JP4280817B2 - 非接触式負荷感応型自動変速機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、負荷に感応して自動的に変速を行う負荷感応型自動変速機に関し、特に、負荷の感応及び変速を磁石を用いて非接触で行うことができるようにした非接触式負荷感応型自動変速機に関する。
【0002】
【従来の技術】
機械システムの多くにおいては状況に応じて負荷の性質が変動するため、高速低トルク負荷及び低速高トルク負荷の双方を駆動する必要がある。これに対して一般にはアクチュエータと負荷の間に変速機を挿入し、負荷状態に応じて最適な減速比を選択して、負荷状態は変動してもモータ等のアクチュエータを常に高効率の条件で使用できるように駆動系を構成している。このことにより、変速機を用いない場合よりも必要最小限の出力パワーを備える低出力で小型軽量のアクチュエータを用いて、変動する負荷を高効率で安全に駆動することが可能となる。
【0003】
しかしながら、自動車や産業機械のために開発された従来の変速機は、変速動作を行うために補助的なアクチュエータ、センサ、電子回路、電源等の外部付属機器を必要とする。このため変速機が大型化するとともに複雑な構成になり、現在の技術ではロボティクス・メカトロニクス機器のような中小規模の機械システムに変速機を簡単に実現することはできない。これを実現するための一つの方法は負荷に感応して減速比を変更する機能を変速機自体に付与し、外部機器を必要とせずに単体で変速動作が可能な負荷感応自動変速機を構成することである。
【0004】
このような課題を解決するため、本発明者等は先に、永久磁石を利用した切換機構と機械的なクラッチを用いて、変速機自体が負荷トルクに感応して自動的に減速比を切換える機能を実現する負荷感応自動変速機を提案している(特許文献1)。この技術により次の特徴を有する負荷感応自動変速機を構成することができた。
1.外部付属機器が不要で小型軽量であって、構成簡素化が可能。
2.変速機内部の機械損失が少ない(効率90%)。
3.遠心クラッチを用いた変速機と異なり、低速のアクチュエータ(人力など)にも適用が可能。
4.特殊な部品・加工が不要。
5.正転/逆転の両方向に対して同様に動作が可能。
6.必要ならば、正転/逆転時の切換負荷トルクをそれぞれ異なる値に設定が可能。
7.入力軸を同軸上に配置することが可能。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−31165号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等によって提案された上記のような技術においては、機械的なクラッチを使用している。そのため、下記のような課題を生じることとなる。
1.クラッチ板等が必要となり、その分だけ構造が複雑化し、大型化する。
2.クラッチ部分で摩耗を生じる。
3.クラッチ隙間に関する保守管理が必要となる。
4.クラッチの接離時に変速ショックや騒音を発生しやすい。
5.過負荷時にもクラッチが滑りにくいため、機構やアクチュエータに過大負荷がかかることもある。したがって、本発明は機械的なクラッチを用いることなく磁気クラッチを用い、更にこの磁気クラッチを負荷に応じて磁気的にその磁気クラッチの切換作動を行うことができるようにした、非接触型負荷感応自動変速機を提供することを主たる目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による非接触型負荷感応自動変速機は、上記課題を解決するため、減速機からの複数の入力段と、前記複数の入力段によって各々回転可能に各入力段に連結した複数の回転体(13,15)と、前記複数の回転体に対して、回転軸の軸線方向位置を互いにずらして固定した磁性体(12、14)と、各磁性体に間隙を介して対向可能な磁気クラッチ用磁石を備え、軸線方向に移動可能に設けた速度切換部材(16)と、出力側に作用する負荷に応じて前記速度切換部材(16)と回転方向の相対位置が変化し、該回転方向の相対位置の変化により前記速度切換部材を軸線方向に移動する回転−スラスト変換機構(5)とを備え、前記回転−スラスト変換機構(5)は、前記速度切換部材(16)に設けた磁石(M1)と出力側部材に設けた磁石(MOA、MOA’)との間の反発と吸引作用を、前記負荷に応じた回転方向の相対位置の変化によって切り換え、該切換により速度切換部材(16)を軸線方向に移動して磁気クラッチ用磁石(17)を前記複数の回転体の磁性体(12,14)のいずれかに対向させることにより、出力段の速度を変えるものであって、前記回転−スラスト変換機構(5)の出力段側部材に設ける複数の磁石(MOA,MOA’)は、出力側に作用する負荷が低いとき速度切換部材に設けた磁石(M1)を回転方向において両側から挟むように、且つ該磁石(M1)と軸線方向に間隙を介して互いに反発するように対向する位置に設け、出力段側の負荷の上昇により前記の互いに反発する位置から出力段側部材に設けた一つの磁石に吸引されるように設け、前記出力段側部材には、前記速度切換部材(16)の磁石(M1)を吸引する前記複数の磁石(MOA,MOA’)に近接して、前記吸引された速度切換部材(16)の磁石(M1)を該吸引位置から離す方向の磁力を作用させる他の磁石(MOB,MOB’)を備えるようにしたものである。
【0008】
また、本発明の他の非接触型負荷感応自動変速機は、前記非接触型負荷感応自動変速機において、前記減速機からの複数の入力段を3段にしたものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
非接触型負荷感応自動変速機の基本構成を図1(b)に示す。本変速機はクラッチを用いた2段変速機であり、次の2モードで作動する。
1.低減速(高速低トルク)モード
入力軸を直接出力軸に接続(図中上側の径路)
2.高減速(低速高トルク)モード
入力軸を前段減速機を経由して出力軸に接続(下側の径路)
先に出願した負荷感応変速機では機械的なクラッチを介して動力を伝達するのに対して、この変速機では非接触磁気クラッチを使用し、動力伝達及び変速動作の双方を磁気的な非接触機構により実現している。
【0012】
[磁気クラッチ機構について]
本発明による変速機の磁気クラッチ機構の基本原理を図3に示している。同図において、周囲に複数の突出部を備えた永久磁石からなる中間円板Iを備え、この中間円板Iは後述する回転−スラスト変換機構によって軸方向に移動し、内側に突起を備えた2列に並べられている磁性体からなるリング状の低減速及び高減速入力円板A、Bのいずれかの内部に対向するように入り込み、いずれかの入力円板と磁気結合するようになっている。
【0013】
それにより、図示されない入力側の減速機において、減速の少ない高速段と、減速の大きな低速段の各々を、いずれかの入力円板A、Bに回転可能に連結することによって、中間円板側に連結される出力軸に対して、磁気的な結合によって減速機の高速段と低速段のいずれかに切り換えることができるようにしている。なお、変速段が3段の変速機を用いるときには、図3(ii)に2点鎖線で示すように、更に入力円板Cを隣接して配置することもできる。これらの入力円板は、本発明における、減速機からの複数の入力段によって各々回転可能に各入力段に連結した複数の回転体、ということができ、また、中間円板は各入力円板に対して選択的に対向して出力速度を切り換える、速度切換部材ということができる。
【0014】
このような磁気的な結合手段を実際に使用する際には種々の手法によって実施することができるが、例えば図2に示すような磁気クラッチ機構を用いることもできる。図2に示す磁気クラッチ機構11においては、内周方向に開口する断面コ字型の磁性体からなる外側ヨーク12を外側リング13に複数固定し、また、その外側リング13の内周側には、前記外側ヨーク12に対向して、且つ互いに回転軸の軸線方向に位置をずらして開口している、断面コ字型の磁性体からなる内側ヨーク14を固定した内側円板15を配置している。
【0015】
各外側ヨーク12と内側ヨーク14の間には、中間円板16に固定した永久磁石17が各ヨークに対向可能に配置されており、永久磁石17の磁性体からなる図中平行板状の中間ヨーク18は、図2(a)に示す状態においては内側ヨーク14に対向し、前記図3に示す基本原理と同様に中間円板16が軸線方向に図中右側に移動するとき、図2(b)に示すように外側ヨーク12に対向するように構成している。
【0016】
外側ヨーク12を固定した外側リング13と、内側ヨーク14を固定した内側円板15は各々、入力段に設けた減速機の低速側、或いはその減速機の高速側に接続する。その接続に際しては種々の手法で接続することができるが、例えば図1に示すように、減速機1において入力軸2とともに回転する中心歯車3に対して遊星歯車式に結合する減速歯車4を配置し、その減速歯車4に外側リング13を連結し、中心歯車3の出力軸に直接内側円板15を固定する。一方、中間円板16はこの中間円板16を軸線方向に移動する、後述するような回転−スラスト変換機構5に接続し、中間円板16の回転はこの回転−スラスト変換機構5を介して出力軸から外部に対して出力するようにしている。
【0017】
上記のような構成により、この磁気クラッチ機構11においては、これらの永久磁石17で励磁される平行板状の中間ヨーク18と、その外周側或いは内周側のコ字状の各ヨークとが対向すると、ギャップを介して磁気回路を形成し、両者間に保持力が発生する。この保持力によりいずれかの入力円板から中間円板16へトルクを伝達することができ、中間円板16が軸方向にスライドすることによって、図2(a)に示した中間円板16を低減速の入力円板である内側円板15と接続し、或いは同図(b)に示した中間円板16を高減速の入力円板である外側リング13のいずれに接続するかを各種手段により任意に切換えることができるようにしている。
【0018】
[回転−スラスト変換機構について]
本発明による変速機は負荷トルクに応じて前記のような磁気クラッチ機構を切換えるために、図4に示す回転−スラスト変換機構5を内蔵する。この回転−スラスト変換機構5は前述の中間円板16及び変速機の出力軸に接続した出力円板20から構成される。両円板は軸回りに相対回転が可能であり、且つ両円板は磁気的なバネ要素等により結合し、あるは両者間に例えば引っ張りバネ等のスプリングを設け、両者間に所定トルク以上の力がかかると相対位置が移動し、そのトルクが低下すると元に戻すように両者を結合する。
【0019】
中間円板16には永久磁石M1を、出力円板20には中間円板移動用磁石MOA、MOA’と、この中間円板移動用磁石の両側において中間円板に戻し力を与える磁気バネ用磁石MOB、MOB’をそれぞれ配置する。最初に負荷トルクが小さい場合は、各磁石は図4(a)に示す位置関係にあり、中間円板16に配置した磁石M1及び出力円板20に配置した磁石MOA、MOA’の同極同士が対向して反発する。このため中間円板16を出力円板20から引き離す方向にスラストが発生し、中間円板16は軸方向にスライドして磁気クラッチ11を図2(a)に示すように低減速入力円板15側に接続する。その結果、変速機は低減速モードで動作する。
【0020】
この時、図2に示す中間円板16の永久磁石17の磁力が作用する平行状のヨーク18が内側ヨーク14とそれぞれ対向し、最も相互に吸着力が大きい位置に保持され、したがって相互間に所定以上の軸線方向に移動する力が作用するまではこの位置を保持することにより、磁気的なバネ要素として作用する。またこのとき、中間円板の磁石M1のS極は、磁気バネ用磁石MOBのS極に対向し、磁石M1のN極は磁気バネ用磁石MOB’のN極に対向するため、前記のような中間円板移動用磁石MOA、MOA’と反発している状態においては、磁石M1が両側から受ける反発力による磁気的バネ作用によって所定位置が保持される。なお、前記のように、両者間を実際に引っ張りバネ等のスプリングによって連結し、所定位置に保持するように構成しても良い。
【0021】
次に負荷トルクが増大すると、中間円板16と出力円板20を結合する前記のようなバネ要素において捩れ力が生じ、その力が前記磁気バネやスプリングの保持力を越えると、両円板が相対回転する。その結果磁石の位置関係が図4(a)に示す状態から図4(b)に示す状態のように変化し、磁石M1が図示の例においては中間円板移動用磁石MOA側に移動し、両磁石の異極同士が対向するため、相互に吸引し、中間円板16に作用するスラスト方向が反転する。その結果、図2に示す中間円板16の永久磁石17で励磁されている中間ヨーク18は、図2(b)に示すように高減速入力円板である外側リング13の外側ヨーク12と対向する位置にスライドし、両ヨークによって磁気結合するので変速機は高減速モードに遷移して、高負荷に対応した回転を行う。
【0022】
またこの時、図4(b)に示すように、磁石M1、磁気バネ用磁石MOBの同極が接近して反発し、円板の前記のような相対回転に対して復元モーメントを発生する磁気的なバネ要素として働く。このため負荷トルクが減少すると回転−スラスト変換機構5は図4(a)の状態に復帰し、変速機は再び低減速モードに遷移する。この復元力は、このような磁気バネのほか、前記のようなスプリングによって与えることができる。
【0023】
上記実施例においては入力側に設けた減速機が低減速段と高減速段の出力を備えているとき、そのいずれかに連結するようにし、2段階の変速を行わせるようにしたものであるが、減速機が3段階の変速を行う出力部分を備えているときには、磁気クラッチ機構を図3に示す原理図の2点鎖線で示すように入力円板を3列にし、また、図2に示す例においては外側ヨーク或いは内側ヨークを隣設することによって対応できる。
【0024】
その際の回転−スラスト変換機構は、例えば図5の分解図に示すように、軸34の外周に多数の永久磁石を固定したロータ31と、前記中間円板としてのスライダ32からなる変換機構33によって作動させることができる。図5にはロータ31とスライダ32を分解した状態を示しており、図示実施例においてはロータ31の軸34における図中左右の端部側に永久磁石群が配置され、各永久磁石群は互いに周方向の位置を90度ずらした状態で、ほぼ同様の構成により固定されている。
【0025】
図5におけるロータ31の図中左側の磁石群においては、図中左端側に磁石M11とこれに隣接する磁石M12からなる磁石対が固定され、同図(c)に示すように、これと180度ずれて軸34の反対側に同様の磁石M13と磁石M14からなる磁石対が固定されている。各磁石対間には、これらの磁石よりも図中軸線方向右側に位置するように、また互いに180度ずれて磁石M21と磁石M22が固定されている。
【0026】
同様に、ロータ31の図中右側の磁石群においては、図中右端側に磁石M41とこれに隣接する磁石M42からなる磁石対が固定され、ロータ31の反対側に同様の磁石M43と磁石M44からなる磁石対が固定されている。また、各磁石間には、これらの磁石よりも図中左側に位置するように、また互いに180度ずれて磁石M31と磁石M32が固定されている。これらの図中右側の磁石群は、例えば磁石M31が左側の磁石群における一対の磁石M11と磁石M12間に位置するように配置している。
【0027】
前記のロータ31に固定する各磁石はロータの軸線方向に全て平行で、且つS極とN極が軸線方向に対向する位置に形成されている。また、全ての磁石の極の方向は一致しており、図示の例においてはハッチング付与側がN極を示している。
【0028】
一方、前記中間円板としてのスライダ32は、図5(b)に示すようにリング35の内周に互いに180度離れた位置に磁石M51とM52を固定しており、図6(a)にその一部を切除した状態で示すように、その組立状態においてはロータ31の左右の磁石群の間に配置される。各磁石M51及びM52は前記ロータ31に固定される各磁石と同様に、ロータの軸線方向に平行に配置されるが、各磁石の極性はロータ上の磁石とは反対向きにしている。
【0029】
上記のような構成からなる回転−スラスト変換機構の作動は図6(a)〜(c)、図7(a)〜(c)、図8(a)〜(c)に順に示している。図6(a)は低減速時を示し、スライダ32の磁石M51はロータの磁石M11とM12との間に位置し、ここで中間円板としてのスライダ32に連結された前記図4(a)(ii)の磁石M1と同様に同じ極性の磁石間に位置する。この時スライダ32の他の磁石M52も同様の配置となっている。そのため、前記のような磁気クラッチ機構の同一位置を保持する磁気バネ作用によってこの位置が保持されてる。スライダ32と軸34とはスプリングにより連結し、図4(a)に示す状態を最終安定状態とする。
【0030】
この状態から出力軸が連結するロータ31の負荷が増大し、その負荷によるトルクが前記スプリングの戻し力及び磁気バネの力よりも大きくなると、図6(b)に示すようにロータ31が回転し、磁石M12の先端部分がスライダ32の磁石M51の先端部分に移動すると、両磁極は同極が間隙を介して対向するため、その反発力によってスライダ32は図6(c)に示すように図中右側に軸線方向に移動する。この作用はスライダ32の他の磁石M52においても同様に作用する。この移動の過程で磁気クラッチ機構の次の段の入力円板のヨークに中間円板としてのスライダと連結した中間磁石が対向し、前記と同様の磁気バネ力によってこの位置で安定して回転可能となる。この時の入力円板は先の入力円板よりも変速機によって減速され、中間負荷トルクに対応している。また、このスライダ32の位置はロータ31の左右の磁石群の間に位置している。
【0031】
上記の状態から更に負荷が増大し、ロータ31に作用する負荷トルクが前記スプリングの戻し力及び磁気バネの力よりも更に大きくなると、ロータ31が更に回転し、図7(a)に示すようにロータ31の磁石M21の先端部分がスライダ32の磁石M51の部分に移動すると、両磁極は同極が間隙を介して対向するため、その反発力によってスライダ32は図7(b)に示すように図中右側に軸線方向に移動する。
【0032】
この移動の過程で磁気クラッチ機構の次の段の入力円板のヨークにスライダ32に連結した中間磁石が対向し、前記と同様の磁気バネ力によってこの位置で安定して回転可能となる。この時の入力円板は先の入力円板よりも変速機によって更に減速され、高負荷トルクに対応している。また、スライダ32の磁石M51の位置は、ロータ31の図中右側の磁石群における磁石M41と磁石M42の各先端部の間に位置し、その時の作用は前記図6(a)とほぼ同様である。
【0033】
ここで負荷トルクが減少すると、図7(c)に示すようにロータがスプリングによって戻され、前記とは逆に回転する。そのためロータ31の磁石M41の先端がスライダ32の磁石M51の先端に移動する。両磁石は同極が対向するため互いに反発し、スライダ32は図8(a)に示す位置、即ち前記図6(c)に示す位置で前記と同様に安定して回転する。ここでは先より増速し、中間トルクに対応して回転する。
【0034】
更に負荷トルクが減少するとロータ31は更に戻され、図8(b)に示すようにロータ31の磁石M31の先端がスライダ32の磁石51の先端に回転すると、両磁石は同極が対向するため互いに反発し、図8(c)に示す位置に移動し、ここでは変速機の高速段に結合し、低負荷トルクに対応して回転する。この位置は前記図6(a)と同じ位置になり、初期位置に戻る。
【0035】
このように、本発明においては、負荷トルクに合わせて2段の自動変速を行う以外に3段の自動変速を行うことができ、よりきめの細かな負荷トルクに適合した変速制御を行うことができる。更に必用に応じて上記と同様の手法により、より多段の自動変速を行わせることも可能となる。
【0036】
本発明による上記のような機構は、負荷トルクが増減したときスライダを次の平衡位置まで押し出す働きのみをもち、一旦スライダが移動した後は、磁気クラッチ間の吸引力により、磁気回路はポテンシャルエネルギが極小となる準安定状態で平衡させることができる。また、正転と逆転の両方向に対して、同様の切換動作が可能となる。
【0037】
また、必要ならば磁石の強度・配置を変更することにより、正転と逆転で異なる切換特性を設定することも可能となる。更に、負荷トルク増大時と減少時でスライダにスラストが作用し始めるトルクが異なるため、切換時のヒステリシス特性を確実に実現することができる。また、前記実施例においてはロータやスライダに永久磁石を取り付けた例を示したが、一体部材に着磁することにより、より簡略化、小型軽量化が可能となる。
【0038】
【発明の効果】
本発明による非接触型負荷感応自動変速機は上記のような変速機構による変速動力伝達、及び回転−スラスト変換機構による変速動作の双方を磁気を用いた非接触機構により実現することができる。その結果、変速機内部での機械的な接触は軸受部分のみに限定されるため、以下の特徴を有する非接触型負荷感応自動変速機を実現することができる。
1.クラッチ摩擦材は不要なため、その摩耗問題を解消することができる。
2.クラッチ隙間の保守管理が不要となる。
3.磁気的結合のバネ効果による変速ショック・騒音の低減が可能となる。
4.過負荷時は磁気クラッチが滑り、アクチュエータ・機構を保護することができる。
【0039】
また、本発明による変速機においては、円周上に磁石とヨークを配置して対向する磁気クラッチを用いているので、ヒステリシス磁気カップリングを用いたものと比較し以下の利点がある。
1.一般的なヨーク材質を使用可能となる。
2.磁石のサイズ・配置数を増すことにより、容易に伝達トルクを増大することが可能となる。
3.3段以上の多段変速機に容易に拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例の作動原理を示す概要図である。
【図2】本発明で用いる磁気クラッチ機構の実施例を示す図であり、(a)は第1の負荷トルク状態、(b)は第2の負荷トルクの状態を示し、各々(i)は断面を示す斜視図、(ii)は一部断面拡大図である。
【図3】本発明で用いる磁気クラッチ機構の基本原理を示す図であり、(a)は第1の負荷トルク状態、(b)は第2の負荷トルクの状態を示す図であり、各々(i)は斜視図、(ii)はX−X部分の断面図である。
【図4】本発明で用いる回転−スラスト変換機構の実施例を示す図であり、(a)は第1の負荷トルク状態、(b)は第2の負荷トルクの状態を示し、各々(i)は斜視図、(ii)は円周方向Y−Y部分の断面図である。
【図5】本発明で用いる回転−スラスト変換機構において3段の切換を行う実施例の分解状態を示す図であり、(a)はロータ(b)はスライダを示し、(c)は(a)のZ−Z部分の断面図である。
【図6】同実施例の作動を順に示す図であり、(a)は低減速中立位置、(b)は負荷トルクの増大による低減速中立位置から2段目へ切り換える過程の位置、(c)は負荷トルクの増大により2段目に切り換えた位置を示す。
【図7】同実施例の作動を順に示す図であり、(a)は更に負荷トルクの増大により2段目から3段目へ切り換える過程の位置、(b)は3段目に切り換えた位置、(c)は負荷トルクの減少による3段目から2段目へ切り換える過程の位置を示す。
【図8】同実施例の作動を順に示す図であり、(a)は負荷トルクの減少により2段目に切り換えた位置、(b)は更に負荷トルクの減少により低減速中立位置へ切り換える過程の位置、(c)は負荷トルクの減少により低減速中立位置に切り換えた位置を示す。
【符号の説明】
1 減速機
2 入力軸
3 中心歯車
4 減速歯車
5 回転−スラスト変換機構
11 クラッチ機構
12 外側ヨーク
13 外側リング
14 内側ヨーク
15 内側円板
16 中間円板
17 永久磁石
18 中間ヨーク
20 出力円板
Claims (1)
- 減速機からの複数の入力段と、
前記複数の入力段によって各々回転可能に各入力段に連結した複数の回転体(13,15)と、
前記複数の回転体に対して、回転軸の軸線方向位置を互いにずらして固定した磁性体(12、14)と、
各磁性体に間隙を介して対向可能な磁気クラッチ用磁石を備え、軸線方向に移動可能に設けた速度切換部材(16)と、
出力側に作用する負荷に応じて前記速度切換部材(16)と回転方向の相対位置が変化し、該回転方向の相対位置の変化により前記速度切換部材を軸線方向に移動する回転−スラスト変換機構(5)とを備え、
前記回転−スラスト変換機構(5)は、前記速度切換部材(16)に設けた磁石(M1)と出力側部材に設けた磁石(MOA、MOA’)との間の反発と吸引作用を、前記負荷に応じた回転方向の相対位置の変化によって切り換え、該切換により速度切換部材(16)を軸線方向に移動して磁気クラッチ用磁石(17)を前記複数の回転体の磁性体(12,14)のいずれかに対向させることにより、出力段の速度を変えるものであって、
前記回転−スラスト変換機構(5)の出力段側部材に設ける複数の磁石(MOA,MOA’)は、出力側に作用する負荷が低いとき速度切換部材に設けた磁石(M1)を回転方向において両側から挟むように、且つ該磁石(M1)と軸線方向に間隙を介して互いに反発するように対向する位置に設け、出力段側の負荷の上昇により前記の互いに反発する位置から出力段側部材に設けた一つの磁石に吸引されるように設け、
前記出力段側部材には、前記速度切換部材(16)の磁石(M1)を吸引する前記複数の磁石(MOA,MOA’)に近接して、前記吸引された速度切換部材(16)の磁石(M1)を該吸引位置から離す方向の磁力を作用させる他の磁石(MOB,MOB’)を備えたことを特徴とする非接触式負荷感応型自動変速機。
Priority Applications (1)
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JP2003144826A JP4280817B2 (ja) | 2003-05-22 | 2003-05-22 | 非接触式負荷感応型自動変速機 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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