JP4446689B2 - ポリイソシアネート組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリイソシアネート組成物の製造方法、及び触媒の反応を停止させる反応停止剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
イソシアネート化合物を原料として、触媒を用いたイソシアヌレート化反応、アロファネート化反応を行うポリイソシアネート組成物の製造方法については、以下に示すような方法が知られていている。
特許文献1では、アロファネート基を有するポリイソシアネートを製造する際に、触媒として、金属カルボキシレート、あるいは金属キレート、あるいは第3級アミンを用いる方法が記載されている。
特許文献2では、アロファネート基を有するポリイソシアネートを製造する際に、触媒として、アルキル化能力を持つ化合物を用いる方法が記載されている。
特許文献3では、アロファネート基を有するポリイソシアネートを製造する際に、触媒として、スズ化合物を用いる方法が記載されている。
しかし、上記の3つの特許文献には反応停止剤に関する記載がない。従って、該特許に記載の方法でポリイソシアネートを製造した場合、触媒が活性な状態のまま、ポリイソシアネート中に存在するため、イソシアヌレート化反応等の反応などが進行し、保存安定性が悪くなる場合がある。
【0003】
特許文献4では、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネート組成物を製造する際に、触媒として、テトラアルキルアンモニウムのカルボン酸塩や水酸化物、あるいはヒドロキシアルキルアンモニウムのカルボン酸塩や水酸化物、あるいはアルカリ金属のカルボン酸塩、スズ、亜鉛、鉛のカルボン酸塩を用いて反応を進行し、触媒失活剤としてリン酸、硫酸を用いて反応を停止する方法が記載されている。
特許文献5では、イソシアヌレート基とアロファネート基を有するポリイソシアネートを製造する際に、特許文献4と同様の触媒および触媒失活剤を用いる方法が記載されている。
特許文献6では、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネートを製造する際に、触媒として、ヒドロキシアンモニウムのカルボン酸塩、ナトリウムアルコラートを用いて反応を進行し、触媒失活剤としてリン酸、モノクロロ酢酸、ドデシルベンゼンスルホン酸を用いて反応を停止する方法が記載されている。
【0004】
特許文献7では、イソシアヌレート基とアロファネート基を有するポリイソシアネートを製造する際に、触媒として、テトラアルキルアンモニウム水酸化物を用いて反応を進行させ、触媒失活剤としてリン酸ジアルキルエステルを用いて反応を停止する方法と、触媒を熱失活させて反応を停止する方法が記載されている。
特許文献8では、イソシアヌレート基とアロファネート基を有するポリイソシアネートを製造する際に、触媒として、テトラアルキルアンモニウムの水酸化物やカルボン酸塩、あるいはヒドロキシアンモニウムの水酸化物、カルボン酸塩、あるいはアルカリ金属、スズ、亜鉛、鉛などのカルボン酸塩、金属キレート化合物、アミノシリル基含有化合物を用いて反応を進行させ、触媒失活剤として、リン酸、塩化ベンゾイル、モノクロロ酢酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などの酸性物質を用いて反応を停止する方法が記載されている。
【0005】
しかし、上記5つの特許文献では、いずれも反応を停止する方法として、触媒を熱失活させる方法、あるいは触媒失活剤用いる方法が記載されており、反応終了時に、熱失活した触媒、あるいは触媒失活剤と触媒の反応生成物が残留する場合がある。また、触媒失活剤の種類によっては、反応を停止させるために、触媒に対して数倍のモル量の触媒失活剤を入れる必要が生じる場合もあり、この場合、過剰に加えた触媒失活剤がポリイソシアネート中に残存することとなる。これらの物質は濾過などである程度除去することができる場合もあるが、反応生成物や過剰に加えた反応停止剤を完全に取り除くことは困難であり、ポリイソシアネート中に、反応生成物等が残留することとなる。この反応生成物や過剰に加えた反応停止剤によって、ポリイソシアネートを長期間保存したときの安定性が悪くなる場合がある。
【0006】
特許文献9では、イソシアヌレート基あるいはアロファネート基を有するポリイソシアネートを製造する際に、カルボン酸ヒドロキシアンモニウム塩、カルボン酸鉛塩等の触媒を用い、反応停止剤として酸性基含有のイオン交換樹脂、あるいはキレート樹脂を用いる方法が用いられ、この方法では、触媒に由来する物質を全て除去できると記載されている。しかし、イオン交換樹脂やキレート樹脂を用いる方法は、コストが高く、また触媒が樹脂中に吸収された後、反応が停止することになるため、反応停止剤を投入してから反応が停止するまでに時間がかかり、その間に、反応が過剰に進行する場合や、副反応が起こる場合がある。さらに酸性基含有のイオン交換樹脂を用いると、触媒由来のカルボン酸等が残存し、副反応が起こる場合がある。
【0007】
特許文献10では、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネートを製造する際に、カルボン酸アルカリ金属塩等の触媒を用い、触媒失活剤として、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム等のケイ酸塩を用いる方法が記載されている。この方法では、触媒の除去効率が悪く、保存安定性が低下する場合がある。
【0008】
【特許文献1】
英国特許第994,890号明細書
【特許文献2】
特開昭46−1671号
【特許文献3】
特開平7−304728号
【特許文献4】
特開昭64−33115号
【特許文献5】
特開平4−306218号
【特許文献6】
特開昭61−72013号
【特許文献7】
特開平5−70444号
【特許文献8】
特開平6−41270号
【特許文献9】
特開平8−27123号
【特許文献10】
特開平2−42068号
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、保存安定性の良好なポリイソシアネート組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するため検討を重ね、触媒失活剤を担持させた微粒子体からなる反応停止剤を見いだし、これを用いたポリイソシアネート組成物の製造方法を確立することによって、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
(1)ジイソシアネート、ジイソシアネートから得られるイソシアネートプレポリマーから得らばれる少なくとも1種類のイソシアネート化合物を原料として、触媒を用いてイソシアヌレート化反応、アロファネート化反応の少なくとも1種類を行った後、反応を停止するに際し、微粒子体に、無機酸、リン酸酸性化合物、酸クロライド化合物から選ばれる少なくとも1種類の液状の触媒失活剤を担持させた反応停止剤を用い、次いで反応停止剤を除去することを特徴とするポリイソシアネート組成物の製造方法。
(2)ジイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ば
れる少なくとも1種類のジイソシアネートである(1)記載のポリイソシアネート組成物の製造方法。
(3)微粒子体が、シリカゲルである(1)または(2)記載のポリイソシアネート組成物の製造方法。
(4)イソシアヌレート化反応、アロファネート化反応の少なくとも一方を停止させる反応停止剤であって、微粒子体に、無機酸、リン酸酸性化合物、酸クロライド化合物から選ばれる少なくとも1種類の液状の触媒失活剤を担持させた反応停止剤。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明について、特にその好ましい形態を中心に、以下具体的に説明する。
本発明では、ジイソシアネート、ジイソシアネートから得られるイソシアネートプレポリマーから選ばれる少なくとも1種類のイソシアネート化合物を原料として用いる。
ジイソシアネートとは、1分子中に2つのイソシアネート基を有するものである。例えば脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。塗料など耐候性が要求される用途で使用する場合は、黄変し難い脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートが好ましい。高い反応性が要求される用途に用いる場合は、芳香族ジイソシアネートが好ましい。
【0012】
脂肪族ジイソシアネートとは分子中に脂肪族基のみを有する化合物であり、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、等が挙げられる。脂環式ジイソシアネートとは、分子中に環状脂肪族基を有するジイソシアネートであり、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートシクロヘキサン等が挙げられる。この中でもHDI、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートは、工業的に入手し易いため好ましい。中でもHDIは最も好ましい。
【0013】
イソシアネートプレポリマーとは、ジイソシアネート等を公知の技術でプレポリマー化したものである。プレポリマー化とは、具体的には、ジイソシアネート等を、ビウレット化反応、イソシアヌレート化反応、ウレタン化反応、ウレトジオン化反応、アロファネート化反応、イミノオキサジアジンジオン化反応等させることを指し、これらは公知の技術で行うことが出来る。
なお、本発明では、ジイソシアネートとイソシアネートプレポリマーを総称して、イソシアネート化合物という。
【0014】
本発明で用いる触媒とは、イソシアヌレート化反応、アロファネート化反応の少なくとも一方の反応を促進する触媒である。
イソシアヌレート化反応、アロファネート化反応の少なくとも一方を促進する触媒としては、1)例えばテトラメチルアンモニウム、モノエチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや酢酸、酪酸、2−エチルヘキサン酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸、安息香酸等のカルボン酸塩、2)例えばトリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドやカルボン酸塩、3)例えば、酢酸、酪酸、2−エチルヘキサン酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸、安息香酸等のカルボン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩、4)例えば、上記カルボン酸のスズ、亜鉛、鉛、ビスマス、ジルコニル(酸化ジルコニウム)等の金属塩、5)例えばヘキサメチルジシラザン等のアミノシリル基含有化合物、6)例えばスズ、亜鉛、鉛、ビスマス、ジルコニウム等の金属のアルコキサイド、7)スズ、リチウム、ジルコニウム、鉛、ビスマス等のアセチルアセトナートなどの金属キレート化合物等の中の1種類、またはそれら化合物が挙げられる。
【0015】
この中で、テトラアルキルアンモニウムのカルボン酸塩、ヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、スズ、鉛、ジルコニル、亜鉛、ビスマスのカルボン酸塩は、イソシアヌレート化反応やアロファネート化反応の活性が高く好ましい。中でも、テトラアルキルアンモニウムのカルボン酸塩は、イソシアヌレート化反応に対する活性が高いため、イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート組成物を製造する際には、特に好ましい。
【0016】
イソシアヌレート化反応とは、イソシアネート基3個から、イソシアヌレート基を生成する反応である。この反応は、以下の一般式で表すことができる。
【0017】
【化1】
【0018】
(式中R1は、イソシアネート残基を表す。なお、図ではイソシアヌレート基に結合しているイソシアネート残基は3つ全てR1であるが、これは異なっていてもかまわない)
イソシアヌレート化反応は、イソシアネート化合物を原料として行うことが出来る。
アロファネート化反応とは、ウレタン基1つとイソシアネート基1つから、アロファネート基を生成する反応である。この反応は、以下の一般式で表すことができる。
【0019】
【化2】
【0020】
(式中R1はイソシアネート残基、R2はウレタン基を作る際に用いたアルコールの水酸基残基を表す。なお、式中ではアロファネート基に結合しているイソシアネート残基は2つともR1であるが、これは異なっていてもかまわない)
【0021】
イソシアヌレート化反応とアロファネート化反応は、ウレタン基の有無や触媒の種類によって、単独で起こる場合もあり、競争的に起こる場合もある。
例えば、ウレタン基が存在しない条件で、テトラアルキルアンモニウムのカプリン酸塩やヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドを触媒として用いた場合は、イソシアヌレート化反応が単独で起こる。ウレタン基が存在する条件で、テトラアルキルアンモニウムのカプリン酸塩やヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドを触媒として用いる場合は、イソシアヌレート化反応とアロファネート化反応が競争的に起こる。ウレタン基が存在する条件で、スズ、鉛、ジルコニル、亜鉛のカルボン酸塩を触媒として用いた場合は、アロファネート化反応が優先的に起こる。
【0022】
アロファネート化反応を行う際には、ウレタン基を含有する有機化合物を用いる。ウレタン基を含有する有機化合物としては、例えば、以下の一般式
【0023】
【化3】
【0024】
(式中、Aはn個の水酸基を有する化合物から、水酸基を除いた残基。R3は、イソシアネート化合物から、2つのイソシアネート基を除いた残基。nは1以上の整数。)で示される化合物が好ましい。
上記の一般式で示した有機化合物は、n個の水酸基を有する化合物と、過剰量の脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネート及びそれらから得られるイソシアネートプレポリマーから選ばれる少なくとも1種のイソシアネート化合物を、ウレタン化反応することによって得られる。
【0025】
このウレタン化反応の際に、上記イソシアネート化合物のイソシアネート基のうち2個以上に、水酸基を有する化合物が反応した複雑な化合物が、イソシアネート基と水酸基のモル比によって、化学量論的に生成するが、この化合物もそのままウレタン基を含有する有機化合物として用いて良い。nの数は1以上であればいくつでも良い。
水酸基を有する化合物としては、アルコール類とフェノール類がある。どちらを使用することも出来るが、耐候性を考えるとアルコール類がより好ましい。
【0026】
アルコール類を以下に例示する。
1個の水酸基を有するアルコール類、すなわちモノアルコールとして、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソアミルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール、トリデカノール、ペンタデカノールなどの飽和脂肪族アルコール、シクロヘキサノール、シクロペンタノールなどの飽和環状脂肪族アルコール、ビニルアルコール、プロペン−1−オール、ブテン−1−オール、ヘキセン−1−オール、2−ヒドロキシエチルアクリレートなどの不飽和脂肪族アルコールなど、メトキシポリエチレングリコール等のポリアルキレンアルコールアルキルエーテルや、イソラク酸−2,2,4−トリメチル−1,3−プロパンジオールエステル等のエステルアルコール等が挙げられる。
【0027】
2個の水酸基を有するアルコール類、すなわちジオールとして、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のエーテルアルコールが挙げられる。
【0028】
3個の水酸基を有するアルコール類、すなわちトリオールとして、例えばグリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、ポリプロピレントリオールなどが挙げられる。
更に、上記のアルコール類とカルボン酸などを原料としたポリエステルポリオールや、ポリプロピレングリコールやポリエチレングリコールや、ポリテトラエチレングリコールなども水酸基を有する化合物として適している。また、水酸基を有するアクリルポリオールも水酸基を有する化合物として使用することが出来る。
【0029】
触媒は、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル化合物や、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン化合物、ヘキサン、ペンタン、ミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素化合物、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物、エタノール、プロパノール、ブタノール、1,3−ブタンジオールなどのアルコール化合物等の有機溶剤で希釈して使用することができる。
触媒は、ジイソシアネート、イソシアネート化合物に対して、0.0001〜1.0質量%、好ましくは0.0005〜0.20質量%、より好ましくは0.001〜0.10質量%添加する。0.0001〜1.0質量%の範囲で有れば反応性が十分であり、また反応制御も可能である。
【0030】
本発明において、触媒の添加方法は限定されない。例えば、ウレタン基を含有する場合、ウレタン化反応に先立って添加しても良いし、ウレタン化反応中に添加しても良く、ウレタン化反応終了後に添加しても良い。また、添加方法として、所要量の触媒を一括して添加しても良いし、何回かに分割して添加しても良い。または、一定の添加速度で連続的に添加する方法も採用できる。
イソシアヌレート化反応あるいはアロファネート化反応は、反応時間や、副反応の起こり難さを考慮して、好ましくは30〜200℃、より好ましくは40〜180℃、さらに好ましくは50〜160℃で行われる。
【0031】
イソシアヌレート化反応やアロファネート化反応は、無溶媒中で行うことができるが、必要に応じて酢酸ブチルなどのエステル化合物、メチルエチルケトン等のケトン化合物、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン等の芳香族化合物、ミネラルスピリット、ヘキサンなどの脂肪族化合物、メチルシクロヘキサン等の脂環式化合物、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル化合物などイソシアネート基との反応基を有していない有機溶剤を溶媒として使用することが出来る。
反応時間は、好ましくは10分〜24時間、より好ましくは20分〜12時間、さらに好ましくは30分〜8時間行われる。なお、イソシアヌレート化反応やアロファネート化反応の進行は、反応液の屈折率を測定することや、イソシアネート基含有量を測定することによって追跡することが出来る。
イソシアヌレート化反応やアロファネート化反応が、所定の反応率に達した後に、反応停止剤を添加し、反応を終了させる。
【0032】
本発明では、微粒子体と触媒失活剤を含有する反応停止剤を用いる。
微粒子体とは、シリカゲル、活性アルミナ、活性炭、木炭、カーボンブラック、珪藻土、カオリン、タルク、ベントナイト、ゼオライト、マグネシウムやアルミニウムやカルシウムやカリウム等のケイ酸塩、二酸化チタン、金属微粒子、セラミック粉体、ポリマー微粒子体等から選ばれる1種以上であり、粒子径が0.5μm〜10mmの物質である。シリカゲル、活性アルミナ、活性炭、ゼオライトは触媒失活剤を吸着しやすいのでより好ましく、シリカゲルは最も好ましい。
【0033】
微粒子体の平均粒子径は、好ましくは0.5μm〜10mm、より好ましくは1μm〜5mm、さらに好ましくは、1μm〜1mmである。平均粒子径が0.5μm以上であれば、微粒子体を反応系から除去するのが容易である。10mm以下であれば、反応停止させる能力が十分に発揮できる。なお、平均粒子径の測定は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で測定すれば良い。
また、金属メッシュの篩で粒子径の幅を選別し、低い方の粒子径と高い方の粒子径が好ましくは0.5μm〜10mm、より好ましくは1μm〜5mm、さらに好ましくは1μm〜1mmの幅に入っていれば良い。
【0034】
微粒子体の形状は、球状であっても不整形であってもかまわないが、球状である方が、反応系で更に破砕されにくいため好ましい。
微粒子体はポーラスなタイプであっても、細孔がないタイプでもかまわないが、ポーラスなタイプの方が触媒失活剤を吸着出来る量を制御し易いため好ましい。
【0035】
触媒失活剤とは、本発明で用いる触媒と反応し、アロファネート化反応、イソシアヌレート化反応の触媒能を喪失させる液状の化合物である。このような化合物として、例えば、硫酸や硝酸などの無機酸や、リン酸、ピロリン酸、リン酸モノアルキルエステル、リン酸ジアルキルエステル、ピロリン酸モノアルキルエステル、ピロリン酸ジアルキルエステル、ピロリン酸トリアルキルエステルなどのリン酸酸性化合物、塩化ベンゾイルなどの酸クロライド化合物などが挙げられる。中でも、リン酸、ピロリン酸、リン酸モノアルキルエステル、リン酸ジアルキルエステル、ピロリン酸モノアルキルエステル、ピロリン酸ジアルキルエステル、ピロリン酸トリアルキルエステルなどのリン酸酸性化合物は、停止効果が高く、かつステンレス等の材質を腐食しにくいため好ましい。さらに、リン酸、ピロリン酸を用いた場合は、より少ない反応停止剤の量で、ポリイソシアネート組成物に残存する触媒残渣を減らすことが可能となり、より一層好ましい。触媒失活剤は有機溶剤で希釈することもできる。また、ポリリン酸等の固体の触媒失活剤であってもアルコール等の溶剤に溶解させれば、本発明で用いる触媒失活剤として用いることができる。触媒として、アミノシリル基含有化合物を用いた場合には、アルコールや水を触媒失活剤として用いることもできる。
【0036】
本発明の反応停止剤は、微粒子体と触媒失活剤を含有しているが、実際の使用形態としては、微粒子体に触媒失活剤を担持させて使用する方法が好ましい。担持させる方法は、限定されないが、例えばビーカー等に微粒子体を入れ、ガラス棒などで攪拌しながら、触媒失活剤を上からゆっくりと注ぐことでも可能である。微粒子体に、含侵させる触媒失活剤の量は、微粒子体の粒子径や細孔の有無などによって異なるが、微粒子体に吸着されうる量であればよい。例えば、75〜150μm程度の粒子径で表面積が100平方m/gを有するシリカゲルを用いる場合は、シリカゲルの100質量%程度までは担持させることができる。担持させる最少量は、特に限定しないが、少な過ぎる場合は反応を停止させるために、より多くの反応停止剤を投入する必要が生じ、コストが高くなる場合がある。その目安は、微粒子体に対して、1質量%以上の触媒失活剤を担持させることが好ましい。
【0037】
本発明の反応停止剤には、溶剤やその他塗料、接着剤分野で使用されている添加剤を含有することもできる。その際、使用する溶剤や添加剤は触媒失活剤と反応しないものが好ましい。
反応停止剤を添加する量は、反応停止剤に含有されている触媒失活剤の量が、触媒に対して、好ましくは0.5〜100倍のモル量、より好ましくは0.8〜50倍のモル量、さらに好ましくは1.0〜20倍のモル量である。0.5倍のモル量以上であれば、反応を完全に停止することが可能となる。40倍のモル量以下であれば、触媒失活剤が反応液中に溶け出し難い。
【0038】
イソシアヌレート化反応、アロファネート化反応を停止した後、反応停止剤、および反応停止剤と触媒の反応物を除去する。除去の方法は本発明で用いる微粒子体が除去できるような方法であれば何でも良い。例えば、本発明で用いる微粒子体よりも小さな目のステンレス製等の金網や、メンブランフィルターや工業的に一般に用いられている濾過材を用いることができる。実験室的に10kg程度のスケールまでであれば、単にメンブランフィルターで除去するだけで十分である。工業的には、ステンレス製等の金網で反応停止剤を大まかに除去した後、更に、数ミクロン程度の細かい濾過材で再度濾過する方法が好ましい。
【0039】
反応停止剤を濾過した後、必要に応じて未反応の有機ジイソシアネートを、例えば、薄膜蒸留法や溶媒抽出法などによって留去して使用することもできる。安全性から考えると、未反応のジイソシアネートは除去した方が好ましい。
本発明におけるイソシアヌレート化反応、アロファネート化反応は、1つの反応器で行うことができる。または、2つの反応器を連結し、工程に分けて実施することもできる。又は、複数の反応器を並べて配置することにより連続的に実施することもできる。
【0040】
本発明の製造方法で作ったポリイソシアネート組成物は、主剤ポリオールと組み合わせて、コーティング組成物として用いることも出来る。主剤ポリオールとは、二液ポリウレタン塗料分野で使用されるポリオールであり、溶剤系ポリオール、水性ポリオール、粉体ポリオールなどがある。
本発明の製造方法で得られたポリイソシアネート組成物には、目的及び用途に応じて、ウレタン化反応などを促進する硬化促進触媒、顔料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、表面活性剤等の当該技術分野で使用されている各種添加剤を混合して使用することもできる。
【0041】
本発明の製造方法を用いると反応液の濾過が非常に容易となる。また、触媒と触媒失活剤の反応生成物、及び過剰な触媒失活剤が除去できるポリイソシアネート組成物を製造することができる。得られるポリイソシアネート組成物には濁りや、着色がなく、また長期間保存した後でも、粘度の上昇やイソシアネート基含有率の低下、あるいは着色などが起こり難いという特徴を有している。さらに塗料組成物とした場合には耐候性に優れるという特徴を有している。従って、本発明の製造方法で得られたポリイソシアネート組成物は、二液型ポリウレタン塗料、シーリング剤、接着剤、インキ、コーティング剤、注型材、エラストマー、フォーム、プラスチック、繊維処理剤、一液湿気硬化型ポリイソシアネート等の原料として、幅広い分野に応用することが出来る。
【0042】
本発明の方法を用いたポリイソシアネート組成物の製造方法と、得られたポリイソシアネート組成物の特性について、実施例に基づいて説明する。
イソシアネート基含有率(以下、NCO含有率)は、イソシアネート基を過剰の2Nアミンで中和した後、1N塩酸による逆滴定を行って求めた。
粘度は、E型粘度計(株式会社トキメック社)を用いて25℃にて測定した。
なお、反応液、及びポリイソシアネート組成物中のリンの含有量は、誘導結合プラズマ発光分析(分析機器:IRIS/AP、サーモジャーレルアッシュ社製)で測定した。
なお、特に記載がある場合を除き%は質量%を示す。
【0043】
(反応停止剤の合成1)
商品名「ワコーゲルC−100」(和光純薬工業株式会社製のシリカゲル、粒子径150〜425μm 75%up)10gをポリカップに入れ、ガラス棒で攪拌しながら、85%リン酸水溶液10gを注ぎ入れ、反応停止剤1を調整した。
(反応停止剤の合成2)
商品名「CARiACT Q−10」(富士シリシア化学株式会社製のシリカゲル、粒子径32〜150μm、表面積300m2/g)10gをポリカップに入れ、ガラス棒で攪拌しながら、85%リン酸水溶液0.928gを注ぎ入れ、反応停止剤2を調整した。
(反応停止剤の合成3)
商品名「CARiACT Q−50」(富士シリシア化学株式会社製のシリカゲル、粒子径32〜150μm、表面積80m2/g)10gをポリカップに入れ、ガラス棒で攪拌しながら、85%リン酸水溶液1.011gを注ぎ入れ、反応停止剤3を調整した。
【0044】
【実施例1】
攪拌器、温度計、冷却管を取り付けた四ッ口フラスコにHDI1000gを仕込み、攪拌下60℃に温度を上昇させた。触媒としてテトラメチルアンモニウムカプリエート47%の1−ブタノール溶液を0.25g加え、イソシアヌレート化反応を行った。180分後、反応液の屈折率上昇が0.010となった時点で、反応停止剤の合成例1で合成した反応停止剤1を1.0g(含まれているリン酸は、触媒に対して9.0モル倍)添加した。反応は速やかに停止した。攪拌を停止すると、反応停止剤の粒子は速やかにフラスコの底に沈殿し、反応液の上澄みは透明であった。
【0045】
反応液を1μmのフィルターで濾過したところ、速やかに終了した。流下式薄膜蒸留装置を用いて、1回目160℃(26Pa)、2回目150℃(13Pa)の条件で未反応のHDIを除去した。
得られたポリイソシアネート組成物は透明の液体であり、収率20%、粘度1300mPa.s、NCO含有率23.3%であった。ポリイソシアネート中に残留するリンの量は8ppmであった。
得られたポリイソシアネートを50℃で1ヶ月保存した結果、粘度は20mPa.sしか上昇せず、NCO含有率は、0.1%しか低下しなかった。
【0046】
【実施例2】
実施例1と同様の実験装置に、HDI350gを仕込み、攪拌下70℃に温度を上昇させた。触媒としてテトラメチルアンモニウムカプリエート10%の1−ブタノール溶液を0.90g加え、イソシアヌレート化反応を行った。110分後、反応液の屈折率上昇が0.017となった時点で、反応停止剤の合成例2で合成した反応停止剤2を3.65g(含まれているリン酸は、触媒に対して7.3モル倍)添加した。反応は速やかに停止した。攪拌を停止すると、反応停止剤の粒子は速やかにフラスコの底に沈殿し、反応液の上澄みは透明であった。
【0047】
反応液を1μmのフィルターで濾過したところ、速やかに終了した。流下式薄膜蒸留装置を用いて、163℃(20Pa)の条件で未反応のHDIを除去した。
得られたポリイソシアネート組成物は透明の液体であり、収率32%、粘度2600mPa.s、NCO含有率21.5%であった。ポリイソシアネート中に残留するリンの量は3ppmであった。
【0048】
得られたポリイソシアネートを50℃で1ヶ月保存した結果、粘度は20mPa.sしか上昇せず、NCO含有率は、低下しなかった。
【0049】
【実施例3】
実施例1と同様の実験装置に、HDI350gを仕込み、攪拌下70℃に温度を上昇させた。触媒としてテトラメチルアンモニウムカプリエート10%の1−ブタノール溶液を0.90g加え、イソシアヌレート化反応を行った。110分後、反応液の屈折率上昇が0.017となった時点で、反応停止剤の合成例3で合成した反応停止剤3を3.35g(含まれているリン酸は、触媒に対して7.3モル倍)添加した。反応は速やかに停止した。攪拌を停止すると、反応停止剤の粒子は速やかにフラスコの底に沈殿し、反応液の上澄みは透明であった。
【0050】
反応液を1μmのフィルターで濾過したところ、速やかに終了した。流下式薄膜蒸留装置を用いて、163℃(20Pa)の条件で未反応のHDIを除去した。
得られたポリイソシアネート組成物は透明の液体であり、収率32%、粘度2600mPa.s、NCO含有率21.5%であった。ポリイソシアネート中に残留するリンの量は6ppmであった。
得られたポリイソシアネートを50℃で1ヶ月保存した結果、粘度は20mPa.sしか上昇せず、NCO含有率は、低下しなかった。
【0051】
【実施例4】
実施例1と同様の実験装置に、HDI700gとエチレングリコール8.7gを仕込み、攪拌下130℃で70分ウレタン化反応を行った。触媒として2−エチルヘキサン酸ジルコニルの20%のミネラルスピリット溶液を0.60g加え、アロファネート化反応を行った。70分後、反応液の屈折率上昇が0.0035となった時点で、反応停止剤の合成例2で合成した反応停止剤2を2.76g(含まれているリン酸は、触媒に対して6.6モル倍)添加した。反応は速やかに停止した。攪拌を停止すると、反応停止剤の粒子は速やかにフラスコの底に沈殿し、反応液の上澄みは透明であった。
【0052】
反応液を1μmのフィルターで濾過したところ、速やかに終了した。流下式薄膜蒸留装置を用いて、163℃(20Pa)の条件で未反応のHDIを除去した。
得られたポリイソシアネート組成物は透明の液体であり、収率17%、粘度1200mPa.s、NCO含有率20.0%であった。ポリイソシアネート中に残留するリンの量は8ppmであった。
得られたポリイソシアネートを50℃で1ヶ月保存した結果、粘度は50mPa.sしか上昇せず、NCO含有率は、0.1%しか低下しなかった。
【0053】
【比較例1】
実施例1と同様の実験装置に、HDI350gを仕込み、攪拌下70℃に温度を上昇させた。触媒としてテトラメチルアンモニウムカプリエート10%の1−ブタノール溶液を0.90g加え、イソシアヌレート化反応を行った。110分後、反応液の屈折率上昇が0.017となった時点で、リン酸85%水溶液0.25g(触媒に対して6.0モル倍)添加、反応を停止した。反応液は白濁した。
【0054】
反応液を1μmのフィルターで濾過したところ、途中で目詰まりを起こし、フィルターを交換した。濾過には1時間かかった。
流下式薄膜蒸留装置を用いて、163℃(20Pa)の条件で未反応のHDIを除去した。
得られたポリイソシアネート組成物は透明の液体であり、収率32%、粘度2600mPa.s、NCO含有率21.5%であった。ポリイソシアネート中に残留するリンの量は35ppmであった。
得られたポリイソシアネートを50℃で1ヶ月保存した結果、粘度は100mPa.sも上昇し、NCO含有率は、0.2%も低下した。
【0055】
【発明の効果】
本発明の製造方法を用いると反応液の濾過が非常に容易となる。また、触媒と触媒失活剤の反応生成物、及び過剰な触媒失活剤が除去されたポリイソシアネート組成物を製造することができる。得られるポリイソシアネート組成物には濁りや、着色がなく、また長期間保存した後でも、粘度の上昇やイソシアネート基含有率の低下、あるいは着色などが起こり難いという特徴を有している。さらに塗料組成物とした場合には耐候性に優れるという特徴を有している。従って、本発明の製造方法で得られたポリイソシアネート組成物は、二液型ポリウレタン塗料、シーリング剤、接着剤、インキ、コーティング剤、注型材、エラストマー、フォーム、プラスチック、繊維処理剤、一液湿気硬化型ポリイソシアネート等の原料として、幅広い分野に応用することが出来る。
Claims (4)
- ジイソシアネート、ジイソシアネートから得られるイソシアネートプレポリマーから得らばれる少なくとも1種類のイソシアネート化合物を原料として、触媒を用いてイソシアヌレート化反応、アロファネート化反応の少なくとも1種類を行った後、反応を停止するに際し、微粒子体に、無機酸、リン酸酸性化合物、酸クロライド化合物から選ばれる少なくとも1種類の液状の触媒失活剤を担持させた反応停止剤を用い、次いで反応停止剤を除去することを特徴とするポリイソシアネート組成物の製造方法。
- ジイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートであることを特徴とする請求項1記載のポリイソシアネート組成物の製造方法。
- 微粒子体が、シリカゲルであることを特徴とする請求項1、または2記載のポリイソシアネート組成物の製造方法。
- イソシアヌレート化反応、アロファネート化反応の少なくとも一方を停止させる反応停止剤であって、微粒子体に、無機酸、リン酸酸性化合物、酸クロライド化合物から選ばれる少なくとも1種類の液状の触媒失活剤を担持させた反応停止剤。
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