以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態にかかる変速機の構成例を示すスケルトン図である。図1に示す変速機1は、入力軸10と、該入力軸10に対して平行に設置した第1出力軸11及び第2出力軸12とを備えた平行軸式の自動変速機である。この変速機1は、入力軸10上に固定した第1入力ギヤ21と、第1出力軸11上に相対回転可能に設けた第1出力ギヤ22とが噛合してなる第1ギヤ対23と、入力軸10上の第1入力ギヤ21とは異なる位置に固定した第2入力ギヤ25と、第2出力軸12上に相対回転可能に設けた第2出力ギヤ26とが噛合してなる第2ギヤ対27とを備えている。
また、変速機1は、第1出力軸11上に設けた第1遊星歯車機構51と、第2出力軸12上に設けた第2遊星歯車機構52の2組の遊星歯車機構を備えている。第1遊星歯車機構51は、第1出力軸11上に固定されて一体回転するキャリア(第1要素)C1と、第1ギヤ対23によって入力軸10の回転が入力されるサンギヤ(第2要素)S1と、キャリアC1に支持されたピニオンギヤP1の外周側に係合するリングギヤ(第3要素)R1とで構成されており、サンギヤS1に入力された入力軸10からの駆動力が、キャリアC1から第1出力軸11に出力されるようになっている。一方、第2遊星歯車機構52は、第2出力軸12に固定されて一体回転するキャリア(第4要素)C2と、第2ギヤ対27によって入力軸10の回転が入力されるサンギヤ(第5要素)S2と、キャリアC2に支持されたピニオンギヤP2の外周側に係合するリングギヤ(第6要素)R2とで構成されており、サンギヤS2に入力された入力軸10からの駆動力が、キャリアC2から第2出力軸12に出力されるようになっている。
また、第1出力軸11上には、第1遊星歯車機構51のリングギヤR1を変速機1のケーシング(固定側)2に固定したギヤ14と第1出力軸11上に固定したギヤ15とのいずれかに対して選択的に係合させる第1セレクト機構16が設けられている。また、第2出力軸12上には、第2遊星歯車機構52のリングギヤR2を変速機1のケーシング(固定側)2に固定したギヤ17と第2出力軸12上に固定したギヤ18とのいずれかに対して選択的に係合させる第2セレクト機構19が設けられている。第1セレクト機構16と第2セレクト機構19は、両側のギヤ14,15又は17,18の間を軸方向にスライドするスリーブ16a,19aを備えたシンクロメッシュ機構であり、スリーブ16a,19aでリングギヤR1又はR2を両側のギヤ14,15又は17,18のいずれかと選択的に係合させるようになっている。
また、入力軸10上に固定されたリバースドライブギヤ28と、第1出力軸11上に相対回転可能に設けられてリバースドライブギヤ28と噛合するアイドルギヤ29と、第2出力軸12に相対回転可能に設けられてアイドルギヤ29と噛合するリバースドリブンギヤ30とからなるリバースギヤ列31が設けられている。また、第2出力軸12上には、リバースドリブンギヤ30を第2出力軸12に対して選択的に結合可能なリバースセレクト機構32が設置されている。リバースセレクト機構32は、第2出力軸12上をスライド可能なスリーブ32aを備えたシンクロメッシュ機構で構成されている。また、第1出力軸11上には、パーキングギヤ33が設置されている。また、入力軸10の一端には、入力軸10に対するエンジン(駆動源)EGからの駆動力の入力の有無を切り換えるメインクラッチ34が設置されている。
また、第1出力軸11上に設置した第1ファイナルドライブギヤ35と、第2出力軸12上に設置した第2ファイナルドライブギヤ36と、これら第1ファイナルドライブギヤ35と第2ファイナルドライブギヤ36の両方と噛合するファイナルドリブンギヤ37が設けられている。なお、図1では、第1ファイナルドライブギヤ35とファイナルドリブンギヤ37とが離れて図示されているが、実際には、これらは噛合しており、第1ファイナルドライブギヤ35からの駆動力がファイナルドリブンギヤ37に対して直接伝達されるようになっている。この点は、他の図でも同様である。
本実施形態の変速機1では、第1入力ギヤ21と第2入力ギヤ25は互いに異なるギヤ比に設定されており、第1ギヤ対23と第2ギヤ対27は、互いの減速比が異なるように構成されている。これら減速比の異なる第1ギヤ対23と第2ギヤ対27によって、第1遊星歯車機構51と第2遊星歯車機構52には、異なる減速比で減速された駆動力が入力される。したがって、第1遊星歯車機構51と第2遊星歯車機構52の減速比は同一であってよい。そのため、第1遊星歯車機構51を構成する要素と第2遊星歯車機構52を構成する要素は、互いに対応するものを同一構成とすることができる。
また、第1ギヤ対23と第2ギヤ対27を互いに異なる減速比に設定することに代えて、第1ファイナルドライブギヤ35と第2ファイナルドライブギヤ36の歯数を互いに異ならせるようにしてもよい。これによれば、第1ファイナルドライブギヤ35と第2ファイナルドライブギヤ36とによって、ファイナルドリブンギヤ37に対して異なる減速比で減速された駆動力を出力することができる。この場合も、第1遊星歯車機構51と第2遊星歯車機構52は同一であってよい。そのため、第1遊星歯車機構51を構成する要素と第2遊星歯車機構52を構成する要素は、互いに対応するものを同一構成とすることができる。
本実施形態の変速機1では、第1セレクト機構16により、第1遊星歯車機構51のリングギヤR1を第1入力軸10に固定されたギヤ15とケーシング2に固定されたギヤ14とのいずれかに対して選択的に係合させることと、第2セレクト機構19により、第2遊星歯車機構52のリングギヤR2を第2出力軸12に固定されたギヤ18とケーシング2に固定されたギヤ17とのいずれかに対して選択的に係合させることによって、前進四速段、後進1速段の変速段を切り換えて設定することができる。ここでは、変速段設定の一例として、第1セレクト機構16の切り換えで1速段と3速段を設定し、第2セレクト機構19の切り換えで2速段と4速段を設定するように構成している。詳細には、ギヤ14、ギヤ15がそれぞれ1速ギヤ、3速ギヤとして機能し、ギヤ17とギヤ18がそれぞれ2速ギヤ、4速ギヤとして機能する。したがって、第1セレクト機構16をギヤ14側に係合させることで1速段を設定し、ギヤ15側に係合させることで3速段を設定する。また、第2セレクト機構19をギヤ17側に係合させることで2速段を設定し、ギヤ18側に係合させることで4速段を設定する。なお、具体的な変速段の設定は、第1ギヤ対23と第2ギヤ対27の減速比の設定、又は第1ファイナルドライブギヤ35と第2ファイナルドライブギヤ36の歯数の設定などによって決まるため、上記の例には限定されない。
そして、本実施形態の変速機1では、第1出力軸11上の第1遊星歯車機構51と第2出力軸12上の第2遊星歯車機構52は、軸方向で互いに逆向きに配置されている。すなわち、第1遊星歯車機構51と第2遊星歯車機構52は、互いが同一又は相当する部品で構成された同形状の機構であり、各部品の配置及び向きが軸方向で反対向きになっていることで、全体が軸方向で対称になっている。これにより、第1遊星歯車機構51と第2遊星歯車機構52の各部は、軸方向の各位置で互い違いに配置されることとなる。したがって、第1遊星歯車機構51に駆動力を入力するための第1入力ギヤ21と、第2遊星歯車機構52に駆動力を入力するための第2入力ギヤ25とを入力軸10上で互いに異なる位置に設けていても、第1、第2出力軸11,12上の各構成部分を軸方向に詰めて配置することができる。これにより、第1遊星歯車機構51と第2遊星歯車機構52を含む変速機1の軸方向寸法(全長)を短く抑えることが可能となる。
この点を詳しく説明すると、第1遊星歯車機構51と第2遊星歯車機構52を同じ向きに配置した従来構造の変速機では、第1入力ギヤ21と第2入力ギヤ25を軸方向で異なる位置にずらして配置すると、第2出力軸12上における第1入力ギヤ21及び第1ギヤ対23に対向する部分には、構成部品を配置できないので、その部分が第2出力軸12の軸方向におけるデッドスペース(ギヤ1枚分のデッドスペース)となってしまう。同様に、第1出力軸11上における第2入力ギヤ25及び第2ギヤ対27に対向する部分には、構成部品を配置できないので、その部分が第1出力軸11の軸方向におけるデッドスペースとなってしまう。したがって、これらデッドスペースの分、第1、第2出力軸11,12の軸方向寸法が大きくなってしまう。これに対して、本実施形態の変速機1では、第1遊星歯車機構51と第2遊星歯車機構52を軸方向で互い違いに配置したことで、第2出力軸12上における第1入力ギヤ21及び第1ギヤ対23に対向する箇所、及び第1出力軸11上における第2入力ギヤ25及び第2ギヤ対27に対向する箇所にも構成部品を配置することができるので、その分、第1、第2出力軸11,12の軸方向寸法を短く抑えることが可能となる。したがって、従来構造と比較して、第1遊星歯車機構51と第2遊星歯車機構52を含む変速機1の軸方向寸法(全長)を短く抑えることが可能となる。
また、この変速機1では、第1出力軸11上に配列した第1ギヤ対23、第1遊星歯車機構51、第1セレクト機構16は、第1出力軸11の軸方向に沿ってエンジンEGに近い側からこの順に配列されているのに対して、第2出力軸12上に配列した第2ギヤ対27、第2遊星歯車機構52、第2セレクト機構19は、第2出力軸12の軸方向に沿ってエンジンEGと反対側からこの順に配列されている。したがって、第1出力軸11上の第1ギヤ対23、第1遊星歯車機構51、第1セレクト機構16と、第2出力軸12上の第2ギヤ対27、第2遊星歯車機構52、第2セレクト機構19とは、軸方向における互いの配列順序が逆になっている。
すなわち、変速機1では、入力軸10の軸方向位置の一方に第1ギヤ対23が設けられており、入力軸10の軸方向位置の他方に第2ギヤ対27が設けられている。そして、第1出力軸11の軸方向位置の他方には、第1セレクト機構16が設けられており、第2出力軸12の軸方向位置の一方には、第2セレクト機構19が設けられている。これらによって、第1出力軸11上に設置した第1遊星歯車機構51と第2出力軸12上に設置した第2遊星歯車機構52とを互い違いに配置している。このことによっても、第1出力軸11上の第1ギヤ対23、第1遊星歯車機構51、第1セレクト機構16と、第2出力軸12上の第2ギヤ対27、第2遊星歯車機構52、第2セレクト機構19とを軸方向で互いに同位置に配置することができるので、その分、変速機1の軸方向寸法を短く抑えることが可能となる。
また、上記の構成によれば、軸方向の各位置で第1、第2遊星歯車機構51,52の各部が互い違いに配置され、かつ、軸方向の各位置で第1、第2遊星歯車機構51,52や第1、第2セレクト機構16,19や第1、第2ギヤ対23,27が互い違いに配置されているので、変速機1内の軸間距離を大きく確保しなくても、変速機1の内部での各駆動ギヤや第1、第2遊星歯車機構51,52などの干渉を回避することができる。したがって、変速機1の外径寸法の大型化を防ぐことができる。
また、上記の構成によれば、変速機1の軸方向寸法及び径方向寸法の小型化を図りながらも、第1遊星歯車機構51と第2遊星歯車機構52は、互いの向きを異ならせるだけで、共通の部品を用いた同一の構成を採用することが可能となる。また、第1、第2遊星歯車機構51,52だけでなく、第1、第2セレクト機構16,19や第1、第2ギヤ対23,27も互いの配列方向を異ならせるだけで、同一の構成を採用することが可能となる。したがって、変速機1の構成部品の共有化を図ることができるので、製造コストの低減が可能となる。
また、本実施形態の変速機1では、第1出力軸11上の第1遊星歯車機構51と第2出力軸12上の第2遊星歯車機構52とに対して駆動力を伝達する入力軸10は、エンジンEGからの駆動力が入力される一本の入力軸10のみで構成されており、変速機1は、当該一本の入力軸10を備えた平行軸式の自動変速機である。そのため、第1入力ギヤ21と第2入力ギヤ25は、いずれもこの入力軸10上に固定されている。したがって、本実施形態では、第1遊星歯車機構51と第2遊星歯車機構52を互いに逆向きに配置してなる本発明の構成を平行軸式の自動変速機に適用しているので、平行軸式の自動変速機における軸方向寸法及び径方向寸法の小型化を図ることができる。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の説明及び対応する図面においては、第1実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項については、第1実施形態と同じである。この点は、他の実施形態においても同様である。
図2は、第2実施形態にかかる変速機1−2を示すスケルトン図である。同図に示す変速機1−2は、外径側と内径側とに同軸配置した第1駆動軸10aと第2駆動軸10bとからなる二重構造の入力軸10を備えている。また、エンジンEGからの駆動力を第1駆動軸10aと第2駆動軸10bそれぞれに対して選択的に入力する第1クラッチ(奇数段クラッチ)38aと第2クラッチ(偶数段クラッチ)38bとからなるクラッチ機構38を備えている。この変速機1−2は、第1クラッチ38aと第2クラッチ38bの選択的な係合によるエンジンEGからの駆動力の切り換えと、第1、第2セレクト機構16,19の係合の切り換えとの組み合わせによって変速段の設定を行う変速機(デュアルクラッチ型変速機:DCT)である。
そして、この変速機1−2では、第1出力軸11上の第1遊星歯車機構51に駆動力を伝達するための第1入力ギヤ21は、第1駆動軸10a上に固定されており、第2出力軸12上の第2遊星歯車機構52に駆動力を伝達するための第2入力ギヤ25は、第2駆動軸10b上に固定されている。
図3は、本実施形態の変速機1−2で設定される各変速段での第1、第2クラッチ38a,38b、第1、第2セレクト機構16,19の係合・解除状態を示す一覧表である。同図の"shift"欄に示す"Drive"は、設定された変速段を示し、"Pre/S"は、各変速段における次の変速段への準備段を示している。また、"Clutch"欄に示す"Odd"は、奇数段クラッチである第1クラッチ38aを指しており、"Even"は、偶数段クラッチである第2クラッチ38bを指している。"Clutch"欄の丸印は、第1クラッチ38a又は第2クラッチ38bが係合していることを示す。また、"Sleeve"欄の"R","L⇔3","2⇔4"はそれぞれ、リバースセレクト機構32、第1セレクト機構16、第2セレクト機構19であり、"Sleeve"欄の各記号は、各セレクト機構32,16,19の係合する向き(図2に付した囲み番号に対応する向き)を示している。
本実施形態の変速機1−2においても、第1セレクト機構16の切り換えで1速段と3速段を設定し、第2セレクト機構19の切り換えで2速段と4速段を設定するように構成しており、ギヤ14、ギヤ15がそれぞれ1速ギヤ、3速ギヤとして機能し、ギヤ17、ギヤ18がそれぞれ2速ギヤ、4速ギヤとして機能する。したがって、第1クラッチ38aを係合させた状態で第1セレクト機構16を切り換えることで、1速段(L)と3速段を設定する一方、第2クラッチ38bを係合させた状態で第2セレクト機構19を切り換えることで、2速段と4速段を設定するようになっている。また、次の変速段へシフトする際には、第1、第2クラッチ38a,38bの係合を切り換える前に、あらかじめ第1、第2セレクト機構16,19でシフト先の変速段を準備段として設定しておき、その状態で、第1、第2クラッチ38a,38bの係合を切り換える。これにより、シフトチェンジを行う際のタイムラグを少なく抑えることができ、迅速かつスムーズなシフトチェンジが可能となる。
本実施形態の変速機1−2においても、第1出力軸11上の第1遊星歯車機構51と第2出力軸12上の第2遊星歯車機構52は、軸方向で互いに逆向きに配置されている。したがって、第1遊星歯車機構51と第2遊星歯車機構52の各部が軸方向で互い違いに配置されている。これにより、第1遊星歯車機構51に駆動力を入力するための第1入力ギヤ21と、第2遊星歯車機構52に駆動力を入力するための第2入力ギヤ25とを入力軸10上の異なる位置に設けていても、第2出力軸12上の第1入力ギヤ21に対向する箇所、及び第1出力軸11上の第2入力ギヤ25に対向する箇所にデッドスペースができることを回避できるので、第1、第2出力軸11,12上の各構成部品を軸方向に詰めて配置することができる。したがって、第1遊星歯車機構51と第2遊星歯車機構52を含む変速機1の軸方向寸法(全長)を短く抑えることが可能となる。
また、この変速機1−2では、第1出力軸11上に配列した第1ギヤ対23、第1遊星歯車機構51、第1セレクト機構16は、第1出力軸11の軸方向に沿ってエンジンEGに近い側からこの順に配列されているのに対して、第2出力軸12上に配列した第2ギヤ対27、第2遊星歯車機構52、第2セレクト機構19は、第2出力軸12の軸方向に沿ってエンジンEGと反対側からこの順に配列されている。したがって、第1出力軸11上の第1ギヤ対23、第1遊星歯車機構51、第1セレクト機構16と、第2出力軸12上の第2ギヤ対27、第2遊星歯車機構52、第2セレクト機構19とは、軸方向における互いの配列順序が逆になっている。このことによっても、第1、第2出力軸11,12上にデッドスペースができることを回避できるので、第1、第2出力軸11,12上の各構成部品を軸方向に詰めて配置することができる。したがって、変速機1−2の軸方向寸法を短く抑えることが可能となる。
また、本実施形態でも、軸方向の各位置で遊星歯車機構51,52の各部が互い違いに配置され、かつ、軸方向の各位置で第1、第2遊星歯車機構51、52や第1、第2セレクト機構16,19や第1、第2ギヤ対23,27が互い違いに配置されているので、変速機1内の軸間距離を大きく確保しなくても、変速機1の内部での各ギヤや第1、第2遊星歯車機構51,52などの干渉を回避することができる。したがって、変速機1の外径寸法の大型化を防ぐことができる。
また、本実施形態の変速機1−2では、第1出力軸11上に設けた第1遊星歯車機構51は、第1ギヤ対23から駆動力が入力されるサンギヤ(第2要素)S1と、第1セレクト機構16でケーシング2に固定可能なリングギヤ(第3要素)R1と、これらサンギヤS1およびリングギヤR1と噛合するピニオンギヤP1と、ピニオンギヤP1を回転自在に支持すると共に第1出力軸11に固定されたキャリア(第1要素)C1とで構成されている。したがって、サンギヤS1は入力部材であり、キャリアC1は出力部材である。また、第2出力軸12上に設けた第2遊星歯車機構52は、第2ギヤ対27から駆動力が入力されるサンギヤ(第5要素)S2と、第2セレクト機構19でケーシング2に固定可能なリングギヤ(第6要素)R2と、これらサンギヤS2およびリングギヤR2と噛合するピニオンギヤP2と、ピニオンギヤP2を回転自在に支持すると共に第2出力軸12に固定されたキャリア(第4要素)C2とで構成されている。したがって、サンギヤS2は入力部材であり、キャリアC2は出力部材である。この構成によれば、第2クラッチ38bを係合させ、かつ第2セレクト機構19をギヤ(4速ギヤ)18側に係合させる4速段の設定時には、第2遊星歯車機構52においてサンギヤS2とキャリアC2とリングギヤR2が一体に回転する。また、第1クラッチ38aを係合させ、かつ第1セレクト機構16をギヤ(3速ギヤ)15側に係合させる3速段の設定時には、第1遊星歯車機構51においてサンギヤS1とキャリアC1とリングギヤR1が一体に回転する。そのため、第1遊星歯車機構51及び第2遊星歯車機構52での摩擦抵抗を低く抑えることができるので、動力伝達効率を高めることができる。
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図4は、第3実施形態にかかる変速機1−3を示すスケルトン図である。同図に示す変速機1−3は、第2実施形態の変速機1−2と同じく前進4速段を設定可能なデュアルクラッチ型の変速機であるが、第2実施形態の変速機1−2と比較して、第1遊星歯車機構51及び第2遊星歯車機構52の構成要素が異なっている。
すなわち、本実施形態の変速機1−3では、第1出力軸11上に設けた第1遊星歯車機構51は、第1出力軸11に固定されたサンギヤ(第1要素)S1と、第1セレクト機構16でケーシング2に固定可能なリングギヤ(第3要素)R1と、これらサンギヤS1およびリングギヤR1と噛合するピニオンギヤP1と、ピニオンギヤP1を回転自在に支持すると共に第1ギヤ対23から駆動力が入力されるキャリア(第2要素)C1とで構成されている。したがって、キャリアC1は入力部材であり、サンギヤS1は出力部材である。また、第2出力軸12上に設けた第2遊星歯車機構52は、第2出力軸12に固定されたサンギヤ(第4要素)S2と、第2セレクト機構19でケーシング2に固定可能なリングギヤ(第6要素)R2と、これらサンギヤS2およびリングギヤR2と噛合するピニオンギヤP2と、ピニオンギヤP2を回転自在に支持すると共に第2ギヤ対27から駆動力が入力されるキャリア(第5要素)C2とで構成されている。したがって、キャリアC2は入力部材であり、サンギヤS2は出力部材である。
また、本実施形態の変速機1−3では、ギヤ14、ギヤ15がそれぞれ3速ギヤ、1速ギヤとして機能し、ギヤ17とギヤ18がそれぞれ4速ギヤ、2速ギヤとして機能する。したがって、第1セレクト機構16をギヤ14側に係合させることで3速段を設定し、ギヤ15側に係合させることで1速段を設定する。また、第2セレクト機構19をギヤ17側に係合させることで4速段を設定し、ギヤ18側に係合させることで2速段を設定する。
この構成によれば、第2クラッチ38bを係合させ、かつ第2セレクト機構19をギヤ18側に係合させる2速段の設定時には、第2遊星歯車機構52においてサンギヤS2とキャリアC2とリングギヤR2が一体に回転する。また、第1クラッチ38aを係合させ、かつ第1セレクト機構16をギヤ15側に係合させる1速段の設定時には、第1遊星歯車機構51においてサンギヤS1とキャリアC1とリングギヤR1が一体に回転する。そのため、第1遊星歯車機構51及び第2遊星歯車機構52での摩擦抵抗を低く抑えることができるので、動力伝達効率を高めることができる。それに加えて、サンギヤS1,S2を出力部材として第1出力軸11又は第2出力軸12に固定した本実施形態の変速機1−3では、サンギヤS1,S2が入力部材である第2実施形態の変速機1−2と比較して、第1遊星歯車機構51及び第2遊星歯車機構52の内部のスペースを有効に活用できるので、その分、スペース効率が有利になる。
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図5は、第4実施形態にかかる変速機1−4を示すスケルトン図である。同図に示す変速機1−4は、第2、第3実施形態の変速機1−2,1−3と同じく前進4速段を設定可能なデュアルクラッチ型の変速機であるが、第2、第3実施形態の変速機1−2,1−3と比較して、第1遊星歯車機構51及び第2遊星歯車機構52の構成要素が異なっている。
すなわち、本実施形態の変速機1−4では、第1出力軸11上に設けた第1遊星歯車機構51は、第1セレクト機構16でケーシング2に固定可能なサンギヤ(第3要素)S1と、第1入力ギヤ21から駆動力が入力されるリングギヤ(第2要素)R1と、これらサンギヤS1およびリングギヤR1と噛合するピニオンギヤP1と、ピニオンギヤP1を回転自在に支持すると共に第1出力軸11に固定されたキャリア(第1要素)C1とで構成されている。したがって、リングギヤR1は入力部材であり、キャリアC1は出力部材である。また、第2出力軸12上に設けた第2遊星歯車機構52は、第2セレクト機構19でケーシング2に固定可能なサンギヤ(第6要素)S2と、第2入力ギヤ25から駆動力が入力されるリングギヤ(第5要素)R2と、これらサンギヤS2およびリングギヤR2と噛合するピニオンギヤP2と、ピニオンギヤP2を回転自在に支持すると共に第2出力軸12に固定されたキャリア(第4要素)C2とで構成されている。したがって、リングギヤR2は入力部材であり、キャリアC2は出力部材である。
この構成によれば、3速段の設定時には、第1遊星歯車機構51においてサンギヤS1とキャリアC1とリングギヤR1が一体に回転し、4速段の設定時には、第2遊星歯車機構52においてサンギヤS2とキャリアC2とリングギヤR2が一体に回転する。そのため、第1遊星歯車機構51及び第2遊星歯車機構52での摩擦抵抗を低く抑えることができるので、動力伝達効率を高めることができる。それに加えて、本実施形態の変速機1−4では、サンギヤS1,S2が入力部材である第2実施形態の変速機1−2や、キャリアC1,C2が入力部材である第3実施形態の変速機1−3と比較して、第1、第2遊星歯車機構51,52の内部のスペースを最も有効に活用できるので、スペース効率が一番高くなる。
〔第5実施形態〕
次に、本発明の第5実施形態について説明する。図6は、第5実施形態にかかる変速機1−5を示すスケルトン図である。本実施形態の変速機1−5は、第2実施形態の変速機1−2において、さらに、第2駆動軸10b上に設けた1速用入力ギヤ41と、第2出力軸12上に設けた1速用出力ギヤ42からなる1速用ギヤ対43を追加している。これにより、前進5速段を設定可能となっている。1速用ギヤ対43を構成する1速用入力ギヤ41は、第2駆動軸10b上に固定されており、第2駆動軸10bに対して相対回転不能である。また、1速用出力ギヤ42は、第2出力軸12上に相対回転可能に設置されている。そして、リバースセレクト機構32は、第2出力軸12上に相対回転可能に設置したリバースドリブンギヤ30と1速用出力ギヤ42との間に配置されており、これらリバースドリブンギヤ30と1速用出力ギヤ42のいずれかを選択的に第2出力軸12に固定するように構成されている。
また、本実施形態の変速機1−5では、第1セレクト機構16の切り換えで2速段と4速段を設定し、第2セレクト機構19の切り換えで3速段と5速段を設定するように構成している。詳細には、ギヤ14、ギヤ15がそれぞれ2速ギヤ、4速ギヤとして機能し、ギヤ17とギヤ18がそれぞれ3速ギヤ、5速ギヤとして機能する。したがって、第1セレクト機構16をギヤ14側に係合させることで2速段を設定し、ギヤ15側に係合させることで4速段を設定する。また、第2セレクト機構19をギヤ17側に係合させることで3速段を設定し、ギヤ18側に係合させることで5速段を設定する。
図7は、本実施形態の変速機1−5の各変速段における第1、第2クラッチ38a,38b、第1、第2セレクト機構16,19及びリバースセレクト機構32の係合・解除状態を示す一覧表である。同図の"Clutch"欄に示す"Odd"は、奇数段クラッチである第2クラッチ38bを指し、"Even"は、偶数段クラッチである第1クラッチ38aを指している。なお、本実施形態の変速機1−5では、第2実施形態の変速機1−2と比較して、変速段の設定が異なっていることで、第1クラッチ38aと第2クラッチ38bとで奇数段クラッチと偶数段クラッチの関係が入れ替わっている。したがって、図7の"Sleeve"欄に示す"R⇔L","2⇔4","3⇔5"はそれぞれ、リバースセレクト機構32、第1セレクト機構16、第2セレクト機構19を指すものである。
本実施形態の変速機1−5では、第2クラッチ(奇数段クラッチ)38bを係合させた状態でリバースセレクト機構32を切り換えることで、1速段(L)と後進段(R)とを設定することができる。また、第2クラッチ38bを係合させた状態で第2セレクト機構19を切り換えることで、3速段と5速段とを設定するようになっている。また、第1クラッチ(偶数段クラッチ)38aを係合させた状態で第1セレクト機構16を切り換えることで、2速段と4速段とを設定するようになっている。また、次の変速段へシフトする際には、第1、第2クラッチ38a,38bの係合を切り換える前に、あらかじめ第1、第2セレクト機構16,19あるいはリバースセレクト機構32でシフト先の変速段を準備段として設定しておき、その状態で第1、第2クラッチ38a,38bの係合を切り換える。この点は、第2実施形態の変速機1−2と同じである。
本実施形態の変速機1−5では、第2出力軸12上に設置した1速用出力ギヤ42とリバースドリブンギヤ30とでシンクロメッシュ機構からなるリバースセレクト機構32を共有するように構成している。言い換えると、第2実施形態の変速機1−2の構成において、リバースセレクト機構32がリバースドリブンギヤ30と1速用出力ギヤ42とを選択的に結合可能となるように1速用ギヤ対43を追加している。したがって、リバースセレクト機構32の共用化によって、必要な部品点数やスペースを少なく抑えることができるので、変速機1−5の多段化を図りながらも、構成の簡素化及び軽量化を図ることができる。
〔第6実施形態〕
次に、本発明の第6実施形態について説明する。図8は、第6実施形態にかかる変速機1−6を示すスケルトン図である。同図に示す変速機1−6は、第5実施形態の変速機1−5と同じく前進5速段を設定可能なデュアルクラッチ型の変速機であるが、変速機1−5と比較して、前進1速段(L)と後進段(R)を設定するための機構が異なっている。
すなわち、本実施形態の変速機1−6は、1速用ギヤ対43に代えて、入力軸10上に設けた前後進切換用遊星歯車機構53を備えている。前後進切換用遊星歯車機構53は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構であって、第2駆動軸10bに固定されたサンギヤS3と、リバースセレクト機構32でケーシング2に対して固定可能なリングギヤR3と、サンギヤS3に噛合する第1ピニオンギヤP3aと、第1ピニオンギヤP3aおよびリングギヤR3と噛合する第2ピニオンギヤP3bと、第1ピニオンギヤP3a及び第2ピニオンギヤP3bを回転自在に支持するキャリアC3とからなる。したがって、サンギヤS3は入力部材であり、キャリアC3は出力部材である。そして、リバースセレクト機構32は、ケーシング2に固定されたギヤ(リバースギヤ)45と、キャリアC3に固定されたギヤ(1速ギヤ)46のいずれかに対して選択的にリングギヤR3を係合させるようになっている。また、キャリアC3に固定されて第2駆動軸10b上に設置された第3入力ギヤ47と、第2出力軸12に固定されて第3入力ギヤ47に噛合している第3出力ギヤ48とで構成される第3ギヤ対49が設けられている。
また、本実施形態の変速機1−6においても、第1セレクト機構16の切り換えで2速段と4速段を設定し、第2セレクト機構19の切り換えで3速段と5速段を設定するように構成している。詳細には、ギヤ14、ギヤ15がそれぞれ2速ギヤ、4速ギヤとして機能し、ギヤ17とギヤ18がそれぞれ3速ギヤ、5速ギヤとして機能する。したがって、第1セレクト機構16をギヤ14側に係合させることで2速段を設定し、ギヤ15側に係合させることで4速段を設定する。また、第2セレクト機構19をギヤ17側に係合させることで3速段を設定し、ギヤ18側に係合させることで5速段を設定する。
第5実施形態の変速機1−5では、1速用出力ギヤ42やリバースドリブンギヤ30からなる前後進切換用の機構を第2出力軸12上に設けていたのに対して、本実施形態の変速機1−6では、前後進切換用遊星歯車機構53など前後進切換用の機構のすべてを入力軸10上に設けている。そのため、第2出力軸12の軸長を短く抑えることができる。これにより、ファイナルドリブンギヤ37から大きな荷重がかかることで撓みが生じ易い第2出力軸12の剛性を効果的に高めることができる。
図9は、本実施形態の変速機1−6の各変速段における第1クラッチ(偶数段クラッチ)38a、第2クラッチ(奇数段クラッチ)38b、第1、第2セレクト機構16,19及びリバースセレクト機構32の係合・解除状態を示す一覧表である。また、図10(a)乃至(f)は、変速機1−6の各変速段における動力伝達経路を示すスケルトン図である。図10(a)乃至(f)では、変速機1−6の動力伝達経路を一点鎖線で示している。上記構成の変速機1−6では、第1、第2クラッチ38a,38bと第1、第2セレクト機構16,19及びリバースセレクト機構32を選択的に組み合わせて係合させることで、前進5速(Low〜5TH)および後進1速(Rvs)の変速段を設定することができる。以下、各変速段の設定について順に説明する。
後進段(Rvs)を設定にするには、第2クラッチ(奇数段クラッチ)38bを係合させ、かつリバースセレクト機構32をリバースギヤ45側に係合させる。これにより、前後進切換用遊星歯車機構53のリングギヤR3がケーシング2に固定された状態となる。したがって、図10(a)に示すように、エンジンEGからの駆動力は、第2駆動軸10b→前後進切換用遊星歯車機構53のサンギヤS3→キャリアC3→第3入力ギヤ47→第3出力ギヤ48→第2出力軸12→第2ファイナルドライブギヤ36→ファイナルドリブンギヤ37の経路で伝達される。この際、ダブルピニオン型の前後進切換用遊星歯車機構53で回転が逆転することで、第2駆動軸10bの回転に対して逆向きの回転が第2出力軸12へ出力される。
1速段(Low)を設定にするには、図10(b)に示すように、第2クラッチ(奇数段クラッチ)38bを係合させ、かつリバースセレクト機構32を1速ギヤ46側に係合させる。これにより、前後進切換用遊星歯車機構53のリングギヤR3が1速ギヤ46に固定された状態となる。したがって、エンジンEGからの駆動力は、第2駆動軸10b→前後進切換用遊星歯車機構53のサンギヤS3→リングギヤR3→第3入力ギヤ47→第3出力ギヤ48→第2出力軸12→第2ファイナルドライブギヤ36→ファイナルドリブンギヤ37の経路で伝達される。また、1速段(Low)の設定時に2速段への準備段を設定するには、上記の1速段の設定状態において、第1セレクト機構16をケーシング2に固定された2速ギヤ14側に係合させる。
2速段(2nd)を設定にするには、図10(c)に示すように、第1クラッチ(偶数段クラッチ)38aを係合させ、かつ第1セレクト機構16をケーシング2に固定されたギヤ14側(2速側)に係合させる。これにより、第1遊星歯車機構51のリングギヤR1がケーシング2に固定された状態となる。なお、1速段又は3速段から2速段に変速する際には、予め準備段が設定されているので、実際には、第1クラッチ38aを係合するだけで変速操作が行われる。この点は、下記の他の変速段の設定でも同様である。この状態で、エンジンEGからの駆動力は、第1駆動軸10a→第1入力ギヤ21→第1出力ギヤ22→第1遊星歯車機構51のサンギヤS1→キャリアC1→第1出力軸11→第1ファイナルドライブギヤ35→ファイナルドリブンギヤ37の経路で伝達される。また、2速段の設定時に3速段への準備段を設定するには、上記の2速段の設定状態において、第2セレクト機構19をケーシング2に固定された3速ギヤ17側に係合させる。一方、2速段の設定時に1速段への準備段を設定するには、上記の2速段の設定状態において、リバースセレクト機構32を1速ギヤ46側に係合させる。
3速段(3rd)を設定にするには、図10(d)に示すように、第2クラッチ(奇数段クラッチ)38bを係合させ、かつ第2セレクト機構19をケーシング2に固定されたギヤ17側(3速側)に係合させる。これにより、第2遊星歯車機構52のリングギヤR2がケーシング2に固定された状態となる。したがって、エンジンEGからの駆動力は、第2駆動軸10b→第2入力ギヤ25→第2出力ギヤ26→第2遊星歯車機構52のサンギヤS2→キャリアC2→第2出力軸12→第2ファイナルドライブギヤ36→ファイナルドリブンギヤ37の経路で伝達される。また、3速段の設定時に4速段への準備段を設定するには、上記の3速段の設定状態において、第1セレクト機構16を第1出力軸11に固定されたギヤ15側(4速側)に係合させる。一方、3速段の設定時に2速段への準備段を設定するには、上記の3速段の設定状態において、第1セレクト機構16をケーシング2に固定されたギヤ14側(2速側)に係合させる。
4速段(4th)を設定にするには、図10(e)に示すように、第1クラッチ(偶数段クラッチ)38aを係合させ、かつ第1セレクト機構16を第1出力軸11に固定されたギヤ15側(4速側)に係合させる。これにより、第1遊星歯車機構51のリングギヤR1が第1出力軸11に固定された状態となる。したがって、エンジンEGからの駆動力は、第1駆動軸10a→第1入力ギヤ21→第1出力ギヤ22→第1遊星歯車機構51のサンギヤS1→リングギヤR1→第1出力軸11→第1ファイナルドライブギヤ35→ファイナルドリブンギヤ37の経路で伝達される。また、4速段の設定時に5速段への準備段を設定するには、上記の4速段の設定状態において、第2セレクト機構19を第2出力軸12に固定された5速ギヤ18側に係合させる。一方、4速段の設定時に3速段への準備段を設定するには、上記の4速段の設定状態において、第2セレクト機構19をケーシング2に固定された3速ギヤ17側に係合させる。
5速段(5th)を設定にするには、図10(f)に示すように、第2クラッチ38b(奇数段クラッチ)を係合させ、かつ第2セレクト機構19を第2出力軸12に固定されたギヤ18側(5速側)に係合させる。これにより、第2遊星歯車機構52のリングギヤR2が第2出力軸12に固定された状態となる。したがって、エンジンEGからの駆動力は、第2駆動軸10b→第2入力ギヤ25→第2出力ギヤ26→第2遊星歯車機構52のサンギヤS2→リングギヤR2→5速ギヤ18→第2ファイナルドライブギヤ36→ファイナルドリブンギヤ37の経路で伝達される。また、5速段の設定時に4速段への準備段を設定するには、上記の5速段の設定状態において、第1セレクト機構16を第1出力軸11に固定されたギヤ15側(4速側)に係合させる。
〔第7実施形態〕
次に、本発明の第7実施形態について説明する。図11は、第7実施形態にかかる変速機1−7を示すスケルトン図である。同図に示す変速機1−7は、第6実施形態の変速機1−6と同じく前進5速段を設定可能なデュアルクラッチ型の変速機であって、入力軸10上に前後進切換用遊星歯車機構53を設けているものである。そして、第1、第2クラッチ38a,38bを介して第1、第2駆動軸10a,10bに入力される駆動力は、エンジンEGの駆動力である。その上でさらに、第2駆動軸10b上に設置したモータ60を備えている。モータ60は、第2駆動軸10bに固定したロータ61と、該ロータ61の外周側に設置したステータ62とで構成されている。当該モータ60を備えたことで、第2駆動軸10bに対してモータ60のアシストによる駆動力(トルク)を付与できる。なお、モータ60のロータ61は、前後進切換用遊星歯車機構53のリングギヤR3の外周側に設置されている。
本実施形態の変速機1−7によれば、エンジンEGの駆動力が第2駆動軸10bを介して出力側(ファイナルドリブンギヤ37)に伝達される1速段、3速段、5速段の設定時には、エンジンEGの駆動力をモータ60でアシストするモータアシスト走行が可能である。また、1速段、3速段、5速段の設定時に第2クラッチ(奇数段クラッチ)38bを解放すれば、モータ60の駆動力のみによるEV走行も可能である。また、エンジンEGの駆動力が第1駆動軸10aを介して出力側に伝達される2速段、4速段の設定時には、第2クラッチ(奇数段クラッチ)38bを解放したまま、第2セレクト機構19あるいはリバースセレクト機構32を1速段、3速段、5速段の設定に切り換えることで、モータ60の駆動力を第2駆動軸10b及び第2出力軸12を介して出力側(ファイナルドリブンギヤ37)に伝達することができる。したがって、第1駆動軸10aから第1出力軸11を介して出力側に伝達されるエンジンEGの駆動力をモータ60でアシストするモータアシストを行うことができる。また、第2出力軸12及び第2駆動軸10bを介して車輪からの制動力をモータ60に戻すこともできるので、モータ60による回生も可能である。
〔第8実施形態〕
次に、本発明の第8実施形態について説明する。図12は、第8実施形態にかかる変速機1−8を示すスケルトン図である。同図に示す変速機1−8は、第7実施形態の変速機1−7の構成に加えて、入力軸10と平行に設けた第3出力軸13と、該第3出力軸13上に設けられて第2遊星歯車機構52のサンギヤS2に固定された第2出力ギヤ26と噛合する第3出力ギヤ55とを備えている。そして、第3出力軸13の回転で駆動するエアコンプレッサ56を備えている。エアコンプレッサ56は、車室内の冷房などを行うためのA/C(エアコン)用のエアコンプレッサである。また、第3出力軸13とエアコンプレッサ56との間には、エアコンプレッサ56に対する第3出力軸13からの回転伝達の有無を切り換えるためのクラッチ機構57が設置されている。
本実施形態の変速機1−8によれば、エンジンEGを停止しているアイドリングストップ中や、第2クラッチ(奇数段クラッチ)38bを開放してモータ60の駆動力のみで走行するEV走行中でも、モータ60の駆動力でエアコンプレッサ56を駆動できる。したがって、車室内の冷房などを行うことができる。なお、上記では、エアコンプレッサ56を例示したが、第3出力軸13には、該第3出力軸13で駆動する他の種類の補機(オイルポンプなど)を取り付けることも可能である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記各実施形態に示す変速機で設定する変速段はいずれも一例であり、各変速機による変速段は、他の設定であってもよい。