JP4448951B2 - 有機ハロゲン化合物分解剤の製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,有機ハロゲン化合物の分解剤およびその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
トリクロロエチレン等の有機ハロゲン化合物で汚染された土壌や地下水を浄化する技術開発が進んでいるが,その基本は,分解能が高く且つ無害の有機ハロゲン化合物分解剤を使用することにある。その代表的な分解剤の例として鉄粉がある。例えば同一出願人に係る特開平11−235577号公報において,トリクロロエチレン等の有機塩素系化合物で汚染された土壌に対して比表面積が500cm2/g以上でC(炭素)を0.1重量%以上含有する鉄粉を混合すると,該土壌中のトリクロロエチレンなどを効果的に分解できると教示している。
【0003】
同じく同一出願人に係る特開2000−5470号公報には有機塩素化合物で汚染された土壌または地下水に銅含有鉄粉を添加混合すると有機塩素化合物を効率良く分解できると記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
先に提案した特開2000−5470号公報においては,銅を含有する鉄粉は銅を含有しない鉄粉よりも,有機塩素系化合物の分解速度が速くなることが明らかとなったが,それでもばらつきがあり,鉄粉中の銅の含有形態がどのような場合に,最も効率よく有機ハロゲン化合物を分解できるかは未知であった。このため,有機ハロゲン化合物の分解剤として良好に機能する粉体を製造する技術は未完であった。
【0005】
したがって,本発明の課題は有機ハロゲン化合物を最も効率よく分解できる鉄と銅からなる粒子を得ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決すべく本発明者らは種々の銅含有鉄粉の製造を試みた結果,多孔質な鉄粒子の表面に銅が部分的に存在し,鉄と銅が同時に表面に顕れている銅含有鉄粉の場合に,水の存在下で,有機ハロゲン化合物の分解反応が著しく促進することを見い出した。本発明はこの知見に基づくものであり,粒内に貫通孔をもつポーラスな鉄を主成分とする粒子の表層部に銅が部分的に分布し,鉄と銅の両者が表面に顕れている粒子からなる粉状の有機ハロゲン化合物分解剤を提供する。粉体中の銅含有量は0.01〜20重量%であればよいが,粒子表面が銅で全て覆われてしまったものは好ましくない。同じく銅の全てが粒子内部に存在して表面には存在しないものも良くない。本発明に従う粉状分解剤は,その50重量%が150μmのふるいを通過する粒度を有し且つ比表面積が300cm2/g以上の粉体であるのがよい。
【0007】
本発明者らは,鉄粉表面に銅を分布させた本発明の粉状分解剤は,先に提案した特開平11−235577号公報に記載されているのと同様の鉄粉を一方の原料として使用した乾式法または湿式法によって有利に製造できることを見い出した。すなわち本発明によれば,50重量%が150μmのふるいを通過する粒度を有し且つ比表面積が500cm2/g以上である鉄粉と,平均粒径が10μm以下の酸化銅粉とを機械的に混合して鉄粉粒子の表面に酸化銅を物理的に接合させ,ついで還元性または非酸化性雰囲気下で300℃以上700℃未満の温度で焼成し,この焼成品を解砕して鉄と銅の両者が表面に顕れている粒子を採取することからなる有機ハロゲン化合物分解剤の製造法を提供する。還元性雰囲気としては水素雰囲気が,非酸化性雰囲気としては窒素雰囲気が好適である。
【0008】
また,湿式製造法として,50重量%が150μmのふるいを通過する粒度を有し且つ比表面積が500cm2/g以上である鉄粉と銅塩水溶液とを流動下で接触させることにより該鉄粉の表面に金属銅を部分的に析出させ,鉄と銅の両者が表面に顕れている粒子を液から分離することからなる有機ハロゲン化合物分解剤の製造法を提供する。ここで,鉄粉と銅塩水溶液は攪拌下で接触させるか,または流動している鉄粉に銅塩水溶液のミストを噴霧して鉄粉と銅塩水溶液とを接触させるのがよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に従う有機ハロゲン化合物分解剤は,粒内に貫通孔をもつポーラスな鉄粒子(表面凹凸がはげしく内部に通ずる孔が多数存在したスポンジ状)の表面に銅が部分的に存在する(分布する)点に特徴がある。すなわち,非常に大きな表面積をもつ鉄粒子の表面に銅が部分的に存在することにより鉄と銅の両者が表面に顕れている(露出している)。このようにポーラスな鉄表面に銅が部分的に分布(存在)することが有機ハロゲン化合物の分解を著しく促進することがわかった。
【0010】
すなわち本発明に従う粉状の有機ハロゲン化合物分解剤は,その優れた分解能を有する上で,先ず第一に,粒子の形状構造的な特徴として,粒内に貫通孔を有した,好ましくは比表面積300cm2/g以上を示すポーラスな粒子であること,そして,その大きさも50重量%が150μmのふるいを通過するようなものであること,第二に,組成的な特徴として,鉄を主成分とする粒子の表層部に銅が部分的に存在し且つ鉄と銅の両者が表面に顕れている粒子からなること,そして銅含有量は好ましくは0.01〜20重量%であること,が肝要である。
【0011】
これらの形態についてさらに説明すると,まず,本発明の分解剤における前記の形状構造的な特徴点は,このような特徴を有する鉄粉を一方の原料として使用することによって具備させることができる。特開平11−235577号公報に記載されているように,500cm2/g以上の比表面積を有し,50重量%が150μmのふるいを通過する粒度をもつ鉄粉が知られている。そして,この鉄粉は有機ハロゲン化合物を分解する能力があることも知られている。すなわち,比表面積(BET法による比表面積)が500cm2/g以上,場合によっては2000cm2/gにも達する極めてポーラスな鉄粉は,その比表面積が高ければ高いほど表面活性を有し土壌に対する添加率が低くても,土壌中のトリクロロエチレンを分解することができる。この場合,鉄粉中に炭素が含有されていると分解速度が速くなることがわかっている。
【0012】
本発明の鉄に銅を被着した粒子からなる分解剤もこの鉄粉の形状的な特徴を実質的に維持しながら,さらに有機ハロゲン化合物の分解能を高めたものであり,粒子の形状構造的な特徴として,銅が表面に局在していながらも,粒内に貫通孔を有すること,比表面積が300cm2/g以上を示すポーラスな粒子であることを不可欠の要件とする。そして50重量%が150μmのふるいを通過するようなものであるのが好ましい。
【0013】
次に,本発明の分解剤の組成的な特徴点は,前記の形状的な特徴をもつ鉄粉の粒子表面に銅を部分的に被着させる処理を施すことによって具備させることができる。その被着の状況は,銅の被着処理が乾式か湿式かによって若干相違するが,前記の原料鉄粉の表層部に銅が部分的に存在し且つ鉄と銅の両者が表面に顕れている粒子である場合において,水の存在下での有機ハロゲン化合物の分解反応が急速に進行する。
【0014】
この場合,粒子の表面に顕れている鉄と銅は,両者または一方が金属である場合が理想的であるが,必ずしも金属鉄と金属銅である必要はなく,鉄の酸化物,銅の酸化物の層が存在していても,有機ハロゲン化合物の分解反応は十分に速く進行する。その理由については必ずしも明らかではないが,金属鉄,第一鉄イオン,金属銅および第一銅イオンなどの標準電極電位が互いに相違することにより,この粒子が水と接触したときに,粒子の表面では幾種類もの局部電池や酸化還元反応が生成してイオン移動が生じ,このことが鉄粉による有機ハロゲン化合物の分解機能(脱ハロゲン反応や脱ハロゲン化水素反応)を助成するのではないかと考えられる。
【0015】
鉄中に銅が含有されていても,銅が鉄の表面に顕れていない場合や,銅が鉄表面全体を覆っている場合には,このような粒子表面での酸化還元反応は期待できない。すなわち,本発明の分解剤にとって肝要なことは,表面の鉄と銅が金属であろうと化合物(酸化物)であろうと,鉄と銅の両者が粒子表面に顕れていることである。その顕れている面積比率については特に限定されないが,鉄100%に対して少なくとも1%の銅が顕れていれば効果がある。
【0016】
このような要件さえ満たされれば,鉄中の銅含有量は0.01〜20重量%であればよく,銅含有量が0.01重量%未満では銅存在の効果が殆んど現れず,逆に20重量%を超えると,鉄量が相対的に低くなり,鉄が表面に存在する割合も低下して好ましくない。代表的な鉄中の銅含有量は0.01〜8重量%,好ましくは0.05〜5重量%,さらに好ましくは0.05〜3重量%である。銅を含有する鉄粒子は前記のように0.1重量%以上5重量%以下の炭素を含有していることが好ましい。
【0017】
本発明の分解剤は,特開平11−235577号公報に記載されている公知の鉄粉(500cm2/g以上の比表面積を有し,50重量%が150μmのふるいを通過する粒度を有する鉄粉)を原料として使用し,その粒子表面に乾式または湿式法によって銅を部分的に被着させる処理を行うことによって有利に製造できる。その原料鉄粉は,0.1重量%以上の炭素を含有するものであるのが好ましい。
【0018】
先ず,乾式法について説明すると,ポーラスな該原料鉄粉と平均粒径が10μm以下の酸化銅粉とを機械的に混合して鉄粉粒子の表面に酸化銅を物理的に接合させる。使用する酸化銅は,酸化第一銅または酸化第二銅のいずれでもよい。鉄粉と酸化銅との混合はV型混合機のような重力混合機を使用するより,ヘンシェルミキサー等のように粒子同士が強制的に衝突を繰り返す機械的混合機を用いて行うのがよい。これによって,ポーラスな原料鉄粉の表面に酸化銅粉末を物理的に被着させることができる。そのさい,使用する原料鉄粉の形態が,50重量%が150μmのふるいを通過する粒度を有しながら比表面積500cm2/g以上のものでは,比較的大きな粒径を有するにも拘わらず比表面積が非常に大きいものであるから,内部に通ずる細孔を多数有する表面凹凸のはげしい粒子であると言える。このため,酸化銅粉末は鉄粉粒子の細孔内部に部分的に入り込むことはあっても,該鉄粉の細孔の全表面が該粉末で覆われることは回避されるものと考えられる。
【0019】
このようにして得られた混合粉を,次いで還元性雰囲気または非酸化性雰囲気で所定の時間加熱する(焼成する)。具体的には,水素または窒素雰囲気中で300℃以上700℃未満の温度で焼成する。焼成時間は,焼成温度と反比例し,およそ20〜80分程度とすればよい。この焼成によって,鉄粉表面に接合していた酸化銅はその接合形態がより緊密化したものに変わり,鉄粉表面に強固に被着すると共に,焼成雰囲気を還元雰囲気に調整した場合には酸化銅が金属銅に還元され,鉄の表面も残した状態で銅が部分的に表面に局在したものが得られる。焼成雰囲気を窒素雰囲気に調整した場合であっても,酸化銅が鉄粉表面に部分的に強固に被着した状態のものが得られ,酸化銅が部分的に還元される場合もある。この場合の還元剤としては原料鉄粉の微細な細孔に残存した炭素が関与しているとも考えられる。
【0020】
この焼成処理において,焼成温度が700℃を超えると,原料鉄粉の表面状態が変化し,微細な細孔分布が部分的に消滅したり表面が部分的に平坦化したりする。このため,微細な細孔を有し凹凸がはげしいという原料鉄粉の多孔質の特徴が失われ,300cm2/gより大きな比表面積のものを得るのが困難となり,その結果,たとえ鉄粒子の表面に銅が部分的に被着されものが得られたとしても,有機ハロゲン化合物分解剤としての機能が十分に発揮できなくなる。他方,焼成温度が300℃未満では焼成効果が十分ではなく,鉄と銅の間の一体的な接合関係が得らず,この場合も,有機ハロゲン化合物分解剤としての機能が十分に発揮できない。したがって,焼成温度は300〜700℃,好ましくは350〜650℃とする必要がある。
【0021】
焼成処理を終えた焼成品は解砕機で解砕処理することにより,原料鉄粉とほぼ同じ粒径もしくはこれより大きな粒径を有した粉体が得られ,これが本発明に従う有機ハロゲン化合物分解剤となる。この解砕処理によって焼成品に新しい破断面が顕れるが,この破断面の存在が有機ハロゲン化合物分解剤としての分解機能をさらに高める。破砕処理は窒素雰囲気中で行うのがよく,また得られた分解剤は窒素雰囲気中で保存しておくのがよい。
【0022】
他方,湿式法で本発明の有機ハロゲン化合物分解剤を製造する場合には,乾式法の場合と同様に原料鉄粉として,50重量%が150μmのふるいを通過する粒度を有し且つ比表面積が500cm2/g以上である鉄粉を使用し,この鉄粉を塩化銅水溶液や硫酸銅水溶液等の銅塩水溶液と流動下で接触させることにより該鉄粉の表面に金属銅を部分的に析出させ,鉄と銅の両者が表面に顕れている粒子を液から分離すればよい。そのさい,鉄粉粒子の表面全体に銅が析出することなく,粒子表面に部分的に銅を析出させるには,鉄粉と銅塩水溶液とを流動下で接触させるのがよく,実際には,鉄粉と銅塩水溶液を攪拌下で接触させる方法,すなわち攪拌している銅塩水溶液に一挙に鉄粉を添加し,析出反応を迅速に終了させる方法,あるいは流動している鉄粉に銅塩水溶液のミストを噴霧して鉄粉と銅塩水溶液とを接触させる方法などを採用すればよい。
【0023】
この銅の析出処理のあと,液と粉体を分離し,得られた粉体を真空乾燥することによって本発明に従う有機ハロゲン化合物分解剤が得られる。なお,銅の析出処理において,意図に反して鉄粉表面の全体に銅の薄膜が析出し,鉄が露出する面積が非常に小さくなっている場合には,このものを熱処理して表面状態を変化させたり,酸浸出して部分的に銅を溶解させたりする後処理を行えば,鉄と銅が表面に存在するものが得られる。
【0024】
以上のようにして製造した本発明の有機ハロゲン化合物分解剤は,各種の有機ハロゲン化合物の分解に適する。例えばジクロロメタン,四塩化炭素,1,2-ジクロロエタン, 1,1-ジクロロエチレン, シス-1,2-ジクロロエチレン, 1,1,1-トリクロロエタン, 1,1,2-トリクロロエタン, トリクロロエチレン, テトラクロロエチレン, 1,3-ジクロロプロペン,トランス-1,2-ジクロロエチレン, トリハロメタン,PCB,ダイオキシンを分解することができる。
【0025】
このような有機ハロゲン化合物で汚染された地下水を対象として,本発明の銅被着鉄粉からなる分解剤で浄化処理を行う場合には,浄化処理のための反応壁を地中に造成,この地中反応壁に本発明に従う分解剤を装填するのがよい。地中に造成する反応壁は地下水が銅被着鉄粉と接することができるように設置するが,それには,汚染を受けている土壌深部の地下水の易透過層をカバーするように,そして易透過層下方に位置する難透過層にまで反応壁下縁が達するか,または埋設されるように該反応壁を地中に設置するのがよく,また,反応壁の透水係数が近隣の土質と比較して同じレベルか,若しくはそれより高くなるように透水性の良好な反応壁に構成するのが好ましい。このため,例えば透水性の砂質材料等を母材とし,この母材中に銅被着鉄粉を0.1〜30重量%程度の範囲で分散させた反応壁を地中に造成するのがよい。
【0026】
反応壁の造成は,連続した壁体とすることもできるが,柱状のものを複数本連接させたり,間隔を開けて(例えば平面的に見たときに円柱状の反応層を千鳥状に配置する)たて込むなどの処法でもよく,このような柱状の埋設物の施設はボーリングマシーン等を利用して行うことができる。いずれにしても,本発明に従う銅被着鉄粉を使用する場合は,単に鉄粉を使用する場合に比べると,分解反応効率が格段に良好であるので,反応壁の厚み等の規模は半減若しくはそれ以下としても同等の効果をあげることができる。
【0027】
このような反応壁を造成することのほか,従来の鉄粉を使用する方法と同じような手段により,有機ハロゲン化合物で汚染された土壌や地下水を浄化することができる。例えば,掘削後の土壌に対し,土壌改良機やバックホーなどの重機を用いて,本発明の分解剤を混合する方法や,汚染されたサイト付近に本発明の分解剤を配置し,この分解剤表面に汚染土壌や地下水を拡散濃縮させる方法などが有利に採用できる。
【0028】
以下に,本発明者らが行った試験の結果を実施例として挙げ,これらを参照しながら本発明分解剤の特徴をさらに具体的に説明する。
【0029】
【実施例】
〔実施例1〕
本例は乾式で製造された本発明の有機ハロゲン化合物分解剤の例を示す。
比表面積がほぼ2000cm2/g,炭素含有量が0.2重量%の鉄粉であって,その50重量%以上が150μmのふるいを通過する粒度を有する鉄粉を原料とし,他方,平均粒径が7μm近辺にある酸化銅(酸化第二銅)を,鉄粉中のFeに対するCuの重量割合が1%となる量を秤量し,表1に示すように機械を変えて該鉄粉に混合し,さらに表1に示すように焼成温度と焼成雰囲気を変えて焼成し,得られた焼成品をいずれも同一条件で解砕機で解砕して,250μmアンダーの粉状分解剤を得た。
【0030】
表1に示すように,鉄粉と酸化銅の混合には,強制混合機であるヘンシェルミキサーまたは重力混合機であるV型混合機を使用した。焼成条件としては,焼成温度を550℃または700℃,焼成雰囲気としては水素雰囲気または窒素雰囲気とした。各例で得られた粉体について電子顕微鏡(SEM)観察し,さらにEPMA観察により粒子表面のCuとFeの分布状態を調べ,それらの結果を表1に記した。そして,得られた各粉体を次の分解試験に供した。
【0031】
〔分解試験条件〕
容量124mLのバイアル中に,イオン交換水50mL,ジクロロメタン1μL,および各例で得られた粉状分解剤0.5gを投入し,シリコンライナー付きブチルゴムとアルミシールによって密封し,その時点から,バイアル内のジクロロメタン濃度を経時的に追跡し,分解速度定数と半減期を求めた。それらの結果を表1に示した。
【0032】
表1において,SEM観察の評点(評価基準)と,EPMA観察の評点(評価基準)は,次のとおりである。
SEM観察の評価基準
A:原料鉄粉のSEM像と殆んど同じ細孔分布と表面凹凸を有する。
B:原料鉄粉のSEM像に比べて表面凹凸がやや減っている。
C:原料鉄粉のSEM像に比べて細孔が少なく表面凹凸も更に減っている。
D:原料鉄粉のSEM像に比べて更に細孔が少なく表面凹凸も更に減っており,見かけ密度もCよりも小さい(比表面積が300cm2/g以下)。
EPMA観察結果の評点
イ:Cuが鉄粒子表面に粒子状を呈して点在する。
ロ:Cuが鉄粒子表面に粒子状を呈して点在するが,FeOも現れている。
ハ:bよりもさらにFeOが多い。
ニ:Cuが,Fe粒子表面に,鉄が露出するよりも大きな面積をもって膜(島)状に点在する。
【0033】
〔比較例〕
原料鉄粉をそのまま前記の分解能試験に供試した。この場合にはジクロロメタンは実質上分解しなかった。
【0034】
【表1】
Figure 0004448951
【0035】
表1の結果から,混合条件としては,強制混合を行って酸化銅を鉄粉粒子に物理的に接合させた方が良好な分解剤が得られることがわかる。焼成条件としては雰囲気ガスとしては水素の方が好ましいが,窒素ガスでも十分な成果が得られている。焼成温度は粒子の形態や分解能に大きく影響しており,本例の中では,550℃付近の例1aのものが最も良好な分解剤が得られている。
【0036】
〔実施例2〕
本例は湿式で製造された本発明の有機ハロゲン化合物分解剤の例を示す。
水250mLに硫酸第二銅七水和物を19.645g溶解した硫酸第二銅溶液をスターラーで強制攪拌し,この攪拌液中に実施例1で用いたのと同じ鉄粉500gを一挙に投入し,10分間かき混ぜた。ついで液から粉体をろ過し,真空下で乾燥して銅被着粉体からなる本発明の分解剤を得た。得られた粉状分解剤の性状と分解能を実施例1と同様の基準で評価した。その結果を表2に示した。
【0037】
〔実施例3〕
水250mLに塩化第二銅二水和物を13.414g溶解した塩化第二銅溶液を使用した以外は,実施例1を繰り返した。得られた粉状分解剤の性状と分解能を実施例1と同様の基準で評価した。その結果を表2に示した。
【0038】
〔実施例4〕
ドラムミキサー内で流動している鉄粉500gに対して,濃度が約 7.3%の硫酸第二銅水溶液のミストを合計250mL噴霧して鉄粉表面に銅を析出させた。処理後の粉体を水洗し,真空下で乾燥して銅被着粉体からなる本発明の分解剤を得た。得られた粉状分解剤の性状と分解能を実施例1と同様の基準で評価した。その結果を表2に示した。
【0039】
【表2】
Figure 0004448951
【0040】
表2の結果に見られるように,湿式法では原料鉄粉の粒子形態は殆んどそのまま製品分解剤の粒子形態にも持ち来され,高い比表面積をもつ分解剤が得られた結果,銅の被着状態がやや膜状であっても,良好な分解能を示すことがわかる。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明によると,鉄粉のみでは分解が十分には行い得なかった条件下でも,有機ハロゲン化合物の分解を高能率で進行させることができるようになり,有機ハロゲン化合物で汚染された土壌や地下水の浄化に大きく貢献できる。

Claims (1)

  1. 50重量%が150μmのふるいを通過する粒度を有し且つ比表面積が500cm2/g以上である鉄粉と、平均粒径が10μm以下の酸化銅粉とを機械的に混合して鉄粉粒子の表面に酸化銅を物理的に接合させ、ついで還元性雰囲気中または非酸化性雰囲気中で300℃以上700℃未満の温度で焼成し、この焼成品を解砕して鉄と銅の両者が表面に顕れている粒子を採取することからなる有機ハロゲン化合物分解剤の製造法。
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