JP4446061B2 - 非接触型負荷感応自動変速機 - Google Patents

非接触型負荷感応自動変速機 Download PDF

Info

Publication number
JP4446061B2
JP4446061B2 JP2004171453A JP2004171453A JP4446061B2 JP 4446061 B2 JP4446061 B2 JP 4446061B2 JP 2004171453 A JP2004171453 A JP 2004171453A JP 2004171453 A JP2004171453 A JP 2004171453A JP 4446061 B2 JP4446061 B2 JP 4446061B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
yoke
magnet fixing
magnetic clutch
magnetic
row
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004171453A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005351336A (ja
Inventor
仁 前川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Original Assignee
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST filed Critical National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority to JP2004171453A priority Critical patent/JP4446061B2/ja
Publication of JP2005351336A publication Critical patent/JP2005351336A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4446061B2 publication Critical patent/JP4446061B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Structure Of Transmissions (AREA)

Description

本発明は、負荷に感応して自動的に変速を行う負荷感応型自動変速機に関し、特に、負荷の感応及び変速を磁石を用いて非接触で行うことができるようにした非接触型負荷感応型自動変速機に関する。
機械システムの多くにおいては状況に応じて負荷の性質が変動するため、高速低トルク負荷及び低速高トルク負荷の双方を駆動する必要がある。これに対して一般にはアクチュエータと負荷の間に変速機を挿入し、負荷状態に応じて最適な減速比を選択して、負荷状態は変動してもモータ等のアクチュエータを常に高効率の条件で使用できるように駆動系を構成している。このことにより、変速機を用いない場合よりも必要最小限の出力パワーを備える低出力で小型軽量のアクチュエータを用いて、変動する負荷を高効率で安全に駆動することが可能となる。
しかしながら、自動車や産業機械のために開発された従来の変速機は、変速動作を行うために補助的なアクチュエータ、センサ、電子回路、電源等の外部付属機器を必要とする。このため変速機が大型化するとともに複雑な構成になり、現在の技術ではロボティクス・メカトロニクス機器のような中小規模の機械システムに変速機を簡単に実現することはできない。これを実現するための一つの方法は負荷に感応して減速比を変更する機能を変速機自体に付与し、外部機器を必要とせずに単体で変速動作が可能な負荷感応自動変速機を構成することである。
このような課題を解決するため、本発明者等は先に、永久磁石を利用した切換機構と機械的なクラッチを用いて、変速機自体が負荷トルクに感応して自動的に減速比を切換える機能を実現する負荷感応自動変速機を提案している(特許文献1)。この技術により次の特徴を有する負荷感応自動変速機を構成することができた。
1.外部付属機器が不要で小型軽量であって、構成簡素化が可能。
2.変速機内部の機械損失が少ない(効率90%以上)。
3.遠心クラッチを用いた変速機と異なり、低速のアクチュエータ(人力など)にも適用が可能。
4.特殊な部品・加工が不要。
5.正転/逆転の両方向に対して同様に動作が可能。
6.必要ならば、正転/逆転時の切換負荷トルクをそれぞれ異なる値に設定が可能。
7.入力軸を同軸上に配置することが可能。
本発明者等によって提案された上記のような技術においては、機械的なクラッチを使用している。そのため、下記のような課題を生じることとなる。
1.クラッチ板等が必要となり、その分だけ構造が複雑化し、大型化する。
2.クラッチ部分で摩耗を生じる。
3.クラッチ隙間に関する保守管理が必要となる。
4.クラッチの接離時に変速ショックや騒音を発生しやすい。
5.過負荷時にもクラッチが滑りにくいため、機構やアクチュエータに過大負荷がかかることもある。
このような問題点を解決するため、本発明者によって特願2003−144826号として特許出願を行っている。その発明は図16に示すようなものであり、減速機81の高速側に連結する内側円板95に固定した内側ヨーク94と、低速側に連結する外側リング93に固定した外側ヨーク92とは互いに軸線方向にずらして対向配置し、その間に中間円板96に固定した中間ヨーク98付きの永久磁石97を配置する。中間円板96に固定した磁石Mに対向して出力軸に連結した出力円板100に磁石MOAとMOA’を配置する。磁石Mは磁石MOAとMOA’の間に位置するように配置し、その時に対向する極を同極とすることにより反発する力を生じ、中間円板96を押圧して中間ヨーク98を高速段の内側ヨーク94に対向させ、一体的に回転する。負荷が増大すると、磁石Mは磁石MOAに対向する位置まで回転し、磁石Mは磁石MOAに吸引され、内側ヨークは低速段の外側ヨーク92に対向して一体的に回転する。また、このとき隣接する磁石MOBは戻し力を発生するようにしている。
特開2002−31165号公報 特願2003−144826号
上記のような非接触型負荷感応自動変速機は、変速機構による変速動力伝達、及び回転−スラスト変換機構による変速動作の双方を、磁気を用いた非接触機構により実現することができる。その結果、変速機内部での機械的な接触は軸受部分のみに限定されるため、クラッチ摩擦材は不要となり、その摩耗問題を解消することができ、クラッチ隙間の保守管理が不要となって、磁気的結合のバネ効果による変速ショック・騒音の低減が可能となるとともに、過負荷時は磁気クラッチが滑り、アクチュエータ・機構を保護することができる非接触型負荷感応自動変速機とすることができる。更に、円周上に磁石とヨークを配置して対向する磁気クラッチを用いているので、ヒステリシス磁気カップリングを用いたものと比較し、一般的なヨーク材質を使用可能となり、磁石のサイズ・配置数を増すことにより、容易に伝達トルクを増大することが可能となるという効果を奏することができる。
本発明者は更に上記のような非接触型負荷感応自動変速機について、より安定した作動を行い、小型化することができ、より多段の自動変速機を簡単に構成することができるようにするべく改良を重ね、本発明に至ったものである。
したがって、本発明は機械的なクラッチを用いることなく磁気クラッチを用い、更にこの磁気クラッチを負荷に応じて磁気的にその磁気クラッチの切換作動を行うことができるようにした非接触型負荷感応自動変速機であって、安定した作動を行い、小型化することができ、より多段の自動変速機を簡単に構成することができるようにした非接触型負荷感応自動変速機を提供することを主たる目的とする。
本発明による非接触型負荷感応自動変速機は、上記課題を解決するため、第1ヨークと第2ヨーク間に各ヨーク側にN極とS極を配置した第1永久磁石を固定している磁石固定ヨーク部材と、前記第1ヨークと第2ヨークの端部に間隙を有して配置した第3ヨークと、前記第1ヨークと第2ヨークの他端部側の両者の間隙に前記第1永久磁石と極性を逆方向にして挿脱自在に配置した第2永久磁石とからなる磁気クラッチを複数列隣接して配置し、隣接した前記磁石固定ヨーク部材を連結部材で連結し一体化して磁石固定ヨーク部材列を形成し、各列の前記第2永久磁石を、円筒状磁石固定部材の内周面において円周方向に、互いに位置を異ならせて複数列固定し、前記磁石固定ヨーク部材列と円筒状磁石固定部材間にスプリングを設け、前記磁石固定ヨーク部材列と円筒状磁石固定部材の相対回転により、複数列の任意の磁気クラッチにおける第2永久磁石を第1ヨークと第2ヨーク間から脱して、該磁気クラッチの第3ヨークと磁石固定ヨーク部材を磁気結合すると共に、他の列の磁気クラッチにおける第2永久磁石を第1ヨークと第2ヨーク間に挿入して前記磁気結合を解除可能に構成し、前記各列の第3ヨーク部材を固定した入力円板を外部の駆動装置により異なった速度で駆動する複数の入力軸と、前記円筒状磁石固定部材と連結した出力軸とを備え、前記磁気結合した磁気クラッチの入力円板に連結している入力軸の力を、前記磁石固定ヨーク部材列、前記円筒状磁石固定部材を介して前記出力軸に伝達し、前記出力軸で駆動する負荷に応じ前記スプリングを伸縮して、前記磁石固定ヨーク部材列と前記円筒状磁石固定部材とを相対回転させ、他の磁気クラッチを磁気結合し、該他の磁気クラッチの入力円板に連結している入力軸により出力軸を異なった速度で駆動することを特徴とする。
また、本発明による他の非接触型負荷感応自動変速機は、第1ヨークと第2ヨーク間に各ヨーク側にN極とS極を配置した第1永久磁石を固定している磁石固定ヨーク部材と、前記第1ヨークと第2ヨークの端部に間隙を有して配置した第3ヨークと、前記第1ヨークと第2ヨークの他端部側の両者の間隙に前記第1永久磁石と極性を逆方向にして挿脱自在に配置した第2永久磁石とからなる磁気クラッチを複数列隣接して配置し、隣接した前記磁石固定ヨーク部材を連結部材で連結し一体化して磁石固定ヨーク部材列を形成し、各列の前記第2永久磁石を、円筒状磁石固定部材の内周面において円周方向に、互いに位置を異ならせて固定し、前記磁石固定ヨーク部材列と円筒状磁石固定部材間にスプリングを設け、前記磁石固定ヨーク部材列と円筒状磁石固定部材の相対回転により、複数列の任意の磁気クラッチにおける第2永久磁石を第1ヨークと第2ヨーク間から脱して、該磁気クラッチの第3ヨークと磁石固定ヨーク部材を磁気結合すると共に、他の列の磁気クラッチにおける第2永久磁石を第1ヨークと第2ヨーク間に挿入して前記磁気結合を解除可能に構成し、前記複数列設けた磁気クラッチに対応して減速度が異なる遊星歯車機構を複数並設し、各遊星歯車機構の内歯歯車の外周に磁気クラッチの第3ヨークを固定するとともに、各遊星歯車機構の太陽ギヤを同一軸で駆動し、隣接する遊星歯車の支持軸を連結し、且つ遊星歯車のキャリヤにより出力軸を駆動するように構成し、前記磁気結合した任意の磁気クラッチにより、対応する遊星歯車機構の内歯歯車を磁気的に固定するとともに、該内歯歯車の入力軸を中心とする回転により出力軸を駆動し、前記出力軸で駆動する負荷に応じ前記スプリングを伸縮して、固定された前記磁石固定ヨーク部材に対して前記円筒状磁石固定部材を相対回転させ、他の磁気クラッチを磁気結合し、該他の磁気クラッチに対応する遊星歯車機構の内歯歯車を磁気的に固定して、同一の入力軸により出力軸を異なった速度で駆動することを特徴とする。
また、本発明による更に他の非接触型負荷感応自動変速機は、前記各列の第3ヨーク部材は、入力円板の外周に複数個設け、前記複数の第3ヨークに対応して磁気クラッチを複数設けたことを特徴とする。
本発明は、機械的なクラッチを用いることなく磁気クラッチを用いることにより非接触で、且つ負荷に応じてクラッチの切換作動を行うことができ、補助電力や電子回路等の付属機器を必要としない小型軽量且つ、単純な構造の自動変速機とすることができる。また、非接触磁気クラッチを用いることによりメンテナンスフリーで、変速ショックが少なく、低騒音で、過負荷保護可能な伝達切換機構とすることができ、据え付け作業が容易となる。
更に、本発明による自動変速機は負荷感応変速機であることから、
1.補助動力・電子回路・電源等の付属機器が不要。
2.小型軽量かつシンプルな構成。
3.据付作業が容易。
という効果を奏する。
また、本発明による負荷感応変速機は非接触式であるため、
1.摩擦材の磨耗・隙間管理の問題を解消。
2.機械的な接触・摩擦による損失が減少するため高効率。
3.磁気的結合のバネ効果による変速ショック・騒音の低減。
4.過負荷時は磁気クラッチが滑り始め,動力源を保護。
という効果を奏する。
更に、本発明においては、
1.3段変速に拡張することにより負荷変動に対してよりきめ細かい変速動作が可能であり、動力源の動作条件を常に最適値近傍に保つことができる。その結果、駆動効率を一層向上することができる。
2.先の発明では変速動作に伴って中間円板と出力円板が相対的に回転運動および軸方向へのスライド運動をする必要があった。この場合、2種類の相対運動を許容しつつ中間円板と出力円板を結合する機構の設計製作が困難であり、また部品点数の増加を招いていた。それに対して本出願では回転運動のみにより変速動作が可能であるため、大幅な機構の簡略化と部品点数の削減を達成するとともに設計製作を容易にした。
3.ここでは3段変速機を例として説明したが、同様の機構を連ねることにより4段以上の多段変速機へも容易に拡張可能である。
4.逆に入力円板を2枚に減らした2段変速機を構成することもできる。この場合、先の発明と比較して2段変速機の機構を大幅に簡略化可能である。
更に本発明による実施例2の非接触型負荷感応自動変速機においては、その全体構成についてみると、前段減速機と接続軸と磁気クラッチの全てが一体化した構造をなしている。また大きさについてみると、前段減速機と磁気クラッチを軸方向に並べて接続する必要がなく全体が一体構造になることにより軸方向に短縮可能である。なお、径方向には大きくなるものの、これはトルク伝達機として、トルク=半径×力、の作用によってむしろ有利な構造となる。
また、N段変速機としたときの多重同軸構造についてみると、入力軸をN重とする必要が無く、変速機全体の構造は簡単になり、段数を増やす場合は同様の機構を軸方向に増設するものの、基本構造は変わらず、製造が容易となる、というメリットがある。また、回転部分についてみると、入力軸と太陽歯車からなる第1層と、出力軸とキャリアからなる第2層と、1個のみ固定され他は空転する内場歯車という構成となり、回転部分が少なくなるため、慣性モーメントが減少する。また、特に多数の永久磁石とヨークからなるため大きな慣性モーメントを有する第4層には、負荷トルク増減に応じて最外層と相対回転するものの基本的には静止している、という多くの効果を奏する。
本発明は、機械的なクラッチを用いることなく磁気クラッチを用い、更にこの磁気クラッチを負荷に応じて磁気的にその磁気クラッチの切換作動を行うことができるようにした非接触型負荷感応自動変速機であって、安定した作動を行い、小型化することができ、より多段の自動変速機を簡単に構成することができるようにした非接触型負荷感応自動変速機とするため、第1ヨークと第2ヨーク間に各ヨーク側にN極とS極を配置した第1永久磁石を固定している磁石固定ヨーク部材と、前記第1ヨークと第2ヨークの端部に間隙を有して配置した第3ヨークと、前記第1ヨークと第2ヨークの他端部側の両者の間隙に前記第1永久磁石と極性を逆方向にして挿脱自在に配置した第2永久磁石とからなる磁気クラッチを複数列隣接して配置し、隣接した前記磁石固定ヨーク部材を連結部材で連結し一体化して磁石固定ヨーク部材列を形成し、各列の前記第2永久磁石を、円筒状磁石固定部材の内周面において円周方向に、互いに位置を異ならせて複数列固定し、前記磁石固定ヨーク部材列と円筒状磁石固定部材間にスプリングを設け、前記磁石固定ヨーク部材列と円筒状磁石固定部材の相対回転により、複数列の任意の磁気クラッチにおける第2永久磁石を第1ヨークと第2ヨーク間から脱して、該磁気クラッチの第3ヨークと磁石固定ヨーク部材を磁気結合すると共に、他の列の磁気クラッチにおける第2永久磁石を第1ヨークと第2ヨーク間に挿入して前記磁気結合を解除可能に構成し、前記各列の第3ヨーク部材を固定した入力円板を外部の駆動装置により異なった速度で駆動する複数の入力軸と、前記円筒状磁石固定部材と連結した出力軸とを備え、前記磁気結合した磁気クラッチの入力円板に連結している入力軸の力を、前記磁石固定ヨーク部材列、前記円筒状磁石固定部材を介して前記出力軸に伝達し、前記出力軸で駆動する負荷に応じ前記スプリングを伸縮して、前記磁石固定ヨーク部材列と前記円筒状磁石固定部材とを相対回転させ、他の磁気クラッチを磁気結合し、該他の磁気クラッチの入力円板に連結している入力軸により出力軸を異なった速度で駆動するように構成する。
本発明の実施例を図面に沿って説明する。図1には本発明において用いられる非接触磁気クラッチの原理を示しており、永久磁石とヨークを組み合わせて磁気回路を構成し、その経路を切り換えることによりトルク伝達を結合・分離するようにしている。
図1(a)に示すように、磁石固定ヨーク部材10においては、N極とS極が図示するように並んでいる第1永久磁石11を挟んで、磁性材からなる第1ヨーク12と第2ヨーク13とを一体的に固定している。互いに向かい合う第1ヨーク12と第2ヨーク13は、その対向面における下方に第1永久磁石11を固定しており、上方は第1ヨーク部14と第2ヨーク部15が対向する対向間隙16が形成されている。
第1ヨーク12の下端17とと第2ヨーク13の下端18の各下端面に対向し、間隙を有して磁性材からなる断面コ字型の第3ヨーク20を配置している。この第3ヨーク20の開口側が第1ヨーク12と第2ヨーク13側を向いており、図示実施例では第1突出部21が第1ヨーク12の下端17に間隙を介して対向し、第2突出部22が第2ヨーク13の下端18に間隙を介して対向している。それにより図1(a)の状態では第1永久磁石11の磁気は第2ヨーク13から、その下端18と第3ヨーク20の第2突出部22の間隙を通って第3ヨーク20へ、更に第3ヨーク20の第1突出部21と第1ヨーク12の下端17の間隙を通って第1ヨーク12に至り、この第1ヨーク12と接触している第1永久磁石11のS極に至る、図中矢印で示すような結合用磁気回路23が形成される。
このような結合用磁気回路23が形成されている状態では、磁石固定ヨーク部材10と第3ヨーク20とがその磁力によって強固に結合しており、したがって後述するように第3ヨーク20が外部からの入力によって回転するとき、磁石固定ヨーク部材10も一体的に回転することができるようになる。なお、このとき第1ヨーク12の第1ヨーク部14と第2ヨーク13の第2ヨーク部15の間には大きな間隙が存在するので、この部分を通る磁気回路は実質的に形成されない。
それに対して、図1(a)において互いに対向している第1ヨーク部14と第2ヨーク部15の対向間隙16から、側方に離れて位置している第2永久磁石25が、図中矢印で示すように移動し、図1(b)に示すように第1ヨーク部14と第2ヨーク部15とが対向する間隙16内に入り込むことができるようにしている。このとき第2永久磁石25は図示するように第1永久磁石11とはN極とS極が左右反対側になるように配置されているので、図1(b)に示す状態では第1永久磁石11のN極からの磁力線は、図中矢印で示すように第2ヨーク13を通って、第2ヨーク部15と微少間隙を介して対向している第2永久磁石25のS極に至る。一方、第2永久磁石25のN極からの磁力線は図中矢印で示すように、このN極と微少間隙を介して対向している第1ヨーク部14を通って、第1ヨーク12の下方に固定されている第1永久磁石11のS極に至る。
このような磁気回路は2個の永久磁石が直接形成する磁気回路であるため、前記図1(a)に示すような磁気回路よりもその力は強く、したがって(a)に示されるような磁気回路が実質的に形成されなくなる。そのため、第3ヨーク20と磁石固定ヨーク部材10との(a)に示されるような結合が解除され、(b)に示すように自由状態となり、互いに自由に移動可能となる。このような機構を用いて、第2永久磁石25を検出した負荷に応じていずれかの位置に移動可能にすることにより、非接触型負荷感応自動変速機とすることができる。
本発明は上記のような原理に基づく非接触磁気クラッチの原理を用いたものであり、このような非接触磁気クラッチを利用することにより種々の形態からなる非接触型負荷感応自動変速機を構成することができる。例えば図2に示す例においては、これらの非接触磁気クラッチを、第1磁気クラッチ31、第2磁気クラッチ32、第3磁気クラッチ33の3個の磁気クラッチを列設し、各々の磁石固定ヨーク部材の側部を連結部材としての連結リング26で一体的に連結した3段クラッチの例を示している。なお、各段のクラッチにおいて、それぞれ図1に示すような磁気クラッチを放射状に複数設けて、強固な連結を行うことができるようにしている。また、各段の第3ヨークは入力円板の外周に放射状に複数固定している。
この例においては、各々の第3ヨークを同一軸線において同芯上に配置した第1入力軸34、第2入力軸35、第3入力軸36に設けた入力円板19によって別個に回転可能としており、図示されない変速機からの個々の入力により、例えば第1入力軸34を低減速段入力段として高速回転し、第2入力軸35を中減速段入力段として中間の回転速度とし、第3入力軸36を高減速段入力段として低速回転させる。
上記のような入力段を用いて、前記のような非接触磁気クラッチを用いることにより、例えば図3〜図5に示すような態様で、3段同時入力のうち、任意の1段を選択して駆動することが可能となる。即ち図3に示す態様においては、第2磁気クラッチ32と第3磁気クラッチ33の各磁石固定ヨークに対して第2永久磁石が位置し、第1磁気クラッチ31の磁石固定ヨークに対しては第2永久磁石を位置させないようにしている。このような態様では各磁気クラッチにおいて図3(b)に示すような磁気回路が形成され、第1磁気クラッチ31のみにおいて第3ヨークと磁石固定ヨーク部材とが結合し、他は自由状態となる。
それにより、第1入力軸34に固定される第1磁気クラッチの第3ヨークによって全て連結している前記3個の磁石固定ヨーク部材からなる磁石固定ヨーク部材列29が一体的に回転する。したがって、第1入力軸34が前記のように低減速で高速回転する軸の時には、磁石固定ヨーク部材列29全体が高速回転する。なお、このとき中間の回転速度で回転している第2入力軸35に固定されている第2磁気クラッチ32における第3ヨークは、高速で回転している磁石固定ヨーク部材の作動にかかわらず、中間の速度で回転している。低速で回転している第3入力軸36についても同様である。
図4に示す態様においては、第1磁気クラッチ31と第3磁気クラッチ33の各磁石固定ヨークに対して第2永久磁石が位置し、第2磁気クラッチ32の磁石固定ヨークに対しては第2永久磁石を位置させないようにしている。このような態様では各磁気クラッチにおいて図4(b)に示すような磁気回路が形成され、第2磁気クラッチ32のみが第3ヨークと磁石固定ヨーク部材とが結合し、他は自由状態となる。
それにより、第2入力軸35に固定される第2磁気クラッチの第3ヨークによって、全てが連結している磁石固定ヨーク部材列29が一体的に回転する。したがって、第2入力軸35が前記のように中間の減速で中速回転する軸の時には、磁石固定ヨーク部材列29全体が中速回転する。
図5に示す態様においては、第1磁気クラッチ31と第2磁気クラッチ32の各磁石固定ヨークに対して第2永久磁石が位置し、第3磁気クラッチ33の磁石固定ヨークに対しては第2永久磁石を位置させないようにしている。このような態様では各磁気クラッチにおいて図5(b)に示すような磁気回路が形成され、第3磁気クラッチ33のみにおいて第3ヨークと磁石固定ヨーク部材とが結合し、他は自由状態となる。
それにより、第3入力軸36に固定される第3磁気クラッチの第3ヨークによって、全てが連結している磁石固定ヨーク部材列29が一体的に回転する。したがって、第3入力軸36が前記のように高減速で低速回転する軸の時には、磁石固定ヨーク部材列29全体が低速回転する。
以上のように、第1磁気クラッチ〜第3磁気クラッチにおける任意の1つの磁石固定ヨーク部材に第2永久磁石を入れない状態を選択することにより、図示実施例においては3種類の回転速度の内、任意の回転速度を選択して出力軸を回転させることができるようになるものであるが、第2永久磁石をこのように選択的に配置するためには、例えば図6に示すように、円筒状磁石固定部材40の内周面に3列の第2永久磁石の列を、各列において適宜の長さで、適宜の間隔をもって複数配置する。
図6に示す例において、円筒状磁石固定部材40の内周面に第1磁石列37、第2磁石列38、第3磁石列39を設けており、放射状に複数配置されている磁気クラッチの列のうちの一つがL1を中心としたライン上にあるとき、第2磁石列38と第3磁石列39の各第2永久磁石が前記図3のように位置することとなり、前記図3に示す作動を行う。その後円筒状磁石固定部材40が相対回転し、その磁気クラッチの列に対してL2を中心としたライン上に位置すると、図4に示すように第2永久磁石が位置することとなり、前記図4に示す作動を行う。同様にして更に円筒状磁石固定部材40が相対回転すると、その磁気クラッチの列に対してL3を中心としたライン上に位置することとなり、その際には図5に示すような位置となって、前記図5に示す作動を行う。この状態から円筒状磁石固定部材40が前記と逆方向に回転するときには、図4の状態を通って図3の状態に戻る。
上記のような各種部材を組み込んで一体化することにより得られた非接触型負荷感応自動変速機41の例を図7に示す。同図に示されるように、円筒状磁石固定部材40には適宜の本数のアーム42によって出力軸43を連結しており、円筒状磁石固定部材40と磁石固定ヨーク部材列29の外側部に設けた連結リング26とをスプリング44で連結し、このスプリング44に所定の初期引っ張り力を与えておく。それにより、前記のように各々速度が異なる第1入力軸34、第2入力軸35、第3入力軸36の各入力軸によって、また各磁気クラッチにおけるヨークに対する第2永久磁石の挿入状態に応じて任意の速度で駆動される磁石固定ヨーク部材列29と共に、円筒状磁石固定部材40がスプリング44を介して回転し、出力軸43を回転する。なお、図示実施例においては機械的なスプリングを使用した例を示しているが、先の発明のように永久磁石の同極が接近すると反発することを利用した磁気的なバネを用いても良い。
このような非接触型負荷感応自動変速機41の作動に際しては、例えば図7に示すように第1磁気クラッチ31に第2永久磁石が挿入されず、第2磁気クラッチ32と第3磁気クラッチ33に第2永久磁石が挿入されることにより、前記図3に示した態様で作動しているときには、第1入力軸からの低減速による高速回転の入力が、磁石固定ヨーク部材列29、スプリング44、円筒状磁石固定部材40、出力軸43に伝達され、出力軸43は高速回転する。この状態における磁石固定ヨーク部材列29と円筒状磁石固定部材40における第2永久磁石の状態は図8(a)に示されている。この状態は図6におけるラインL1上に磁気クラッチの列が存在する状態となっている。
図8(a)に示す運転状態は図9のように示すことができる。即ち、本発明による非接触型負荷感応自動変速機41において例えばモータ等の駆動力源からの入力は、図2の第1入力軸34に相当し、ほぼそのまま出力側に伝達される低減速での伝達経路と、中減速前段減速機で減速された、図2の第2入力軸35に相当する中減速での伝達経路と、更にこの中減速での伝達経路の出力を用いて減速を行う高減速前段減速機からの、図2の第3入力軸36に相当する高減速での伝達経路を用いている。各伝達経路と1つの出力負荷への経路との間に各々の切り換え機構としての磁気クラッチを設け、出力負荷の負荷トルク状態を検出してその負荷に対応した磁気クラッチを接続することにより、負荷に応じた適切な回転速度で駆動することができるようにしている。このような伝達経路において、図8(a)に示す状態は図9に示されるように低減速での伝達経路の磁気クラッチが接続し、出力負荷を高速で回転している。
図8(a)に示す状態で出力軸を駆動しているとき、駆動負荷が増大すると入力軸の所定の速度の回転に関わらず円筒状磁石固定部材40の回転が押さえれるため、その力によって予め所定の引っ張り力を付与されていたスプリング44が延びる。それにより磁石固定ヨーク部材列29と円筒状磁石固定部材40とは相対回転し、図8(b)に示すように第2磁気クラッチ32から第2永久磁石が脱し、第1磁気クラッチ31と第3磁気クラッチ33に第2永久磁石が挿入される状態となる。このときには中速で回転する第2入力軸35によって第2磁気クラッチ32を介して出力軸43が中速回転するようになる。このようにして、負荷の増大に対応して自動的に減速することができる。
このような中速回転時に更に負荷が増大したときには、前記と同様にスプリング44が延び、図8(c)に示すように磁石固定ヨーク部材列29と円筒状磁石固定部材40とは更に相対回転し、図8(c)に示されるように第3磁気クラッチ33の第2永久磁石が脱し、第1磁気クラッチ31と第2磁気クラッチ32に各第2永久磁石が挿入される状態となる。このときには低速で回転する第3入力軸36によって第3磁気クラッチ33を介して出力軸43が低速回転するようになる。このようにして、3つの負荷の大きさに対して、自動的に適切な回転速度でその負荷を駆動することができるようになる。
また、上記高減速状態からさらに負荷トルクが増大した場合は、磁石固定ヨーク部材列29と円筒状磁石固定部材40のそれ以上の相対回転は機械的なストッパにより制限される。以降、負荷が次第に減少したときには、前記とは逆の態様で、元の図8(a)に示す状態に戻る。更に、上記のように構成された本変速機は、前記説明と逆方向への回転に対しても同様に動作することができ、したがって正逆両方向の回転に対して動作可能の変速機となる。
上記のような実施例においては、自動的な3段変速を容易に行うことができるようになり、負荷変動に対してよりきめ細かい変速動作が可能となり、動力源の動作条件を常に最適値近傍に保つことができる。その結果、駆動効率を一層向上することができる。また、本発明者による先の発明では、変速動作に伴って中間円板と出力円板が相対的に回転運動および軸方向へのスライド運動をする必要があり、2種類の相対運動を許容しつつ中間円板と出力円板を結合する機構の設計製作が困難であって、また部品点数の増加を招いていたが、それに対して本出願では回転運動のみにより変速動作が可能であるため、大幅な機構の簡略化と部品点数の削減を達成するとともに設計製作を容易にすることができる。また、上記の実施例では3段変速機を例に説明したが、同様の機構を連ねることにより4段以上の多段変速機へも容易に拡張可能となる。
また、逆に入力円板を2枚に減らした2段変速機を構成することもできる。この場合においても、先の発明とと比較して2段変速機の機構を大幅に簡略化可能である。このような2段変速機を用いたときには、これを用いない場合と比較して図10に示すような効果を生じる。即ち、図10の(a)と(b)は変速機を使用しない場合の回転数に対するトルク(a)と、回転数に対するパワー(b)を示し、同図の(c)と(d)は2段変速機を使用した場合の回転数に対するトルク(c)と、回転数に対するパワー(d)を示している。同図から明らかなように、変速機を用いない場合には(a)のように負荷を高速低トルクの状態と低速高トルクの状態で使用するとき、これを駆動する駆動源は(b)に示すように最大出力Paの駆動装置を用い、各々Piの出力で使用することとなるため、Peの余分のパワーを出す駆動源が必要となる。それに対して2段変速機を用いた場合には、(c)のように高減速段と低減速段で各々所定のトルクを得るように作動設定する場合には、(d)に示すように各作動設定点で最大出力が得られる駆動装置によってこの負荷を駆動すれば良くなるので、小型の駆動装置によってその負荷を駆動することができるようになり、安価で小型な駆動装置ですむことがわかる。更に多くの段からなる変速機を用いた場合には、より細かな調整が可能となる。
前記実施例においては、本発明による非接触型負荷感応自動変速機への入力について、別途設けた装置によって、駆動装置の出力を図9に示すような前段減速機を用いて速度の異なった3つの回転速度に変速して入力させるに際して変速機とは別に前段減速機を設けた例を示したが、例えば図15に示すようにこの前段減速機を非接触型負荷感応自動変速機の内部に組み込むこともできる。
図15に示す実施例においては遊星歯車機構を3列接続した例を示している。遊星歯車機構は周知のように、図11に示すような遊星歯車を用いる装置であり、図中内側から外側へ順に、太陽歯車52、キャリヤ53で連結された図中では5個示されている遊星歯車54、内歯歯車55の3要素から構成される。これらの回転速度の間には、
ωキャリア = ω太陽歯車/ α + ω内歯歯車(α−1)/α ( α>1)
という3変数に対して1拘束を課す関係がある。一般的な遊星歯車は例えば図12(a)に示すように、太陽歯車: 入力、内歯歯車: 入力(固定)とし、キャリヤ : 出力という形態で減速機として使用する。
また、別形態として、図12(b)に示すように、太陽歯車: 入力、キャリヤ: 入力とし、内歯歯車: 出力という使用法も可能である。すなわち、遊星歯車は任意の2要素を入力として、また残りの1要素を出力として使用することができる。その際には、
ω内歯歯車 = −ω太陽歯車/(α−1) + ωキャリアα/( α−1)
という関係となる。
その基本構成は、前記3段変速の場合、或いはそれ以上のときも同様であり、減速比が異なる複数の遊星歯車(低減速/中減速/高減速)を軸方向に配置し、それらの太陽歯車を同軸に接続して入力軸にし、キャリアを出力軸とする。また各遊星歯車の内歯歯車は相互接続されておらず、それぞれ異なる速度で自由に回転可能である。ここで磁気クラッチを用いて内歯歯車の1つのみを固定し、他を空転させることにより減速比を切換えることができる。この関係をまとめたものが図13であり、更にこれを用いていずれかの遊星歯車を固定と空転を切り換えることにより低減速動作と中減速動作を行う例を図14に示している。なお、高減速動作についても同様に行われる。
上記のような作動を行わせるため、この実施例においては図15に示すような遊星歯車列組込式非接触型負荷感応自動変速機60としている。即ち、前記実施例1と同様の第1磁気クラッチ31、第2磁気クラッチ32、第3磁気クラッチ33を用い、各磁気クラッチの内側に配置される実施例1の第3ヨークを、3列に列設した各遊星歯車の内歯歯車部材における外周に固定する構造とし、互いに連結した遊星歯車の共通の入力軸を中心とした回転を行うようにしている。
図15に示す装置においては、第1磁気クラッチ31に対応する第3ヨーク46は、3列の遊星歯車機構列の内の第1遊星歯車機構61における第1内歯歯車部材64の外周に固定されており、この第1遊星歯車機構61は入力軸65で駆動される大径の第1太陽歯車66と、それにより駆動される複数の小径の第1遊星歯車群67を備えている。同様に、第2磁気クラッチ32に対応する第3ヨーク47は、第2遊星歯車機構62における第2内歯歯車部材68の外周に固定されており、この第2遊星歯車機構62は入力軸65と直結している中間径の第2太陽歯車69と、それにより駆動される中間径の複数の第2遊星歯車群70を備えている。
更に、第3磁気クラッチ33に対応する第3ヨーク48は、第3遊星歯車機構63における第3内歯歯車部材71の外周に固定されており、この第3遊星歯車機構63も同様に入力軸65と直結している小径の第3太陽歯車72とそれにより駆動される大径の複数の第3遊星歯車群73を備えている。図示実施例においてはこの第3遊星歯車群を入力軸65の軸線を中心に一体的に回転するためのキャリアをアーム74とし、そのアーム74に出力軸75を設けている。また、この実施例においては円筒状磁石固定部材49を外部に対して固定して用いる。
したがって上記機構はその中心側から順に、第1層は入力軸と太陽歯車、第1層と第2層間は太陽歯車と遊星歯車の噛み合い部分、第2層は出力軸とキャリアと遊星歯車、第2層と第3層間は遊星歯車と内歯歯車の噛み合い部分、第3層は内歯歯車(低減速/中減速/高減速)、第3層と第4層間は負荷トルクに応じて内歯歯車の1つと第4層が磁気的に結合し、他の内歯歯車は空転する構成、第4層は磁石固定ヨーク部材、第4層と最外層間は相対回転可能であるが後述するスプリングにより結合している部分、最外層は円筒状磁石固定部材と前記第3層と第4層間の磁気結合をON/OFFするための第2永久磁石、という多層構造をなし、各種機構をコンパクト化した構成をなしている。
上記のような機構を用いて入力軸65を外部のモータ等によって回転するとき、図15に示すように第2磁気クラッチ32と第3磁気クラッチ33に第各々2永久磁石を作用させ、第1磁気クラッチ31には作用させないようにすると、第1磁気クラッチ31の第3ヨーク46が前記実施例と同様の原理によって磁気結合し、第2磁気クラッチ32の第2ヨーク47及び第3磁気クラッチ33の第3ヨーク48が自由回転状態となる。それにより、第2遊星歯車機構62と第3遊星歯車機構63とは太陽歯車の回転と共に自由に回転する状態となり、したがって内歯歯車部材64が固定されている第1遊星歯車機構61において、大径の第1太陽歯車66によって高速で入力軸65を中心に回転する第1遊星歯車群67により、各遊星歯車を自由回転状態で支持しつつ連結しているクランク軸76を介して、アーム74を回転する。
このとき、大径の太陽ギヤと、固定した内歯歯車に噛み合う小径の遊星ギヤとによって、入力軸を中心に遊星ギヤは高速で回転し、それにより出力軸75は高速で回転する。また、このときには第1内歯歯車64が遊星歯車と共に回転しようとするが、第1磁気クラッチ31の第3ヨーク46と磁気的に結合している磁石固定ヨーク部材の列が、その側部の連結リング26とスプリング44によって所定の力で連結している円筒状磁石固定部材49が、外部に固定されていることにより内歯歯車の回転は押さえられている。この磁気結合状態は前記実施例1においては図8(a)と同様の状態となっている。
このような出力軸による負荷の駆動中にその負荷が増大したときには、出力軸75にかかる負荷により第1内歯歯車64に大きな力が加わり、スプリング44に抗して回転するため、前記実施例1における図8(b)と相対的には同様の状態となり、第1磁気クラッチ31と第3磁気クラッチ33において磁石固定ヨーク部材に第2永久磁石を挿入し、第2磁気クラッチ32からは脱する状態となるため、この第2磁気クラッチ32に対応する第2遊星歯車機構62の第2内歯歯車部材68が固定され、他は自由状態となる。そのため第2遊星歯車機構62における中間径の第2太陽歯車69と、前記のように固定された第2内歯歯車68に噛み合う中間径の第2遊星ギヤ群70の作用によって、出力軸75は中間速度で駆動され、前記の負荷の増大に対応することができる。
同様にして更に負荷が増大すると、第2内歯歯車68に作用する力が大きくなるため、スプリング44に抗して第2内歯歯車68が回転し、第2磁気クラッチの第3ヨーク47と磁気結合した磁石固定ヨーク部材の列を回転するため、前記実施例1における図8(c)と相対的には同様の状態となり、第1磁気クラッチ31と第2磁気クラッチ32において磁石固定ヨーク部材に第2永久磁石を挿入し、第3磁気クラッチ33からは脱する状態となるため、この第3磁気クラッチ33に対応する第3遊星歯車機構63における小径の第3太陽歯車72と、固定された第3内歯歯車71に噛み合う大径の第3遊星ギヤ群73の作用によって、出力軸75は低速で駆動され、負荷の増大に対応することができる。
また、上記高減速状態からさらに負荷トルクが増大した場合は、磁石固定ヨーク部材列29と円筒状磁石固定部材49のそれ以上の相対回転は機械的なストッパにより制限される。以降、負荷が次第に減少したときには、前記とは逆の態様で、最終的には図15の状態に戻る。更に、上記のように構成された本変速機は、前記説明と逆方向への回転に対しても同様に動作することができ、したがって正逆両方向の回転に対して動作可能の変速機となる。
上記のような構成からなる実施例2の非接触型負荷感応自動変速機60は、前記実施例1と比較して、その全体構成についてみると、実施例1においては前段減速機と接続軸と磁気クラッチの組み合わせであるのに対して、実施例2は全てが一体化した構造をなしている。また大きさについてみると、実施例1は前段減速機と磁気クラッチを軸方向に並べて接続する必要があるため全体として長くならざるを得ないのに対して、実施例2においては全体が一体構造になることにより、軸方向に短縮可能である。なお、実施例2においては径方向には大きくなるものの、これはトルク伝達機として、トルク=半径×力、の作用によってむしろ有利な構造となる。
また、N段変速機としたときの多重同軸構造についてみると、実施例1においては入力軸がN重となり、磁気クラッチは3重となって段数を増すにつれて接続軸が複雑且つ製作が困難化する傾向があるのに対して、実施例2においては、変速機全体の構造は簡単になり、段数を増やす場合は同様の機構を軸方向に増設するものの、基本構造は変わらない、というメリットがある。また、回転部分についてみると、実施例1においては前段減速機、接続軸、磁気クラッチ第1層としての入力円板、磁気クラッチ第2層としての中間円板、磁気クラッチ第3層としての出力円板、という構成をなすのに対して、実施例2においては、入力軸と太陽歯車からなる第1層と、出力軸とキャリアからなる第2層と、1個のみ固定され他は空転する内場歯車という構成となり、回転部分が少なくなるため、慣性モーメントが減少することとなる。また、特に多数の永久磁石とヨークからなるため大きな慣性モーメントを有する第4層には、負荷トルク増減に応じて最外層と相対回転するものの基本的には静止している、という特徴を有する。
本発明は従来の大型で複雑且つ高コストの変速機では適用不可能であった中小規模のメカトロニクス機器全般に用いることができ、その適用範囲はきわめて広いものであるが、特に、プレスや射出成型器等の生産機械、動作の一部では大きな力が必要である反面、他の部分では高速動作が求められる各種駆動機構、チェーンブロックやジャッキ等の荷役・搬送機器、素早い位置合わせと力強い負荷駆動の両立が必要な各種機器、乗用リフト等の介護機器、動力源の低パワー化による小型軽量化と安全性向上を必要とする各種機器に有効に利用することができる。
本発明で用いる磁気クラッチ機構の原理を表す説明図である。 同磁気クラッチ機構を3列並設し、各々異なった速度で駆動する機構を示す説明図である。 図2の機構を用いて磁気クラッチの作動切換を行う際の第1の態様を示す図である。 同第2の態様を示す図である。 同第3の態様を示す図である。 磁気クラッチの作動切換を行う円筒状磁石固定部材の説明図である。 上記各機構及び部材を組み合わせて構成した本発明の実施例1による装置の全体構成を示す図である。 上記装置の磁気クラッチ切換作動を示す図であり、(a)は第1の態様、(b)は第2の態様、(c)は第3の態様を示す図である。 本発明のクラッチ切換機構を用いて負荷を駆動する力伝達経路の説明図である。 クラッチ切換による負荷を高速と低速で駆動する際の作用を示す図であり、(a)(b)はそのクラッチ切換機構を用いないとき、(c)(d)はそのクラッチ機構を用いたときの、各々速度に対するトルク、及びパワーのグラフである。 本発明の実施例2で用いる遊星歯車機構の一般的な説明図である。 同遊星歯車機構を用いたときの作動態様を示す図である。 同遊星歯車機構を用いたときの各種作動態様をまとめた表である。 同遊星歯車機構を3個用いて、固定する内歯歯車を選択したときの力伝達を示す図である。 本発明の実施例2による装置の全体構成を示す図である。 本発明者が先に提案した装置の説明図である。
符号の説明
10 磁石固定ヨーク部材
11 第1永久磁石
12 第1ヨーク
13 第2ヨーク
14 第1ヨーク部
15 第2ヨーク部
16 対向間隙
25 第2永久磁石
29 磁石固定ヨーク部材列
31 第1磁気クラッチ
32 第2磁気クラッチ
33 第3磁気クラッチ
44 スプリング
49 円筒状磁石固定部材
60 非接触型負荷感応自動変速機
61 第1遊星歯車機構
62 第2遊星歯車機構
63 第3遊星歯車機構
64 第1内歯歯車部材
65 入力軸
66 第1太陽歯車
67 第1遊星歯車群
68 第2内歯歯車部材
69 第2太陽歯車
70 第2遊星歯車群
71 第3内歯歯車部材
72 第3太陽歯車
73 第3遊星歯車群
74 アーム
1 出力軸

Claims (3)

  1. 第1ヨークと第2ヨーク間に各ヨーク側にN極とS極を配置した第1永久磁石を固定している磁石固定ヨーク部材と、前記第1ヨークと第2ヨークの端部に間隙を有して配置した第3ヨークと、前記第1ヨークと第2ヨークの他端部側の両者の間隙に前記第1永久磁石と極性を逆方向にして挿脱自在に配置した第2永久磁石とからなる磁気クラッチを複数列隣接して配置し、
    隣接した前記磁石固定ヨーク部材を連結部材で連結し一体化して磁石固定ヨーク部材列を形成し、
    各列の前記第2永久磁石を、円筒状磁石固定部材の内周面において円周方向に、互いに位置を異ならせて複数列固定し、
    前記磁石固定ヨーク部材列と円筒状磁石固定部材間にスプリングを設け、
    前記磁石固定ヨーク部材列と円筒状磁石固定部材の相対回転により、複数列の任意の磁気クラッチにおける第2永久磁石を第1ヨークと第2ヨーク間から脱して、該磁気クラッチの第3ヨークと磁石固定ヨーク部材を磁気結合すると共に、他の列の磁気クラッチにおける第2永久磁石を第1ヨークと第2ヨーク間に挿入して前記磁気結合を解除可能に構成し、
    前記各列の第3ヨーク部材を固定した入力円板を外部の駆動装置により異なった速度で駆動する複数の入力軸と、前記円筒状磁石固定部材と連結した出力軸とを備え、
    前記磁気結合した磁気クラッチの入力円板に連結している入力軸の力を、前記磁石固定ヨーク部材列、前記円筒状磁石固定部材を介して前記出力軸に伝達し、
    前記出力軸で駆動する負荷に応じ前記スプリングを伸縮して、前記磁石固定ヨーク部材列と前記円筒状磁石固定部材とを相対回転させ、他の磁気クラッチを磁気結合し、該他の磁気クラッチの入力円板に連結している入力軸により出力軸を異なった速度で駆動することを特徴とする非接触型負荷感応自動変速機。
  2. 第1ヨークと第2ヨーク間に各ヨーク側にN極とS極を配置した第1永久磁石を固定している磁石固定ヨーク部材と、前記第1ヨークと第2ヨークの端部に間隙を有して配置した第3ヨークと、前記第1ヨークと第2ヨークの他端部側の両者の間隙に前記第1永久磁石と極性を逆方向にして挿脱自在に配置した第2永久磁石とからなる磁気クラッチを複数列隣接して配置し、
    隣接した前記磁石固定ヨーク部材を連結部材で連結し一体化して磁石固定ヨーク部材列を形成し、
    各列の前記第2永久磁石を、円筒状磁石固定部材の内周面において円周方向に、互いに位置を異ならせて固定し、
    前記磁石固定ヨーク部材列と円筒状磁石固定部材間にスプリングを設け、
    前記磁石固定ヨーク部材列と円筒状磁石固定部材の相対回転により、複数列の任意の磁気クラッチにおける第2永久磁石を第1ヨークと第2ヨーク間から脱して、該磁気クラッチの第3ヨークと磁石固定ヨーク部材を磁気結合すると共に、他の列の磁気クラッチにおける第2永久磁石を第1ヨークと第2ヨーク間に挿入して前記磁気結合を解除可能に構成し、
    前記複数列設けた磁気クラッチに対応して減速度が異なる遊星歯車機構を複数並設し、各遊星歯車機構の内歯歯車の外周に磁気クラッチの第3ヨークを固定するとともに、各遊星歯車機構の太陽ギヤを同一軸で駆動し、
    隣接する遊星歯車の支持軸を連結し、且つ遊星歯車のキャリヤにより出力軸を駆動するように構成し、
    前記磁気結合した任意の磁気クラッチにより、対応する遊星歯車機構の内歯歯車を磁気的に固定するとともに、該内歯歯車の入力軸を中心とする回転により出力軸を駆動し、
    前記出力軸で駆動する負荷に応じ前記スプリングを伸縮して、固定された前記磁石固定ヨーク部材に対して前記円筒状磁石固定部材を相対回転させ、他の磁気クラッチを磁気結合し、該他の磁気クラッチに対応する遊星歯車機構の内歯歯車を磁気的に固定して、同一の入力軸により出力軸を異なった速度で駆動することを特徴とする非接触型負荷感応自動変速機。
  3. 前記各列の第3ヨーク部材は、入力円板の外周に複数個設け、
    前記複数の第3ヨークに対応して磁気クラッチを複数設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の非接触型負荷感応自動変速機。
JP2004171453A 2004-06-09 2004-06-09 非接触型負荷感応自動変速機 Expired - Fee Related JP4446061B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004171453A JP4446061B2 (ja) 2004-06-09 2004-06-09 非接触型負荷感応自動変速機

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004171453A JP4446061B2 (ja) 2004-06-09 2004-06-09 非接触型負荷感応自動変速機

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005351336A JP2005351336A (ja) 2005-12-22
JP4446061B2 true JP4446061B2 (ja) 2010-04-07

Family

ID=35585979

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004171453A Expired - Fee Related JP4446061B2 (ja) 2004-06-09 2004-06-09 非接触型負荷感応自動変速機

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4446061B2 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2007124753A2 (en) 2006-04-30 2007-11-08 Tomactech A/S A transmission
JP4853924B2 (ja) * 2007-03-29 2012-01-11 独立行政法人産業技術総合研究所 負荷感応変速機
JP4854625B2 (ja) * 2007-08-24 2012-01-18 株式会社松栄工機 負荷感応型切換装置
JP5070410B2 (ja) * 2008-05-27 2012-11-14 独立行政法人産業技術総合研究所 クラッチ装置
JP5276473B2 (ja) * 2009-02-27 2013-08-28 三ツ星ベルト株式会社 プーリ構造体
JP5381621B2 (ja) * 2009-10-30 2014-01-08 株式会社豊田中央研究所 磁気的多段変速機構及び複合磁気的多段変速機構
US8581461B2 (en) * 2011-03-23 2013-11-12 National Formosa University Energy transforming apparatus

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005351336A (ja) 2005-12-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP2492548B1 (en) Torque transmission device
JP6137809B2 (ja) デュアルクラッチ式自動変速機
JP4853924B2 (ja) 負荷感応変速機
JP2012097864A (ja) 自動変速機
JP5876708B2 (ja) 車両用多段変速機のギヤトレーン
US8814744B2 (en) Electromechanical clutch and transmission
JP4280817B2 (ja) 非接触式負荷感応型自動変速機
JP4446061B2 (ja) 非接触型負荷感応自動変速機
EP2615055B1 (en) Hoist with built-in load sensing-type automatic speed change device
CN105026794A (zh) 行星结构式多级变速器
WO2013038942A1 (ja) 車両用モータ駆動装置および自動車
JP5329477B2 (ja) 変速機
US7384362B2 (en) Gear-type continuously variable transmission
KR100401642B1 (ko) 차량용 자동변속기의 6속 파워 트레인
KR102588934B1 (ko) 차량의 파워트레인
JPS5814576B2 (ja) ヘンソクソウチ
CN1153014C (zh) 自动变速器
JP4305098B2 (ja) 3摩擦係合要素同時係合型変速装置
JP4534911B2 (ja) 自動変速機
JP2022175336A (ja) 変速装置
JP2003287091A (ja) 自動変速機
CN105074275A (zh) 行星结构式多级变速器
JP2010190359A (ja) 電動アクチュエータ及び変速機用電動アクチュエータ
KR20200037009A (ko) 차량용 자동변속기
JP2005299881A (ja) 車両用変速機

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20061005

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20091215

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20091215

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130129

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130129

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130129

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140129

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140129

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees