JP4338443B2 - 内視鏡用把持装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、内視鏡観察下で病変部を切除する際に、磁界によって誘導可能な磁気誘導手段を用いて、患者の病変部を把持するための内視鏡用把持装置に関する。
【0002】
【従来技術及びその問題点】
内視鏡を用いた手術の一態様として磁気誘導手段(磁気アンカー)を用いて病変部を持ち上げて切除する手法がある。この手法では、磁気誘導手段と、この磁気誘導手段に連結されたクリップとを患者体内に導入し、外部磁界により磁気誘導手段を誘導することにより、クリップにより把持された病変部を任意の方向に所望量だけ持ち上げることができる。この磁気誘導手段は、外部磁界による動力を十分得るために一定の体積を備えている必要がある。
【0003】
しかし、従来の磁気誘導手段は、その大きさのために、術後の回収時に患者の内壁に引っかかることが多かった。このため、患者にかかる負担が大きく、回収に時間や手間がかかっていた。
【0004】
【特許文献】
特願2002−268239号明細書
【0005】
【発明の目的】
そこで本発明の目的は、回収時に磁気誘導手段が体壁に引っかかることが少なくなり、患者にかかる負担が小さくなり、回収をより容易かつ安全に行うことができる内視鏡用把持装置を提供することにある。
【0006】
【発明の概要】
上記問題点を解決するために、本発明の内視鏡用把持装置においては、対象物内部の対象部位を把持する把持部材と、磁性体からなり、上記対象物外部で発生した磁力によって吸引される誘導手段部と、前記把持部材と前記誘導手段部とを連結する連結部材と、を有し、前記誘導手段部は、分離可能な複数の誘導手段と、前記複数の誘導手段を集合状態で保持するための保持部材とを備え、前記複数の誘導手段は、前記保持部材による保持が解除された状態では分離されて互いに自由になることを特徴としている。
【0007】
保持部材は弾性材料からなることが好ましく、その弾性により複数の誘導手段を保持し、変形することにより複数の誘導手段を解放することができる。
【0008】
保持部材は、積み重ねた状態の複数の誘導手段を両端から挟持して保持することができる。
【0009】
また、複数の誘導手段に積み重ねた状態で一連の貫通穴を形成する穴部を備え、保持部材は貫通穴に挿入されると拡がって前記貫通穴の内壁に当接させることができる。
【0010】
【発明の実施形態】
以下、本発明にかかる実施形態を図面を参照しつつ詳しく説明する。
<第1実施形態>
第1実施形態にかかる内視鏡用把持装置1は、クリップ(把持部材)10、磁気誘導手段部(誘導手段部)30、連結部材20を有する。
【0011】
(1)構成
図1乃至図3に示すように、クリップ10は、略円形の基端部10aの外径に対して、同一形状の長い板状部材11、12、13それぞれの長手方向の一端部を固定して形成した弾性部材である。板状部材11、12、13は、基端部10aの外径において120度間隔に配置されており、底面を内側に向けて互いに平行に延びている。なお、クリップ10は、病変部を把持できれば板状部材の数は2枚であってもよいし、3枚以上であってもよい。
【0012】
一方、基端部10aに固定されていない他端部には、内側へ屈曲させた爪部11a、12a、13aが形成されている。このため、板状部材11、12、13を互いに近づくように付勢すると、爪部11a、12a、13a間に対象物を挟持することができる。
【0013】
また、板状部材11、12、13それぞれの長手方向の同一位置においては、板状部材11、12、13を屈曲させることによりその前後部分よりも外方へ突出した凸部11b、12b、13bと、内方へ狭まった凸部11b、12b、13bの前方端から再び外方へ広がる傾斜部11c、12c、13cと、傾斜部11c、12c、13cの前方端から爪部11a、12a、13aへ延びる先端部11d、12d、13dが設けてある。
【0014】
この構成においては、凸部11b、12b、13bを内方に付勢する力を加えると、その前後の屈曲角度が変化するため、傾斜部11c、12c、13c及び先端部11d、12d、13dは外方へ広がる(図3)。凸部11b、12b、13bを内方に付勢した状態で、さらに傾斜部11c、12c、13c及び先端部11d、12d、13dを内方に付勢する力を加えると、今度は、傾斜部11c、12c、13c及び先端部11d、12d、13dは互いの間隔が狭まるように屈曲角度が変化する。
【0015】
クリップ10の内側には、クリップ10と磁気誘導手段部30を連結するための柔軟性を有する連結部材20が挿通されている。連結部材20としては、例えば、手術用縫合糸、釣糸、金属製ワイヤを使用することができる。
【0016】
図1、2、4に示すように、連結部材20に連結される磁気誘導手段部30は、略円盤状であって同一の軸直交断面形状を有する3個の誘導手段32、33、34からなる分離可能な集合体と、この誘導手段32、33、34を積み重ねた状態で挟持可能なコイルバネ(保持部材)35とを有する。
【0017】
誘導手段32、33、34は、強磁性体からなり、電磁石、永久磁石などの磁気誘導部材を用いることによって吸引制御可能である。誘導手段32、33、34に用いる磁性体としては、純鉄、鉄合金のほか、プラチナマグネット、希土類磁石、テルビウム・ディスプロシウム・鉄合金などの磁石を使用することができる。
【0018】
磁気誘導手段部30がコイルバネ35に挟持されるときに誘導手段32及び34に挟まれる誘導手段33は、その円形の両端面33a、33bそれぞれの中心に、外方に突出する嵌合凸部33c、33dを備えている。一方、誘導手段32と34は同一形状であって、誘導手段32の円形の両端面32a、32b及び誘導手段34の円形の両端面34a、34bのそれぞれには、内方に窪んだ嵌合凹部32c、32d、34c、34dが設けられている。このような構成のため、嵌合凹部32dに嵌合凸部33cを、嵌合凹部34cに嵌合凸部33dを、それぞれ嵌合させて誘導手段32、33、34を積み重ねて一体化することによって、誘導手段32、33、34の中心軸合わせを容易に行うことができる。誘導手段の個数は2個以上であればよく、その形状は本実施形態のような円盤状のものに限定されない。
【0019】
コイルバネ35は、コの字状の本体部35aと、連結部材20を連結するために本体部35aの中央部をリング状に整形してなる連結部35bと、を有する。本体部35aの両方の先端部35c、35dは内方に折り曲げられており、先端部35c及び35dをそれぞれ積み重ねた状態の誘導手段32、33、34の嵌合凹部32c及び34dに嵌合させると、コイルバネ35の弾性により誘導手段32及び34はそれぞれ誘導手段33へ向かって付勢されるため、誘導手段32、33、34の積み重ね状態(結合状態、集合状態)が維持される。
【0020】
ここで、把持鉗子などにより連結部35bをつぶすように変形させると、コイルバネ35は、その弾性によって、先端部35c及び35dが外方に拡がるように変形する。よって、先端部35c及び35dがそれぞれ嵌合凹部32c及び34dに嵌合しているときに、先端部35dをつぶすように変形させると、先端部35c及び35dは外方に拡がって嵌合凹部32c及び34dとの嵌合が解除され、結合状態にあった誘導手段32、33、34は分離可能となる。
【0021】
このように連結部材20を介してクリップ10と磁気誘導手段部30とを連結してあるため、磁気誘導手段部30を吸引制御することによって、クリップ10を所望の方向に牽引することができる。
【0022】
また、基端部10a近傍部分においては、板状部材11、12、13は、その外面が当接可能な内径を有する略円筒状のクリップ受容管(把持部材受容管)40内に挿入されている。このとき、板状部材11、12、13の後部11e、12e、13eの少なくとも一部が大径部46内に受容されている。クリップ受容管40は、例えばステンレスパイプ、プラスチックチューブや超弾性合金により形成することができ、その径方向において対向する位置には、一対のスリット41、42が設けられている。スリット41、42は、クリップ受容管40の中心線(略円形の断面の中心を結ぶ線)に平行な方向において、クリップ10が挿入される側にシフトした所定位置43を前端部として、誘導手段側端部44まで延びており、その後端部は開放されている。なお、スリットは1つでもよい。
【0023】
磁気誘導手段部30に連結された連結部材20は、スリット41、42を通してクリップ受容管40内に導入され、かつ、基端部10aに通される。この構成によって、クリップ10と磁気誘導手段部30とはクリップ受容管40を介して連結される。
【0024】
スリット41、42は、後端部が端部44まで抜けてはいる(開放されている)が、前端部はクリップ受容管40の先端まで抜けてはおらず、途中の所定位置43で止められている。この構成により、端部44側からスリット41、42に挿入された連結部材20のクリップ10側(前側)への移動は所定位置43によって規制されることになる。一方、連結部材20の端部44側(後側)への移動は、クリップ受容管40内に挿入されたクリップ10の基端部10aによって規制される。
【0025】
また、クリップ受容管40の外径は所定位置43より後側にシフトした位置に設けた段差部45の前後で異なっている。すなわち、段差部45の前方側の大径部(前部)46の外径は、段差部45の後方側の小径部(後部)47の外径より小さく設定されている。
【0026】
基端部10aには、金属製のループワイヤ(牽引分離手段)50が通されている。ループワイヤ50は、所定以上の強い力で牽引したときに切断するものであれば金属製以外のものであってもよい。クリップ受容管40内にその一端が挿入されたクリップ10は、ループワイヤ50を後側に引くことによって、各部分がクリップ受容管40の内壁に順次当接して弾性変形しつつクリップ受容管40内に挿入可能である。
【0027】
具体的には、ループワイヤ50を後側に引くことによって、凸部11b、12b、13bがクリップ受容管40の内壁に当接すると、凸部11b、12b、13bは互いに接近するように内側に撓む。これにより、先端部11d、12d、13dは互いに離間するし、クリップ10は開いた状態となる。さらにループワイヤ50を後側に引くと、傾斜部11c、12c、13cがクリップ受容管40の内壁に当接し、傾斜部11c、12c、13cは互いに接近するように内側に撓む。すると、先端部11d、12d、13dは互いに接近し、クリップ10は閉じた状態となる。
【0028】
以上のように連結されたクリップ10、連結部材20、磁気誘導手段部30、クリップ受容管40及びループワイヤ50は、中空円筒状の導入管70を用いて患者(対象物)101体内に導入される。
【0029】
導入管70は可撓性を有する材料からなり、図5、図6に示すように、内視鏡90の鉗子挿入口91から先端硬性部60の鉗子チャンネル61に挿通されている。導入管70の内壁には、導入管70の長手方向において、導入管70に対して相対移動可能な挿入コイル71が配置されている。挿入コイル71の先端硬性部60側先端には、規制管72が接着剤、はんだ、ロウなどによって固定されている。規制管72には段部73が設けられており、段部73の前方部分74の外径は導入管70の内径とほぼ同一である。一方、前方部分74より外径の小さい後方部分75の外径は、挿入コイル71が形成する中空円筒の内径とほぼ同一である。したがって、後方部分75の外周に挿入コイル71を固定すると、挿入コイル71が形成する中空円筒の外周と前方部分74の外周がほぼ同一面となる。
【0030】
一方、前方部分74の内径は、後方部分75の内径より大きく設定されている。さらに前方部分74の内径及び後方部分75の内径は、それぞれ、クリップ受容管40の大径部46の外径及び小径部47の外径とほぼ同一である。このため、規制管72内にクリップ受容管40を挿入することができ、かつ、段差部45が規制管72の先端面76に当接することによってクリップ受容管40の移動が規制される。ここで、クリップ受容管40の中心線の方向において、所定位置43は、段差部45より前側に配置されているため、段差部45と段部73が当接するまでクリップ受容管40が規制管72内に挿入されたとしても、スリット41、42が規制管72によって完全に覆われてしまうことはない。よって、この状態においても、連結部材20はクリップ受容管40内から外部へ延出可能である。
【0031】
挿入コイル71、規制管72内には、先端にフック部81が設けられた操作ワイヤ80が挿入コイル71、規制管72に対して相対移動可能に配置されている。フック部81は、接着剤、はんだ、ロウなどによって、その後端が操作ワイヤ80に固定されている。操作ワイヤ80は導入管70よりも充分長く、その後端部80aは鉗子挿入口91から外部に突出した導入管70から延出している。フック部81の中央部分は凹部82となっており、ループワイヤ50の端部をこの凹部82に掛け止めて操作ワイヤ80を牽引することによって、ループワイヤ50を介してクリップ10をクリップ受容管40内に引き込むことができる。操作ワイヤ80の牽引は、内視鏡90から延出した後端部80aを引くことによって行う。
【0032】
一方、磁気誘導手段部30は、患者101の体外において磁気誘導手段部30を吸引制御する(磁気誘導手段部30に動力を与える)磁気誘導部材112を有する磁気誘導手段誘導装置110によってその位置が制御される。磁気誘導部材112は、鉄心にコイルを巻いた構造の電磁石112cを基体112a上に配置したものである(図7)。
【0033】
以上の磁気誘導部材112は、図7に示すように、患者101が横たわったベッド116を上から囲むようにして配置されたフレーム/レール(一平面内移動機構)114上に擦動可能に電磁石112cが患者に対向するように載置されている。このフレーム/レール114は一平面内において平行に配置されたU字状の二本のレール114a、114bからなり、ベッド116の床板116aの幅方向に平行に、二つのXYステージ(一方向移動機構)119の間に掛け渡されている。また、XYステージ118は、フレーム/レール114が設けられた平面と直交する方向に相対移動可能である。以上の構成により、磁気誘導部材112は、基体112aがフレーム/レール114と擦動して二つのXYステージ118、119間を移動することができる。なお、磁気誘導部材112は、フレーム/レール114の平行な二本のレール114a、114bのうち患者101に近い側のレール114aに配置されている。
【0034】
フレーム/レール114の患者101から遠い側のレール114bには、フレーム/レール114全体の重量バランスを保つためのカウンターウエイト120がレール114b上を擦動可能に配置されている。カウンターウエイト120は、磁気誘導部材112の位置に応じて、その位置を変更する。例えば、磁気誘導部材112が患者101の正面にあるときは、カウンターウエイト120は患者101の背面に配置し、磁気誘導部材112が患者101の背面にあるときは、カウンターウエイト120は患者101の正面に配置して、フレーム/レール114全体の重量バランスをとっている。
【0035】
以上のように磁気誘導部材112、XYステージ118、119、フレーム/レール114等を配置したことにより、病変部(対象部位)130切除のために最適な位置に磁気誘導部材112を配置することができる。したがって、病変部を切除しやすいように持ち上げるために、磁気誘導手段部30を吸引して(動力を与えて)、磁気誘導手段部30とクリップ10を適切な位置に配置することが可能である。
【0036】
(2)切除術実施の準備
図7に示すように、本発明に係る内視鏡用把持装置1を用いた切除術の実施に先立っては、まず、局所麻酔を施した患者101をベッド116上に横たわらせる。このときフレーム/レール114は、XYステージ118、119によって患者101の頭部101aが来る側に退避してあり、磁気誘導部材112及びカウンターウエイト120は所定の位置に配置されている。患者101がベッド116に横たわると、XYステージ118、119を操作することによってフレーム/レール114を患者の病変部の正面に配置し、つづいてフレーム/レール114上で擦動させることによって磁気誘導部材112を切除術開始時の位置に配置する。
【0037】
(3)磁気誘導手段部30及びクリップ10の体内への導入操作
本発明の内視鏡用把持装置1においては、クリップ10及び磁気誘導手段部30の体内への導入は、体内に内視鏡の先端硬性部60を導入することによって行う。先端硬性部60内には、先端に磁気誘導手段部30が、磁気誘導手段部30につづいて内部にクリップ10が配置された導入管70が挿通される。クリップ10は、爪部11a、12a、13aを先端硬性部60の先端側に向けて配置される(図4、図8〜11)。
【0038】
クリップ10と磁気誘導手段部30の導入管70内への配置は以下のように行う(図4)。
クリップ10と磁気誘導手段部30は、スリット41及びスリット42からクリップ受容管40内に通された連結部材20を介して連結された状態で導入管70内に挿入される。挿入の際には、あらかじめクリップ10内に通されたループワイヤ50を、導入管70内に挿通された操作ワイヤ80の先端に固定されたフック部81の凹部82に掛け止める。この状態でクリップ10及び磁気誘導手段部30と連関したクリップ受容管40を導入管70内に配置した規制管72内に挿入していく。この挿入動作は、クリップ受容管40の段差部45と規制管72の段部73とが突き当たることによって、クリップ受容管40の移動が規制されて終了する。
【0039】
図2、図4に示すように、本発明の内視鏡用把持装置1においては、クリップ受容管40につづいてクリップ10が挿入され、次に磁気誘導手段部30のうち連結部35bが挿入される。スリット41、42の端部位置である所定位置43は、クリップ受容管40の段差部45に対して、クリップ受容管40の中心線の方向において前方側の位置に配置されているため、段差部45と段部73とが突き当たるまでクリップ受容管40が規制管72に挿入されたとしても、所定位置43においてはスリット41、42は規制管72によって閉じられずに開口している状態にある。よって、クリップ10と磁気誘導手段部30とを連結する連結部材20は、所定位置43においてスリット41、42からクリップ受容管40の外部へ延出することができる。また、連結部材20は、磁気誘導手段部30をクリップ10の前方に配置することを妨げないだけの十分な長さを有しているため、挿入動作完了時には磁気誘導手段部30、クリップ10、クリップ受容管40が一直線上に配置される。
【0040】
クリップ10と磁気誘導手段部30の患者101体内への導入は以下のように行う。
まず先端硬性部60を体内に導入した後、操作ワイヤ80を操作することによって規制管72を前方側へ付勢する。これによって、段差部45が段部73と当接しているクリップ受容管40が前方へ押され、これにともなって一端がクリップ受容管40に圧入されているクリップ10も前方へ進み、クリップ10の先端が連結部35bの後端に当接する。この状態からさらに規制管72を前方に付勢すると、連結部35bは規制管72から押し出される。またさらに規制管72を前方に付勢すると、図8に示すように、クリップ10、クリップ受容管40及び規制管72は導入管70の先端から患者101の体内に露出される。このとき、クリップ10及びクリップ受容管40は導入管70の長手方向において一直線上に配置されている。よって、先端硬性部60を病変部130に向けて配置すれば先端硬性部60内に配置された導入管70も病変部130に向くため、容易にクリップ10の先端を病変部130に向けることができる。
【0041】
クリップ10の病変部130への取り付けは以下のように行う(図9乃至図12)。なお、図9及び図10においては、説明の都合上板状部材12を省略している。
【0042】
まず、先端部11d、12d、13dを開くために、操作ワイヤ80を挿入コイル71及び規制管72に対して相対的に移動させることによって操作ワイヤ80を牽引して凸部11b、12b、13bをクリップ受容管40内に引き込む。規制管72内に引き込まれた凸部11b、12b、13bは、クリップ受容管40の内壁に当接するため、互いに近づく方向に撓む。凸部11b、12b、13bがこのように撓むことによって、先端部11d、12d、13dは互いに離間するように撓み、その結果クリップ受容管40から露出したクリップ10の先端側が開くことになる(図9)。
【0043】
このように開いたクリップ10を、挿入コイル71、規制管72及び操作ワイヤ80を一体に移動させて病変部130に向けて進行させ、クリップ10の先端が所望の位置に来たところでクリップ10を閉じることによって、病変部130をクリップ10で把持することができる。クリップ10を閉じるためには、操作ワイヤ80を挿入コイル71及び規制管72に対して相対的に移動させることによって操作ワイヤ80を牽引して傾斜部11c、12c、13cをクリップ受容管40内に引き込む。クリップ受容管40内に引き込まれた傾斜部11c、12c、13cは、クリップ受容管40の内壁に当接するため、互いに近づく方向に撓み、これにともなって先端部11d、12d、13dは互いに近づくように撓み、その結果クリップ受容管40から露出したクリップ10の先端側が閉じることになる(図10)。
【0044】
次に、クリップ受容管40及び連結部材20を介して連結されたクリップ10及び磁気誘導手段部30と、挿入コイル71、規制管72、操作ワイヤ80及びフック部81を内部に備える導入管70と、を分離してクリップ10の病変部130への取り付けを完了する。この分離動作は、操作ワイヤ80を強く引いてフック部81に掛け止められたループワイヤ50を切断し(図11)、その後、挿入コイル71、規制管72、操作ワイヤ80及びフック部81を後退させることによって行う(図12)。
【0045】
(4)切除術のステップ
以上のように構成した磁気誘導手段誘導装置110を用いた病変部130の切除工程について説明する。
まず、病変部130の周辺から粘膜下層(不図示)に挿入した注射針で生理食塩水を注入して、病変部130を固有筋層(不図示)から浮き上がらせておく。
【0046】
一方、磁気誘導部材112を病変部130付近のあらかじめ設定した位置に配置する。このようにセットすると、病変部130は磁気誘導部材112と磁気誘導手段部30との間の吸引力により持ち上げられる。病変部130の持ち上げ量が不足するまたは大きすぎる場合は、磁気誘導部材112の位置をずらしたり磁気誘導部材112の発生する磁界を弱めることによって調整する。
【0047】
つづいて、高周波メスなどの切開具を鉗子チャンネル61から体内に導入し、病変部130を粘膜とともに端部から切除していく。このとき、病変部130はクリップ10により持ち上げられているため、切除部分を十分とることができ、すでに切除した病変部130が固有筋層上に落ち込むことも防ぐことができる。また、磁気誘導部材112の位置を徐々にずらすことにより切除された病変部130をさらに持ち上げることができるため、高周波メスの先端位置の確認が容易となり切除作業をスムーズに行うことができる。
【0048】
(5)内視鏡用把持装置1及び病変部130の回収
切除作業が終わると、クリップ10が病変部130を把持した状態で磁気誘導手段部30が磁気誘導部材112に引き寄せられるため、病変部130が紛失することを防ぐことができる。切除した病変部130及び内視鏡用把持装置1の回収は、図13〜15に示すように、把持鉗子100を用いて磁気誘導手段部30を誘導手段32、33、34及びコイルバネ35に分離して行うことができる。このため、回収時に磁気誘導手段部30が体壁に引っかかることが少なくなり、患者にかかる負担が小さくなり、内視鏡用把持装置1の回収をより容易かつ安全に行うことができる。
【0049】
磁気誘導手段部30の分離は以下のように行う。
まず、図13に示すように、鉗子チャネル61から把持鉗子100を導入してこの把持鉗子100で連結部35bを挟持する。把持鉗子100を操作して連結部35bを挟持する力を強くすると、コイルバネ35の弾性により連結部35bは徐々につぶれるように変形し、これにともない本体部35aはそのコの字形状が開いていくように変形する。すると、先端部35c及び35dはそれぞれ嵌合凹部32c及び34dから外れ(図14)、誘導手段32、33及び34はコイルバネ35から受けていた拘束から解放されるため分離される(図15)。
【0050】
その後、コイルバネ35、病変部130を把持したクリップ10、連結部材20、クリップ受容管40は、把持鉗子100で把持した状態で、内視鏡を抜き去ることにより回収される。一方、誘導手段32、33及び34は、磁気誘導部材112への電流の供給を止めた状態で、それぞれ把持鉗子100で把持し、内視鏡を抜き去ることにより回収される。その後、縫合、消毒などの処置を行う。
【0051】
なお、磁気誘導手段部30は、重力を用いて牽引してもよい。
【0052】
<第2実施形態>
つづいて、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の内視鏡用把持装置140においては、第1実施形態の磁気誘導手段部30に代えて磁気誘導手段部(誘導手段部)150を用いている。その他の構成は第1実施形態と同様であって、同じ部材については同じ参照符号を使用する。
【0053】
図16〜19に示すように、連結部材20の端部に連結される磁気誘導手段部150は、略円盤状であって同一の軸直交断面形状を有する3個の誘導手段152、153、154からなる分離可能な集合体と、この誘導手段152、153、154を積み重ねた状態で保持可能なバネ(保持部材)155とを有する。
【0054】
誘導手段152、153、154は、強磁性体からなり、電磁石、永久磁石などの磁気誘導部材を用いることによって吸引制御可能である。誘導手段152、153、154に用いる磁性体としては、純鉄、鉄合金のほか、プラチナマグネット、希土類磁石、テルビウム・ディスプロシウム・鉄合金などの磁石を使用することができる。
【0055】
バネ155は、Cの字状の連結部155aと、この連結部155aの2つの端部から直線状に延びる本体部155b、155cと、本体部155b、155cそれぞれの先端において外方に屈曲した先端部155d、155eとを備える。
連結部155aをつぶすように変形させると、バネ155の弾性によって、本体部155bと155cとが互いに近づくようにバネ155は変形する。なお、連結部155aに力を加えていないときの本体部155bと155cは、互いに平行、または、先端部155d及び155eに向かうほど間隔が広がる状態にある。
【0056】
誘導手段152、153、154には、それぞれの中心軸方向に貫通する穴部152a、153a、154a(図18)が設けられている。穴部152a、153a、154aは、それぞれ誘導手段152、153、154の中心軸と同心の同一内径の丸穴であって、誘導手段152、153、154をその中心軸が一致するように重ねると、誘導手段152、153、154を貫通する一連の穴156(図18)が形成される。穴部152a、153a、154aは、平行な状態の本体部155bと155cが、ちょうどその内壁に当接するような内径を備えている。また、本体部155b及び155cの長さは穴156の長さと同一としてある。
【0057】
以上の構成において、バネ155を穴156内に挿入すると、バネ155は穴156内でその弾性により拡がって穴部152a、153a、154aの内壁に当接し、かつ、先端部155d及び155eが誘導手段152の外側端面152bに当接して抜け止められることとなり、誘導手段152、153、154の中心軸合わせを容易に行うことができる。
【0058】
また、内視鏡用把持装置140の回収は、図17〜19に示すように、把持鉗子100を用いて磁気誘導手段部150を誘導手段152、153、154及びバネ155に分離して行うことができる。このため、回収時に磁気誘導手段部150が体壁に引っかかることが少なくなり、患者にかかる負担が小さくなり、内視鏡用把持装置140の回収をより容易かつ安全に行うことができる。
【0059】
磁気誘導手段部150の分離は以下のように行う。
まず、図17に示すように、鉗子チャネル61から把持鉗子100を導入してこの把持鉗子100で連結部155aを挟持する。把持鉗子100を操作して連結部155aを挟持する力を強くすると、バネ155の弾性により連結部155aは徐々につぶれるように変形し、これにともない先端部155dと155eとが接近するように磁気誘導手段部150は変形する。先端部155d及び155eが接触するまで変形すると(図18)、バネ155から誘導手段152、153、154への付勢力はなくなり、かつ、先端部155d及び155eによる抜け止め作用がなくなるため、誘導手段152、153及び154は分離される(図19)。
【0060】
その後、バネ155、病変部130を把持したクリップ10、連結部材20、クリップ受容管40は、把持鉗子100で把持した状態で、内視鏡を抜き去ることにより回収される。一方、誘導手段152、153及び154は、磁気誘導部材112への電流の供給を止めた状態で、把持鉗子100で把持し、内視鏡を抜き去ることにより回収される。その後、縫合、消毒などの処置を行う。
なお、その他の作用、効果、変形例は第1実施形態と同様である。
【0061】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、磁気誘導手段を分離可能な複数の誘導手段として、使用時には一体として保持し、回収時には分離することにより、回収時に磁気誘導手段部30が体壁に引っかかることが少なくなり、患者にかかる負担が小さくなり、内視鏡用把持装置1の回収をより容易かつ安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る内視鏡用把持装置の構成を示す側面図である。
【図2】 本発明の第1実施形態に係る内視鏡用把持装置の構成を示す一部斜視図である。
【図3】 本発明の第1実施形態に係る内視鏡用把持装置のクリップの構成を示す正面図である。
【図4】 本発明の第1実施形態に係る内視鏡用把持装置の構成を示す一部断面図である。
【図5】 本発明の第1実施形態に係る導入管、挿入コイル、コイル規制管、フック部及び操作ワイヤの構成を示す一部断面図である。
【図6】 本発明の第1実施形態に係る内視鏡の全体構成を示す概観図である。
【図7】 本発明の第1実施形態に係る病変部の切除を行うときの患者を載せたベッド、磁気誘導部材等の配置を患者の頭部側から見た概観図である。
【図8】 本発明の第1実施形態に係るクリップ受容管がコイル規制管に受容された状態を示す図である。
【図9】 本発明の第1実施形態に係るクリップが開いた状態を示す一部断面図である。
【図10】 本発明の第1実施形態に係るクリップが閉じた状態を示す一部断面図である。
【図11】 本発明の第1実施形態に係るループワイヤの一部が切断された状態を示す側面図である。
【図12】 本発明の第1実施形態に係るクリップと、導入管、コイル規制管、フック部とが分離された状態を示す側面図である。
【図13】 本発明の第1実施形態に係るクリップが病変部を把持した状態の内視鏡用把持装置を示す図である。
【図14】 本発明の第1実施形態に係る磁気誘導手段部のコイルバネの本体部を把持鉗子で挟持したときの状態を示す一部断面図である。
【図15】 本発明の第1実施形態に係る誘導手段が分離された状態を示す図である。
【図16】 本発明の第2実施形態に係る内視鏡用把持装置の構成を示す一部斜視図である。
【図17】 本発明の第2実施形態に係るクリップが病変部を把持した状態の内視鏡用把持装置を示す図である。
【図18】 本発明の第2実施形態に係る磁気誘導手段部のバネの連結部を把持鉗子で挟持したときの状態を示す一部断面図である。
【図19】 本発明の第2実施形態に係る誘導手段が分離された状態を示す一部断面図である。
【符号の説明】
1 内視鏡用把持装置
10 クリップ(把持部材)
20 連結部材
30 磁気誘導手段部(誘導手段部)
32 誘導手段
33 誘導手段
34 誘導手段
35 コイルバネ(保持部材)
101 患者(対象物)
130 病変部(対象部位)
140 内視鏡用把持装置
150 磁気誘導手段部(誘導手段部)
152 誘導手段
153 誘導手段
154 誘導手段
155 バネ(保持部材)

Claims (4)

  1. 対象物内部の対象部位を把持する把持部材と、
    磁性体からなり、上記対象物外部で発生した磁力によって吸引される誘導手段部と、
    前記把持部材と前記誘導手段部とを連結する連結部材と、
    を有し、
    前記誘導手段部は、分離可能な複数の誘導手段と、前記複数の誘導手段を集合状態で保持するための保持部材とを備え、
    前記複数の誘導手段は、前記保持部材による保持が解除された状態では分離されて互いに自由になることを特徴とする内視鏡用把持装置。
  2. 前記保持部材は弾性材料からなり、その弾性により前記複数の誘導手段を保持し、変形することにより前記複数の誘導手段を解放する請求項1記載の内視鏡用把持装置。
  3. 前記保持部材は、積み重ねた状態の前記複数の誘導手段を両端から挟持して保持する請求項2記載の内視鏡用把持装置。
  4. 前記複数の誘導手段は積み重ねた状態で一連の貫通穴を形成する穴部を有し、前記保持部材は前記貫通穴に挿入されると拡がって前記貫通穴の内壁に当接する請求項2記載の内視鏡用把持装置。
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