JP3564918B2 - 半導体レーザおよびその製造方法 - Google Patents

半導体レーザおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体レーザおよびその製造方法に関するものである。本発明の半導体レーザは光ファイバー増幅器用励起光源、光情報処理用の光源等の、高出力、長寿命の両立を要求される用途に好適に利用される。
【0002】
【従来の技術】
近年における光情報処理技術、光通信技術の進展には目ざましい物がある。例えば、光磁気ディスクによる高密度記録、光ファイバーネットワークによる双方向通信と枚挙に暇がない。
例えば、通信分野においては、今後のマルチメディア時代に本格的に対応する大容量の光ファイバー伝送路とともに、その伝送方式に対する柔軟性を持つ信号増幅用のアンプとして、Er3+等の希土類をドープした光ファイバー増幅器(EDFA)の研究が各方面で盛んに行なわれている。そして、EDFAのコンポーネントとして不可欠な要素である、高効率な励起光源用の半導体レーザの発明が待たれている。
【0003】
EDFA応用に供することのできる励起光源の発振波長は原理的に3種類存在し、800nm、980nm、1480nmである。このうち増幅器の特性から見れば980nmでの励起が、利得、ノイズ等を考慮すると最も望ましいことが知られている。このような980nmの発振波長を有するレーザは励起光源として高出力であることと長寿命であるという相反する特性を満足することを望まれている。さらにこの近傍の波長、たとえば890−1200nmにおいてはSHG光源、レーザプリンタ用の熱源としての要求もあり、その他種々の応用面においても高出力で信頼性の高いレーザの開発がまたれている。
【0004】
例えば、この帯域では50−100mW程度の光出力において2年程度の連続使用に耐える半導体レーザが開発されているが、より高い光出力における動作では急速な劣化がおこり、信頼性は不十分である。
この原因のひとつは、非常に高い光密度にさらされるレーザ光の出射端面の劣化に起因するものである。GaAs/AlGaAs系GaAs/InGaAlP系の半導体レーザでもよく知られているように、レーザ端面近傍には多数の表面準位が存在するが、これらの準位がレーザ光を吸収するため、一般的に端面近傍の温度はレーザ内部の温度よりも高くなり、この温度上昇がさらに端面近傍のバンドギャップを狭くし、さらにレーザ光を吸収しやすくするといった正帰還がおきると説明されている。この現象は瞬時に大電流を流した際に観測される端面破壊いわゆるCOD(Catastrophic Optical Damage)、また長期に通電試験した際のCODレベルの低下に伴う素子の偶発故障として多くの半導体レーザ素子において共通の問題となっている。
【0005】
これらの現象に対する対策としては、端面近傍の活性層領域のバンドギャップを発振波長に対して透明になるようにし、前述の端面近傍での光吸収をおさえる方法が種々提案されている。これらの構造のレーザは一般に窓構造レーザあるいはNAM(Non Absorbing Mirror)構造レーザと呼ばれており、特に高出力を必要とする際には非常に効果的である。
【0006】
窓構造の作成には種々の方法、たとえば、レーザ端面に発光波長に対して透明な半導体材料をエピタキシャル成長させる方法や、ZnあるいはSi等をレーザの端面近傍の活性層に不純物として意図的に拡散させ、無秩序化させる種々の方法等が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、レーザ端面に発光波長に対して透明な半導体材料をエピタキシャル成長させる方法では、レーザをいわゆるバーの状態にして端面へのエピタキシャル成長を行うために、この後に行う電極工程が非常に煩雑なものとなってしまう。ZnあるいはSi等をレーザの端面近傍の活性層に不純物として意図的に拡散させ、無秩序化させる方法の場合は、一般にこの拡散はレーザ素子のエピタキシャル方向から基板方向に向かって行われるため、拡散深さの制抑性、また共振器方向に対する横方向拡散の制抑性に問題があり安定した作成は難しい。また拡散を行った領域での抵抗の低下に伴う無効電流の発生がレーザのしきい値電流や駆動電流を増加させる等の問題があった。
【0008】
本発明はかかる課題を解決するためにおこなわれたもので、その目的は、簡便な方法で作製可能な、無効電流等の無い、高性能の窓構造を有する半導体レーザを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、半導体基板上に第一導電型クラッド層、量子井戸を含む活性層および第二導電型クラッド層を有する半導体レーザにおいて、真空中で、共振器を形成する少なくとも一つの端面に光または電子線を照射して加熱することにより、該端面近傍の蒸気圧の高い元素を選択的に再蒸発させることができ、該端面近傍に、活性層を構成する材料が有する実効的なバンドギャップよりも大きなバンドギャップをもつ領域が形成され、即ち半導体レーザの発信波長に対して透明化されるので、上述の従来法に伴う問題なく、容易に高性能の窓構造を有する高出力、長寿命の半導体レーザとなすことができることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
本発明の第1の要旨は、半導体基板上に第一導電型クラッド層、量子井戸を含む活性層および第二導電型クラッド層を有する半導体レーザにおいて、該活性層は、共振器を形成する少なくともひとつの端面近傍が、構成元素の一部が脱離することにより発振波長に対して透明化されていることを特徴とする半導体レーザに存する。
【0011】
本発明の第2の要旨は、半導体基板上に第一導電型クラッド層、量子井戸を含む活性層および第二導電型クラッド層を有する半導体レーザの製造方法において、該半導体基板上に該第一導電型クラッド層、量子井戸を含む活性層および第二導電型クラッド層を形成し、該層構造の上面下面に電極を形成してウエハを完成させ、該ウエハを劈開してレーザーバーに分割し、次いで、共振器を形成する少なくとも一つの端面に、真空中で光または電子線を照射することにより、端面近傍の領域を加熱し、蒸気圧の高い元素を選択的に再蒸発させて、該活性層の端面近傍に発振波長に対して透明化された領域を形成することを特徴とする半導体レーザの製造方法に存する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明半導体レーザは、半導体基板上に第一導電型クラッド層、量子井戸構造を有する活性層および第二導電型クラッド層を有し、端面を共振器構造として利用する半導体レーザであれば、その構造の詳細は特に限定されないが、以下に、具体的構造の一例として、屈折率導波機構を有し、第二導電型クラッド層が第一、第二の二層に分かれ、第二導電型第二クラッド層と電流ブロック層とで電流注入領域を形成する構造の半導体レーザについて説明する。その様な半導体レーザは、光通信に用いられる光ファイバー増幅器用の励起光源として望まれる、活性層にInGaAs量子井戸を含む980nm近傍のレーザの構造として好ましい。
【0013】
図2は、本発明の半導体レーザにおけるエピタキシャル構造の一例としてグルーブ型の半導体レーザを構成した模式的一例である。
本発明の半導体レーザにおいて、半導体基板としては、通常、所謂III−V族化合物単結晶基板(ウエハ)が使用される。III−V族化合物単結晶基板は、周期律表の第IIIb族元素と第Vb族元素との化合物のバルク結晶から切り出して得られる。ウエハの材料としては、GaP、GaAs、InP等の群から、目的とする波長、活性層の材料、望まれる光出力等によって適宜選択される。活性層にInGaAs量子井戸を含む場合は、特にGaAsが好適に使用される。
【0014】
バッファ層(2)は、基板バルク結晶の不完全性を緩和し、結晶軸を同一にしたエピタキシャル薄膜の形成を容易にするために設けることが好ましい。バッファ層(2)は、基板(1)と同一の化合物で構成するのが好ましく、活性層にInGaAs量子井戸を含み、GaAs基板が用いられた場合は、通常、GaAsが使用される。
【0015】
第一導電型クラッド層(3)は、例えば活性層(4)の平均的屈折率より小さな屈折率を有する材料で構成され、バッファ層(2)としてGaAsを使用した場合は、通常AlGaAs系材料またはIn0.49Ga0.51Pが使用される。AlGaAs系材料については、その混晶比は、屈折率が上記の条件を満足する様に適宜選択される。
【0016】
活性層(4)の構造としては、量子井戸を有する構造であり、単一量子井戸(SQW)構造、二重量子井戸(DQW)構造、多重量子(MQW)構造等を適宜採用することができる。そして、量子井戸構造には、通常、光ガイド層が併用され、必要に応じて量子井戸の分離のために障壁層が併用される。活性層の構造としては、量子井戸の両側に光ガイド層を設けた構造(SCH構造)、光ガイド層の組成を徐々に変化させることにより屈折率を連続的に変化させた構造(GRIN−SCH構造)等を採用することが出来る。
【0017】
活性層(4)の材料は、目的とする発光波長や出力などによって、適宜選択される。980nmの発振波長を得るためには、通常InGa1−uAs(0.15≦u≦0.25)が用いられる。一般に、III族元素の砒素化合物の真空中での再蒸発に関わる蒸気圧はInAs>GaAs>AlAsであり、これらの混晶半導体は熱処理温度を選ぶことにより、元素を選択的に再蒸発させることができる。InGaAsの場合500℃〜650℃でInAsが選択的に再蒸発し、In濃度が低い領域が熱処理を施した表面近傍に形成される。これにより表面近傍のバンドギャップを広げることができ、いわゆる窓構造が実現される。
【0018】
上記のような処理が可能な材料としては、AlGaAs系材料、InGaAs系材料、InGaAsP系材料、InGaAlP系材料等が挙げられ、好ましくはInおよびGaを含む材料、最も好ましくは、InGa1−qAs(0<q<1)の様なIn、GaおよびAsを含む材料からなる活性層を有する980nm近傍、即ち、890〜1200nm程度の発光波長の半導体レーザに対して好適に作用する。また、障壁層の組成としては、AlGa1−xAs(0≦x≦1)が好ましい。
【0019】
第二導電型第一クラッド層(5)は、活性層(4)の平均的屈折率よりも小さな屈折率を有する材料で構成される。そして、第二導電型第一クラッド層(5)の屈折率と、第一導電型クラッド層(3)のそれとは通常同一とされる。従って、第二導電型第一クラッド層(5)の材料としては、第一導電型クラッド層(3)と同様の材料が使用され、その混晶比は、第一導電型クラッド層(3)と通常同一とされる。
【0020】
図2には、二種類のエッチング阻止層およびキャップ層が記載されているが、これらの層は、本発明の好ましい態様において採用され、電流注入領域分の作り込みを精密かつ容易に行うのに有効である。
第二エッチング阻止層(6)は、AlGa1−aAs(0≦a≦1)材料にて構成されるが通常はGaAsが好適に使用される。これはMOCVD法等で第二導電型第二クラッド層等を再成長させる際に結晶性よく積層することができるためである。第二エッチング阻止層(6)の厚さは通常2nm以上が好ましい。
【0021】
第一エッチング阻止層(7)は、InGa1−bP(0≦b≦1)で表される層が好適であり、GaAsを基板として使用した際は、通常歪みのない系でb=0.45が用いられる。第一エッチング阻止層の厚さは通常5nm以上であり、好ましくは10nm以上である。5nm未満であると、膜厚の乱れ等により、エッチングを阻止することができなくなってしまう可能性がある。一方膜厚によっては歪み系を用いることもでき、b=0、b=1等を用いることも可能である。
【0022】
キャップ層(10)は、第1回目成長において電流ブロック層(9)の保護層として用いられると同時に第二導電型第二クラッド層(8)の成長を容易にするために用いられ、素子構造を得る前に、一部または全て除去される。
電流ブロック層(9)としては、文字通り電流をブロックして実質的に流さないことが必要であるので、その導電型は第一導電型クラッド層(3)と同一かあるいはアンドープとすることが好ましく、また、通常第二導電型第一クラッド層(5)と同様の材料からなる第二導電型第二クラッド層(8)より屈折率が小さいことが好ましい。通常、電流ブロック層(9)はAlGa1−zAs(0<z≦1)からなり、したがって混晶比としては第二導電型第二クラッド層(8)がAlGa1−vAs材料の場合はz≧v、In0.49Ga0.51Pの場合にはx<0.45かつz>0.5になることが好ましい。また、上述の障壁層との関係では、x<v≦zとすることが好ましい。
【0023】
第二導電型第二クラッド層(8)上には電極の接触抵抗率を下げるため等の目的でコンタクト層(11)を設けるのが好ましい。コンタクト層(11)は、通常、GaAs材料にて構成される。この層は通常電極との接触抵抗率を低くするためにキャリア濃度を他の層より高くすることが行われる。
また、通常、バッファ層(2)の厚さは0.1〜1μm、第一導電型クラッド層(3)の厚さは0.5〜3μm、活性層(4)を構成する量子井戸、光ガイド層および障壁層は、各層1層当たり0.0002〜0.2μm、第二導電型第一クラッド層(5)の厚さは0.05〜0.4μm第導電型第二クラッド層(8)の厚さは0.5〜3μm、キャップ層(10)の厚さは0.005〜0.5μm、電流ブロック層(9)の厚さは0.3〜2μm、コンタクト層の厚さは0.3〜10μmの範囲から選択される。
【0024】
図2に示す半導体発光素子は、さらに電極(12)、(13)を形成して構成される。電極(12)は、p型の場合、コンタクト層(11)表面に例えばTi/Pt/Auを順次に蒸着した後、アロイ処理することによって形成される。一方、電極(13)は、基板(1)の表面に形成され、n型電極の場合、基板(1)表面に例えばAuGe/Ni/Auを順次に蒸着した後、アロイ処理することによって形成される。
【0025】
その上に、電極を形成して完成されたウエハは、劈開してレーザーバーに分割し、真空中で共振器を形成する少なくとも1つの端面に、光または電子線を照射する。本発明では、この様に、電極形成後に端面処理する、即ち、端面を露出させるための劈開前のウエハに電極を形成することができるので、例えば、端面に半導体層を形成して透明化する場合と比べ、劈開後のレーザーバーのひとつひとつに電極を形成するという煩雑な工程が不要となるので製造上も有利である。
【0026】
照射する光または電子線は、端面近傍を熱処理して、蒸気圧の高い元素を選択的に再蒸発させるという目的に沿って適宜選択すればよいが、光を照射する場合は、活性層に用いる材料が吸収する波長を含む光源を用いれば良い。通常ハロゲンランプ等が好適に用いられる。電子線を照射する場合は、100eV以上100KeV以下のエネルギーの電子線が好ましい。照射量はレーザーバーの表面が目的とする温度に上昇するよう、適宜調節すればよい。レーザーバー全体の熱負荷を軽減するために、照射時間はなるべく短時間であることが好ましい。通常10分以下であるが、より好ましくは5分以下である。これらの加熱条件を決定するには測温用のサンプルをいっしょに装着しておき、プロセス後に何度まで達したかを見積もることも可能だが、温度が低ければ透明化の効果が現れず、高すぎければチップに問題が生じるので、数回の実験を繰り返すことにより加熱条件を最適化することができる。
【0027】
この様に、光または電子線を適度に照射し端面近傍の領域を加熱することにより、端面に吸着している酸化物等の不純物を除去するとともに、当該活性層を構成する元素の再蒸発速度の差を利用して、端面近傍の領域から特定の元素の選択的な再蒸発をさせ、当該活性層の端面近傍にレーザの発振波長に相当するエネルギーよりも大きいバンドギャップを有する領域を効率よく形成することができる。
【0028】
端面には、引き続き、非対称コーティングを行うこともできる。通常、光を取り出す前端面には単層のAlO膜、SiO膜、SiN膜等を成膜して低反射面とし、後端面にはAlO/α−Si、SiO/TiO等を複数層成膜して高反射面とすることが行われる。本発明においては、かかる端面の非対称コーティングを、Ar照射に引き続き、真空を破らずに行うことが好ましい。端面非対称コーティングされたレーザーバーは、チップ単位に分割され、レーザーダイオード(LD)として利用される。
【0029】
図1は、本発明半導体レーザの斜視図である。端面とその近傍の領域15が、光または電子線照射によって選択的な再蒸発が生じた領域であり、両端面近傍はレーザの発振波長において透明化されている。
本発明の半導体レーザは、半導体基板上に第一導電型クラッド層、量子井戸を含む活性層および第二導電型クラッド層を有する半導体レーザにおいて、共振器を形成する少なくとも一つの端面に最適化された光または電子線を当該端面側から照射することによって、少なくとも量子井戸を含む活性層の端面近傍に選択的な再蒸発による組成の異なる領域が形成され、即ち、かかる領域は、同一層内で隣接する光または電子線照射の影響がない部分よりもバンドギャップが大きくレーザーの発振波長に対して透明であることを特徴とするが、この様ないわゆる窓構造を非常に簡便に、安定して作製でき、しかも、同時に端面に吸着した不純物を除去し、不純物による表面準位密度を低減化できるため、高出力で長寿命な半導体レーザダイオードを容易に実現できる。
【0030】
なお、以上の説明は、屈折率導波機構を有するグルーブ型の半導体レーザにかかわるものだが、本発明は、リッジ型の半導体レーザ、利得導波型機構を有するレーザ等その構成にかかわらず、本願特許請求の範囲に記載した特徴を備える限り、いかなる半導体レーザにも同様に適用できる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、下記実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
図2に示すグルーブ型のレーザ素子を以下の通り製造した。
【0032】
キャリア濃度1×1018cm−3のn型GaAs基板(1)上に、MBE法にて、バッファ層(2)として1μmの厚さのキャリア濃度1×1018cm−3のn型GaAs層、第一導電型クラッド層(3)として2μmの厚さのキャリア濃度1×1018cm−3のn型Al0.35Ga0.65As層、次いで、厚さ24nmのアンドープGaAs光ガイド層、厚さ6nmのアンドープIn0.2Ga0.8As量子井戸層、厚さ10nmのアンドープGaAs障壁層、厚さ6nmのアンドープIn0.2Ga0.8As量子井戸層および厚さ24nmのアンドープGaAs光ガイド層を順次積層してなる二重量子井戸(DQW)構造を有する活性層(4)、第二導電型第一クラッド層(5)として厚さ0.1μm、キャリア濃度1×1018cm−3のp型Al0.35Ga0.65As層、第2エッチング阻止層(6)として厚さ10nm、キャリア濃度1×1018cm−3のp型GaAs層、第1エッチング阻止層(7)として厚さ20nm、キャリア濃度5×1017cm−3のn型In0.49Ga0.51P層、電流ブロック層(9)として厚さ0.5μm、キャリア濃度5×1017cm−3のn型Al0.4Ga0.6As層、キャップ層(10)として厚さ10nm、キャリア濃度1×1018cm−3のn型GaAs層、を順次積層した。
【0033】
次に、最上層の電流注入領域分を除く部分に窒化シリコンのマスクを設けた。この場合に、窒化シリコンマスクの開口部の幅は1.5μmとした。第1エッチング阻止層をエッチングストップ層としてエッチングを行い、電流注入領域部分のキャップ層(10)と電流ブロック層(9)を除去した。この時用いたエッチャントは、硫酸(98wt%)、過酸化水素(30wt%水溶液)及び水を体積比で1:1:5で混合したものを用い、25℃で30秒間行った。
【0034】
次いでHF(49%)とNHF(40%)を1:6で混合したエッチング液に2分30秒間浸漬して窒化シリコン層を除去し、更に第2エッチング阻止層をエッチングストップ層として、電流注入領域部分の第1エッチング阻止層をエッチング除去した(図7)。この時用いたエッチャントは、塩酸(35wt%)と水を2:1に混合したものであり、温度は25℃、時間は2分間とした。
【0035】
この後、MOCVD法にて第二導電型第二クラッド層(8)としてキャリア濃度1×1018cm−3のp型Al0.35Ga0.65As層を埋め込み部分(電流注入領域部分)で2μmの厚さになるよう成長させ、最後に電極との良好な接触を保つためのコンタクト層(11)として、厚さ3μm、キャリア濃度1×1019cm−3のp型GaAs層を成長させレーザ素子を形成した。このレーザ素子の電流注入領域の幅W、即ち、第二導電型第二クラッド層の、第二導電型第一クラッド層との界面における幅は、2.2μmであった。
【0036】
次に、p側にTi/Pt/Auを、n側にAuGe/Ni/Auを順次蒸着した後、400℃、5分間アロイを行なって電極を形成した後に、レーザをいわゆるバーの状態にし真空中で両端面に出力4KWのハロゲンランプを3分間ずつ照射した。ハロゲンランプ照射中のレーザーバー端面温度は約550℃であった。この後に真空を破らずに、引き続き、前端面に1層のアルミナを、後端面にアルミナ/非晶質シリコン/アルミナ/非晶質シリコンの4層を成膜し、5%/90%の非対称コーティングを行なった。その結果得られた素子の初期の電流光出力特性を図3に、200mW出力、70℃におけるAPCモードでの寿命試験結果を図4に示す。
(比較例1)
ハロゲンランプ照射を行わなかった以外は、実施例1と全く同様にした。初期の電流光出力特性図5に寿命試験結果を図6に示す。
(比較例2)
ハロゲンランプの照射時間を20分とした以外、実施例1と全く同様にした。初期の電流光出力特性を図7に示す。図7に示す様に、初期に200mW出力に達しないため、寿命試験ができなかった。
【0037】
【発明の効果】
本発明の半導体レーザは、量子井戸を含む活性層の共振器を形成する端面近傍に、構成元素の一部が脱離することにより、レーザの発振波長に対して吸収のない透明な窓領域を形成しているので、高出力動作時に端面温度の上昇を抑えることができ、ひいては端面劣化を抑制し、高出力かつ高信頼性である等優れた特性を有する。本発明の半導体レーザの製造方法は、共振器を形成する少なくともひとつの端面に光または電子線を照射するという簡便な方法で、酸化物等の不純物除去とともに元素の選択的な再蒸発をおこさしめ、端面劣化のない、高出力、長寿命の半導体レーザを容易に製造でき、多大な工業的利益を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体レーザの斜視図である。
【図2】本発明実施例1の半導体レーザの共振器方向から見た断面説明図である。
【図3】本発明実施例1の半導体レーザの電流光出力特性を示すグラフである。
【図4】本発明実施例1の半導体レーザの200mW出力、70℃におけるAPCモードでの寿命試験の結果を示すグラフである。
【図5】本発明比較例1の半導体レーザの初期の電流光出力特性を示すグラフである。
【図6】本発明比較例1の半導体レーザの200mW出力、70℃におけるAPCモードでの寿命試験の結果を示すグラフである。
【図7】本発明比較例2の半導体レーザの初期の電流光出力特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1:半導体基板 2:バッファ層 3:第一導電型クラッド層 4:活性層 5:第二導電型第一クラッド層 6:第二エッチング阻止層
7:第1エッチング阻止層 8:第二導電型第二クラッド層
9:電流ブロック層 10:キャップ層 11:コンタクト層 12:電極
13:電極 14:破壊 15:透明化領域

Claims (6)

  1. 半導体基板上に第一導電型クラッド層、量子井戸を含む活性層および第二導電型クラッド層を有する半導体レーザの製造方法において、該半導体基板上に該第一導電型クラッド層、量子井戸を含む活性層および第二導電型クラッド層を形成し、該層構造の上面下面に電極を形成してウエハを完成させ、該ウエハを劈開してレーザーバーに分割し、次いで、共振器を形成する少なくとも一つの端面に、真空中で光または電子線を照射することにより、端面近傍の領域を加熱し、蒸気圧の高い元素を選択的に再蒸発させて、該活性層の端面近傍に発振波長に対して透明化された領域を形成することを特徴とする半導体レーザの製造方法。
  2. 該活性層が吸収する波長の光を照射することを特徴とする請求項1記載の半導体レーザの製造方法。
  3. 100eV以上1000KeV以下のエネルギーの電子線を照射することを特徴とする請求項1記載の半導体レーザの製造方法。
  4. 真空中で共振器を形成する少なくとも1つの端面に熱処理を施した後、引き続き真空を破らずに、端面に反射防止膜および/または高反射膜を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体レーザの製造方法。
  5. 半導体基板がGaAs基板であり、活性層が元素としてInまたはGaを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半導体レーザの製造方法。
  6. 量子井戸を含む活性層がInGaAsからなり、該活性層の共振器端面近傍のIn濃度が共振器中央部に比べて低くすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半導体レーザの製造方法。
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