JP4447728B2 - 半導体レーザ素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体レーザ素子に関し、特に、端面窓構造といわれる、端面で発振光が非吸収となる構造を備えた半導体レーザ素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
805nm帯の半導体レーザとして、1998年発行のApplied Physics Letters, Vol. 72, No.1,pp.4-6において、J.K. Wade氏らによる6.1W continuous wave front-facet power from Al-free active-region (λ=805 nm) diode lasersが紹介されている。この半導体レーザは、活性領域にAlを含まないInGaAsPを活性層とし、InGaPを光導波層とし、クラッド層をInAlGaPとした構造を採用した805nm帯のものである。上記文献では、高出力特性を改善するために、活性層の光密度を低減する構造として、光導波層の厚みを広くした、LOC(Large Optical Cavity)構造が考案されており、最高光出力の増大が報告されている。但し、その最高光出力は、端面での光吸収により流れる電流により発熱し、その発熱により端面温度が上昇して端面でのバンドギャップが小さくなり、さらに光吸収が多くなるという循環により端面が破壊されるCOMD(Catastrophic optical mirror damage)現象により制限される。このCOMDに達する光出力は、経時により劣化し、半導体レーザが突然の駆動停止する可能性が高くなる。高出力駆動で、高信頼性が得られないという欠点がある。
【0003】
また、0.8μm帯の活性層がAlフリーとなる半導体レーザとして、1995年発行のpn. J. Appl. Phys. Vol.34,pp.L1175-1177.において、福永氏らによるHighly Reliable Operation of High-Power InGaAsP/In0.48Ga0.52P/AlGaAs 0.8μm Separate Confinement Heterostructure Lasersが紹介されている。この半導体レーザは、n-GaAs基板に、n-AlGaAsクラッド層、i-InGaP光導波層、InGaAsP量子井戸活性層、i-InGaP光導波層、p-AlGaAsクラッド層、p-GaAsキャップ層からなるものである。このような半導体レーザの最高光出力は、1998年発行のElectronics Letters, Vol.34, No.2, p.184において、S.O'Brien、H.ZhaoおよびR.J.Langによって、1.8Wと報告されており、ストライプ幅が50μm程度以上の多横モードレーザにおいては、例えば、0.87μmにおいて最大破壊光出力は100μm幅素子で11.3W、200μm幅素子で16.5Wと報告されている。
【0004】
また、1999年発行のAppl. Phys. Lett. Vol.75, No.13, p.1839において、早川氏らによって、活性層に垂直方向のビーム径を増して、ピーク光強度を下げ、光出射端面の温度上昇を最小となるように設計することにより、連続発振の実用出力を50μm幅にて1.5Wにも達したことが報告されている。しかしながら、これらの方法では更なる実用光出力の大幅な増加ならびに信頼性の向上は困難な状況にある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の問題を解決する方法として、本出願人による特願平11-348527号において、Alフリーの半導体材料を用いて端面近傍に透明領域を形成する方法が提案されている。ここでは、活性層量子井戸の近い光ガイド層に接して、端面近傍の透明領域形成のための結晶再成長を行う必要があるので、再成長界面が量子井戸から近く、また、量子井戸と再成長界面との間にエネルギー障壁がないため、活性層から漏れだし拡散したキャリアが再成長界面にて非発光再結合することによる効率低下や劣化促進といった悪影響が出やすい欠点がある。また、量子井戸直下の結晶層界面までエッチングを行う必要があり、その制御が容易でないという欠点があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて、端面近傍に発振光の非吸収領域を形成した半導体レーザ素子において、端面近傍をエッチングで除去する際のエッチングの制御性が向上した、かつ、活性層から漏れ出した電子が少数キャリアとして再成長界面に達する量を低減して、界面における非発光再結合を防止して、性能および信頼性が向上した半導体レーザ素子を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の半導体レーザ素子は、基板上に、量子井戸活性層の上部および下部に光ガイド層を備えた活性領域が形成されており、光軸方向に垂直な端面近傍が前記下部光ガイド層の深さ方向の途中までエッチングにより除去されており、活性領域の上全体に、発振光のエネルギーより禁制帯幅が大きい半導体が再成長されている半導体レーザ素子において、下部光ガイド層内に、前記エッチングを下部光ガイド層の深さ方向の途中で選択的に停止させるエッチング停止層が形成されており、かつ、上部光ガイド層内に、該上部光ガイド層の禁制帯幅より大きい半導体からなる電子障壁層が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
量子井戸活性層は、Alを含まない半導体からなることが望ましい。
【0009】
また、上記発振光のエネルギーより禁制帯幅が大きい半導体および該半導体層を再成長する領域に露出している層の半導体は、Alを含まない組成であることが望ましい。
【0010】
【発明の効果】
本発明の半導体レーザ素子によれば、基板上に、量子井戸活性層の上部および下部に光ガイド層を備えた活性領域が形成されており、光軸方向に垂直な端面近傍が前記下部光ガイド層の深さ方向の途中までエッチングにより除去されており、該活性領域の上全体に、発振光のエネルギーより禁制帯幅が大きい半導体が積層されている半導体レーザ素子であって、下部の光ガイド層内に、前記エッチングを下部の光ガイド層の途中で選択的に停止させるエッチング停止層が形成されていることにより、エッチングを量子井戸活性層から離れた下部光ガイド層で精度良く停止させることができる。また、下部光ガイド層の途中まで除去されているため、再成長させる界面が下部光ガイド層の途中であって、量子井戸活性層から離れているので、活性層から漏れだし拡散したキャリアが再成長界面で結合するということがないため、その結合による効率低下あるいは発熱による端面の劣化を防止することができ、性能および信頼性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の半導体レーザ素子によれば、上部の光ガイド層内に、該上部光ガイド層の禁制帯幅より大きい半導体からなる電子障壁層が形成されていることにより、活性層から再成長界面へと漏れ出すのを防止でき、上記同様に再結合による効率低下さらには端面劣化を防止することができる。
【0012】
また、活性層がAlを含まない半導体である場合、Alの酸化による組成の変成等がなく、高い信頼性が得られることが認められているが、上記構成による本発明を、量子井戸活性層がAlを含まない半導体からなる半導体レーザ素子に適用することは信頼性のさらなる向上に非常に効果的である。
【0013】
また、上記構成による本発明を、前記発振光のエネルギーより禁制帯幅が大きい半導体、および該半導体層を再成長する領域に露出している層の半導体、つまり、前記半導体を再成長する下地と再成長される半導体がAlを含まない組成である信頼性の高い半導体レーザ素子に適用することは、上記同様、信頼性の向上に非常に効果的である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
本発明の第1の実施の形態による半導体レーザ素子について説明し、その半導体レーザ素子の断面図を図1に示す。図1(a)に半導体レーザ素子の共振器軸方向に平行な断面図を示し、図1(b)に、図1(a)におけるA−A'断面図を示し、図1(c)に図1(a)におけるB−B'断面図を示す。
【0016】
図1(a)は共振器軸方向に平行な断面図であるので、左右の端面が劈開により得られる、ミラーとなる面である。図1(a)に示すように、減圧MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により、n-GaAs基板11(Si=2×1018cm-3ドープ)上にn-GaAsバッファ層12(Si=5×1017cm-3ドープ、厚さ0.5μm) 、n-AlxGa1-xAsグレーデッドバッファ層13(Si=5×1017cm-3ドープ、xは0.1から0.63まで徐々に増加させる、厚さ0.2μm)、n-Al0.63Ga0.37Asクラッド層14(Si=5×1017cm-3ドープ、厚さ1.5μm)、n-In0.48Ga0.52P光ガイド層15(Si=5×1017cm-3ドープ、厚さ0.4μm)、AlGaAsエッチング停止層16(アンドープ、厚さ20nm)、In0.48Ga0.52P光ガイド層17(アンドープ、厚さ0.1μm)、In0.13Ga0.87As0.75P0.25量子井戸層18(アンドープ、厚さ10 nm)、In0.48Ga0.52P光ガイド層19(アンドープ、厚さ0.1μm)、AlGaAs電子障壁層20(アンドープ、厚さ20nm)、p-In0.48Ga0.52P光ガイド層21(Zn=7×1017cm-3ドープ、厚さ0.05μm)を順次成長させる。
【0017】
次に、フォトリソグラフィ工程と化学エッチングにより、端面に相当する部分(W)を除去する。1チップ分では幅25μmであるので、隣接するチップと合わせて50μmの幅でライン状に除去する。p-In0.48Ga0.52P光ガイド層21をHClによりエッチングし、更にAlGaAs電子障壁層20をH2SO4:H2O2:H2Oの混合液にてエッチングし、In0.48Ga0.52P光ガイド層19をHClによりエッチングし、量子井戸層18をH2SO4:H2O2:H2Oの混合液にてエッチングし、In0.48Ga0.52P光ガイド層17をHClによりエッチングしてレジストなどを除去しウエハを洗浄する。最後にAlGaAsエッチング停止層16をH2SO4:H2O2:H2Oの混合液にてエッチング除去する。最後の工程において、AlGaAsエッチング停止層16が選択的に除去され、表面に露出しているp-In0.48Ga0.52P光ガイド層15はエッチングされないため、エッチング後の洗浄工程で表面が清浄化される。
【0018】
次に、2回目のMOCVD成長により、p-In0.48Ga0.52P光ガイド層22(Zn=7×1017cm-3ドープ、厚さ0.35μm)、p-Al0.63Ga0.37Asクラッド層23(Zn=7×1017cm-3ドープ、厚さ2μm)、p-GaAsキャップ層24(Zn=2×1019cm-3ドープ、0.1μm)を順次積層する。次に、端面近傍の再成長部に対応するp-GaAsキャップ層24をNH4OH:H2O2混合液を用いて選択的に除去する。図1(c)に示すように、端面近傍のキャップ層は除去されていることがわかる。
【0019】
次に、図1(b)に示すように、50μm幅のリッジ構造を形成するため、p-GaAsキャップ層24およびp-Al0.63Ga0.37Asクラッド層23を、10μm幅のストライプ状に2本の溝を形成するように、H2SO4:H2O2:H2Oの混合液にてエッチング除去して、2本の溝の間にリッジストライプを形成する。このエッチャントを用いることにより、エッチングはp-In0.48Ga0.52P光ガイド層22上にて自動的に停止する。次に、プラズマCVDによりSiO2膜25を形成し、希釈したHFにより、端面でキャップ層24を除去した部分を除いて、リッジストライプ上に窓あけを行う。次に、p側電極26(Ti/Pt/Ti/Pt/Au)を蒸着および熱処理により形成し、n-GaAs基板11の底面を、全体の厚みが100μm程度になるまで研磨してする。最後に、n側電極27(AuGe/Ni/Au)を蒸着および熱処理により形成する。
【0020】
このウエハから、ダイアモンド針によるスクライブと劈開により、共振器長が1.5mmであり、長さが約1cmのレーザバーを切り出し、光出射面は8%、裏面は95%以上となるように光学膜をコーティングする。最後にダイアモンド針によるスクライブと劈開により幅約500μmのレーザチップを切り出す。このチップを銅ヒートシンク上にInはんだ (厚さ4μm〜5μm)を用いてp電極26側を接着して評価を行ったところ、室温において波長約809nmで閾値電流約120mAにて発振し、光出力-電流特性にはキンクがなく、5W以上の高出力動作が可能であることが確認されている。
【0021】
本実施の形態においては、AlGaAs電子障壁層20のAl組成は、AlGaAs電子障壁層20のエネルギーギャップがIn0.48Ga0.52P光ガイド層19、21のエネルギーギャップより大きくなる範囲に設定することができる。
【0022】
また、下部のAlGaAsエッチング停止層16のAl組成は、前記AlGaAs電子障壁層20と同一に設定してもよい。
【0023】
また、下部のAlvGa1-vAsエッチング停止層16のAl組成は、In0.48Ga0.52P光ガイド層15、17に対して全てのAl組成において、化学的に選択エッチングが可能なため適宜設定可能である。つまり、AlvGa1-vAsのvは0≦v≦1である。
【0024】
本実施の形態においては、下部のn側光ガイド層中、つまり光ガイド層15と17の間にエッチング停止層となるAlGaAsエッチング停止層16を設けていることにより、極めて制御性が高いエッチングを可能としている。よって、量子井戸活性層から離れた下部の光ガイド層15を再成長の界面とすることができ、活性層から漏れ出した電子による非発光再結合の影響、例えば、効率低下あるいは劣化等を受けることなく、性能あるいは信頼性を向上させることができる。
【0025】
また、上部のp側光ガイド層中、つまり、光ガイド層19と21の間にAlGaAs電子障壁層20を設けることにより、再成長界面、つまり、In0.48Ga0.52P光ガイド層21とIn0.48Ga0.52P光ガイド層22との界面に到達する漏れ電子の低減を実現している。
【0026】
次に、本発明の第2の実施の形態による半導体レーザ素子について説明し、その共振方向に平行な断面図を図2に示す。本実施の形態による半導体レーザ素子は、全面電極構造である。
【0027】
図2に示すように、MOCVD法によりn-GaAs基板31(Si=2×1018cm-3ドープ)上にn-GaAsバッファ層32(Si=5×1017cm-3ドープ、厚さ0.5μm) 、n-In0.48(Ga0.5Al0.5)0.52Pクラッド層33(Si=5×1017cm-3ドープ、厚さ1.5μm)、n-In0.48Ga0.52P光ガイド層34(Si=5×1017cm-3ドープ、厚さ0.3μm)、AlGaAsエッチング停止層35(アンドープ、厚さ20nm)、In0.48Ga0.52P光ガイド層36(アンドープ、厚さ0.1μm)、In0.13Ga0.87As0.75P0.25量子井戸層37(アンドープ、厚さ10 nm)、In0.48Ga0.52P光ガイド層38(アンドープ、厚さ0.1μm)、AlGaAs電子障壁層39(アンドープ、厚さ20nm)、p-In0.48Ga0.52P光ガイド層40(Zn=7×1017cm-3ドープ、厚さ0.05μm)を順次成長する。
【0028】
次に、フォトリソグラフィ工程と化学エッチングにより、端面に相当する部分を除去する。先ず、p-In0.48Ga0.52P光ガイド層40をHClによりエッチング、更にAlGaAs電子障壁層39をH2SO4:H2O2:H2Oの混合液にてエッチング、In0.48Ga0.52P光ガイド層38をHCl、量子井戸層37をH2SO4:H2O2:H2O、In 0.48 Ga 0.52 P光ガイド層36をHClによりエッチングしてレジストなどを除去しウエハを洗浄する。最後にAlGaAsエッチング停止層35をH2SO4:H2O2:H2Oの混合液にてエッチング除去する。
【0029】
次に、2回目のMOCVD成長により、p-InGaAsP光ガイド層41(Zn=7×1017cm-3ドープ、厚さ0.3μm)、p-In0.48(Ga0.5Al0.5)0.52Pクラッド層42(Zn=7×1017cm-3ドープ、厚さ2μm)、p-In0.48Ga0.52P層43(Zn=7×1017cm-3ドープ、厚さ0.1μm)、p-GaAsキャップ層44(Zn=2×1019cm-3ドープ、厚さ0.1μm)を順次積層する。
【0030】
次に、端面近傍の再成長部に対応するp-GaAsキャップ層44をNH4OH:H2O2混合液を用いて選択的に除去する。次に、p側電極45(Ti/Pt/Au)を蒸着および熱処理により形成し、n-GaAs基板31底面を研磨して、全体の厚みが100μm程度になるまで薄くする。最後に、n側電極46(AuGe/Ni/Au)を蒸着および熱処理して形成する。バー切りだし、端面コーティングおよびチップ切り出しを行い半導体レーザ素子を作製する。本実施の形態による半導体レーザ素子は、波長809nmにて発振する。
【0031】
次に、本発明の第3の実施の形態による半導体レーザ素子について説明し、その断面図を図3に示す。本実施の形態の半導体レーザ素子は、全面電極構造である。
【0032】
図3に示すように、MOCVD法によりn-GaAs基板51(Si=2×1018cm-3ドープ)上に、n-GaAsバッファ層52(Si=5×1017cm-3ドープ、厚さ0.5μm) 、n-AlxGa1-xAsグレーデッドバッファ層53(Si=5×1017cm-3ドープ、xは0.1から0.5まで徐々に増加する、厚さ0.2μm)、n-Al0.5Ga0.5Asクラッド層54(Si=5×1017cm-3ドープ、厚さ1.5μm)、n- In0.13Ga0.87As0.75P0.25光ガイド層55(Si=5×1017cm-3ドープ、厚さ0.4μm)、In0.48Ga0.52Pエッチング停止層56(アンドープ、厚さ20nm)、In0.13Ga0.87As0.75P0.25光ガイド層57(アンドープ、厚さ0.1μm)、In0.16Ga0.84As量子井戸層58(アンドープ、7 nm)、In0.13Ga0.87As0.75P0.25光ガイド層59(アンドープ、厚さ0.1μm)、AlGaAs電子障壁層60(アンドープ、厚さ20nm)、p-In0.13Ga0.87As0.75P0.25光ガイド層61(Zn=7×1017 cm-3ドープ、厚さ0.05μm)を順次成長する。
【0033】
次に、フォトリソグラフィ工程と化学エッチングにより、端面に相当する部分を除去する。先ず、p-InGaAsP光ガイド層61、AlGaAs電子障壁層60、InGaAsP光ガイド層59、量子井戸層58、InGaAsP光ガイド層57をH2SO4:H2O2:H2Oの混合液にてエッチングし、レジストなどを除去しウエハを洗浄する。最後にIn0.48Ga0.52Pエッチング停止層56をHClにてエッチング除去する。
【0034】
次に、2回目のMOCVD成長により、p-In0.13Ga0.87As0.75P0.25光ガイド層62(Zn=7×1017cm-3ドープ、厚さ0.3μm)、p-In0.48(Ga0.5Al0.5)0.52Pクラッド層63(Zn=7×1017 cm-3ドープ、厚さ2μm)、p-GaAsキャップ層64(Zn=2×1019cm-3ドープ、厚さ0.1μm)を順次積層する。次に、端面近傍の再成長部に対応するp-GaAsキャップ層64をNH4OH:H2O2混合液を用いて選択的に除去する。次に、p側電極65(Ti/Pt/Au)を蒸着および熱処理により形成し、n-GaAs基板51底面を研磨して、全体の厚みが100μm程度になるまで薄くする。最後に、n側電極66(AuGe/Ni/Au)を蒸着および熱処理により形成する。バーきりだし、端面コーティングおよびチップ切り出しにより半導体レーザ素子を作製する。本実施の形態による半導体レーザ素子は、波長980nmで発レーザ発振する。
【0035】
次に、本発明の第4の実施の形態による半導体レーザ素子について説明し、その共振方向に平行な断面図を図4に示す。本実施の形態による半導体レーザ素子においては、最も単純な全面電極構造を採用している。
【0036】
図4に示すように、MOCVD法によりn-GaAs基板71(Si=2×1018cm-3ドープ)上にn-GaAsバッファ層72(Si=5×1017cm-3ドープ、厚さ0.5μm)、n-In0.48Ga0.52Pクラッド層73(Si=5×1017cm-3ドープ、厚さ1.5μm)、n-In0.13Ga0.87As0.75P0.25光ガイド層74(Si=5×1017cm-3ドープ、厚さ0.3μm)、In0.48Ga0.52Pエッチング阻止層75(アンドープ、厚さ20nm)、In0.13Ga0.87As0.75P0.25光ガイド層76(アンドープ、厚さ0.1μm)、In0.13Ga0.87As量子井戸層77(アンドープ、厚さ6nm)、In0.13Ga0.87As0.75P0.25光ガイド層78(アンドープ、厚さ0.1μm)、GaAs0.75P0.25電子障壁層79(アンドープ、厚さ12nm)、p-In0.13Ga0.87As0.75P0.25光ガイド層80(Zn=7×1017cm-3ドープ、厚さ0.05μm)を順次成長する。
【0037】
次に、フォトリソグラフィ工程と化学エッチングにより、端面に相当する部分を除去する。先ず、p-InGaAsP光ガイド層80、GaAsP電子障壁層79、InGaAsP光ガイド層78、量子井戸層77、InGaAsP光ガイド層76をH2SO4:H2O2:H2Oの混合液にてエッチングし、レジストなどを除去しウエハを洗浄する。最後にIn0.48Ga0.52Pエッチング停止層75をHClによりエッチング除去する。
【0038】
次に、2回目のMOCVD成長により、p- In0.13Ga0.87As0.75P0.25光ガイド層81(Zn=7×1017cm-3ドープ、厚さ0.3μm)、p-In0.48Ga0.52Pクラッド層82(Zn=7×1017cm-3ドープ、厚さ2μm)、p-GaAsキャップ層83(Zn=2×1019cm-3ドープ、厚さ0.1μm)を順次積層する。次に、端面近傍の再成長部に対応するp-GaAsキャップ層83をNH4OH:H2O2混合液を用いて選択的に除去する。次に、p側電極84(Ti/Pt/Au)を蒸着および熱処理により形成し、n-GaAs基板71底面を研磨して、全体の厚みが100μm程度になるまで薄くする。最後に、n側電極85(AuGe/Ni/Au)を蒸着および熱処理により形成する。バー切りだし、端面コーティングおよびチップ切り出しを行って半導体レーザ素子を作製する。本実施の形態による半導体レーザ素子は波長950nmにて発振する。
【0039】
次に、本発明の第5の実施の形態による半導体レーザ素子について説明し、その断面図を図5に示す。本実施の形態による半導体レーザ素子は内部ストライプ屈折率導波型レーザである。図5(a)に共振方向に平行な断面図を示し、図5(a)におけるA−A'断面図を図5(b)に示し、図5(a)におけるB−B'断面図を図5(c)に示す。
【0040】
図5(a)に示すように、減圧MOCVD法によりn-GaAs基板91(Si=2×1018cm-3ドープ)上にn-GaAsバッファ層92(Si=5×1017cm-3ドープ、厚さ0.5μm) 、n-AlxGa1-xAsグレーデッドバッファ層93(Si=5×1017cm-3ドープ、xは0.1から0.45まで徐々に増加する。0.2μm)、n-Al0.45Ga0.35Asクラッド層94(Si=5×1017cm-3ドープ、厚さ1.5μm)、n- In0.13Ga0.87As0.75P0.25光ガイド層95(Si=5×1017cm-3ドープ、厚さ0.4μm)、In0.48Ga0.52Pエッチング停止層96(アンドープ、厚さ20nm)、In0.13Ga0.87As0.75P0.25光ガイド層97(アンドープ、厚さ0.1μm)、In0.16Ga0.84As量子井戸層98(アンドープ、厚さ7 nm)、In0.13Ga0.87As0.75P0.25光ガイド層99(アンドープ、厚さ0.1μm)、Al0.5Ga0.5As電子障壁層100(アンドープ、厚さ20nm)、p-In0.13Ga0.87As0.75P0.2光ガイド層101(Zn=7×1017cm-3ドープ、厚さ0.05μm)を順次成長する。
【0041】
次に、フォトリソグラフィ工程と化学エッチングにより、端面に相当する部分を除去する。先ず、p-In0.13Ga0.87As0.75P0.2光ガイド層101、Al0.5Ga0.5As電子障壁層100、In0.13Ga0.87As0.75P0.25光ガイド層99、In0.16Ga0.84As量子井戸層98、In0.13Ga0.87As0.75P0.25光ガイド層97をH2SO4:H2O2:H2Oの混合液にてエッチング除去してレジストなどを除去しウエハを洗浄する。In0.48Ga0.52Pエッチング停止層96をHClによりエッチング除去する。
【0042】
次に、2回目のMOCVD成長により、p-In0.13Ga0.87As0.75P0.2光ガイド層102(Zn=7×1017cm-3ドープ、厚さ0.35μm)、n-In0.48Ga0.52Pエッチング停止層103(Si=1×1018cm-3ドープ、厚さ10nm)、n-Al0.55Ga0.45As電流狭窄層104(Si=1×1018cm-3ドープ、0.8μm)、n-GaAs層105(Si=1×1018cm-3ドープ、厚さ10nm)を成長する。次に、図5(a)を参照して、フォトリソグラフィとH2SO4:H2O2:H2Oの混合液を用いて、端面の活性層除去部を除く発振ストライプ領域のn-GaAs層105、n-Al0.55Ga0.45As電流狭窄層104をエッチング除去し、更にn-In0.48Ga0.52Pエッチング停止層103をHClにて除去する。このようにして、端面近傍に図5(b)に示すように、電流非注入部を形成する。図5(c)に示すように、端面近傍においては、電流注入部は形成されていない。
【0043】
次に、3回目のMOCVD成長により、p-Al0.45Ga0.35Asクラッド層106(Zn=7×1017cm-3ドープ、厚さ1.5μm)、p-GaAsキャップ層107(Zn=2×1019cm-3ドープ、厚さ0.1μm)を積層する。次に、p側電極108(Ti/Pt/Au)を蒸着および熱処理により形成し、n-GaAs基板91の底面を研磨して、全体の厚みが100μm程度になるまで薄くする。最後に、n側電極109(AuGe/Ni/Au)を蒸着および熱処理により形成する。バー切りだし、端面コーティングおよびチップ切り出しを行って半導体レーザ素子を作製する。本実施の形態による半導体レーザ素子は波長980nmにて発振する。
【0044】
本実施の形態による半導体レーザ素子は、図5(c)に示すように、端面近傍では、活性領域が除去されて、n-In0.13Ga0.87As0.75P0.25光ガイド層95の上に再成長によるp-In0.13Ga0.87As0.75P0.2光ガイド層102が形成されており、発振光が非吸収な構造となっている。
【0045】
本実施の形態において、発振ストライプ幅を3μm程度とすることにより単一横モードの高出力動作が可能である。さらに、ストライプ幅を50μmとすれば、5W以上の高出力動作が可能である。
【0046】
次に、本発明の第6の実施の形態による半導体レーザ素子について説明し、その断面図を図6に示す、共振方向に平行な断面図を図6(a)に示し、図6(b)に、図6(a)におけるA−A'断面図を示し、図6(c)に、図6(a)におけるB−B'断面図を示す。本実施の形態による半導体レーザ素子は、内部ストライプ屈折率導波型レーザである。
【0047】
図6(a)に示すように、減圧MOCVD法によりn-GaAs基板111(Si=2×1018cm-3ドープ)上にn-GaAsバッファ層112(Si=5×1017cm-3ドープ、厚さ0.5μm) 、n-In0.48(Ga0.4Al0.6)0.52Pクラッド層113(Si=5×1017cm-3ドープ、厚さ1.5μm)、n-In0.48Ga0.52P光ガイド層114(Si=5×1017cm-3ドープ、厚さ0.4μm)、Al0.5Ga0.5Asエッチング停止層115(アンドープ、厚さ20nm)、In0.48Ga0.52P光ガイド層116(アンドープ、厚さ0.1μm)、In0.13Ga0.87As0.75P0.25量子井戸層117(アンドープ、厚さ10 nm)、In0.48Ga0.52P光ガイド層118(アンドープ、厚さ0.1μm)、Al0.5Ga0.5As電子障壁層119(アンドープ、厚さ20nm)、p-In0.48Ga0.52P光ガイド層120(Zn=7×1017cm-3ドープ、厚さ0.05μm)を順次成長する。
【0048】
次に、フォトリソグラフィ工程とHClとH2SO4:H2O2:H2Oの混合液を交互に用いた選択化学エッチングにより、端面に相当する部分をAl0.5Ga0.5Asエッチング停止層115まで除去する。次に、図6(b)に示すように、2回目のMOCVD成長により、p-In0.48Ga0.52P光ガイド層121(Zn=7×1017cm-3ドープ、厚さ0.35μm)、n-GaAsエッチング停止層122(Si=1×1018cm-3ドープ、厚さ10nm)、n-In0.48(Ga0.6Al0.4)0.52P電流狭窄層123(Si=1×1018cm-3ドープ、厚さ0.8μm)、n-In0.48Ga0.52P層124(Si=1×1018cm-3ドープ、厚さ10nm)を成長する。次に、フォトリソグラフィとHClを用いて、発振ストライプ領域のn-In0.48Ga0.52P層124、n-In0.48(Ga0.6Al0.4)0.52P電流狭窄層123をエッチング除去し、更にn-GaAsエッチング停止層122をNH4OH:H2O2の混合液を用いて除去する。
【0049】
その後、3回目のMOCVD成長により、p-In0.48(Ga0.4Al0.6)0.52Pクラッド層125(Zn=7×1017cm-3ドープ、厚さ1.5μm)、p-In0.48Ga0.52P層126(Zn=7×1017cm-3ドープ、厚さ0.1μm)、p-GaAsキャップ層127(Zn=2×1019cm-3ドープ、厚さ0.1μm)を積層する。次に、p側電極128(Ti/Pt/Au)を蒸着および熱処理により形成し、n-GaAs基板111底面を研磨して、全体の厚みが100μm程度になるまで薄くする。最後に、n側電極129(AuGe/Ni/Au)を蒸着および熱処理により形成する。バー切り出し、端面コーティングおよびチップ切り出しを行って半導体レーザ素子を作製する。
【0050】
本実施の形態による半導体レーザ素子は図6(c)に示すように、端面近傍において、光ガイド層、量子井戸活性層が除去されており、n-In0.48Ga0.52P光ガイド層114の上にp-In0.48Ga0.52P光ガイド層121が形成されており、端面で発振光が非吸収な構造となっている。本実施の形態による半導体レーザ素子は波長810nmにてレーザ発振する。
【0051】
上記第2の実施の形態から第6の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、性能および信頼性の向上が図られる。
【0052】
本発明は上記実施の形態による半導体レーザに限られるものでなく、あらゆる組成あるいは構造の半導体レーザ素子に適用することが可能であり、上記実施の形態同様、特性および信頼性の向上が図られる。
【0053】
本発明の半導体レーザ素子は、端面に発振光が非吸収となる信頼性の高い端面窓構造を備えているので、高速な情報・画像処理及び通信、計測、医療、印刷の分野での光源として応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による半導体レーザ素子を示す断面図
【図2】本発明の第2の実施の形態による半導体レーザ素子を示す断面図
【図3】本発明の第3の実施の形態による半導体レーザ素子を示す断面図
【図4】本発明の第4の実施の形態による半導体レーザ素子を示す断面図
【図5】本発明の第5の実施の形態による半導体レーザ素子を示す断面図
【図6】本発明の第6の実施の形態による半導体レーザ素子を示す断面図
【符号の説明】
11 n-GaAs基板
12 n-GaAsバッファ層
13 n-AlxGa1-xAsグレーデッドバッファ層
14 n-Al0.63Ga0.37Asクラッド層
15 n-In0.48Ga0.52P光ガイド層
16 AlGaAsエッチング停止層
17 In0.48Ga0.52P光ガイド層
18 In0.13Ga0.87As0.75P0.25量子井戸層
19 In0.48Ga0.52P光ガイド層
20 AlGaAs電子障壁層
21 p-In0.48Ga0.52P光ガイド層
22 p-In0.48Ga0.52P光ガイド層
23 p-Al0.63Ga0.37Asクラッド層
24 p-GaAsキャップ層
25 SiO2
26 p側電極
27 n側電極

Claims (3)

  1. 基板上に、量子井戸活性層の上部および下部に光ガイド層を備えた活性領域が形成されており、光軸方向に垂直な端面近傍が前記下部光ガイド層の深さ方向の途中までエッチングにより除去されており、前記活性領域の上全体に、発振光のエネルギーより禁制帯幅が大きい半導体が再成長されている半導体レーザ素子において、
    前記再成長されている半導体が、前記下部光ガイド層と同一組成の光ガイド層であり、
    前記下部光ガイド層内に、前記エッチングを前記下部光ガイド層の深さ方向の途中で選択的に停止させるエッチング停止層が形成されており、かつ、前記上部光ガイド層内に、該上部光ガイド層の禁制帯幅より大きい半導体からなる電子障壁層が形成されていることを特徴とする半導体レーザ素子。
  2. 前記量子井戸活性層が、Alを含まない半導体からなることを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ素子。
  3. 前記発振光のエネルギーより禁制帯幅が大きい半導体および該半導体層を再成長する領域に露出している層の半導体が、Alを含まない組成であることを特徴とする請求項1または2記載の半導体レーザ素子。
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