JP4446050B2 - 把持装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内視鏡観察下で病変部を切除する際に、磁界又は重力によって誘導可能な誘導手段を用いて患者の病変部を把持するための把持装置に関する。
従来の把持装置としては図10、11に示すような把持装置300がある。この把持装置300は、クリップ(把持部材)310、連結部材320、及び磁気誘導手段(磁気アンカー)330を有している。
図10に示すように、クリップ310は、弾性を有する金属部材を屈曲させて連結基部311、腕部312、313、及び把持部314、315を構成したものである。クリップ310は、外部から力を加えない自然状態においてはその弾性によって把持部314と把持部315とが離間しており、腕部312と腕部313を互いに近づくように付勢すると、把持部314と把持部315とが互いに接近して、その間に物体を把持することができる。
連結基部311には、クリップ310と磁気誘導手段330を連結するための柔軟性を有する連結部材320が挿通されている。連結部材320の端部に連結される磁気誘導手段330は強磁性体からなり、磁気誘導部材を用いることによって吸引制御可能である。クリップ310に結合された連結部材320は、クリップ受容管340内にいったん導入されてから、磁気誘導手段330に結合されている。このように連結部材320を介してクリップ310と磁気誘導手段330とを連結してあるため、磁気誘導手段330を外部磁界によって吸引制御することによって、クリップ310を所望の方向に牽引することができる。
互いに連結されたクリップ310、連結部材320、磁気誘導手段330及びクリップ受容管340は、内部にこれらを配置した状態の中空円筒状の導入管370を用いて患者(対象物)体内に導入される。この導入管370の内部にクリップ310を挿入すると腕部312、313が内壁370aに当接する。このため、腕部312と腕部313が互いに接近するような付勢力が働いて把持部314と把持部315とが自然状態よりも接近した状態となる。
クリップ310、連結部材320及び磁気誘導手段330は、挿入コイル371及び操作ワイヤ380を操作することによって、導入管370内部から患者体内へ導出される。挿入コイル371は内部にクリップ受容管340が嵌合される規制管372に固定され、操作ワイヤ380は、フック部381を介して、連結基部311に掛着された牽引部材382に連結されている。よって、挿入コイル371を操作することによりクリップ受容管340を導入管370に対して相対移動させることができるとともに、操作ワイヤ380を操作することによってクリップ310をクリップ受容管340に対して相対移動させることができる。クリップ受容管340に対するクリップ310の相対移動によって連結基部311をクリップ受容管340内に引き込んでいくと、連結基部311がクリップ受容管340の内壁に当接することによって腕部312と腕部313が互いに接近する付勢力が働き、把持部314と把持部315を閉じていくことができ、これにより、患者101の病変部102を把持することができる。
特開2004−105247号公報 特開2005−192735号公報
把持装置300は、患者体内の狭い組織内に導入されることもあるため、誘導手段による牽引力を小さくすることなく、全長の短い小型のものとすることが望まれる。
これに対して、上述の把持装置300は、患者体内への導入時に、導入管370内において、連結基部311に連結された連結部材320をいったんクリップ受容管340内に挿通させてから、磁気誘導手段330に連結する構成となっているため、連結部材320が長くなってしまう。さらに、磁気誘導手段330による牽引力は、その体積に依存するため、磁気誘導手段330全体を導入管370に挿通できるほど小型化することは困難であって、把持装置300を患者体内へ導入するとき、磁気誘導手段330は導入管370の先端で外部に露出した状態で保持される。よって、患者体内導入時の位置が固定された磁気誘導手段330に連結され、かつ、クリップ受容管340を挿通させて折り返す構成では、連結部材320は長くならざるを得ず、把持装置300により病変部を把持し、持ち上げることを十分行うことが困難となる場合が考えられる。
上記課題を解決するために、本発明の把持装置は、対象物内部の対象部位を把持する把持部材と、磁力または重力によって移動し、前記把持部材を牽引する誘導手段と、前記把持部材と前記誘導手段とを連結する連結部材と、前記把持部材に結合された牽引分離部材と、前記把持部材の後部を前部に受容し、後端部が開放されたスリットを有する中空円筒状の把持部受容管と、を備え、前記誘導手段は、筒状の導入管の先端部を内部に収容する収容部を備え、前記把持部材を前記把持部材受容管の前方に保持したとき、前記牽引分離部材は前記把持部材受容管の後端部から外部に導かれ、前記連結部材は前記スリットを介して前記把持部材受容管の外部に導かれ、前記誘導手段は前記把持部材の前方に位置するように、それぞれ配置され、前記誘導手段に連結された前記把持部材及び前記連結部材を前記導入管内に収容し、前記先端部を前記収容部内に収容した状態で、内視鏡の挿入部内に挿通されて前記対象物内部に導入されることを特徴としている。
上記導入管は、先端部に硬性の補強部材を備えていることが好ましく、この補強部材は、先端部の内周又は外周に固定される筒状部材であるとよい。また、この補強部材は、先端部の前端から延設されてなる筒状部材とすることもできる。
上記収容部は、誘導手段の後端部から内部へ向けて凹設した凹部とすることができ、この収容部には、導入管の外径よりも小さく、かつ、把持部材の幅よりも大きな幅を備えた逃げ部が連設されているとよい。また、上記把持装置が対象物内部に導入されるとき、把持部材は、少なくとも先端部分が収容部内に入っていることが好ましい。
上記誘導手段は磁性体からなり外部磁界により動力を与えられるものがよい。
本発明によると、誘導手段に導入管の先端部を収容する収容部を備えたことにより、誘導手段の体積を小さくすることがないため十分な牽引力を実現することができ、さらに、連結部材を短くすることのできる把持装置を提供することができる。
以下、本発明にかかる実施形態を図面を参照しつつ詳しく説明する。
<第1実施形態>(図1〜図7)
以下、本発明にかかる第1実施形態を図面を参照しつつ詳しく説明する。図1に示すように、第1実施形態にかかる把持装置1は、クリップ(把持部材)10、連結部材20、磁気誘導手段誘導手段)30を有する。以下の説明においては、図1の紙面左側(磁気誘導手段30側)を前方、右側(クリップ受容管40側)を後方とする。第1実施形態では、クリップ受容管40を介して、クリップ10と連結部材20を結合しているが、本発明は、クリップ受容管40を用いずに、クリップ10と連結部材20を直結したタイプの把持装置にも適用することができる。
(1)構成
図1、2、及び図6に示すように、クリップ10は、弾性を有する金属部材を屈曲させて連結基部11、腕部12、13、及び先端把持部14、15を構成したものである。棒状部材を屈曲させてなる連結基部11は、U字部11aと、U字部11aの両端からいったん外方に広がってから互いに接近するようにされている当接部11b、11cを有する(図6参照)。当接部11b、11cの端部11b1及び端部11c1からは、底面12aと底面13aが対向し、かつ、徐々に離間するように同一形状の板状の腕部12、13がそれぞれ延びている。腕部12、13には、それぞれの長手方向の同一位置において屈曲部12b、13bが設けてあり、クリップ10に外部から力を加えていない状態(以下自然状態という)においてはこの屈曲部12b、13bから先端部12c、13cへ向かって、底面12aと底面13aは略平行となっている。腕部12、13それぞれの先端部12c、13cからは、それぞれ先端部13c、先端部12cに向かう先端把持部14、15が延びている。なお、腕部は3本以上設けることもできる。
以上の構成のクリップ10においては、当接部11bと当接部11cを互いに接近させるように付勢する力を加えると、その前後の屈曲角度が変化するため腕部12と腕部13は外方へ広がる(図6参照)。この状態からさらに腕部12と腕部13を互いに接近させるように付勢する力を加えると、今度は、腕部12と腕部13は互いの間隔が狭まるように屈曲角度が変化する。このように、腕部12と腕部13が互いに近づくように付勢することにより、先端把持部14と先端把持部15との間に物体を把持することができる。
連結基部11の内側には、クリップ10と磁気誘導手段30を連結するための柔軟性を有する連結部材20が挿通されている。連結部材20としては、例えば、手術用縫合糸、釣糸、金属製ワイヤを使用することができる。
連結部材20の端部に連結される磁気誘導手段30は、前後方向直交断面が円形の強磁性体からなり、電磁石、永久磁石などの磁気誘導部材を用いることによって吸引制御可能である。磁気誘導手段30に用いる磁性体としては、純鉄、鉄合金のほか、プラチナマグネット、希土類磁石、テルビウム・ディスプロシウム・鉄合金などの磁石を使用することができる。
磁気誘導手段30は、その後端31から内部へ向けて略円形の断面形状で凹設された凹部(収容部)33を備えている。凹部33の前方には、連結部材20の端部を挿入し、内部で結合することにより連結部材20を磁気誘導手段30へ固定することができる固定孔部35が連設されている。凹部33は、その内径が導入管70の外径と略同一であって、導入管70の先端部70bを収容保持することができる。凹部33は、その内部に導入管70を収容できれば、任意の形状をとることができる。また、凹部33は、磁気誘導手段30を貫通する孔として構成してもよい。この場合、連結部材20は、例えば、貫通孔の内面に接着、はんだ、ロウなどによって固定することができる。磁気誘導手段30は、内視鏡の挿入部に挿通させることができれば、その外形形状を任意に設定することができるため、従来の磁気誘導手段と同じ体積とすることができ、これにより、従来の磁気誘導手段と同じ牽引力を実現することができる。
連結部材20を介してクリップ10と磁気誘導手段30とを連結してあるため、磁気誘導手段30を外部磁界によって吸引制御することによって、クリップ10を所望の方向に牽引することができる。なお、磁気誘導手段30を重力を用いて牽引することもでき、磁気誘導手段30に代えて非磁性体からなる誘導手段を用いて重力によってクリップ10を牽引することとしてもよい。
クリップ10に結合された連結部材20は、前面から後面まで貫通した円筒状のクリップ受容管(把持部受容管)40を介して磁気誘導手段30に連結されている。具体的には、連結基部11に結合された連結部材20は、クリップ受容管40の前面に穿設した孔部41からクリップ受容管40内に導入され、クリップ受容管40の側面に穿設したスリット42から導出されて磁気誘導手段30の凹部33から固定孔部35へ挿通されて、磁気誘導手段30に結合されている。
クリップ受容管40は、例えばステンレスパイプ、プラスチックチューブや超弾性合金により形成することができ、後面は開放されている。スリット42は、クリップ受容管40の中心線(略円形の断面の中心を結ぶ線)に平行な方向において、所定位置43を前端部として後端部は開放されている。スリット42に挿入された連結部材20のクリップ10側(前側)への移動は所定位置43で規制される。また、クリップ受容管40の外径は所定位置43より後側にシフトした位置に設けた段差部45の前後で異なっている。すなわち、段差部45の前方側の大径部(前部)46の外径は、段差部45の後方側の小径部(後部)47の外径より大きく設定されている。また、連結基部11のU字部11aに一端が掛着されたループワイヤ(牽引分離部材)82がクリップ受容管40内を通り、クリップ受容管40の後端から延出するように設けられている。
以上のように連結されたクリップ10、連結部材20、磁気誘導手段30、クリップ受容管40及びループワイヤ82は、中空円筒状の導入管70を用いて患者(対象物)101(図4〜6参照)の体内に導入される。導入管70は可撓性を有する材料からなり、図3に示すように、内視鏡90の鉗子挿入口91から挿入部の先端硬性部60に挿通される。
導入管70の長手方向においては、導入管70の内壁70aに沿って、導入管70に対して相対移動可能な挿入コイル71が配置されている。挿入コイル71の先端には、規制管72が接着剤、はんだ、ロウなどによって固定されている。規制管72には段部73が設けられており、段部73の前方部分74の外径は導入管70の内径とほぼ同一である。一方、前方部分74より外径の小さい後方部分75の外径は、挿入コイル71が形成する中空円筒の内径とほぼ同一である。したがって、後方部分75の外周に挿入コイル71を固定すると、挿入コイル71が形成する中空円筒の外周と前方部分74の外周がほぼ同一面となる。
一方、前方部分74の内径は、後方部分75の内径より大きく設定されている。さらに前方部分74の内径及び後方部分75の内径は、それぞれ、クリップ受容管40の小径部47の外径及び内壁48の内径とほぼ同一である。このため、規制管72内にクリップ受容管40を挿入することができ、かつ、段差部45が規制管72の先端面76に当接することによってクリップ受容管40の移動が規制される。ここで、クリップ受容管40の中心線の方向において、所定位置43は、段差部45より前側に配置されているため、段差部45と先端面76が当接するまでクリップ受容管40が規制管72内に挿入されたとしても、スリット42が規制管72によって完全に覆われてしまうことはない。よって、この状態においても、連結部材20はクリップ受容管40内から外部へ延出可能である。
挿入コイル71及び規制管72内には、操作ワイヤ80が、挿入コイル71、規制管72に対して相対移動可能に配置されている。操作ワイヤ80の先端には、接着剤、はんだ、ロウなどによってフック部81が固定されている。挿入コイル71及び操作ワイヤ80は導入管70よりも充分長く、それらのうち挿入コイル71の後端部71aは鉗子挿入口91から外部に突出した導入管70からさらに延出し、操作ワイヤ80の後端部80aは挿入コイル71からさらに延出している(図3)。
U字部11aには、金属製のループワイヤ82が通されている。ループワイヤ82はフック部81の中央部に設けられた凹部81aに掛け止められている。ループワイヤ82は、所定以上の強い力で牽引したときに切断するものであれば金属製以外のものであってもよい。クリップ受容管40内にその一端が挿入されたクリップ10は、操作ワイヤ80を後側に引くことによって、各部分がクリップ受容管40の内壁に順次当接して弾性変形しつつクリップ受容管40内に挿入可能である。
具体的には、操作ワイヤ80を後側に引くことによって、当接部11bと当接部11cがクリップ受容管40の孔部41から内壁48に沿って当接して互いに接近するように内側に撓むと、腕部12と腕部13は互いに離間してクリップ10は開いた状態となる。さらに操作ワイヤ80を後側に引くと、腕部12及び腕部13のうち端部11b1から屈曲部12bまでの部分及び端部11c1から屈曲部13bまでの部分が徐々にクリップ受容管40の孔部41から内壁48に沿って当接しながら互いに接近するように内側に撓む。すると、腕部12と腕部13は互いに接近してクリップ10は閉じた状態となる。
また、操作ワイヤ80を後側に引く前であって当接部11bがクリップ受容管40内に引き込まれていない状態においては、クリップ10及びループワイヤ82はクリップ受容管40に対して回動可能である。このため、連結部材20が閉じている先端把持部14、先端把持部15と交差したとしても、操作ワイヤ80を操作することによりクリップ10及びループワイヤ82をクリップ受容管40に対して回動させることにより交差状態を解除することができる。
(2)患者体内への導入操作
本発明の把持装置1においては、連結部材20で連結されたクリップ10及び磁気誘導手段30の患者体内(対象物内部)への導入は、体内に内視鏡の挿入部の先端硬性部60を導入することによって行う。先端硬性部60内には、図1に示すように、先端部70bが磁気誘導手段30の凹部33内に収容され、連結部材20で連結されたクリップ10が内挿された導入管70が挿通される。クリップ10は、先端把持部14、先端把持部15を前側に向けて配置される。このような配置とすることにより、凹部33内に導入管70の先端部70bを収容した分だけ連結部材20を短くすることができる。さらに、先端把持部14、15、及び腕部12、13の一部を、導入管70内において、凹部33内に入る状態とすると、連結部材20をより短くすることができるため好ましい。
クリップ10と磁気誘導手段30の導入管70内への配置は、孔部41からスリット42へクリップ受容管40内に通された連結部材20を介して連結した状態のクリップ10と磁気誘導手段30を導入管70内に挿入することによって行う。
この挿入の前には、あらかじめ連結又は連関された状態の挿入コイル71、規制管72、操作ワイヤ80、及びフック部81を、少なくともフック部81の先端が導入管70から延出するように導入管70に挿通させておく。次に、導入管70から延出したフック部81にループワイヤ82を結合し、この状態で鉗子挿入口91から延出した後端部80aを牽引することによりクリップ10及び連結部材20を導入管70内に挿入する。このとき、クリップ10及び磁気誘導手段30と連関したクリップ受容管40は導入管70内に配置した規制管72内に挿入され、クリップ受容管40の段差部45と規制管72の先端面76とが突き当たることによって、クリップ受容管40の移動は規制される。
図2に示すように、スリット42の端部位置である所定位置43は、クリップ受容管40の段差部45に対して、クリップ受容管40の中心線の方向において前方側の位置に配置されているため、段差部45に規制管72の先端面76が突き当たるまでクリップ受容管40が規制管72に挿入されたとしても、スリット42は規制管72によって閉じられずに開口している状態にある。よって、クリップ10と磁気誘導手段30とを連結する連結部材20は、所定位置43においてスリット42からクリップ受容管40の外部へ延出することができる。挿入動作完了時には磁気誘導手段30、クリップ10、クリップ受容管40が略一直線上に配置される。
連結部材20で連結されたクリップ10と磁気誘導手段30の患者101体内への導入は以下のように行う。
まず先端硬性部60を体内に導入した後、挿入コイル71の後端部71aを操作することによって規制管72を前方側へ付勢する。これによって、段差部45が先端面76と当接しているクリップ受容管40が前方へ押され、これにともなって孔部41の内周壁が連結基部11に当接してクリップ10も前方へ付勢され、クリップ10の先端把持部14、15が磁気誘導手段30の凹部33の底壁33aに当接する。この状態からさらに規制管72を前方に付勢すると、磁気誘導手段30が導入管70の先端部70bから外れ、図4及び図5に示すように、クリップ10、クリップ受容管40及び規制管72は導入管70の先端から患者101の体内に露出され、クリップ10及びクリップ受容管40が導入管70の長手方向において一直線上に配置される一方、磁気誘導手段30は重力によって下方に垂れ下がる。
クリップ10の病変部102への取り付けは以下のように行う。
まず、先端把持部14と先端把持部15を開くために、操作ワイヤ80を挿入コイル71及び規制管72に対して相対的に移動させることによって操作ワイヤ80を牽引して当接部11b及び当接部11cをクリップ受容管40内に引き込む。引き込まれた当接部11b及び当接部11cは、クリップ受容管40の内壁48に当接するため、互いに近づく方向に撓む。当接部11b及び当接部11cがこのように撓むことによって、腕部12と腕部13は互いに離間するように撓み、その結果クリップ受容管40から露出したクリップ10の先端側が開くことになる(図6)。
このように開いたクリップ10を、挿入コイル71、規制管72及び操作ワイヤ80を一体に移動させて病変部102に向けて進行させ(図6の矢印の方向)、クリップ10の先端が所望の位置に来たところでクリップ10を閉じることによって、病変部102をクリップ10で把持することができる。クリップ10を閉じるためには、操作ワイヤ80を挿入コイル71及び規制管72に対して相対的に移動させることによって操作ワイヤ80を牽引して腕部12、13のうち端部11b1、11c1から屈曲部12b、13b間の部分を徐々にクリップ受容管40内に引き込む。腕部12、13のうちクリップ受容管40内に引き込まれた部分はクリップ受容管40の内壁に当接するため互いに近づく方向に撓む。これに伴って底面12aと屈曲部12bは互いに近づくように撓み、その結果クリップ受容管40から露出したクリップ10の先端側が閉じる(図7)。
次に、クリップ受容管40及び連結部材20を介して連結されたクリップ10及び磁気誘導手段30を、挿入コイル71、規制管72、操作ワイヤ80及びフック部81を内部に収容した導入管70から分離して、クリップ10の病変部102への取り付けを完了する。この分離動作は、操作ワイヤ80を強く引いて凹部81aに掛け止められたループワイヤ82を切断し、その後挿入コイル71、規制管72、操作ワイヤ80及びフック部81を後退させることによって行う。
(3)切除術のステップ
つづいて、把持装置1を用いた病変部102の切除工程について説明する。
まず、病変部102の周辺から粘膜下層(不図示)に挿入した注射針で生理食塩水を注入して、病変部102を固有筋層(不図示)から浮き上がらせておく。
一方、患者101の外部のあらかじめ設定した位置に電磁石からなる磁気誘導部材(不図示)を配置する。病変部102は、磁気誘導部材と磁気誘導手段30との間の吸引力により持ち上げられる。病変部102の持ち上げ量が不足するまたは大きすぎる場合は、磁気誘導部材の位置をずらしたり、磁気誘導部材の発生する磁界を弱めることによって調整する。
つづいて、高周波メスなどの切開具を鉗子チャンネル(不図示)から体内に導入し、病変部102を粘膜とともに端部から切除していく。このとき、病変部102はクリップ10により持ち上げられているため、切除部分を十分とることができ、すでに切除した病変部102が固有筋層上に落ち込むことも防ぐことができる。また、磁気誘導部材(不図示)の位置を徐々にずらすことにより、切除された病変部102をさらに持ち上げることができるため、高周波メスの先端位置の確認が容易となり切除作業をスムーズに行うことができる。
切除作業を終えると、クリップ10が病変部102を把持した状態で磁気誘導手段30が磁気誘導部材に引き寄せられるため、病変部102が紛失することを防ぐことができる。切除した病変部102を回収する場合は、磁気誘導手段30、クリップ10、連結部材20、クリップ受容管40及び病変部102の一部分を把持鉗子で掛着した状態で、磁気誘導部材への電流の供給を止めて、そのまま内視鏡を抜き去ることにより回収する。その後、縫合、消毒などの処置を行う。
<第2実施形態>
図8に示す第2実施形態に係る把持装置110においては、磁気誘導手段30に代わる磁気誘導手段130の凹部(収容部)133から逃げ部137が連設されている点が第1実施形態と異なる。その他の構成は第1実施形態と同様であって、同じ部材については同じ参照符号を使用する。
磁気誘導手段誘導手段)130は第1実施形態の磁気誘導手段30と同一の材料で、前後方向直交断面が略円形の同一の外形形状を備えており、磁気誘導手段30の凹部33と同一形状の凹部133が形成されていている。凹部133には、その前後方向全長に渡って、凹部133から磁気誘導手段130の外周132へ向けて凹設された逃げ部137が形成されている。この逃げ部137は、磁気誘導手段130の前後方向直交断面における周方向幅W(図8(b))が、導入管70の外径より小さく、かつ、底面12a、13aの幅よりも大きくされている。また、逃げ部137は、外周132まで貫設してもよいし、凹部133から複数連設させてもよい。連結部材20は、磁気誘導手段130の凹部133から固定孔部135へ挿通されて、磁気誘導手段130に結合される点は第1実施形態と同様である。
このような逃げ部137を設けると、逃げ部137内へクリップ10の先端把持部14,15及び腕部12、13の一部を逃がしつつ、導入管70内へクリップ10を収容し、導入管70の先端部70bを凹部133内に収容することができるため、第1実施形態の把持装置1に比べて連結部材20をさらに短くすることができるとともに、収容作業が容易となる。さらに、磁気誘導手段130を患者101体内に導入すべく、互いに当接した磁気誘導手段130及びクリップ10を導入管70に対して相対移動させる過程で、導入管70からクリップ10が突出したときに、クリップ10が逃げ部137を通じて逃げることができるため、重量の大きな磁気誘導手段130をクリップ10の一部のみで支持してしまうことを避けることができ、クリップ10の変形や破損を防止することができる。
なお、その他の作用、効果、変形例は第1実施形態と同様である。
<第3実施形態>
図9に示す第3実施形態においては、導入管70に代わる導入管170の先端部170bの内周に、硬性材料からなる補強部材177が固定されている点が第1実施形態と異なる。その他の構成は第1実施形態と同様であって、同じ部材については同じ参照符号を使用する。
補強部材177は硬性材料(例えば、ステンレス、アルミニウム、チタン等の金属材料、セラミック、硬質樹脂、硬質ゴム)からなる中空の略円筒状部材であり、その外周を先端部170bの内周(内壁)に対して、例えば接着、圧入、溶着により固定している。補強部材177の内径は、第1実施形態の導入管70の内径と略同一であって、内部をクリップ10、クリップ受容管40、挿入コイル71、規制管72が挿通できることは導入管70と同様である。このような構成とすることにより、先端部170bを凹部33に収容したときに、磁気誘導手段30の重量により可撓性の導入管170の先端部170bが撓んで、磁気誘導手段30が導入管170から外れたり、導入管170が変形して内部に収容されたクリップ10が変形、破損することを防止することができる。補強部材177は、その内周を先端部170bの外周に固定してもよい。また、例えば接着、圧入、溶着により先端部170bの先端に固定することにより、補強部材177を延設することもできる。
なお、その他の作用、効果、変形例は第1実施形態と同様である。
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
本発明の第1実施形態に係る把持装置が水平方向に沿って配置されたときの一部断面図であって、導入管の中心軸を通り水平方向に延びる面で切った一部断面図である。 図1の把持装置を導入管の中心軸を通り鉛直方向に延びる面で切った一部断面図である。 本発明の第1実施形態に係る内視鏡の全体構成を示す概観図である。 図2の把持装置のクリップ及び磁気誘導手段を導入管の外部に露出させた状態を示す一部断面図である。 図1の把持装置をクリップ及び磁気誘導手段を導入管の外部に露出させた状態を示す一部断面図である。 図1の把持装置においてクリップが開いた状態を示す一部断面図である。 本発明の第1実施形態に係るクリップで病変部を把持した状態を示す図である。 (a)は本発明の第2実施形態に係る把持装置が水平方向に沿って配置されたときの一部断面図であって、導入管の中心軸を通り水平方向に延びる面で切った一部断面図、(b)は第2実施形態に係る磁気誘導手段を後方から見た背面図、(c)は磁気誘導手段内に導入管が収容されたときの状態を示す(a)を下方から見た底面図である。 本発明の第3実施形態に係る把持装置が水平方向に沿って配置されたときの一部断面図であって、導入管の中心軸を通り水平方向に延びる面で切った一部断面図である。 従来の把持装置が水平方向に沿って配置されたときの一部断面図であって、導入管の中心軸を通り水平方向に延びる面で切った一部断面図である。 従来のクリップで病変部を把持した状態を示す図である。
1 把持装置
10 クリップ(把持部材)
11 連結基部
12 腕部
13 腕部
14 先端把持部
15 先端把持部
20 連結部材
30 磁気誘導手段誘導手段
33 凹部(収容部)
35 固定孔部
40 クリップ受容管(把持部受容管)
42 スリット
70 導入管
70b 先端部
82 ループワイヤ(牽引分離部材)
90 内視鏡
101 患者(対象物)
102 病変部(対象部位)
110 把持装置
130 磁気誘導手段誘導手段
133 凹部(収容部)
135 固定孔部
137 逃げ部
170 導入管
170b 先端部
177 補強部材

Claims (9)

  1. 対象物内部の対象部位を把持する把持部材と、
    磁力または重力によって移動し、前記把持部材を牽引する誘導手段と、
    前記把持部材と前記誘導手段とを連結する連結部材と、
    前記把持部材に結合された牽引分離部材と、
    前記把持部材の後部を前部に受容し、後端部が開放されたスリットを有する中空円筒状の把持部受容管と、を備え、前記誘導手段は、筒状の導入管の先端部を内部に収容する収容部を備え、
    前記把持部材を前記把持部材受容管の前方に保持したとき、前記牽引分離部材は前記把持部材受容管の後端部から外部に導かれ、前記連結部材は前記スリットを介して前記把持部材受容管の外部に導かれ、前記誘導手段は前記把持部材の前方に位置するように、それぞれ配置され、
    前記誘導手段に連結された前記把持部材及び前記連結部材を前記導入管内に収容し、前記先端部を前記収容部内に収容した状態で、内視鏡の挿入部内に挿通されて前記対象物内部に導入されることを特徴とする把持装置。
  2. 前記導入管は、前記先端部に硬性の補強部材を備えている請求項1記載の把持装置。
  3. 前記補強部材は、前記先端部の内周に固定される筒状部材である請求項2記載の把持装置。
  4. 前記補強部材は、前記先端部の外周に固定される筒状部材である請求項2記載の把持装置。
  5. 前記補強部材は、前記先端部の前端から延設されてなる筒状部材である請求項2記載の把持装置。
  6. 前記収容部は、前記誘導手段の後端部から内部へ向けて凹設した凹部である請求項1〜5のいずれか1項記載の把持装置。
  7. 前記収容部には、前記導入管の外径よりも小さく、かつ、前記把持部材の幅よりも大きな幅を備えた逃げ部が連設されている請求項6記載の把持装置。
  8. 前記対象物内部に導入されるとき、前記把持部材は、少なくとも先端部分が前記収容部内に入っている請求項6又は請求項7記載の把持装置。
  9. 前記誘導手段は磁性体からなり外部磁界により動力を与えられる請求項1〜8のいずれか1項記載の把持装置。
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