JP2000058960A - 半導体発光素子及びその製造方法 - Google Patents

半導体発光素子及びその製造方法

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JP2000058960A
JP2000058960A JP10224296A JP22429698A JP2000058960A JP 2000058960 A JP2000058960 A JP 2000058960A JP 10224296 A JP10224296 A JP 10224296A JP 22429698 A JP22429698 A JP 22429698A JP 2000058960 A JP2000058960 A JP 2000058960A
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semiconductor light
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Hideyoshi Horie
秀善 堀江
Hirotaka Oota
弘貴 太田
Toshinari Fujimori
俊成 藤森
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Mitsubishi Chemical Corp
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Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高出力動作時に端面温度の上昇を抑え、ひい
ては端面劣化を抑制し、高出力かつ高信頼性の半導体発
光素子を得る。 【解決手段】 半導体基板上に第一導電型クラッド層、
活性層及び第二導電型クラッド層を有する半導体発光素
子において、該活性層は、共振器を形成する少なくとも
ひとつの端面近傍が、構成元素の一部が脱離することに
より発振波長に対して透明化されていることを特徴とす
る。半導体基板上に第一導電型クラッド層、量子井戸を
含む活性層及び第二導電型クラッド層を有する半導体発
光素子の製造方法において、該半導体基板上に第一導電
型クラッド層、活性層及び第二導電型クラッド層を形成
し、共振器を形成する端面を形成し、真空中で該端面を
加熱して該端面を構成する元素の一部を再蒸発させて、
該活性層の端面近傍に発振波長に対して透明化された領
域を形成することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は半導体レーザをはじ
めとする半導体発光素子及びその製造方法に関するもの
である。本発明の半導体発光素子は光ファイバー増幅器
用励起光源、光情報処理用の光源等の、高出力、長寿命
の両立を要求される用途に好適に利用される。
【0002】
【従来の技術】近年における光情報処理技術、光通信技
術の進展には目ざましい物がある。例えば、光磁気ディ
スクによる高密度記録、光ファイバーネットワークによ
る双方向通信と枚挙に暇がない。例えば、通信分野にお
いては、今後のマルチメディア時代に本格的に対応する
大容量の光ファイバー伝送路とともに、その伝送方式に
対する柔軟性を持つ信号増幅用のアンプとして、Er3+等
の希土類をドープした光ファイバー増幅器(EDFA)
の研究が各方面で盛んに行なわれている。そして、ED
FAのコンポーネントとして不可欠な要素である、高効
率な励起光源用の半導体レーザの発明が待たれている。
【0003】EDFA応用に供することのできる励起光
源の発振波長は原理的に3種類存在し、800nm、980nm、
1480nmである。このうち増幅器の特性から見れば980nm
での励起が、利得、ノイズ等を考慮すると最も望ましい
ことが知られている。このような980nmの発振波長を有
するレーザは励起光源として高出力であることと長寿命
であるという相反する特性を満足することを望まれてい
る。さらにこの近傍の波長、たとえば890-1200nmにおい
てはSHG光源、レーザプリンタ用の熱源としての要求
もあり、その他種々の応用面においても高出力で信頼性
の高いレーザの開発がまたれている。
【0004】例えば、この帯域では50-100mW程度の光出
力において2年程度の連続使用に耐える半導体レーザが
開発されているが、より高い光出力における動作では急
速な劣化がおこり、信頼性は不十分である。この原因の
ひとつは、非常に高い光密度にさらされるレーザ光の出
射端面の劣化に起因するものである。GaAs/AlG
aAs系GaAs/InGaAlP系の半導体レーザで
もよく知られているように、レーザ端面近傍には多数の
表面準位が存在するが、これらの準位がレーザ光を吸収
するため、一般的に端面近傍の温度はレーザ内部の温度
よりも高くなり、この温度上昇がさらに端面近傍のバン
ドギャップを狭くし、さらにレーザ光を吸収しやすくす
るといった正帰還がおきると説明されている。この現象
は瞬時に大電流を流した際に観測される端面破壊いわゆ
るCOD(Catastrophic Optical Damage)、また長期
に通電試験した際のCODレベルの低下に伴う素子の偶
発故障として多くの半導体レーザ素子において共通の問
題となっている。
【0005】これらの現象に対する対策としては、端面
近傍の活性層領域のバンドギャップを発振波長に対して
透明になるようにし、前述の端面近傍での光吸収をおさ
える方法が種々提案されている。これらの構造のレーザ
は一般に窓構造レーザあるいはNAM(Non Absorbing
Mirror)構造レーザと呼ばれており、特に高出力を必
要とする際には非常に効果的である。
【0006】窓構造の作成には種々の方法、たとえば、
レーザ端面に発光波長に対して透明な半導体材料をエピ
タキシャル成長させる方法や、ZnあるいはSi等をレ
ーザの端面近傍の活性層に不純物として意図的に拡散さ
せ、無秩序化させる種々の方法等が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、レーザ端面に
発光波長に対して透明な半導体材料をエピタキシャル成
長させる方法では、レーザをいわゆるバーの状態にして
端面へのエピタキシャル成長を行うために、この後に行
う電極工程が非常に煩雑なものとなってしまう。Znあ
るいはSi等をレーザの端面近傍の活性層に不純物とし
て意図的に拡散させ、無秩序化させる方法の場合は、一
般にこの拡散はレーザ素子のエピタキシャル方向から基
板方向に向かって行われるため、拡散深さの制抑性、ま
た共振器方向に対する横方向拡散の制抑性に問題があり
安定した作成は難しい。また拡散を行った領域での抵抗
の低下に伴う無効電流の発生がレーザのしきい値電流や
駆動電流を増加させる等の問題があった。
【0008】本発明はかかる課題を解決するためにおこ
なわれたもので、その目的は、簡便な方法で作製可能
な、無効電流等の無い、高性能の窓構造を有する半導体
発光素子を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記の課
題を解決すべく鋭意検討した結果、半導体基板上に第一
導電型クラッド層、量子井戸を含む活性層及び第二導電
型クラッド層を有する半導体発光素子において、真空中
で、共振器を形成する少なくとも一つの端面を光照射、
電子線照射等の方法で加熱することにより、該端面近傍
の蒸気圧の高い元素を選択的に再蒸発させることがで
き、該端面近傍に、活性層を構成する材料が有する実効
的なバンドギャップよりも大きなバンドギャップをもつ
領域が形成され、即ち半導体発光素子の発振波長に対し
て透明化されるので、上述の従来法に伴う問題なく、容
易に高性能の窓構造を有する高出力、長寿命の半導体発
光素子となすことができることを見出し、本発明に到達
した。
【0010】即ち、本発明の第1の要旨は、半導体基板
上に第一導電型クラッド層、活性層及び第二導電型クラ
ッド層を有する半導体発光素子において、該活性層は、
共振器を形成する少なくともひとつの端面近傍が、構成
元素の一部が脱離することにより発振波長に対して透明
化されていることを特徴とする半導体発光素子に存す
る。
【0011】本発明の第2の要旨は、 半導体基板上に
第一導電型クラッド層、量子井戸を含む活性層及び第二
導電型クラッド層を有する半導体発光素子の製造方法に
おいて、該半導体基板上に第一導電型クラッド層、活性
層及び第二導電型クラッド層を形成し、共振器を形成す
る端面を形成し、真空中で該端面近傍の領域を加熱して
該端面を構成する元素の一部を再蒸発させて、該活性層
の端面近傍に発振波長に対して透明化された領域を形成
することを特徴とする半導体発光素子の製造方法に存す
る。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明をより詳細に説明す
る。本発明半導体発光素子は、半導体基板上に第一導電
型クラッド層、活性層及び第二導電型クラッド層を有
し、端面を共振器構造として利用する半導体発光素子で
あれば、その構造の詳細は特に限定されないが、以下
に、具体的構造の一例として、屈折率導波機構を有し、
第二導電型クラッド層が第一、第二の二層に分かれ、第
二導電型第二クラッド層と電流ブロック層とで電流注入
領域を形成する構造の半導体レーザについて説明する。
その様な半導体レーザは、光通信に用いられる光ファイ
バー増幅器用の励起光源として望まれる、活性層にIn
GaAs層、中でもInGaAs量子井戸層を含む98
0nm近傍のレーザの構造として好ましい。
【0013】図2は、本発明の半導体発光素子における
エピタキシャル構造の一例としてグルーブ型の半導体レ
ーザを構成した模式的一例である。本発明の半導体レー
ザにおいて、半導体基板としては、通常、所謂III−V
族化合物単結晶基板(ウエハ)が使用される。III−V
族化合物単結晶基板は、周期律表の第IIIb族元素と第V
b族元素との化合物のバルク結晶から切り出して得られ
る。ウエハの材料としては、GaP、GaAs、InP
等の群から、目的とする波長、活性層の材料、望まれる
光出力等によって適宜選択される。活性層にInGaA
s層、中でもInGaAs量子井戸層を含む場合は、特
にGaAsが好適に使用される。
【0014】バッファ層(2)は、基板バルク結晶の不
完全性を緩和し、結晶軸を同一にしたエピタキシャル薄
膜の形成を容易にするために設けることが好ましい。バ
ッファ層(2)は、基板(1)と同一の化合物で構成す
るのが好ましく、活性層にInGaAs層、中でもIn
GaAs量子井戸層を含み、GaAs基板が用いられた
場合は、通常、GaAsが使用される。
【0015】第一導電型クラッド層(3)は、例えば活
性層(4)の平均的屈折率より小さな屈折率を有する材
料で構成され、バッファ層(2)としてGaAsを使用
した場合は、通常AlGaAs系材料又はIn0.49Ga
0.51Pが使用される。AlGaAs系材料については、
その混晶比は、屈折率が上記の条件を満足する様に適宜
選択される。
【0016】活性層(4)の構造としては、量子井戸を
有する構造であり、単一量子井戸(SQW)構造、二重
量子井戸(DQW)構造、多重量子(MQW)構造等を
適宜採用することができる。そして、量子井戸構造に
は、通常、光ガイド層が併用され、必要に応じて量子井
戸の分離のために障壁層が併用される。活性層の構造と
しては、量子井戸の両側に光ガイド層を設けた構造(S
CH構造)、光ガイド層の組成を徐々に変化させること
により屈折率を連続的に変化させた構造(GRIN−S
CH構造)等を採用することが出来る。また、光ガイド
層は前記材料を組み合わせた超格子構造とすることも可
能である。
【0017】活性層(4)の材料は、目的とする発光波
長や出力などによって、適宜選択される。980nmの
発振波長を得るためには、通常InuGa1-uAs(0.15
≦u≦0.25)が用いられる。一般に、III族元素の砒素
化合物の真空中での再蒸発に関わる蒸気圧はInAs>
GaAs>AlAsであり、これらの混晶半導体は熱処
理温度を選ぶことにより、元素を選択的に再蒸発させる
ことができる。InGaAsの場合500℃〜650℃
でInAsが選択的に再蒸発し、In濃度が低い領域が
熱処理を施した表面近傍に形成される。これにより表面
近傍のバンドギャップを広げることができ、いわゆる窓
構造が実現される。
【0018】上記のような処理が可能な材料としては、
AlGaAs系材料、InGaAs系材料、InGaA
sP系材料、InGaAlP系材料等In又はGaを含
む材料が挙げられ、好ましくはInを含む材料、より好
ましくはIn及びGaを含む材料、最も好ましくはIn
qGa1-qAs(0<q<1)の様なIn、Ga及びAs
を含む材料からなる活性層を有する980nm近傍、即
ち、890〜1200nm程度の発光波長の半導体レー
ザに対して好適に作用する。また、活性層が量子井戸構
造をとっている場合、秩序化された構造が、端面近傍か
らの構成元素の脱離の際に無秩序化され、バンドギャッ
プが増加し、端面の光吸収をさらに長期的に抑制してい
くこととなるので望ましい。また、量子井戸構造の場
合、障壁層の組成としては、AlxGa1-xAs(0≦x
≦1)が好ましい。
【0019】第二導電型第一クラッド層(5)は、活性
層(4)の平均的屈折率よりも小さな屈折率を有する材
料で構成される。そして、第二導電型第一クラッド層
(5)の屈折率と、第一導電型クラッド層(3)のそれ
とは通常同一とされる。従って、第二導電型第一クラッ
ド層(5)の材料としては、第一導電型クラッド層
(3)と同様の材料が使用され、その混晶比は、第一導
電型クラッド層(3)と通常同一とされる。
【0020】図2には、二種類のエッチング阻止層及び
キャップ層が記載されているが、これらの層は、本発明
の好ましい態様において採用され、電流注入領域分の作
り込みを精密かつ容易に行うのに有効である。第二エッ
チング阻止層(6)は、AlaGa1-aAs(0≦a≦
1)材料にて構成されるが通常はGaAsが好適に使用
される。これはMOCVD法等で第二導電型第二クラッ
ド層等を再成長させる際に結晶性よく積層することがで
きるためである。第二エッチング阻止層(6)の厚さは
通常2nm以上が好ましい。
【0021】第一エッチング阻止層(7)は、Inb
1-bP(0≦b≦1)で表される層が好適であり、G
aAsを基板として使用した際は、通常歪みのない系で
b=0.45が用いられる。第一エッチング阻止層の厚
さは通常5nm以上であり、好ましくは10nm以上で
ある。5nm未満であると、膜厚の乱れ等により、エッ
チングを阻止することができなくなってしまう可能性が
ある。一方膜厚によっては歪み系を用いることもでき、
b=0、b=1等を用いることも可能である。
【0022】キャップ層(10)は、第1回目成長にお
いて電流ブロック層(9)の保護層として用いられると
同時に第二導電型第二クラッド層(8)の成長を容易に
するために用いられ、素子構造を得る前に、一部又は全
て除去される。電流ブロック層(9)としては、文字通
り電流をブロックして実質的に流さないことが必要であ
るので、その導電型は第一導電型クラッド層(3)と同
一かあるいはアンドープとすることが好ましく、また、
通常第二導電型第一クラッド層(5)と同様の材料から
なる第二導電型第二クラッド層(8)より屈折率が小さ
いことが好ましい。通常、電流ブロック層(9)はAl
zGa1-zAs(0<z≦1)からなり、したがって混晶
比としては第二導電型第二クラッド層(8)がAlv
1-vAs材料の場合はz≧v、In0.49Ga0.51Pの
場合にはx<0.45かつz>0.5になることが好ま
しい。また、上述の障壁層との関係では、x<v≦zと
することが好ましい。
【0023】第二導電型第二クラッド層(8)上には電
極の接触抵抗率を下げるため等の目的でコンタクト層
(11)を設けるのが好ましい。コンタクト層(11)
は、通常、GaAs材料にて構成される。この層は通常
電極との接触抵抗率を低くするためにキャリア濃度を他
の層より高くすることが行われる。また、通常、バッフ
ァ層(2)の厚さは0.1〜1μm、第一導電型クラッ
ド層(3)の厚さは0.5〜3μm、活性層(4)を構
成する量子井戸、光ガイド層及び障壁層は、各層1層当
たり0.0002〜0.2μm、第二導電型第一クラッ
ド層(5)の厚さは0.05〜0.4μm第導電型第二
クラッド層(8)の厚さは0.5〜3μm、キャップ層
(10)の厚さは0.005〜0.5μm、電流ブロッ
ク層(9)の厚さは0.3〜2μm、コンタクト層の厚
さは0.3〜10μmの範囲から選択される。
【0024】図2に示す半導体発光素子は、さらに電極
(12)、(13)を形成して構成される。電極(1
2)は、p型の場合、コンタクト層(11)表面に例え
ばTi/Pt/Auを順次に蒸着した後、アロイ処理す
ることによって形成される。一方、電極(13)は、基
板(1)の表面に形成され、n型電極の場合、基板
(1)表面に例えばAuGe/Ni/Auを順次に蒸着
した後、アロイ処理することによって形成される。
【0025】その上に、電極を形成して完成されたウエ
ハは、通常、劈開してレーザーバーに分割することによ
り共振器端面を形成し、共振器を形成する少なくとも1
つの端面を真空中で熱線、光照射及び/又は電子線照射
等により加熱することで、端面を形成する一部の元素を
選択的に再蒸発させる。本発明では、この様に、電極形
成後に端面処理する、即ち、端面を露出させるための劈
開前のウエハに電極を形成することができるので、例え
ば、端面に半導体層を形成して透明化する場合と比べ、
劈開後のレーザーバーのひとつひとつに電極を形成する
という煩雑な工程が不要となるので製造上も有利であ
る。
【0026】照射する熱線、光線又は電子線は、端面近
傍を熱処理して、蒸気圧の高い元素を選択的に再蒸発さ
せるという目的に沿って適宜選択すればよいが、光を照
射する場合は、活性層に用いる材料が吸収する波長を含
む光源を用いれば良い。通常ハロゲンランプ等が好適に
用いられる。電子線を照射する場合は、100eV以
上、1000KeV以下、好ましくは100KeV以下
のエネルギーの電子線が好ましい。光照射の場合も電子
線照射の場合も、照射量はレーザーバーの表面が目的と
する温度、たとえばIII-V族化合物半導体を活性層に持
つ場合の例としてInGaAsを例にすると、約500
〜650℃に上昇するよう、適宜調節すればよい。一般
には活性層を構成する元素のうち蒸気圧が高い元素を脱
離させる温度まで加熱することが肝要といえる。
【0027】レーザーバー全体の熱負荷を軽減するため
に、照射時間はなるべく短時間であることが好ましい。
通常10分以下であるが、より好ましくは5分以下であ
る。これらの加熱条件を決定するには測温用のサンプル
をいっしょに装着しておき、プロセス後に何度まで達し
たかを見積もることも可能だが、温度が低ければ透明化
の効果が現れず、高すぎければチップに問題が生じるの
で、数回の実験を繰り返すことにより加熱条件を最適化
することができる。また、上記の端面加熱のための光
線、熱線及び/又は電子線の照射は、10-3Torr以下程
度、好ましくは10-4Torr以下、最も好ましくは10-7
Torr以下程度の真空中で行うことが好ましい。
【0028】この様に、光又は電子線を適度に照射し端
面近傍の領域を加熱することにより、端面に吸着してい
る酸化物等の不純物を除去するとともに、当該活性層を
構成する元素の再蒸発速度の差を利用して、端面近傍の
領域から特定の元素の選択的な再蒸発をさせ、当該活性
層の端面近傍にレーザの発振波長に相当するエネルギー
よりも大きいバンドギャップを有する領域を効率よく形
成することができる。
【0029】端面には、引き続き、非対称コーティング
を行うこともできる。通常、光を取り出す前端面には単
層のAlOx膜、SiOx膜、SiNx膜等を成膜して低
反射面とし、後端面にはAlOx/α−Si、SiOx/T
iOx等を複数層成膜して高反射面とすることが行われ
る。本発明においては、かかる端面の非対称コーティン
グを、Ar照射に引き続き、真空を破らずに行うことが
好ましい。端面非対称コーティングされたレーザーバー
は、チップ単位に分割され、レーザーダイオード(L
D)として利用される。
【0030】図1は、本発明半導体レーザの斜視図であ
る。端面とその近傍の領域15が、光線、熱線及び/又
は電子線照射によって選択的な再蒸発が生じた領域であ
り、両端面近傍はレーザの発振波長において透明化され
ている。本発明の半導体レーザは、半導体基板上に第一
導電型クラッド層、量子井戸を含む活性層及び第二導電
型クラッド層を有する半導体レーザにおいて、共振器を
形成する少なくとも一つの端面に最適化された光線、熱
線及び/又は電子線を当該端面側から照射することによ
って、少なくとも活性層の端面近傍に選択的な再蒸発に
よる組成の異なる領域が形成され、即ち、かかる領域
は、同一層内で隣接する光線、熱線及び/又は電子線照
射の影響がない部分よりもバンドギャップが大きくレー
ザーの発振波長に対して透明であることを特徴とする
が、この様ないわゆる窓構造を非常に簡便に、安定して
作製でき、しかも、同時に端面に吸着した不純物を除去
し、不純物による表面準位密度を低減化できるため、高
出力で長寿命な半導体レーザダイオードを容易に実現で
きる。
【0031】なお、以上の説明は、屈折率導波機構を有
するグルーブ型の半導体レーザにかかわるものだが、本
発明は、リッジ型の半導体レーザ、利得導波型機構を有
するレーザ等その構成にかかわらず、本願特許請求の範
囲に記載した特徴を備える限り、いかなる半導体発光素
子にも同様に適用できる。
【0032】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、本発明は、その要旨を越えない限り、下記実施
例により限定されるものではない。
【0033】(実施例1)図2に示すグルーブ型のレー
ザ素子を以下の通り製造した。キャリア濃度1×1018
cm-3のn型GaAs基板(1)上に、MBE法にて、
バッファ層(2)として1μmの厚さのキャリア濃度1
×1018cm-3のn型GaAs層、第一導電型クラッド
層(3)として2μmの厚さのキャリア濃度1×1018
cm-3のn型Al0.35Ga0.65As層、次いで、厚さ2
4nmのアンドープGaAs光ガイド層、厚さ6nmの
アンドープIn0.2Ga0.8As量子井戸層、厚さ10n
mのアンドープGaAs障壁層、厚さ6nmのアンドー
プIn0. 2Ga0.8As量子井戸層及び厚さ24nmのア
ンドープGaAs光ガイド層を順次積層してなる二重量
子井戸(DQW)構造を有する活性層(4)、第二導電
型第一クラッド層(5)として厚さ0.1μm、キャリ
ア濃度1×1018cm-3のp型Al0.35Ga0.65As
層、第2エッチング阻止層(6)として厚さ10nm、
キャリア濃度1×1018cm-3のp型GaAs層、第1
エッチング阻止層(7)として厚さ20nm、キャリア
濃度5×1017cm-3のn型In0.49Ga0.51P層、電
流ブロック層(9)として厚さ0.5μm、キャリア濃
度5×1017cm-3のn型Al0.4Ga0.6As層、キャ
ップ層(10)として厚さ10nm、キャリア濃度1×
1018cm-3のn型GaAs層、を順次積層した。
【0034】次に、最上層の電流注入領域分を除く部分
に窒化シリコンのマスクを設けた。この場合に、窒化シ
リコンマスクの開口部の幅は1.5μmとした。第1エ
ッチング阻止層をエッチングストップ層としてエッチン
グを行い、電流注入領域部分のキャップ層(10)と電
流ブロック層(9)を除去した。この時用いたエッチャ
ントは、硫酸(98wt%)、過酸化水素(30wt%
水溶液)及び水を体積比で1:1:5で混合したものを
用い、25℃で30秒間行った。
【0035】次いでHF(49%)とNH4F(40
%)を1:6で混合したエッチング液に2分30秒間浸
漬して窒化シリコン層を除去し、更に第2エッチング阻
止層をエッチングストップ層として、電流注入領域部分
の第1エッチング阻止層をエッチング除去した(図
7)。この時用いたエッチャントは、塩酸(35wt
%)と水を2:1に混合したものであり、温度は25
℃、時間は2分間とした。
【0036】この後、MOCVD法にて第二導電型第二
クラッド層(8)としてキャリア濃度1×1018cm-3
のp型Al0.35Ga0.65As層を埋め込み部分(電流注
入領域部分)で2μmの厚さになるよう成長させ、最後
に電極との良好な接触を保つためのコンタクト層(1
1)として、厚さ3μm、キャリア濃度1×1019cm-
3のp型GaAs層を成長させレーザ素子を形成した。
このレーザ素子の電流注入領域の幅W、即ち、第二導電
型第二クラッド層の、第二導電型第一クラッド層との界
面における幅は、2.2μmであった。
【0037】次に、p側にTi/Pt/Auを、n側に
AuGe/Ni/Auを順次蒸着した後、400℃、5
分間アロイを行なって電極を形成した後に、レーザをい
わゆるバーの状態にし1×10-6Torrの真空中で、両端
面に出力4KWのハロゲンランプを3分間ずつ照射し
た。ハロゲンランプ照射中のレーザーバー端面温度は約
550℃であった。この後に真空を破らずに、引き続
き、前端面に1層のアルミナを、後端面にアルミナ/非
晶質シリコン/アルミナ/非晶質シリコンの4層を成膜
し、5%/90%の非対称コーティングを行なった。そ
の結果得られた素子の初期の電流光出力特性を図3に、
200mW出力、70℃におけるAPCモードでの寿命
試験結果を図4に示す。
【0038】また、このレーザバーから分析用サンプル
として1デバイスを取り出し、前端面のAlOx層をフ
ッ酸系のエッチャントで取り除いた後真空分析装置に入
れ、電子エネルギー損失分光法を用いて活性層の前端面
近傍のバンドギャップを測定した。電子エネルギー損失
分光法はサンプル表面近傍(最大分析深さ1.5nm程
度)のみの情報を得る分析法であるため、バルク領域の
物性値に影響されることなくレーザ端面のバンドギャッ
プを測定する有力な手法である。100nmφ程度に絞
った1000eVの電子線をレーザ端面の活性層付近に
照射し、表面酸化層の奥で半導体そのものの端面から1
nmの深さの領域から回折した損失電子のエネルギーを
分析したところ、バンド間遷移に起因する損失ピークか
ら、InGaAs量子井戸層端面近傍のバンドギャップ
が1.5eV、GaAs光ガイド層端面近傍のバンドギ
ャップが1.65eVと測定された。フォトルミネッセ
ンス測定から求めた室温のInGaAs量子井戸活性層
の量子準位間のエネルギーギャップは1.29eVであ
り、GaAsのバンドギャップは1.41eVであるこ
とから、Arプラズマ照射によって端面近傍のバンドギ
ャップが広がり、端面は発振波長に対して透明である事
を確認した。
【0039】(比較例1)ハロゲンランプ照射を行わな
かった以外は、実施例1と全く同様にした。初期の電流
光出力特性図5に寿命試験結果を図6に示す。前記実施
例1と全く同様に電子エネルギー損失分光分析を行い、
量子井戸層及び光ガイド層のバンドギャップは端面近傍
でもバルク領域と同様であることを確認した。
【0040】
【発明の効果】本発明の半導体発光素子は、量子井戸を
含む活性層の共振器を形成する端面近傍に、構成元素の
一部が脱離することにより、レーザの発振波長に対して
吸収のない透明な窓領域を形成しているので、高出力動
作時に端面温度の上昇を抑えることができ、ひいては端
面劣化を抑制し、高出力かつ高信頼性である等優れた特
性を有する。本発明の半導体発光素子の製造方法は、共
振器を形成する少なくともひとつの端面に光線、熱線及
び/又は電子線を照射するという簡便な方法で、酸化物
等の不純物除去とともに元素の選択的な再蒸発をおこさ
しめ、端面劣化のない、高出力、長寿命の半導体発光素
子を容易に製造でき、多大な工業的利益を提供するもの
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体発光素子の斜視図である。
【図2】本発明実施例1の半導体レーザの共振器方向か
ら見た断面説明図である。
【図3】本発明実施例1の半導体レーザの電流光出力特
性を示すグラフである。
【図4】本発明実施例1の半導体レーザの200mW出
力、70℃におけるAPCモードでの寿命試験の結果を
示すグラフである。
【図5】本発明比較例1の半導体レーザの初期の電流光
出力特性を示すグラフである。
【図6】本発明比較例1の半導体レーザの200mW出
力、70℃におけるAPCモードでの寿命試験の結果を
示すグラフである。
【符号の説明】
1:半導体基板 2:バッファ層 3:第一導電型クラ
ッド層 4:活性層 5:第二導電型第一クラッド層 6:第二エッチング阻
止層 7:第1エッチング阻止層 8:第二導電型第二クラッ
ド層 9:電流ブロック層 10:キャップ層 11:コンタ
クト層 12:電極 13:電極 14:破壊 15:透明化領域
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤森 俊成 茨城県牛久市東猯穴町1000番地 三菱化学 株式会社筑波事業所内 Fターム(参考) 5F073 AA20 AA45 AA53 AA74 AA83 AA86 BA09 CA07 DA35 EA28

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 半導体基板上に第一導電型クラッド層、
    活性層及び第二導電型クラッド層を有する半導体発光素
    子において、該活性層は、共振器を形成する少なくとも
    ひとつの端面近傍が、構成元素の一部が脱離することに
    より発振波長に対して透明化されていることを特徴とす
    る半導体発光素子。
  2. 【請求項2】 該活性層は、共振器を形成する少なくと
    もひとつの端面に熱処理を施すことにより、該端面近傍
    が透明化されていることを特徴とする請求項1記載の半
    導体発光素子。
  3. 【請求項3】 半導体基板がGaAs基板であり、活性
    層が元素としてInを含むことを特徴とする請求項1又
    は2記載の半導体発光素子。
  4. 【請求項4】 量子井戸を含む活性層がInGaAsか
    らなり、該活性層の共振器端面近傍のIn濃度が共振器
    中央部に比べて低いことを特徴とする請求項1〜3のい
    ずれかに記載の半導体発光素子。
  5. 【請求項5】 半導体基板上に第一導電型クラッド層、
    量子井戸を含む活性層及び第二導電型クラッド層を有す
    る半導体発光素子の製造方法において、該半導体基板上
    に第一導電型クラッド層、活性層及び第二導電型クラッ
    ド層を形成し、共振器を形成する端面を形成し、真空中
    で該端面を加熱して該端面を構成する元素の一部を再蒸
    発させて、該活性層の端面近傍に発振波長に対して透明
    化された領域を形成することを特徴とする半導体発光素
    子の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記端面に光線、熱線及び/又は電子線
    を照射することにより加熱することを特徴とする請求項
    5記載の半導体発光素子の製造方法。
  7. 【請求項7】 端面に活性層が吸収する波長の光を照射
    することを特徴とする請求項6記載の半導体発光素子の
    製造方法。
  8. 【請求項8】 真空中で共振器を形成する少なくとも1
    つの端面を加熱した後、引き続き真空を破らずに、端面
    に反射防止膜及び/又は高反射膜を形成することを特徴
    とする請求項5〜7のいずれかに記載の半導体発光素子
    の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012151517A (ja) * 2007-04-16 2012-08-09 Mitsubishi Electric Corp 半導体光装置の製造方法
JP2019515490A (ja) * 2016-04-20 2019-06-06 トルンプフ フォトニクス インコーポレイテッドTrumpf Photonics Inc. レーザ切子面のパッシベーションおよび当該パッシベーションを実施するためのシステム

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JP2019515490A (ja) * 2016-04-20 2019-06-06 トルンプフ フォトニクス インコーポレイテッドTrumpf Photonics Inc. レーザ切子面のパッシベーションおよび当該パッシベーションを実施するためのシステム

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