JP4338437B2 - 内視鏡用誘導手段遠隔誘導システム - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、内視鏡観察下で病変部を切除する際に用いる、内視鏡用誘導手段遠隔誘導システムに関する。
【0002】
【従来技術及びその問題点】
従来、通常の手術において人体内部の病変部を切除する場合においては、把持鉗子を用いて病変部を持ち上げることにより病変部と隣接する正常組織との間隔を広げ、その状態で病変部と正常組織との間を切除している。しかし、例えば内視鏡粘膜切除術(EMR)では、体内には内視鏡を一台しか挿入できないため、病変を持ち上げることができず、注射針で病変部の周囲の正常粘膜に生理食塩水を注入して病変部を浮き上がらせ、その状態で高周波ナイフやスネアなどを用いて病変部と正常粘膜の間の切除を行っていた。
【0003】
しかし、このような従来の方法では、病変部を十分な位置まで持ち上げることができなかったため、病変部と正常組織との境界の切除部分を十分確保することができなかった。
また、病変部が扁平な形状である場合は、切除部分を作りだすことができないこともあった。
【0004】
さらに、切除作業中において、すでに切除した病変部が正常組織上に落ち込むことにより内視鏡による視界を妨げることがあり、特に病変部が大きい場合に顕著であった。そのため、切除部分を見ることができず、盲目的に切除するために正常部分を損傷して穿穴などの合併症が発生したり、血管を損傷して大出血をきたし、また出血時も出血部位の確認ができず止血できないことから重篤な合併症を来すことも考えられ、より安全な装置や処置方法が求められていた。
【0005】
そこで本出願人は、これらの問題点を解決すべく、人体内部の病変部を掛着する掛着部材と、掛着部材と連結ひもを介して連結される磁性体からなる磁気誘導手段(磁気アンカー)と、人体の外部に配置され、磁界を発生して磁気誘導手段に動力を与える磁気誘導手段誘導装置と、を備え、磁気誘導手段誘導装置が発生する磁界によって磁気誘導手段に動力を与えて、掛着部材に掛着された病変部を持ち上げることを特徴とする磁気誘導手段誘導システムを提案し、特許出願している(特願2002−268239号)。
【0006】
そして、この磁気誘導手段誘導システムの一例としては、掛着部材を弾性材料からなる開閉可能なクリップとし、このクリップを、両端が開口する筒状の締付リング内に嵌合自在としたものがある。このようなクリップと締付リングによれば、締付リングに対するクリップの嵌合量を変化させることにより、クリップの先端部を開状態と閉状態とに変化させることができる。このため、クリップを病変部に近接させた状態でクリップを閉状態に変化させると、クリップの先端部が病変部を確実に把持する。そして、このように病変部をクリップで把持した状態で、磁気誘導手段誘導装置から磁界を発生させると、磁界から生じる磁力によって磁気誘導手段が所定の方向に吸引され、磁気誘導手段と連結ひもを介して連結されているクリップも同方向に移動する。そして、クリップに把持されている病変部が同方向に持ち上げられるので、高周波メス等により病変部を切除可能となる。
【0007】
しかし、このような従来の磁気誘導手段誘導システムでは、磁力を受けて移動する磁気誘導手段と、クリップを変形させるための締付リングとが必須の構成部材であるため、部品点数が多く、製造コストの増大を招く原因となっていた。
【0008】
また、上述したように、磁気誘導手段は、挿入部の先端面と対向する状態で内視鏡の先端に装着されるので、挿入部の先端面に設けられた観察窓の視野が磁気誘導手段によって妨げられることがあり、そのため、術者にとって、磁気誘導手段を挿入部の先端に装着した状態で、磁気誘導手段を体内の所望の位置まで運ぶのは容易でなかった。
【0009】
さらに、磁気誘導手段は内視鏡の先端に装着された状態で体内に挿入されるので、体内に内視鏡を挿入後に磁気誘導手段を体内に挿入したい場合や、複数の磁気誘導手段を体内に挿入して、体内の複数箇所を処置したい場合には、一旦内視鏡を体内から取り出す必要があり、作業性が悪かった。
【0010】
【発明の目的】
本発明の目的は、従来に比べて部品点数を削減できるとともに、内視鏡に装着された磁気誘導手段が、内視鏡の観察窓の視野を妨げることがなく、しかも磁気誘導手段の対象物内部への挿入作業を効率よく行えるようにした、内視鏡用誘導手段遠隔誘導システムを提供することにある。
【0011】
【発明の概要】
本発明の内視鏡用誘導手段遠隔誘導システムは、複数の開閉爪を有し、該開閉爪を閉じることにより対象物内部の対象部位を掛着する掛着部材と、両端が開口し、自身の内周面によって上記掛着部材を相対移動可能に支持し、該掛着部材が自身の内部において相対移動したときに上記開閉爪を開閉させる、磁性及び弾性を有するコイル状磁気誘導手段と、上記コイル状磁気誘導手段内で掛着部材を相対移動させる開閉手段と、上記対象物外部に配置され、磁界を発生して、該磁界から生じる磁力により、上記掛着部材と一体化したコイル状磁気誘導手段を所定方向に移動させる磁気誘導手段誘導装置と、を具備することを特徴としている。
【0012】
【0013】
さらに、上記コイル状磁気誘導手段該コイル状磁気誘導手段に閉じた状態で支持された掛着部材とは、内視鏡の鉗子チャンネル内に挿入可能な寸法であるが好ましい。
【0014】
上記開閉手段は、上記鉗子チャンネル内に挿通され操作部側から牽引操作可能な操作ワイヤと;この操作ワイヤと、上記鉗子チャンネル内に挿入されている掛着部材とを接続する、操作ワイヤに加える操作力で切断可能な牽引分離部材と;上記鉗子チャンネル内にあって、上記操作ワイヤの牽引力に抗してコイル状磁気誘導手段と掛着部材とを保持する、該コイル状磁気誘導手段と掛着部材とを押し出し可能な押出部材と;を備えているのが実際的である。
【0015】
上記磁気誘導手段誘導装置は、発生する磁界によって磁力を生じさせて、該磁力によって、上記磁気誘導手段を所定方向に移動させる磁気誘導部材と、該磁気誘導部材を特定の一平面内に配置したU字状のフレーム部材に沿って移動させる一平面内移動機構と、上記U字状のフレーム部材を上記一平面と直交する方向に相対移動させる一方向移動機構と、を有するのが実際的である。
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を参照しながら詳しく説明する。
本実施形態の誘導手段遠隔誘導システムは、磁気誘導装置10(クリップ11、牽引分離部材12、コイル状磁気誘導手段13からなる)と、磁気誘導装置10の内視鏡20からの分離操作等を行う操作装置30と、磁気誘導装置10を体外において吸引制御する(コイル状磁気誘導手段13に磁力を及ぼす)磁気誘導手段誘導装置40とからなるものである。
【0020】
まず、図1から図3を参照して、磁気誘導装置10の構成について説明する。
対称形状をなすクリップ(掛着部材)11は、金属板を折曲加工した弾性部材であり、自由状態においてその両側部の先端が接触するCリング状の基部11aと、基部11aの先端から前方に延びつつ拡開する一対の傾斜部11b、11bと、両傾斜部11b、11bの先端から互いに平行に延びる先端部(開閉爪)11c、11cと、両先端部11c、11cの先端から内向きに延出する爪部(開閉爪)11d、11dとを具備している。さらに、基部11aの後端部には挿入孔11a1が穿設されている。
【0021】
牽引分離部材(開閉手段)12は棒状の部材であり、その先端には、クリップ11の挿入孔11a1を貫通する一対の挿入片12aと、挿入片12aの先端に設けられた、基部11aの内面に係合して、挿入片12aが基部11aから抜け出すのを防止する抜け止め部12bとが設けられている。さらに、牽引分離部材12の基端部には鈎部12cが形成されている。牽引分離部材12は、それほど強度が大きくないプラスチックやSUS等の金属材料から成形されており、所定の切断力以上の強い力を受けると切断するものである。
【0022】
コイル状磁気誘導手段13は、線状の強磁性材料をコイル状に巻いた、両端が開口する筒状部材であり、強磁性材料の具体例としては、純鉄、鉄合金のほか、プラチナマグネット、希土類磁石、テルビウム・ディスプロシウム・鉄合金などの磁石がある。
【0023】
図1から図3に示すように、クリップ11の一部は、コイル状磁気誘導手段13内に嵌合可能である。
図1に示す状態(クリップ11がコイル状磁気誘導手段13に嵌合していない状態)から、コイル状磁気誘導手段13に対して牽引分離部材12を相対的に後方に引くと、図2に示すように、クリップ11の基部11aが内向きに弾性変形しながらコイル状磁気誘導手段13の内部に引き込まれる。すると、基部11aの径が小さくなり、両傾斜部11cと両先端部11dが互いに離れる開状態となる。
図3に示すように、コイル状磁気誘導手段13に対して牽引分離部材3をさらに相対的に後方に引くと、クリップ11の傾斜部11bがコイル状磁気誘導手段13の内面に接触し、内向きに弾性変形しながらコイル状磁気誘導手段13の内部にさらに引き込まれ、両傾斜部11cと両先端部11dが互いに接近する閉状態となる。
【0024】
図4は、誘導手段遠隔誘導システムを用いた切除術の実施に用いる内視鏡20を示している。
内視鏡20の構造は公知なので詳しい説明は省略するが、柔軟で可撓性を有し体内に挿入される挿入部21の先端面22には、エア及び洗浄水を送るための送気送水ノズル(図示略)、切除部及びその周辺を照らすための照明窓(図示略)、切除部及びその周辺を観察するとともに、直後に対物レンズと撮像素子が配置された観察窓、並びに、図7等に示された鉗子チャネルCの出口23が設けられている。鉗子チャンネルCは挿入部21内に形成されており、その入口24aは鉗子挿入口突起24の端面に形成されており、さらに、その出口23は、先端側が拡径するテーパ状となっている。
【0025】
次に、図7を参照しながら、内視鏡20の鉗子チャンネルC内に挿入される操作装置30について説明する。
挿入管31は可撓性を有する筒状の部材であり、内視鏡20の鉗子挿入口突起24の入口24aから鉗子チャンネルCに挿通可能であり、その全長は鉗子チャンネルCより長い。さらに、その内径は、図1の状態のクリップ11及びコイル状磁気誘導手段13を挿入可能な寸法となっている。挿入管31の内部には、挿入管31に対して相対移動可能な筒状の挿入コイル(押圧部材)32を挿通可能である。挿入コイル32の先端部には、大径部33aと小径部33bとからなる規制管(押圧部材)33の小径部33bが嵌合され、接着剤、はんだ、ロウなどによって、小径部33bが挿入コイル32の先端部に固着されている。
【0026】
大径部33aの外径は挿入管31の内径より小さく、かつ、挿入コイル32の外径とほぼ同一に設定されている。さらに、大径部33aの内径は小径部33bの内径より大きく、コイル状磁気誘導手段13の外形と略同一に設定されており、大径部33a内面の小径部33b内面との接続部には、規制管33の軸線に対して直交する環状段部33a1が形成されている(図7等参照)。
【0027】
鉗子チャンネルCに挿入された挿入コイル32の内側には、先端にフック部34が設けられた操作ワイヤ(開閉手段)35を、挿入コイル32と規制管33に対して相対移動可能に挿入することができる。フック部34は、接着剤、はんだ、ロウ等によって、その基端部が操作ワイヤ35の先端部に固着されている。
挿入管31、挿入コイル32、及び操作ワイヤ35の各基端部は、操作装置30の操作部(図示略)に連結されており、互いに軸方向に相対移動可能となっている。
さらに、以上説明した、挿入管31、挿入コイル32、規制管33、フック部34、操作ワイヤ35、及び操作部により操作装置30が構成されている。
【0028】
次に、図5及び図6を用いて、患者Aの体外においてコイル状磁気誘導手段13を吸引制御する磁気誘導手段誘導装置40の構成について説明する。
患者Aを載せる床板41aを具備するベッド41の両側部には、一対のXYステージ(一方向移動機構)42、42が配設されている。この一対のXYステージ42は、ベッド41の長手方向に沿って、両者42、42の該長手方向位置が常時同じになるように、直線的に往復移動するものである。さらに、ベッド41の上方には、ベッド41の長手方向と直交する平面内において互いに平行をなす、正面視略逆U字形の二つのレール44、45からなるフレーム/レール(一平面内移動機構)43が配設されており、このフレーム/レール43の両端部は、左右のXYステージ42にそれぞれ固定されている。内側のレール44には、磁気誘導装置10コイル状磁気誘導手段13を体外において吸引制御する(コイル状磁気誘導手段13に磁力を及ぼす)磁気誘導部材46が摺動自在に装着されており、磁気誘導部材46は左右のXYステージ42の間を、レール45に沿って移動することができる。磁気誘導部材46は、鉄心にコイルを巻いた構造の電磁石47を基体48上に固定したものであり、その電磁石47は常時、患者A側を向いている(図5参照)。なお、磁気誘導部材46は、永久磁石と電磁石の組み合わせでもよく、また、永久磁石と電磁石を2個以上組み合わせたものでも良い。
【0029】
フレーム/レール43の外側のレール45には、フレーム/レール43全体の重量バランスを保つためのカウンターウエイト49がレール45に摺動自在に装着されている。カウンターウエイト49は、磁気誘導部材46の位置に応じて、その位置が変化する。例えば、磁気誘導部材46が患者Aの正面側に位置するときは、カウンターウエイト49は患者Aの背面側に位置し、磁気誘導部材46が患者Aの背面側にあるときは、カウンターウエイト49は患者Aの正面側に位置して、フレーム/レール43全体の重量バランスをとっている。
そして、以上説明した磁気誘導部材46、XYステージ42、フレーム/レール43により磁気誘導手段誘導装置40が構成されている。
【0030】
次に、誘導手段遠隔誘導システムを用いた病変部Xの切除要領について説明する。
誘導手段遠隔誘導システムを用いた切除術の実施に先立っては、まず、図5及び図6に示すように、局所麻酔を施した患者Aをベッド41の床板41a上に横たわらせる。このとき、XYステージ42を操作して、フレーム/レール43のベッド41の長手方向位置を、患者Aの頭部A1とほぼ同じ位置にしておき、さらに、磁気誘導部材46及びカウンターウエイト49を所定の場所に位置させておく。
次に、XYステージ42を操作してフレーム/レール43を患者Aの正面側に配置させ、さらに、磁気誘導装置46をフレーム/レール43に沿って移動させて、磁気誘導部材46を切除術開始時位置に位置させる(図6参照)。
【0031】
次いで、図示を省略した可撓性を有するオーバーチューブを、患者Aの口から体内に挿入し、このオーバーチューブの先端部を、臓器B(対象物)(図8から図12参照)内の病変部(対象部位)Xに近接させる。続いて、内視鏡20の挿入部21をオーバーチューブ内に挿入し、挿入部21の先端部をオーバーチューブの先端から突出させ、病変部Xに近接させる(図示略)。このように、内視鏡20の挿入部21の先端を臓器B内に挿入すると、内視鏡20の挿入部21の先端面に設けられた観察窓から得られた臓器B内の観察像が、図示を省略したテレビモニタに写し出される。
【0032】
次いで、鉗子挿入口突起24の入口24aから、先端部に注射針を具備するチューブ状の処置具(図示略)を鉗子チャンネルCに挿入して、その注射針を鉗子チャンネルCの出口23から突出させる。そして、注射針を病変部Xの周辺から臓器壁の粘膜下層B1に挿入して生理食塩水を注入し、病変部Xを固有筋層B2から浮き上がらせておく(図8から図12参照)。
【0033】
続いて、鉗子チャンネルCから該処置具を取り出し、代わりに、鉗子チャンネルCに挿入管31を挿入する。上述したように、挿入管31は鉗子チャンネルCより長いので、鉗子チャンネルCに挿入管31を挿入すると、その基端部が鉗子挿入口突起24から突出する(図示略)。
次いで、内視鏡20の外部において、挿入コイル32の先端に固定された規制管33の大径部33a内にコイル状磁気誘導手段13を嵌合し、その後端面を環状段部33a1に当接させる。さらに、挿入コイル32の内部に操作ワイヤ35を挿入し、その先端部に固着されたフック部34を、コイル状磁気誘導手段13内に挿入された牽引分離部材12の鈎部12cに係合させて、磁気誘導装置10と挿入コイル32と操作ワイヤ35を一体化する。
そして、この一体物を、鉗子挿入口突起24の入口24aから鉗子チャンネルC(挿入管31の内部)に挿入し、図7に示すように、磁気誘導装置10を鉗子チャンネルCの先端部に位置させる。
操作ワイヤ35は挿入管31よりも充分長いため、操作ワイヤ35を鉗子チャンネルCに挿入すると、その基端部が、鉗子挿入口突起24から突出した挿入管31の基端部のさらに後方に突出する(図示略)。
また、この一体物を鉗子チャンネルCに挿入する際に、コイル状の部材であるコイル状磁気誘導手段13と挿入コイル32は、挿入部21の屈曲状態に応じてその形状が変形するので、鉗子チャンネルC内を円滑に移動する。
【0034】
このように、内視鏡20に磁気誘導装置10と操作装置30をセットしたら、挿入管31を前方に移動させて、その先端部を内視鏡20の先端面22から突出させる(図示略)。次いで、挿入コイル32を前方に押圧して、クリップ11を挿入管31の先端から突出させ、クリップ11を病変部Xに近接させて、操作ワイヤ35を内視鏡20に対して相対的に後方に引く。すると、クリップ11の基部11aがコイル状磁気誘導手段13内に引き込まれ、クリップ11は図8に示す開状態となる。
さらに操作ワイヤ35を後方に引くと、クリップ11の基部11aがコイル状磁気誘導手段13内後方にさらに引き込まれるので、クリップ11の先端部11cが閉じて、両爪部11dにより、病変部Xが把持される(図9参照)。
【0035】
この状態で、操作ワイヤ35を上記切断力以上の強い力で後方に引くと、フック部34と係合している牽引分離部材12が、その中間部で切断され、その結果、磁気誘導装置10が操作ワイヤ35から分離する(図10参照)。
【0036】
続いて、図11に示すように、患者Aの体外に配置されている磁気誘導部材46の発生磁界を強めることによって、コイル状磁気誘導手段13を磁力によって、図11の上側に吸引すると、クリップ11が磁力方向(図11の上方)に移動し、クリップ11に掴まれている病変部Xも同方向に十分な距離だけ持ち上げられる。
【0037】
このように、病変部Xを所望方向に所望距離だけ移動させると、病変部Xと正常組織との境界部に、十分な大きさの切除部分が形成されるので、挿入管31、挿入コイル32、及び操作ワイヤ35を内視鏡20から取り出し、図11に示すように、内視鏡20(図11では図示略)の鉗子チャネルCを利用して高周波メス50などの切開具を臓器B内に挿入し、病変部Xを粘膜とともに一方の端部側から切除する。
そして、病変部Xを一方の端部側から反対の端部側に切除すると、やがて、病変部X全体が完全に切除される(図12参照)。
なお、高周波メス50による切除作業時においては、切除領域が拡がるにつれて、高周波メス50の先端50aの位置の確認は、より容易となる。
【0038】
以上のように切除作業を終えると、正常組織から切り離された病変部Xはクリップ11(磁気誘導装置10)に把持されたままの状態となるので、病変部Xの紛失が防止される。
切除した病変部Xを回収するには、図12に示すように、内視鏡20の鉗子チャンネルCに、その先端部に開閉可能な一対の把持部材61、61を具備し、さらに、その基端部に操作部(図示略)を具備する把持鉗子60を挿入する。そして、操作部を操作して、把持部材61、61を開放状態にした状態で牽引分離部材12に近接させ、さらに操作部を操作して両把持部材61、61を閉じ、両把持部材61、61により牽引分離部材12を確実に把持する(図12参照)。そして、そのままの状態で内視鏡20を体内から抜き去り、病変部Xを磁気誘導装置10とともに体外に取り出す。そして、その後に、切除した部分の縫合、消毒などの処置を行う。
【0039】
以上のように、本実施形態の誘導手段遠隔誘導システムを用いれば、コイル状磁気誘導手段13が、従来の磁気誘導手段遠隔誘導システムにおける磁気誘導手段と締付リングの2つの部材の機能を兼ねているので、従来の磁気誘導手段遠隔誘導システムに比べて、部品点数が少なく、そのため、製造コストを低く抑えることができる。
【0040】
また、磁気誘導装置10は、全体が鉗子チャンネルC内に収納された状態で内視鏡20に取り付けられるので、内視鏡20の患者Aの体内への挿入時に、内視鏡20の先端面22に設けられた観察窓の視野が、磁気誘導装置10によって妨げられることはない。そのため、術者は、テレビモニタを見ながら、磁気誘導装置10が装着された内視鏡20を、体内に容易かつ的確に挿入することが可能である。
【0041】
さらに、上述したように、患者Aの体内に挿入された内視鏡20の鉗子チャンネルC内に磁気誘導装置10を挿入できる。このため、内視鏡20を体内に挿入した状態で他の内視鏡用処置具による処置(例えば、上述した注射針を具備するチューブ状の処置具による処置)を行った後に、体内に磁気誘導装置10を挿入したい場合や、複数の磁気誘導装置10を体内に挿入して、体内の複数箇所を処置したい場合には、内視鏡20を体内から取り出さずに、磁気誘導装置10を鉗子チャンネルCを通して体内に挿入できるので、従来に比べて、磁気誘導装置10の体内への挿入作業を効率よく行うことができる。
【0042】
さらに、病変部Xを所望方向に十分な距離だけ移動させることができるため、病変部Xと正常組織との境界の切除部分を、容易かつ確実に十分な大きさで確保することができ、また、病変部Xが扁平な形状であっても、十分な大きさの切除部分を作りだすことができるので、病変部Xを容易に切除することが可能となる。
【0043】
さらに、病変部Xはクリップ11により持ち上げられるため、切除部分を十分確保することができ、すでに切除した病変部Xが固有筋層B2上に落ち込むことを防止できる。
また、任意の位置にクリップ11を配置できるため、切除した病変部Xにより内視鏡20の視界が妨げられることがない。
【0044】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。例えば、コイル状磁気誘導手段3は、磁性ゴムや磁性樹脂からなる筒状体であってもよい。また、内視鏡20の挿入部21を真っ直ぐな状態で患者Aの体内に挿入可能であれば、コイル状磁気誘導手段13はコイル状のものでなくてもよく、例えば、磁性体からなる変形不能な筒状体であってもよい。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、従来の内視鏡用誘導手段遠隔誘導システムに比べて、部品点数を削減できるとともに、内視鏡に装着されたコイル状磁気誘導手段が、内視鏡の観察窓の視野を妨げることがなく、しかもコイル状磁気誘導手段の対象物内部への挿入作業を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態の磁気誘導装置の全体図である。
【図2】 クリップが開いた状態の磁気誘導装置の全体図である。
【図3】 クリップが閉じた状態の磁気誘導装置の全体図である。
【図4】 内視鏡の全体図である。
【図5】 病変部の切除が行われる患者を載せたベッドと、磁気誘導手段誘導装置を、患者の頭部側から見た図である。
【図6】 患者を載せたベッドと、磁気誘導手段誘導装置の側面図である。
【図7】 鉗子チャンネル内に、磁気誘導装置と連係した状態で操作装置を挿入した状態を示す、内視鏡先端部の拡大縦断側面図である。
【図8】 開いた状態で、内視鏡の先端から突出したクリップが、病変部を掴む直前の状態を示す拡大縦断側面図である。
【図9】 内視鏡の先端から突出したクリップが閉じて、病変部を掴んだ状態を示す拡大縦断側面図である。
【図10】 内視鏡の内部において、磁気誘導装置と操作装置が分離した状態を示す拡大縦断側面図である。
【図11】 クリップが病変部を把持した後に、磁気誘導手段誘導装置を用いて、病変部を持ち上げている状態を示す拡大縦断側面図である。
【図12】 把持鉗子で病変部を把持した磁気誘導手段を把持する状態を示す図である。
【符号の説明】
10 磁気誘導装置
11 クリップ(掛着部材)
11a 基部
11a1 挿入孔
11b 傾斜部
11c 先端部(開閉爪)
11d 爪部(開閉爪)
12 牽引分離部材(開閉手段)
12a 挿入片
12b 抜け止め部
12c 鈎部
13 コイル状磁気誘導手段
20 内視鏡
21 挿入部
22 先端面
23 鉗子チャンネルの出口
24 鉗子挿入口突起
24a 入口
30 操作装置
31 挿入管
32 挿入コイル(押圧部材)(開閉手段)
33 規制管(押圧部材)(開閉手段)
33a 大径部
33a1 環状段部
33b 小径部
34 フック部
35 操作ワイヤ(開閉手段)
40 磁気誘導手段誘導装置
41 ベッド
41a 床板
42 XYステージ(一方向移動機構)
43 フレーム/レール(一平面内移動機構)
44 45 レール
46 磁気誘導部材
47 電磁石
48 基体
49 カウンターウェイト
50 高周波メス
50a 先端部
60 把持鉗子
61 把持部材
A 患者(対象物)
A1 頭部
B 臓器
B1 粘膜下層
B2 固有筋層
C 鉗子チャンネル
X 病変部(対象部位)

Claims (4)

  1. 複数の開閉爪を有し、該開閉爪を閉じることにより対象物内部の対象部位を掛着する掛着部材と、
    両端が開口し、自身の内周面によって上記掛着部材を相対移動可能に支持し、該掛着部材が自身の内部において相対移動したときに上記開閉爪を開閉させる、磁性及び弾性を有するコイル状磁気誘導手段と、
    上記コイル状磁気誘導手段内で掛着部材を相対移動させる開閉手段と、
    上記対象物外部に配置され、磁界を発生して、該磁界から生じる磁力により、上記掛着部材と一体化したコイル状磁気誘導手段を所定方向に移動させる磁気誘導手段誘導装置と、
    を具備することを特徴とする内視鏡用誘導手段遠隔誘導システム。
  2. 請求項1記載の内視鏡用誘導手段遠隔誘導システムにおいて、上記コイル状磁気誘導手段と該コイル状磁気誘導手段に閉じた状態で支持された掛着部材とは、内視鏡の鉗子チャンネル内に挿入可能な寸法である内視鏡用誘導手段遠隔誘導システム。
  3. 請求項2記載の内視鏡用誘導手段遠隔誘導システムにおいて、
    上記開閉手段は、
    上記鉗子チャンネル内に挿通され操作部側から牽引操作可能な操作ワイヤと;
    この操作ワイヤと、上記鉗子チャンネル内に挿入されている掛着部材とを接続する、操作ワイヤに加える操作力で切断可能な牽引分離部材と;
    上記鉗子チャンネル内にあって、上記操作ワイヤの牽引力に抗してコイル状磁気誘導手段と掛着部材とを保持する、該コイル状磁気誘導手段と掛着部材とを押し出し可能な押出部材と;
    を備えている内視鏡用誘導手段遠隔誘導システム。
  4. 請求項1から3のいずれか1項記載の内視鏡用誘導手段遠隔誘導システムにおいて、
    上記磁気誘導手段誘導装置は、
    発生する磁界によって磁力を生じさせて、該磁力によって、上記磁気誘導手段を所定方向に移動させる磁気誘導部材と、
    該磁気誘導部材を特定の一平面内に配置したU字状のフレーム部材に沿って移動させる一平面内移動機構と、
    上記U字状のフレーム部材を上記一平面と直交する方向に相対移動させる一方向移動機構と、
    を有する内視鏡用誘導手段遠隔誘導システム。
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