JP3873425B2 - パネル型スピーカ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スピーカ装置に関し、さらに詳しくはパネル状の振動板を振動させて再生出力を放音するようにしたパネル型スピーカ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
スピーカ装置としては、一般にコーン型ダイナミックスピーカやホーン型ダイナミックスピーカ等が知られいる。例えばコーン型ダイナミックスピーカは、円錐形状を呈して形成された振動板と、この振動板を駆動するドライバユニットと、振動板の外周縁部を支持するフレームと、これら各部材を収納したキャビネット等の部材によって構成される。ドライバユニットは、ボイスコイルと、ポールと、ヨークと、プレートと、マグネットと、ダンパー及びセンタキャップ等の部材によって構成されている。
【0003】
振動板は、軽量で内部損失が大きな素材によって上述した円錐形を基本形状に形成され、その中心部にドライバユニットが配置される。振動板は、一般に内周部から外周部に向かって次第にその厚みが薄くされるるとともに、その外周縁部が全周に亘って矢紙を介してフレームに支持されている。フレームは、振動板とドライバユニットとを結合するとともに、振動板を囲ってその保護作用も奏する部材である。フレームには、振動板に対してその振動動作による反作用の影響を及ぼさないように、一般に切欠き窓が形成されている。矢紙は、振動板の外周縁部の押さえと、この振動板が振動動作した際にキャビネットの取付部と接触しないように作用する。
【0004】
一方、ホーン型ダイナミックスピーカは、ボイスコイルによって駆動される振動板の振動音をホーンによって拡大して放出するようにしたものであり、ホーンを有する以外の基本的な構成については上述したコーン型ダイナミックスピーカと同等とされる。すなわち、ホーン型ダイナミックスピーカにおいても、例えばマグネットと、その先端部に一体に組み付けられたポールと、ポールの周囲を取り囲むヨークと、ポールと対向する開口部を有してヨークに組み付けられたプレート等の部材によってドライバユニットを構成し、このドライバユニットによって振動板が振動動作される。
【0005】
振動板は、アルミニウム等の軽金属や合成樹脂等によって球面形状を呈して形成されている。振動板は、開口部を閉塞することによってポールと対向するようにしてその外周縁部がプレートに結合されている。振動板は、上述したコーン型ダイナミックスピーカの振動板よりも小さくかつ振動系の共振が再生帯域のほぼ中央領域でよいために機械的剛性が大きい。したがって、振動板は、ダンパーを介すること無くプレートに結合されるとともに、その周辺部をドライバユニットによって振動動作される。換言すれば、ホーン型ダイナミックスピーカにおいても、その振動板が、コーン型ダイナミックスピーカの振動板と同様に外周縁部を固定されて支持されている。
【0006】
ところで、スピーカ装置においては、ボックス等を必要とせず薄型であり、自由な位置に設置することができるいわゆるパネル型スピーカ装置の実現について多くの試みが図られてきた。しかしながら、これらの多くの試みは、いずれも技術上の限界や音響性能の限界等によって理想的なパネル型スピーカ装置を実現するまでには至っていない。これらの試みは、その多くが上述したコーン型ダイナミックスピーカやホーン型ダイナミックスピーカを基本としたものであった。
【0007】
薄型スピーカ装置としては、例えばパネル状の振動板を固定極に対して微小な間隔を以って対向配置してなるコンデンサ型スピーカが知られている。コンデンサ型スピーカは、一般に振動板に金属薄膜が成膜形成されるとともにこの振動板と固定極との間に数100ボルトの直流偏倚電圧が印加されてなる。振動板は、固定極に再生信号が入力されると、この固定極との間の磁気的吸引力の変化によって振動する。また、コンデンサ型スピーカとしては、振動板を挟んで固定極を配置することによって、全帯域用に対応するようにしたプッシュプル型スピーカも提供されている。
【0008】
コンデンサ型スピーカは、上述したように放音部に数100ボルトの電圧を印加する必要があることから、いかなる場所にでも自由に設置することが困難であるとともに、温度や湿度条件の変化による安定性が低いといった問題点を有している。また、コンデンサ型スピーカは、入力電圧が直流偏倚電圧に規定されることによって、入力電圧に対して得られる最大無歪み出力音圧レベルが上述したダイナミックスピーカ装置に比較して小さいといった問題もある。さらに、コンデンサ型スピーカは、全帯域で安定した周波数特性を確保するためには振動板が大型化するといったように種々の問題点を有している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
スピーカ装置は、一般に再生入力信号が供給されるとドライバユニットによって振動板がピストンのように動作して出力再生が行われると考えられている。したがって、パネル型スピーカ装置においても、振動板を電磁駆動方式や静電駆動方式により上述した従来型のスピーカ装置の振動板と同様に動作する高精度の平面ダイヤフラムを製作する試みがなされていた。例えば静電駆動方式の振動板においては、所定のテンションを以って外周部が支持されており、ドライバユニットからの駆動力が与えられるとその駆動位置から波動が同心円状に連続して発生する。かかる振動板は、大きな単一位相の振動板として動作することによって、音の集中と制御が不可能な振動とを生じる大面積ピストン動作に起因する種々の問題を解決しなければならない。
【0010】
一方、パネル型スピーカ装置として、曲げ波動理論に基づいてドライバユニットにより振動板を駆動するようにした新規なパネル構造を有するスピーカ装置が提案されている。この新規なパネル型スピーカ装置は、機械的剛性が比較的大きな堅いパネル構造によって振動板が構成されており、ドライバユニットから駆動力が与えられるとこの振動板の表面全体に複雑な振動モードが生成される。振動モードは、平面パネル(振動板)の動作周波数の範囲に均一に分布された最も複雑で密集した波形の構造となる。新規なパネル型スピーカ装置は、有限サイズの振動板に関する曲げ波動の物理的特性と、波動の速度対周波数特性と、駆動点インピーダンス特性との解析により特徴付けられる。
【0011】
新規なパネル型スピーカ装置は、想定される用途に応じてパラメータが最適化された曲げ剛性の振動板が用いられる。新規なパネル型スピーカ装置は、一般に振動板から最大密度の曲げモードを確保するために、この振動板の中心点付近がドライバユニットによって駆動される。振動板は、有限要素解析によって均一なモード密度を与える特定の縦横比が数学的なモデリングツールによって実証されている。また、振動板は、フーリェ型の分析によって、最良のモードの均一性を実現する駆動力の供給位置が求められる。そして、振動板においては、フーリェ型分析の拡張によって高周波数帯域において多少の損失が生じるものの、より大きな面積の振動板を駆動することが可能とされる。振動板は、波動関数のゼロ周波数限界をとることにより、より一般的な静的梁の曲げ方程式に近似した曲げ剛性の式によって表現される。
【0012】
新規なパネル型スピーカ装置は、振動板の曲げ動作を規定する要因、すなわち面密度、曲げ剛性、幾何学的寸法(外形寸法)、表面積、駆動点の位置、及びドライブユニットのパラメータ、コアのシェアモジュール、内部損失、或いは振動板の支持方法のパラメータが最適に設定されることによって製作される。一般的なスピーカ装置においては、ダイポールと称される後方の音が前方の音と逆相を呈することから、中周波数帯域から低周波数帯域の音響エネルギーの打ち消しを防ぐ大きなバッフル板やエンクロジャを必要とする。一方、新規なパネル型スピーカ装置においては、バイポーラと称される後方の音の輻射が前方の音と加算されることから、効率の改善が図られるとともにバッフル板やエンクロージャを不要としている。
【0013】
新規なパネル型スピーカ装置は、単一素子のトランスデューサで駆動される1枚の振動板によってフルレンジの出力再生を可能とする。新規なパネル型スピーカ装置は、振動板の適切な材質の選択とトランスデューサに適合した構成とによって、従来のスピーカ装置と同等のフラットな周波数特性を得ることが可能となる。
【0014】
新規なパネル型スピーカ装置は、感度と電気的負荷とが従来のスピーカ装置と同等とされることにより既存のアンプとの互換性が図られるばかりでなく、これらに一般的に用いられているダイナミックドライバユニットや圧電型ドライバユニットの適用が可能とされ、非常に広い音場の放射パターン並びに双指向性の放射パターンが得られる。新規なパネル型スピーカ装置は、機械的エネルギから音響的エネルギへの変換効率がほぼ100%であるとともに入力周波数に独立した無指向性放射の特性、すなわち各入力周波数に関してサウンドパワーの大きな均一性を保有している。新規なパネル型スピーカ装置は、距離の条件によるサウンドパワーの減衰が小さいといった特徴を有するとともに、その新規な構成によりその他種々の特徴を有している。
【0015】
ところで、従来の一般的なパネル型スピーカ装置には、コーン型ダイナミックスピーカやホーン型ダイナミックスピーカに用いられている振動板と同様の振動板が用いられている。振動板は、比較的軽くかつ剛性を有するとともに内部損失の大きな素材によって形成されている。しかしながら、かかる振動板は、パネル型スピーカ装置の構成上、表面に露呈されることから外部からの衝撃等によって破損や変形が生じやすいといった問題があった。従来の一般的なパネル型スピーカ装置においては、振動板の破損や変形によって、特性が大きく変化するばかりでなく最悪の場合には再生不能といった致命的な事態が生じることがあった。
【0016】
本発明は、振動板の機械的強度の向上を図るとともにその駆動効率が保持されるようにしたパネル型スピーカ装置を提供することを目的に提案されたものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成する本発明にかかるパネル型スピーカ装置は、 硬く機械的強度の大きな特性を有する素材によってパネル状に形成されてなる振動板と、この振動板に貫通して設けられた取付孔と、取付孔に貫通させて上記振動板の上記取付孔の周辺部に固着され、再生入力信号に基づいて上記振動板を振動させるダイナミックドライバユニットとを備え、ダイナミックドライバユニットの磁気回路部の磁気空隙に配置されたボイスコイルが巻回されたボビンをバネ材を介在させて上記振動板に取り付けたことを特徴とする。
よって取り付けられる。
【0018】
以上のように構成された本発明にかかるパネル型スピーカ装置によれば、再生入力信号に基づいてダイナミックドライバユニットが駆動されてボイスコイルが振動動作するが、このボイスコイルの振動動作の反作用によって振動動作する磁気回路構成部材を介して振動板を駆動して再生出力の放音が行われる。パネル型スピーカ装置は、振動板が硬く機械的強度の大きなパネル材によって形成されることから、外部から衝撃等が加えられた場合にもこの振動板が破損したり変形したりすることが抑制されて信頼性が保持される。パネル型スピーカ装置は、振動板とのインピーダンス・マッチングをとりやすい強度の大きな磁気回路構成部材を介してダイナミックドライバユニットが取り付けられることから、振動板が効率的に駆動される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の実施に形態に先立って、本発明に先行するパネル型スピーカ装置1を説明する。このパネル型スピーカ装置1は、上述した新規なスピーカ装置に適用したものであり、図1及び図2に示すように、一方の主面2aを放音面として矩形パネル状に形成されるとともに外周部2cが非拘束状態に支持された振動板2と、この振動板2の他方主面2bの略中心部に位置して固定された1個のダイナミックドライバユニット3(以下、単にドライバユニットと称する。)とを備えている。振動板2は、硬くて機械的強度の大きなパネル材、例えばスチレン樹脂等のエンジニアリングプラスチックを素材として成形されたパネル材によって構成され、さらに従来のスピーカ装置に用いられるバフル板も用いることができる。
【0020】
振動板2は、図示を省略するが、ドライバユニット3を介して適宜のスタンド部材等によって支持される。振動板2は、従来のスピーカ装置の振動板とは異にして、上述したように硬くて機械的強度の大きなパネル材によって構成される。したがって、振動板2は、表面に露呈された状態で用いられて外部から誤って衝撃等が加えられた場合にも、破損したり変形したりするといった事態の発生が低減される。振動板2は、一般的には矩形形状を呈して形成されるが、使用目的等に応じて例えば円形や楕円形等の適宜の形状に形成される。
【0021】
ドライバユニット3には、その基本的な構成が従来のダイナミック型スピーカに備えられるダイナミックドライバユニットと同等のものが用いられる。図3に示したドライバユニット3は、いわゆる外磁型ドライバユニットであって、ボイスコイル部4と、再生入力信号に基づいてこのボイスコイル部4を駆動する磁気回路部5とから構成されている。ボイスコイル部4は、ボビン6と、このボビン6の外周部に捲き線を施して構成したコイル7とからなる。ボイスコイル部4には、ボビン6の一端側を閉塞するようにしてばね取付片8aが一体に突設されたプレート8が嵌合されている。
【0022】
磁気回路部5は、底面部に形成したフランジ部によってヨーク9を一体に形成してなるセンタポール10と、このセンタポール10を中心孔に貫通させて組み合わすことにより外磁マグネットを構成するリング状のマグネット11と、センタポール10を中心孔に臨ませてマグネット11と積層状態で組み合わされたリング状のプレート12と、このプレート12の外周部に嵌合された補助リング13等の部材によって構成される。補助リング13には、その側面にばね取付スタッド13aが一体に突設されている。
【0023】
ドライバユニット3は、ボイスコイル部4が磁気回路部5に対して、そのコイル7をセンタポール10とプレート12とによって構成される磁気空間部に位置されるようにして組み合わされてなる。ドライバユニット3は、一端部がばね取付スタッド13aにねじ止め固定されるとともに他端部がばね取付片8aにねじ止め固定された板ばね14によって、ボイスコイル部4を磁気回路部5に対して上述した状態で保持してなる。板ばね14は、一般的なダイナミックドライバユニットのダンパと同様の機能を奏し、ボイスコイル部4を磁気回路部5に対して軸方向に対して振動自在に支持している。したがって、ドライバユニット3は、板ばね14の作用によってボイスコイル部4がより大きく振動動作される。
【0024】
ドライバユニット3は、図2に示すように磁気回路部5の構成部材であるセンタポール10の底面部、すなわちヨーク9の側面部が、振動板2の被駆動面2bに接合固定される。したがって、ドライバユニット3は、硬くて機械的強度の大きなパネル材によって形成された振動板2に対して、その被駆動面2bに同様に硬くて機械的強度の大きなヨーク9を介して取り付けられる。ドライバユニット3は、接合部位であるヨーク9の側面部が、振動板2に対する駆動部位9aを構成する。なお、振動板2とドライバユニット3とは、例えば対応位置に互いに連通する取付孔を設けるとともにこれら取付孔に固定ねじをねじ込むことによって結合するように構成してもよい。
【0025】
以上のように構成されたパネル型スピーカ装置1は、図示しない再生入力信号回路部から音声信号等の再生入力信号がドライバユニット3に供給されると、このドライバユニット3によって振動板2が駆動されてその放音面2aから再生出力の放音が行われる。パネル型スピーカ装置1は、振動板2がドライバユニット3による駆動部位9aから部分的な曲げ動作が生じて、再生出力の放音が行われる。
【0026】
ところで、スピーカ装置においては、ボイスコイル部4が振動動作することにより、その反作用力が磁気回路部5やフレーム等の部材に作用する。例えば従来のコーン型ダイナミックスピーカにおいては、ドライバユニットの磁気回路部を構成する各部材やフレーム等の筐体部を機械的強度が大きな材料によって形成することにより、ボイスコイル部の振動動作に伴う反作用力で筐体部が振動することを防止するように構成している。したがって、ドライバユニット3は、例えば磁気回路部5のヨーク9やプレート12が機械的強度が大きな材料により形成されている。パネル型スピーカ装置1は、上述したように機械的強度が大きなヨーク9が振動板2の駆動部位9aを構成している。
【0027】
パネル型スピーカ装置1は、上述したように振動板2が硬くて機械的強度の大きなパネル材によって形成されており、従来の一般的なスピーカ装置と比較して重量が大きな構成となっている。かかる振動板2は、従来のスピーカ装置のようにボイスコイル部側を駆動部位としたドライバユニットによって駆動した場合には、その大きな重量によって効率よく振動動作されない。
【0028】
パネル型スピーカ装置1は、振動板2を機械的インピーダンスが近似している機械的強度の大きなヨーク9側が駆動部位9aとされている。したがって、パネル型スピーカ装置1は、駆動部位9aにおける伝達損失が低減されて振動板2が効率よく振動され、高感度の再生出力が行われる。パネル型スピーカ装置1は、従来汎用されているドライバユニット3が用いられることで、低コストで製作されるとともに振動板2の機械的強度の向上も図られる。また、パネル型スピーカ装置1は、上述したように従来のスピーカ装置のように共鳴箱や音響管等を不要とすることから、小型で薄型に構成することができる。さらに、パネル型スピーカ装置1は、放音面2aがパネル状であることから、その外形形状或いは表面デザインを比較的自由に展開することが可能であり、例えばこの放音面2aに絵を書いたり、写真や絵を挟んだり或いは適宜の写真や図形を投影するといった応用が可能となる。
【0029】
パネル型スピーカ装置1は、振動板2が大きな振動面積を有することから、同一仕様のドライバユニット3を有する従来のスピーカ装置と比較して、より大きな低音出力を可能とする。また、パネル型スピーカ装置1は、従来のスピーカ装置のように振動板2の外周部2cを支持するための矢紙やフレーム等の支持部材を不要とすることから、部品点数も少なく組立工程が合理化されてコストの低減も図られる。
【0030】
なお、ドライバユニット3については、上述した外磁型ドライバユニットに限定されるものでは無く、ヨークの内部空間にマグネットが配置されたいわゆる内磁型ドライバユニットであってもよい。また、ドライバユニット3は、振動板2に対して放音面2a側に取り付けるようにしてもよい。
【0031】
パネル型スピーカ装置1は、上述した構成を基本態様として種々の展開が可能である。パネル型スピーカ装置1は、例えば振動板2が、ドライバユニット3が接合される接合部位を、材質を異にする取付板によって構成するようにしてもよい。取付板は、例えば振動板2を成形する際に、インサート成形法によって一体化されてなり、特定の入力周波数に対する応答特性を改善する材質のものが選定される。パネル型スピーカ装置1は、かかる構成を採用することで、振動板2と取付板とで振動特性が異なって機械的にいわゆる2ウェイスピーカ装置と同等の機能を有するようになる。
【0032】
パネル型スピーカ装置1は、例えば振動板2の外周部2cに沿ってテープ状とされた鉛材からなる振動を吸収しやすい材質によって形成された質量成分材を設けてもよい。パネル型スピーカ装置1は、上述したように振動板2がその外周部2cを非拘束状態で支持したことにより低周波数帯域でもこの外周部2cで振動が生じ易くなり、低周波数帯域での振動モードの発生周波数が下げられるようになる。したがって、パネル型スピーカ装置1は、低周波数帯域での安定した再生出力が得られるようになり、再生有効周波数帯域の拡張が図られる。
【0033】
なお、パネル型スピーカ装置1は、質量成分材を、振動板2の放音面2aの他の部位に貼着することによってこの振動板2における振動伝達を妨げる作用を奏するように構成してもよい。パネル型スピーカ装置1は、これによってピークが立ちにくくなって入力周波数に応じた応答特性が緩やかになるために自然な音質の再生出力を得ることができるようになる。質量成分材は、上述したテープ状の鉛材に限定されるものではなく、その他の振動損失の大きな材料或いは防振降下の大きな材料等によって形成してもよいことは勿論である。
【0034】
上述したパネル型スピーカ装置1においては、振動板2がその外周部2cを非拘束状態で支持されるように構成したが、従来のパネル型スピーカ装置と同様にこの振動板2を外周部2cで支持する構成であってもよいことは勿論である。
【0035】
次に、本発明の実施の形態としてのパネル型スピーカ装置20を説明する。このスピーカ装置20は図3に示すように構成されたものであって、振動板21に対してドライバユニット3が、その磁気回路部5の補助リング13を介して取り付けられた構成に特徴を有している。パネル型スピーカ装置20は、構成部材を上述したパネル型スピーカ装置1と同等の構成部材が用いられ、同一符号を付すことによってその説明を省略する。振動板21は、材質や形状を上述した振動板2とほぼ同等に形成され、ドライバユニット3の取付部位に対応して、振動板21を貫通して取付孔22が形成されている。取付孔22は、その内径がマグネット11の外径よりも大きくかつ補助リング13の内径よりも小さく形成されてなる。
【0036】
ドライバユニット3は、振動板21に対して、被駆動面21b側に位置されるとともにそのヨーク10側から取付孔22内に挿入され、補助リング13の側面13aを取付孔22の開口縁22aに突き当てられる。ドライバユニット3は、互いに突き合わされた側面13aと取付孔22の開口縁22aとが強固に接合固定されることによって組み合わされる。ドライバユニット3は、硬くて機械的強度の大きなパネル材によって形成された振動板2に対して、その被駆動面2bに同様に硬くて機械的強度の大きな補助リング13を介して取り付けられる。ドライバユニット3は、接合部位である補助リング13の側面13aが、振動板2に対する駆動部位を構成する。
【0037】
以上のように構成されたパネル型スピーカ装置20は、図示しない再生入力信号回路部から音声信号等の再生入力信号がドライバユニット3に供給されると、ボイスコイル部4が振動動作する。ボイスコイル部4の振動動作は、その反作用力が磁気回路部5に作用し、補助リング13を介して振動板21に伝達される。パネル型スピーカ装置20は、補助リング13の側面13aを駆動点として振動板21が駆動されてその放音面2aから再生出力の放音が行われる。パネル型スピーカ装置20は、振動板21がドライバユニット3による駆動部位13aから部分的な曲げ動作が生じて、再生出力の放音が行われる。
【0038】
ところで、上述したパネル型スピーカ装置1、20は、振動板2が1個のドライバユニット3によって駆動されることから、
a.振動板2の振動モードが、この振動板2の形状及び材質特性によって発生する振動モードの周波数、次数が決定されるとともにドライバユニット3の設置位置によって振動モードの発現の大きさが決定される
b.振動板2に対してドライバユニット3が、ある入力周波数fにおいて節となる位置に取り付けられた場合に、振動が伝達されないことから周波数応答特性の測定においてディップが観察される
c.振動板2の加振動部以外の部位においてこの振動板2の材料特性に反映した曲げ動作が生じることから、再生出力が材料の固有モードに従って材料特有の出力音を放音する
等の特徴を有している。
【0039】
図4は、複数個のドライバユニット3(3a乃至3c)によって振動板2を駆動するように構成されたパネル型スピーカ装置30を示している。
なお、振動板2及びドライバユニット3は、上述したパネル型スピーカ装置1の振動板2及びドライバユニット3と同等のものが用いられることからその説明を省略する。パネル型スピーカ装置30は、複数個のドライバユニット3により振動板2を駆動することで上述したパネル型スピーカ装置1に期待されない特徴を有する。
【0040】
パネル型スピーカ装置30においては、複数個のドライバユニット3によって振動板2の各部にそれぞれ独立の曲げ動作が生じられる。パネル型スピーカ装置30は、各ドライバユニット3について意図的に節位置を振動板2に対する加振動位置としない限り、各ドライバユニット3が各周波数帯で節位置を駆動することは無い。パネル型スピーカ装置30は、各ドライバユニット3が各周波数帯において相互に節位置での振動板2の駆動を補完することによって、その周波数応答特性に鋭いピークやディップの発生が抑制されるようになる。
【0041】
また、パネル型スピーカ装置30は、1個のドライバユニット3を備えるものと比較して、中周波数帯域及び高周波数帯域においてピークやディップの減少が図られようになる。さらに、パネル型スピーカ装置30は、各ドライバユニット3によって複数箇所を駆動されることから、振動板2の大きさとその材料特性に応じた固有の再生出力が薄められていわゆるくせの無い音質の再生出力がなされるようになる。パネル型スピーカ装置30は、大型で重量が大きな振動板2を備える場合に各ドライバユニット3にその重量による荷重が配分されて接合部位における機械的負荷が軽減される。したがって、パネル型スピーカ装置30は、機械的強度や耐久性の向上が図られて振動板2の振動形態が線形運動から外れて再生挙動や音質に影響が生じるといった現象の発生が抑制され、結果的に音質も向上するようになる。
【0042】
パネル型スピーカ装置30は、振動板2に対して各ドライバユニット3を適宜に配置することによって、振動板2の材質に起因する発生しやすい振動モードを意図的に変更してこの振動板2内に発生する過度に大きな振動モードを抑制し必要な振動モードを生成することが可能となる。したがって、パネル型スピーカ装置30は、ある特定方向に関する特定周波数の振動モードが抑制されて音質の安定化とその向上が図られるようになる。
【0043】
パネル型スピーカ装置30においては、複数個のドライバユニット3を備えることから、各ドライバユニット3に対して種々の信号処理を施した再生入力信号を供給するように構成することができる。パネル型スピーカ装置30は、例えば各ドライバユニット3に対してそれぞれ独立に再生入力信号の供給或いは位相の切換等を行って振動板2を駆動するように構成する。このため、再生入力信号の供給回路部は、例えば音源から供給される再生入力信号を増幅するアンプと、このアンプと各ドライバユニット3との間に互いに独立してそれぞれ接続された切換スイッチ及びボリュームとからなる直列回路とから構成される。各切換スイッチは、各ドライバユニット3に対するそれぞれ再生入力信号の入力のオン/オフ切換操作とともに、入力オン状態で再生入力信号の位相の切換操作とを行う。各ボリュームは、各ドライバユニット3に対してそれぞれ入力される再生入力信号のレベル調整を行ってこれら各ドライバユニット3の感度を個々に調整するようにする。
【0044】
パネル型スピーカ装置30は、供給回路部から必要とされる位相成分を有する再生入力信号が各ドライバユニット3に供給され、これら各ドライバユニット3がそれぞれ独立に動作されて振動板2を駆動して再生出力を放音する。したがって、パネル型スピーカ装置30は、特別な回路素子や切換装置等を不要とするとともに使用者による極めて簡単な操作によって、音場や音質等を適宜変えた再生出力を得ることが可能となる。
【0045】
パネル型スピーカ装置30は、例えば再生入力信号を複数の周波数帯域に分割するとともに位相調整を行ってこれを合成した後に、各ドライバユニット3に供給することによって振動板2を駆動するように構成してもよい。このため、パネル型スピーカ装置30には、音源から再生入力信号が供給されるバンドパスフィルタと、これらバンドパスフィルタにそれぞれ接続された切換スイッチユニットと、これら切換スイッチユニットを介してそれぞれ再生入力信号が供給されるミキサと、各ミキサと各ドライバユニット3との間にそれぞれ介挿されたアンプ等によって構成される再生入力信号の供給回路部が備えられる。
【0046】
バンドパスフィルタは、音源から供給される再生入力信号をそれぞれ所定の周波数帯域に分割する。各切換スイッチユニットは、それぞれミキサに接続された複数個の切換スイッチによって構成され、例えば各ミキサに対するそれぞれ再生入力信号の入力のオン/オフの切換操作とともに、入力オン状態で再生入力信号の位相の切換操作とを行う。各ミキサは、各切換スイッチユニットからそれぞれ供給される所定の周波数帯域の再生入力信号を合成して各アンプへと入力する。各アンプは、合成再生入力信号を増幅してドライバユニット3に供給する。
【0047】
パネル型スピーカ装置30は、以上のように構成されることにより、供給回路部から複数の周波数帯域に分割されるとともに必要とされる位相成分に調整された再生入力信号が各ドライバユニット3にそれぞれ供給され、これら各ドライバユニット3がそれぞれ独立に動作されて振動板2を駆動して再生音を放出する。パネル型スピーカ装置30は、例えば低周波数帯域では各ドライバユニット3に全て同相成分の再生入力信号が入力されるとともに、中周波数帯域及び高周波数帯域では逆相成分の再生入力信号が入力されるように構成される。
【0048】
パネル型スピーカ装置30は、低周波数帯域で同相成分の再生入力信号が各ドライバユニット3に供給されることにより、振動板2により大きな曲げ動作が生じるようになる。したがって、パネル型スピーカ装置30においては、低周波数帯域でのが生成されて応答特性の向上、すなわち感度の向上が図られるようになる。また、パネル型スピーカ装置30は、中周波数帯域及び高周波数帯域で逆相成分の再生入力信号が各ドライバユニット3に供給されて振動板2が駆動されることで、互いに相殺される周波数帯域が生じて全体の感度が低下することで全体的に感度が平坦化が図られた再生出力が出力されるようになる。
【0049】
パネル型スピーカ装置30は、再生入力信号の供給回路部にディップ部分や過度のピークを発生させる特定の周波数帯域を分離する等の信号処理を施すデジタルフィルタを設けてもよい。供給回路部は、例えば音源から供給される再生入力信号に対して適当な信号処理を施す複数個のデジタルフィルタと、これら各デジタルフィルタを通過した再生入力信号を増幅して各ドライバユニット3をそれぞれ駆動するアンプとから構成される。
【0050】
パネル型スピーカ装置30は、音源から供給される再生入力信号が、例えばインパルス応答の逆フィルタ作用を奏する各デジタルフィルタによってディップ部分や過度のピークを発生させる特定の周波数帯域を分離する等の信号処理を施されて各ドライバユニット3に供給されて振動板2が駆動されることで、再生周波数特性の平坦化が図られた再生出力が放音されるようになる。なお、パネル型スピーカ装置30は、各デジタルフィルタを適宜選択することによって、特定の周波数帯域のみを強調させた再生出力を放音することも可能となる。また、パネル型スピーカ装置30は、デジタルフィルタばかりでなく、適宜のアナログフィルタも用いられ、また再生入力信号に対して特定の周波数帯域の分離処理ばかりでなく振幅や位相等の適宜の信号処理を行うようにしてもよい。
【0051】
パネル型スピーカ装置30においては、例えば上述した各フィルタにそのフィルタ係数を経時的に更新させるように制御する制御部を設けることによって指向特性を変化させるように構成してもよい。パネル型スピーカ装置30は、かかる構成を採用することによって特殊な機械的構成を用いることなく放音軸の回転、移動等の特殊な音響効果の生成が可能となる。
【0052】
パネル型スピーカ装置30は、信号処理を施して各ドライバユニット3に再生入力信号を供給してこれらを駆動する各フィルタについて、フィルタ係数に適当な遅れ成分を付与して構成してもよい。パネル型スピーカ装置30は、かかる構成によって振動板2から放音される再生出力の音波波面が制御されてその主軸を正面から適宜ずらすことが可能となり拡声化が図られる。また、パネル型スピーカ装置30は、各フィルタについて、それぞれのフィルタ係数に適宜の振幅成分を付与して構成するようにしてもよい。パネル型スピーカ装置30は、かかる構成によってスピーカアレィと同様に指向性を付与することが可能となる。
【0053】
パネル型スピーカ装置30は、振動板2に幾何学的に対称位置に配置されたドライバユニット3に互いに逆相の再生入力信号を供給して駆動することにより、ある特定の周波数帯域において振動板2の材質にかかわらずこれらドライバユニット3の等間隔位置で振動の節を強制的に生成することが可能となる。したがって、パネル型スピーカ装置30は、かかる現象を巧みに利用することにより上述した各周波数帯域の感度調整、再生周波数特性の改善或いは音場や音質の調整等が可能となる。勿論、再生入力信号の信号処理は、各ドライバユニット3に対してフィルタを適宜に組合せることによって行うようにしてもよい。
【0054】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明にかかるパネル型スピーカ装置によれば、硬く機械的強度の大きなパネル材によって形成された振動板に対して少なくとも1個以上のダイナミックドライバユニットがその磁気回路構成部材を介して取り付られ、再生入力信号に基づいて振動板に部分的な曲げ動作を生じさせて再生出力を放音させるように構成したことにより、硬く機械的強度の大きなパネル材によって形成された振動板に外部から衝撃等が加えられた場合にも破損や変形が抑制されて信頼性の向上が図られる。パネル型スピーカ装置は、再生入力信号に基づいて振動するボイスコイルの反作用力で磁気回路構成部材を介して振動板が駆動されるが、インピーダンス・マッチングが図られた振動板と磁気回路構成部材とを駆動部位として構成することから振動板が効率的に駆動され、高感度の再生が行われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に先行するパネル型スピーカ装置を示す要部側面図である。
【図2】 図1に示すパネル型スピーカ装置の要部縦断面図である。
【図3】 本発明が適用されたパネル型スピーカ装置を示す要部縦断面図である。
【図4】 本発明の適用例を示すパネル型スピーカ装置の要部側面図である。
【符号の説明】
1、20、30 パネル型スピーカ装置、2 振動板、2a 放音面、2b 被駆動面、2c 外周部、3 ドライバユニット、4ボイスコイル部、5 磁気回路部、6 ボビン、7 コイル、8 プレート、9 ヨーク、10 センタポール、11 マグネット、12 プレート、13 補助リング、14 板バネ、21 振動板、22 取付孔
Claims (2)
- 硬く機械的強度の大きな特性を有する素材によってパネル状に形成されてなる振動板と、
上記振動板に貫通して設けられた取付孔と、
上記取付孔に貫通させて上記振動板の上記取付孔の周辺部に固着され、再生入力信号に基づいて上記振動板を振動させるダイナミックドライバユニットとを備え、
上記ダイナミックドライバユニットの磁気回路部の磁気空隙に配置されたボイスコイルが巻回されたボビンをバネ材を介在させて上記振動板に取り付けたことを特徴とするパネル型スピーカ装置。 - 上記振動板は、その外周部が自由振動するようにほぼ非拘束状態で支持されたことを特徴とする請求項1に記載のパネル型スピーカ装置。
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-
1998
- 1998-02-09 JP JP02757998A patent/JP3873425B2/ja not_active Expired - Fee Related
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