JP4447676B2 - パネル型スピーカ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スピーカ装置に関し、さらに詳しくは再生入力信号に基づいてドライバユニットによりパネル状の振動体に曲げ動作を生じさせて再生出力を放音するようにしたパネル型スピーカ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
スピーカ装置としては、一般にコーン型ダイナミックスピーカやホーン型ダイナミックスピーカ等が知られている。例えばコーン型ダイナミックスピーカは、円錐形状を呈して形成された振動板と、この振動板を駆動するドライバユニットと、振動板の外周縁部を支持するフレームと、これら各部材を収納したキャビネット等の部材によって構成される。ドライバユニットは、ボイスコイルと、ポールと、プレートと、マグネットと、ダンパー及びセンタキャップ等の部材によって構成されている。
【0003】
振動板は、軽量で内部損失が大きい素材によって上述した円錐形を基本形状に形成され、その中心部にドライバユニットが配置される。振動板は、一般に内周部から外周部に向かって次第にその厚みが薄くされるとともに、その外周縁部が全周に亘って矢紙を介してフレームに支持されている。フレームは、振動板とドライバユニットとを結合するとともに、振動板を囲ってその保護作用も奏する部材である。フレームには、振動板に対してその振動動作による反作用の影響を及ぼさないように、一般に切欠き窓が形成されている。矢紙は、振動板の外周縁部の押さえと、この振動板が振動動作した際にキャビネットの取付部と接触しないように作用する。
【0004】
一方、ホーン型ダイナミックスピーカは、ボイスコイルによって駆動される振動板の振動音をホーンによって拡大して放出するようにしたものであり、ホーンを有する以外の基本的な構成については上述したコーン型ダイナミックスピーカと同等とされる。すなわち、ホーン型ダイナミックスピーカにおいても、マグネットと、その先端部に一体に組み付けられたポールと、ポールの周囲を取り囲むヨークと、ポールと対向する開口部を有してヨークに組み付けられたプレートとによってドライバユニットを構成し、このドライバユニットによって振動板が振動動作される。
【0005】
振動板は、アルミニウム等の軽金属や合成樹脂等によって球面形状を呈して形成されている。振動板は、開口部を閉塞することによってポールと対向するようにしてその外周縁部がプレートに結合されている。振動板は、上述したコーン型ダイナミックスピーカの振動板よりも小さくかつ振動系の共振が再生帯域のほぼ中央領域でよいために機械的剛性が大きい。したがって、振動板は、ダンパーを介すること無くプレートに結合されるとともに、その周辺部をドライバユニットによって振動動作される。換言すれば、ホーン型ダイナミックスピーカにおいても、その振動板が、コーン型ダイナミックスピーカの振動板と同様に外周縁部を固定されて支持されている。
【0006】
ところで、スピーカ装置においては、ボックス等を必要とせず薄型であり、自由な位置に設置することができるいわゆるパネル型スピーカ装置の実現について多くの試みが図られてきた。しかしながら、これらの多くの試みは、いずれも技術上の限界や音響性能の限界等によって理想的なパネル型スピーカ装置を実現するまでには至っていない。これらの試みは、その多くが上述したコーン型ダイナミックスピーカやホーン型ダイナミックスピーカを基本としたものであった。
【0007】
薄型スピーカ装置としては、例えばパネル状の振動板を固定極に対して微小な間隔を以って対向配置してなるコンデンサ型スピーカが知られている。コンデンサ型スピーカは、一般に振動板に金属薄膜が成膜形成されるとともにこの振動板と固定極との間に数100ボルトの直流偏倚電圧が印加されてなる。振動板は、固定極に再生信号が入力されると、この固定極との間の磁気的吸引力の変化によって振動する。また、コンデンサ型スピーカとしては、振動板を挟んで固定極を配置することによって、全帯域用に対応するようにしたプッシュプル型スピーカも提供されている。
【0008】
コンデンサ型スピーカは、上述したように放音部に数100ボルトの電圧を印加する必要があることから、いかなる場所にでも自由に設置することが困難であるとともに、温度や湿度条件の変化による安定性が低いといった問題点を有している。また、コンデンサ型スピーカは、入力電圧が直流偏倚電圧に規定されることによって、入力電圧に対して得られる最大無歪み出力音圧レベルが上述したダイナミックスピーカ装置に比較して小さいといった問題もある。さらに、コンデンサ型スピーカは、全帯域で安定した周波数特性を確保するためには振動板が大型化するといったように種々の問題点を有している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
スピーカ装置は、一般に再生入力信号が供給されるとドライバユニットによって振動板がピストンのように動作して出力再生が行われると考えられている。したがって、パネル型スピーカ装置においても、振動板を電磁駆動方式や静電駆動方式により上述した従来型のスピーカ装置の振動板と同様に動作する高精度の平面ダイヤフラムを製作する試みがなされていた。例えば静電駆動方式の振動板においては、所定のテンションを以って外周部が支持されており、ドライバユニットからの駆動力が与えられるとその駆動位置から波動が同心円状に連続して発生する。かかる振動板は、大きな単一位相の振動板として動作することによって、音の集中と制御が不可能な振動を生じる大面積ピストン動作に起因する種々の問題を解決しなければならない。
【0010】
一方、パネル型スピーカ装置として、曲げ波動理論に基づいてドライバユニットにより振動板を駆動するようにした新規なパネル構造を有するスピーカ装置が提案されている。この新規なパネル型スピーカ装置は、機械的剛性が比較的大きな堅いパネル構造によって振動板が構成されており、ドライバユニットから駆動力が与えられるとこの振動板の表面全体に複雑な振動モードが生成される。振動モードは、平面パネル(振動板)の動作周波数の範囲に均一に分布された最も複雑で密集した波形の構造となる。新規なパネル型スピーカ装置は、有限サイズの振動板に関する曲げ波動の物理的特性と、波動の速度対周波数特性と、駆動点インピーダンス特性との解析により特徴付けられる。
【0011】
新規なパネル型スピーカ装置は、想定される用途に応じてパラメータが最適化された曲げ剛性の振動板が用いられ、一致周波数の下方周波数帯域までの動作が可能とされる。新規なパネル型スピーカ装置は、一般に振動板から最大密度の曲げモードを確保するために、この振動板の中心点付近がドライバユニットによって駆動される。振動板は、有限要素解析によって均一なモード密度を与える特定の縦横比が数学的なモデリングツールによって実証されている。また、振動板は、フーリェ型の分析によって、最良のモードの均一性を実現する駆動力の供給位置が求められる。
【0012】
そして、新規なパネル型スピーカ装置においては、フーリェ型分析の拡張によって高周波数帯域において多少の損失が生じるものの、より大きな面積の振動板を駆動することも可能とされる。振動板は、波動関数のゼロ周波数限界をとることにより、より一般的な静的梁の曲げ方程式に近似した曲げ剛性の式によって表現される。
【0013】
新規なパネル型スピーカ装置は、振動板の曲げ動作を規定する要因、すなわち面密度、曲げ剛性、幾何学的寸法(外形寸法)、表面積、駆動点の位置、及びドライブユニットのパラメータ、コアのシェアモジュール、内部損失、或いは振動板の支持方法のパラメータが最適に設定されることによって製作される。一般的なスピーカ装置においては、ダイポールと称される後方の音が前方の音と逆相を呈することから、中周波数帯域から低周波数帯域の音響エネルギーの打ち消しを防ぐ大きなバッフル板やエンクロジャを必要とする。一方、新規なパネル型スピーカ装置においては、バイポーラと称される後方の音の輻射が前方の音と加算されることから、効率の改善が図られるとともにバッフル板やエンクロージャを不要としている。
【0014】
新規なパネル型スピーカ装置は、単一素子のトランスデューサで駆動される1枚の振動板によってフルレンジの出力再生を可能とする。新規なパネル型スピーカ装置は、平面パネルの適切な材質の選択とトランスデューサに適合した構成とによって従来のスピーカ装置と同等のフラットな周波数特性を得ることが可能となる。
【0015】
新規なパネル型スピーカ装置は、感度と電気的負荷とが従来のスピーカ装置と同等とされることにより既存のアンプとの互換性が図られるばかりでなく動電型ドライバユニットや圧電型ドライバユニットの適用が可能とされ、非常に広い音場の放射パターン並びに双指向性の放射パターンが得られる。新規なパネル型スピーカ装置は、機械的エネルギから音響的エネルギへの変換効率がほぼ100%であるとともに周波数に独立した無指向性放射の特性、すなわち各周波数に関してサウンドパワーの大きな均一性を保有している。新規なパネル型スピーカ装置は、距離の条件によるサウンドパワーの減衰が小さいといった特徴を有するとともに、その新規な構成によりその他種々の特徴を有している。
【0016】
本発明は、ドライバユニットにより再生入力信号に基づいて振動板に曲げ動作を生じさせて駆動し出力再生を行う上述した曲げ波動理論に基づく新規なパネル型スピーカ装置を基本とする。本発明は、高周波数帯域における再生出力の有効帯域の拡張と周波数応答特性の向上とを図るとともに、種々のニーズに合わせた機能拡張が容易に可能とされたパネル型スピーカ装置を提供することを目的に提案されたものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上述したような目的を達成するために提案される本発明は、振動体と、少なくとも1個以上のドライバユニットと、保護枠部材と、複数のスプリングを有する。振動体は、合成樹脂材により全体が剛性を有するパネル状に形成されるとともに外周部に全域に亘り枠状の立上り周壁が一体に形成され、一方の主面が放音面とされるとともに他方の主面が被駆動面とされてなる。ドライバユニットは、上記振動体と対向配置された支持部材に固定されるとともに振動体駆動部が上記振動体に対して所定の周波数応答特性を付与する取付手段を介して上記被駆動面に固定され、再生入力信号に基づいて上記振動体駆動部により上記被駆動面の取付部を駆動点として上記振動体に厚み方向の部分的な曲げ動作による振動動作を生じさせて再生出力を放音させる。保護枠部材は、全体枠状に形成され、前面が上記放音面よりも前方に延在しかつ上記立上り周壁を全周に亘って取り囲んだ状態で、内部に上記振動体を収納して保護する。コイルスプリングは、上記保護枠部材の内周側壁面と上記振動体の立上り周壁の外周面との間に圧縮状態で介挿配置され、上記振動体に対してその振動動作を妨げない弾性力を作用させて上記振動体を上記保護枠部材に弾性的に保持させる
【0018】
以上のように構成された本発明にかかるパネル型スピーカ装置は、振動体の立上り周壁が形成された外周部における曲げ強度が増すことにより低周波数帯域の再生入力信号に対する分割振動が抑制されることから、全体として一様にフラットな周波数応答特性が得られるようになり、小型で薄型にもかかわらず低周波数帯域から高周波数帯域まで幅広い周波数帯域について良好な音質と充分な音量によって再生出力を放音する。パネル型スピーカ装置は、外部から加えられる衝撃や荷重に対して保護枠部材により振動体を保護し、スプリングが振動板の質量による荷重を吸収して保護部材に分散することにより振動板とドライバユニットとの接合部の負荷を軽減する。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明の第1の実施の形態として図1乃至図3に示したパネル型スピーカ装置1は、一方の主面を放音面2aとしかつ他方主面を被駆動面2bとして矩形パネル状に形成された振動板2と、この振動板2の被駆動面2bの略中心部に位置して固定された1個のドライバユニット3及び支持ブラケット4等によって構成されている。
【0020】
振動板2は、充分な機械的強度と所定の寸法精度とを有する成形体が得られる例えばスチレン樹脂やABS樹脂等のエンジニアリングプラスチックによって成形される。振動板2には、図1及び図2に示すように、放音面2aの外周部2cに放音面2aと直交する立上り周壁5が全周に亘って一体に突設されている。振動板2は、具体的にはスチレン樹脂を材料として、一辺が12.5mm、厚みが3mmの正方形を呈して成形されてなる。振動板2は、詳細を後述するが、図2に示すようにドライバユニット3を介して被駆動面2bの中心部を支持ブラケット4に支持されるとともに、被駆動面2bがドライバユニット3によって駆動される。
【0021】
換言すれば、振動板2は、その被駆動面2bの略中央部をドライバユニット3によって支持された構成であり、従来のスピーカ装置の振動板とは異にして外周部2cが固定支持されない非拘束状態とされた堅いパネル状部材として構成されている。勿論、振動板2については、上述した正方形状に限定されるものではなく、例えば縦横寸法を異にする矩形或いは円形や楕円形であってもよいが、その外周部が非拘束状態に保持される構成が採用される。
【0022】
ドライバユニット3には、従来のダイナミック型スピーカに備えられるダイナミックドライバユニットが用いられている。ドライバユニット3は、ボイスコイル6と、再生入力信号に基づいてこのボイスコイル6を駆動する磁気回路7とから構成されている。ボイスコイル6は、例えば図3に示すように、ボビン8と、このボビン8の外周部に捲き線を施して構成したコイル部9とからなる。磁気回路7は、センタポール10と、このセンタポール10を中心孔に貫通させて組み合わされたリング状のマグネット11と、センタポール10を中心孔に臨ませてマグネット11に積層状態で組み合わされたリング状のプレート12と、このプレート12の外周部に嵌合された補助リング13及びダンパ14等の部材によって構成される。
【0023】
ドライバユニット3は、ボイスコイル6が図3に示すように取付リング15を介してそのボビン8の先端部を振動板2の被駆動面2bに接合固定されるとともに、センタポール10がそのフランジ部10aを止めねじ16を介して支持ブラケット4に固定されている。ドライバユニット3は、ボイスコイル6がそのコイル部9をセンタポール10とプレート12とによって構成される磁気空間部に位置されるようにしてダンパ14によって支持されている。ダンパ14は、ボイスコイル6のボビン8と補助リング13との間を連結している。
【0024】
ドライバユニット3は、最大径の補助リング13の外径寸法が約35mm、ボビン8の先端部とセンタポール10の底面部との高さ寸法が約20mmである。なお、ドライバユニット3は、上述したようにボビン8の先端部を取付リング15を介して振動板2の被駆動面2bに固定するようにしたが、かかる構成に限定されるものでは無い。ドライバユニット3は、例えばボビン8の先端部を直接振動板2の被駆動面2bに接合固定するように構成してもよい。
【0025】
以上のように構成されたパネル型スピーカ装置1は、図示しない再生入力信号回路部から再生入力信号(音声電流)がドライバユニット3に供給されると、振動板2が駆動されてその放音面2aから再生出力の放音が行われる。ドライバユニット3は、磁気回路7の磁気空間部中に位置されたボイスコイル6に音声電流が供給されると、このボイスコイル6が振動板2に対して直交する方向に振動する。パネル型スピーカ装置1は、ドライバユニット3との接合部位8aを駆動点として振動板2に部分的な曲げ動作が生じて再生出力の放音が行われる。
【0026】
図4は、上述したパネル型スピーカ装置1について、ドライバユニット3により駆動される振動板2の動作状態を示した図である。同図(A)は、入力周波数が62Hzの再生入力信号を供給した場合の振動板2の動作状態を示した図である。また、同図(B)は、入力周波数が150Hzの再生入力信号を供給した場合の振動板2の動作状態を示した図である。さらに、同図(C)は、入力周波数が501Hzの再生入力信号を供給した場合の振動板2の動作状態を示した図である。振動板2は、これらの図から明らかなように、ドライバユニット3から再生入力信号が印加されることにより曲げ動作が生じて複雑な振動モードが生成される。また、振動板2は、再生入力信号の周波数が高くなるにしたがってより大きなピークを有する曲げ動作が生じる。
【0027】
図5は、横軸を周波数(Hz)、縦軸を音圧(10dB)としてピンクノイズを再生した場合の振動板2に対して正面50cm位置での1/3オクターブ特性を測定した図である。同図において、実線は、上述したパネル型スピーカ装置1の1/3オクターブ特性の測定値である。また、破線は、比較例として外周部に立上り周壁が形成されていない平板状の振動板を備えたパネル型スピーカ装置の1/3オクターブ特性の測定値である。パネル型スピーカ装置1は、同図から明らかなように、100Hz乃至500Hzの低周波数帯域A及び5KHz以上の高周波数帯域Bにおいて、平板状の振動板を備えたパネル型スピーカ装置に対して音圧レベルが増加している。
【0028】
パネル型スピーカ装置1は、入力周波数が200Hz以下の低周波数帯域においても高感度の再生出力を可能としている。また、パネル型スピーカ装置1においては、従来のコーン型スピーカ装置が高周波数帯域になるほどその指向性が狭くなるのに対して、この高周波数帯域での指向性の改善が図られる。かかる特性は、外周部を非拘束状態とされた剛性を有するパネル状の振動板を備えることによって達成される。
【0029】
パネル型スピーカ装置1は、外周部2cが非拘束状態とされて自由振動を行うことから低周波数帯域においても良好な音質の再生出力を共鳴箱や音響管を不要として充分な音量で放音する。また、パネル型スピーカ装置1は、上述したように外周部2cに全周に亘って立上り周壁5を一体に形成した振動板2を備えることから、その外周部2cにおける曲げ強度が増すように構成されている。振動板2は、これによって低周波数帯域の再生入力信号に対する分割振動が抑制されて全体として一様にフラットな周波数応答特性が得られるようになる。したがって、パネル型スピーカ装置1は、小型かつ薄型にもかかわらず低周波数帯域から高周波数帯域まで幅広い周波数帯域についてその感度特性が向上されてより音量感のある再生出力を良好な音質で放音する。パネル型スピーカ装置1は、外周部2cに立上り周壁5が形成されているが全体として放音面2aがパネル状であることから、その外形形状或いは表面デザインを比較的自由に展開することが可能である。
【0030】
パネル型スピーカ装置1は、振動板2が大きな振動面積を有することから、同一仕様のドライバユニット3を有する従来のスピーカ装置と比較して、より大きな低音出力を可能とする。また、パネル型スピーカ装置1は、従来のスピーカ装置のように振動板2の外周部2cを支持するための矢紙やフレーム等の支持部材を不要とすることから、部品点数も少なく組立工程が合理化されてコストの低減も図られる。
【0031】
ところで、パネル型スピーカ装置1においては、上述したようにドライバユニット3がそのボビン8のリング状を呈する接合端部8aを介して振動板2の被駆動面2bに接合固定されてなり、この接合端部8aにおいて振動板2に対する駆動部を構成している。したがって、パネル型スピーカ装置1は、高周波数帯域の入力周波数が印加された場合において、接合端部8aの外側に大きな振動が伝達され難いといった特徴を有している。パネル型スピーカ装置1においては、高周波数帯域の入力周波数に関して放射される音圧のエネルギーの多くが振動板2の全体からではなく、ドライバユニット3の接合端部から放出される。
【0032】
図6は、本発明の第2の実施の態様として示したパネル型スピーカ装置20であり、振動板21に形成した立上り周壁22の構成に特徴を有している。パネル型スピーカ装置20は、振動板21に取り付けられたドライバユニット3やその他の構成を上述したパネル型スピーカ装置1と同様とすることから、同一符号を付すことによってその詳細な説明を省略する。
【0033】
すなわち、パネル型スピーカ装置20は、同図に示すように、振動板21に形成する立上り周壁22が被駆動面21b側の外周部21cに沿って全周に亘って一体に突設されてなる。したがって、パネル型スピーカ装置20は、同図に示すように、立上り周壁22がドライバユニット3の周囲に延在してこれを保護する作用を奏する。また、パネル型スピーカ装置20は、振動板21の放音面21aが平坦面として構成されることから、例えばこの放音面21aに絵を書いたり、写真や絵を挟んだり或いは適宜の写真や図形を投影するといった応用が可能となる。
【0034】
ところで、パネル型スピーカ装置1、20は、上述したようにドライバユニット3が取付リング15を介して振動板2、21の被駆動面2b、21bにリング状の接合部位を以って固定されるようにしたが、この接合部位の構成を変えることにより周波数応答特性等を変えることが可能となる。パネル型スピーカ装置1、20は、適宜の接合部位を有するドライバユニット3を備えることにより、振動板2、21に対して高周波数帯域で共振状態となる周波数帯域や振幅が調整されて低周波数帯域及び中周波数帯域の特性とつなぎ合わせることで高周波数帯域における周波数応答特性をより広くとり得るようになる。
【0035】
すなわち、図7に示したドライバユニット25は、取付リング26が円錐台状に形成されるとともに、振動板2、21の被駆動面2b、21bとの接合部を構成する開口部26aが楕円形を呈して形成されてなる。ドライバユニット25は、かかる構成によって振動板2との接合面積が変えられて高周波数帯域の特性を変化させる。また、図8に示したドライバユニット27は、取付リング28が角錘台に形成されるとともに、振動板2、21の被駆動面2b、21bとの接合部を構成する開口部28aが矩形を呈して形成されてなる。ドライバユニット27は、かかる構成によって振動板2との接合面積が変えられて高周波数帯域の特性を変化させる。
【0036】
図9は、本発明の第3の実施の形態として示すパネル型スピーカ装置30であり、上述した高周波数帯域における周波数応答特性の改善がさらに図られるように構成されている。なお、パネル型スピーカ装置30は、振動板31に取り付けられたドライバユニット3やその他の構成を上述したパネル型スピーカ装置1と同様とすることから、同一符号を付すことによってその詳細な説明を省略する。すなわち、パネル型スピーカ装置30は、ドライバユニット3が接合固定される振動板31の構成に特徴を有しており、ドライバユニット3の接合領域が材質を異にする取付板32によって構成されてなる。
【0037】
振動板31は、基本的な構成を上述した振動板2と同様にしており、剛性を有する全体パネル状を呈して成形されるとともに、放音面31aの外周部31cに立上り周壁33が全周に亘って一体に突設されてなる。また、振動板31には、被駆動面31bの略中央部に位置してドライバユニット3が取付板32を介して取り付けられている。取付板32は、例えば振動板31を成形する際に、インサート成形法によって一体化されてなり、特定の入力周波数に対する応答特性を改善する材質のものが選定される。したがって、パネル型スピーカ装置30は、振動板31と取付板32とで振動特性を異にするために、機械的にいわゆる2ウェイスピーカ装置と同等の機能を有する。
【0038】
図10は、本発明の第4の実施の形態として示すパネル型スピーカ装置40であり、上述した高周波数帯域における周波数応答特性の改善がさらに他の構成によって図られている。すなわち、パネル型スピーカ装置40も、ドライバユニット3が接合固定される振動板41の構成に特徴を有しており、この振動板41に対してドライバユニット3の接合領域のみならずその周辺領域を含む大きさを有する取付板42が一体化された構成に特徴を有している。この取付板42も、例えば振動板41を成形する際に、インサート成形法によって一体化されてなり、特定の入力周波数に対する応答特性を改善する材質のものが選定される。勿論、取付板42は、その材質ばかりでなくその大きさや形状を適宜選択することによって、高周波数帯域における振動モードを変更することも可能である。
【0039】
ところで、本発明にかかるパネル型スピーカ装置は、上述したように振動板がその外周部を固定支持されない非拘束状態とされた堅いパネル状の部材によって構成されてなる。このため、パネル型スピーカ装置は、外部から衝撃や荷重が加えられた場合に振動板が破損しやすいといった問題があり、実用上この振動板を保護する何らかの保護機構を付設する必要がある。
【0040】
図11及び図12は、本発明の第5の実施の形態として示したパネル型スピーカ装置50であり、上述したように振動板2を保護する保護部材51を備える構成に特徴を有している。なお、パネル型スピーカ装置50は、上述したパネル型スピーカ装置1に対して保護部材51を付設したものであることから、振動板2やドライバユニット3等の各部材がほぼ同一の構成であり、対応部材に同一符号を付すことによってその説明を省略する。
【0041】
保護部材51は、例えば機械的剛性を有する適宜の合成樹脂材料によって、振動板2の外周部2cの全周を取り囲むに足る全体矩形枠状を呈して一体成形されてなる。保護部材51には、図11に示すように左右の柱部52a、52b(なお、以下の説明において、複数からなる部材、部位等については、最初にこのように表記し、以降の説明では特に個別に説明する以外は柱部52のように総称して表記する。)の内面にそれぞれ内方へと突出された多数個の片持ち梁状の保持片53a、53bがそれぞれ一体に突設されている。また、保護部材51には、図12に示すように左右の柱部52の背面に複数個の支持片54が一体に突設されている。保護部材51は、その内部に振動板2を収納するとともに、各支持片54が支持ブラケット部材4に取り付けられる。保護部材51は、保持片53によって振動板2の放音面2aを係止保持する。
【0042】
パネル型スピーカ装置50は、以上のように構成されることによって振動板2がその外周部2cを全周に亘って保護部材51によって囲われるために外部から加えられる衝撃や荷重に対して振動板2が保護される。なお、パネル型スピーカ装置50は、振動板2がその放音面2aを保持片53によって係止保持されるようにしたが、この振動板2の振動動作が妨げられることは無い。
【0043】
図13は、本発明の第6の実施の形態として示したパネル型スピーカ装置60であり、上述したように振動板2を他の機構によって保護するように構成したことを特徴としている。パネル型スピーカ装置60は、保護部材61と、多数個のコイルスプリング62とによって振動板2の保護機構を構成しており、その他の基本的な構成については上述したパネル型スピーカ装置50と同様とされる。
【0044】
保護部材61も、例えば機械的剛性を有する適宜の合成樹脂材料によって、振動体2の外周部2cの全周を取り囲むに足る全体矩形枠状を呈して一体成形されてなり、左右の柱部63a、63bの背面に複数個の支持片64が一体に突設されている。したがって、保護部材60は、上述したパネル型スピーカ装置25の保護部材26から保持片53を削除した構成とされている。
【0045】
パネル型スピーカ装置60は、保護部材61の内部に振動板2を収納するとともに、各支持片64が支持ブラケット4に取り付けられてなる。パネル型スピーカ装置60は、この状態で保護部材61の上下梁部63c、63dの内面と振動板2の外周部2cとの間に適宜の間隔を以って組み付けられた多数個の圧縮状態のコイルスプリング62の弾性力によって振動板2を保持する。勿論、パネル型スピーカ装置60は、各コイルスプリング62が、振動動作に支障の無い範囲で弾性力を振動板2に作用させてこれを保持する。パネル型スピーカ装置60は、保護部材61によって外部から加えられる衝撃や荷重に対して振動板2を保護する。また、パネル型スピーカ装置60は、各コイルスプリング62が振動板2の質量による荷重を吸収して保護部材61に分散することから、振動板2とドライバユニット3との接合部の負荷が軽減される作用も奏せられる。
【0046】
図14は、本発明の第7の実施の形態として示したパネル型スピーカ装置70であり、上述したように振動板2をさらに他の機構によって保護するように構成している。パネル型スピーカ装置70は、保護部材71と、この保護部材71の前面に接合されたネット72とによって振動板2の保護機構を構成しており、その他の基本的な構成については上述したパネル型スピーカ装置50、60と同様とされる。
【0047】
保護部材71も、例えば機械的剛性を有する適宜の合成樹脂材料によって、振動板2の外周部2cの全周を取り囲むに足る全体矩形枠状を呈して一体成形されてなり、左右の柱部73a、73bの背面に複数個の支持片74が一体に突設されている。したがって、保護部材71は、上述したパネル型スピーカ装置60の保護部材61と同様に構成されてなる。ネット72は、振動板2の振動動作に支障の無い柔軟性を有するとともに振動板2の放音面2aからの放音を減衰させることは無い。
【0048】
パネル型スピーカ装置70は、保護部材71の内部に振動板2を収納するとともに、各支持片74が支持ブラケット4に取り付けられてなる。パネル型スピーカ装置70は、ネット72によって振動板2を保持する。パネル型スピーカ装置70は、保護部材71によって外部から加えられる衝撃や荷重に対して振動板2を保護する。
【0049】
上述した各パネル型スピーカ装置においては、振動板2を1個のドライバユニット3によって駆動するようにしたが、振動板2を複数個のドライバユニットによって構成するようにしてもよい。かかるパネル型スピーカ装置は、振動板2が多数個のドライバユニットによって多点箇所において支持されることになるが、その外周部2cに立上り周壁5が一体に突設されるとともに非拘束状態として剛性を有するパネル状に形成される基本構成を共通とする。また、かかるパネル型スピーカ装置には、各ドライバユニット3として上述した図7及び図8に示したドライバユニット25、27のように振動板2に対する接合部が楕円形状や矩形形状を有するものを用いてもよい。また、パネル型スピーカ装置は、各ドライバユニット3を取り付けるために、上述した取付板32、42を振動板2に一体化して構成してもよい。さらに、パネル型スピーカ装置は、振動板2を保護するために上述した各保護機構を付設するように構成してもよい。
【0050】
図15及び図16は、本発明の第8の実施の形態として示したパネル型スピーカ装置80であり、振動板2を駆動するために3個のドライバユニット3a乃至3cを備えた構成に特徴を有している。なお、振動板2及び各ドライバユニット3等の部材は、その構成を上述したパネル型スピーカ装置1の振動板2及びドライバユニット3と同様とすることから同一符号を付すことによってその説明を省略する。
【0051】
パネル型スピーカ装置80は、各ドライバユニット3がそのボイスコイル8を振動板2の被駆動面2bに接合固定されるとともに支持ブラケット4によって高さ方向に並べられた状態で支持されて構成されてなる。パネル型スピーカ装置80には、各ドライバユニット3に対して図示しない再生信号入力回路部から例えば同相の再生入力信号が入力される。
【0052】
ところで、上述した1個のドライバユニット3を有するパネル型スピーカ装置1においては、振動板2の振動モードが、この振動板2の形状及び材質特性によって発生する振動モードの周波数、次数が決定されるとともにドライバユニット3の設置位置によって振動モードの発現の大きさが決定されて鋭いピーク・ディップが生じる。パネル型スピーカ装置1においては、ある入力周波数fにおいて節となる位置にドライバユニット3を設置した場合に振動が伝達されないことから周波数応答特性の測定においてディップが観察される。また、パネル型スピーカ装置1においては、振動板2の加振動部以外の部位においてこの振動板2の材料特性に反映した曲げ動作が生じることから、再生出力が材料の固有モードに従うことになる。パネル型スピーカ装置1は、これによりピーク・ディップを含めて振動板2の材料特有の出力音を放音するようになる。
【0053】
一方、パネル型スピーカ装置80においては、3個のドライバユニット3a乃至3cを備えることによって、これらドライバユニット3により振動板2にそれぞれ独立の曲げ動作が生じることになる。したがって、パネル型スピーカ装置80は、各ドライバユニット3について意図的に節位置を振動板2に対する加振動位置としない限り、各ドライバユニット3が各周波数帯で節位置を駆動することは無い。パネル型スピーカ装置80においては、各ドライバユニット3が各周波数帯において相互に節位置での振動板2の駆動を補完することによって、その周波数応答特性に鋭いピークやディップの発生が抑制されるようになる。
【0054】
パネル型スピーカ装置80は、上述した特徴から、パネル型スピーカ装置1と比較して中周波数帯域及び高周波数帯域においてピークやディップの減少が図られる。また、パネル型スピーカ装置80は、各ドライバユニット3によって3箇所を駆動されることから、振動板2の大きさとその材料特性に応じた固有の再生出力が薄められていわゆるくせの無い音質の再生出力がなされる。したがって、パネル型スピーカ装置80は、良好な特性、音質の再生出力を得ることが可能とされる。
【0055】
パネル型スピーカ装置80は、振動板2を3個のドライバユニット3により駆動することで、機械的強度の向上とともに再生出力の音質向上が図られている。すなわち、上述したパネル型スピーカ装置1においては、振動板2もそれ自体質量を有しているために、これを駆動する1個のドライバユニット3との接合部位における機械的負荷が大きくなる。パネル型スピーカ装置1は、このために振動板2の材質によっては接合部位にかかる大きな荷重により振動板2の振動形態が線形運動から外れて再生挙動や音質に影響が生じることがある。
【0056】
これに対して、パネル型スピーカ装置80においては、3個のドライバユニット3に振動板2の質量による荷重が配分されることによりその軽減が図られる。したがって、パネル型スピーカ装置80は、振動板2とドライバユニット3との接合部位における機械的強度や耐久性の向上が図られかつ結果的に音質の向上も図られる。また、パネル型スピーカ装置80は、振動板2の材質によって決定される発生しやすい振動モードを意図的に変更することによって、振動板2内に発生する過度に大きな振動モードを抑制して必要な振動モードの生成が可能とされる。
【0057】
すなわち、パネル型スピーカ装置1においては、上述したように振動板2の縦横寸法に応じて図4に示したような振動モードが連続して発生する。一方、パネル型スピーカ装置80においては、低周波数帯域或いは中周波数帯域において横方向が節として分割されるような振動モードの発生が抑制されるようになる。パネル型スピーカ装置80においては、ドライバユニット3を適宜に配置することによって、特定方向に関する特定周波数の振動モードが抑制され、音質の安定化とその向上が図られる。また、パネル型スピーカ装置80は、ドライバユニット3を適宜に配置することによって、特定方向に関する特定周波数の振動モードを助長するように構成することも可能とされる。
【0058】
ところで、上述したパネル型スピーカ装置80においては、低周波数の再生入力信号が供給された場合に、ドライバユニット3を結ぶ中央部の縦領域に対して両側の領域が同相で大きく振動する現象を呈する。パネル型スピーカ装置80は、上述したように振動板2がドライバユニット3の設置領域に対する周辺の振動領域の面積を大きく構成されることによって低周波数帯域での感度の向上が図られる。また、パネル型スピーカ装置80は、振動板2が周辺領域においてドライバユニット3の設置領域と逆相で動作することによって、より低い動作周波数が確保されるように構成されている。
【0059】
本発明の第9の実施の形態として図17に示したパネル型スピーカ装置90は、振動板2を駆動するために3個のドライバユニット3a乃至3cを備えた構成について上述したパネル型スピーカ装置80と同様とするが、振動板2に振動を吸収しやすい材質によって形成された質量成分材91が設けられた構成に特徴を有している。質量成分材81は、例えばテープ状とされた鉛材からなり、同図に示すように振動板2に対してその放音面2aの外周部2cに沿って一体に突設された立上り周壁5の表面に貼着されてなる。パネル型スピーカ装置90は、上述したように振動板2がその外周部2cを非拘束状態とされることにより低周波数帯域でも外周部2cで振動が生じ易くなるようにして低周波数帯域での安定した再生出力を得ることができるように構成されている。パネル型スピーカ装置90は、この外周部2cに質量成分材91を設けて低周波数帯域での振動モードの発生周波数を下げることで、再生有効周波数帯域の拡張が図られている。
【0060】
この低周波数帯域での感度向上の原理は、図18に示した片持ち梁92における振動モデルによって解説することができる。すなわち、片持ち梁92は、自由端部に質量Mを有し、長さをL、曲げ剛性をEL、質量をMbとすると、その共振周波数Wnを次の式
Wn∧2=k/(M+0.25Mb)
但し、k=3EL/1∧3
によって表すことができる。振動板2は、2次元振動モードであるが、上述したように外周部2cに質量成分材91を設けることにより振動モデルの片持ち梁92の共振周波数Wn式において質量をMbを大きくすることと同等である。したがって、パネル型スピーカ装置90は、上述した片持ち梁92の共振周波数式において右辺の分母が大きくなって共振周波数Wnが小さくなるために、低周波数帯域での感度向上が図られることが理解される。
【0061】
本発明は、図示しないが上述した質量成分材91を振動板2の放音面2aの他の部位に貼着してなるパネル型スピーカ装置にも展開される。かかるパネル型スピーカ装置においては、振動板2の放音面2aに質量成分材91が貼着されることで、この質量成分材91によって振動板2における振動伝達が妨げられる状態となる。パネル型スピーカ装置は、これによってピークが立ちにくくなって入力周波数に応じた応答特性が緩やかになるために自然な音質の再生出力を得ることができるようになる。
【0062】
なお、質量成分材91については、上述したテープ状の鉛材に限定されるものではなく、その他の振動損失の大きな材料或いは防振効果の大きな材料等によって形成してもよいことは勿論である。また、この質量成分材91の作用については、例えば一部にこれらの材料を組み合わせて振動板2を構成するようにしてもよい。
【0063】
複数個のドライバユニット3は、振動板2に対して適宜の状態で配置して構成してもよい。すなわち、本発明の第10の実施の形態として図19に示したパネル型スピーカ装置100は、振動板2に対して3個のドライバユニット3a乃至3cが対角線に沿って斜めに配置されて構成されてなる。パネル型スピーカ装置100は、上述したパネル型スピーカ装置90と同様に、振動板2が各ドライバユニット3の設置領域に対して周辺の振動領域101a、101bの面積を大きく構成されてなる。
【0064】
パネル型スピーカ装置100は、上述したように振動板2に対してその中央領域に位置して各ドライバユニット3が適宜の形状或いは大きさの図形からなる領域内に配置されるとともに、この配置領域が振動板2の放音面2aに対する面積割合を振動領域91の面積割合よりも小さい領域とするように構成されている。したがって、パネル型スピーカ装置100は、振動領域91を自由振動させることで低周波数帯域での感度の向上が図られるようになる。また、パネル型スピーカ装置100は、振動板2が振動領域91においてドライバユニット3の設置領域と逆相で動作することにより、より低い動作周波数が確保されるようになる。
【0065】
本発明の第11の実施の形態として図20に示したパネル型スピーカ装置110は、振動板2が逆三角形状を呈して形成されるとともに、その中央領域に位置して3個のドライバユニット3a乃至3cが互いに三角形の設置領域111を構成するようにして配置されて構成されてなる。このパネル型スピーカ装置110においても、ドライバユニット3の設置領域111に対して周辺の振動領域112a乃至112cが全体としてその面積を大きくなるように構成される。したがって、パネル型スピーカ装置110は、上述したパネル型スピーカ装置100と同様に低周波数帯域での感度の向上が図られるとともに、振動板2が周辺領域においてドライバユニット3の設置領域と逆相で動作することによって、より低い動作周波数が確保されるようなる。
【0066】
本発明の第12の実施の形態として図21に示したパネル型スピーカ装置120は、振動板2を駆動するために3個のドライバユニット3a乃至3cを備えた構成を上述したパネル型スピーカ装置80と同様とするが、各ドライバユニット3が接合固定される振動板2の構成に特徴を有している。すなわち、パネル型スピーカ装置120は、同図に示すように振動板2に対して各ドライバユニット3がそれぞれ材質を異にする取付板121a乃至121cを介して取り付けられた構成に特徴を有している。各取付板121は、例えば振動板2を成形する際に、各ドライバユニット3の取付部位に対応した位置にインサート成形法によって一体化されてなり、特定の入力周波数に対する応答特性を改善する材質のものが選定される。
【0067】
パネル型スピーカ装置120においては、上述したように材質を異にする各取付板121を介して各ドライバユニット3が振動板2に取り付けられた構成であることから、図22に示すように各取付板121a乃至121cに対応するそれぞれの部位D1、D2、D3において高周波数帯域の共振周波数がそれぞれずれた状態となる。したがって、パネル型スピーカ装置120は、各取付板121によって各ドライバユニット3の共振点が相互に補完されることで高周波数帯域での周波数特性の改善がさらに図られる。また、パネル型スピーカ装置120は、各取付板121を適宜調整することによって不要な高周波数帯域でのピーク調整を図ることが可能とされる。
【0068】
本発明の第13の実施の形態として図23に示したパネル型スピーカ装置130は、振動板2を駆動するために3個のドライバユニット3a乃至3cを備えた構成を上述したパネル型スピーカ装置80と同様としているが、各ドライバユニット3に対してそれぞれ再生入力信号を供給する入力部131の構成に特徴を有している。すなわち、パネル型スピーカ装置130は、各ドライバユニット3に対して入力部131を介してそれぞれ独立に再生入力信号の供給或いは位相の切換等を行って振動板2を駆動するように構成されている。
【0069】
入力部131は、音源132から供給される再生入力信号を増幅するアンプ133と、このアンプ133と各ドライバユニット3a乃至3cとの間に互いに独立してそれぞれ接続された切換スイッチ134a乃至134cとボリューム135a乃至135cとからなる直列回路とから構成される。各切換スイッチ134は、例えば各ドライバユニット3に対するそれぞれ再生入力信号の入力のオン/オフの切換操作とともに、入力オン状態で再生入力信号の位相の切換操作とを行う。各ボリューム135は、各ドライバユニット3に対してそれぞれ入力される再生入力信号のレベル調整を行ってこれら各ドライバユニット3の感度を個々に調整するようにする。
【0070】
パネル型スピーカ装置130は、以上のように構成されることにより、入力部131から必要とされる位相成分を有する再生入力信号が各ドライバユニット3にそれぞれ供給される。パネル型スピーカ装置130は、これによって各ドライバユニット3がそれぞれ独立に動作されて振動板2を駆動して再生出力を放音する。したがって、パネル型スピーカ装置130は、特別な回路素子や切換装置等を不要とするとともに使用者による極めて簡単な操作によって、音場や音質等を適宜変えた再生出力を得ることを可能とする。
【0071】
本発明の第14の実施の形態として図24に示したパネル型スピーカ装置140は、上述したパネル型スピーカ装置130と同様に各ドライバユニット3に対して再生入力信号を供給する入力部141の構成に特徴を有している。すなわち、パネル型スピーカ装置140は、入力部141において音源142から供給される再生入力信号を3つの周波数帯域に分割して位相調整を行うとともに、これを合成した後各ドライバユニット3に供給することによって各ドライバユニット3を駆動するように構成されてなる。
【0072】
入力部141は、音源142から再生入力信号が供給されるバンドパスフィルタ143a乃至143cと、これらバンドパスフィルタ143にそれぞれ接続された切換スイッチユニット144乃至146と、これら切換スイッチユニット144乃至146を介してそれぞれ再生入力信号が供給されるミキサ147a乃至147cと、各ミキサ147と各ドライバユニット3との間にそれぞれ介挿されたアンプ148a乃至148c等によって構成されている。バンドパスフィルタ143は、音源142から供給される再生入力信号をそれぞれ所定の周波数帯域に分割する。
【0073】
各切換スイッチユニット144乃至146は、それぞれミキサ147に接続された各3個の切換スイッチ144a乃至144c、145a乃至145c、146a乃至146cによって構成されている。これら切換スイッチ144a乃至144c、145a乃至145c、146a乃至146cは、例えば各ミキサ147に対するそれぞれ再生入力信号の入力のオン/オフの切換操作とともに、入力オン状態で再生入力信号の位相の切換操作とを行う。各ミキサ147は、各切換スイッチユニット144乃至146からそれぞれ供給される所定の周波数帯域の再生入力信号を合成して各アンプ148へと入力する。各アンプ148は、この合成再生入力信号を増幅して各ドライバユニット3にそれぞれ供給する。
【0074】
パネル型スピーカ装置140は、以上のように構成されることにより、入力部141から3つの周波数帯域に分割されるとともに必要とされる位相成分に調整された再生入力信号が各ドライバユニット3に供給される。パネル型スピーカ装置140は、各ドライバユニット3がそれぞれ独立に動作されて振動板2を駆動して再生音を放出する。パネル型スピーカ装置140は、例えば低周波数帯域では各ドライバユニット3に全て同相成分の再生入力信号を入力するとともに中周波数帯域及び高周波数帯域では逆相成分の再生入力信号を入力するように構成する。具体的には、パネル型スピーカ装置140には、中周波数帯域及び高周波数帯域において例えば上下のドライバユニット3a、3cに正相成分の再生入力信号が入力されるとともに、中央部のドライバユニット3bに逆相成分の再生入力信号が入力される。
【0075】
パネル型スピーカ装置140は、低周波数帯域で同相成分の再生入力信号を各ドライバユニット3に供給することにより、振動板2により大きな曲げ動作が生じるようになる。したがって、パネル型スピーカ装置140においては、上述した図17に示した質量成分材91を貼着してなる第9の実施の形態のパネル型スピーカ装置90の周波数応答特性と同様に低周波数帯域でピークが生成されて応答特性の向上、すなわち感度の向上が図られるようになる。また、パネル型スピーカ装置140は、中周波数帯域及び高周波数帯域で逆相成分の再生入力信号を各ドライバユニット3に供給することによって、互いに相殺される周波数帯域が生じて全体の感度が低下することから、パネル型スピーカ装置90と比較して全体的に感度が平坦化が図られた再生出力が出力されるようになる。
【0076】
なお、パネル型スピーカ装置140は、上述したように中央部のドライバユニット3bに逆相成分の再生入力信号を入力することで振動板2に大きな曲げ動作が生じ、この振動板2の材質特有の再生音が出力されるようになる。したがって、パネル型スピーカ装置140は、特定の周波数帯域において入力部141の切換スイッチユニット144乃至146の切換操作によってドライバユニット3bに逆相入力を行い、独特な再生音を生成することが可能となる。
【0077】
本発明の第15の実施の形態として図25に示したパネル型スピーカ装置150は、ディップ部分や過度のピークの発生を抑制して周波数応答特性の平坦化を図るために入力部151に3個のデジタルフィルタ153a乃至153cが備えられて構成されてなる。入力部151は、音源152から供給される再生入力信号に対して適当な信号処理を施す3個のフィルタ153a乃至153cと、これら各フィルタ153を通過した再生入力信号を増幅して各ドライバユニット3をそれぞれ駆動するアンプ154a乃至154cとから構成される。
【0078】
パネル型スピーカ装置150においては、音源152から供給される再生入力信号が、例えばインパルス応答の逆フィルタ作用を奏する各フィルタ153によって上述したディップ部分や過度のピークを発生させる特定の周波数帯域を分離する等の信号処理を施されて各ドライバユニット3に供給される。パネル型スピーカ装置150は、これによって再生周波数特性の平坦化が図られた再生出力が放音されるようになる。なお、パネル型スピーカ装置150は、各フィルタ153を適宜選択することによって、特定の周波数帯域のみを強調させた再生出力を放音することも可能となる。また、各フィルタ153には、適宜のデジタルフィルタ或いはアナログフィルタが用いられ、再生入力信号に対して特定の周波数帯域の分離処理ばかりでなく振幅や位相等の適宜の信号処理を行うものが用いられる。
【0079】
ところで、上述したパネル型スピーカ装置150においては、信号処理を施して各ドライバユニット3に再生入力信号を供給してこれらを駆動する各フィルタ153について、それぞれのフィルタ係数に適当な遅れ成分を付与して構成するようにしてもよい。パネル型スピーカ装置150は、かかる構成によって振動板2から放音される再生出力の音波波面が制御されてその主軸を正面から適宜ずらすことが可能となることから拡声化が図られる。
【0080】
また、パネル型スピーカ装置150においては、信号処理を施して各ドライバユニット3に再生入力信号を供給してこれらを駆動する各フィルタ153について、それぞれのフィルタ係数に適宜の振幅成分を付与して構成するようにしてもよい。パネル型スピーカ装置150は、かかる構成によってスピーカアレィと同様に指向性を付与することが可能となる。したがって、パネル型スピーカ装置150は、放音部が1枚の振動板2によって構成されるが、複数の入力音源に対しても指向性の制御が可能なスピーカ装置システムを構成する。
【0081】
本発明の第16の実施の形態として図26に示したパネル型スピーカ装置160は、上述したパネル型スピーカ装置150を基本として、目標とする最適な特性を得るフィルタ164を入力部161に備える展開例を示したものである。このパネル型スピーカ装置160も、振動板2を駆動する3個のドライバユニット3と、これらドライバユニット3に対して再生入力信号を供給する入力部161とから構成される。入力部161は、音源162から再生入力信号がそれぞれ供給される第1のアンプ163と、フィルタ164及びこのフィルタ164に接続された第2のアンプ165とを備える。
【0082】
パネル型スピーカ装置160は、入力部161の第1のアンプ163を介して音源162から供給される再生入力信号によって振動板2の被駆動面2bに上下に配置された第1のドライバユニット3aと第3のドライバユニット3cとが駆動される。また、パネル型スピーカ装置160は、入力部161のフィルタ164によって所定の信号処理を施された再生入力信号が第2のアンプ165を介して供給されることによって振動板2の中央部に配置された第2のドライバユニット3bが駆動される。パネル型スピーカ装置160は、このように第2のドライバユニット3bに所定の信号処理を施した再生入力信号を供給することで、振動板2に発生する振動モードを制御する。
【0083】
パネル型スピーカ装置160は、例えばフィルタ164において再生入力信号の逆相処理を行うことによって、第2のドライバユニット3bを第1のドライバユニット3aと第3のドライバユニット3cに対して異なる位相で駆動するようにする。パネル型スピーカ装置160は、かかる構成によって通常の材料解析では予測し得ない振動モードで振動板2の駆動が可能となり、結果的にディップ部分や過度のピークの発生が抑制される。
【0084】
パネル型スピーカ装置においては、振動板に幾何学的に対称位置に配置されたドライバユニットに互いに逆相の再生入力信号を供給して駆動することにより、ある特定の周波数帯域において振動板の材質にかかわらずこれらドライバユニットの等間隔位置で振動の節を強制的に生成することが可能となる。したがって、パネル型スピーカ装置システムでは、かかる現象を巧みに利用することにより上述した各周波数帯域の感度調整、再生周波数特性の改善或いは音場や音質の調整等が可能となる。勿論、再生入力信号の信号処理は、各ドライバユニットに対してフィルタを適宜に組合せることによって行うようにしてもよい。
【0085】
本発明の第17の実施の形態として図27に示したパネル型スピーカ装置170は、1個の振動板2を5個のドライブユニット3a乃至3eによって駆動するとともに2つの音源172a、172bから供給される再生入力信号を処理して各ドライバユニット3に入力する入力部171とによって構成される。勿論、ドライバユニット3については、上述した各パネル型スピーカ装置と同様に、3個のドライブユニット3によって1個の振動板2を駆動するようにしてもよい。パネル型スピーカ装置170は、横長矩形の振動板2が用いられ、この振動板2に対して5個のドライブユニット3を横方向に等間隔で配列した横型に構成したが、上述した各パネル型スピーカ装置のように正方形或いは縦長、三角形の振動板2を用いてもよい。
【0086】
入力部171は、第1の音源172aから供給される第1の再生入力信号に対して順次大きな遅れ成分da1、da2、da3、da4を付与する遅れ成分供給回路173a1乃至173a4及び第2の音源172bから供給される第2の再生入力信号に対して順次大きな遅れ成分db1、db2、db3、db4を付与する遅れ成分供給回路173b1乃至173b4が備えられている。また、入力部171には、第1のミキサ174a乃至第5のミキサ174eと、これらミキサ174においてミキシングされた再生入力信号が供給されて各ドライバユニット3をそれぞれ駆動する第1のアンプ175a乃至第5のアンプ175eとが備えられている。
【0087】
第1のミキサ174aは、第1の音源172aから供給された第1の再生入力信号と第2の音源172bから供給されて遅れ成分db4が付与された第2の再生入力信号とをミキシングする。第2のミキサ174bは、第1の音源172aから供給されて遅れ成分da1が付与された第1の再生入力信号と第2の音源172bから供給されて遅れ成分db3が付与された第2の再生入力信号とをミキシングする。第3のミキサ174cは、第1の音源172aから供給されて遅れ成分da2が付与された第1の再生入力信号と第2の音源172bから供給されて遅れ成分db2が付与された第2の再生入力信号とをミキシングする。第4のミキサ174dは、第1の音源172aから供給されて遅れ成分da3が付与された第1の再生入力信号と第2の音源172bから供給されて遅れ成分db1が付与された第2の再生入力信号とをミキシングする。さらに、第5のミキサ174eは、第1の音源172aから供給されて遅れ成分da4が付与された第1の再生入力信号と第2の音源172bから供給された第2の再生入力信号とをミキシングする。
【0088】
パネル型スピーカ装置170は、第1の音源172aと第2の音源172bとからそれぞれ供給される第1の再生入力信号と第2の再生入力信号とが、遅れ成分の重みを変えた信号処理を施されて各ドライバユニット3に供給される。したがって、パネル型スピーカ装置170においては、第1の音源172aの第1の再生入力信号に基づいて、各遅れ成分dに応じて第1のドライバユニット3aから第5のドライバユニット3eに向かって次第に駆動が行われる。また、パネル型スピーカ装置170においては、第2の音源172bの第2の再生入力信号に基づいて、各遅れ成分dに応じて第5のドライバユニット3eから第1のドライバユニット3aに向かって次第に駆動が行われる。
【0089】
パネル型スピーカ装置170においては、上述した動作によって、第1の音源172aの第1の再生入力信号に基づく再生出力が振動板2の放音面2aから図27の矢印AAで示す方向へと放音される。また、パネル型スピーカ装置170においては、第2の音源172bの第2の再生入力信号に基づく再生出力が振動板2の放音面2aから同図BBで示す方向へと放音される。したがって、パネル型スピーカ装置170においては、2チャンネルの音源に対してそれぞれ異にする指向性が付与されるようになる。
【0090】
本発明の第18の実施の形態として図28に示したパネル型スピーカ装置180は、1個の振動板2を5個のドライブユニット3a乃至3eと、2つの音源182a、182bからそれぞれ再生入力信号を供給する構成について上述したパネル型スピーカ装置170と同様とするが、2つの音源182a、182bからそれぞれ供給される第1の再生入力信号と第2の再生入力信号とを信号処理してドライバユニット3に入力する入力部181の構成に特徴を有している。勿論、このパネル型スピーカ装置180についても、上述した各パネル型スピーカ装置と同様に、3個のドライブユニット3によって1個の振動板2を駆動するように構成してもよい。
【0091】
すなわち、入力部181には、第1の音源182aから供給される第1の再生入力信号を信号処理する5個のフィルタ183a1乃至183a5と、第2の音源182bから供給される第2の再生入力信号を信号処理する5個のフィルタ183b1乃至183b5からなる10個のフィルタ183が備えられている。また、入力部181には、信号処理された第1の音源182aから供給された第1の再生入力信号と第2の音源182bから供給された第2の再生入力信号とをミキシングする5個のミキサ184a乃至184eと、これらミキサ184においてそれぞれミキシングされた再生入力信号が入力されることによって各ドライバユニット3をそれぞれ駆動する5個のアンプ185a乃至185eとが備えられている。
【0092】
第1のミキサ184aは、第1の音源182aから供給されて第1のフィルタ183a1において信号処理された第1の再生入力信号と第2の音源182bから供給されて第5のフィルタ183b5において信号処理された第2の再生入力信号とが入力され、これらをチャンネル合成して第1のアンプ185aに供給する。第2のミキサ184bは、第1の音源182aから供給されて第2のフィルタ183a2において信号処理された第1の再生入力信号と第2の音源182bから供給されて第4のフィルタ183b4において信号処理された第2の再生入力信号とが入力され、これらをチャンネル合成して第2のアンプ185bに供給する。第3のミキサ184cは、第1の音源182aから供給されて第3のフィルタ183a3において信号処理された第1の再生入力信号と第2の音源182bから供給されて第3のフィルタ183b3において信号処理された第2の再生入力信号とが入力され、これらをチャンネル合成して第3のアンプ185cに供給する。
【0093】
さらに、第4のミキサ184dは、第1の音源182aから供給されて第4のフィルタ183a4において信号処理された第1の再生入力信号と第2の音源182bから供給されて第2のフィルタ183b2において信号処理された第2の再生入力信号とが入力され、これらをチャンネル合成して第4のアンプ185dに供給する。また、第5のミキサ184eは、第1の音源182aから供給されて第5のフィルタ183a5において信号処理された第1の再生入力信号と第2の音源182bから供給されて第1のフィルタ183b1において信号処理された第2の再生入力信号とが入力され、これらをチャンネル合成して第5のアンプ185eに供給する。
【0094】
各フィルタ183a、183bには、上述した第15の実施の形態のパネル型スピーカ装置150に用いたフィルタ153と同様に、例えば入力される再生入力信号に対して所定の周波数帯域の選択、任意の位相或いは振幅の信号処理を施すフィルタ係数を有するものが用いられる。パネル型スピーカ装置180は、最適なフィルタ183a、183bを用いることによって、上述した第17の実施の形態のパネル型スピーカ装置170と比較してより効果的な指向特性をえることが可能となる。
【0095】
また、パネル型スピーカ装置システム180は、各フィルタ183a、183bによって、振動板2を駆動する各ドライバユニット3に供給する再生入力信号について特定の周波数帯域の制御を行うように構成してもよい。パネル型スピーカ装置180は、これによって振動板2中に多数の腹、節を有する振動モードを生成することが可能となり、振動モードの各腹の部位を発音源とみなすことができる。スピーカアレイにおいては、一般に高周波数帯域まで指向性を狭くする効果を得るために発音源の個数を多くとる必要があるため、コストがアップするとともに装置が大型化しかつ使用者に圧迫感を与えるといった問題がある。パネル型スピーカ装置180は、上述したようにより少数のドライバユニット3によって目的とする狭指向性を得ることが可能となり、かつ振動板2も1個であることから小型で廉価に構成されて上述した問題点を解決する。なお、このパネル型スピーカ装置システム180における狭指向性の向上は、上述した各パネル型スピーカ装置システムによっても達成されることは勿論である。
【0096】
さらに、パネル型スピーカ装置システム180においては、例えば各フィルタ183a、183bにそのフィルタ係数を経時的に更新させるように制御する制御部を設けることによって指向特性を変化させるように構成してもよい。パネル型スピーカ装置180は、かかる構成を採用することによって特殊な機械的構成を用いることなく放音軸の回転、移動等の特殊な音響効果の生成が可能となる。勿論、かかる構成は、上述した各パネル型スピーカ装置システムにも採用することができる。
【0097】
上述した各実施の形態のパネル型スピーカ装置には、図1の第1の実施の形態として示したパネル型スピーカ装置1に用いた放音面2a側に立上り周壁5を一体に突設した振動板2を用いたが、図6の第2の実施の形態として示した被駆動面2b側に立上り周壁22を一体に突設した振動板21を用いてもよいことは勿論である。また、ドライバユニット3は、振動板2の大きさによってはさらに多数個のドライバユニットによってこれを駆動するように構成してもよいことは勿論である。
【0098】
また、上述した各実施の形態においては、従来のダイナミック型スピーカ装置に備えられるダイナミックドライバユニットとほぼ同等に構成されたドライバユニット3を備えたパネル型スピーカ装置を示したが、本発明はかかるドライバユニットに限定されるものではないことは勿論である。ドライバユニットは、再生入力信号が供給されることによって振動板に曲げ動作を生じさせるものであればよく、例えば圧電素子からなる圧電型ドライバユニットを用いてもよい。
【0099】
さらに、本発明においては、上述した各実施の形態で説明した個々の技術を適宜に組み合わせ、これらを電気的或いは機械的に切り換えて振動板を駆動するように構成してもよい。上述した各実施の形態のパネル型スピーカ装置は、例えば各種音響機器等のスピーカ装置として用いられるが、放音部がパネル状の振動板によって構成される特殊な構成であることから従来のスピーカ装置に期待されない種々の分野に幅広く展開が可能である。
【0100】
【発明の効果】
上述したように、本発明にかかるパネル型スピーカ装置は、振動体の立上り周壁が形成された外周部における曲げ強度が増すことにより低周波数帯域の再生入力信号に対する分割振動が抑制されることから、全体として一様にフラットな周波数応答特性が得られるようになり、小型で薄型であっても低周波数帯域から高周波数帯域まで幅広い周波数帯域について良好な音質と充分な音量によって再生出力を放音することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態として示すパネル型スピーカ装置の要部縦断面図である。
【図2】同パネル型スピーカ装置の正面図である。
【図3】同パネル型スピーカ装置に備えられるドライバユニットの詳細を説明する要部縦断面図である。
【図4】同パネル型スピーカ装置における振動板の振動モードの状態を説明する図である。
【図5】同パネル型スピーカ装置について、ピンクノイズ再生の1/3オクターブ特性の測定図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態として示すパネル型スピーカ装置の要部縦断面図である。
【図7】同パネル型スピーカ装置に備えられる接合部が楕円形とされたドライバユニットの要部斜視図である。
【図8】同パネル型スピーカ装置に備えられる接合部が矩形とされたドライバユニットの要部斜視図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態として示すパネル型スピーカ装置の斜視図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態として示すパネル型スピーカ装置の斜視図である。
【図11】本発明の第5の実施の形態として示す振動板の保護部材を備えたパネル型スピーカ装置の斜視図である。
【図12】同パネル型スピーカ装置の側面図である。
【図13】本発明の第6の実施の形態として示す他の振動板の保護部材を備えたパネル型スピーカ装置の斜視図である。
【図14】本発明の第7の実施の形態として示す他の振動板の保護部材を備えたパネル型スピーカ装置の斜視図である。
【図15】本発明の第8の実施の形態として示す3個のドライバユニットを備えたパネル型スピーカ装置の斜視図である。
【図16】同パネル型スピーカ装置の側面図である。
【図17】本発明の第9の実施の形態として示す振動板に質量成分部材を貼着してなるパネル型スピーカ装置の斜視図である。
【図18】同パネル型スピーカ装置における振動板の低周波数帯域での感度向上原理を説明する図である。
【図19】本発明の第10の実施の形態として示すドライバユニットを斜めに配置したパネル型スピーカ装置の要部斜視図である。
【図20】本発明の第11の実施の形態として示す三角形状の振動板を備えるパネル型スピーカ装置の要部斜視図である。
【図21】本発明の第12の実施の形態として示す3個のドライバユニットを材質を異にする取付部材を介して振動板に配置したパネル型スピーカ装置の要部斜視図である。
【図22】同パネル型スピーカ装置における共振周波数の調整動作の説明図である。
【図23】本発明の第13の実施の形態として示す振動板を3個のドライバユニットによって駆動するパネル型スピーカ装置の要部構成図である。
【図24】本発明の第14の実施の形態として示す振動板を3個のドライバユニットによって駆動する他のパネル型スピーカ装置の要部構成図である。
【図25】本発明の第15の実施の形態として示す振動板を3個のドライバユニットによって駆動する他のパネル型スピーカ装置の要部構成図である。
【図26】本発明の第16の実施の形態として示す振動板を3個のドライバユニットによって駆動する他のパネル型スピーカ装置の要部構成図である。
【図27】本発明の第17の実施の形態として示す振動板を5個のドライバユニットによって駆動するパネル型スピーカ装置の要部構成図である。
【図28】本発明の第18の実施の形態として示す振動板を5個のドライバユニットによって駆動する他のパネル型スピーカ装置の要部構成図である。
【符号の説明】
1 パネル型スピーカ装置、2 振動板(振動体)、2a 放音面、2b 被駆動面、2c 外周部、3 ドライバユニット、4 支持ブラケット、5 立上り周壁、6 ボイスコイル、7 磁気回路、8 ボビン、9 コイル部、10 センタポール、11 マグネット、12 プレート、13 補助リング、14 ダンパ、15 取付リング

Claims (1)

  1. 合成樹脂材により全体が剛性を有するパネル状に形成されるとともに外周部に全域に亘り枠状の立上り周壁が一体に形成され、一方の主面が放音面とされるとともに他方の主面が被駆動面とされた振動体と、
    上記振動体と対向配置された支持部材に固定されるとともに振動体駆動部が上記振動体に対して所定の周波数応答特性を付与する取付手段を介して上記被駆動面に固定され、再生入力信号に基づいて上記振動体駆動部により上記被駆動面の取付部を駆動点として上記振動体に厚み方向の部分的な曲げ動作による振動動作を生じさせて再生出力を放音させる少なくとも1個以上のドライバユニットと、
    全体枠状に形成され、前面が上記放音面よりも前方に延在しかつ上記立上り周壁を全周に亘って取り囲んだ状態で、内部に上記振動体を収納して保護する保護枠部材と、
    上記保護枠部材の内周側壁面と上記振動体の立上り周壁の外周面との間に圧縮状態で介挿配置され、上記振動体に対してその振動動作を妨げない弾性力を作用させて上記振動体を上記保護枠部材に弾性的に保持させる複数のスプリングと
    を有するパネル型スピーカ装置。
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