JP3767152B2 - 薄型平面スピーカユニット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はハイファイ用のオーディオ分野におけるダイナミックスピーカユニットの新しい構造に関し、特に、フレームレス・エッジレス構造でエンクロージャと組み合わせない低音域特性に優れるフルレンジ対応の超薄型平面スピーカユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在のハイファイ再生用のダイナミックスピーカユニットの主流はムービングコイル形であるが、特にフルレンジタイプ(全帯域用)に限っていえば図6に示されるような構造のダイナミックコーンスピーカユニットが殆どである。
【0003】
図6において、ダイナミックコーンスピーカユニット20は、プレート6、7とこれに固定されたマグネット3とからなる磁気回路を構成するドライバ部2と、駆動力を発生するボイスコイル1を捲回したボイスコイルボビン5と、ボイスコイル1の先端に連結された略円錐形のコーン振動板11と、前記ボイスコイル1を前記ドライバ部2のギャップに対して一定の位置に保持するためにボイスコイルボビン5に連結されたダンパ12(通常、通気性のよい布に樹脂を含浸し加熱加圧成形したコルゲーションダンパである。)と、さらにコーン振動板11の外周縁を支えるエッジ14と、これらの部材を連結保持するフレーム10と、から構成される。なお、符号4はポールピース、符号8はセンターキャップ、符号15はガスケット、符号16は端子、符号17は錦糸線である。
【0004】
上記のように輻射器である振動板の形状が略円錐型(コーン型)のダイナミックコーンスピーカは振動板に比較的弱い材料を用いても、振動に伴う変形が生じにくく、且つボイスコイルの振動を簡単な構造で有効に伝達できるため最も広く用いられている。
【0005】
もっとも、コーン振動板11の剛性は高いことが望ましく、ピストンモーション(振動板全体がボイスコイルと全く同じように前後に動く状態)が一番理想的な振動状態であるが、振動板の剛性が弱いと分割振動(波打ち振動)が生じる。従来はこの分割振動を防止するためにコーン振動板を金属にしたり、炭素を混入したプラスチックを採用したりして剛性を高め、またコーン振動板にコルゲーション(同心円の襞)を入れたりして分割振動を抑制していた。
【0006】
一方、見方を変えれば、分割振動自体は楽器の響板の振動と本質的に同じものであるから、分割振動が発生して再生音に本来の音以外の音が多少混じるからと言って一概にこれを否定することも疑問が残る。適度な分割振動の発生は工夫次第で丸やかでナチュラルな音質の素となり得ると考えられるのである。
【0007】
ところで、一般には上述のようなダイナミックコーンスピーカユニット20はエンクロージャ(箱)に収納されてスピーカシステムを構成するが、元々コーン振動板11が円錐(コーン)型(一般に開角角度は概ね90度)であるためにユニット自体に相当の厚さがあり、エンクロージャに収納するとシステム全体の厚さは薄型にしたバスレフキャビネットでも少なくとも10cm以上必要とする。まして低音域を拡大するためにはどうしてもスピーカユニット及びエンクロージャ(キャビネット)の寸法を大きくしなければならない。
【0008】
仮に、上記ダイナミックコーンスピーカユニットをエンクロージャレスとして使用すると、スピーカの前後の音の干渉によって特に低音域の音圧低下を招き、フルレンジ化は困難となる。例えば図7の横軸に周波数(Hz)、縦軸に音圧レベル(dB)をとったグラフにおけるバスレフ3ウェイスピーカシステムの音響特性(符号Aの曲線)と、エンクロージャレスのウーファスピーカユニットの音響特性(符号Bの曲線)の比較図を見れば明らかなように、500Hz以下、特に100Hz以下の低音域特性に顕著な差があることが判る。
【0009】
一方、一般家庭用等として考えると、狭い部屋に大きなスピーカユニットを置くことが困難な状況にあることから、壁掛けも可能な程度に軽くて超薄型の、且つ低音域の音響特性に優れたフルレンジのダイナミックスピーカの実現の要望が強い。また、液晶テレビやプラズマディスプレイテレビ等の薄型テレビに対応した超薄型のキャビネットレス(エンクロージャレス)スピーカの開発が望まれている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
現在のところ薄型平面スピーカとしてはコンデンサスピーカシステムがある。このコンデンサスピーカシステムは上述のダイナミックスピーカとは原理的に全く異なり、固定電極板に対向する金属蒸着振動膜に500〜数千ボルトの高電圧直流バイアス(成形電極電圧)を印加し、且つ信号電圧を数百ボルトに昇圧して印加し、その両面の±の電荷の引き合いで球面波に近い振動音波を発生させるものであり、優れた特性を有するものの極めて特異な構造で高価であるという問題点がある。
【0011】
また、上記コンデンサスピーカシステムの弱点として、駆動力がダイナミック型よりも弱く振幅量を大きくとるのが困難であるため、振動膜面積を相当大きくしないと高域に比べ振動回数の少ない低域の輻射効率が低下し、実用性がなくなってしまうことがある。
【0012】
また、フルレンジでは相当に大型となり、小型のものは低周波帯域の音響特性が劣るのでスピーカシステムとしてサブウーファが別途必要になる。
【0013】
一方、ダイナミックスピーカにおいても、前述のようなコーン型ではコーン振動板の振動面が約90度の開角角度を以て円周状に対向しているためにそのくぼみ空間で振動面からの音波が干渉し合い、周波数特性上激しい凹凸がでる(キャビティ効果)ことから、所謂平面型スピーカユニットも開発されている。この平面型スピーカユニットは軽量、高剛性の材料による板状振動板として忠実度の点で理想的なピストンモーション振動領域が広がるという長所を持つ。
【0014】
上記平面型には構造上図8の(a)に示される充填型ダイナミックスピーカ30と、(b)、(c)に示されるプレート型ダイナミックスピーカ40、50があるが、このプレート型ダイナミックスピーカ40、50はハニカム構造の特殊な平面振動板32を必要とし、且つ(b)のプレート型ダイナミックスピーカ40ではサブコーン36(振動伝達用円錐形サブコーン)や数本の連結棒を介する必要があり、(c)のダイナミックスピーカ50では多数のボイスコイル31・・・によって駆動しないとピストンモーションの維持効果が上がらないといった問題点があり、(a)の充填型ダイナミックスピーカ30は高剛性軽量のメタルコーン38の円錐くぼみ部分に発泡ウレタン材37を充填したもので、全体形状としては図に示されるようにやはり薄型にはならない。なお、符号33は表面スキン材であり、カーボングラファイトないし薄膜プラスチックである。
【0015】
何れにせよ上記平面型はコーン型よりは振動板が重くなって、エッジやダンパの負担が大きくなる。また、コスト的にもコーン型に見合わない。加えてエッジで外周縁が規制されていることはコーン型と同様であり、エンクロージャに収納して用いるので到底薄型とは言えない。
【0016】
以上のように従来のハイファイ用スピーカユニットでは、各々長所、短所が有って、軽量、超薄型でフルレンジタイプのスピーカユニット、特に低音域の特性に優れるスピーカユニットは実現されていなかった。
【0017】
本発明は上記事情を考察してなされたものであり、軽量、超薄型の平面スピーカでありながら、低音域特性が良好なフルレンジ対応可能な全く新規な振動構造の薄型平面スピーカユニットを提供する。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1) ボイスコイルが捲回されるとともに磁気回路を構成するドライバ部により駆動されるボイスコイルボビンと、前記ボイスコイルボビンを前記ドライバ部に連結支持する支持部材と、前記ボイスコイルボビンを中心軸として該ボイスコイルボビンの外周面に対して略垂直に外装固定された略円形の振動板と、前記振動板の外周縁に沿って付設された重りと、から構成されるフレームレス・エッジレス構造であり、且つ前記振動板が中心側部分と外周側部分とに前記ボイスコイルボビンを中心とするリング状の柔軟性に富む振動境界領域によって二分されており、前記振動板が前記振動境界領域を節として中心側部分と外周側部分とで分割振動することを特徴とする薄型平面スピーカユニットを提供することにより上記課題を解決する。
【0019】
(2) また、振動板に中心から半径方向に延在する襞を円周方向に複数本連続して設けたことを特徴とする上記(1)に記載の薄型平面スピーカユニットを提供することにより上記課題を解決する。
【0020】
(3) また、振動境界領域が振動板に対して複数の貫通孔をボイスコイルボビンを中心としてリング状に穿設した構造であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の薄型平面スピーカユニットを提供することにより上記課題を解決する。
【0021】
(4) また、振動境界領域に柔軟性に富む補強部材を付着せしめたことを特徴とする上記(1)または(2)または(3)に記載の薄型平面スピーカユニットを提供することにより上記課題を解決する。
【0022】
(5) さらに、振動板の取り付けられたボイスコイルボビンをドライバ部に対して連結支持する支持部材が複数枚重ねて取り付けられていることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れかに記載の薄型平面スピーカを提供することにより上記課題を解決する。
【0023】
ここに、上記振動板の形状は従来のような円錐(コーン)型(通常は概ね開角角度90度、即ち、中心軸に対して45度に開いている。)ではなく、全体形状が平らな略円形であり、表面が平坦でなく襞が設けてある場合でもその厚さは最大10〜20mm程度であって、ドライバ部と合わせてもスピーカユニット全体の厚さは30mm前後(振動板の直径が30〜40cmの場合)となる。これはハイファイ用のダイナミックスピーカユニットとしては画期的な超薄型である。
【0024】
また、略円形の振動板を振動境界領域を境にして内側と外側に分割しつつ外周縁に適当な重りを周設することによって振動板の内側と外側で分割振動を意識的に発生させている。
【0025】
畢竟、数十Hz辺りに外周側部分のピストンモーションの共振周波数を設定して、60〜200Hz範囲の低音域で外周側部分の外周縁に大きい振幅の前後ピストンモーションを起こさせ、前記低音域の特性を向上させているのである。
【0026】
結果として、上記振動板はこれを固定する中心のボイスコイルボビンをドライバ部(プレート)に対して支持部材のみで支えられるフレームレス・エッジレス構造となっており、且つ振動板の外周側部分の外周縁をピストンモーションさせることから周縁が開放されたエンクロージャレスとして使用される極めて軽量且つ低音域特性に優れるフルレンジ型スピーカユニットとなっている。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0028】
図1は本発明に係わる薄型平面スピーカユニットの構造を説明するための図であり、図2は本発明に係わる略円形の襞を設けた振動板の構造を示す(a)正面図と(b)側面図である。また、図3は上記襞を設けた振動板の製作手順の一例を示す図である。図4は本発明に係わる薄型平面スピーカユニットにおける分割振動の効果を比較説明するための音響特性図であり、図5は本発明に係わる薄型平面スピーカユニットの音響特性図である。なお、前述の従来のダイナミックコーンスピーカ20と同等部分(従来技術の範囲に含まれるもの)については同符号を以て示す。
【0029】
図1及び図2において、薄型平面スピーカユニット60は、プレート6とこれに固定されたマグネット3とからなる磁気回路を構成するドライバ部2と、ボイスコイル1が捲回されたボイスコイルボビン5と、前記ボイスコイルボビン5を前記ドライバ部2に連結支持する支持部材42と、前記ボイスコイルボビン5を中心軸として該ボイスコイルボビン5の外周面に対して略垂直に外装固定された略円形の振動板51と、前記振動板51の外周縁に沿って付設された重り(鉛等)54と、から構成されるフレームレス・エッジレス構造に特徴があり、且つ前記振動板51が中心側部分51aと外周側部分51bとに前記ボイスコイルボビンを中心とするリング状の柔軟性に富む振動境界領域56によって二分されており、前記振動板51が前記振動境界領域56を節として中心側部分51aと外周側部分51bとで分割振動することを特徴とする。
【0030】
上記略円形の振動板51が他の領域よりも柔らかい振動境界領域56を境に中心側部分51aと外周側部分51bとに2分されており、且つ外周側部分51bの外周縁に重り54が周設されていることから、ボイスコイル1にオーディオ入力信号が流れることで生じるボイスコイルボビン5の振動によって振動板51の中心側部分51aはピストンモーションを起こし、且つ前記振動境界領域56を節として外周側部分51bには分割振動が起きる。
【0031】
この中心側部分51aと外周側部分51bとで分割振動を意識的に発生させることで、低音域においては中心側部分51aよりも重り54の付いた外周側部分51bの方が大きな振幅で振動するので(共振周波数が数十Hzと小さい)低音域の音圧特性の拡大が実現する。蓋し、低音域では振幅量が低音エネルギーを左右するからである。
【0032】
分割振動を起こす共振周波数は上記振動境界領域56の構造(例えばスリット状の小孔の大きさ、振動板の寸法、二分する位置等)と重り54の重量によって左右される。
【0033】
このように上記分割振動は振動板51の外周側部分51bの外周縁(重り54の部分)を大きい振幅で前後に振動させるので(図1参照)、エッジレス構造が不可欠となる。即ち、従来のダイナミックスピーカユニット20の構造ではフレーム10と振動板11の外周縁が布や発泡ウレタンを熱成形して貼り合わせた柔らかい材質のエッジ14によって連結されていて完全な自由振動は不可能であるが、本スピーカユニット60ではエッジが無く、振動板51の外周縁が外部に完全に開放されて自由に振動するのである。
【0034】
この点、振動板51の外周縁がエッジではなく何らかの摺動機構によってフレームに対して前後のピストンモーション方向に自由に可動としても、振動によってヒューヒューという風切り音が不可避的に摺動機構に発生するという不具合があり、本発明のような完全に開かれたエッジレス・フレームレス構造とする意味があるのである。
【0035】
図4は上記振動境界領域56を設けて分割振動を利用した場合(曲線A)と振動境界領域56を設けないで分割振動を利用しない場合(曲線B)の音響特性を比較する音響特性図であるが、図から明らかなように、最も重要な60〜300Hzの低音域で顕著な差が現れている。
【0036】
次に、上記円形の振動板51について詳述すると、その材質は軽量で高剛性(前後のピストンモーションに対して撓まない程度に丈夫であること)の適度な内部損失を持つものであればよく、例えば従来技術でも述べたハニカム構造の振動板32にスキン33を貼ったような表面が平坦な形状でもよいのであるが、コストが高くなり、またエッジレス、フレームレスとして支持部材42(材質、形状に特に制限はなく、例えば従来のコルゲーションダンパや蝶ダンパを利用してもよい。)のみで支えるにはどうしても重くなる嫌いがある。
【0037】
そこで本発明では振動板51として図3に示されるような、中心から半径方向にほぼ等間隔の襞57を多数設けた構造、実用的には襞を100〜300本設けた略円形の振動板51の構造を採用する。その材質は従来同様のクラフト紙、和紙等の紙系や、ポリプロピレン、カーボン等の樹脂系もしくは無機質系等であり特に制限は無い。
【0038】
振動板51を上記襞57の有る構造とすることで、平坦な場合よりも格段に剛性が向上し、前後のピストンモーションに十分耐え得ることになる。
【0039】
この襞57のある円形の振動板51は、図3の(a)に示されるように、長方形の振動板紙に幅tの襞57を多数成形して折り曲げ(平行な稜線で山、谷、山、谷と連続する断面が鋸歯形状に折り畳んだ形)、次に(b)に示されるように、一辺側を中心側C、対向する辺を外周側Gとして丸く拡げて両端辺m,nを接着して中央部分をボイスコイルボビン5の外周の径寸法の空円になるように円形に作ることで簡単に低コストで製作できるという利点がある。
【0040】
本実施の形態における試作品では振動板51の直径Φが約37cm、襞の幅tが10mm、襞数Nは116個とし、中心の厚さはほぼtの10mmで、図2の(b)の側面図に示されるように、径方向に徐々に薄くなって最外周は襞57が浅く殆ど凹凸の無い状態のものを使用した(勿論、N×t≧Φ×πの関係が成り立つ)。もっとも振動板の剛性を高める意味からは余裕のある寸法、最外周部分も多少襞の凹凸が残る程度の寸法にすることが望ましい。
【0041】
なお、振動板51における中心側部分51aと外周側部分51bは別体として両者を振動境界領域56の部材(液体ゴムのような柔らかい樹脂)を介して連結する構造でもよいが、貼り合わせの整合が難しく、製法的には後述のように上記襞のある一つの振動板51の内部に同心円の柔らかい振動境界領域56を設けることが製法上は好ましいであろう。
【0042】
次に、前記振動境界領域56については、振動板51を内側と外側で振動を分割する境界を意味し、したがって振動板51を中心側部分51aと外周側部分51bとに2分して分割振動を生起せしめるものであって、振動板51の材質に比して剛性の低い、換言すればゴムのように柔軟性に富む領域とする。
【0043】
この振動境界領域56の構造は、本実施の形態の試作品では図2の(a)に示されるように、円形の振動板51に対して複数の貫通孔59(スリット状)をボイスコイルボビンに外装する空円を中心としてリング状に多数穿設した構造を採用した。このように単に貫通孔59を設けることで、極めて簡単に襞57による剛性が減じられ、中心側部分51aと外周側部分51bは隣り合う貫通孔59間の平坦な橋渡し部分のみでつながった構造となり、該振動境界領域56の部分のみは柔軟性に富む領域となる。
【0044】
唯、上記貫通孔59を多数設けると、振動境界領域56の耐久性がある程度は低下する。そこで、本発明に係わる振動板51では、振動境界領域56に柔軟性に富む補強部材を付着せしめた。この補強部材は例えば液体ゴム等の軟性合成樹脂材であり、本試作品では液体ゴムを貫通孔59を塞ぐようにリング状の振動境界領域56全域に亙って塗着して補強した。なお、この補強部材は上記のような貫通孔59を設けた振動境界領域56構造に限らず、他の構造の場合でも耐久性向上に有効なことは言うまでもない。
【0045】
次に、図1から判るように、本発明における振動板51の取り付けられたボイスコイルボビン5はドライバ部2のプレート6に対して支持部材42のみで連結支持されているエッジレス、フレームレス構造なので、如何に軽い振動板51とはいえ、従来のダイナミックコーンスピーカ20に比べて支持部材42への荷重が大きく、また特性上の低音再生時の振幅を安定させるためにも支持部材42の支持力を強化する必要がある。そこで、本発明では支持部材構造を図1に示されるように、複数枚重ねた構造(図1では二重構造)にして支持力を高めた。この複数枚重ねた積層支持部材構造は従来のエッジを有するダイナミックコーンスピーカ20には無い構造であって、本発明に係わる薄型平面スピーカ60に特有の構造である。
【0046】
この積層支持部材構造の採用は従来のダンパ12(コルゲーションダンパや蝶ダンパ等)をそのまま支持部材42として利用できるので、低コストで本発明のスピーカユニット60の信頼性向上に優れた効果を発揮する。
【0047】
図5は上述の試作品についての最適設計した最終仕様の音響特性図であるが、数十Hzの低音域から20000Hzの高音域までフラットな優れた音響特性を有することが判る(2kHz付近にシャープな谷があるが、幅が極めて狭いので殆ど問題にはならない)。これは構造上理想的なピストンモーション振動が与えられ、且つエンクロージャの影響がなく、オーディオ信号をダイレクトに音波として発しているので、極めて忠実度の高いフルレンジスピーカであって、ハイファイ用に充分適用できる性能といえる。
【0048】
最後に、エンクロージャについて説明すると、通常のスピーカ・システムはスピーカ・ユニットを収めるエンクロージャ(箱)の内側に固定されているが、本発明に係わる薄型平面スピーカ60は、詳述したように原理的にエンクロージャレスとしてスピーカ・ユニットのみで構成される。
【0049】
勿論、略円形の振動板51の外周縁を開放して中空にほぼ垂直に立てた状態に配置するために、振動板51の裏面側の中心部にあるドライバ部2のマグネットを配したプレート6に支柱や壁面への係止具を設ける必要があるが、これらはスピーカ・ユニットに付設する付属品であってエンクロージャではない。
【0050】
また、露出した振動板51を保護するために前面もしくは周囲を覆うネットないし枠体(例えば扇風機の羽根の回りを覆う網枠の形状とその保護作用を想起されたい)を付設することが望ましいが、これは音響特性に影響を与えるようなエンクロージャではなく、単なる付属品である。
【0051】
念のために付言すれば、上記円形の振動板51における二分割の分割割合(半径方向の寸法比)と重り54を調整することで、大小様々の大きさの円形の各種材質の振動板について低音域の音響特性を最適に調整することが可能となる。
【0052】
また、本発明に係わる型薄型平面スピーカ60は、上記のようにフルレンジ対応の高性能に加えて、ドライバ部2の磁気回路として内磁形を採用すれば直径37cm程度の振動板51でスピーカユニット全体の厚さを30mm程度の超薄型にすることができ、その構造のシンプルさ、低コスト、軽量、斬新な外観等の特徴と相俟って各種用途に適用され得る可能性を秘めた新規なダイナミックスピーカである。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係わる薄型平面スピーカは下記の優れた効果を有する。
【0054】
(1)略円形の振動板を分割振動させることでエンクロージャレスによる逆相の問題を解決し低音域の音響特性に優れる。
【0055】
(2)エッジレス、フレームレスでスピーカユニットの厚さが薄く、軽いので、壁掛け対応可能である。
【0056】
(3)低コストで製作可能である。
【0057】
(4)大型のフルレンジ対応ダイナミックスピーカを提供できる。
【0058】
(5)耐久性があり、音の忠実度が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる薄型平面スピーカユニットの構造を説明するための図である。
【図2】本発明に係わる略円形の襞を設けた振動板の構造を示す(a)正面図と(b)側面図である。
【図3】本発明に係わる襞を設けた振動板の製作手順の一例を示す図である。
【図4】本発明に係わる薄型平面スピーカユニットにおける分割振動の効果を比較説明するための音響特性図である。
【図5】本発明に係わる薄型平面スピーカユニットの音響特性図である。
【図6】従来の一般的なダイナミックコーンスピーカユニットの構造を示す断面図である。
【図7】ダイナミック薄型平面スピーカと従来の一般的なバスレフ3ウェイスピーカの音響特性比較図である。
【図8】従来のダイナミック平面型スピーカ3種の構造を説明する斜視図である。
【符号の説明】
1 ボイスコイル
2 ドライバ部
3 マグネット
4 ポールピース
5 ボイスコイルボビン
6、7 プレート
8 センターキャップ
10 フレーム
11 コーン振動板
12 ダンパ
14 エッジ
15 ガスケット
16 端子
17 錦糸線
20 ダイナミックコーンスピーカユニット
30 充填型ダイナミックスピーカ
31 ボイスコイル
32 平面振動板
33 表面スキン材
36 サブコーン
37 発泡ウレタン材
38 メタルコーン
40、50 プレート型ダイナミックスピーカ
42 支持部材
51 振動板
51a 振動板の中心側部分
51b 振動板の外周側部分
54 重り
56 振動境界領域
57 襞
59 貫通孔
60 薄型平面スピーカ

Claims (5)

  1. ボイスコイルが捲回されるとともに磁気回路を構成するドライバ部により駆動されるボイスコイルボビンと、前記ボイスコイルボビンを前記ドライバ部に連結支持する支持部材と、前記ボイスコイルボビンを中心軸として該ボイスコイルボビンの外周面に対して略垂直に外装固定された略円形の振動板と、前記振動板の外周縁に沿って付設された重りと、から構成されるフレームレス・エッジレス構造であり、且つ前記振動板が中心側部分と外周側部分とに前記ボイスコイルボビンを中心とするリング状の柔軟性に富む振動境界領域によって二分されており、前記振動板が前記振動境界領域を節として中心側部分と外周側部分とで分割振動することを特徴とする薄型平面スピーカユニット。
  2. 振動板に中心から半径方向に延在する襞を円周方向に複数本連続して設けたことを特徴とする請求項1に記載の薄型平面スピーカユニット。
  3. 振動境界領域が振動板に対して複数の貫通孔をボイスコイルボビンを中心としてリング状に穿設した構造であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薄型平面スピーカユニット。
  4. 振動境界領域に柔軟性に富む補強部材を付着せしめたことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載の薄型平面スピーカユニット。
  5. 振動板の取り付けられたボイスコイルボビンをドライバ部に対して連結支持する支持部材が複数枚重ねて取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3または請求項4に記載の薄型平面スピーカユニット。
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