性モノマー及び前述の一般式(2)で表わされるモノマー(A)以外の塩生成基含有モノマー等が挙げられる。
親水性ノニオン性モノマーとしては、一般式(4)で表される化合物、及び/又は(メタ)アクリルアミド系モノマーを用いるのがよい。
CH2=C(R6)C(O)O(Y2O)p−R7 (4)
(ここで、Y2は炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖アルキレン基であり、pは2〜100の数を示し、R6は水素原子又はメチル基であり、R7は水素原子、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、又は炭素数6〜12のアラルキル基を表す。)。
このとき、Y2,R6,R7は、任意に組み合わせて用いてもよい。p個のY2は、同一又は異なっていてもよく、ブロック結合、ランダム結合のいずれであってもよい。pは2〜30が好ましい。R7は、水素原子、メチル基若しくは2−エチルヘキシル基であることが好ましい。
一般式(4)で表される化合物の具体例は、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレートなどが挙げられる。
前記疎水性モノマー(B)は、インクの分散安定性の観点から、40〜98重量%が好ましく、50〜90重量%が更に好ましく、50〜80重量%が特に好ましい。前記一般式(2)で表されるモノマー(A)と前記疎水性モノマー(B)の重量比(モノマー(A)/モノマー(B))は、1/1〜1/8が好ましく、1/2〜1/6が更に好ましい。任意成分の共重合可能なモノマー(C)は、分散安定性を向上させる観点から、0〜40重量%が好ましく、1〜30重量%が更に好ましく、10〜25重量%が特に好ましい。
本発明の高分子分散剤として用いられるビニルポリマー中、一般式(1)で表される構成単位と他のモノマー由来の構成単位との連鎖の様式については特に制限はなく、ランダム結合、ブロック結合、グラフト結合、及びこれらの組み合わせのいずれでもよい。
溶液重合法で用いる溶媒としては、特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましい。また、極性有機溶媒を水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチルエステル等のエステル類;等が挙げられる。これらの中では、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルメチルケトン又はこれらと水との混合液が好ましい。
なお、重合の際には、ラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、2,2’―アゾビスイソブチロニトリル、2,2’―アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’―アゾビスブチレート、2,2’―アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'―アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物が好適である。また、t-ブチルペルオキシオクトエート、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド等の有機過酸化物を使用することもできる。
ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物に対して、好ましくは0.001〜5モル%、より好ましくは0.01〜2モル%である。
中和剤としては、前記陽イオンを形成する塩基性物質が挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、トリエタノールアミン、アンモニア等のオニウム塩形成性化合物等が例示される。
中和度は、下記式によって求めることができる。
[N(g)/Nの当量]/[ポリマーの酸価(KOHmg/g)×ポリマーの重量(g)/(56×1000)]×100
ここでN(g)は、中和剤の重量を意味し、Nの当量は、前記中和剤の当量を意味する。
本発明のインクジェット記録用水分散体及び水系インクは、高分子分散剤、水、着色剤を含有する。なお、「インクジェット記録用水系インク」における「水系」とは、水系インクに含まれる溶媒中、水が最大割合を占めていることを意味するものであり、水100重量%でも良いし、前記要件を満たすものであれば、水と1種又は2種以上の有機溶媒との混合物でもよい。
着色剤は染料、顔料のいずれでもよい。また、両者を任意の比率で混合して用いることもできる。中でも、近年要求が強い高耐候性の発現には、顔料を用いるのがよい。
顔料は、有機顔料及び無機顔料のいずれであってもよい。また、必要に応じて、それらに体質顔料を併用することもできる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー 13, 17, 74, 83, 97,109, 110,120, 128,139, 151,154,155,174,180;C.I. ピグメント・レッド 48, 57:1, 122, 146,176,184, 185,188, 202;C.I.ピグメント・バイオレット 19,23;C.I. ピグメント・ブルー 15, 15:1, 15:2, 15:3, 15:4, 16,60;C.I. ピグメント・グリーン 7, 36;等が挙げられる。
体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム及びタルク等が挙げられる。
油性染料としては、特に限定されるものではないが、例えば、C.I.ソルベント・ブラック3, 7, 27, 29, 34,45;C.I.ソルベント・イエロー14, 16, 29, 56, 82,83:1;C.I.ソルベント・レッド1, 3, 8, 18, 24, 27, 43, 49,51, 72, 73;C.I.ソルベント・バイオレット 3;C.I.ソルベント・ブルー2,4, 11, 44,64,70;C.I.ソルベント・グリーン3, 7;C.I.ソルベント・オレンジ2;等が挙げられる。
本発明の水分散体及び水系インク中における高分子分散剤の含有率は、着色剤の分散性の点から、1〜20重量%が好ましく、2〜10重量%がさらに好ましく、水の含有率は、40〜90重量%が好ましく、50〜80重量%が更に好ましい。
前記高分子分散剤と着色剤の量比については、印字および印刷イメージの濃度を高める観点から、高分子分散剤の固形分100重量部に対して、着色剤は、20〜1,000重量部が好ましく、より好ましくは40〜800重量部、更に好ましくは60〜600重量部である。
製造方法の一例として、先ず本発明の高分子分散剤を有機溶媒に溶解させ、次に着色剤、水、及び必要に応じてアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカノールアミンなどの中和剤、界面活性剤等を、高分子分散剤の有機溶媒溶液に加えて混合した後、必要に応じて最適な混錬機や分散機を用いて所望の分散度に応じて分散させる。得られた分散体から有機溶媒を留去して着色剤含有ビニルポリマー粒子の水分散体を得ることができる。ここで用いられる有機溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられ、これらの中では、アセトン及びメチルエチルケトンがより好ましい。
水分散体中、水系インク中、着色剤含有ビニルポリマー粒子の平均粒径は、後述する測定方法により、分散安定性の観点から、0.01〜1μmが好ましく、0.02〜0.5μmがより好ましい。
着色剤が顔料又は疎水性の染料であり、高分子分散剤が一般式(1)の構成単位を有する水不溶性ビニルポリマーからなる場合、得られた水分散体は、着色剤を含有する水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体である。
着色剤を含有するビニルポリマー粒子は、少なくとも着色剤とビニルポリマーにより粒子が形成されているものであれば粒子形態は特に制限されるものではなく、例えば、ビニルポリマーに着色剤が内包された粒子形態、ビニルポリマー中に着色剤が均一に分散された粒子形態、ビニルポリマーに着色剤が内包されているが、粒子表面に着色剤が露出された粒子形態等が含まれる。
この他の製造方法として、高分子分散剤、着色剤、水、及び必要に応じてアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカノールアミン等の中和剤、界面活性剤等を混合した後、必要に応じて分散機を用いて分散させてもよい。
(1)光沢性
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製,型番EM930C)を用い、市販のMC光沢紙(セイコーエプソン(株)製、型番KA420MK)にベタ印字し、25℃で1時間放置後、光沢を光沢計(日本電色(株)製、商品名:HANDY GLOSSMETER,品番:PG−1)で測定し、60°光沢度について以下の基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
◎:光沢が40以上
○:光沢が35以上40未満
△:光沢が30以上35未満
×:光沢が30未満。
◎および○が、実用上問題ないレベルである。
(2)平均粒径
平均粒径は、大塚電子(株)製のELS−8000(キュムラント法)を用いて測定した。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回、測定時の試料中のポリマー粒子の濃度は、5×10-3重量%であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。
(3)保存安定性
前記大塚電子(株)製、レーザー粒子解析システムELS−8000を用い、インクに含まれている着色剤を含有するポリマー粒子の平均粒径(以下、「保存前の平均粒径」という)を測定した。次に、実施例1、比較例1、2のインク各1gをガラスカップ(密閉容器)にとり、圧力0.02MPa、温度40℃の条件で12時間保存後、同様の方法にて平均粒径(以下、「保存後の平均粒径」という)を測定した。分散安定性の指標として、
分散安定度(%)=(〔保存後の平均粒径〕/〔保存前の平均粒径〕)×100
に従って求め、以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
○:250未満 実用上の支障全く無し
△:250以上350未満 実用上支障無し
×:350以上 実用上支障あり
メタクリル酸140g(1.6mol)、トリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業(株)製、PTG−L 平均分子量250)325g(1.3mol)、p−トルエンスルホン酸15g、2,2’−メチレンビス(4−エチル−tert−ブチルフェノール)0.6gを500mLの4つ口フラスコに入れ、減圧下(0.0066〜0.013MPa)、90℃に加熱し、酸素を吹き込みながら、1.5時間、水を留出させた。反応後、ヘキサン300mLを加え反応液を室温まで冷やし更に約5℃で一晩放置した。析出したトリテトラメチレングリコールをろ過により除去し、ろ液を分液ロートに移し炭酸水素ナトリウム水を用いて洗浄し、洗浄液がアルカリ性を示すまで洗浄を繰り返し、更にイオン交換水で洗浄した。有機相は無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレータを用いて有機溶媒を留去した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=20:1)で精製した。ヒドロキノンモノメチルエーテル20mgを加え、有機溶媒を留去することで、100gのトリテトラメチレングリコールのメタクリル酸モノエステルを得た。液体クロマトグラフィーから純度は97%以上であった。
オキシ塩化リン36.8g(0.24mol)を70mLのエチルエーテルに溶かして300mLの4つ口反応容器に入れ、−30〜−20℃まで冷却した。トリテトラメチレングリコールのメタクリル酸モノエステル67g(0.2mol)とトリエチルアミン24.2g(0.24mol)をエチルエーテル70mLに溶解させた溶液を、攪拌下、乾燥窒素ガスを吹き込みながら約2時間かけて滴下ロートからオキシ塩化リン溶液に滴下した。滴下後、−20℃以下の温度で3時間攪拌し、リン酸エステル中間体を合成した。その後0℃へ昇温し、生成したトリエチルアミン塩酸塩をろ過により取り除いた。ろ液に、イオン交換水20gを加え、ヒドロキノンモノメチルエーテル20mgを加え、40℃で2時間撹拌した。減圧下エチルエーテルを留去した。得られた液体を200mLのイオン交換水に分散させ、液がアルカリ性を示すまで炭酸ナトリウムを添加した。得られた水溶液を分液ロートに入れクロロホルムで3回洗浄した。次に該水溶液に6mol/Lの濃度の塩酸水溶液をpHが1以下になるまで加え、酢酸エチルエステルで該水溶液から3回抽出を行い、得られた酢酸エチルエステル溶液を集め硫酸ナトリウムで乾燥後、ヒドロキノンモノメチルエーテル20mgを加え、減圧下で濃縮を行い、アシッドホスホオキシトリ(テトラメチレングリコール)メタクリレートの粗生成物淡黄色液体48gを得た。該液体はシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=20:1)で精製を行い、ヒドロキノンモノメチルエーテル20mgを加え、有機溶媒を留去することで、純度は95%以上のアシッドホスホオキシトリ(テトラメチレングリコール)メタクリレート40gを得た。
得られたモノマーが、リン酸基を有していることは31P−NMRにより確認した。また、酸価は、293KOHmg/gであった。
メタクリル酸140g(1.6mol)、エチレングリコール−デカメチレングリコール−エチレングリコールブロック共重合体(水酸基価419mgKOH/g:デカメチレングリコールとエチレンオキシドからアルカリ触媒を用いて調製)347g(1.3mol)、p−トルエンスルホン酸15g、2,2’−メチレンビス(4−エチル−tert−ブチルフェノール)0.6gを500mLの4つ口フラスコに入れ、減圧下(0.0066〜0.013MPa)、90℃に加熱し、酸素を吹き込みながら、1.5時間水を留出させた。反応後、ヘキサン300mLを加え反応液を室温まで冷やし更に約5℃で一晩放置した。析出したエチレングリコール−デカメチレングリコール−エチレングリコールブロック共重合体をろ過により除去し、ろ液を分液ロートに移し炭酸水素ナトリウム水を用いて洗浄して、洗浄液がアルカリ性を示すまで繰り返し、更にイオン交換水で洗浄した。有機相は無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレータを用いて有機溶媒を留去した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=20:1)法で精製した。ヒドロキノンモノメチルエーテル20mgを加え、有機溶媒を留去することで、90gのエチレングリコール−デカメチレングリコール−エチレングリコールブロック共重合体のメタクリル酸モノエステルを得た。液体クロマトグラフィーから純度は97%以上であった。
オキシ塩化リン36.8g(0.24mol)を70mLのエチルエーテルに溶かして、300mLの4つ口反応容器に入れ、−20〜−30℃まで冷却した。エチレングリコール−デカメチレングリコール−エチレングリコールブロック共重合体のメタクリル酸モノエステル70g(0.2mol)とトリエチルアミン24.2g(0.24mol)をエチルエーテル70mLに溶解させた溶液を、撹拌下、乾燥窒素ガスを吹き込みながら約2時間かけて、滴下ロートからオキシ塩化リン溶液に滴下した。滴下後、−20℃以下の温度で3時間攪拌し、リン酸エステル中間体を合成した。その後0℃へ昇温し、生成したトリエチルアミン塩酸塩をろ過により取り除いた。ろ液に、イオン交換水20gを加え、ヒドロキノンモノメチルエーテル20mgを加え、40℃で2時間撹拌した。減圧下エチルエーテルを留去した。得られた液体を200mLのイオン交換水に分散させ、液がアルカリ性を示すまで炭酸ナトリウムを添加した。得られた水溶液を分液ロートに入れクロロホルムで3回洗浄した。次に該水溶液に6mol/Lの濃度の塩酸水溶液をpHが1以下になるまで加え、酢酸エチルエステルで該水溶液から3回抽出を行い、得られた酢酸エチルエステル溶液を集め硫酸ナトリウムで乾燥後、ヒドロキノンモノメチルエーテル20mgを加え、減圧下濃縮を行い、アシッドホスホオキシ(エチレングリコール−デカメチレングリコール−エチレングリコール)メタクリレートの粗生成物淡黄色液体40gを得た。該液体はシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=20:1)で精製し、ヒドロキノンモノメチルエーテル20mgを加え、有機溶媒を留去することで、純度は97%以上のアシッドホスホオキシ(エチレングリコール−デカメチレングリコール−エチレングリコール)メタクリレート35gを得た。得られたモノマーが、リン酸基を有していることは31P−NMRにより確認した。また、酸価は、288KOHmg/gであった。
反応容器内に、メチルエチルケトン10重量部及び2−メルカプトエタノール0.3重量部、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート2.5重量部、スチレンマクロモノマー溶液3重量部、スチレンモノマー4.6重量部、合成例1で得られたモノマー1.4重量部を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロートに、2−メルカプトエタノール0.7重量部、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート22.5重量部、スチレンマクロモノマー溶液27重量部、スチレンモノマー39重量部、合成例1で得られたモノマー12.6重量部、メチルエチルケトン50重量部及び2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.4重量部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から2時間経過後、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3重量部をメチルエチルケトン5重量部に溶解した溶液を加え、更に75℃で2時間、また、さらに2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3重量部をメチルエチルケトン5重量部に溶解した溶液を加え80℃で1時間熟成させることで、一般式(1)で表される構造(R1=メチル基、R3=テトラメチレン基、k=0、L=3、m=0、M1=M2=水素原子)を有する本発明の高分子分散剤1(酸価41KOHmg/g)を得た。
標準物質としてポリスチレン、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミン含有クロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、得られた高分子分散剤1の重量平均分子量を測定した。その結果、重量平均分子量は38,000であった。
なお、上記で使用した化合物の詳細は、以下のとおりである。
メチルエチルケトン、2−メルカプトエタノール:和光純薬工業(株)製、試薬 一級
2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル):和光純薬工業(株)製、V−65
スチレンマクロモノマー溶液:東亜合成(株)製、商品名、AS−6S(スチレンマクロモノマー)、固形分50重量%、数平均分子量:6,000
ポリプロピレングリコールモノメタクリレート:アルドリッチジャパン(株)製、試薬(数平均分子量:375)
スチレンモノマー:和光純薬工業(株)製、試薬 特級
合成例1で得られた単量体の代わりに合成例2で得られた単量体を用いた他は合成例3に準拠して、一般式(1)で表される構造(R1=メチル基、R2=エチレン基、R3=デカメチレン基、R4=エチレン基、k=1、L=1、m=1、M1=M2=水素原子)を有する本発明の高分子分散剤2(酸価40KOHmg/g)を得た。
得られた高分子分散剤2の重量平均分子量は25,000であった。
合成例1で得られたモノマーを用いる代わりにアシッドホスホノキシポリプロピレングリコールメタクリレート(ユニケミカル社製ホスマーPP 酸価238KOHmg/g)を用いた以外は合成例3に準拠して比較ポリマー1(酸価33KOHmg/g)を得た。重量平均分子量は50,000であった。
反応容器内に、メチルエチルケトン10重量部及び2−メルカプトエタノール0.03重量部、スチレンマクロモノマー溶液3重量部、スチレンモノマー7.1重量部、メタクリル酸1.4重量部を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロートに、2−メルカプトエタノール0.27重量部、スチレンマクロモノマー溶液27重量部、スチレンモノマー63重量部、メタクリル酸12.6重量部、メチルエチルケトン50重量部及び2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2重量部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から2時間経過後、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3重量部をメチルエチルケトン5重量部に溶解した溶液を加え、更に75℃で2時間、またさらに2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3重量部をメチルエチルケトン5重量部に溶解した溶液を加え80℃で1時間熟成させることで、カルボキシル基を有する比較ポリマー2(酸価91KOHmg/g)を得た。重量平均分子量は35,000であった。
合成例3で得られた本発明の高分子分散剤1の15重量部(固形分)を、メチルエチルケトン25重量部に溶かし、その中に中和剤(5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液、和光純薬工業(株)製、容量分析用)1.2重量部を加え、更に着色剤としてカーボンブラックモナーク800(キャボット社製)35重量部を加えた。これにイオン交換水300重量部を加えて攪拌した後、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)を用いて、30分間分散した。得られた混合物にイオン交換水120重量部を加えて攪拌した後、減圧下で70℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去することにより、着色剤がカーボンブラックである水分散体1(固形分20重量%)を得た。カーボンブラックを含有するポリマー粒子の水分散体の平均粒径は140nmであった。
製造例1において、合成例3で得られた高分子分散剤1の代わりに合成例4で得られた高分子分散剤2を用い、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1.2重量部の代わりに同1.15重量部を用いた他は製造例1に準拠して、水分散体2(固形分20重量%)を得た。その平均粒径は135nmであった。
製造例1において、合成例3で得られた高分子分散剤1の代わりに合成例5で得られた比較ポリマー1を用い、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1.2重量部の代わりに同2.1重量部を用いた他は製造例1に準拠して、水分散体3(固形分20重量%)を得た。その平均粒径は160nmであった。
製造例1において、合成例3で得られた高分子分散剤1の代わりに合成例6で得られた比較ポリマー2を用い、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1.2重量部の代わりに同2.9重量部を用いた他は製造例1に準拠して、水分散体4(固形分20重量%)を得た。その平均粒径は110nmであった。
製造例1で得られた水分散体1(固形分20重量%)、24.7重量部、グリセリン(和光純薬工業(株)製、試薬特級)10重量部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(和光純薬工業(株)製、試薬特級)7重量部、サーフィノール465(エアプロダクツ社製)1重量部、プロキセルXL2(S)(ZENECA社製)0.3重量部、イオン交換水58重量部を混合し、5μmのフィルター〔アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士写真フイルム(株)製〕を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ〔テルモ(株)製〕で濾過して粗大粒子を除去し、本発明のインクジェット記録用水系インク1を得た。得られたインクジェット記録用水系インク1を用いて、前記の方法により、光沢性及び保存安定性の評価を行った。その結果を後記の表1に示した。
製造例1で得られた水分散体1の代わりに製造例2で得られた水分散体2(固形分20重量%)を用いた他は実施例1に準拠して本発明のインクジェット記録用水系インク2を得た。得られたインクジェット記録用水系インク2を用いて、前記の方法により、光沢性及び保存安定性の評価を行った。その結果を後記の表1に示した。
製造例1で得られた水分散体1の代わりに、製造例3で得られた水分散体3(固形分20重量%)を用いたほかは実施例1に準拠して、比較インク1を得た。得られた比較インク1を用いて、前記の方法により、光沢性及び保存安定性の評価を行った。その結果を後記の表1に示した。
製造例1で得られた水分散体1の代わりに、製造例4で得られた水分散体4(固形分20重量%)を用いたほかは実施例1に準拠して、比較インク2を得た。得られた比較インク2を用いて、前記の方法により、光沢性及び保存安定性の評価を行った。その結果を後記の表1に示した
Claims (10)
- 一般式(1)において、kが0、Lが3、R 3 がテトラメチレン基である請求項1に記載のインクジェット記録用水分散体。
- 一般式(1)において、k及びmが1、R 2 及びR 4 がエチレン基、R 3 がデカメチレン基である請求項1に記載のインクジェット記録用水分散体。
- ビニルポリマー中、一般式(1)で表わされる構成単位の含有量が、2〜60重量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用水分散体。
- ビニルポリマーが、前記一般式(2)で表わされるモノマー(A)、疎水性モノマー(B)、及び他の共重合可能なモノマー(C)を共重合して得られる水不溶性ビニルポリマーであり、該共重合可能なモノマー(C)が親水性ノニオン性モノマー及び/又は前記一般式(2)で表わされるモノマー(A)以外の塩生成基含有モノマーである請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用水分散体。
- 水分散体が着色剤を含有するビニルポリマー粒子の水分散体であり、該ビニルポリマーが一般式(1)で表わされる構成単位を有する請求項1〜6いずれか1項に記載のインクジェット記録用水分散体。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の水分散体を含有するインクジェット記録用水系インク。
- 水系インク中における、高分子分散剤、水及び着色剤の含有率が、それぞれ1〜20重量%、40〜90重量%及び1〜20重量%である請求項8に記載のインクジェット記録用水系インク。
- 着色剤が、顔料である請求項8又は9に記載のインクジェット記録用水系インク。
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