JP4450913B2 - ポリマー電池用包装材料の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、防湿性、耐内容物性及び成形性を有する、固体有機電解質(高分子ポリマー電解質)を持つポリマー電池用包装材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリマー電池とは、リチウム2次電池ともいわれ、高分子ポリマー電解質を持ち、リチウムイオンの移動で電流を発生する電池であって、正極・負極活物質が高分子ポリマーからなるものを含むものである。
リチウム2次電池の構成は、正極集電材(アルミニウム、ニッケル)/正極活性物質層(金属酸化物、カーボンブラック、金属硫化物、電解液、ポリアクリロニトリル等の高分子正極材料)/電解質層(プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、炭酸ジメチル、エチレンメチルカーボネート等のカーボネート系電解液リチウム塩からなる
無機固体電解質、ゲル電解質)/負極活性物質(リチウム金属、合金、カーボン、電解液、ポリアクリロニトリル等の高分子負極材料)/負極集電材(銅、ニッケル、ステンレス)及びそれらを包装する外装体からなる。
ポリマー電池の用途としては、パソコン、携帯端末装置(携帯電話、PDA等)、ビデオカメラ、電気自動車、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星等に用いられる。
前記ポリマー電池の外装体としては、金属をプレス加工して円筒状または直方体状に容器化した金属製缶、あるいは、基材層/アルミニウム/シーラント層から構成される積層体を袋状にしたものが用いられていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、ポリマー電池の外装体として、次のような問題があった。金属製缶においては、容器外壁がリジッドであるため、電池自体の形状が決められてしまう。そのため、ハード側を電池に合わせる設計をするため、該電池を用いるハードの寸法が電池により決定されてしまい形状の自由度が少なくなる。
そこで、積層体を袋状にしてポリマー電池本体を収納するパウチタイプまたは、前記積層体をプレス成形して凹部を形成し、該凹部にポリマー電池を収納するエンボスタイプが開発されている。エンボスタイプは、パウチタイプと比較して、よりコンパクトな包装が得られる。いずれのタイプの外装体であっても、ポリマー電池としての防湿性あるいは耐突き刺し性等の強度、絶縁性等は、ポリマー電池の外装体として欠かせないものであるが、前記エンボスタイプとする場合には、用いられる積層体としては、前記プレス成形における適性が重要である。
例えば、エンボスタイプのポリマー電池用包装材料として、具体的には、ナイロン/接着層/アルミニウム/接着層/キャストポリプロピレンからなる積層体を挙げることができる。そして、前記接着層が、安定して接着強度の大きい接着が得られるドライラミネート法を用いても、エンボス成形の際、ポリマー電池を包装材料に収納してその周縁部をヒートシールする際に、ナイロンとアルミニウムとの間においてデラミネーションが発生することがあった。また、ポリマー電池の電解質成分と水分との反応により生成するフッ化水素によりアルミニウムとキャストポリプロピレンとの間においてもデラミネーションが発生することがあった。
また、本発明者らは前記デラミネーションの対策として、前記アルミニウムの両面に、リン酸クロメート処理などの化成処理を施すことによりデラミネーション防止が可能であることを見出したが、包装材料の製造において、前記化成処理のための加熱、また、キャストポリプロピレンの熱ラミネート等の熱によりアルミニウムに熱しわが発生することがあった。
本発明の目的は、エンボスタイプのポリマー電池包装に用いる材料として、ポリマー電池の保護物性とともに、成形加工性に優れた材料を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基材層、接着層、化成処理層、アルミニウム、化成処理層、酸変性ポリプロピレン皮膜層、押出樹脂層、最内層から構成されるエンボスタイプの外装体を形成する積層体からなるポリマー電池用包装材料の製造方法であって、アルミニウムの両面に化成処理を施し、一方の化成処理層面に基材層をドライラミネート法で形成した前記接着層によって接着した後、他の化成処理層面に酸変性ポリプロピレン樹脂を塗布、焼き付けした後、形成された酸変性ポリプロピレン皮膜層面とキャストポリプロピレンフィルムからなる最内層とをポリプロピレン樹脂からなる押出し樹脂によりサンドイッチラミネート法により積層することを特徴とするポリマー電池用包装材料の製造方法、および、基材層、接着層、化成処理層、アルミニウム、化成処理層、酸変性ポリプロピレン皮膜層、押出樹脂層、最内層から構成されるエンボスタイプの外装体を形成する積層体からなるポリマー電池用包装材料の製造方法であって、アルミニウムの片面に化成処理を施し、該化成処理面に基材層をドライラミネート法で形成した前記接着層によって接着した後、前記アルミニウムの未処理面に化成処理を施し、該化成処理面に酸変性ポリプロピレン樹脂を塗布、焼き付けした後、形成された酸変性ポリプロピレン皮膜層面とキャストポリプロピレンフィルムからなる最内層とをポリプロピレン樹脂からなる押出し樹脂によりサンドイッチラミネート法により積層することを特徴とするポリマー電池用包装材料の製造方法であって、前記化成処理がリン酸クロメート処理であることを含むものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のポリマー電池用包装材料は、ポリマー電池本体を収納する凹部を形成することを特徴とするエンボスタイプの外装体となるものである。以下、本発明について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明のポリマー電池用包装材料の実施例を示す層構成断面図である。
図2は、外装体がエンボスタイプのポリマー電池の包装タイプを説明する、(a)片面エンボスタイプの斜視図、(b)両面エンボスタイプの斜視図、(c)片面エンボスタイプの構造説明図、(d)X1−X1部断面図である。図3は、エンボスタイプにおける成形を説明する、(a)斜視図、(b)エンボス成形された外装体本体、(c)X2−X2部断面図、(d)Y1部拡大図である。図4は、本発明のポリマー電池用包装材料の製造方法を説明するための、層構成断面図である。図5は、本発明のポリマー電池用包装材料における別の製造方法を説明するための、層構成断面図である。図6は、ポリマー電池用包装材料とタブとの接着における接着性フィルムの装着方法を説明する斜視図である。
【0006】
エンボスタイプのポリマー電池の構成は、図2(a)または図2(b)に示すように、ポリマー電池用包装材料の積層体を、ポリマー電池本体を収納する凹部をプレス成形等によって成形する。図2(b)および図2(c)はいずれも両面エンボスタイプであるが、周縁シールの違いであり、4方シールと3方シールを示す。そして、ポリマー電池は、図2(c)に示すように、成形された外装体本体5pに成形された凹部7にポリマー電池本体2を収納して外装体蓋体5tを被覆し、周縁のシール部をヒートシールすることによって完成する。
この際、成形される側壁部8は、できるだけ屹立させて、ポリマー電池本体2がタイトに収納されることが望ましく、そのために前記積層体は、プレス成形における展延性、すなわち成形性の良いものでなければならない。
包装材料が、例えばナイロン/接着層/アルミニウム/接着層/キャストポリプロピレンであり、前記接着層がドライラミネート法により形成されていると、ブレス成形において、前記側壁部においてアルミニウムと基材層との間が剥離するデラミネーションがおこることが多く、また、ポリマー電池本体を外装体に収納してその周縁をヒートシールする部分においてもデラミネーションの発生があった。
また、電池の構成要素である電解質と水分との反応により生成するフッ化水素酸により、アルミニウムの内面側表面が侵され、デラミネーションを起こすことがあった。
【0007】
そこで、本発明者らは、エンボス成形時、ヒートシール時において、デラミネーションの発生のない積層体であって、また、耐内容物性のあるポリマー電池用の外装体として満足できる包装材料について鋭意研究の結果、アルミニウムの両面に化成処理を施すことによって、前記課題を解決できることを見出し本発明を完成するに到った。
【0008】
本発明のポリマー電池用包装材料の層構成は、図1に示すように、少なくとも基材層11、接着層17(1)、化成処理層16(1)、アルミニウム12、化成処理層14(2)、酸変性PP焼付層13、押出樹脂層14、最内層15からなる積層体であり、アルミニウム両面に施された化成処理を特徴とするものである。
【0009】
本発明における前記基材層11は、ポリエステルまたはナイロンフィルムからなるが、この時、ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。またナイロンとしては、ポリアミド樹脂、すなわち、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等が挙げられる。
【0010】
前記基材層11は、ポリマー電池として用いられる場合、ハードと直接接触する部位であるため、基本的に絶縁性を有する樹脂がよい。フィルム単体でのピンホールの存在、および加工時のピンホールの発生等を考慮すると、基材層は6μm以上の厚さが必要であり、好ましい厚さとしては12〜25μmである。
【0011】
本発明においては、基材層11は耐ピンホール性および電池の外装体とした時のハードとの絶縁性を向上させるために、積層化させることも可能である。
基材層を積層化する場合、基材層が2層以上の樹脂層を少なくとも一つ含み、各層の厚みが6μm以上、好ましくは12〜25μmである。基材層を積層化する例としては、図示はしないが、次の1)〜7)が挙げられる。
1)ポリエチレンテレフタレート/ナイロン
2)ナイロン/ポリエチレンテレフタレート
また、包装材料の機械適性(加工機械、包装機械の中での搬送の安定性)、表面保護性(耐熱性、耐電解質性)、2次加工として、ポリマー電池用の外装体をエンボスタイプとする際に、エンボス時の金型と基材層との摩擦抵抗を小さくする目的で、基材層を多層化、基材層表面に、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等を設けることが好ましい。例えば、
3)フッ素系樹脂/ポリエチレンテレフタレート(フッ素系樹脂は、フィルム状物、または液状コーティング後乾燥で形成)
4)シリコーン系樹脂/ポリエチレンテレフタレート(シリコーン系樹脂は、フィルム状物、または液状コーティング後乾燥で形成)
5)フッ素系樹脂/ポリエチレンテレフタレート/ナイロン(フッ素系樹脂は、フィルム状物、または液状コーティング後乾燥で形成)
6)シリコーン系樹脂/ポリエチレンテレフタレート/ナイロン
7)アクリル系樹脂/ナイロン(アクリル系樹脂は、フィルム状物、または液状コーティング後乾燥で形成)
【0012】
前記基材層は、ドライラミネート法によりバリア層と貼り合わされる。
【0013】
前記バリア層12は、外部からポリマー電池の内部に特に水蒸気が浸入することを防止するための層で、バリア層単体のピンホール、及び加工適性(パウチ化、エンボス成形性)を安定化し、かつ耐ピンホールをもたせるために厚さ15μm以上のアルミニウム、ニッケルなどの金属、又は、無機化合物、例えば、酸化珪素、アルミナ等を蒸着したフィルムなども挙げられるが、バリア層として好ましくは20〜80μmのアルミニウムとする。
ピンホールの発生をさらに改善し、ポリマー電池の外装体のタイプをエンボスタイプとする場合、エンボス部におけるクラックなどの発生のないものとするために、本発明者らは、バリア層として用いるアルミニウムの材質が、鉄含有量が0.3〜9.0重量%、好ましくは0.7〜2.0重量%とすることによって、鉄を含有していないアルミニウムと比較して、アルミニウムの展延性がよく、積層体として折り曲げによるピンホールの発生がすくなくなり、かつ前記エンボスタイプの外装体をエンボスする時に側壁の形成も容易にできることを見出した。前記鉄含有量が、0.3重量%未満の場合は、ピンホールの発生の防止、エンボス成形性の改善等の効果が認められず、前記アルミニウムの鉄含有量が9.0重量%を超える場合は、アルミニウムとしての柔軟性が阻害され、積層体として製袋性が悪くなる。
【0014】
また、冷間圧延で製造されるアルミニウムは焼きなまし(いわゆる焼鈍処理)条件でその柔軟性・腰の強さ・硬さが変化するが、本発明において用いるアルミニウムは焼きなましをしていない硬質処理品より、多少または完全に焼きなまし処理をした軟質傾向にあるアルミニウムがよい。
前記、アルミニウムの柔軟性・腰の強さ・硬さの度合い、すなわち焼きなましの条件は、加工適性(パウチ化、エンボス成形)に合わせ適宜選定すればよい。たとえば、エンボス成形時のしわやピンホールを防止するためには、成形の程度に応じた焼きなましされた軟質アルミニウムを用いることができる。
【0015】
本発明のポリマー電池用包装材料においては、アルミニウムの内容物側の化成処理面に、不飽和カルボン酸グラフトランダムプロピレン等の酸変性PP(以下、PPaと記載することがある)層を設ける。該酸変性PP層を設けることによって、アルミニウムを腐食することを防止し、また最内層であるCPPの接着を安定化させる効果がある。
【0016】
本発明のポリマー電池用包装材料における最内層13は、最内層13同士がヒートシール性を有し、耐熱性、防湿性およびプレス成形性などの必要物性を有するキャストポリプロピレン(以下、CPPと記載する)を用いることが望ましい。
【0017】
本発明のポリマー電池用包装材料において、最内層であるCPPは、PP樹脂を接着性樹脂としてサンドイッチラミネート法により貼り合わせる。
【0018】
本発明のポリマー電池用包装材料において、最内層であるCPPは、前記酸変性PP層に熱ラミネート法によってラミネートする。
【0019】
本発明のポリマー電池用包装材料の積層体として、前記、基材層、バリア層、最内層(CPP)の他に、バリア層と最内層との間に中間層を設けてもよい。中間層は、ポリマー電池用包装材料としての強度向上、バリア性の改善安定化などのために積層されることがある。
【0020】
本発明の課題に対して、本発明者らは、鋭意研究の結果、ポリマー電池用包装材料のバリア層であるアルミニウム表、裏面に化成処理を施すことによって、前記包装材料として満足できる積層体とすることができた。前記化成処理とは、具体的にはリン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物等の耐酸性皮膜を形成することによってエンボス成形時のアルミニウムと基材層との間のデラミネーション防止と、ポリマー電池の電解質と水分とによる反応で生成するフッ化水素により、アルミニウム表面の溶解、腐食、特にアルミニウムの表面に存在する酸化アルミが溶解、腐食することを防止し、かつ、アルミニウム表面の接着性(濡れ性)を向上させ、エンボス成形時、ヒートシール時の基材層とアルミニウムとのデラミネーション防止、電解質と水分との反応により生成するフッ化水素によるアルミニウム内面側でのデラミネーション防止効果が得られた。
各種の物質を用いて、アルミニウム面に化成処理を施し、その効果について研究した結果、前記耐酸性皮膜形成物質のなかでも、フェノール樹脂、フッ化クロム(■)化合物、リン酸の3成分から構成されたものを用いるリン酸クロメート処理が良好であった。
【0021】
次に、本発明のポリマー電池用包装材料の製造方法について説明する。本発明のポリマー電池用包装材料は、基材層、バリア層、酸変性PP層および最内層であるCPPを積層して形成する。
【0022】
本発明においては、ポリマー電池用包装材料の積層体を製造するラミネート工程の前に、アルミニウムの表面に化成処理を施す。化成処理は、表面、裏面にそれぞれ別に行う。化成処理は、前述の物質の水溶液または分散液を、ロールコート等の方法により、アルミニウム表面に塗布し、アルミニウム表面温度が170〜200℃に到達する条件にして皮膜形成をする。
【0023】
アルミニウムの片面の前記リン酸クロメート処理面に、酸変性ポリプロピレン樹脂のエマルジョンをロールコート等の方法を用いて塗布乾燥し、到達温度170〜200℃の条件に加熱して皮膜(以下、PPa)を形成する方法があるが、この方法は、前述のように、アルミニウムが単体の状態で3回にわたり200℃前後の熱に曝されて、その伸縮によりアルミニウムに熱しわを発性することがある。該熱しわの発生をなくす方法として、種々の検討を重ねた結果、以下に説明する2つの方法のいずれかを用いることによって、熱しわの発生のない積層体とすることができることを見出した。
【0024】
その第1の方法は、ポリマー電池用包装材料の積層体を製造するラミネート工程の前に、アルミニウムの表、裏面に化成処理を施す。次に、基材と化成処理を施したアルミニウムのいずれかの面とをドライラミネート法により貼りあわせる。つぎに、化成処理を施したアルミニウムの他方の面に酸変性ポリプロピレン樹脂のエマルジョンをロールコート等の方法を用いて塗布乾燥し、到達温度170〜200℃の条件に加熱してPPaを形成する。その塗布量は、2〜5g/m2(乾燥重量)が適当である。このように、PPaを形成する段階においてアルミニウムは基材とラミネートされており、PPaの皮膜形成時の加熱に対しては、熱による伸びが少なくなり、しわの発生を防ぐことができた。次に、PPa皮膜面にPP樹脂を押出し樹脂として最内層であるキャストポリプロピレンフィルムとサンドイッチラミネートすることによりポリマー電池用包装材料の積層体とする。
【0025】
熱しわの発生を防ぐ第2の方法は、まず、アルミニウムの片面に化成処理(1)を施し、形成された化成処理面と基材とをドライラミネートする。次に、アルミニウムの別の面、つまり、未処理面に、化成処理(2)を施し、つぎに、化成処理(2)を施した面に酸変性ポリプロピレン樹脂のエマルジョンをロールコート等の方法を用いて塗布乾燥し、到達温度170〜200℃の条件に加熱してPPaを形成する。この塗布量は、2〜5g/m2(乾燥重量)である。次に、PPa皮膜面にPP樹脂を接着性樹脂としてキャストポリプロピレンをサンドイッチラミネートすることによりポリマー電池用包装材料の積層体とする方法である。この第2の方法においては、アルミニウム単体での加熱は、化成処理(1)の工程における1度だけとなり、熱しわの発生はさらに少なくなる。
【0026】
さらに、PPaと押出し樹脂層との接着強度を上げるために、アルミニウム表面温度が130℃以上となる様に加熱してもよい。この時、加熱方法としては、熱ロール接触式、熱風式、近または遠赤外線の輻射熱による方式等を用いることができる。次に、PPa皮膜面とキャストポリプロピレンとを熱ラミネートすることによってポリマー電池用包装材料の積層体とするものである。
【0027】
前記基材とアルミニウムのリン酸クロメート処理面とのドライラミネートに用いる接着剤としては、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリエーテル系、ポリエーテルウレタン系、ポリエステルウレタン系、エポキシ系などの接着剤が利用できるが、中でも、ポリエーテルウレタン系、ポリエステルウレタン系等が好適に用いられる。
【0028】
ポリマー電池用包装材料の積層体を成形してエンボスタイプの外装体とする場合、オス型、メス型によるプレス成形により行うことができる。エンボスタイプは、片面エンボスタイプと両面エンボスタイプとがあり、片面エンボスタイプの方がより深く成形する必要がある。
【0029】
本発明のポリマー電池用包装材料における積層体の最内層には、CPPが好適に用いられる。最内層にCPPを用いるのは、CPP同士でのヒートシール性がよいこと、防湿性、耐熱性等のポリマー電池用包装材料の最内層としての要求される保護物性を有し、また、ラミネート加工性の良さ、エンボス成形性の良さ等により、望ましい材質である。ただし、CPPは金属に対するヒートシール性がないため、ポリマー電池におけるタブ部のヒートシールの際には、図6(a)、図6(b)、図6(c)に示すように、タブと積層体の最内層との間に、金属とCPPとの双方に対してヒートシール性を有する接着フィルムを介在させることにより、タブ部での密封性も確実となる。前記接着フィルムは、図6(d)、図6(e)、図6(f)に示すように、タブの所定の位置に巻き付けても良い。
【0030】
【実施例】
【実施例】
本発明のポリマー電池用包装材料について、実施例によりさらに具体的に説明する。
実施例および比較例共に基材層はナイロン25μm、バリア層はアルミニウム40μm、最内層はキャストポリプロピレン30μmとした。
また、化成処理は、いずれも、処理液として、フェノール樹脂、フッ化クロム(■)化合物、リン酸からなる水溶液を、ロールコート法により、塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件において焼き付けた。クロムの塗布量は、10mg/m2 (乾燥重量)である。
酸変性PPは、ロールコート法により塗布し、アルミニウム温度が180℃以上となる条件において焼付けた。酸変性PPの塗布量は、3g/m2(乾燥重量)とした。
なお、エンボスは、片面エンボスタイプとし、成形型の凹部(キャビティ)の形状を30mm×50mm,深さ3.5mmとしてプレス成形して成形性の評価をした。
なお、各例とも、ポリマー電池のタブのシール部には、接着フィルムとして、厚さ20μmの不飽和カルボン酸グラフトランダムプロピレンからなるフィルムをタブのシール部に巻き付けてヒートシールした。
[実施例1]
アルミニウムの両面に化成処理を施し、化成処理した一方の面に基材をドライラミネート法により貼り合わせ、次に、化成処理したアルミニウムの他の面に酸変性PPを塗布、焼き付けし、酸変性PP焼き付け面に、PP樹脂を接着性樹脂としたサンドイッチラミネート法によりキャストポリプロピレンを積層し、検体実施例1を得た。
[実施例2]
アルミニウムの片面に、化成処理を施し、該化成処理面に基材をドライラミネート法により貼り合わせ、次に、アルミニウムの未処理面に化成処理を施し、該化成処理面に、酸変性PPを塗布、焼き付けし、酸変性PP焼き付け面に、PP樹脂を接着性樹脂としたサンドイッチラミネート法によりキャストポリプロピレンを積層し、検体実施例2を得た。
[比較例1]
アルミニウムの片面にドライラミネート法により基材を貼り合わせ、他の面に酸変性PPを塗布焼き付けした後、PPa面に、PP樹脂を接着性樹脂としたサンドイッチラミネート法によりキャストポリプロピレンを積層し、検体実施例1を得た。
[比較例2]
アルミニウムの両面に化成処理を施し、化成処理したアルミニウムの一方の面に、酸変性PPを塗布、焼き付け、化成処理したアルミニウムの他の面にドライラミネート法により、基材を貼り合わせ後、前記酸変性PPの焼き付け面に、PP樹脂を接着性樹脂としたサンドイッチラミネート法によりキャストポリプロピレンを積層し検体実施例1を得た。
<エンボス成形、包装>
得られた各検体をプレス成形し、ポリマー電池本体を包装して、下記の評価を行った。
<評価方法>
1)成形時のデラミネーション
成形直後にアルミニウムと基材層とのデラミネーションの有無を確認した。
2)耐内容物性
保存条件として、各検体を、60℃、90%RHの恒温槽に、7日間保存した後に、アルミニウムとキャストポリプロピレンとのデラミネーションの有無を確認した。
3)ヒートシール時のデラミネーション
ヒートシール直後にアルミニウムと最内層とのデラミネーションの有無を確認した。
4)熱しわ
ラミネート後の積層体のアルミニウム面におけるしわの発生の有無を確認する。
<結果>
実施例1、実施例2ともに、エンボス成形時、ヒートシール時のデラミネーションはなく、また、耐内容物に起因するデラミネーションもみとめられなかった。さらに、アルミニウムの伸縮による熱しわもなく、ポリマー電池用包装材料として、良好なものであった。
比較例1は、エンボス成形時に、100検体中20検体、ヒートシール時に、100検体中40検体にデラミネーションがあった。さらに、耐内容物性に起因するデラミネーションが、100検体中、すべてに認められた。しかし、アルミニウムに熱しわは発生しなかった。
比較例2においては、成形時、ヒートシール時のデラミネーション、内容物性に起因するデラミネーションの発生は認められなかった。しかし、熱しわは100検体中、すべての検体に認められた。
【0031】
【発明の効果】
本発明のポリマー電池用包装材料におけるアルミニウムの両面に施した化成処理によって、エンボス成形時、及びヒートシール時の基材層とアルミニウムとの間でのデラミネーションの発生を防止することができ、また、ポリマー電池の電解質と水分との反応により発生するフッ化水素によるアルミニウム面の腐食を防止できることにより、アルミニウムとの内容物側の層とのデラミネーションをも防止できる顕著な効果を示す。
また、アルミニウムの両面に化成処理を施す際の加熱によるアルミニウムに発生する熱しわは、片面の化成処理後に、基材層とラミネートすることにより、他の面に対する化成処理における加熱に起因するしわの発生はなくなり、積層体としての品質の向上効果がある
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリマー電池用包装材料の実施例を示す層構成断面図である。
【図2】外装体がエンボスタイプのポリマー電池の包装タイプを説明する、(a)片面エンボスタイプの斜視図、(b)、(c)両面エンボスタイプの斜視図、(d)片面エンボスタイプの構造説明図、(e)X1−X1部断面図である。
【図3】エンボスタイプにおける成形を説明する、(a)斜視図、(b)エンボス成形された外装体本体、(c)X2−X2部断面図、(d)Y1部拡大図である。
【図4】本発明のポリマー電池用包装材料の製造方法を説明するための、層構成断面図である。
【図5】本発明のポリマー電池用包装材料における別の製造方法を説明するための、層構成断面図である。
【図6】ポリマー電池用包装材料とタブとの接着における接着性フィルムの装着方法を説明する斜視図である。
【符号の説明】
1 ポリマー電池
2 ポリマー電池本体
3 セル(蓄電部)
4 タブ(電極)
5 外装体
6 接着フィルム(タブ部)
7 凹部
8 側壁部
9 シール部
10 積層体(ポリマー電池用包装材料)
11 基材層
12 アルミニウム(バリア層)
13 酸変性PP皮膜層
14 押出樹脂層
15 最内層
16 化成処理層
17 接着層
Claims (3)
- 基材層、接着層、化成処理層、アルミニウム、化成処理層、酸変性ポリプロピレン皮膜層、押出樹脂層、最内層から構成されるエンボスタイプの外装体を形成する積層体からなるポリマー電池用包装材料の製造方法であって、アルミニウムの両面に化成処理を施し、一方の化成処理層面に基材層をドライラミネート法で形成した前記接着層によって接着した後、他の化成処理層面に酸変性ポリプロピレン樹脂を塗布、焼き付けした後、形成された酸変性ポリプロピレン皮膜層面とキャストポリプロピレンフィルムからなる最内層とをポリプロピレン樹脂からなる押出し樹脂によりサンドイッチラミネート法により積層することを特徴とするポリマー電池用包装材料の製造方法。
- 基材層、接着層、化成処理層、アルミニウム、化成処理層、酸変性ポリプロピレン皮膜層、押出樹脂層、最内層から構成されるエンボスタイプの外装体を形成する積層体からなるポリマー電池用包装材料の製造方法であって、アルミニウムの片面に化成処理を施し、該化成処理面に基材層をドライラミネート法で形成した前記接着層によって接着した後、前記アルミニウムの未処理面に化成処理を施し、該化成処理面に酸変性ポリプロピレン樹脂を塗布、焼き付けした後、形成された酸変性ポリプロピレン皮膜層面とキャストポリプロピレンフィルムからなる最内層とをポリプロピレン樹脂からなる押出し樹脂によりサンドイッチラミネート法により積層することを特徴とするポリマー電池用包装材料の製造方法。
- 前記化成処理がリン酸クロメート処理であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリマー電池用包装材料の製造方法。
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