JP4441327B2 - 疲労特性に優れた溶接継手 - Google Patents

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Description

本発明は、疲労強度が高い溶接継手に関する。
溶接部に発生する疲労き裂は、構造物全体の信頼性に重大な影響を与えるため、その疲労特性を向上させる手法は以前より検討されてきている。
疲労き裂が発生しやすい部分は溶接部であるが、その理由としては、溶接部には応力集中部が存在し、かつ引張の残留応力が生じていることが挙げられ、この原因を解決することが高疲労強度を有する溶接継手の実現に有効である。
そのため、従来技術における高疲労強度溶接継手として、溶接止端部をグラインダー処理する方法あるいはTIG溶接等により化粧溶接を施して溶接止端部の応力集中を減らした継手、またピーニングを用いて疲労が発生する部位に圧縮残留応力を導入し同時に応力集中を減らした継手などがあった。これら継手は、構造物作製コストを直接増大させるため、このような継手以外で疲労強度が向上された溶接継手が望まれていた。
この観点から、溶接金属の変態膨張を利用し、残留応力を低減させ、これにより疲労強度を向上させる手法が検討されている。例えば太田らは溶接学会全国大会講演概要集第61集520−521ページで、溶接金属の変態膨張を利用し、角回し溶接継手の疲労強度向上に関する報告を行っている。この報告によれば、オーステナイトからマルテンサイトに変態を開始する温度(Ms温度)を低くすることにより、変態に伴う膨張が変態後の熱収縮より大きくなり、結果として圧縮の残留応力が溶接止端部近傍に導入され、高疲労強度溶接継手が得られることになる。
すなわち、図1の点線3で示すように、 Ms温度が500℃〜550℃程度であれば、比較的高温域で変態膨張した後に、冷却過程で熱収縮が起きるので引張残留応力が発生するが、図1の実線4で示すように、Ms点を150℃〜350℃程度にすることによって、低温域で変態膨張するので圧縮応力が働き、変態膨張後はあまり冷却されないので熱収縮が小さいためで圧縮残留応力が残る。
図1の実線4で示すMs温度を低下させた場合には、点線3で示すMs温度が高い場合に比べて著しく疲労強度が向上している。
これは、圧縮残留応力となっているため、繰り返し引張荷重を付与しても、圧縮残留応力によって引張応力が緩和されるため、き裂が伝播しにくいためであると考えられる。
また、特開2000−288728号公報では、Ms点の低温化のみならずMs点における溶接金属の強度を大きくすることにより弾性ひずみ限度を増大し、溶接止端部近傍の残留応力低減を達成することが開示されている。
溶接学会全国大会講演概要集第61集520−521ページ 特開2000−288728号公報
前述のように、変態温度が低くなれば残留応力が低減される傾向に有ることは既存知見であり、疲労強度が残留応力に影響を受けることも容易に推察されることである。
しかし、実施工に適用可能な簡便な施工方法を用いて作製できる高疲労強度溶接継手はまだ確立されていなかった。
太田らの方法は、残留応力低減という技術を用いているものの、採用された施工方法は実用的ではなく、実施に適した溶接継手とは言い難かった。
例えば、従来の低温変態溶材には、以下のような問題点があった。
まず、圧縮の残留応力が発生すると、これにバランスするための反作用として必ず引張の残留応力が発生する部分が生じて、その部分の疲労強度がむしろ低下する。
さらに、変態温度は、冷却速度、拘束条件、パス間温度、鋼板板厚などに依存する。
例えば、図2(T.Mura, Research Report of Fac. of Eng., Meiji Univ.,10(1957),14)は、冷却速度と伸びとの関係を示す図であり、冷却速度の変化に伴って変態温度が徐々に変化していることがわかる。
また、溶接冷却過程の変態時に体積膨張を伴うマルテンサイト変態挙動は、力学的な拘束条件に依存し、図3(H.Onodera, H.Goto and I.Tamura, Proc. 1st JIM Int. Symp. On New Aspects of Martensitic Transformation, (1976), 327) に示すように、引張応力の存在条件下では変態し易く、圧縮応力の存在条件下では変態し難いことから、マルテンサイト分率が著しく異なることとなる。
一方、パス間温度が高いと先に溶接した部分に形成された圧縮残留応力場が、後続する溶接による加熱により壊されて十分な効果が得られず、さらに鋼板板厚が10mm以下と薄い場合、裏面の溶接部に形成された残留応力場を表面の溶接加熱により壊すことになり、表裏面双方の圧縮の残留応力場を効率よく溶接止端部に与えることが困難となる。
このように、従来の低変態温度溶材は、冷却速度、拘束条件、パス間温度、鋼板板厚などによって材質特性が不安定になるうえ、使用する温度域によって残留応力が異なるという問題点があった。
一方で、ピーニングやTIG溶接による化粧溶接が行われた従来継手は、それ自体溶接構造物の施工コストを増加させる要因となっていた。
そこで、簡便な施工で溶接部の引張残留応力を低減しそれを用いて高疲労強度が達成された継手を確立することにより、溶接構造物の信頼性向上の観点からその効果は絶大なものとなる。
本発明は、低熱膨張溶接材料を利用し、簡便な溶接施工方法で作製できる高い疲労強度特性を有する溶接継手を提供することを課題とする。
本発明者らは、以上のような事情を鑑み、溶接部の残留応力を低減させ疲労強度を向上
させる技術について種々検討し、これまで鋭意研究を重ねてきた結果、本発明を完成させ
たもので、その要旨は、次の通りである。
(1)30℃〜400℃の平均熱膨張係数が11×10-6〜20×10-6/℃である鋼材を溶接してなる溶接継手の溶接ビードが、30℃〜400℃の平均熱膨張係数が2×10-6〜10×10-6/℃であり、前記溶接継手の溶接ビードが、質量%で、C:0.20%以下、Si:0.05〜0.3%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.1%、Ni:20.0〜30.0%、Co:4.0〜16.0%、O:0.0300%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる低熱膨張溶接金属から形成されていることを特徴とする疲労特性に優れた溶接継手。
)さらに、前記溶接継手の溶接ビードが、質量%で、Cr:1.0%以下、Cu:0.6%以下を含有する溶接金属から形成されていることを特徴とする請求項に記載の疲労特性に優れた溶接継手。
)さらに、前記溶接継手の溶接ビードが、質量%で、Mg:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.2%、Nb:0.001〜0.4%、V:0.001〜1.0%の1種または2種以上を含有する溶接金属から形成されていることを特徴とする請求項または請求項に記載の疲労特性に優れた溶接継手。
) 前記溶接継手の溶接ビードのビッカース硬さが170〜400である低熱膨張溶接金属から形成されていることを特徴とする請求項乃至請求項3のいずれか一項に記載の疲労特性に優れた溶接継手。
本発明によれば、低熱膨張溶接材料を利用し、簡便な溶接施工方法で作製できる高い疲労強度特性を有する溶接継手を提供することができ、具体的には、疲労強度が150MPa以上と産業上有用な著しい効果を奏する。
以下に、本発明を詳細に説明する。初めに、本発明の技術思想について述べる。本発明における第1の技術思想は、溶接時の冷却過程で相変態しない溶材を適用することによって、変態に伴う不安定性を避けるという思想である。
従来の低温変態溶材は、溶接金属が冷却過程でオーステナイトからマルテンサイトに変態することを前提とし、この変態温度を低下させることによって、圧縮残留応力にしていたが、前述のように、この変態挙動は、冷却速度、拘束条件、パス間温度、鋼板板厚などに依存するため、溶接継手の疲労特性が不安定であった。
そこで、本発明で 等は、図1の太い実線1もしくは2で示すような、マルテンサイト変態、もしくはオーステナイトからフェライトへの変態を生じない溶材を適用することによって、変態温度の不安定性をなくし、安定した疲労特性を有する溶接継手を提供できることを見出した。
本発明における第2の技術思想は、溶接残留応力を制御して、残留応力をゼロ若しくは低減するという思想である。
従来の低温変態溶材は、マルテンサイト変態温度を低下させることによって、圧縮残留応力場を形成していたが、前述のように、圧縮残留応力が存在すれば、その反作用として引張残留応力が存在し、その部分の疲労特性が悪くなるという問題点があった。
そこで、本発明で 等は、図1の太い実線1もしくは2で示すように、溶接金属の温度が400℃以下の周囲からの拘束が始まって応力が伝達できるようになる温度域から室温相当の30℃までの平均膨張係数を低減させることによって、残留応力をゼロまたは低減させることができることを見出した。
本発明の溶接継手は、これまで述べてきた2つの技術思想、すなわちマルテンサイト変態しない溶材を適用すること、および、溶接残留応力をゼロもしくは低減することに基づいてなされたものであり、以下に本発明の疲労特性に優れた溶接継手について各請求項に記載した条件の限定理由を説明する。
請求項1の発明は、30℃〜400℃の平均熱膨張係数が11×10-6〜20×10-6/℃である鋼材を溶接してなる溶接継手の溶接ビードが、30℃〜400℃の平均熱膨張係数が2×10-6〜10×10-6/℃である低熱膨張溶接金属から形成されていることを特徴とする。
30℃〜400℃の平均熱膨張係数が11×10-6〜20×10-6/℃である鋼材を対象とするのは、通常、溶接構造材料として用いられるSS鋼やSM鋼、ハイテン鋼などの熱膨張係数がこの範囲に含まれるためである。
また、溶接ビードの、30℃〜400℃の平均熱膨張係数が2×10-6〜10×10-6/℃である低熱膨張溶接金属とするのは、溶接ビードが400℃以下になると周辺の鋼材に拘束力を伝達して残留応力を発生させる温度域であり、この400℃以下から室温相当の30℃までの温度域における平均熱膨張係数を溶接する鋼材より低い、2×10-6〜10×10-6/℃の範囲にすることによって、溶接残留応力をゼロもしくは低減させることができるからである。2×10-6/℃より小さいと溶接止端部に大きな圧縮残留応力が、また、その周囲には反作用としての引張残留応力場が生じ、本発明の技術思想である溶接残留応力をゼロもしくは低減させることによる疲労特性改善の効果が得られなくなる。一方、10×10-6/℃より大きいと溶接残留応力の低減効果が十分得られない。従って、2×10-6〜10×10-6/℃の範囲であることが望ましい。
さらに、溶接ビードの熱膨張係数は、溶接継手の温度の低下に伴って、単調に減少させることが好ましい。
即ち、マルテンサイト変態しない溶材を用いることによって溶接時の冷却過程で変態に伴う熱膨張が生じないので、溶接継手の冷却に伴って熱膨張係数を単調減少させることができ、冷却速度や周囲の拘束条件などによって、溶接残留応力が変化することがなく、安定した疲労特性を有する溶接継手を提供することができる。
請求項2の発明は、前記溶接継手の溶接ビードが、質量%で、C:0.20%以下、Si:0.05〜0.3%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.1%、Ni:20.0〜30.0%、Co:4.0〜16.0%、O:0.0300%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる低熱膨張溶接金属から形成されていることを特徴とする。
まず、成分範囲限定理由について説明する。
Siは、脱酸元素として知られ、溶接金属の酸素レベルを下げる効果がある。特に溶接施工中においては、溶接中に空気が混入する危険性があるため、Si量を適切な値にコントロールすることはきわめて重要である。まず、Siの下限についてであるが、溶接金属に含有するSi量として0.05質量%に満たない場合、脱酸効果が薄れ溶接金属中の酸素レベルが高くなりすぎ、機械的特性、特に延性、靱性の劣化を引き起こす危険性がある。そのため、溶接金属については、その下限を0.05質量%とした。一方、過度のSi添加も靱性劣化を発生せしめるため、0.3質量%以下であることが好ましい。
Mnは、強度を上げ、Nの固溶も促進する元素として知られる。Mnの下限、0.3質量%は強度確保という効果が得られる最低限の値として設定した。一方、過度の添加は、母材および溶接金属の靱性劣化や耐食性に有害な金属間化合物の析出を引き起こすため1.5質量%以下であることが好ましい。
Niは、単体でオーステナイトすなわち面心構造を持つ金属であり、溶接金属に添加することによりオーステナイトの状態をより安定な状態にする元素である。鉄そのものは、高温域でオーステナイト構造になり、低温域でフェライトすなわち体心構造になる。Niは、それを添加することにより、鉄の高温域における面心構造をより安定な構造にするため、無添加の場合に比べ、より低温度域においても面心構造となる。このことは、体心構造に変態する温度が低くなることを意味する。また、Niの添加によりCoの添加と共に自発体積磁歪効果により、熱膨張係数を低減する効果があることが知られている。本発明の場合、Ni量は20.0〜30.0質量%の範囲であるが、Ni量が20.0質量%より小さい場合は、室温近傍でのオーステナイト相の十分な安定と低熱膨張性の両立が得られず、また、30.0質量%を超えるとNiが高価であるという経済的デメリットが生じてくるため、20.0〜30.0質量%の範囲であることが好ましい。
Coは、Niの添加と共に自発体積磁歪効果により、熱膨張係数を著しく低減する効果があることが知られており、また、それを添加することにより強度増加をもたらし、かつ強度増加を期待しながら靱性を確保するという観点からは、Niより好ましい元素であることから有効利用すべき元素である。本発明の場合、Co量は4.0〜16.0質量%であるが、4.0質量%より小さいと、十分な強度が得られず、また、16.0%を超えるとCoが高価であるという経済的デメリットが生じてくるため、4.0〜16.0質量%の範囲であることが好ましい。
Alは、脱酸元素として0.005質量%以上の添加が好ましいが、0.1質量%を超えると耐食性、熱間加工性を低下させるため、0.005〜0.1質量%の範囲とした。
Cは、溶接金属の靭性劣化および溶接金属割れの問題を引き起こすため、0.2質量%以下であることが好ましい。
S、Pはいずれも不可避的不純物であるが、両者共に溶接高温割れ感受性を著しく阻害する元素である。また、多層溶接や補修溶接等の多重熱サイクル中に粒界脆化も促進する。また、Sは熱間加工性に著しく影響を及ぼす。従って、両元素ともできるだけ低減する必要があり、いずれも上限を0.01質量%とした。
さらに、OはSと同様に熱間加工性に著しく影響を及ぼす元素であるため、0.0300%以下に限定した。
請求項3の発明は、さらに、前記溶接継手の溶接ビードが、質量%で、Cr:1.0%以下、Cu:0.6%以下を含有する溶接金属から形成されていることを特徴とする。
Crは、溶接金属部の耐食性向上に効果があり、また熱膨張係数を小さくする効果があるが、一方、Crは焼入性元素でもあるため、溶接金属に添加することによりマルテンサイト変態を助長することが懸念されるため、1.0質量%以下であることが好ましい。
Cuは、溶接ワイヤにメッキすることにより通電性をよくする効果があるため、溶接作業性を改善するために有効な元素であるが、一方、Cuは焼入性元素でもあるため、溶接金属に添加することによりマルテンサイト変態を助長することが懸念されるため、0.6質量%以下であることが好ましい。
請求項4の発明は、さらに、前記溶接継手の溶接ビードが、質量%で、Mg:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.2%、Nb:0.001〜0.4%、V:0.001〜1.0%の1種または2種以上を含有する溶接金属から形成されていることを特徴とする。
Mgは、脱酸元素であり、酸化物を形成し、溶接金属の靭性を改善する効果があり、0.001質量%以上の添加が好ましいが、0.1質量%を超えると粗大酸化物形成に伴う靭性劣化が懸念されるため0.001〜0.1質量%の範囲が望ましい。
Tiは、炭化物、窒化物を形成し析出硬化を生じせしめる。Ti添加量の下限0.001%は、その効果が期待できる最低量として、上限の0.2%は靱性劣化を考慮して決定した。
Nbは、溶接金属中においてCと結合し、炭化物を形成する。Nb炭化物は、少量で溶接金属の強度を上げる働きがあり、従って、有効利用することの経済メリットは大きい。しかし、一方で過度の炭化物形成は、靱性劣化が発生するため自ずと上限が設定される。Nbの下限は、炭化物を形成せしめ、強度増加効果が期待できる最低の値として0.001質量%、上限は、靱性劣化による溶接部の信頼性が損なわれない値として0.4質量%とした。
VもNbと同様な働きをする元素である。しかし、Nbと異なり、同じ析出効果を期待するためには、Nbより添加量を多くする必要がある。V添加の下限0.001質量%は、添加することにより析出硬化が期待できる最低値として設定した。Vの上限は、これより多く添加すると析出硬化が顕著になりすぎ、靱性劣化を引き起こすために1.0%とした。
請求項5の発明は、前記溶接継手の溶接ビードのビッカース硬さが170〜400である低熱膨張溶接金属から形成されていることを特徴とする。
溶接ビードのビッカース硬さを170〜400とするのは、溶接ビードの強度が母材に比べて若干高い、所謂、オーバーマッチングであるこことが好ましいためで、比較的強度レベルの低い、引張強さ400MPaクラスの鋼材で溶接ビード硬さ170〜200程度、500MPaクラス材の場合では、同200〜250程度、600MPaクラスの鋼材の場合で、同250〜300程度、700MPaクラスの鋼材の場合で、同300〜400程度であることが好ましい。
以上、溶接後の溶接金属の成分についてその範囲限定理由について述べてきたが、これの範囲に溶接金属成分を制御する方法として、溶接ワイヤの成分を制御する方法や、溶接ワイヤおよびフラックスの成分を制御する方法、あるいは溶接心線および被覆フラックスの成分を制御する方法などがあるが、本発明においては、これら方法によらず、溶接金属の成分が前述の範囲内に設定されれば高疲労強度溶接継手が実現できる。
表1および表2に、溶接金属部成分値、溶接金属部の平均熱膨張係数、溶接金属硬さ、継手鋼材、継手形状、溶接条件、溶接止端部残留応力、疲労試験条件、疲労強度を示す。
平均熱膨張係数は疲労試験体と同時に作製した各継手の溶接金属部より直接φ3mm×50mmの試験片を採取し、接触式熱膨張計を用いて30℃〜400℃の範囲の平均熱膨張係数を測定した結果である。はじめに1000℃まで加熱し、冷却過程の試験片寸法変化を記録し、400℃時の寸法と30℃冷却時の寸法の差を求め、30℃時の寸法で除し、さらに400℃と30℃の差370℃で除して、単位温度当たりの線膨張係数を求め、30℃〜400℃までの平均熱膨張係数とした。
硬さは、溶接金属部から切り出した試験片にてビッカース硬さを印加荷重1kgで測定した。
溶接止端部残留応力は、止端部先端から試験荷重付加方向に1mm離れた位置においてX線法(sin2ψ法)にて荷重付加方向の残留応力を測定した。
また、各試験体の疲労強度は、最大応力と最小応力の比率(応力比)を0.1とした場合で、最大応力と最小応力の差(応力範囲)Δσを50〜250MPaの範囲でそれぞれ変化させて応力-寿命線図(S−N線図)を作成し、繰返し数5x106回において破壊しなかったΔσの最大値で表した。
表2には、比較のため、通常溶材(No.12〜16および19〜21)、低変態温度溶材(No.17および18)で作製した継手の疲労強度も併せて示してある。
表2に示すように、本発明による試料(No.1〜11)の溶接残留応力は、−90〜+50MPaとゼロに近い値を示しているのに対し、比較例では、大きな引張残留応力、もしくは圧縮残留応力を呈している。
また、本発明による各種継手の疲労強度は、いずれも120MPa以上と高い強度を示しているのに対し、比較例は90MPa以下と低い強度を示している。
以上、鋼材を溶接してなる溶接継手に、本発明による低熱膨張溶接金属からなる溶接ビードを適用することにより、継手の疲労強度特性を著しく向上させることができることが確認された。
Figure 0004441327
Figure 0004441327
溶接冷却過程における各種溶材の熱収縮挙動を示す図である。 普通鋼の熱収縮挙動に及ぼす冷却速度の影響を示す図である。 鋼のマルテンサイト変態時の拘束条件の影響を示す図である。
符号の説明
1 本発明による低熱膨張溶材の熱収縮曲線の例1
2 本発明による低熱膨張溶材の熱収縮曲線の例2
3 通常溶材の熱収縮曲線の例
4 低変態温度溶材の熱収縮曲線の例

Claims (4)

  1. 30℃〜400℃の平均熱膨張係数が11×10-6〜20×10-6/℃である鋼材を溶接してなる溶接継手の溶接ビードが、30℃〜400℃の平均熱膨張係数が2×10-6〜10×10-6/℃であり、前記溶接継手の溶接ビードが、質量%で、C:0.20%以下、Si:0.05〜0.3%、Mn:0.3〜1.5%、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.1%、Ni:20.0〜30.0%、Co:4.0〜16.0%、O:0.0300%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる低熱膨張溶接金属から形成されていることを特徴とする疲労特性に優れた溶接継手。
  2. さらに、前記溶接継手の溶接ビードが、質量%で、Cr:1.0%以下、Cu:0.6%以下を含有する溶接金属から形成されていることを特徴とする請求項に記載の疲労特性に優れた溶接継手。
  3. さらに、前記溶接継手の溶接ビードが、質量%で、Mg:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.2%、Nb:0.001〜0.4%、V:0.001〜1.0%の1種または2種以上を含有する溶接金属から形成されていることを特徴とする請求項または請求項に記載の疲労特性に優れた溶接継手。
  4. 前記溶接継手の溶接ビードのビッカース硬さが170〜400である低熱膨張溶接金属から形成されていることを特徴とする請求項乃至請求項3のいずれか一項に記載の疲労特性に優れた溶接継手。
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