JP4444424B2 - 半導体圧力センサ - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体圧力センサに関し、特に、半導体材料で形成したダイヤフラム等の構造体の歪みを検出することによって圧力を検出するタイプの半導体圧力センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シリコン等の半導体材料からなるダイヤフラム等の構造体を備え、圧力を受けた際に生じる構造体の歪みから圧力の大きさを検出する半導体センサが従来から知られている。この種の半導体センサは、シリコン構造体の歪みに伴う電気抵抗の変化を電気信号として取り出すものであり、半導体圧力センサとして自動車や家電製品等に応用されている。
【0003】
図21は、従来の半導体圧力センサの一例の要部を示す図である。一般に、この種の半導体圧力センサは、センサ素子が例えばPPS(Poly-Phenylene Sulfide)等の樹脂からなるパッケージ内に収容されて使用されることが多い。センサ素子101はダイヤフラム102、抵抗体(図示せず)を有するSi(シリコン)センサチップ103がガラス台座104に接合された構成となっており、シリコーンゴム、エポキシ樹脂等からなる接着剤105によってパッケージ106の底面106aに固定されている。また、パッケージ106には電気信号を取り出すための複数のリード107が設けられ、Siセンサチップ103上のパッド(図示せず)とリード107とが金ワイヤー108によって接続されている。
【0004】
この半導体圧力センサにおいては、パッケージ106の底面にセンサ外部と連通する圧力導入孔109が設けられており、センサが設置された環境の圧力はこの圧力導入孔109を通じてセンサ内部に導入され、Siセンサチップ103に加わる。そして、その圧力に応じてダイヤフラム102が歪み、歪みによって生じるSiセンサチップ103上の抵抗体の抵抗変化をリード107を通じて電気信号として取り出す構成となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構成の従来の半導体圧力センサには、以下のような問題点があった。
この半導体圧力センサを他の回路基板等に実装して使用する際に、例えば何らかの外力により回路基板が歪んだ場合などにパッケージ自体に過大な曲げ応力が発生することがある。また、リードを通じてパッケージに曲げ応力が発生する場合もある。その場合、この応力がSiセンサチップに加わると、圧力変動以外の要因によりダイヤフラムが歪むことになるので、この歪みがノイズとなってセンサの出力信号が変動してしまい、検出精度が低下するという問題が生じていた。
【0006】
この対策として、パッケージとセンサ素子との間に介在している接着剤の厚みを厚くし、接着剤によって応力を吸収することも検討された。ところが、一般に使用されている接着剤では、粘度等の物性の関係からむやみに厚くしても圧力導入孔に流れ出してしまったり、センサ素子が自重で接着剤に沈み込んだりするため、ある程度の厚み以上にすることはできなかった。さらに、応力吸収に最適な接着剤の厚みを見いだしたとしても、そのような厚みに制御することが困難であった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、センサ素子を固定する接着剤によりパッケージから伝わる外部応力を充分に吸収でき、ノイズの発生を防止することで高い検出精度を有する半導体圧力センサを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の半導体圧力センサは、センサ素子と、該センサ素子を収容する内部空間を有し、その底面にセンサ外部と連通する圧力導入孔が設けられたパッケージとを備え、前記圧力導入孔の縁部に沿って前記内部空間に向けて環状に突出する第1の凸部が設けられたことにより接着剤溜めが形成され、前記第1の凸部上に前記センサ素子が配置され前記接着剤溜めに接着剤が充填された状態で前記センサ素子が前記パッケージ内に固定され、さらに、前記センサ素子を裏面側から支持する第2の凸部が前記パッケージ内部の底面上にて前記第1の凸部の周囲に設けられ、前記第2の凸部は前記第1の凸部の周囲の複数箇所に前記第1の凸部から放射状に張り出すように設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の半導体圧力センサにおいては、パッケージの底面に第1の凸部を設け、その上にセンサ素子を配置する構成としたことにより、第1の凸部に対して凹んだ部分が接着剤溜めとなり、この中に接着剤を充填することができる。よって、パッケージを製作する際に第1の凸部の高さ(換言すると、凹部(接着剤溜め)の深さ)を所望の寸法に設定することによって、接着剤の厚みを任意に設定することができる。これにより、パッケージに加わる外部応力を充分に吸収することができ、圧力変動以外の要因によるダイヤフラムの歪みが抑制されるので、従来に比べて検出精度を向上させることができる。さらに、第1の凸部は圧力導入孔の縁部に内部空間に向けて突出するように形成されており、第1の凸部が圧力導入孔の延長のような形状となっている。よって、第1の凸部が圧力変動に対して抵抗となるようなこともなく、センサ外部の圧力がセンサ内部に円滑に導入される。
【0010】
さらに、この構成によれば、センサ素子を第1の凸部の上に載置するだけでは不安定な場合であっても、第1の凸部と第2の凸部が協働してセンサ素子を安定して支持することができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記第2の凸部の上部がR加工されていることを特徴とする請求項1記載の半導体圧力センサを提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
[参考例]
以下、本発明の参考例を図1〜図3を参照して説明する。図1は本参考例の半導体圧力センサの全体形状を示す平面図、図2は図1のA−A’線に沿う断面図である。本参考例の半導体圧力センサは、圧力導入パイプを有するセンサの例である。
【0014】
図1および図2は半導体圧力センサ1の全体形状を示しているが、蓋(図示略)を取った状態のパッケージ2の部分のみを示している。PPS等の樹脂からなるパッケージ本体3の下方に突出する圧力導入パイプ4がパッケージ本体3と一体に形成されている。パッケージ本体3には段状に掘り込まれた内部空間5が形成されており、この内部空間5の最下部のセンサ素子実装部5aに後述するセンサ素子6が収容される。本参考例の半導体圧力センサ1の場合、外部回路との間で信号のやり取りを行うためのリード7を6本有しており、6本のリード7はパッケージ本体3下部の第1の段部5b上に片側3本ずつ取り付けられている。なお、パッケージ本体3上部の第2の段部5cは、蓋を落とし込むための段部である。
【0015】
図3(a)はセンサ素子6が収容されたパッケージ本体3の最下部を拡大した断面図、図3(b)は平面図である。センサ素子6はダイヤフラム7、抵抗体(図示せず)を有するSiセンサチップ8がガラス台座9に接合されてなるものである。これらの図に示すように、パッケージ本体3の底面3aの中央には圧力導入パイプ4の中心を長手方向に貫通する圧力導入孔10が設けられ、圧力導入孔10を通じてセンサの内部と外部とが連通している。圧力導入孔10の縁に沿って上方(センサの内部空間)に向けて突出する環状の第1の凸部11が設けられており、第1の凸部11の周囲の、第1の凸部11の上面に対して凹んだ部分が接着剤溜め12となっている。そして、接着剤溜め12の内部に接着剤13が充填された状態でガラス台座9とパッケージ本体3の底面3aとが接着されたことにより、センサ素子6がパッケージ2に固定されている。
【0016】
本例の場合、例えば、接着剤13に熱硬化性のシリコーン系接着剤を用いるものとして、第1の凸部11の高さh(接着剤溜め12の深さ)は50μm程度に設定されている。これにより、センサ素子6とパッケージ本体3との間に介在する接着剤13の厚みをほぼ50μm程度にすることができる(実際には、第1の凸部11の上面上にも若干の接着剤13が載るため、接着剤13の厚みは厳密には第1の凸部11の高さより大きくなる)。また、平面視した際の第1の凸部11の面積は極力小さい方が望ましい。なぜならば、この部分は応力の吸収にはほとんど寄与しないからである。
【0017】
本例の半導体圧力センサ1においては、パッケージ本体3の底面に第1の凸部11を設けたことにより、第1の凸部11に対して凹んだ部分が接着剤溜め12となり、この中に接着剤13を充填することができる。よって、パッケージ製作時に第1の凸部11の高さを所望の寸法に設定することによって接着剤13の厚みを任意に設定することが可能になり、接着剤13自体の粘度等により自然に保持される厚み以上に厚くすることができる。このため、パッケージ2に加わる外部応力を充分に吸収することができ、圧力変動以外の要因によるダイヤフラム7の歪みが抑制されるので、従来に比べて圧力の検出精度を向上させることができる。また、第1の凸部11は圧力導入孔10の縁部に内部空間5に向けて突出するように形成されており、第1の凸部11が圧力導入孔10の延長のような形状となっている。よって、第1の凸部11が圧力変動に対して抵抗となるようなこともなく、センサ外部の圧力がセンサ内部に円滑に導入される。
【0018】
[本発明の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を図4〜図13を参照して説明する。本実施の形態の半導体圧力センサの基本構成は上述の参考例と全く同様であり、異なる点は、パッケージ内に第1の凸部に加えて第2の凸部を設けた点である。よって、以下の例ではセンサ全体の図示は省略し、センサ素子が実装されるパッケージの下部のみを図示する。以下の図面は全て(a)が平面図、(b)が断面図である。また、図1〜図3に示した参考例と共通の構成要素には同一の符号を付す。
【0019】
本実施の形態の半導体圧力センサは、図4(a)、(b)に示すように、圧力導入孔10の縁部に設けた環状の第1の凸部11に加えて、矩形状のセンサ素子実装部5aの対角線上にあたる圧力導入孔10の周囲の4箇所に円柱状の第2の凸部16が設けられている。第2の凸部16は第1の凸部11と同じ高さに形成されている。
【0020】
本発明の半導体圧力センサでは第1の凸部の上にセンサ素子を配置する形となるため、参考例のような構成では、センサ素子6を第1の凸部11の上に載置した際にセンサ素子6が若干不安定になり、センサ素子6が傾いて固定される恐れがある。これに対して、本実施の形態の場合、センサ素子6は第1の凸部11と第2の凸部16の双方に支持されるため、センサ素子6が傾いて固定されたりすることがない。
【0021】
本実施の形態における第2の凸部の形状は、図4(a)、(b)に示したもの以外にも様々なものが考えられる。
例えば、図5(a)、(b)に示すように、図4に示す第2の凸部16の上部をR加工して丸め、センサ素子6との接触面積を最小にした第2の凸部17を有するもの、図6(a)、(b)に示すように、センサ素子実装部5aの4つの角に3角形状の第2の凸部18を設けたもの、図7(a)、(b)に示すように、センサ素子実装部5a内の第1の凸部11から縦横4方向に張り出す第2の凸部19を設けたもの、図8(a)、(b)に示すように、図7に示す第2の凸部19をパッケージの内壁部まで延在させた第2の凸部20を有するもの、図9(a)、(b)に示すように、第1の凸部11の外側に環状の第2の凸部21を設けたもの、図10(a)、(b)に示すように、センサ素子実装部5a内の第1の凸部11から対角線に沿う4方向に張り出す第2の凸部22を設けたもの、図11(a)、(b)に示すように、センサ素子実装部5aの縁に沿って第2の凸部23を設けたもの、図12(a)、(b)に示すように、図10に示す第2の凸部22と図11に示す第2の凸部23とを組み合わせた形状の第2の凸部24を設けたもの、図13(a)、(b)に示すように、センサ素子実装部5a内の第1の凸部11の周囲に矩形状の第2の凸部25を設けたもの、等が挙げられる。いずれの形状のものも、センサ素子6を安定して支持できる、という図4のセンサと同様の効果を得ることができる。
【0022】
[他の参考例]
以下、本発明の他の参考例を図14〜図20を参照して説明する。図1〜図3に示した参考例、本発明の実施の形態では圧力導入パイプを有するセンサの例を挙げたが、本参考例では表面加圧型の半導体圧力センサの例を挙げる。このセンサにおいても基本構成は大きく変わらないため、以下ではセンサ素子実装部の平面図のみを図示する。
【0023】
本参考例の半導体圧力センサにおいては、図14に示すように、センサ素子実装部5aの4つの角に3角形状の第1の凸部31が設けられている。本例の場合、これら第1の凸部31は、その形状もしくは形成位置がセンサ素子の中心(重心)に対して点対称とされている。そして、第1の凸部31により接着剤溜めが形成され、第1の凸部31上にセンサ素子が支持されて接着剤溜めに接着剤が充填された状態でセンサ素子がパッケージ内に固定されている。
【0024】
本参考例の半導体圧力センサの場合、第1の凸部31は接着剤溜めを形成すると同時にセンサ素子を支持する役目を果たすものである。この場合も、第1の凸部31の高さを制御することにより接着剤の厚みを任意に設定でき、接着剤により外部応力を充分に吸収できるので、検出精度の向上を図ることができる。さらに、第1の凸部31の形状もしくは形成位置がセンサ素子の中心に対して点対称とされているので、第1の凸部31の上にセンサ素子を載置した際にセンサ素子を安定して支持することができる。
【0025】
本参考例における第1の凸部の形状は、図14に示したもの以外にも様々なものが考えられる。例えば、図15に示すように、センサ素子実装部5aの対角線上に4つの円形の第1の凸部32を設けたもの、図16に示すように、センサ素子実装部5aを縦横に4等分する線分上に4つの円形の第1の凸部33を設けたもの、図17に示すように、センサ素子実装部5aの中心を中心とした環状の第1の凸部34を設けたもの、図18に示すように、センサ素子実装部5aの縁に沿って第1の凸部35を設けたもの、図19に示すように、センサ素子実装部5aを縦横に4等分する線分に沿って延びる第1の凸部36を設けたもの、図20に示すように、センサ素子実装部5aの中心から対角線に沿って延びる第1の凸部37を設けたもの、等が挙げられる。いずれの形状のものも、第1の凸部の存在によりセンサ素子を安定して支持できるとともに外部応力を吸収して検出精度を向上できる、という図14のセンサと同様の効果を得ることができる。
【0026】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば第1の凸部、第2の凸部、パッケージ、センサ素子の材料、形状、寸法等の具体的な記載に関しては、上記実施の形態に限ることなく、適宜変更が可能なことは勿論である。また、第1の凸部、第2の凸部に関しては、パッケージと一体成形したものでも良いし、別体で形成したものを取り付けても良い。
【0027】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の半導体圧力センサによれば、パッケージの底面に第1の凸部を設けたことにより接着剤溜めを形成でき、パッケージ製作時に第1の凸部の高さを適宜設定することにより接着剤の厚みを任意に設定できるため、接着剤の厚みを厚くすることができる。このため、パッケージに加わる外部応力を充分に吸収することができ、圧力変動以外の要因によるダイヤフラムの歪みが抑制されるので、従来に比べて圧力の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の参考例の半導体圧力センサを示す平面図である。
【図2】 同、センサの断面構造を示す図であって、図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】 図3(a)はセンサ素子が収容されたパッケージ本体の最下部を拡大した断面図、図3(b)は平面図である。
【図4】 本発明の実施の形態の半導体圧力センサのセンサ実装部を示す(a)平面図、(b)(a)のA−A’線に沿う断面図である。
【図5】 同、センサの第2の凸部の他の例を示す図であって、(a)平面図、(b)(a)のA−A’線に沿う断面図である。
【図6】 同、第2の凸部の他の例を示す図である。
【図7】 同、第2の凸部の他の例を示す図である。
【図8】 同、第2の凸部の他の例を示す図である。
【図9】 同、第2の凸部の他の例を示す図である。
【図10】 同、第2の凸部の他の例を示す図である。
【図11】 同、第2の凸部の他の例を示す図である。
【図12】 同、第2の凸部の他の例を示す図である。
【図13】 同、第2の凸部の他の例を示す図である。
【図14】 他の参考例の半導体圧力センサのセンサ実装部を示す平面図である。
【図15】 同、センサの第2の凸部の他の例を示す平面図である。
【図16】 同、第1の凸部の他の例を示す図である。
【図17】 同、第1の凸部の他の例を示す図である。
【図18】 同、第1の凸部の他の例を示す図である。
【図19】 同、第1の凸部の他の例を示す図である。
【図20】 同、第1の凸部の他の例を示す図である。
【図21】 従来の半導体圧力センサの一例の要部を示す図である。
【符号の説明】
1…半導体圧力センサ、2…パッケージ、5…内部空間、6…センサ素子、10…圧力導入孔、11,31,32,33,34,35,36,37…第1の凸部、12…接着剤溜め、13…接着剤、16,17,18,19,20,21,22,23,24,25…第2の凸部。
Claims (2)
- センサ素子(6)と、該センサ素子を収容する内部空間(5)を有し、その底面にセンサ外部と連通する圧力導入孔(10)が設けられたパッケージ(2)とを備え、前記圧力導入孔の縁部に沿って前記内部空間に向けて環状に突出する第1の凸部(11)が設けられたことにより接着剤溜め(12)が形成され、前記第1の凸部上に前記センサ素子が配置され前記接着剤溜めに接着剤(13)が充填された状態で前記センサ素子が前記パッケージ内に固定され、さらに、前記センサ素子(6)を裏面側から支持する第2の凸部(16〜25)が前記パッケージ内部の底面上にて前記第1の凸部の周囲に設けられ、
前記第2の凸部は前記第1の凸部の周囲の複数箇所に前記第1の凸部から放射状に張り出すように設けられていることを特徴とする半導体圧力センサ。 - 前記第2の凸部の上部がR加工されていることを特徴とする請求項1記載の半導体圧力センサ。
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